JPH10320059A - 能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置

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Publication number
JPH10320059A
JPH10320059A JP13127797A JP13127797A JPH10320059A JP H10320059 A JPH10320059 A JP H10320059A JP 13127797 A JP13127797 A JP 13127797A JP 13127797 A JP13127797 A JP 13127797A JP H10320059 A JPH10320059 A JP H10320059A
Authority
JP
Japan
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vibration
temperature
permanent magnet
electromagnetic actuator
gap
Prior art date
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Pending
Application number
JP13127797A
Other languages
English (en)
Inventor
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
Hiroshi Kawazoe
寛 川添
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP13127797A priority Critical patent/JPH10320059A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】環境温度の変化に伴う磁力の変化に起因する、
振動低減制御の制御精度の低下を防止する。 【解決手段】初期状態での永久磁石10Cと磁路部材1
2との間の所定の環境温度における間隙と、これとは異
なる環境温度での前記間隙と、のずれ分を抑制すること
の可能な励磁コイル10Bへの通電量をオフセット量Δ
yとして、予め実験等によって検出しておく。これに基
づき、電磁アクチュエータ10に設けた温度センサ28
の温度検出値tに対応するオフセット量Δyを設定し、
このオフセット量ΔyとLMSアルゴリズムに基づく駆
動信号yとの和を駆動信号y* として励磁コイル10B
に供給する。これにより、環境温度の変化により生じる
永久磁石10Cと磁路部材12との間の間隙のずれ分が
オフセット量Δyによって補正され、初期状態における
前記間隙は環境温度の変化に係わらず所定の間隙となる
から、振動低減制御の制御精度の低下が回避される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両エンジン等
の振動体で発生する振動に、振動体及び支持体間に介在
する電磁アクチュエータが発生する制御振動を干渉させ
ることにより、支持体側に伝達される振動の低減を図る
ようにした能動型振動制御装置に関し、特に、環境温度
の変化に伴う、電磁アクチュエータの磁力の変化に対し
て対処することができるようにした物である。
【0002】
【従来の技術】本発明のような能動型振動制御装置の場
合、制御振動源と残留振動を検出する手段との間の伝達
関数は、その能動型振動制御装置の適用対象装置,適用
対象設備等の特性のばらつきによって、微妙に異なる。
また、適用対象装置等の使用に伴う特性変化等によっ
て、当初の状態からは変化してしまう可能性があるた
め、高精度の振動低減制御を実行するためには、能動型
振動制御装置を適用対象装置に組み込んだ後に伝達関数
を同定したり、適用対象装置の定期検査毎に伝達関数を
同定することが望ましい。
【0003】そこで、本出願人は、先に特開平6−33
2471号公報に開示されるような技術を提案してい
る。すなわち、この公報に開示された従来技術は、制御
音源や制御振動源からインパルス信号に応じた同定音や
同定振動を発生させ、その応答を残留騒音や残留振動を
検出する手段で計測することにより、能動型騒音制御装
置や能動型振動制御装置の制御アルゴリズムに必要な伝
達関数を同定するようになっている。そして、そのイン
パルス信号に応じた同定音や同定振動を発生するタイミ
ングを、騒音源や振動源から騒音や振動が発生していな
い状態から発生する状態に移行する直前に限ることによ
り、演算負荷の大幅な増大を招くことなく、また、人間
等に不快感を与えることなく、伝達関数の同定が行える
ようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上述したよう
な先行技術によれば、能動型騒音又は振動制御装置や、
能動型騒音又は振動制御装置を適用した対象装置毎に、
制御に必要な伝達関数を同定することは可能であるか
ら、高精度の騒音又は振動の低減制御等が期待できる。
【0005】しかしながら、例えば、励磁コイルへの通
電量を制御することによって、励磁コイルと永久磁石と
の磁力の総和を制御し、これによって永久磁石と可動板
との間の間隙を変化させ、流体室の容積変化を発生させ
て振動源に対して能動的な支持力を発生させるようにし
た電磁アクチュエータ等の場合、永久磁石等はその磁力
が温度変化に伴って変化することから、例えば励磁コイ
ルに対して通電を行っていない初期状態の場合でも、環
境温度によって、永久磁石と可動板との間の間隙が異な
ってしまう。具体的には、高温になるほど永久磁石の磁
力が低下することから、永久磁石と可動板との間の間隙
が広くなってしまう。
【0006】このとき、永久磁石と可動板との間に働く
力は、間隙の自乗に反比例することから、励磁コイルへ
の通電量を同じだけ変化させて磁力を変えても、これに
伴い得られる間隙の変化幅は、高温になるほど小さくな
る。つまり、電磁アクチュエータの出力のダイナミック
レンジが狭くなってしまう。
【0007】よって、予め設定された、間隙を変化させ
るために必要な通電量を励磁コイルに通電した場合で
も、温度変化が生じた場合、予測される制御振動を発生
させることができず出力特性が低下するという問題があ
る。
【0008】また、出力特性が変化するということは、
振動伝達系の伝達特性が変化するとことになり、励磁コ
イルの通電量は、伝達特性に応じた制御アルゴリズムに
したがって設定するようになっているから、実際とは異
なる伝達特性に応じて振動低減制御を行うことになり、
的確な振動低減制御を行うことができないという問題が
ある。
【0009】そこで、この発明は、上記従来の未解決の
問題に着目してなされたものであり、環境温度の変化に
伴う電磁アクチュエータの磁力の変化に対して、適切に
対処することのできる能動型振動制御装置を提供するこ
とを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る能動型振動制御装置は、永久磁石と
励磁コイルとが発生する磁力の総和を制御して前記永久
磁石と可動板との間隙を変化させることにより制御振動
を発生する電磁アクチュエータを用いて、振動源から発
せられる振動を低減するようにした能動型振動制御装置
において、前記電磁アクチュエータを駆動する駆動信号
に、前記電磁アクチュエータの温度変化に応じたオフセ
ット量を加算するようにしたことを特徴としている。
【0011】この発明によれば、例えば励磁コイルへの
通電量を制御し、永久磁石と励磁コイルとが発生する磁
力の総和を制御することによって、永久磁石と可動板と
の間隙を変化させ、これによって制御振動を発生するよ
うな電磁アクチュエータが、この制御振動と振動源から
発せられる振動とが干渉して振動が低減するように駆動
され、これによって、振動源からの振動が低減される。
このとき、電磁アクチュエータは所定の駆動信号に基づ
いて作動し、この駆動信号には、電磁アクチュエータの
温度変化に応じたオフセット量が加算されるようになっ
ている。
【0012】ここで、永久磁石或いは励磁コイルが発生
する磁力は、温度変化によって変化する。そのため、電
磁アクチュエータに温度変化が生じた場合、温度変化に
よって磁力が変化するから、永久磁石と可動板との間隙
が変化する。永久磁石と可動板との間に働く力は、永久
磁石と可動板との間隙に反比例するから、駆動信号に対
する間隙の変化幅が、高温になるほど小さくなって、期
待される制御振動が発生されないことになる。
【0013】しかしながら、温度変化に伴って、所定の
オフセット量を電磁アクチュエータを駆動する駆動信号
に加算するようにしているから、初期状態における永久
磁石と可動板との間隙が、予め設定された所定の間隙と
なるようにオフセット量を設定することにより、温度変
化が生じた場合でも初期状態における間隙は所定の値に
保たれるから、このオフセット量を加算した駆動信号に
基づいて電磁アクチュエータが作動されることによっ
て、所定の制御振動が発生されて、良好な振動低減制御
が行われることになる。
【0014】また、本発明の請求項2に係る能動型振動
制御装置によれば、永久磁石と励磁コイルとが発生する
磁力の総和を制御して前記永久磁石と可動板との間隙を
変化させることにより制御振動を発生する電磁アクチュ
エータと、振動源から発せられる振動と前記電磁アクチ
ュエータが発生する前記制御振動とを干渉させて前記振
動が低減されるように前記電磁アクチュエータを駆動す
る駆動信号を生成する能動制御手段と、を備えた能動型
振動制御装置において、前記電磁アクチュエータの温度
を検出する温度検出手段と、当該温度検出手段の検出温
度に応じて前記駆動信号に所定のオフセット量を加算す
る補正手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】この発明によれば、振動源から発せられる
振動が、電磁アクチュエータから発生される制御振動と
干渉して低減される。この電磁アクチュエータでは、例
えば励磁コイルへの通電量を制御して永久磁石と励磁コ
イルとが発生する磁力の総和を調整することによって、
永久磁石と可動板との間の間隙を変化させ、この間隙の
変化に伴って制御振動が発生されるようになっている。
そして、電磁アクチュエータは、能動制御手段からの駆
動信号にしたがって、振動源からの振動を低減させるよ
うに駆動される。
【0016】このとき、温度検出手段によって、電磁ア
クチュエータの温度が検出され、この温度に応じて能動
制御手段からの駆動信号に温度検出手段の検出温度に応
じたオフセット量が加算され、加算された駆動信号に基
づいて電磁アクチュエータが駆動される。
【0017】よって、例えば、環境温度の変化等によっ
て電磁アクチュエータの温度が変化した場合、永久磁石
及び励磁コイルの磁力は温度変化に伴って変化し、環境
温度が高温になるほど磁力が小さくなることから、永久
磁石と可動板との間の間隙がより広くなる。永久磁石と
可動板との間に働く力は、間隙に反比例することから、
駆動信号の変化に対する間隙の変化幅が、高温になるほ
ど小さくなって、期待される制御振動が発生されないこ
とになる。
【0018】しかしながら、温度検出手段で検出した電
磁アクチュエータの温度に応じて、所定のオフセット量
を電磁アクチュエータを駆動する駆動信号に加算するよ
うにしているから、初期状態における永久磁石と可動板
との間隙が、所定の間隙となるようにオフセット量を設
定することにより、温度変化が生じた場合でも初期状態
における間隙は所定の値に保たれるから、このオフセッ
ト量を加算した駆動信号に基づいて電磁アクチュエータ
が作動されることによって、所定の制御振動が発生され
て、良好な振動低減制御が行われることになる。
【0019】また、本発明の請求項3に記載の能動型振
動制御装置によれば、前記振動の発生状態を表す基準信
号を生成し出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の
振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出
手段と、を備え、前記能動制御手段は、前記基準信号及
び前記残留振動信号に基づき、前記電磁アクチュエータ
と前記残留振動検出手段との間の振動伝達系の伝達特性
に応じた制御アルゴリズムを用いて前記駆動信号を生成
するようになっていることを特徴としている。
【0020】この発明によれば、基準信号生成手段で生
成した振動の発生状態を表す基準信号と、残留振動検出
手段で検出した、振動源からの振動と電磁アクチュエー
タからの制御振動とが干渉した干渉後の振動である残留
振動信号と、に基づいて能動制御手段によって、電磁ア
クチュエータへの駆動信号が生成され、この駆動信号
は、電磁アクチュエータと残留振動検出手段との間の振
動伝達系の伝達特性に応じた制御アルゴリズムを用いて
生成される。
【0021】よって、温度変化に伴って電磁アクチュエ
ータの永久磁石の磁力が変化した場合、これに応じて、
駆動信号に対して電磁アクチュエータから得ることがで
きる振動低減力が変化することから、振動伝達系の伝達
特性が変化してしまうことになる。そのため、実際とは
異なる伝達特性に基づいて振動低減制御が行われるた
め、的確な振動低減制御を行うことができなくなるが、
補正手段によって伝達特性の変化を抑制可能なオフセッ
ト量を駆動信号に加算するようにしたから、温度変化に
伴う伝達特性の変化が回避されて良好な振動低減制御が
行われる。
【0022】また、本発明の請求項4に係る能動型振動
制御装置によれば、前記補正手段は、初期状態における
前記永久磁石と可動板との間の間隙が所定の間隙となる
ように、前記駆動信号を補正するようになっていること
を特徴としている。
【0023】この発明によれば、駆動信号は補正手段に
よって、初期状態における永久磁石と可動板との間の間
隙が、所定の間隙となるように補正される。つまり、温
度変化によって永久磁石の磁力が変化すると、可動板と
永久磁石との間の間隙が変化するため、この間隙の変化
に応じて発生可能な振動低減力が変化する。よって、こ
の振動低減力の変化の要因となる間隙の変化を抑制する
ことの可能な温度変化に応じたオフセット量を電磁アク
チュエータに供給すれば、温度変化に係わらず一定の間
隙となるから、温度変化に伴う磁力の変化による電磁ア
クチュエータの出力特性の低下或いは伝達特性の変化が
回避される。
【0024】また、本発明の請求項5に係る能動型振動
制御装置によれば、前記補正手段は、前記温度検出手段
の検出温度が上昇するほど、前記オフセット量を増加す
るようになっていることを特徴としている。
【0025】この発明によれば、補正手段は、温度検出
手段の検出温度が上昇するほど前記オフセット量を増加
するようになっている。例えば検出温度の段階的な変化
に応じてオフセット量を段階的に増加させたり、或い
は、検出温度の連続的な変化に応じてオフセット量を連
続的に増加させるようになっている。
【0026】ここで、電磁アクチュエータの永久磁石の
磁力は、温度が上昇するほど低下し永久磁石と可動板と
の間の間隙が広くなるから、検出温度が上昇するほどオ
フセット量を増加することにより、磁力の変化分が効果
的に補正されて、所定の間隙に維持される。
【0027】また、本発明の請求項6に係る能動型振動
制御装置によれば、前記温度検出手段は、前記永久磁石
の温度を検出するようになっていることを特徴としてい
る。この発明によれば、温度検出手段によって永久磁石
の温度が検出されるから、磁力の変化が生じる箇所の温
度が検出されることになって、的確に磁力の変化が検出
される。
【0028】さらに、本発明の請求項7に係る能動型振
動制御装置によれば、前記温度検出手段は、前記永久磁
石の周辺の温度を検出し、当該検出温度から前記永久磁
石の温度を推定するようになっていることを特徴として
いる。
【0029】この発明によれば、温度検出手段によって
永久磁石の周辺の温度が検出され、この検出温度から永
久磁石の温度が推定されるから、磁力が変化する永久磁
石の温度を直接検出することができないような場合で
も、的確に磁力の変化が検出される。
【0030】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る能動型振動制御
装置は、温度変化に応じて駆動信号にオフセット量を加
算するようにしたから、温度変化に伴う磁力の変化によ
る永久磁石と可動板との間隙の変化を抑制することがで
き、これに伴って生じる電磁アクチュエータの出力特性
の変化或いは、振動伝達系の伝達特性の変化を抑制し、
良好な振動低減制御を行うことができる。
【0031】また、本発明の請求項2に係る能動型振動
制御装置によれば、温度検出手段で検出した電磁アクチ
ュエータの温度に応じて、電磁アクチュエータを駆動す
る駆動信号にオフセット量を加算するようにしたから、
温度変化に伴う磁力の変化による、永久磁石と可動板と
の間の間隙の変化を抑制することができ、これに伴って
生じる電磁アクチュエータの出力特性の変化或いは、振
動伝達系の伝達特性の変化を抑制し、良好な振動低減制
御を行うことができる。
【0032】また、本発明の請求項3に記載の能動型振
動制御装置によれば、基準信号生成手段で生成した基準
信号と、残留振動検出手段で検出した、振動源の振動と
制御振動とが干渉した干渉後の振動とに基づいて、振動
伝達系の伝達特性に応じた制御アルゴリズムを用いて駆
動信号を生成するようになっているから、温度変化に伴
う、永久磁石と可動板との間の間隙に変化により振動伝
達系の伝達特性が変化することを回避し、伝達特性の精
度の低下を防止することができ、良好な振動低減制御を
行うことができる。
【0033】また、本発明の請求項4に係る能動型振動
制御装置によれば、初期状態における永久磁石と可動板
との間の間隙が所定の間隙となるようにオフセット量を
設定するようにしたから、温度変化に伴う電磁アクチュ
エータの出力特性の低下或いは伝達特性の変化を確実に
回避することができる。
【0034】また、本発明の請求項5に係る能動型振動
制御装置によれば、温度検出手段で検出した電磁アクチ
ュエータの温度が上昇するほどオフセット量を増加する
ようにしたから、温度変化に伴い永久磁石と可動板との
間の間隙が広くなるほどオフセット量が増加することに
なって、温度変化に伴う間隙の変化を的確に抑制するこ
とができる。
【0035】また、本発明の請求項6に係る能動型振動
制御装置によれば、温度検出手段で永久磁石の温度を検
出するようにしたから、磁力の変化を的確に検出するこ
とができる。
【0036】さらに、本発明の請求項7に係る能動型振
動制御装置によれば、温度検出手段では、永久磁石の周
辺の温度から、永久磁石の温度を推定するようにしたか
ら、永久磁石の温度を直接検出することができないよう
な場合でも、的確に磁力の変化を検出することができ
る。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図5は、本発明の実施
の形態を示す図であって、図1は、本発明に係る能動型
振動制御装置の実施の形態の一例を車両に適用した概略
構成図である。
【0038】まず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0039】一方、能動型エンジンマウント1は、例え
ば図2に示すように構成されている。すなわち、この実
施の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジ
ン30への取り付け用ボルト2aを上部に一体に備え且
つ内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、この
キャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3
の上端部がかしめ止めされている。
【0040】内筒3は、下端側が縮径した形状となって
いて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、ここ
に円形の開口部3aが形成されている。そして、内筒3
の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上下に
二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止め部
分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設されてい
る。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の側面
に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0041】さらに、内筒3の内側には、オリフィス構
成体5が配設されている。なお、本実施の形態では、内
筒3内面及びオリフィス構成体5間には、薄膜状の弾性
体(ダイアフラム4の外周部を延長させたものでもよ
い)が介在していて、これにより、オリフィス構成体5
は内筒3内側に強固に嵌め込まれている。
【0042】このオリフィス構成体5は、内筒3の内部
空間に整合して略円柱形に形成されていて、その上面に
は円形の凹部5aが形成されている。そして、その凹部
5aと、底面の開口部3aに対向する部分との間が、オ
リフィス5bを介して連通するようになっている。オリ
フィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の外周面に
沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を凹部5a
に連通させる流路と、その溝の他端部を開口部3aに連
通させる流路とで構成される。
【0043】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した円筒部材としての外筒7の内周面
上部に加硫接着されている。
【0044】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取り付け用の取り付けボルト9が突
出している。取り付けボルト9は、その頭部9aが、ア
クチュエータケース8の内底面に張り付いた状態で配設
された平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されてい
る。
【0045】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0046】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。
【0047】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11と、をこの
順序で重ね合わせると共に、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0048】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0049】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
主流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5a
によって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら主流体室15及び副流体室16間が、オリフ
ィス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通
している。なお、これら主流体室15,副流体室16及
びオリフィス5b内には、エチレングリコール等の流体
が封入されている。
【0050】かかるオリフィス5bの流路形状等で決ま
る流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェ
イク発生時、つまり、5〜15Hzで能動型エンジンマ
ウント1が加振された場合に高動ばね定数,高減衰力を
示すように調整されている。
【0051】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される電流である駆動信号y* に応じて所定
の電磁力を発生するようになっている。
【0052】コントローラ25は、マイクロコンピュー
タ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D/A
変換器,アンプ等を含んで構成され、エンジンシェイク
よりも高周波の振動であるアイドル振動やこもり音振動
・加速時振動が車体35に入力されている場合には、そ
の振動を低減できる能動的な支持力が能動型エンジンマ
ウント1に発生するように、能動型エンジンマウント1
に対する駆動信号yを生成し、これに所定のオフセット
量Δyを加算し、駆動信号y* として出力するようにな
っている。
【0053】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成しこれに応じた駆動信号y* を出力
すれば、車体側低減が可能となる。そこで、本実施の形
態では、燃焼タイミングに同期するように、エンジン3
0のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4
気筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転す
る度に一つの)インパルス信号を生成しこれを基準信号
xとして出力するパルス信号生成器26(図1)を設け
ていて、その基準信号xがエンジン30における振動の
発生状態を表す信号としてコントローラ25に供給され
るようになっている。
【0054】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0055】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、適応アルゴリ
ズムの一つである同期式Filtered−X LMS
アルゴリズムを実行することにより、能動型エンジンマ
ウント1に対する駆動信号yを演算し、その駆動信号y
に所定のオフセット量Δyを加算して能動型エンジンマ
ウント1に出力するようになっている。
【0056】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,……,I−1:Iはタッ
プ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、
最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリ
ング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタ
Wのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとし、これに
所定のオフセット量Δyを加算して駆動信号y* として
出力する一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づい
て適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数W i を適宜
更新する処理を実行するようになっている。
【0057】適応ディジタルフィルタWの更新式は、F
iltered−X LMSアルゴリズムに従った下記
の(1)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1) ここで、(n),(n+1)が付く項は、サンプリング
時刻n,n+1,における値であることを表し、μは収
束係数である。また、更新用基準信号RT は、理論的に
は、基準信号xを、能動型エンジンマウント1の電磁ア
クチュエータ10及び荷重センサ22間の伝達関数Cを
有限インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数
フィルタC^でフィルタ処理をした値であり、基準信号
xと伝達関数フィルタC^との関数である次式(2)と
して表すことができる。ここで、基準信号xの大きさは
“1”であるから、伝達関数フィルタC^のインパルス
応答を基準信号xに同期して次々と生成した場合のそれ
らインパルス応答波形のサンプリング時刻nにおける和
に一致する。
【0058】 RT =f(x,C^) ……(2) また、理論的には、基準信号xを適応ディジタルフィル
タWでフィルタ処理して駆動信号yを生成するのである
が、基準信号xの大きさが“1”であるため、フィルタ
係数Wi を順番に駆動信号yとしても、フィルタ処理の
結果を駆動信号yとしたのと同じ結果になる。
【0059】さらに、コントローラ25は上記のような
適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理を実行
する一方で、前記オフセット量Δyを電磁アクチュエー
タ10の温度変化に応じて更新する処理をも実行するよ
うになっている。
【0060】すなわち、コントローラ25には、アクチ
ュエータケース8を貫通してヨーク10Aに挿入して配
設された、例えば熱電対等で形成される温度センサ28
の温度検出値tが入力され、コントローラ25では、こ
の温度センサ28からの温度検出値tに基づいて、予め
設定された所定周期で、前記オフセット量Δyを更新す
るオフセット量設定処理が実行される。
【0061】こオフセット量設定処理では、入力される
温度センサ28からの温度検出値tに基づいて、温度検
出値tに対応するオフセット量を特定し、これを所定の
記憶領域に更新記憶するようになっている。そして、前
記振動低減制御処理においては、この更新記憶されたオ
フセット量に基づいて処理を実行するようになってい
る。
【0062】次に、本実施の形態の動作を説明する。す
なわち、能動型エンジンマウント1内の流体共振系の共
振周波数を20Hzに調節している結果、5〜15Hz
の振動であるエンジンシェイク発生時にもある程度の減
衰力がこの能動型エンジンマウント1で発生するため、
エンジン30側で発生したエンジンシェイクが能動型エ
ンジンマウント1によってある程度減衰されると共に、
図示しない他の流体封入式エンジンマウント等によって
もエンジンシェイクは減衰されるから、車体35側の振
動レベルが低減される。なお、エンジンシェイクに対し
ては、特に磁路部材12を積極的に変位させる必要はな
い。
【0063】一方、アイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信
号y * を出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低
減し得る能動的な支持力を発生させる。
【0064】これを、アイドル振動,こもり音振動入力
時にコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図3に従って具体的に説明する。
まず、そのステップ101において所定の初期設定が行
われた後に、ステップ102に移行し、所定の伝達関数
フィルタC^に基づいて更新用基準信号RT が演算され
る。なお、このステップ102では、一周期分の更新用
基準信号RT がまとめて演算される。
【0065】そして、ステップ103に移行し、カウン
タiが零クリアされた後に、ステップ104aに移行し
て、適応ディジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数
iが駆動信号yとして設定される。そして、ステップ
104bに移行して、所定の記憶領域に格納されている
オフセット量Δyが読み出され、これが駆動信号yに加
算された値が駆動信号y* として出力される。
【0066】ステップ104bで駆動信号y* を出力し
たら、ステップ105に移行し、残留振動信号eが読み
込まれる。そして、ステップ106に移行して、カウン
タjが零クリアされ、次いでステップ107に移行し、
適応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数Wj
が上記(1)式にしたがって更新される。
【0067】ステップ107における更新処理が完了し
たら、ステップ108に移行し、次の基準信号xが入力
されているか否かを判定し、ここで基準信号xが入力さ
れていないと判定された場合には、適応ディジタルフィ
ルタWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信号yの出力
処理を実行すべく、ステップ109に移行する。
【0068】ステップ109では、カウンタjが出力回
数Ty (正確には、カウンタjは0からスタートするた
め、出力回数Ty から1を減じた値)に達しているか否
かを判定する。この判定は、ステップ104で適応ディ
ジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を、駆動信号yと
しこれにオフセット量Δyを加算して出力した後に、適
応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を、駆動信
号yとして必要な数だけ更新したか否かを判断するため
のものである。そこで、このステップ109の判定が
「NO」の場合には、ステップ110でカウンタjをイ
ンクリメントした後に、ステップ107に戻って上述し
た処理を繰り返し実行する。
【0069】しかし、ステップ109の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ係数
の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ11
1に移行してカウンタiをインクリメントした後に、所
定時間待機する。この所定時間は、上記ステップ104
aの処理を実行した時点から所定のサンプリング・クロ
ックの間隔に対応する時間が経過するまでの時間であ
る。そして、所定のサンプリング・クロックに対応する
時間が経過したら、前記ステップ104aに戻って上述
した処理を繰り返し実行する。
【0070】一方、ステップ108で基準信号xが入力
されたと判断された場合には、ステップ112に移行
し、カウンタi(正確には、カウンタiは0からスター
トするため、カウンタiに1を加えた値)を最新の出力
回数Ty として保存した後に、ステップ102に戻っ
て、上述した処理を繰り返し実行する。
【0071】このような図3の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント1
の電磁アクチュエータ10に対しては、基準信号xが入
力された時点から、サンプリング・クロックの間隔で、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi に、所定
のオフセット量を加算した値が、順番に駆動信号y*
して供給される。
【0072】この結果、励磁コイル10Bに駆動信号y
* に応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、すで
に永久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているか
ら、その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10C
の磁力を強める又は弱めるように作用すると考えること
ができる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号y*
供給されていない状態では、磁路部材12は、板ばね1
1による支持力と、永久磁石10Cとの磁力との釣り合
った中立の位置に変位することになる。そして、この中
立の状態で励磁コイル10Bに駆動信号y* が供給され
ると、その駆動信号y* によって励磁コイル10Bに発
生する磁力が永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、
磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリアラン
スが増大する方向に変位する。逆に、励磁コイル10B
に発生する磁力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であ
れば、磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリ
アランスが減少する方向に変位する。
【0073】このように磁路部材12は、正逆両方向に
変位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室1
5の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6
の拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウン
ト1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのであ
る。
【0074】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、同期式Filte
red−X LMSアルゴリズムにしたがった上記
(1)式によって逐次更新されるため、ある程度の時間
が経過して適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数
i が最適値に収束した後は、駆動信号yに所定のオフ
セット量Δyを加算した駆動信号y* が能動型エンジン
マウント1に供給されることによって、エンジン30か
ら能動型エンジンマウント1を介して車体35側に伝達
されるアイドル振動やこもり音振動が低減されるように
なるのである。以上は車両走行時等に実行される振動低
減処理の動作である。その一方、図4に示すような、オ
フセット量Δyを設定するオフセット量設定処理が実行
される。
【0075】すなわち、まず、そのステップ201にお
いて、温度センサ28からの温度検出値tを読み込み、
続いて、ステップ202に移行し、読み込んだ温度検出
値tに応じたオフセット量Δyを設定する。
【0076】このオフセット量Δyは、初期状態、すな
わち、電磁アクチュエータ10に電流を供給していない
状態における、永久磁石10Cと磁路部材12との間の
クリアランスを所定量にするために必要な直流電流値で
あって、例えば、予め実験等によって検出されている。
そして、例えば、予め温度毎に対応するオフセット量を
検出し、所定の温度範囲毎にオフセット量を対応させた
対応テーブルを形成しておき、この対応テーブルをもと
に、温度検出値tに対応するオフセット量を設定した
り、或いは、電磁アクチュエータ10の温度とオフセッ
ト量との相関関係を検出しておき、この相関関係に基づ
いて、検出温度に対して連続的なオフセット量を設定す
る等の処理が実行される。
【0077】次いで、ステップ203に移行して、ステ
ップ202で特定されたオフセット量Δyを所定の記憶
領域に更新記憶する。したがって、本実施の形態によれ
ば、電磁アクチュエータ10の温度変化に応じて、オフ
セット量Δyが更新され、このオフセット量Δyが、同
期式Filtered−X LMSアルゴリズムにした
がって算出されたフィルタ係数Wi の値である駆動信号
yに加算された値が駆動信号y* として電磁アクチュエ
ータ10に供給されることになる。
【0078】よって、環境温度の変化等により、電磁ア
クチュエータ10に温度変化が生じた場合、温度変化に
応じて永久磁石10Cの磁力が変化することから、温度
変化に伴い永久磁石10Cと磁路部材12との間の間隙
が変化することになる。
【0079】図5は、永久磁石10Cと磁路部材12と
の間の間隙と、これら間に働く力との対応を表したグラ
フであって、特性線LH ,LL は、初期状態における対
応を表したものであり、特性線LH は特性線LL を得た
ときの温度よりも高温時における特性を表したものであ
る。また、特性線LK は、前記間隙と、板ばね11のば
ね力との対応を表す。
【0080】図5に示すように、永久磁石10Cの磁力
は、高温になるほど低下することから、永久磁石10C
と磁路部材12との間の間隙が同じ間隙である場合で
も、これらの間に働く力は、高温になるほど小さい。ま
た、初期状態における永久磁石10Cと磁路部材12と
の間の間隙が広くなるため、高温になるほどばね力とつ
りあうときの間隙が広くなり、図5の場合、温度変化に
応じて、間隙aからa′に変化する。また、永久磁石1
0Cと磁路部材12との間に働く力は、これら間の間隙
に反比例するから、励磁コイル10Bへの通電量を同じ
ように変化させ、図5に破線で示すように磁力を増減さ
せた場合、この通電量の変化に対する間隙の変化幅ε
は、低温時の変化幅εL に比較して、高温時の変化幅ε
H の方がより狭くなる。そのため、例えば、特性線LL
に応じた出力特性が電磁アクチュエータ10から得られ
るものとして振動低減制御を行っている状態で、温度変
化が生じてより高温になった場合、電磁アクチュエータ
10からは特性線LL に応じた出力特性しか得ることが
できないから、電磁アクチュエータ10の出力特性が低
下し、ダイナミックレンジが狭くなる。
【0081】しかしながら、磁力の変化に伴う間隙の変
化分を抑制するためのオフセット量Δyが、LMSアル
ゴリズムにしたがって算出されたフィルタ係数Wi に加
算されて出力されるから、オフセット量Δyによって温
度変化に伴う間隙の変化が解消されて、永久磁石10C
と磁路部材12との間の間隙が所定の間隙となり、この
状態から、駆動信号yに応じて間隙が制御されることに
なる。よって、温度変化が生じた場合でも、永久磁石1
0Cと磁路部材12との間の初期状態における間隙は所
定値となり、基準となる間隙は一定に保たれることにな
るから、温度変化に応じて制御振動が変化することはな
く、所定の振動低減効果を得ることができる。よって、
例えば、通常とり得る温度環境下における振動の伝達特
性に応じて振動低減制御を実行するようにすれば、温度
環境が変化したときにオフセット量Δyを加算すればよ
いから効果的である。
【0082】また、オフセット量Δyを駆動信号yに加
算することによって、温度変化に応じて電磁アクチュエ
ータの出力特性が変化することはないから、温度変化に
伴って振動伝達系の伝達特性が変化することはない。よ
って、LMSアルゴリズムで用いられる伝達特性の精度
が、温度変化に伴って低下することはないから、良好な
振動低減制御を行うことができる。
【0083】よって、車両の外気温度の変化、或いは、
能動型エンジンマウント1が稼働することに伴う、電磁
アクチュエータ10の発熱による能動型エンジンマウン
ト1内の温度変化によって、永久磁石10C及び励磁コ
イル10Bの磁力が変化した場合でも、所定の制御振動
が発生されるから、良好な振動低減制御を実行すること
ができる。
【0084】また、磁力変化が生じる永久磁石10Cに
より近いヨーク10Aの温度を検出するようにしている
から、的確に磁力変化を検出することができ、より高精
度なオフセット量Δyを設定することができ、良好な振
動低減制御を実行することができる。
【0085】ここで、本実施の形態では、エンジン30
が振動源に対応し、能動型エンジンマウント1が制御振
動源に対応し、パルス信号生成器26が基準信号生成手
段に対応し、荷重センサ22が残留振動検出手段に対応
し、温度センサ28が温度検出手段に対応し、図3のス
テップ104bの処理が補正手段に対応し、図3のその
他の処理が能動制御手段に対応している。
【0086】なお、上記実施の形態においては、温度セ
ンサ28を、電磁アクチュエータ10に設け、ヨーク1
0Aの温度を計測するようにした場合について説明した
が、これに限らず、例えば、永久磁石10C,支持弾性
体6の表面の温度,主流体室15内の作動流体の温度,
或いは能動型エンジンマウント1本体が設置されている
場所の温度,等を測定するようにしてもよい。また、予
めこれら各部の温度と励磁コイル10B或いは永久磁石
10Cとの間の相対関係を求めておき、温度センサ28
で検出した温度から、励磁コイル10B或いは永久磁石
10Cの温度を推定し、この推定温度に基づいてオフセ
ット量Δyを設定するようにしてもよい。
【0087】また、上記実施の形態においては、残留振
動を能動型エンジンマウント1に内蔵した荷重センサ2
2によって検出しているが、これに限定されるものでは
なく、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検出
する加速度センサを配設し、その加速度センサの出力信
号を残留振動信号eとしてもよい。
【0088】また、上記実施の形態においては、本発明
における能動型振動制御装置をエンジン30から車体3
5に伝達される振動を低減する車両用の能動型振動制御
装置に適用した場合について説明したが、本発明の対象
はこれに限定されるものではなく、エンジン30以外で
発生する振動を低減するための能動型振動制御装置であ
っても本発明は適用可能である。
【0089】また、本発明の適用対象は車両に限定され
るものではなく、エンジン30以外で発生する周期的な
振動を低減するための能動型振動制御装置や、非周期的
な振動を低減するための能動型振動制御装置であっても
適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態
と同様の作用効果を奏することができる。例えば、工作
機械からフロアや室内に伝達される振動を低減する装置
等であっても、本発明は適用可能である。
【0090】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとして同期式Filtere
d−X LMSアルゴリズムを適用しているが、適用可
能なアルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例
えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズ
ム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図4】オフセット量設定処理の概要を示すフローチャ
ートである。
【図5】本発明の動作説明に供する説明図である。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント(制御振動源) 10 電磁アクチュエータ 11 板ばね 12 磁路部材 22 荷重センサ(残留振動検出手段) 25 コントローラ 26 パルス信号生成器(基準信号生成手段) 28 温度センサ(温度検出手段) 30 エンジン(振動源) 35 車体

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 永久磁石と励磁コイルとが発生する磁力
    の総和を制御して前記永久磁石と可動板との間隙を変化
    させることにより制御振動を発生する電磁アクチュエー
    タを用いて、振動源から発せられる振動を低減するよう
    にした能動型振動制御装置において、前記電磁アクチュ
    エータを駆動する駆動信号に、前記電磁アクチュエータ
    の温度変化に応じたオフセット量を加算するようにした
    ことを特徴とする能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 永久磁石と励磁コイルとが発生する磁力
    の総和を制御して前記永久磁石と可動板との間隙を変化
    させることにより制御振動を発生する電磁アクチュエー
    タと、振動源から発せられる振動と前記電磁アクチュエ
    ータが発生する前記制御振動とを干渉させて前記振動が
    低減されるように前記電磁アクチュエータを駆動する駆
    動信号を生成する能動制御手段と、を備えた能動型振動
    制御装置において、 前記電磁アクチュエータの温度を検出する温度検出手段
    と、当該温度検出手段の検出温度に応じて前記駆動信号
    に所定のオフセット量を加算する補正手段と、を備える
    ことを特徴とする能動型振動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記振動の発生状態を表す基準信号を生
    成し出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を
    検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段
    と、を備え、前記能動制御手段は、前記基準信号及び前
    記残留振動信号に基づき、前記電磁アクチュエータと前
    記残留振動検出手段との間の振動伝達系の伝達特性に応
    じた制御アルゴリズムを用いて前記駆動信号を生成する
    ようになっていることを特徴とする請求項2記載の能動
    型振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記補正手段は、初期状態における前記
    永久磁石と可動板との間の間隙が所定の間隙となるよう
    に、前記駆動信号を補正するようになっていることを特
    徴とする請求項2又は3記載の能動型振動制御装置。
  5. 【請求項5】 前記補正手段は、前記温度検出手段の検
    出温度が上昇するほど、前記オフセット量を増加するよ
    うになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れ
    かに記載の能動型振動制御装置。
  6. 【請求項6】 前記温度検出手段は、前記永久磁石の温
    度を検出するようになっていることを特徴とする請求項
    2乃至5の何れかに記載の能動型振動制御装置。
  7. 【請求項7】 前記温度検出手段は、前記永久磁石の周
    辺の温度を検出し、当該検出温度から前記永久磁石の温
    度を推定するようになっていることを特徴とする請求項
    2乃至5の何れかに記載の能動型振動制御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6305675B1 (en) 1999-08-27 2001-10-23 Tokai Rubber Industries, Ltd. Oscillating force generator and vibration damper using the generator
JP2004034826A (ja) * 2002-07-03 2004-02-05 Honda Motor Co Ltd エンジンの振動防止制御装置
JP2004361300A (ja) * 2003-06-06 2004-12-24 A & D Co Ltd 粘度計

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