JPH097557A - 角形密閉電池の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 嵌合部に生じてくる微小な隙間に起因する溶
接不良を減少させ、もって製造された角形密閉電池の歩
留まりを向上させることができる角形密閉電池の製造方
法を提供する。 【構成】 直方体状の外装缶に極板群を収納し、外装缶
の開口端に、蓋板を嵌合装着し、外装缶の開口端と蓋板
との嵌合部をレーザー溶接することにより嵌合部を封口
して密閉構造の角形密閉電池を製造する際に、蓋板とし
て、周側面３３ｃがテーパー面になっている蓋板３３を
用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、角形密閉電池の製造方
法に関し、更に詳しくは、外装缶と蓋板との溶接不良の
発生を抑えることができる角形密閉電池の製造方法に関
する。

【０００２】

【従来の技術】ニッケル−水素二次電池やニッケル−カ
ドミウム電池のようなアルカリ二次電池は、全体として
密閉構造になっていて、その形状には円筒形と角形とが
ある。ここで、角形密閉タイプのニッケル−水素二次電
池につき、その構造例を図１に基づいて説明する。

【０００３】角形のニッケル−水素二次電池は、図１の
分解斜視図で示すように、内部に極板群２を収容した直
方体状をなす外装缶１と、外装缶１の開口端１ａに嵌合
装着され、その開口端１ａを密閉する蓋板３１とを備え
ている。外装缶１は、ニッケルメッキを施した鋼製の直
方体状の有底缶であり、上部に、平面視したときの形状
が矩形状である開口を備えていて、負極の外部端子も兼
ねている。

【０００４】極板群２は、正極シート（ニッケル極）２
１と負極シート（水素吸蔵合金電極）２２とを、電気絶
縁性のセパレータ２３を互いの間に介在させた状態で複
数枚重ね合わせた構造になっており、外装缶１の内部形
状に合致するように、全体として横断面が矩形状の直方
体に整形されている。そして、各正極シート２１は、正
極集電体４及びリード板３２ａを介して後述する正極３
２に接続され、負極シート２２は負極を兼ねる外装缶１
に接続されている。

【０００５】蓋板３１は、外装缶１の開口端１ａを閉塞
するものであり、中央に正極３２を備えている。蓋板３
１は、外装缶１と同様にニッケルメッキを施した鋼から
成り、外装缶の開口と適合する矩形状の板である。すな
わち、蓋板３１は、平面視したときの形状が前記した外
装缶１の開口端１ａと同じような矩形状であって、上面
３１ａから下面３１ｂにかけて垂直な周側面３１ｃを備
えている偏平な板である。

【０００６】正極３２は、前記蓋板３１の中央に穿設さ
れた孔に電気絶縁性のガスケットを介して液密に嵌合装
着され、下端が、正極集電体４に接続されるリード板３
２ａが固着されているワッシャとともに蓋板３１にかし
め固定され、上面が、蓋板３１の上面３１ａと略面一を
なして裸出し、中央に小孔が穿設されたリベットと、当
該リベットに載置され溶着固定された正極キャップ３２
ｂと、正極キャップ３２ｂに収納されリベットの小孔を
閉塞する安全弁とを備えている。

【０００７】当該密閉型ニッケル−水素二次電池の製造
の手順としては、まず、外装缶１内に極板群２が収容さ
れ、アルカリ電解液が注入された後、外装缶１の開口端
１ａに蓋板３１が嵌合装着される。このとき、蓋板３１
は、外装缶１の開口に適合する形状になっているので、
図２に示すように、外装缶１の内壁面１ｂと蓋板３１の
周側面３１ｃとは合致する。

【０００８】ついで、外装缶１の内壁面１ｂと蓋板３１
の周側面３１ｃとが合致した部分（以下、嵌合部Ｊとい
う）に対し、通常、微細加工に適したパルス式レーザー
溶接が施され、外装缶１と蓋板３１との封口溶接がなさ
れる。このレーザー溶接は、嵌合部Ｊに対し、上方よ
り、集光したレーザー光Ｌを照射し、嵌合部Ｊの全周に
わたり当該レーザー光を走査することにより行われる。
このとき、嵌合部Ｊにおいては、図２に示すように、レ
ーザー光Ｌが照射された部分、つまり外装缶１と蓋板３
１との所定位置が溶融し、溶接ビードＷが形成され、外
装缶１と蓋板３１との接合がなされていく。

【０００９】このようにして、密閉構造の電池が形成さ
れる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】ところで、外装缶や蓋
板等の各部材は、製造時における加工精度等の問題によ
り、長辺部及び短辺部には設計寸法に対し微視的な寸法
誤差が生じ、また、角部は、完全な直角状にはなってお
らず、多少丸みがかっている。このため、外装缶に蓋板
を嵌合装着した場合、外装缶の内壁面１ｂと、蓋板の周
側面３１ｃとは完全には合致せず、嵌合部Ｊには、微小
な隙間が生じることがある。

【００１１】外装缶と蓋板との嵌合部Ｊにおいて、上記
したような微小な隙間が生じると、レーザー溶接の際、
外装缶及び蓋板の溶融した部分が当該隙間より電池内部
に流れ込み、良好な溶接ビードは形成されなくなってし
まう。その結果、嵌合部Ｊにおいては、電池内部にまで
貫通したピンホールが生じることがある。このように、
溶接不良によりピンホールが生じると、得られる電池は
密閉不良となり、アルカリ電解液が漏出する等の問題が
起き、電池の不良品の発生率は高くなり、電池製造にお
ける歩留まりは低下する。

【００１２】本発明は、角形密閉電池を製造する際の上
記した問題を解決し、嵌合部Ｊに生じてくる微小な隙間
に起因する溶接不良を減少させ、もって製造された角形
密閉電池の歩留まりを向上させることができる角形密閉
電池の製造方法を提供することを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、直方体状の外装缶に極板群を収納し、
当該外装缶の開口端に、蓋板を嵌合装着し、前記外装缶
の開口端と前記蓋板との嵌合部をレーザー溶接すること
により、前記嵌合部を封口して、密閉構造の角形密閉電
池を製造する際に、前記蓋板として、その周側面がテー
パー面になっている蓋板を用いることを特徴とする角形
密閉電池の製造方法が提供される。

【００１４】ここで、蓋板は、周側面をテーパー面とす
るために、幅方向及び長手方向の断面形状を、上辺が下
辺よりも長い逆台形とすることが好ましい。本発明にお
いては、図３に示すような、中央に正極３２を有し、周
側面３３ｃがテーパー面である蓋板３３を、極板群を収
納した外装缶に嵌合装着し、当該嵌合部に対してレーザ
ー溶接を施すことにより密閉構造の電池を得る。

【００１５】つまり、本発明における蓋板３３は、図４
に示すように、蓋板３３の幅方向（及び長手方向）の断
面形状が、上辺の長さＢ₁ が下辺の長さＢ₂ よりも長く
設定されている。そして、外装缶１の内壁の幅方向（及
び長手方向）の長さを、例えば、Ａとしたとき、蓋板の
上辺，下辺の寸法と外装缶の内壁の寸法との関係は、Ｂ
₂ ＜Ａ＜Ｂ₁ の関係が成り立つように設定されている。

【００１６】したがって、蓋板３３を外装缶１の上部開
口に嵌合装着するときに、外装缶の開口と蓋板との位置
関係が多少ずれた状態で蓋板が配置されても、当該蓋板
は、蓋板のテーパー面により案内されて外装缶の開口に
装着され、外装缶１の上部開口の内周と当該テーパー面
のある個所とが接することになる。そして、蓋板３３を
外装缶１の開口端に装着した後、更に、蓋板３３を外装
缶内部へ押し込むことにより、当該蓋板３３は、テーパ
ー面を有していることから、一種のくさびのように働
き、外装缶の開口を押し拡げるようにして、外装缶の開
口に嵌合される。その結果、各部材に加工精度等の問題
による微視的な寸法誤差が存在していたとしても、嵌合
部において微小な隙間が生じることを抑制することがで
きる。

【００１７】このように隙間が存在しない嵌合部に対し
レーザー溶接を行うと、ピンホールの発生は極力抑える
ことができ、密閉度の高い良好な角形密閉電池が得られ
る。また、外装缶１に蓋板３３を嵌合装着した場合、図
４に示すように、蓋板３３は、外装缶１の上面１ｃより
僅かに上方に突出し、なおかつ、蓋板３３の上部の縁部
３３ｄが外側に向かって僅かにせり出す。このような嵌
合状態で、蓋板３３の上部が僅かに外装缶側にせり出す
ようにして突出している部分を含めて、嵌合部のレーザ
ー溶接が行われるので、図５に示すように、蓋板の縁部
３３ｄが同時に溶融され、外装缶１の上面１ｃに堆積す
るので、嵌合部の上部には、所謂肉盛り溶接がなされた
状態になり、形成された密閉構造の信頼性は高くなる。

【００１８】ここで、前記上辺Ｂ₁ をあまり大きくする
と、外装缶の上面１ｃと重なる部分が大きくなり、外装
缶上面１ｃにレーザー光が照射されず、蓋板の縁部３３
ｄのみが溶融するなどして、外装缶１と蓋板３３との嵌
合部Ｊで良好な溶接が行われないことがある。よって、
前記Ｂ₁ の大きさは、外装缶の内壁の幅方向（及び長手
方向）の寸法Ａよりも大きく、外装缶１と蓋板３３との
間で良好な溶接ビードＷが形成されなくなってしまう大
きさよりも小さい範囲に設定することが好ましい。

【００１９】

【作用】本発明による角形密閉電池の製造方法に用いる
蓋板は、周側面がテーパー面であるので、外装缶の上部
開口端に嵌合装着した際に、位置決めが容易であるとと
もに、押し込むことにより、微小な隙間を無くすことが
できる。

【００２０】

【実施例】

実施例１ 正極シート（ニッケル極）と負極（水素吸蔵合金電極）
とを、電気絶縁性のセパレータを互いの間に介在させて
重ね合わせ、極板群を製造した。尚、当該極板群は、縦
４．５ｍｍ，横１５．４ｍｍ，高さ４０ｍｍの直方体状
に整形した。

【００２１】ついで、得られた極板群を、開口が、縦
４．８ｍｍ，横１５．６ｍｍである矩形状をなし、高さ
が４５ｍｍである角形の外装缶に挿入した。次に、電解
液として、ＫＯＨを主成分とするアルカリ水溶液1.０ｃ
ｃを外装缶に注入した。ついで、上面の寸法が、縦４．
８５ｍｍ，横１５．６５ｍｍ、下面の寸法が、縦４．７
５ｍｍ，横１５．５５ｍｍであり、厚さが０．４ｍｍ
で、周側面がテーパー面になっている、断面形状が図４
に示すように逆台形である蓋板を前記外装缶の上部開口
端に装着し、押し込むようにして嵌合した。そして、当
該嵌合部の全周にわたりレーザー溶接を行い、角形密閉
タイプのニッケル−水素二次電池を製造した。尚、上記
電池は、１０００個製造した。

【００２２】得られた電池に対して、レーザー溶接不良
の発生率を求めた。その結果を表１に示した。ここで、
レーザー溶接不良の発生率は、以下のようにして求め
た。まず、上記のようにして製造した電池を、温度６０
℃，湿度８０％ＲＨの雰囲気中に保持し、３０日間放置
した。ついで、３０日経過後の電池に対して、漏液の有
無を確認した。そして、製造した電池の全体に対する、
漏液が発生した電池の割合を求め、この割合をレーザー
溶接不良の発生率とした。 比較例１ 縦４．８ｍｍ，横１５．６ｍｍ，高さ０．４ｍｍで、垂
直な側面を備えている従来の蓋板を用いたことを除いて
は実施例１と同様にしてニッケル−水素二次電池を１０
００個製造した。

【００２３】得られた電池に対して、実施例１と同様に
してレーザー溶接不良の発生率を求めた。その結果を表
１に併記した。

【００２４】

【表１】 表１の結果から明らかなように、実施例１の電池は、レ
ーザー溶接不良の発生率が０％となっている。つまり、
外装缶の上部開口端に蓋板を嵌合装着する際、当該嵌合
部に微小な隙間が生じることが抑えられ、良好な溶接を
行うことができたため、溶接不良のない良品が得られた
ことを示している。これは、蓋板の側面にテーパーを設
けたので、各部材の加工精度の問題により生じる微視的
な寸法誤差による嵌合部の隙間をなくすことができ、そ
の結果、嵌合部において、ピンホールを生じない良好な
溶接が行え、更に、蓋板の上部の縁部も一緒に溶接ビー
ドになって肉盛り溶接されることにより、優れた密閉構
造が形成されているからである。

【００２５】それに対し、比較例１の電池は、本発明の
電池に比べ、レーザー溶接不良の発生率が高くなってい
る。これは、比較例１の電池においては、従来の蓋板を
採用しているので、各部材の加工精度の問題により生じ
る微視的な寸法誤差の影響を受け、嵌合部に微小な隙間
が生じ、レーザー溶接の際にピンホールが生じたためで
ある。

【００２６】

【発明の効果】請求項１の角形密閉電池の製造方法は、
蓋板の周側面をテーパー面としているので、外装缶に蓋
板を嵌合装着する際、蓋板を押し込むことにより、当該
嵌合部に微小な隙間が発生することを防止することがで
きる。よって、嵌合部のレーザー溶接時に、ピンホール
が生じることが抑えられ、密閉不良による不良品の発生
は極めて少なくなり、電池製造における歩留まりは向上
する。

【００２７】請求項２の角形密閉電池の製造方法は、蓋
板が外装缶より所定量突出するので、レーザー溶接の
際、当該突出部が同時に溶融されることにより肉盛り溶
接がなされ、形成される密閉構造の信頼性は高くなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】角形密閉電池の構成を示す分解斜視図である。

【図２】従来の蓋板を外装缶に嵌合したときの構成を示
す幅方向（又は長手方向）の断面図である。

【図３】本発明における蓋板の構成を示す斜視図であ
る。

【図４】本発明における蓋板と外装缶との嵌合部の構成
を示す幅方向（又は長手方向）の断面図である。

【図５】本発明における蓋板と外装缶との嵌合部を溶接
した際の構成を示す幅方向（又は長手方向）の断面図で
ある。

【符号の説明】

１ 外装缶 １ａ 上部開口端 ３２ 正極 ３３ 蓋板 ３３ｃ 周側面 Ｊ 嵌合部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 直方体状の外装缶に極板群を収納し、当
   該外装缶の開口端に、蓋板を嵌合装着し、前記外装缶の
   開口端と前記蓋板との嵌合部をレーザー溶接することに
   より、前記嵌合部を封口して密閉構造の角形密閉電池を
   製造する際に、前記蓋板として、その周側面がテーパー
   面になっている蓋板を用いることを特徴とする角形密閉
   電池の製造方法。
2. 【請求項２】 前記蓋板の幅方向及び長手方向の断面形
   状が、上辺が下辺よりも長い逆台形である請求項１の角
   形密閉電池の製造方法。