JPH11338505A - 能動型振動制御装置及び能動型騒音制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置及び能動型騒音制御装置

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Publication number
JPH11338505A
JPH11338505A JP10146184A JP14618498A JPH11338505A JP H11338505 A JPH11338505 A JP H11338505A JP 10146184 A JP10146184 A JP 10146184A JP 14618498 A JP14618498 A JP 14618498A JP H11338505 A JPH11338505 A JP H11338505A
Authority
JP
Japan
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vibration
abnormality
control
signal
residual
Prior art date
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Pending
Application number
JP10146184A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Kimura
健 木村
Shigeki Sato
佐藤  茂樹
Hiroshi Kawazoe
寛 川添
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Filing date
Publication date
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Publication of JPH11338505A publication Critical patent/JPH11338505A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】能動的な支持力を発生する電磁アクチュエータ
や残留振動信号を生成する荷重センサに断線異常等が発
生したときにその異常発生部位を特定したい。 【解決手段】先ずステップ201で、残留振動信号eの
振幅を検索し振幅Ae として記憶し、次いでステップ2
02に移行し、振幅Ae としきい値eth1 とを比較し、
e ≧eth1 の場合には特に能動型エンジンマウント1
に異常は検出されなかったと判断する。ステップ202
で、Ae <eth1 であると判定された場合には、ステッ
プ204に移行し、振幅Ae としきい値eth2 (<e
th1 )とを比較し、Ae ≧eth2 の場合には、荷重セン
サ22に断線異常が発生している可能性があると判断し
ステップ205に移行する一方、Ae <eth2 と判定さ
れた場合には、電磁アクチュエータ10に断線異常が発
生している可能性があると判断し、ステップ206に移
行する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、能動的な制御振
動・制御音を発生させて振動・騒音と干渉させることに
より、振動・騒音の低減を図る能動型振動制御装置及び
能動型騒音制御装置に関し、特に、制御振動・制御音を
発生させる制御振動源・制御音源と、干渉後の騒音・振
動を検出する残留振動検出手段・残留騒音検出手段とを
備えた能動型振動制御装置及び能動型騒音制御装置にお
いて、異常が発生した場合に、その異常が発生した部位
を判断可能として、適切な対応が行えるようにしたもの
である。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば本
出願人が先に提案した特開平8−109946号公報等
に記載されたものがある。即ち、かかる公報に開示され
た従来の技術は、能動型振動制御装置に関するものであ
って、振動体と支持体との間に介在する防振支持装置
を、受動的な液体封入式の防振支持装置と同様に、二つ
の流体室間を往来する流体の共振を利用して振動体から
支持体側に伝達される振動を抑制できるようにするとと
もに、比較的高周波の振動に対しては、流体室の隔壁の
一部を形成する可動部材を能動的に変位させ、流体室の
圧力変化を支持弾性体の拡張バネに作用させ、もって能
動的な支持力を発生させ振動を打ち消すことができるよ
うにしていた。
【0003】つまり、防振支持装置内の流体室の隔壁の
一部を形成する可動部材を、その流体室の容積が変化す
る方向に変位可能に弾性部材によって防振支持装置内に
弾性支持するとともに、その可動部材を例えば電磁アク
チュエータで変位させることにより、流体室の容積を積
極的に変化させるようにしていた。また、電磁アクチュ
エータを駆動させる駆動信号は、振動の発生状態を表す
基準信号と、振動の低減状態を表す残留振動信号とに基
づいて、LMSアルゴリズム等の逐次更新型のアルゴリ
ズムに従って生成するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記従来の装
置であっても、防振支持装置を通じて振動体から支持体
側に伝達される振動を、能動的な支持力によってある程
度相殺することができるから、支持体側の振動低減に寄
与することができる。
【0005】しかしながら、上述したような従来の装置
にあっては、能動的な支持力を発生するための電磁アク
チュエータや、残留振動信号を生成するための荷重セン
サに異常が発生しても、その異常発生部位を特定するこ
とができず、修理の際に適切な対処を行うのにとって不
便であるという未解決の課題があった。なお、このよう
な未解決の課題は、例えば特開平6−230786号公
報に開示されるような能動型騒音制御装置も同様に有し
ている。
【0006】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、異常発
生部位を判断可能な能動型振動制御装置及び能動型騒音
制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、振動源から発せられる振動
と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振
動の発生状態を表す基準信号を生成し出力する基準信号
生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号と
して出力する残留振動検出手段と、前記基準信号及び前
記残留振動信号に基づき所定の制御アルゴリズムに従っ
て前記干渉後の振動が低減するように前記制御振動源を
駆動する能動制御手段と、を備えた能動型振動制御装置
において、前記制御振動源を駆動させたときの前記残留
振動信号に基づいて異常の発生を判断する異常判断手段
を設けるとともに、前記異常判断手段は、大きさの異な
る複数のしきい値を有していて、前記残留振動信号と前
記複数のしきい値とに基づいて異常が発生している部位
を判断するようにした。
【0008】また、請求項2に係る発明は、上記請求項
1に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
異常判断手段は、第1のしきい値と、この第1のしきい
値よりも小さい第2のしきい値とを有していて、前記残
留振動信号が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値
との間にある場合には、前記残留振動検出手段に異常が
発生したと判断し、前記残留振動信号が前記第2のしき
い値よりも小さい場合には、前記制御振動源に異常が発
生したと判断するようにした。
【0009】そして、請求項3に係る発明は、上記請求
項1又は請求項2に係る発明である能動型振動制御装置
において、前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間
の伝達関数を同定する伝達関数同定手段を備え、前記異
常判断手段は、前記伝達関数同定手段が前記伝達関数の
同定処理を実行しているときに、前記判断を行うように
した。
【0010】一方、上記目的を達成するために、請求項
4に係る発明は、騒音源から発せられる騒音と干渉する
制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音の発生状態を
表す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、前
記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残
留騒音検出手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号
に基づき所定の制御アルゴリズムに従って前記干渉後の
騒音が低減するように前記制御音源を駆動する能動制御
手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記制
御音源を駆動させたときの前記残留騒音信号に基づいて
異常の発生を判断する異常判断手段を設けるとともに、
前記異常判断手段は、大きさの異なる複数のしきい値を
有していて、前記残留騒音信号と前記複数のしきい値と
に基づいて異常が発生している部位を判断するようにし
た。
【0011】また、請求項5に係る発明は、上記請求項
4に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記
異常判断手段は、第1のしきい値と、この第1のしきい
値よりも小さい第2のしきい値とを有していて、前記残
留騒音信号が前記第1のしきい値と前記第2のしきい値
との間にある場合には、前記残留騒音検出手段に異常が
発生したと判断し、前記残留騒音信号が前記第2のしき
い値よりも小さい場合には、前記制御音源に異常が発生
したと判断するようにした。
【0012】そして、請求項6に係る発明は、上記請求
項4又は請求項5に係る発明である能動型騒音制御装置
において、前記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の
伝達関数を同定する伝達関数同定手段を備え、前記異常
判断手段は、前記伝達関数同定手段が前記伝達関数の同
定処理を実行しているときに、前記判断を行うようにし
た。
【0013】ここで、請求項1に係る発明にあっては、
制御振動源と残留振動検出手段とのいずれにも断線等の
異常が発生していなければ、制御振動源で発生した制御
振動は、残留振動検出手段によって、所定波形の残留振
動信号として検出されるはずである。
【0014】これに対し、制御振動源に駆動信号を出力
しても正常な残留振動信号が検出されない場合は、制御
振動源に断線等の異常があるため、制御振動源が正常に
動作せず、正常時と同じ制御振動そのものが発生してい
ないか、或いは、制御振動源が正常に動作して制御振動
は発生しているが、残留振動検出手段に断線等の異常が
発生しているために、残留振動検出手段がそれを正常に
検出し出力できないか、のいずれかである可能性が高
い。
【0015】つまり、制御振動源に駆動信号を出力した
ときの残留振動信号の波形は、異常が発生しているか否
かによって異なるため、それを区別できるように例えば
残留振動信号の振幅についてのしきい値を設定しておけ
ば、異常が発生しているか否かを判断することが可能と
なる。さらに、異常が発生しているにしても、その異常
が発生している部位によっても、取り込まれる残留振動
信号の波形が異なることが多いことが判った。
【0016】そこで、請求項1に係る発明のように、予
め実験等に基づいて設定された大きさの異なる複数のし
きい値を有していれば、異常判断手段において、残留振
動信号と、複数のしきい値との関係に基づいて、異常が
発生している部位をある程度の確率で判断することが可
能になる。
【0017】また、請求項2に係る発明にあっては、異
常判断手段が有している第1のしきい値eth1 及び第2
のしきい値eth2 の関係を、 eth1 >eth2 とし、残留振動信号eがそれら第1のしきい値eth1
第2のしきい値eth2 との間にある場合には、残留振動
検出手段に断線等の異常が発生したと判断し、残留振動
信号eが第2のしきい値eth2 よりも小さい場合には、
制御振動源に断線等の異常が発生したと判断する。
【0018】このように判断できる理由は、次のように
説明できる。先ず、残留振動検出手段に断線異常が発生
すると、残留振動信号を受け取る側から見た残留振動信
号の入力配線がオープンになり、その入力配線にノイズ
が混入し易くなるため、残留振動検出手段が正常な残留
振動信号を出力していなくても、残留振動信号を受け取
る側では、ある程度の大きさのノイズを残留振動信号と
して受け取る可能性が高い。特に、制御振動源に駆動信
号を供給するための配線と、残留振動検出手段から残留
振動信号を出力するための配線とは、取り扱い上の都合
から全部若しくは一部分が一緒に束ねられている場合が
多いため、残留振動信号の入力配線がオープンになって
いる状態で制御振動源に駆動信号を供給すると、その残
留振動信号の入力配線には比較的大きなノイズ信号が現
れてしまう。
【0019】これに対し、残留振動検出手段には断線異
常が発生していないが、制御振動源に断線異常が発生し
ていると、残留振動信号の入力配線はオープンにはなっ
ていないし、しかも制御振動源に駆動信号そのものが供
給されず制御振動は発生しないから、残留振動信号の入
力配線には極小さなノイズ成分が現れるだけある。
【0020】よって、請求項2に係る発明における上記
のような判断が、ある程度の確率をもって可能になるの
である。また、請求項3に係る発明は、制御振動源及び
残留振動検出手段間の伝達関数は、その制御振動源を駆
動させるための駆動信号と残留振動検出手段が検出した
残留振動信号とに基づいて同定可能であるが、そのよう
な伝達関数の同定処理の多くの部分は、異常判断手段に
必要な処理と重複している、ということに着目したもの
であり、この請求項3に係る発明であれば、異常判断手
段における処理の簡略化が図られる。
【0021】請求項4〜6に係る発明は、振動と音との
相違はあるものの、実質的に上記請求項1〜3に係る発
明と同一であるため、実質的に同一の作用が得られる。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、複数のしきい値を有す
る異常判断手段を設け、残留振動信号と複数のしきい値
とに基づいて異常発生部位を判断するようにしたため、
異常発生部位を比較的高い確率で判断できるから、適切
な対処を行うために有益な情報を与えることができると
いう効果がある。
【0023】特に、請求項2及び請求項5に係る発明に
あっては、制御振動源・制御音源と残留振動検出手段・
残留騒音検出手段とのいずれに異常が発生したかを比較
的高い確率で判断することができるから、適切な対処を
行うために有益な情報を、より具体的に与えることがで
きるという効果がある。
【0024】そして、請求項3及び請求項6に係る発明
にあっては、全体的な処理が効率的になるという利点も
ある。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図5は本発明の一実施
の形態を示す図であって、図1は本発明に係る能動型振
動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0026】先ず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0027】一方、能動型エンジンマウント1は、例え
ば、図2に示すように構成されている。即ち、この実施
の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジン
30への取付け用のボルト2aを上部に一体に備え且つ
内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、このキ
ャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3の
上端部がかしめ止めされている。
【0028】内筒3は、下端側の方が縮径した形状とな
っていて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、
ここに円形の開口部3aが形成されている。そして、内
筒3の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上
下に二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止
め部分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設され
ている。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の
側面に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0029】さらに、内筒3の内側にはオリフィス構成
体5が配設されている。オリフィス構成体5は、内筒3
の内部空間に整合して略円柱形に形成されていて、その
上面には円形の凹部5aが形成されている。そして、そ
の凹部5aと、底面の開口部3aに対向する部分との間
が、オリフィス5bを介して連通するようになってい
る。オリフィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の
外周面に沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を
凹部5aに連通させる流路と、その溝の他端部を開口部
3aに連通させる流路とで構成される。
【0030】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した外筒7の内周面上部に加硫接着さ
れている。
【0031】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取付け用の取付けボルト9が突出し
ている。取付けボルト9は、その頭部9aが、アクチュ
エータケース8の内底面に張り付いた状態で配設された
平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されている。
【0032】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0033】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。板ばね11及び磁路部材12によ
って可動部材が構成される。
【0034】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11とをこの順
序で重ね合わせるとともに、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0035】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0036】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
主流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5a
によって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら主流体室15及び副流体室16間が、オリフ
ィス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通
している。なお、これら主流体室15,副流体室16及
びオリフィス5b内には、エチレングリコール等の流体
が封入されている。
【0037】かかるオリフィス5bの流路形状等で決ま
る流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェ
イク発生時、つまり5〜15Hzで能動型エンジンマウン
ト1が加振された場合に高動ばね定数、高減衰力を示す
ように調整されている。
【0038】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の
電磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,R
AM等の記憶媒体等を含んで構成され、アイドル振動や
こもり音振動・加速時振動が車体35に入力されている
場合には、その振動を低減できる能動的な支持力が能動
型エンジンマウント1に発生するように、能動型エンジ
ンマウント1に対する駆動信号yを生成し出力するよう
になっている。
【0039】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が
可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン30
のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気
筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する
度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして
出力するパルス信号生成器26を設けていて、その基準
信号xが、エンジン30における振動の発生状態を表す
信号としてコントローラ25に供給されるようになって
いる。
【0040】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0041】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、逐次更新型の
適応アルゴリズムの一つである同期式Filtered
−XLMSアルゴリズムを実行することにより、能動型
エンジンマウント1に対する駆動信号yを演算し、その
駆動信号yを能動型エンジンマウント1に出力するよう
になっている。
【0042】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ
数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最
新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリン
グ・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタW
のフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する
一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する
処理を実行するようになっている。
【0043】適応ディジタルフィルタWの更新式は、F
iltered−X LMSアルゴリズムに従った下記
の(1)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1) ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時
刻n,n+1における値であることを表し、μは収束係
数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、
基準信号xを、能動型エンジンマウント1の電磁アクチ
ュエータ10及び荷重センサ22間の伝達関数Cを有限
インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数フィ
ルタC^でフィルタ処理した値であるが、基準信号xの
大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のイ
ンパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場
合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nに
おける和に一致する。
【0044】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0045】さらに、コントローラ25は、上記のよう
な適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理を実
行する一方で、その振動低減制御に必要な伝達関数Cを
同定する処理をも実行するようになっている。
【0046】即ち、コントローラ25には、伝達関数C
の同定処理を開始するタイミングで操作される同定処理
開始スイッチ28が設けられていて、例えば製造ライン
における最終工程において、或いはディーラーにおける
定期点検時において、作業者がその同定処理開始スイッ
チ28を操作すると、コントローラ25内で伝達関数C
の同定処理が実行される。なお、伝達関数Cの同定処理
実行中には、通常の振動低減処理は実行されない。
【0047】つまり、コントローラ25は、車両のイグ
ニッションがオンになっている通常の走行時等には、同
期式Filtered−X LMSアルゴリズムに従っ
た振動低減処理を実行するが、同定処理開始スイッチ2
8が操作されると、振動低減処理を停止して、伝達関数
Cの同定処理を実行するようになっている。
【0048】そして、本実施の形態では、伝達関数Cの
同定処理は、正弦波状の同定信号を用いて行うようにな
っている。具体的には、伝達関数Cの同定処理は、正弦
波状の同定信号を駆動信号yの代わりに能動型エンジン
マウント1に所定時間出力し続けるとともに残留振動信
号eを読み込む、というデータ読み込み処理を、同定信
号の周波数を順次変えつつ繰り返し実行し、各データ読
み込み処理によって得られた残留振動信号eの各数列を
FFT処理して同定信号の周波数に相当する成分を抽出
し、抽出された各周波数成分を合成した結果を、逆FF
T処理して、伝達関数Cとしてのインパルス応答を求め
るようになってる。求められたインパルス応答は、有限
インパルス応答型の伝達関数フィルタC^としてそれま
での伝達関数フィルタC^と置き換えられるようになっ
ている。
【0049】またさらに、コントローラ25は、伝達関
数Cの同定処理を実行するときに、能動型エンジンマウ
ント1に異常が発生しているか否かの判断(異常検出処
理)をも行うようになっている。
【0050】即ち、伝達関数Cの同定処理を実行すると
きには、所定周波数の正弦波状の同定信号を駆動信号y
として出力するため、残留振動信号eは、駆動信号yの
振幅及び位相を、伝達関数Cのゲイン特性及び位相特性
に応じて変換した正弦波状の信号になるはずである。し
かし、能動型エンジンマウント1に異常が発生していれ
ば、伝達関数Cの同定処理実行時に取り込まれる残留振
動信号eは、例えば、極めて振幅の小さい正弦波状の信
号になったり、或いは、ホワイトノイズのような信号に
なったりする。
【0051】また、能動型エンジンマウント1に発生す
る異常のうち、特に発生する可能性の高い異常として、
電磁アクチュエータ10の断線異常(特に、励磁コイル
10Bとハーネス23aとの接続不良)と、荷重センサ
22の断線異常(特に、荷重センサ22とハーネス23
bとの接続不良)とが考えられ、その二つの断線異常を
区別して判断する処理を実行するようになっている。
【0052】より具体的には、コントローラ25は、大
きさの異なる第1のしきい値eth1及び第2のしきい値
th2 (eth1 >eth2 )を記憶していて、残留振動信
号eの振幅が大きい方のしきい値eth1 以上の場合に
は、電磁アクチュエータ10及び荷重センサ22のいず
れにも断線異常は発生していないと判断し、残留振動信
号eの振幅がしきい値eth1 未満で且つしきい値eth2
以上の場合には、荷重センサ22に断線異常が発生して
いると判断し、残留振動信号eの振幅がしきい値eth2
未満の場合には、電磁アクチュエータ10に断線異常が
発生していると判断するようになっている。
【0053】また、このような異常検出処理は、同定信
号の各周波数毎に実行されるようになっており、特に本
実施の形態では、各周波数毎の異常判断処理の全てにお
いて電磁アクチュエータ10の断線異常又は荷重センサ
22の断線異常が検出された場合に、その断線異常が発
生していると判断するようになっている。
【0054】次に、本実施の形態の動作を説明する。即
ち、エンジンシェイク発生時には、オリフィス5bの流
路形状等を適宜選定している結果、この能動型エンジン
マウント1は高動バネ定数,高減衰力の支持装置として
機能するため、パワーユニット30で発生したエンジン
シェイクが能動型エンジンマウント1によって減衰さ
れ、車体35側の振動レベルが低減される。なお、エン
ジンシェイクに対しては、特に磁路部材12を積極的に
変位させる必要はない。
【0055】一方、オリフィス5b内の流体がスティッ
ク状態となり流体室15及び副流体室16間での流体の
移動が不可能になるアイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bに駆動信号yを出力し、能動型エンジンマウ
ント1に、車体35側の振動を低減し得る能動的な支持
力を発生させる。
【0056】ここで、この能動型エンジンマウント1を
力学的モデルで考えると、パワーユニット30及び車体
35間に支持弾性体6の支持バネと拡張バネとが並列に
介在し、電磁アクチュエータ10の電磁力が、板バネ1
1と、流体室15内の流体とを介して、拡張バネに伝達
するようになっている。より具体的には、永久磁石10
Cの磁力によって磁路部材12が所定のオフセット位置
に変位し、励磁コイル10Bによって発生する電磁力が
その永久磁石10Cの磁力を増大又は減少させるように
作用するから、板バネ11によって弾性支持された磁路
部材12は、そのオフセット位置を中心に、駆動信号y
の周波数及び振幅に応じて正負両方向に変位することに
なる。すると、流体室15の容積が正負両方向に変動
し、その容積変動が支持弾性体6の拡張バネに作用して
内筒3及び外筒7間に能動的な制御力が発生するのであ
る。
【0057】そして、能動型エンジンマウント1に対す
る駆動信号yは、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数Wi であり、適応ディジタルフィルタWは、能動型
エンジンマウント1に加わる荷重である残留振動信号e
に基づき上記(1)式に従って更新されるようになって
いるため、制御を開始してからある程度の時間が経過し
てフィルタ係数Wi が最適値に収束若しくは最適値に十
分近づけば、パワーユニット30側から能動型エンジン
マウント1を通じて車体35側に伝達される振動が、そ
の能動型エンジンマウント1で発生する能動的な支持力
によって打ち消されるようなり、その能動型エンジンマ
ウント1配設位置近傍の車体35側の振動レベルの低減
が図られる。
【0058】以上は車両走行時等に実行される振動低減
処理の動作である。その一方、例えば車両が出荷される
前の製造ラインの最終工程や、定期点検時において、作
業者が同定処理開始スイッチ28を操作すると、図3に
示すような伝達関数Cの同定処理が実行される。
【0059】即ち、伝達関数Cの同定処理が開始される
と、先ずそのステップ101において、同定信号の周波
数f0 を、同定処理を実行する必要がある振動低減制御
を実行する周波数帯域(fmin 〜fmax )のうちの最低
値fmin (例えば、10Hz)に設定する。
【0060】次いで、ステップ102に移行し、同定信
号として、周波数f0 の正弦波を能動型エンジンマウン
ト1に供給する。すると、能動型エンジンマウント1内
の電磁アクチュエータ10が同定信号によって駆動して
同定振動が発生し、かかる同定振動は各部材を伝搬し
て、能動型エンジンマウント1内の荷重センサ22に達
する。
【0061】そこで、ステップ103に移行し、残留振
動信号eを読み込み、次いで、ステップ104に移行
し、十分な個数の残留振動信号eを読み込んだか否かを
判定する。なお、残留振動信号eの十分な個数として設
定される値は、伝達関数Cがインパルス応答として求め
られることから、そのインパルス応答が充分に減衰する
のに必要な時間を、サンプリング・クロックで割った値
以上であればよい。ただし、時系列として取り込んだ残
留振動信号eに対して後にFFT演算を行うことから、
その残留振動信号eの取り込み個数は、2の巾乗とする
ことが望ましいこと、及び、残留振動信号eを極めて大
量に読み込んでしまうと、その読み込み時間が長くなる
し、FFT演算に要する時間も長くなるという不具合も
あるため、残留振動信号eの十分な個数として設定され
る値は、インパルス応答が充分に減衰するのに必要な時
間をサンプリング・クロックで割った場合の数を越える
2の巾乗の数値のうちの、最小値とすることが望まし
い。例えば、サンプリング・クロックが2msecであっ
て、インパルス応答が充分に減衰する時間が0.2sec
であれば、0.2sec /2msec=100となるから、ス
テップ104に設定する値は128となる。
【0062】ステップ104の判定が「NO」の場合に
は、上記ステップ102に戻って、同定信号の出力処理
(ステップ102)及び残留振動信号eの読み込み処理
(ステップ103)を繰り返し実行する。
【0063】そして、ステップ104の判定が「YE
S」となったら、ステップ105に移行する。なお、ス
テップ103で次々と読み込まれた残留振動信号eは、
周波数f0 に対応した時系列データとして記憶される。
【0064】ステップ105では、能動型エンジンマウ
ント1に異常が発生していないか、能動型エンジンマウ
ント1内の電磁アクチュエータ10に断線異常が発生し
ているか、能動型エンジンマウント1内の荷重センサ2
2に断線異常が発生しているか、を判断するための異常
検出処理が実行されるようになっており、この異常検出
処理において異常が検出された場合には、異常が検出さ
れた事実並びに異常発生部位を作業者に認識させるため
の処理を実行した後に、伝達関数同定処理を中断する。
しかし、ステップ105で異常が検出されなかった場合
には、この図3の処理に復帰してステップ106以降の
処理が逐次実行されることになる。
【0065】ステップ105の処理の内容は後に詳述す
ることとし、ここでは取り敢えずステップ105で異常
は検出されなかったものとして、ステップ106以降の
処理が実行された場合の動作を説明する。
【0066】ステップ106では、現在の周波数f0
増加分Δfを加えることにより、新たな周波数f0 を演
算し、次いで、ステップ107に移行し、新たな周波数
0が、同定処理を行う周波数の最大値fmax (例え
ば、150Hz)を越えているか否かを判定する。
【0067】このステップ107の判定が「NO」の場
合には、上記ステップ102に戻って上述した処理を再
び実行する。このため、ステップ102〜106の一連
の処理は、ステップ107の判定が「YES」となるま
で実行される。
【0068】つまり、ステップ102、103の処理
は、最小値fmin 〜最大値fmax の範囲で増加分Δf
(例えば、10Hz)ずつ変化する周波数f0 毎に実行さ
れるようになっているから、ステップ107の処理が
「YES」となった時点では、ステップ103の処理に
よって時系列データとして記憶される残留振動信号e
は、周波数f0 の種類と同じ数だけ記憶されていること
になる。
【0069】そこで、ステップ107の判定が「YE
S」となったら、ステップ108に移行し、周波数f0
毎に記憶されている残留振動信号eの時系列データのそ
れぞれについてFFT演算を行って、各時系列データの
周波数成分を抽出する。
【0070】ただし、ここで必要なのは、各時系列デー
タ毎の全周波数の成分ではなく、対応する周波数f0
よって決まる元の正弦波の周波数に相当する成分だけで
あるから、ステップ108では、各時系列に対して厳密
なFFT演算を行うのではなく、各時系列に対応する周
波数f0 の成分を求めるのに足りる演算だけを行えばよ
い。
【0071】次いで、ステップ109に移行し、各周波
数成分を合成したものを逆FFT演算し、時間軸上のイ
ンパルス応答に変換し、次いでステップ110に移行
し、ステップ109で求めたインパルス応答を新たな伝
達関数フィルタC^として記憶する。伝達関数フィルタ
C^の記憶が完了したら、今回の伝達関数Cの同定処理
を終了する。
【0072】このように、本実施の形態であれば、車両
に搭載された後の任意のタイミングで伝達関数Cを同定
し、その同定された伝達関数Cで伝達関数フィルタC^
を置換するようになっているから、実験室で求めた伝達
関数Cを全車両に適用する場合に比べて、高精度の伝達
関数フィルタC^が振動低減制御に用いられることにな
るし、定期点検毎に伝達関数Cを同定すれば各部品の経
時変化等による振動伝達系の変化にも対応できるから、
良好な振動低減制御が実行できるのである。
【0073】一方、図3のステップ105の異常検出処
理が開始されると、図4に示すように、先ずステップ2
01に移行して、現在の周波数f0 として記憶されてい
る残留振動信号eの時系列データから、その残留振動信
号eの振幅(最大値)を検索し、それを振幅Ae として
記憶する。
【0074】次いで、ステップ202に移行し、振幅A
e としきい値eth1 とを比較し、振幅Ae がしきい値e
th1 以上の場合には、特に能動型エンジンマウント1に
異常は検出されなかったと判断し、ステップ203に移
行し、フラグF1 及びF2 の両方を1にセットして、今
回のこの図4の処理を終了する。なお、フラグF1 及び
2 は、同定処理開始スイッチ28が操作されたタイミ
ングで初期化されて0にセットされるフラグである。
【0075】これに対し、ステップ202で、振幅Ae
がしきい値eth1 未満であると判定された場合には、能
動型エンジンマウント1に異常が発生している可能性が
あると判断し、ステップ204に移行する。なお、しき
い値eth1 は、正常であることが確実な能動型エンジン
マウント1に駆動信号yを出力した場合に取り込まれる
残留振動信号eの振幅と、能動型エンジンマウント1の
荷重センサ22にわざと断線異常を発生させた状態で駆
動信号yを出力した場合に取り込まれる残留振動信号e
の振幅とを区別するためのしきい値であって、実験等を
行って適宜選定されるものである。
【0076】ステップ202からステップ204に移行
したら、今度は、振幅Ae としきい値eth2 とを比較
し、振幅Ae がしきい値eth2 以上の場合には、荷重セ
ンサ22に断線異常が発生している可能性があると判断
し、ステップ205に移行する一方、ステップ204で
振幅Ae がしきい値eth2 未満であると判定された場合
には、電磁アクチュエータ10に断線異常が発生してい
る可能性があると判断し、ステップ206に移行する。
ここで、しきい値eth2 は、電磁アクチュエータ10に
わざと断線異常を発生させた状態で駆動信号yを出力し
た場合に取り込まれる残留振動信号eの振幅と、荷重セ
ンサ22にわざと断線異常を発生させた状態で駆動信号
yを出力した場合に取り込まれる残留振動信号eの振幅
とを、区別するためのしきい値であって、しきい値e
th1 と同様、実験等を行って適宜選定されるものであ
る。
【0077】つまり、荷重センサ22に断線異常が発生
した場合には、荷重センサ22とコントローラ25とを
接続するハーネス23bがオープンになり、そのハーネ
ス23bにノイズが混入し易くなる。特に、ハーネス2
3bは、取り扱い上の都合からハーネス23aと一緒に
束ねられるのが通常であるため、そのハーネス23bに
は、ハーネス23aに供給される駆動信号yの影響によ
って、比較的大きなノイズ信号が現れる。これに対し、
ハーネス23aがオープンになっていると、ハーネス2
3bにノイズが混入し易い訳ではないし、そもそも電磁
アクチュエータ10自体に電磁力が発生せず制御振動が
発生しないのであるから、ハーネス23bには極小さな
ノイズ成分が現れるだけある。よって、しきい値eth2
を適宜選定することにより、上記のような二つの断線異
常を区別することが可能になるのである。
【0078】そして、ステップ204からステップ20
5に移行した場合には、フラグF1を1にセットする一
方、ステップ206に移行した場合には、フラグF2
1にセットする。
【0079】さらに、ステップ205又は206からス
テップ207に移行し、現在の周波数f0 に増加分Δf
を加えた周波数(f0 +Δf)が、同定処理を行う周波
数の最大値fmax を超えているか否かを判定し、超えて
いない場合には、これで今回のこの図4の処理を終了し
図3に処理に復帰するが、超えている場合には、ステッ
プ208に移行し、フラグF1 及びF2 の両方が1にセ
ットされているか否かを判定する。このステップ208
の判定が「YES」の場合には、特に異常は検出されな
かったものと判断し、図3の処理に復帰する。
【0080】しかし、ステップ208の判定が「NO」
の場合、つまりフラグF1 又はF2のいずれかが0のま
まの場合には、ステップ209に移行し、フラグF1
0であるか否かを判定する。
【0081】ここで、図4の処理は、同定信号の各周波
数毎に実行されるのであるが、二つのしきい値eth1
びeth2 を上記のように設定しているため、荷重センサ
22に断線異常が発生している場合には、同定信号の全
ての周波数に対する図4の処理においてステップ202
の判定が「NO」で且つステップ204の判定が「YE
S」となる。これに対し、電磁アクチュエータ10に断
線異常が発生している場合には、同定信号の全ての周波
数に対する図4の処理においてステップ202の判定が
「NO」で且つステップ204の判定が「NO」とな
る。
【0082】そして、常にステップ202の判定が「N
O」で且つステップ204の判定が「YES」となった
場合には、フラグF2 だけが0のままであり、常にステ
ップ202の判定が「NO」で且つステップ204の判
定が「NO」となった場合には、フラグF1 だけが0の
ままである。従って、ステップ207で「YES」と判
定された時点で、F1 =0の場合には、電磁アクチュエ
ータ10に断線異常が発生していると判断でき、F2
0の場合には、荷重センサ22に断線異常が発生してい
ると判断できるのである。
【0083】つまり、残留振動信号eとしきい値
th1 ,eth2 との関係の一例を表す波形図である図5
に示すように、振幅Ae がしきい値eth1 よりも大きい
残留振動信号eと、振幅Ae ' がしきい値eth1 よりも
小さい残留振動信号e' とを区別することにより、取り
敢えず能動型エンジンマウント1に異常が発生している
か否かを判断することができるのであるが、その振幅A
e ' としきい値eth2 との大小関係をも判断すれば、異
常発生部位をある程度の確率で特定することも可能にな
るのである。
【0084】そこで、ステップ209の判定が「YE
S」の場合には、電磁アクチュエータ10に断線異常が
発生していると判断し、ステップ210に移行してその
旨を表示して、作業者に認識させる。これに対し、ステ
ップ209の判定が「NO」の場合にには、荷重センサ
22に断線異常が発生していると判断し、ステップ21
1に移行してその旨を表示して、作業者に認識させる。
【0085】ステップ210又は211の処理を終えた
ら、図3の処理に戻ることなく、伝達関数Cの同定処理
を中断する。かかる場合、作業者は、認識した異常発生
の事実及びその異常発生部位に基づいて、配線の確認、
部品交換、修理等の対処を行う。
【0086】このように、本実施の形態であれば、能動
型エンジンマウント1に異常が発生したか否かを判断す
るだけではなく、異常発生部位を電磁アクチュエータ1
0及び荷重センサ22のいずれなのかを区別することが
できから、作業者が適切な対処を行うのにとって、極め
て便利である。
【0087】しかも、その異常判断処理も図4に示した
ような簡易な比較処理で済むから、コントローラ25の
演算負荷が大幅に増大するようなこともない。そして、
異常の発生を判断するための処理を、図3に示す伝達関
数Cの同定処理の実行中に併せて実行するようにしてい
るから、同定信号を出力する処理や残留振動信号を取り
込む処理を兼用することができるという利点もある。
【0088】さらに、上記実施の形態では、同定信号の
各周波数毎に実行される異常検出処理の全てにおいて、
電磁アクチュエータ10の断線異常又は荷重センサ22
の断線異常が検出された場合に、最終的に断線異常であ
ると判断するようにしているから、実際には断線異常は
発生していないのにそれを誤検出する可能性を低くでき
るという利点もある。
【0089】ここで、上記実施の形態では、エンジン3
0が振動源に対応し、能動型エンジンマウント1のうち
荷重センサ22を除いた部分が制御振動源に対応し、パ
ルス信号生成器26が基準信号生成手段に対応し、荷重
センサ22が残留振動検出手段に対応し、同期式Fil
tered−X LMSアルゴリズムが制御アルゴリズ
ムに対応し、コントローラ25内において駆動信号yを
生成し出力する処理が能動制御手段に対応し、図4の処
理が異常判断手段に対応し、図3のステップ101〜1
04,106〜110の処理が伝達関数同定手段に対応
する。
【0090】なお、上記実施の形態では、同定信号の振
幅については言及していないが、各周波数毎の予想され
るゲイン特性に基づき、例えば、ゲイン特性が小さい周
波数については同定信号の振幅を大きく、ゲイン特性が
大きい周波数については同定信号の振幅を小さく、とい
う具合に同定信号の振幅を周波数に応じて可変としても
よい。しかし、荷重センサ22に断線異常が発生した場
合、ハーネス23bに誘導されるノイズの原因は主とし
てハーネス23aに供給される同定信号であるから、上
記のように同定信号の振幅を周波数に応じて可変として
場合には、しきい値eth2 の大きさも同定信号の振幅に
応じて可変とすることが望ましい。つまり、同定信号の
振幅が小さいときには、荷重センサ22の断線異常時に
ハーネス23bに誘導されるノイズ成分の振幅も小さい
ため、図6(a)に示すようにしきい値eth2 は比較的
小さくし、逆に、同定信号の振幅が大きいときには、荷
重センサ22の断線異常時にハーネス23bに誘導され
るノイズ成分の振幅も大きいため、図6(b)に示すよ
うにしきい値eth2 は比較的大きくする。
【0091】また、上記実施の形態では、伝達関数Cの
同定処理と並行に異常検出処理を実行するようにしてい
るが、これに限定されるものではなく、各処理を別々に
実行するようにしてもよい。そして、異常検出処理を単
独で実行する場合、上記実施の形態のように複数の周波
数毎に異常を判断するようにしてもよいし、特定の周波
数についてのみ異常を判断するようにしてもよい。後者
の場合、異常が発生していなければゲイン特性が最も大
きいと予想される周波数の正弦波を用いて、異常を判断
することが、異常発生の誤検出や見逃しの可能性を低減
するためにも、望ましい。
【0092】そして、上記実施の形態では、エンジン3
0から車体35に伝達される振動を低減する車両用の能
動型振動制御装置として本発明を説明したが、これに限
定されるものではなく、例えば騒音源としてのエンジン
30から車室内に伝達される騒音を低減する能動型騒音
制御装置であってもよい。かかる能動型騒音制御装置と
する場合には、車室内に制御音を発生するための制御音
源としてのラウドスピーカと、車室内の残留騒音を検出
する残留騒音検出手段としてのマイクロフォンとを設
け、上記各実施の形態と同様の演算処理によって得られ
る駆動信号yに応じてラウドスピーカを駆動させるとと
もに、マイクロフォンの出力を残留騒音信号eとして適
応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi の更新処
理に用いればよい。
【0093】さらに、本発明の適用対象は車両に限定さ
れるものではなく、エンジン30以外で発生する周期的
な振動や騒音を低減するための能動型振動制御装置,能
動型騒音制御装置や、非周期的な振動や騒音(ランダム
・ノイズ)を低減するための能動型振動制御装置,能動
型騒音制御装置であっても本発明は適用可能であり、適
用対象に関係なく上記実施の形態と同等の作用効果を奏
することができる。例えば、工作機械からフロアや室内
に伝達される振動や騒音を低減する装置等であっても、
本発明は適用可能である。
【0094】また、上記各実施の形態では、適応アルゴ
リズムとして同期式Filtered−X LMSアル
ゴリズムを適用した場合について説明したが、適用可能
な適応アルゴリズムはこれに限定されるものではなく、
例えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリ
ズム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成を示す車両の概
略側面図である。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】伝達関数の同定処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図4】異常検出処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図5】残留振動信号eとしきい値eth1 ,eth2 との
関係の一例を示す図である。
【図6】しきい値eth2 を可変とした場合を説明する図
である。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント 10 電磁アクチュエータ 22 荷重センサ(残留振動検出手段) 25 コントローラ(能動制御手段) 26 パルス信号生成器(基準信号生成手
段) 30 エンジン(振動源)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // B60K 5/12 G10K 11/16 H

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動の発生状態
    を表す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、
    前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する
    残留振動検出手段と、前記基準信号及び前記残留振動信
    号に基づき所定の制御アルゴリズムに従って前記干渉後
    の振動が低減するように前記制御振動源を駆動する能動
    制御手段と、を備えた能動型振動制御装置において、 前記制御振動源を駆動させたときの前記残留振動信号に
    基づいて異常の発生を判断する異常判断手段を設けると
    ともに、 前記異常判断手段は、大きさの異なる複数のしきい値を
    有していて、前記残留振動信号と前記複数のしきい値と
    に基づいて異常が発生している部位を判断するようにな
    っていることを特徴とする能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記異常判断手段は、第1のしきい値
    と、この第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値と
    を有していて、前記残留振動信号が前記第1のしきい値
    と前記第2のしきい値との間にある場合には、前記残留
    振動検出手段に異常が発生したと判断し、前記残留振動
    信号が前記第2のしきい値よりも小さい場合には、前記
    制御振動源に異常が発生したと判断するようになってい
    る請求項1記載の能動型振動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記制御振動源及び前記残留振動検出手
    段間の伝達関数を同定する伝達関数同定手段を備え、前
    記異常判断手段は、前記伝達関数同定手段が前記伝達関
    数の同定処理を実行しているときに、前記判断を行うよ
    うになっている請求項1又は請求項2記載の能動型振動
    制御装置。
  4. 【請求項4】 騒音源から発せられる騒音と干渉する制
    御音を発生可能な制御音源と、前記騒音の発生状態を表
    す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、前記
    干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留
    騒音検出手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号に
    基づき所定の制御アルゴリズムに従って前記干渉後の騒
    音が低減するように前記制御音源を駆動する能動制御手
    段と、 を備えた能動型騒音制御装置において、 前記制御音源を駆動させたときの前記残留騒音信号に基
    づいて異常の発生を判断する異常判断手段を設けるとと
    もに、 前記異常判断手段は、大きさの異なる複数のしきい値を
    有していて、前記残留騒音信号と前記複数のしきい値と
    に基づいて異常が発生している部位を判断するようにな
    っていることを特徴とする能動型騒音制御装置。
  5. 【請求項5】 前記異常判断手段は、第1のしきい値
    と、この第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値と
    を有していて、前記残留騒音信号が前記第1のしきい値
    と前記第2のしきい値との間にある場合には、前記残留
    騒音検出手段に異常が発生したと判断し、前記残留騒音
    信号が前記第2のしきい値よりも小さい場合には、前記
    制御音源に異常が発生したと判断するようになっている
    請求項4記載の能動型騒音制御装置。
  6. 【請求項6】 前記制御音源及び前記残留騒音検出手段
    間の伝達関数を同定する伝達関数同定手段を備え、前記
    異常判断手段は、前記伝達関数同定手段が前記伝達関数
    の同定処理を実行しているときに、前記判断を行うよう
    になっている請求項4又は請求項5記載の能動型騒音制
    御装置。
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