JPH0948905A - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリエステル樹脂組成物

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JPH0948905A
JPH0948905A JP7214700A JP21470095A JPH0948905A JP H0948905 A JPH0948905 A JP H0948905A JP 7214700 A JP7214700 A JP 7214700A JP 21470095 A JP21470095 A JP 21470095A JP H0948905 A JPH0948905 A JP H0948905A
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thermoplastic polyester
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Takeshi Sekura
剛 瀬倉
Akira Yamaguchi
明 山口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】結晶化速度および結晶化度が改良され、成型性
に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ること。 【解決手段】末端基の一部または全部が下記一般式
(I)で示される基である熱可塑性ポリエステル樹脂お
よび無機化合物を含有する組成物であって、該組成物の
エネルギーの値が下記数式(1)および(2)を満足す
ることを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。 【化1】 (Rは炭素数1〜20の二価の脂肪族または芳香族炭化
水素基、Lはアルカリ金属を示す。) 【数1】 【数2】 (Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσ
e はラメラの表面エネルギーを示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶化速度および
結晶化度が改良され、成型性に優れた熱可塑性ポリエス
テル樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性ポリエステ
ル樹脂組成物は、エンジニアリング用成形材料としては
もちろんのこと、フイルムや繊維などへの応用も期待で
きる。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル系樹脂、特にポリエチレン
テレフタレートは、その優れた機械的特性、耐薬品性お
よびガスバリヤー性を生かし、エンジニアリング用成形
材料など、種々の分野へとその用途を拡大している。最
近では高い結晶融点を生かし、電子レンジで使用可能な
食品容器や、電子部品などのより耐熱性が要求される用
途も出てきており、結晶化させたポリエチレンテレフタ
レートの耐熱性素材としての使用が期待されている。
【0003】しかしポリエチレンテレフタレートは結晶
化速度が遅い、特に低温における結晶化速度が遅いとい
う問題点がある。従って、このようなポリエチレンテレ
フタレートを他のプラスチックを射出成形する際に通常
用いられる金型温度、すなわち120℃以下で成型した
場合、得られる成型品はその表面と内部に結晶化度の差
が生じ、機械的性質、寸法安定性が不均一となり、実用
に耐え得ることが極めて困難なものとなる。そのため充
分な結晶化度を有する成形品を得るために、成型の際、
高温の金型を使用する方法や、タルクなどの結晶核剤お
よびポリエチレングリコールなどの結晶化促進剤を添加
する方法などが現在提案されている。しかしながら上記
のような方法では、結晶性改良の効果は多少認められる
ものの、結晶化速度はやはり遅く、結晶性もまた不充分
であるのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、結晶
化速度が遅く、結晶化度が高く、結晶性が優れ、かつ耐
熱性が向上した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供
することである。特に、成型品の内部と表面における結
晶化度の差がなく、低温金型(60〜120℃)での成
型品の結晶化度が向上された熱可塑性ポリエステル樹脂
組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため鋭意研究した結果、特定のスルホン酸
塩化合物の残基を特定量含有する熱可塑性ポリエステル
樹脂に、特定の無機化合物を添加することによって、結
晶化速度および耐熱性が向上することを見出し、本発明
を完成するに至った。すなわち本発明は、末端基の一部
または全部が下記一般式(I)で示される基である熱可
塑性ポリエステル樹脂および無機化合物を含有する組成
物であって、該組成物のエネルギーの値が下記数式
(1)および(2)を満足することを特徴とする熱可塑
性ポリエステル樹脂組成物、およびさらにポリエステル
樹脂に反応または相互作用する官能基を有するα−オレ
フィン系共重合体を含有する前記熱可塑性ポリエステル
樹脂組成物である。
【0006】
【化5】 (Rは炭素数1〜20の二価の脂肪族または芳香族炭化
水素基、Lはアルカリ金属を示す。)
【0007】
【数3】
【0008】
【数4】 (Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσ
e はラメラの表面エネルギーを示す。)
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において用いられるポリエ
ステルは、通常の熱可塑性ポリエステル樹脂が用いら
れ、特別の制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレン
テレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフ
タレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチ
レンナフタレートなどの芳香族ポリエステルが挙げられ
る。さらに、上記ポリエステルの構成成分と他の酸成分
および/またはグリコール成分(例えばイソフタル酸、
アジピン酸、セバシン酸、グルタール酸、ジフェニルメ
タンジカルボン酸、ダイマー酸のような酸成分、ヘキサ
メチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペン
チルグリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリ
コールアルキレンオキシド付加体のようなグリコール成
分)を共重合したポリエステル、芳香族ポリエステル・
ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル・
ポリラクトンブロック共重合体、ポリアリレートなどの
広義のポリエステルも使用される。なかでもポリエチレ
ンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが
好ましい。また、前記熱可塑性ポリエステル樹脂は、単
独または複数樹脂のブレンド(たとえば、ポリエチレン
テレフタレートとポリブチレンテレフタレートとのブレ
ンドなど)、もしくはそれらの共重合体(たとえば、ポ
リブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコ
ールとのポリエステルポリエーテル共重合体など)であ
ってもよい。特に融点が200℃〜300℃のものが耐
熱性の点から最も好ましい。
【0010】次に前記熱可塑性ポリエステルの末端基の
一部又は全部が前記一般式(I)で示される基にするた
めに、該ポリエステルを製造する際、重合完結までの任
意の段階で下記一般式(II)で示されるスルホン酸塩化
合物を配合すればよい。
【0011】
【化6】 (式中、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族または芳香
族炭化水素基を、Xはエステル結合形成基を、およびL
はアルカリ金属を示す) 一般式(II)中のRの炭素数1〜20の2価の脂肪族炭
化水素基または芳香族炭化水素基のうち、好ましくは、
炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基および炭素数
6〜10の芳香族炭化水素基である。Rの具体例として
メチレン、エチレン、ブチレン、フェニレンなどが挙げ
られる。Xであるエステル結合形成基の好ましい例とし
て、ヒドロキシル基、カルボキシル基などが挙げられ、
さらに好ましくはヒドロキシル基である。Lであるアル
カリ金属は、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム
などが挙げられ、なかでもナトリウムが好ましい。
【0012】一般式(II)で示されるスルホン酸塩化合
物の具体例として、ヒドロキシエチレンスルホン酸ナト
リウム、ヒドロキシブチレンスルホン酸ナトリウム、ヒ
ドロキシフェニレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシ
エチレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシブチレンス
ルホン酸ナトリウム、カルボキシフェニレンスルホン酸
ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独あるいは混
合物として使用される。前記スルホン酸塩化合物(II)
の添加量は熱可塑性共重合ポリエステルに対して0.1
〜10モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
該添加量が0.1モル%未満のばあい、低温での結晶化
速度改善の効果はほとんどなく(分子鎖の運動性が向上
しない)、一方該添加量が10モル%を越えると結晶化
を大きく阻害してしまうので好ましくない。
【0013】本発明において配合する無機化合物は、M
2SiF6 (式中、Mはアルカリ金属、好ましくはL
i、NaおよびKである)とタルクの混合物の加熱生成
物であって、その混合割合が重量比で10:90〜5
0:50、好ましくは15:85〜40:60である混
合微粉末に、場合によりAl化合物を加えた混合物を加
熱して得られる生成物であることが好ましい。好ましい
2 SiF6 として、Li2 SiF6 、Na2 Si
6 、K2 SiF 6 などが例示され、より好ましくはN
2 SiF6 である。M2SiF6 は、単独でも、2種
以上を混合して用いてもよい。特に2種以上を混合した
場合には、ポリエステルの重合におけるグリコール類中
での膨潤度や、加熱生成物中の層状ケイ酸塩の形状やア
スペクト比を調節できる利点があり、好ましい。M2
iF6 の2種以上を混合する場合の好ましい例として
は、Na2 SiF 6 とLi2 SiF6 の混合物、Na2
SiF6 とK2 SiF6 の混合物などが挙げられる。ま
た上記のM2 SiF6 の代わりにM2 SiF6 の一部を
MFに代えてM2 SiF6 とMFの混合物を使用しても
よい。
【0014】なお前記タルクは、3MgO・4SiO2
・H2 Oが主成分で、少量ではあるが、Alを含むもの
が多く、本発明では通常用いられているものであれば特
に制限なく使用できる。またAl含量を増やすためにA
2 3 などのAl化合物をM2 SiF6 およびタルク
と共に混合してもよい。無機化合物の製造方法として
は、所定割合のM2 SiF6 とタルクおよび場合によっ
てAl化合物とをたとえばボールミルのような粉砕機を
用いてそれぞれ粉砕し、混合後、耐熱性容器に入れ、電
気炉やガス炉のような加熱炉中で所定の温度に保ち、所
定時間保持する方法などが挙げられる。加熱温度は、収
率、膨潤性などの点から700〜1000℃とするのが
好ましい。前記方法で得られる無機化合物は下記一般式
(III) および/または(IV)で示される2:1型の層状ケ
イ酸塩および(V)で示される化合物が主なものである
が、それ以外にケイ酸、ケイ酸化合物などの成分も含
み、それらの含有量は生成条件により異なる。
【0015】
【化7】 (式中、Mはアルカリ金属を示し、Li、NaおよびK
が好ましい。pは0.05〜0.5の数字を、およびq
は0.1〜1.0の数字を示す)
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】 なお前記無機化合物において、原料であるタルク中に含
まれるFeなどの不純物がMg、Siと一部置換したも
のも生成する可能性があるが、少量であれば特に問題は
ない。
【0018】一般式(III)、(IV)で示される2:1型の
層状ケイ酸塩は、層間電荷を有しないタルク構造を基に
生成するため、タルクの粒径に近い微細(平均粒径:1
〜50μm程度)な薄片または鱗片状のものが得られ
る。また層間のアルカリイオンは0より大きく1より小
さいものが混じり合っていると考えられ、四面体層、八
面体層よりなる3層構造部もそれに応じて構成する元素
比率が異なるものが混じり合っていると判断できる。そ
れ故、それ等の層状ケイ酸塩は、タルクの変性体あるい
は誘導体とみなすことができ、Si主体の2つの四面体
層がMg、F主体の八面体層を間にはさむ3層構造をと
る2:1型の層状ケイ酸塩であり、その連続する3層構
造と3層構造の間の層間にアルカリイオンが存在する構
造となる。なお上記層状ケイ酸塩には膨潤タイプと非膨
潤タイプがあり、広義の雲母やバーミキュライトの範疇
に属する化合物が主体である。
【0019】前記層状ケイ酸塩の具体例として、NaM
2.5 Si4 102 、LiMg2. 5 Si4 102
KMg2.5 Si4 102 などの四ケイ素フッ素雲母、
およびNa0.6 0.99Mg2.5 2.9 (Si3.8 4.0,
Mg0 0.2 )O9.7 10.31.7 2.3 、K0.6
0.99Mg2.5 2.9(Si3.8 4.0,Mg0 0.2 )O9.
7 10.31.7 2.3 などの化合物が挙げられる。なお
前記一般式(V)で示される化合物としては、NaMg
3 、LiMgF 3 、KMgF3 などが例示される。
【0020】前記本発明で用いられる無機化合物は、後
述する方法によって得られる熱可塑性ポリエステル組成
物においては、下記無機化合物(a)および無機化合物
(b)として確認することができる。 無機化合物(a):M(アルカリ金属)、Mg、Si、
OおよびFから構成される無機化合物 無機化合物(b):M(前記と同義)、MgおよびFの
みから構成される無機化合物 なお前記無機化合物(a)の存在の有無は、代表散乱角
2θ=7.1度における散乱強度により判断でき、ま
た、無機化合物(b)の存在の有無は、代表散乱角2θ
=23.1度における散乱強度により判断できる。さら
に、各代表散乱角における強度比により、これらの存在
割合を定量的に評価することができる。
【0021】本発明において、熱可塑性ポリエステル樹
脂と無機化合物配合量は、成形加工の際の流動性や表面
特性の点から、熱可塑性共重合ポリエステル樹脂100
重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、
より好ましくは0.1〜25重量部である。なお無機化
合物の粒径は、熱可塑性共重合ポリエステル組成物の用
途、要求される性能などに応じて選択することができ
る。一般的には微細なものがよく、平均粒径が約10μ
m以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。
【0022】次に本発明組成物を得る方法としては、ポ
リエステルの原料であるグリコール類に、予め前記無機
化合物を分散させて膨潤処理すること以外は、通常の熱
可塑性ポリエステルの製造方法に従って製造することが
できる。その際使用される触媒、つや消し剤安定剤など
の添加剤に、特別の制限はない。本発明では、無機化合
物の分散を通常の混練機を用いて行なうのではなく、ポ
リエステル樹脂の重合中に行なうことにより、無機化合
物を均一にポリエステル樹脂中に分散させて結晶性を向
上させている。上記グリコール類としては、例えばエチ
レングリコール、ブチレングリコールなど、熱可塑性ポ
リエステル樹脂の原料と同じグリコールを用いることが
好ましい。また、グリコール類に無機化合物を分散させ
て膨潤処理する方法としては、特に限定されるものでは
ないが、グリコール類中に無機化合物を長時間浸漬させ
る方法、グリコール類中に無機化合物を分散させた状態
で加熱撹拌させる方法、あるいは超音波処理、浸蘯な
ど、任意の方法を採用することができる。この際に共重
合成分である一般式(II)で示される化合物を同時に添
加してもよく、むしろそうする方が好ましい。
【0023】以上かかる方法によって得られた本発明組
成物は、該組成物のエネルギーの値が下記数式(1)お
よび(2)を満足することを特徴としている。
【0024】
【数5】
【0025】
【数6】 (Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσ
e はラメラの表面エネルギーを示す。) 本発明においてUおよびσ×σe は以下の方法によって
求められる。 (1)まず試料より小片を切り出しこれを2枚のカバー
ガラス間に挟み、300℃×3分で溶融させて薄膜(〜
20μm)を形成し、すばやく設定温度(Tc:結晶化
温度)までホットプレート上で冷却し、その後の等温結
晶化過程でのHv強度の角度分布を一次元46個のphot
o diode array 上に取り込み、時分割測定をして得られ
た散乱強度(I)と散乱ベクトル(q)を求め、式か
ら結晶相の体積分率Qの経時変化を求める。なお光源に
はHe-Ne laser (λ=632.8nm)を用いた。Qと時
間との関係を図1に一例として示す。
【0026】
【数7】 (2)次に、初期ステージをAvramiの式にあてはめる
ことにより、結晶速度定数k、Avrami指数nが求めら
れ、式より線成長速度Gを算出する。
【0027】
【数8】
【0028】
【数9】 (式においてもtは時間を、Q∞はt=∞で飽和した
ときの結晶相の体積分率を示す。) (3)各温度におけるGを算出し、下記Hoffman-Laurit
zen の式を用いて、前記値をプロットすることにより
Go 、U、σ×σe を求めることができる。
【0029】
【数10】 〔式中、Uは活性化エネルギーを、Gは線成長速度を、
Go は線成長速度定数を、Rgはガス定数(cal・K
-1・mol-1)を、Tcは結晶化温度(K)を、Tgは
ガラス転移温度(K)を、ΔT=Tm0 −Tc(Tm0
は平衡融点)を、fおよびkは下記式およびにより
算出した値である。〕
【0030】
【数11】
【0031】
【数12】 (式において、aは結晶化様式に対する定数を示し、
regimeIII、Iの場合a=4、regimeIIの
場合a=2であるboはステム厚を、ΔHfは溶解エン
タルピーを、kはボルツマン定数を示す)〕
【0032】本発明組成物において、該組成物を成形す
る際に、成形品表面の結晶性をさらに向上させるため
に、該組成物に、さらにポリエステル樹脂と反応または
相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体
を配合してもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂と反応ま
たは相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重
合体としては、具体的には、α−オレフインとα、β−
不飽和カルボン酸の誘導体との共重合体が挙げられる。
該共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、
グラフト共重合体、交互共重合体、その他どのようなも
のでもよい。
【0033】α−オレフィンとしては、炭素数2〜4の
α−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテ
ン−1などが用いられる。なかでもエチレンは重合性が
高く分子量の高いポリマーを与える点から好ましい。
α、β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などが用い
られる。上記α−オレフィン系共重合体の熱可塑性ポリ
エステル樹脂と反応する官能基として、エポキシ基、カ
ルボキシル基、酸無水物基(オキシカルボニル基)など
が挙げられる。上記α−オレフィン系共重合体は、さら
に熱可塑性ポリエステル樹脂と反応する官能基を有する
モノマー、例えば、グリシジルメタクリレート、フマル
酸、無水マレイン酸などを反応させることもできる。ま
た、熱可塑性ポリエステル樹脂と相互作用する官能基を
有するα、β−不飽和カルボン酸の誘導体は、上記した
不飽和カルボン酸を1価または2価の金属化合物と反応
させて得られるイオン性化合物である。
【0034】α−オレフィン系共重合体中のα−オレフ
ィン成分は、50モル%以上、特に80モル%以上が好
ましい。官能基は、α−オレフィン共重合体中0.1〜
50モル%占める。またカルボキシル基の10モル%以
上がナトリウム、カリウム、亜鉛等で中和されたものが
よい。α−オレフィン系共重合体の好ましい具体例とし
て、エチレン−メタクリル酸共重合体ナトリウム塩、た
とえば、イー・アイ・デュポン社より商品名“サーリ
ン”として市販されている一連のポリマー、エチレン−
グリシジルメタクリレート共重合体、たとえば、住友化
学社より市販されている“ボンドファースト”などを挙
げることができる。α−オレフィン系共重合体の配合量
は、熱可塑性ポリエステル樹脂および無機化合物の合計
100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは
0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部で
ある。該配合量が0.1重量部未満であると本発明の効
果を得るに不十分であり、一方、30重量部を越えると
マトリックスとなる熱可塑性ポリエステル樹脂の力学特
性を下げることになり、それぞれ好ましくない。
【0035】なお、本発明の目的に反しないかぎり、上
記成分〔熱可塑性ポリエステル樹脂および無機化合物〕
以外にも、必要に応じてタルク、ワラステナイト、モン
モリロナイト、ガラス繊維などの強化剤、難燃剤、離型
剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤
などの添加剤を添加することができる。なおこれらの添
加剤はポリエステル樹脂の重合中ではなく、重合後に加
えることが好ましい。また、前記α−オレフィン系共重
合体の配合は押し出し機を用い熱可塑性ポリエステル樹
脂に溶融混練して行うのが好ましい。
【0036】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお実施例において、各特性値は以下の方法によ
って測定した。 極限粘度:フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒
(重量比6/4)中、30℃で測定した。 結晶化速度:時分割光散乱装置を用いて結晶化過程を解
析して求めた値である。図1はその結晶化過程および結
晶化速度の一例を示すグラフであり、縦軸は結晶相の体
積分率(結晶化終了後の値を1とした)を、横軸は時間
(結晶化させる温度に定めたホットプレート上に、溶融
したサンプルを乗せた時間を0とした)を示す。図の曲
線は、時間0から誘導時間を経た後、結晶体が成長し始
め、やがてサンプルが結晶相で満たされ、結晶化が終了
する様子を表している。結晶体が成長するときの曲線の
傾きを結晶化速度とした。 結晶化度:溶融したサンプルを液体窒素中で急冷して調
製した非晶サンプルを、示差熱量計により室温から20
℃/分で昇温し、昇温過程で結晶化を進行させて、その
とき生成した結晶相の融解熱量から下記式により求め
た。
【0037】
【数13】 曲げ強度:ASTM D−790に準じて測定した。 引張強度:ASTM D−638に準じて測定した。
【0038】実施例1〜7、比較例1 無機化合物として、表1に示す組成比(重量比)のタル
クとケイフッ化ナトリウム(Na2 SiF6 )の混合微
粉末を、電気炉中、900℃で約1時間加熱して製造し
た加熱生成物(コープケミカル(株)製 ソマシフ)を
使用し、該無機化合物10gを、各々エチレングリコー
ル540g中に分散させ、さらに末端基成分であるヒド
ロキシエチレンスルホン酸ナトリウムを所定量添加し、
室温で60分間撹拌した。これを撹拌装置つきのオート
クレーブに導入して90℃に保った後、テレフタル酸ジ
メチル500gおよび前記末端基成分を系内に添加して
エステル交換反応を行った後、常法により重合反応を進
行させて、ポリエチレンテレフタレートが主成分である
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた組成
物の各特性値を測定し、その結果を表2に示す。なお比
較例1は、ポリエステルに末端基成分および無機化合物
を添加しなかったポリエチレンテレフタレートのみを、
比較例2はポリブチレンテレフタレートのみである。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】実施例8〜13、比較例3 Na2 SiF6 (17.5重量部)と天然タルク82.
5重量部)とからなる混合物を900℃で1時間加熱し
て得られた生成物である無機化合物(コープケミカル
(株)製 ソマシフ)を、エチレングリコールに分散さ
せ、さらに末端基成分であるヒドロキシエチレンスルホ
ン酸ナトリウムを添加し、室温で60分間撹拌した。こ
れを撹拌つきのオートクレーブに導入して90℃に保っ
た後、テレフタル酸ジメチルを系内に添加してエステル
交換反応を行った後、常法により重合反応を進行させて
ポリエチレンテレフタレートが主成分である熱可塑性ポ
リエステル樹脂の組成物を得た。次いで、これに混練機
を用いα−オレフィン系共重合体を配合(200℃)し
た。無機化合物の配合量、共重合成分の配合量、α−オ
レフィン系共重合体の種類および配合量を表3に示す。
【0042】
【表3】 前記得られた組成物の各特性値を測定し、その結果を表
4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【発明の効果】本発明の熱可塑性共重合ポリエステル樹
脂組成物は、結晶化速度が速く、結晶化度が高く、結晶
性が優れ、耐熱性が向上したものである。すなわち、熱
可塑性ポリエステル末端基にスルホン酸塩化合物を結合
することにより、低温における結晶化速度がより向上す
る。つまり本発明の組成物を用いれば寸法安定性に優れ
た成形品を得ることができ、本発明組成物はエンジニア
リング用成形材料としては勿論のこと、フイルムや繊維
への応用も可能である。特にガスバリヤー性や吸水率の
改善されたフイルムなどへの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶化過程および結晶化速度の一例を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠田 宜宏 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 瀬倉 剛 埼玉県浦和市東仲町27−9 (72)発明者 山口 明 新潟県新潟市太平3−32−12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】末端基の一部または全部が下記一般式
    (I)で示される基である熱可塑性ポリエステル樹脂お
    よび無機化合物を含有する組成物であって、該組成物の
    エネルギーの値が下記数式(1)および(2)を満足す
    ることを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。 【化1】 (Rは炭素数1〜20の二価の脂肪族または芳香族炭化
    水素基、Lはアルカリ金属を示す。) 【数1】 【数2】 (Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσ
    e はラメラの表面エネルギーを示す。)
  2. 【請求項2】無機化合物が組成物中において、M(アル
    カリ金属)、Mg、Si、OおよびFから構成される無
    機化合物(a)およびM(前記と同義)、MgおよびF
    のみから構成される無機化合物(b)として確認できる
    請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  3. 【請求項3】無機化合物が、M2 SiF6 (式中、Mは
    アルカリ金属を示す)とタルクとを重量比で10:90
    〜50:50で混合した微粉末の加熱生成物である請求
    項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  4. 【請求項4】無機化合物が、M2 SiF6 (式中、Mは
    アルカリ金属を示す)、タルクおよびA1化合物とを含
    む微粉末混合物の加熱生成物である請求項1記載の熱可
    塑性ポリエステル樹脂組成物。
  5. 【請求項5】無機化合物が、一般式(III): 【化2】 (式中、Mはアルカリ金属を、pは0.05〜0.5の
    数字を、およびqは0.1〜1.0を示す)で表される
    層状ケイ酸塩および/または一般式(IV): 【化3】 (式中、Mおよびqは前記と同義)で表される層状ケイ
    酸塩および下記一般式(V)で表される化合物を含有す
    る請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。 【化4】 (式中、Mはアルカリ金属を示す)
  6. 【請求項6】さらに、ポリエステル樹脂に反応または相
    互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体を
    含有する請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成
    物。
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