JPH1113828A - 能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置

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JPH1113828A
JPH1113828A JP16852997A JP16852997A JPH1113828A JP H1113828 A JPH1113828 A JP H1113828A JP 16852997 A JP16852997 A JP 16852997A JP 16852997 A JP16852997 A JP 16852997A JP H1113828 A JPH1113828 A JP H1113828A
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JP
Japan
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vibration
control
signal
supply voltage
power supply
Prior art date
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Pending
Application number
JP16852997A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Kawazoe
寛 川添
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】駆動信号を駆動電流信号に変換する際に利用さ
れる電源電圧値が低下することに伴って生じる、振動低
減制御が発散する可能性を低減する。 【解決手段】電源電圧値Vgが、駆動信号yに応じた駆
動電流信号Iに変換することが可能な有効な電圧値であ
るときには、基準の発散抑制値係数β* が設定されたフ
ィルタ係数の更新式に基づいて、フィルタ係数を更新す
る。電源電圧値Vgが有効な電圧値でない場合には、発
散抑制係数βを、基準の発散抑制係数β*よりも大きい
値に更新し、更新したフィルタ係数の更新式に基づいて
フィルタ係数を更新しこれに基づき駆動信号yを生成す
る。発散抑制係数βはその値が大きくなるほど振動低減
制御を安定化させるように作用するから、発散抑制係数
βをより大きな値に設定することによって、電源電圧値
Vgが低下することに伴って振動低減制御が発散する可
能性が低減されることになる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両エンジン等
の振動源で発生する振動に、振動源及び支持体間に介在
する制御振動源が発生する制御振動を干渉させることに
より、支持体側に伝達される振動の低減を図るようにし
た能動型振動制御装置に関し、特に、制御振動源を駆動
させるための制御アルゴリズムが、制御振動源と残留振
動を検出する手段との間の伝達関数を含むものにおい
て、電源電圧の変化に伴い、前記制御振動源が発生する
制御振動の精度が低下することに対して対処できるよう
にしたものである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、本出願人
が先に提案した特開平5−61483号公報に開示され
たものがある。
【0003】すなわち、かかる公報記載の従来技術は、
LMSアルゴリズム等の適応アルゴリズムを利用した能
動型騒音制御装置に関するものであり、より具体的に
は、適応アルゴリズムにおける評価関数として、低減対
象の騒音及び制御音の干渉結果である残留騒音信号の自
乗値と、制御音を発するラウドスピーカへの駆動信号の
自乗値との和を用いた能動型騒音制御装置に関するもの
である。
【0004】そして、上記公報に記載された従来の能動
型騒音制御装置にあっては、評価関数に含まれる駆動信
号の自乗値に掛けられる係数(上記公報内では、努力係
数と称している。)を、制御の発散が進行するに従っ
て、発散を抑制する方向(フィルタ係数を小さくする方
向)に変更するようになっており、これにより、音響伝
達関数が変化したような場合でも制御の発散を有効に抑
制できるから、制御が本格的な発散に至ることを回避で
きて、例えば車両に適用した場合には乗員等に不快感を
与えないで済む、というものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上述したよう
な先行技術によれば、能動型騒音又は振動制御装置や、
能動型騒音又は振動制御装置を適用した対象装置毎に、
制御に必要な伝達関数を同定することは可能であるか
ら、高精度の騒音又は振動の低減制御等が期待できる。
【0006】ここで、例えば、電磁アクチュエータ等を
駆動することにより、制御振動を発生させるようにした
能動型振動制御装置等の場合、電源電圧を利用して、例
えば演算装置で算出した制御信号を、これに応じた電流
値からなる駆動信号に変換して電磁アクチュエータに供
給するようになっている。そのため、何らかによって電
源電圧が低下した場合、この電源電圧に基づいて生成さ
れる駆動信号の最大値も低下してしまうことになるか
ら、駆動信号として出力可能な範囲が狭くなってしま
い、制御信号に応じた駆動信号を出力することができな
い。
【0007】よって、例えば制御信号として正弦波状の
信号が生成された場合には、本来ならば制御信号に応じ
た正弦波状の駆動信号に変換されるはずであるが、電源
電圧が低下すると、例えば図7に一点鎖線で示すよう
に、駆動信号Iのとり得る範囲が狭くなることから、正
弦波の振幅が最大となる付近でその影響をうけることに
なって、正弦波状の駆動信号ではあるがその振幅が最大
となる付近で頭打ちされた状態となった歪んだ駆動信号
となってしまう。
【0008】つまり、不要な高調波成分が入り込んだこ
とと同じことになり、このような駆動信号Iに応じて電
磁アクチュエータを作動させても、期待される振動低減
効果を得ることができず、振動低減処理の精度が低下す
ることになって、制御が発散に至る可能性が出てくる。
【0009】そこで、この発明は、上記従来の未解決の
問題に着目してなされたものであり、電源電圧の変化に
伴う、振動低減制御の制御精度の低下を低減することの
可能な能動型振動制御装置を提供することを目的として
いる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る能動型振動制御装置は、振動源から
発せられる振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振
動源と、前記振動の発生状態を表す基準信号を生成し出
力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し
残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、フィ
ルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信
号及び前記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前
記残留振動検出手段間の振動の伝達系の伝達特性に応じ
た更新式に従って、前記適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段と、前記基準
信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して
前記制御振動源を制御するための制御信号を生成する能
動制御手段と、供給される電源電圧を利用して前記制御
信号を前記制御振動源への駆動信号に変換し出力する駆
動手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記
電源電圧を監視する電源電圧監視手段と、当該電源電圧
監視手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを検出
したとき、前記フィルタ係数の更新式を補正する補正手
段と、を備えることを特徴としている。
【0011】この発明によれば、振動の発生状態を表す
基準信号を適応ディジタルフィルタでフィルタ処理した
制御信号に応じて制御振動源が駆動され、これによって
制御振動源から発生された制御振動と振動源から発せら
れる振動とが干渉し、振動が低減される。前記適応ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数は、制御振動源と残留振
動検出手段との間の伝達系の伝達特性に応じた更新式に
したがって、干渉後の振動を検出した残留振動信号と基
準信号とに基づいて、フィルタ係数更新手段によって更
新される。この時、能動制御手段で生成された制御信号
は、供給される電源電圧を利用して、例えば電流信号
等、制御振動源に適した駆動信号に変換されて制御振動
源に供給される。
【0012】また、供給される電源電圧は、電源電圧監
視手段によってその電源電圧値が監視され、電源電圧値
が所定の電源電圧値よりも低下した場合には、適応ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数が、補正手段によって補
正される。
【0013】ここで、制御振動源に供給される駆動信号
は、供給される電源電圧を例えば変圧し、変圧後の電圧
値に応じた電流値を得ること等によって、駆動信号に変
換されるため、例えば電源電圧が低下した場合、電圧値
としてとり得る最大値が低下することから、これに応じ
て得られる電流値からなる駆動信号の最大値も低下する
ことになる。このため、例えば、正弦波状の制御信号の
場合等には、本来ならば正弦波状の駆動信号に変換され
るところが、正弦波の振幅が最大となる付近では、駆動
信号の最大値を越えてしまうため、歪んだ駆動信号とな
ってしまう。
【0014】これは、不要な高調波成分が入り込んだこ
とと同じことになって、このような駆動信号に応じて制
御振動源が作動するから、期待される制御振動を得るこ
とができず、振動低減制御精度が低下することになる。
【0015】しかしながら、電源電圧監視手段で電源電
圧の低下を検出した場合には、補正手段によって、フィ
ルタ係数を補正するようにしたから、フィルタ係数を、
例えば制御がより安定する方向に補正することによっ
て、制御が発散に至る可能性が低減される。
【0016】また、本発明の請求項2に係る能動型振動
制御装置は、前記フィルタ係数更新手段は、前記制御信
号が大きくなるに従って前記適応ディジタルフィルタの
フィルタ係数を小さくするように作用する発散抑制項を
含む更新式を用いて、前記適応ディジタルフィルタのフ
ィルタ係数を更新し、前記補正手段は、前記電源電圧監
視手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを検出し
たとき、少なくとも前記更新式の前記発散抑制項の影響
度合いを大きくするようになっていることを特徴として
いる。
【0017】この発明によれば、フィルタ係数更新手段
では、制御信号が大きくなるにしたがって適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数を小さくするように作用する
発散抑制項を含む更新式を用いて、フィルタ係数を更新
するようになっている。そして、電源電圧監視手段で、
電源電圧が所定値よりも低いことを検出した場合には、
更新式の発散抑制項の影響度合いが大きくなるように補
正手段によって変更される。
【0018】よって、電源電圧の低下が生じると、制御
信号に応じた制御振動が発生されなくなって制御が発散
に至る可能性がでてくるが、電源電圧の低下が検出され
ると発散抑制項は、制御を安定化させる方向に補正され
るから、制御が発散に至る可能性が低減される。
【0019】さらに、本発明の請求項3に係る能動型振
動制御装置は、振動源から発せられる振動と干渉する制
御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動の発生状態
を表す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、
前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する
残留振動検出手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタ
ルフィルタと、前記基準信号及び前記残留振動信号に基
づき前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の振動
の伝達系の伝達特性に応じた更新式に従って、前記適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ
係数更新手段と、前記基準信号を前記適応ディジタルフ
ィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を制御するた
めの制御信号を生成する能動制御手段と、供給される電
源電圧を利用して前記制御信号を前記制御振動源への駆
動信号に変換し出力する駆動手段と、前記適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数と所定のしきい値とを比較す
ることにより制御が発散したことを検出する発散検出手
段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記電源
電圧を監視する電源電圧監視手段と、当該電源電圧監視
手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを検出した
とき、前記しきい値を縮小方向に変更するしきい値更新
手段と、を備えることを特徴としている。
【0020】この発明によれば、振動の発生状態を表す
基準信号を適応ディジタルフィルタでフィルタ処理した
制御信号に応じて制御振動源が駆動され、これによって
制御振動源から発生された制御振動と振動源から発せら
れる振動とが干渉し、振動が低減される。前記適応ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数は、制御振動源と残留振
動検出手段との間の伝達系の伝達特性に応じた更新式に
したがって、干渉後の振動を検出した残留振動信号と基
準信号とに基づいて、フィルタ係数更新手段によって更
新される。この時、能動制御手段で生成された制御信号
は、供給される電源電圧を利用して、例えば電流信号
等、制御振動源に適した駆動信号に変換されて制御振動
源に供給される。
【0021】このとき、フィルタ係数更新手段によって
更新される適応デジタルフィルタのフィルタ係数と、例
えば予め設定した値等、所定のしきい値とを比較する事
などによって、発散検出手段によって制御が発散したか
否かが検出され、制御が発散したことが検出された場合
には、例えば制御を中止する或いは制御信号を所定の規
制値に抑制する等が行われて制御が発散することが回避
される。そして、電源電圧監視手段で電源電圧が所定値
よりも低いことが検出された場合には、発散検出手段の
しきい値が縮小方向に変更される。
【0022】ここで、制御振動源に供給される駆動信号
は、供給される電源電圧を例えば変圧し、変圧後の電圧
値に応じた電流値を得ること等によって、駆動信号に変
換されるため、例えば電源電圧が低下した場合、電圧値
としてとり得る最大値が低下することから、これに応じ
て得られる電流値からなる駆動信号の最大値も低下する
ことになる。このため、例えば、正弦波状の制御信号の
場合等には、本来ならば正弦波状の駆動信号に変換され
るところが、正弦波の振幅が最大となる付近では、駆動
信号の最大値を越えてしまうため、歪んだ駆動信号とな
ってしまう。
【0023】これは、不要な高調波成分が入り込んだこ
とと同じことになって、このような駆動信号に応じて制
御振動源が作動するから、期待される制御振動を得るこ
とができず、振動低減制御精度が低下することになる。
【0024】しかしながら、電源電圧監視手段で電源電
圧の低下を検出した場合には、しきい値更新手段によっ
て、発散検出手段で発散の判定を行うしきい値を縮小方
向に変更するようにしたから、発散したと検出されるよ
りも前の段階、つまり、発散に至る可能性があることが
検出された時点で発散として検出されるから、制御が発
散に至る可能性が低減される。
【0025】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る能動型振動制御
装置によれば、電源電圧値が所定の電源電圧値よりも低
下した場合には、適応ディジタルフィルタのフィルタ係
数を補正手段によって補正するようにしたから、フィル
タ係数を、制御がより安定する方向に補正することによ
って、電源電圧値が低下することに伴って振動低減制御
が発散に至る可能性を低減することができる。
【0026】また、本発明の請求項2に係る能動型振動
制御装置によれば、制御信号が大きくなるにしたがって
適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を小さくするよ
うに作用する発散抑制項を含む更新式を用いてフィルタ
係数を更新するようになっている場合、電源電圧監視手
段で、電源電圧が所定値よりも低いことを検出したとき
には、更新式の発散抑制項の影響度合いが大きくなるよ
うに補正するようにしたから、制御を安定化させる方向
に補正されることになる。よって、電源電圧の低下に伴
って制御が発散に至る可能性が低減される。
【0027】さらに、本発明の請求項3に係る能動型振
動制御装置によれば、適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数と所定のしきい値とを比較することにより制御が
発散したことを検出する発散検出手段を備える場合、前
記電源電圧監視手段で前記電源電圧が所定値よりも低い
ことを検出したときには、しきい値を縮小方向に変更す
るようにしたから、より早い時点で発散傾向にあること
が検出されるため、この時点で対処することによって、
制御が発散に至る可能性が低減される。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図6は、本発明の第1
の実施の形態を示す図であって、図1は、本発明に係る
能動型振動制御装置の実施の形態の一例を、車両に適用
した概略構成図である。
【0029】まず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0030】前記能動型エンジンマウント1は、例えば
図2に示すように構成されている。すなわち、この実施
の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジン
30への取り付け用ボルト2aを上部に一体に備え且つ
内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、このキ
ャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3の
上端部がかしめ止めされている。
【0031】内筒3は、下端側が縮径した形状となって
いて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、ここ
に円形の開口部3aが形成されている。そして、内筒3
の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上下に
二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止め部
分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設されてい
る。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の側面
に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0032】さらに、内筒3の内側には、オリフィス構
成体5が配設されている。なお、本実施の形態では、内
筒3内面及びオリフィス構成体5間には、薄膜状の弾性
体(ダイアフラム4の外周部を延長させたものでもよ
い)が介在していて、これにより、オリフィス構成体5
は内筒3内側に強固に嵌め込まれている。
【0033】このオリフィス構成体5は、内筒3の内部
空間に整合して略円柱形に形成されていて、その上面に
は円形の凹部5aが形成されている。そして、その凹部
5aと、底面の開口部3aに対向する部分との間が、オ
リフィス5bを介して連通するようになっている。オリ
フィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の外周面に
沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を凹部5a
に連通させる流路と、その溝の他端部を開口部3aに連
通させる流路とで構成される。
【0034】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した円筒部材としての外筒7の内周面
上部に加硫接着されている。
【0035】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取り付け用の取り付けボルト9が突
出している。取り付けボルト9は、その頭部9aが、ア
クチュエータケース8の内底面に張り付いた状態で配設
された平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されてい
る。
【0036】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0037】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。
【0038】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11と、をこの
順序で重ね合わせると共に、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0039】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0040】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
主流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5a
によって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら主流体室15及び副流体室16間が、オリフ
ィス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通
している。なお、これら主流体室15,副流体室16及
びオリフィス5b内には、エチレングリコール等の流体
が封入されている。
【0041】かかるオリフィス5bの流路形状等で決ま
る流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェ
イク発生時、つまり、5〜15Hzで能動型エンジンマ
ウント1が加振された場合に高動ばね定数,高減衰力を
示すように調整されている。
【0042】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される駆動電流信号Iに応じて所定の電磁力
を発生するようになっている。
【0043】前記コントローラ25は、マイクロコンピ
ュータ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D
/A変換器,アンプ等を含んで構成される演算部25a
と、演算部25aからの駆動信号yを、これに応じた駆
動電流信号Iに変換し励磁コイル10Bに供給する駆動
回路25bとから構成されている。そして、前記演算部
25aでは、エンジンシェイクよりも高周波の振動であ
るアイドル振動やこもり音振動・加速時振動が車体35
に入力されている場合には、その振動を低減できる能動
的な支持力が能動型エンジンマウント1に発生するよう
に、能動型エンジンマウント1に対する駆動信号yを生
成し、この駆動信号yが駆動回路25bによって、電流
信号である駆動電流信号Iに変換されて電磁アクチュエ
ータ10に供給されるようになっている。
【0044】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成しこれに応じて電磁アクチュエータ
10を駆動すれば、車体側低減が可能となる。そこで、
本実施の形態では、燃焼タイミングに同期するように、
エンジン30のクランク軸の回転に同期した(例えば、
レシプロ4気筒エンジンの場合には、クランク軸が18
0度回転する度に一つの)インパルス信号を生成しこれ
を基準信号xとして出力するパルス信号生成器26(図
1)を設けていて、その基準信号xがエンジン30にお
ける振動の発生状態を表す信号としてコントローラ25
の演算部25aに供給されるようになっている。
【0045】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0046】そして、コントローラ25の演算部25a
は、供給される残留振動信号e及び基準信号xに基づ
き、適応アルゴリズムの一つである同期式Filter
ed−X LMSアルゴリズムを実行することにより、
能動型エンジンマウント1に対する駆動信号yを演算
し、この駆動信号yを駆動回路25bに出力するように
なっている。
【0047】この駆動回路25bは、入力される駆動信
号yに応じてコントローラ25に供給される電源電圧を
変圧し、変圧した電圧に応じた電流値を得ることによっ
て、駆動信号yを、これに応じた電流値に変換し、これ
を駆動電流信号Iとして電磁アクチュエータ10に供給
するようになっている。
【0048】そして、演算部25aは、具体的には、フ
ィルタ係数Wi (i=0,1,2,……,IN −1:I
N はタップ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有し
ていて、最新の基準信号xが入力された時点から所定の
サンプリング・クロックの間隔で、その適応ディジタル
フィルタWのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとし
て出力する一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づ
いて適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適
宜更新する処理を実行するようになっている。
【0049】ただし、この実施の形態では、同期式Fi
ltered−X LMSアルゴリズムにおける評価関
数として、下記の(1)式を用いている。 Jm={e(n)}2 +β{y(n)}2 ……(1) つまり、LMSアルゴリズムにあっては、評価関数Jm
が小さくなる方向にフィルタ係数Wi が更新されるので
あるから、上記(1)式の右辺の内容からも明らかなよ
うに、フィルタ係数Wi は、残留振動信号eの自乗値が
小さくなると共に、駆動信号yの自乗値をβ倍した値が
小さくなるように、逐次更新されることになる。そし
て、βは発散抑制係数と称される係数であって、この発
散抑制係数βが大きくなる程、駆動信号yは小さくなる
傾向となる。つまり、発散抑制係数βには制御の発散を
抑制する作用がある。
【0050】そして、収束係数をαとし、上記(1)式
で表される評価関数Jmに基づいてフィルタ係数Wi
更新式を求めると、下記の(2)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)+2αRT e(n)−2βαy(n) ……(2) そこで、この(2)式中の「2α」を新たな収束係数α
とし、「2βα」を新たな発散抑制係数βとすれば、適
応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi の更新式は
下記の(3)式のようになる。
【0051】 Wi (n+1)=Wi (n)+αRT e(n)−βy(n) ……(3) ここで、(n),(n+1)が付く項は、サンプリング
時刻n,n+1,における値であることを表している。
また、更新用基準信号RT は、理論的には、基準信号x
を、能動型エンジンマウント1の電磁アクチュエータ1
0及び荷重センサ22間の伝達関数Cをモデル化した伝
達関数フィルタC^でフィルタ処理をした値であるが、
基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数フィ
ルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して次々
と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサンプリ
ング時刻nにおける和に一致する。
【0052】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0053】演算部25aは上記のような適応ディジタ
ルフィルタWを用いた振動低減処理内においては、駆動
信号yとして出力されるフィルタ係数Wi の交流成分が
所定の規制値WMAX を越えないように、全てのフィルタ
係数Wi の交流成分に同じ補正係数γ(0<γ≦1)を
乗じて一定比率でこれを縮小するというフィルタ係数調
整処理も実行するようになっている。
【0054】このようなフィルタ係数調整処理は、基本
的には、適宜更新されるフィルタ係数Wi をそのまま駆
動信号yとして出力する構成では、電磁アクチュエータ
10の特性や搭載しているバッテリの容量等で決まる出
力可能な上限値を駆動信号yが越えてしまった場合に、
上限値を越えた駆動信号yが強制的に上限値に修正され
てしまうのに対し、上限値を越えない駆動信号yはその
まま出力されるため、駆動信号yには実際には存在しな
い高調波成分が重畳されたことと等価になって振動低減
制御を劣化させる原因となるため、これを回避するため
のものである。前記規制値WMAX は、電磁アクチュエー
タ10の特性や搭載しているバッテリの容量等から決ま
る駆動信号yとして出力可能な範囲の最大値に設定され
ている。
【0055】さらに、前記演算部25aでは、上記振動
低減処理を実行する一方で、前記駆動回路25bにおい
て駆動信号yを駆動電流信号Iへの変換する際に利用し
ている電源電圧値Vgを監視し、電源電圧値Vgが予め
設定した電源電圧許容範囲内の値でない場合には、前記
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi の更新式
(3)において、発散抑制係数βを更新する、発散抑制
係数更新処理を実行するようになっている。
【0056】この発散抑制係数更新処理は、駆動回路2
5bでは、駆動信号yを駆動電流信号Iへ変換する際
に、供給される電源電圧を利用していることから、この
電源電圧が低下した場合、駆動電流信号Iとしてとり得
る範囲が変化してしまうため、駆動信号yに応じた駆動
電流信号Iとは異なる値となって、振動低減制御が発散
する可能性を高くしてしまう原因となるため、これを回
避するためのものである。
【0057】次に、第1の実施の形態の動作を説明す
る。すなわち、能動型エンジンマウント1内の流体共振
系の共振周波数を20Hzに調節している結果、5〜1
5Hzの振動であるエンジンシェイク発生時にもある程
度の減衰力がこの能動型エンジンマウント1で発生する
ため、エンジン30側で発生したエンジンシェイクが能
動型エンジンマウント1によってある程度減衰されると
共に、図示しない他の流体封入式エンジンマウント等に
よってもエンジンシェイクは減衰されるから、車体35
側の振動レベルが低減される。なお、エンジンシェイク
に対しては、特に磁路部材12を積極的に変位させる必
要はない。
【0058】一方、アイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信
号yに応じた駆動電流信号Iを出力し、能動型エンジン
マウント1に振動を低減し得る能動的な支持力を発生さ
せる。
【0059】これを、アイドル振動,こもり音振動入力
時にコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図3に従って具体的に説明する。
まず、そのステップ101において所定の初期設定が行
われた後に、ステップ102に移行し、所定の伝達関数
記憶領域に格納されている伝達関数フィルタC^に基づ
いて更新用基準信号RT が演算される。なお、このステ
ップ102では、一周期分の更新用基準信号RT がまと
めて演算される。
【0060】そして、ステップ103に移行し、カウン
タiが零クリアされた後に、ステップ104に移行し
て、適応ディジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数
i が駆動信号yとして出力され、駆動回路25bにお
いて駆動信号yに応じた駆動電流信号Iに変換されて電
磁アクチュエータ10に供給される。
【0061】ステップ104で駆動信号yを出力した
ら、ステップ105に移行し、残留振動信号eが読み込
まれる。そして、ステップ106に移行して、カウンタ
jが零クリアされ、次いでステップ107に移行し、適
応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数Wj
上記(1)式にしたがって更新される。
【0062】ステップ107における更新処理が完了し
たら、ステップ108に移行し、次の基準信号xが入力
されているか否かを判定し、ここで基準信号xが入力さ
れていないと判定された場合には、適応ディジタルフィ
ルタWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信号yの出力
処理を実行すべく、ステップ109に移行する。
【0063】ステップ109では、カウンタjが、出力
回数Ty (正確には、カウンタjは0からスタートする
ため、出力回数Ty から1を減じた値)に達しているか
否かを判定する。この判定は、ステップ104で適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を、駆動信号y
として出力した後に、適応ディジタルフィルタWのフィ
ルタ係数Wi を、駆動信号yとして必要な数だけ更新し
たか否かを判断するためのものである。そこで、このス
テップ109の判定が「NO」の場合には、ステップ1
10でカウンタjをインクリメントした後に、ステップ
107に戻って上述した処理を繰り返し実行する。
【0064】しかし、ステップ109の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ係数
の更新処理が完了したと判断できる。そこで、ステップ
200に移行し、適応ディジタルフィルタWの全てのフ
ィルタ係数W* が規制値WMAX を越えないようにするた
めの、後述のフィルタ係数調整処理を実行する。
【0065】そして、ステップ200からステップ11
1に移行し、カウンタiをインクリメントした後に、所
定時間待機する。この所定時間は、上記ステップ104
の処理を実行してから所定のサンプリング・クロックの
間隔に対応する時間が経過するまでの時間である。そし
て、サンプリング・クロックに対応する時間が経過した
ら、上記ステップ104に戻って上述した処理を繰り返
し実行する。
【0066】一方、ステップ108で基準信号xが入力
されたと判断された場合には、ステップ112に移行
し、カウンタi(正確には、カウンタiは0からスター
トするため、カウンタiに1を加えた値)を最新の出力
回数Ty として保存した後に、ステップ102に戻っ
て、上述した処理を繰り返し実行する。
【0067】このような図3の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント1
の電磁アクチュエータ10に対しては、基準信号xが入
力された時点から、サンプリング・クロックの間隔で、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi が順番に
出力されてなる駆動信号yに応じた駆動電流信号Iが供
給される。
【0068】この結果、励磁コイル10Bに駆動信号y
に応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、すでに
永久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているか
ら、その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10C
の磁力を強める又は弱めるように作用すると考えること
ができる。つまり、励磁コイル10Bに駆動電流信号I
が供給されていない状態では、磁路部材12は、板ばね
11による支持力と、永久磁石10Cとの磁力との釣り
合った中立の位置に変位することになる。そして、この
中立の状態で励磁コイル10Bに駆動信号yに応じた駆
動電流信号Iが供給されると、その駆動電流信号Iによ
って励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石10C
の磁力と逆方向であれば、磁路部材12は電磁アクチュ
エータ10とのクリアランスが増大する方向に変位す
る。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石
10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部材12は電磁
アクチュエータ10とのクリアランスが減少する方向に
変位する。
【0069】このように磁路部材12は、正逆両方向に
変位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室1
5の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6
の拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウン
ト1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのであ
る。そして、駆動信号yとなる適応ディジタルフィルタ
Wの各フィルタ係数Wi は、同期式Filtered−
X LMSアルゴリズムにしたがった上記(3)式によ
って逐次更新されるため、ある程度の時間が経過して適
応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi が最適値
に収束した後は、駆動信号yが能動型エンジンマウント
1に供給されることによって、エンジン30から能動型
エンジンマウント1を介して車体35側に伝達されるア
イドル振動やこもり音振動が低減されるようになるので
ある。
【0070】以上は車両走行時等に実行される振動低減
処理の動作である。一方、図3のステップ200のフィ
ルタ係数調整処理が実行されると、図4に示すように、
まずステップ201において、適応ディジタルフィルタ
Wのフィルタ係数W* からなる数列に含まれている直流
成分が一旦除去され、次いで、ステップ202に移行
し、直流成分が除去された各フィルタ係数W* の何れか
一つでも規制値WMAX を越えているか否かを判定する。
【0071】このステップ202の判定が「NO」の場
合には、フィルタ係数W* をそのまま駆動信号yとして
出力しても構わないと判断し、ステップ203,204
の処理は実行せずに図3の処理に復帰する。
【0072】一方、ステップ202の判定が「YES」
の場合には、フィルタ係数W* の調整が必要であると判
断し、ステップ203に移行する。ステップ203で
は、補正係数γを0を越え1未満の値に設定する。具体
的には、補正係数γは、これを各フィルタ係数W* に乗
じた結果の最大値が、規制値WMAX を越えることなくそ
の規制値WMAX と略等しくなるような値に設定すること
が望ましく、補正係数γを乗じる前のフィルタ係数W*
の最大値をW*MAXとすれば、補正値γは、 γ=WMAX /W*MAX とすればよい。
【0073】そして、ステップ204に移行し、補正係
数γを各フィルタ係数W* に乗じて新たなフィルタ係数
* を演算し(W* =γ・W* )、その演算された新た
なフィルタ係数W* からなる数列で適応ディジタルフィ
ルタWを置き換えて図3の処理に復帰する。
【0074】このようなフィルタ係数調整処理が実行さ
れれば、フィルタ係数W* の交流成分が規制値WMAX
越えている場合にはそれが一定の比率で縮小されること
になるから、駆動信号yとして出力されるフィルタ係数
* に不要な高調波成分が重畳されて振動低減制御の精
度低下を招くことなく、フィルタ係数W* を適宜調整す
ることができる。
【0075】さらに、コントローラ25内では、所定の
割り込み間隔(例えば、振動低減処理のサンプリング・
クロックに同期した割り込み間隔)で図5に示す、発散
抑制係数更新処理が実行され、まずそのステップ301
において、コントローラ25に供給されている電源電圧
値VgがA/D変換器等を介して読み込まれ、次に、ス
テップ302に移行して、この電源電圧値Vgが有効な
値であるか否かが判定される。つまり、電源電圧値Vg
を変圧する等、電源電圧を利用して駆動信号に応じた駆
動電流信号Iを生成している駆動回路25bにおいて、
駆動信号に応じた駆動電流信号Iを得ることの可能な電
源電圧値Vgであるか否かを判定する。これは、予め実
験等によって検出しておく。
【0076】そして、電源電圧値Vgが、予め設定した
有効な電圧値とみなすことの可能な値である場合には、
ステップ303に移行して、フィルタ係数Wi の更新式
(3)において予め設定された基準の発散抑制係数β*
を、発散抑制係数βとして設定し処理を終了する。
【0077】一方、ステップ302の処理で、電源電圧
値Vgが有効な値でない場合には、ステップ304に移
行し、基準の発散抑制係数β* をより大きな値に更新す
る。例えば、予め実験等によって、電源電圧値と、この
電源電圧値において駆動信号yを駆動電流信号Iに変換
した場合に振動低減制御が発散に至ることを回避するこ
との可能な発散抑制係数βとの対応を求めて対応情報と
してテーブル等によって記憶しておき、電源電圧値Vg
に対応する発散抑制係数βを対応情報から特定し、これ
に更新する。そして処理を終了する。そして、その後、
車両が走行状態となって充電されること等によって、電
源電圧値Vgが有効な値となった場合には、ステップ3
03に移行して、基準の発散抑制係数β* が設定され、
通常のフィルタ係数の更新式に戻る。
【0078】このように、本実施の形態であれば、コン
トローラ25に供給される電源電圧値Vgが低下してい
ないかどうかを監視し、電源電圧値Vgが所定の電圧値
であるときには、予め設定された基準の発散抑制係数β
* に基づいて良好な振動低減制御が行われる。
【0079】一方、電源電圧値Vgが所定の電圧値でな
いとき、つまり、電源電圧値Vgが低下しているときに
は、フィルタ係数の更新式(3)における基準の発散抑
制係数β* をより大きな値に更新される。すなわち、電
源電圧値Vgが低下した場合には、振動低減制御がより
安定化する方向に発散抑制係数βが更新される。
【0080】よって、電源電圧値Vgが低下した場合
に、図7に実線で示すように駆動電流信号Iが歪むこと
になって、このような駆動電流信号Iに基づいて能動型
エンジンマウント1が駆動されることによって、振動低
減制御が発散する可能性が高くなるが、電源電圧値Vg
が低下した場合には、通常の発散抑制係数β* よりも大
きな発散抑制係数βに基づいて振動低減制御が行われる
ことになるから、振動低減制御が発散する可能性をより
低減することができる。
【0081】ここで、本実施の形態では、エンジン30
が振動源に対応し、能動型エンジンマウント1が制御振
動源に対応し、パルス信号生成器26が基準信号生成手
段に対応し、荷重センサ22が残留振動検出手段に対応
し、図3のステップ107の処理がフィルタ係数更新手
段に対応し、図3の処理において所定のサンプリング・
クロックに同期してステップ104でフィルタ係数Wi
を駆動信号yとして出力する処理が能動制御手段に対応
し、駆動回路25bが駆動手段に対応し、図5のステッ
プ301の処理が電源電圧監視手段に対応し、図5のス
テップ302で電源電圧値Vgが有効でないと判断した
ときステップ304を実行する流れが補正手段に対応し
ている。
【0082】なお、上記第1の実施の形態においては、
発散抑制係数βのみを更新するようにした場合について
説明したが、例えば収束係数αも共に更新するようにし
てもよい。
【0083】次に、本発明の第2の実施の形態を説明す
る。本発明の第2の実施の形態は、上記第1の実施の形
態において、電源電圧が低下したときの対処方法が異な
ること以外は同様であり、全体的な構成や振動低減処理
の処理内容は、上記第1の実施の形態と同様であるた
め、その重複する説明は省略する。
【0084】この第2の実施の形態においては、前記発
散抑制係数更新処理に変えて、図4のフィルタ係数調整
処理における規制値WMAX を更新する、規制値更新処理
を実行するようになっている。この規制値更新処理は、
発散抑制係数βに変えて規制値WMAX を更新するように
したこと以外は、発散抑制係数更新処理と同様であるの
で、同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略
する。
【0085】すなわち、前記規制値更新処理では、図6
のフローチャートに示すように、まず、供給される電源
電圧の電圧値Vgを読み込み(ステップ301)、次
に、ステップ302に移行して、この電源電圧値Vgが
有効な値であるか否かを判定する。そして、電源電圧値
Vgが、予め設定した有効な電圧値とみなすことの可能
な値である場合には、ステップ306に移行して、フィ
ルタ係数調整処理において予め設定された基準の規制値
MAX * を、規制値WMAX として設定し処理を終了す
る。
【0086】一方、ステップ302の処理で、電源電圧
値Vgが有効な値でない場合には、ステップ307に移
行し、前記図4に示すフィルタ係数調整処理における規
制値WMAX をより小さい値に更新する。これは、例えば
予め実験等によって、電源電圧値と、この電源電圧値に
おいて駆動信号yを駆動電流信号Iに変換した場合に振
動低減制御が発散に至ることを回避することの可能な規
制値WMAX との対応を求めて対応情報としてテーブル等
によって記憶しておき、電源電圧値Vgに対応する規制
値WMAX を対応情報から特定すること等によって、更新
する。そして、処理を終了する。
【0087】そして、その後、車両が走行状態となって
充電されること等によって電源電圧値Vgが有効な電圧
値となった場合には、ステップ306で基準の規制値W
MAX * が設定されて、通常のフィルタ係数調整処理が実
行されることになる。
【0088】よって、電源電圧値Vgが有効な値である
場合には、予め設定されている規制値WMAX により駆動
信号yが規制されるから、必要以上に駆動信号yが抑え
られることはなく、通常通りに振動低減制御が実行され
る。一方、電源電圧値Vgが有効な値でない場合には、
規制値WMAX がより小さく更新されるから、駆動信号y
が通常よりもより抑えられることになる。
【0089】したがって、電源電圧が低下している状態
で、駆動信号yを駆動電流信号Iに変換した場合、所定
の駆動信号yに応じた駆動電流信号Iを得ることができ
ず、例えば正弦波状の駆動信号yである場合には、前記
図7に示すように、歪んだ波形の信号となることから、
場合によっては振動低減制御が発散に至る可能性が出て
くる。しかしながら、電源電圧が低下している場合に
は、駆動信号yをより規制するようにしているから、振
動低減制御が発散する可能性を低減することができる。
【0090】ここで、図4のステップ201,202の
処理が発散検出手段に対応し、図6のステップ302で
電源電圧値Vgが有効でないと判断したときステップ3
07を実行する流れがしきい値更新手段に対応してい
る。
【0091】なお、上記第2の実施の形態においては、
フィルタ係数調整処理を実行して駆動信号yが規制値W
MAX 以上となるときには駆動信号yを規制することによ
って振動低減制御を継続して行うようにした場合につい
て適用したが、これに限らず、例えば駆動信号yが所定
の規制値WMAX を越えた場合には、振動低減制御処理を
中止する等の対処を行うようにした場合でも適用するこ
とができ、この場合にも電源電圧値Vgが所定値よりも
小さくなったときには、規制値WMAX を小さくするよう
にすれば、制御が発散する以前に、処理を中止するなど
の対処を行うことができるから、制御が発散に至る可能
性を低減することができる。
【0092】また、上記各実施の形態においては、残留
振動を能動型エンジンマウント1に内蔵した荷重センサ
22によって検出しているが、これに限定されるもので
はなく、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検
出する加速度センサを配設し、その加速度センサの出力
信号を残留振動信号eとしてもよい。
【0093】また、上記各実施の形態において、電源電
圧値の低下を検出した場合に、例えばインジケータ等に
これを表示するようにしてもよく、このようにすること
によって、ドライバに電源電圧値が低下していることを
認識させることができ、対処させることができる。
【0094】また、上記各実施の形態においては、本発
明における能動型振動制御装置をエンジン30から車体
35に伝達される振動を低減する車両用の能動型振動制
御装置に適用した場合について説明したが、本発明の対
象はこれに限定されるものではなく、エンジン30以外
で発生する振動を低減するための能動型振動制御装置で
あっても本発明は適用可能である。
【0095】また、本発明の適用対象は車両に限定され
るものではなく、エンジン30以外で発生する周期的な
振動を低減するための能動型振動制御装置や、非周期的
な振動を低減するための能動型振動制御装置であっても
適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態
と同様の作用効果を奏することができる。例えば、工作
機械からフロアや室内に伝達される振動を低減する装置
等であっても、本発明は適用可能である。
【0096】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとして同期式Filtere
d−X LMSアルゴリズムを適用しているが、適用可
能なアルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例
えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズ
ム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図4】フィルタ係数調整処理の概要を示すフローチャ
ートである。
【図5】発散抑制係数更新処理の概要を示すフローチャ
ートである。
【図6】規制値更新処理の概要を示すフローチャートで
ある。
【図7】本発明の動作説明に供する説明図である。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント 10 電磁アクチュエータ 22 荷重センサ 25 コントローラ 26 パルス信号生成器 30 エンジン 35 車体

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動の発生状態
    を表す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、
    前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する
    残留振動検出手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタ
    ルフィルタと、前記基準信号及び前記残留振動信号に基
    づき前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の振動
    の伝達系の伝達特性に応じた更新式に従って、前記適応
    ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ
    係数更新手段と、前記基準信号を前記適応ディジタルフ
    ィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を制御するた
    めの制御信号を生成する能動制御手段と、供給される電
    源電圧を利用して前記制御信号を前記制御振動源への駆
    動信号に変換し出力する駆動手段と、を備えた能動型振
    動制御装置において、 前記電源電圧を監視する電源電圧監視手段と、当該電源
    電圧監視手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを
    検出したとき、前記フィルタ係数の更新式を補正する補
    正手段と、を備えることを特徴とする能動型振動制御装
    置。
  2. 【請求項2】 前記フィルタ係数更新手段は、前記制御
    信号が大きくなるに従って前記適応ディジタルフィルタ
    のフィルタ係数を小さくするように作用する発散抑制項
    を含む更新式を用いて、前記適応ディジタルフィルタの
    フィルタ係数を更新し、前記補正手段は、前記電源電圧
    監視手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを検出
    したとき、少なくとも前記更新式の前記発散抑制項の影
    響度合いを大きくするようになっていることを特徴とす
    る請求項1記載の能動型振動制御装置。
  3. 【請求項3】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動の発生状態
    を表す基準信号を生成し出力する基準信号生成手段と、
    前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する
    残留振動検出手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタ
    ルフィルタと、前記基準信号及び前記残留振動信号に基
    づき前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の振動
    の伝達系の伝達特性に応じた更新式に従って、前記適応
    ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ
    係数更新手段と、前記基準信号を前記適応ディジタルフ
    ィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を制御するた
    めの制御信号を生成する能動制御手段と、供給される電
    源電圧を利用して前記制御信号を前記制御振動源への駆
    動信号に変換し出力する駆動手段と、前記適応ディジタ
    ルフィルタのフィルタ係数と所定のしきい値とを比較す
    ることにより制御が発散したことを検出する発散検出手
    段と、を備えた能動型振動制御装置において、 前記電源電圧を監視する電源電圧監視手段と、当該電源
    電圧監視手段で前記電源電圧が所定値よりも低いことを
    検出したとき、前記しきい値を縮小方向に変更するしき
    い値更新手段と、を備えることを特徴とする能動型振動
    制御装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11084349B2 (en) 2019-01-31 2021-08-10 Tenneco Automotive Operating Company Inc. Leaf spring and actuator control systems and methods

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