JP3585593B2 - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶化速度および結晶化度が改良され、成型性に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、エンジニアリング用成形材料としてはもちろんのこと、フイルムや繊維などへの応用も期待できる。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレートは、その優れた機械的特性、耐薬品性およびガスバリヤー性を生かし、エンジニアリング用成形材料など、種々の分野へとその用途を拡大している。最近では高い結晶融点を生かし、電子レンジで使用可能な食品容器や、電子部品などのより耐熱性が要求される用途も出てきており、結晶化させたポリエチレンテレフタレートの耐熱性素材としての使用が期待されている。
【0003】
しかしポリエチレンテレフタレートは結晶化速度が遅い、特に低温における結晶化速度が遅いという問題点がある。従って、このようなポリエチレンテレフタレートを他のプラスチックを射出成形する際に通常用いられる金型温度、すなわち120℃以下で成型した場合、得られる成型品はその表面と内部に結晶化度の差が生じ、機械的性質、寸法安定性が不均一となり、実用に耐え得ることが極めて困難なものとなる。そのため充分な結晶化度を有する成形品を得るために、成型の際、高温の金型を使用する方法や、タルクなどの結晶核剤およびポリエチレングリコールなどの結晶化促進剤を添加する方法などが現在提案されている。しかしながら上記のような方法では、結晶性改良の効果は多少認められるものの、結晶化速度はやはり遅く、結晶性もまた不充分であるのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、結晶化速度が遅く、結晶化度が高く、結晶性が優れ、かつ耐熱性が向上した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することである。特に、成型品の内部と表面における結晶化度の差がなく、低温金型(60〜120℃)での成型品の結晶化度が向上された熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究した結果、特定のスルホン酸塩化合物の残基を特定量含有する熱可塑性ポリエステル樹脂に、層状ケイ酸塩を添加することによって、結晶化速度および耐熱性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、末端基の一部または全部が下記一般式(I)で示される基である熱可塑性ポリエステル樹脂および層状ケイ酸塩を含有する組成物であって、該組成物のエネルギーの値が下記数式(1)および(2)を満足することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物、およびさらにポリエステル樹脂に反応または相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体を含有する前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
【0006】
【化5】
Figure 0003585593
(Rは炭素数1〜20の二価の脂肪族または芳香族炭化水素基、Lはアルカリ金属を示す。)
【0007】
【数3】
Figure 0003585593
【0008】
【数4】
Figure 0003585593
(Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσe はラメラの表面エネルギーを示す。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるポリエステルは、通常の熱可塑性ポリエステル樹脂が用いられ、特別の制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステルが挙げられる。さらに、上記ポリエステルの構成成分と他の酸成分および/またはグリコール成分(例えばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタール酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ダイマー酸のような酸成分、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールアルキレンオキシド付加体のようなグリコール成分)を共重合したポリエステル、芳香族ポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル・ポリラクトンブロック共重合体、ポリアリレートなどの広義のポリエステルも使用される。なかでもポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、前記熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独または複数樹脂のブレンド(たとえば、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとのブレンドなど)、もしくはそれらの共重合体(たとえば、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとのポリエステルポリエーテル共重合体など)であってもよい。特に融点が200℃〜300℃のものが耐熱性の点から最も好ましい。
【0010】
次に前記熱可塑性ポリエステルの末端基の一部又は全部が前記一般式(I)で示される基にするために、該ポリエステルを製造する際、重合完結までの任意の段階で下記一般式(II)で示されるスルホン酸塩化合物を配合すればよい。
【0011】
【化6】
Figure 0003585593
(式中、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を、Xはエステル結合形成基を、およびLはアルカリ金属を示す)
一般式(II)中のRの炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基のうち、好ましくは、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基および炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。Rの具体例としてメチレン、エチレン、ブチレン、フェニレンなどが挙げられる。Xであるエステル結合形成基の好ましい例として、ヒドロキシル基、カルボキシル基などが挙げられ、さらに好ましくはヒドロキシル基である。Lであるアルカリ金属は、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、なかでもナトリウムが好ましい。
【0012】
一般式(II)で示されるスルホン酸塩化合物の具体例として、ヒドロキシエチレンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシブチレンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシフェニレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシエチレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシブチレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシフェニレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。前記スルホン酸塩化合物(II)の添加量は熱可塑性共重合ポリエステルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。該添加量が0.1モル%未満のばあい、低温での結晶化速度改善の効果はほとんどなく(分子鎖の運動性が向上しない)、一方該添加量が10モル%を越えると結晶化を大きく阻害してしまうので好ましくない。
【0013】
本発明において配合する層状ケイ酸塩は、M2SiF6 (式中、Mはアルカリ金属、好ましくはLi、NaおよびKである)とタルクの混合物の加熱生成物であって、その混合割合が重量比で10:90〜50:50、好ましくは15:85〜40:60である混合微粉末に、場合によりAl化合物を加えた混合物を加熱して得られる生成物であることが好ましい。
好ましいM2 SiF6 として、Li2 SiF6 、Na2 SiF6 、K2 SiF6 などが例示され、より好ましくはNa2 SiF6 である。
2SiF6 は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。特に2種以上を混合した場合には、ポリエステルの重合におけるグリコール類中での膨潤度や、加熱生成物中の層状ケイ酸塩の形状やアスペクト比を調節できる利点があり、好ましい。
2 SiF6 の2種以上を混合する場合の好ましい例としては、Na2 SiF6 とLi2 SiF6 の混合物、Na2 SiF6 とK2 SiF6 の混合物などが挙げられる。また上記のM2 SiF6 の代わりにM2 SiF6 の一部をMFに代えてM2 SiF6 とMFの混合物を使用してもよい。
【0014】
なお前記タルクは、3MgO・4SiO2 ・H2 Oが主成分で、少量ではあるが、Alを含むものが多く、本発明では通常用いられているものであれば特に制限なく使用できる。またAl含量を増やすためにAl2 3 などのAl化合物をM2 SiF6 およびタルクと共に混合してもよい。
層状ケイ酸塩の製造方法としては、所定割合のM2 SiF6 とタルクおよび場合によってAl化合物とをたとえばボールミルのような粉砕機を用いてそれぞれ粉砕し、混合後、耐熱性容器に入れ、電気炉やガス炉のような加熱炉中で所定の温度に保ち、所定時間保持する方法などが挙げられる。加熱温度は、収率、膨潤性などの点から700〜1000℃とするのが好ましい。
前記方法で得られる層状ケイ酸塩は下記一般式(III) および/または(IV)で示される2:1型の層状ケイ酸塩および(V)で示される化合物が主なものであるが、それ以外にケイ酸、ケイ酸化合物などの成分も含み、それらの含有量は生成条件により異なる。
【0015】
【化7】
Figure 0003585593
(式中、Mはアルカリ金属を示し、Li、NaおよびKが好ましい。pは0.05〜0.5の数字を、およびqは0.1〜1.0の数字を示す)
【0016】
【化8】
Figure 0003585593
【0017】
【化9】
Figure 0003585593
なお前記層状ケイ酸塩において、原料であるタルク中に含まれるFeなどの不純物がMg、Siと一部置換したものも生成する可能性があるが、少量であれば特に問題はない。
【0018】
一般式(III)、(IV)で示される2:1型の層状ケイ酸塩は、層間電荷を有しないタルク構造を基に生成するため、タルクの粒径に近い微細(平均粒径:1〜50μm程度)な薄片または鱗片状のものが得られる。また層間のアルカリイオンは0より大きく1より小さいものが混じり合っていると考えられ、四面体層、八面体層よりなる3層構造部もそれに応じて構成する元素比率が異なるものが混じり合っていると判断できる。それ故、それ等の層状ケイ酸塩は、タルクの変性体あるいは誘導体とみなすことができ、Si主体の2つの四面体層がMg、F主体の八面体層を間にはさむ3層構造をとる2:1型の層状ケイ酸塩であり、その連続する3層構造と3層構造の間の層間にアルカリイオンが存在する構造となる。なお上記層状ケイ酸塩には膨潤タイプと非膨潤タイプがあり、広義の雲母やバーミキュライトの範疇に属する化合物が主体である。
【0019】
前記層状ケイ酸塩の具体例として、NaMg2.5 Si10、LiMg2.5 Si10、KMg2.5 Si10などの四ケイ素フッ素雲母、およびNa0.6 0.99Mg2.5 2.9 (Si3.8 4.0,Mg0.2 )O9.7 10.31.7 2.3 、K0.6 0.99Mg2.5 2.9(Si3.8 4.0,Mg0.2 )O9.7 10.31.7 2.3 などの化合物が挙げられる。
なお前記一般式(V)で示される化合物としては、NaMgF、LiMgF、KMgFなどが例示される。
【0020】
前記本発明で用いられる層状ケイ酸塩は、後述する方法によって得られる熱可塑性ポリエステル組成物においては、下記無機化合物(a)および無機化合物(b)として確認することができる。
無機化合物(a):
M(アルカリ金属)、Mg、Si、OおよびFから構成される無機化合物
無機化合物(b):
M(前記と同義)、MgおよびFのみから構成される無機化合物
なお前記無機化合物(a)の存在の有無は、代表散乱角2θ=7.1度における散乱強度により判断でき、また、無機化合物(b)の存在の有無は、代表散乱角2θ=23.1度における散乱強度により判断できる。さらに、各代表散乱角における強度比により、これらの存在割合を定量的に評価することができる。
【0021】
本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂と層状ケイ酸塩の配合量は、成形加工の際の流動性や表面特性の点から、熱可塑性共重合ポリエステル樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.1〜25重量部である。なお層状ケイ酸塩の粒径は、熱可塑性共重合ポリエステル組成物の用途、要求される性能などに応じて選択することができる。一般的には微細なものがよく、平均粒径が約10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。
【0022】
次に本発明組成物を得る方法としては、ポリエステルの原料であるグリコール類に、予め前記層状ケイ酸塩を分散させて膨潤処理すること以外は、通常の熱可塑性ポリエステルの製造方法に従って製造することができる。その際使用される触媒、つや消し剤安定剤などの添加剤に、特別の制限はない。
本発明では、層状ケイ酸塩の分散を通常の混練機を用いて行なうのではなく、ポリエステル樹脂の重合中に行なうことにより、層状ケイ酸塩を均一にポリエステル樹脂中に分散させて結晶性を向上させている。
上記グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ブチレングリコールなど、熱可塑性ポリエステル樹脂の原料と同じグリコールを用いることが好ましい。また、グリコール類に層状ケイ酸塩を分散させて膨潤処理する方法としては、特に限定されるものではないが、グリコール類中に層状ケイ酸塩を長時間浸漬させる方法、グリコール類中に層状ケイ酸塩を分散させた状態で加熱撹拌させる方法、あるいは超音波処理、浸蘯など、任意の方法を採用することができる。この際に共重合成分である一般式(II)で示される化合物を同時に添加してもよく、むしろそうする方が好ましい。
【0023】
以上かかる方法によって得られた本発明組成物は、該組成物のエネルギーの値が下記数式(1)および(2)を満足することを特徴としている。
【0024】
【数5】
Figure 0003585593
【0025】
【数6】
Figure 0003585593
(Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσe はラメラの表面エネルギーを示す。)
本発明においてUおよびσ×σe は以下の方法によって求められる。
(1)まず試料より小片を切り出しこれを2枚のカバーガラス間に挟み、300℃×3分で溶融させて薄膜(〜20μm)を形成し、すばやく設定温度(Tc:結晶化温度)までホットプレート上で冷却し、その後の等温結晶化過程でのHv強度の角度分布を一次元46個のphoto diode array 上に取り込み、時分割測定をして得られた散乱強度(I)と散乱ベクトル(q)を求め、式▲1▼から結晶相の体積分率Qの経時変化を求める。なお光源にはHe−Ne laser (λ=632.8nm)を用いた。Qと時間との関係を図1に一例として示す。
【0026】
【数7】
Figure 0003585593
(2)次に、初期ステージをAvramiの式▲2▼にあてはめることにより、結晶速度定数k、Avrami指数nが求められ、式▲3▼より線成長速度Gを算出する。
【0027】
【数8】
Figure 0003585593
【0028】
【数9】
Figure 0003585593
(式▲2▼においてもtは時間を、Q∞はt=∞で飽和したときの結晶相の体積分率を示す。)
(3)各温度におけるGを算出し、下記Hoffman−Lauritzen の式▲4▼を用いて、前記値をプロットすることによりGo 、U、σ×σe を求めることができる。
【0029】
【数10】
Figure 0003585593
〔式中、Uは活性化エネルギーを、Gは線成長速度を、Go は線成長速度定数を、Rgはガス定数(cal・K−1・mol−1)を、Tcは結晶化温度(K)を、Tgはガラス転移温度(K)を、ΔT=Tm−Tc(Tm は平衡融点)を、fおよびkは下記式▲5▼および▲6▼により算出した値である。〕
【0030】
【数11】
Figure 0003585593
【0031】
【数12】
Figure 0003585593
(式▲6▼において、aは結晶化様式に対する定数を示し、regimeIII 、Iの場合a=4、regimeIIの場合a=2であるboはステム厚を、ΔHfは溶解エンタルピーを、kはボルツマン定数を示す)〕
【0032】
本発明組成物において、該組成物を成形する際に、成形品表面の結晶性をさらに向上させるために、該組成物に、さらにポリエステル樹脂と反応または相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体を配合してもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂と反応または相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体としては、具体的には、α−オレフインとα、β−不飽和カルボン酸の誘導体との共重合体が挙げられる。該共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体、その他どのようなものでもよい。
【0033】
α−オレフィンとしては、炭素数2〜4のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1などが用いられる。なかでもエチレンは重合性が高く分子量の高いポリマーを与える点から好ましい。
α、β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などが用いられる。
上記α−オレフィン系共重合体の熱可塑性ポリエステル樹脂と反応する官能基として、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基(オキシカルボニル基)などが挙げられる。
上記α−オレフィン系共重合体は、さらに熱可塑性ポリエステル樹脂と反応する官能基を有するモノマー、例えば、グリシジルメタクリレート、フマル酸、無水マレイン酸などを反応させることもできる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂と相互作用する官能基を有するα、β−不飽和カルボン酸の誘導体は、上記した不飽和カルボン酸を1価または2価の金属化合物と反応させて得られるイオン性化合物である。
【0034】
α−オレフィン系共重合体中のα−オレフィン成分は、50モル%以上、特に80モル%以上が好ましい。官能基は、α−オレフィン共重合体中0.1〜50モル%占める。またカルボキシル基の10モル%以上がナトリウム、カリウム、亜鉛等で中和されたものがよい。
α−オレフィン系共重合体の好ましい具体例として、エチレン−メタクリル酸共重合体ナトリウム塩、たとえば、イー・アイ・デュポン社より商品名“サーリン”として市販されている一連のポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、たとえば、住友化学社より市販されている“ボンドファースト”などを挙げることができる。
α−オレフィン系共重合体の配合量は、熱可塑性ポリエステル樹脂および層状ケイ酸塩の合計100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。該配合量が0.1重量部未満であると本発明の効果を得るに不十分であり、一方、30重量部を越えるとマトリックスとなる熱可塑性ポリエステル樹脂の力学特性を下げることになり、それぞれ好ましくない。
【0035】
なお、本発明の目的に反しないかぎり、上記成分〔熱可塑性ポリエステル樹脂および層状ケイ酸塩〕以外にも、必要に応じてタルク、ワラステナイト、モンモリロナイト、ガラス繊維などの強化剤、難燃剤、離型剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を添加することができる。なおこれらの添加剤はポリエステル樹脂の重合中ではなく、重合後に加えることが好ましい。
また、前記α−オレフィン系共重合体の配合は押し出し機を用い熱可塑性ポリエステル樹脂に溶融混練して行うのが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお実施例において、各特性値は以下の方法によって測定した。
極限粘度:フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(重量比6/4)中、30℃で測定した。
結晶化速度:時分割光散乱装置を用いて結晶化過程を解析して求めた値である。図1はその結晶化過程および結晶化速度の一例を示すグラフであり、縦軸は結晶相の体積分率(結晶化終了後の値を1とした)を、横軸は時間(結晶化させる温度に定めたホットプレート上に、溶融したサンプルを乗せた時間を0とした)を示す。図の曲線は、時間0から誘導時間を経た後、結晶体が成長し始め、やがてサンプルが結晶相で満たされ、結晶化が終了する様子を表している。
結晶体が成長するときの曲線の傾きを結晶化速度とした。
結晶化度:溶融したサンプルを液体窒素中で急冷して調製した非晶サンプルを、示差熱量計により室温から20℃/分で昇温し、昇温過程で結晶化を進行させて、そのとき生成した結晶相の融解熱量から下記式▲7▼により求めた。
【0037】
【数13】
Figure 0003585593
曲げ強度:ASTM D−790に準じて測定した。
引張強度:ASTM D−638に準じて測定した。
【0038】
実施例1〜7、比較例1〜2
層状ケイ酸塩として、表1に示す組成比(重量比)のタルクとケイフッ化ナトリウム(Na2 SiF6 )の混合微粉末を、電気炉中、900℃で約1時間加熱して製造した加熱生成物(コープケミカル(株)製 ソマシフ)を使用し、該層状ケイ酸塩10gを、各々エチレングリコール540g中に分散させ、さらに末端基成分であるヒドロキシエチレンスルホン酸ナトリウムを所定量添加し、室温で60分間撹拌した。これを撹拌装置つきのオートクレーブに導入して90℃に保った後、テレフタル酸ジメチル500gおよび前記末端基成分を系内に添加してエステル交換反応を行った後、常法により重合反応を進行させて、ポリエチレンテレフタレートが主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた組成物の各特性値を測定し、その結果を表2に示す。
なお比較例1は、ポリエステルに末端基成分および層状ケイ酸塩を添加しなかったポリエチレンテレフタレートのみを、比較例2はポリブチレンテレフタレートのみである。
【0039】
【表1】
Figure 0003585593
【0040】
【表2】
Figure 0003585593
【0041】
実施例8〜13、比較例3
Na2 SiF6 (17.5重量部)と天然タルク82.5重量部)とからなる混合物を900℃で1時間加熱して得られた生成物である層状ケイ酸塩(コープケミカル(株)製 ソマシフ)を、エチレングリコールに分散させ、さらに末端基成分であるヒドロキシエチレンスルホン酸ナトリウムを添加し、室温で60分間撹拌した。これを撹拌つきのオートクレーブに導入して90℃に保った後、テレフタル酸ジメチルを系内に添加してエステル交換反応を行った後、常法により重合反応を進行させてポリエチレンテレフタレートが主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂の組成物を得た。次いで、これに混練機を用いα−オレフィン系共重合体を配合(200℃)した。
層状ケイ酸塩の配合量、共重合成分の配合量、α−オレフィン系共重合体の種類および配合量を表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0003585593
前記得られた組成物の各特性値を測定し、その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
Figure 0003585593
【0044】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性共重合ポリエステル樹脂組成物は、結晶化速度が速く、結晶化度が高く、結晶性が優れ、耐熱性が向上したものである。すなわち、熱可塑性ポリエステル末端基にスルホン酸塩化合物を結合することにより、低温における結晶化速度がより向上する。つまり本発明の組成物を用いれば寸法安定性に優れた成形品を得ることができ、本発明組成物はエンジニアリング用成形材料としては勿論のこと、フイルムや繊維への応用も可能である。特にガスバリヤー性や吸水率の改善されたフイルムなどへの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶化過程および結晶化速度の一例を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 末端基の一部または全部が下記一般式(I)で示される基である熱可塑性ポリエステル樹脂および層状ケイ酸塩を含有する組成物であって、該組成物のエネルギーの値が下記数式(1)および(2)を満足することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
    Figure 0003585593
    (Rは炭素数1〜20の二価の脂肪族または芳香族炭化水素基、Lはアルカリ金属を示す。)
    Figure 0003585593
    Figure 0003585593
    (Uは活性化エネルギー、σは側面エネルギーおよびσe はラメラの表面エネルギーを示す。)
  2. 層状ケイ酸塩が組成物中において、M(アルカリ金属)、Mg、Si、OおよびFから構成される無機化合物(a)およびM(前記と同義)、MgおよびFのみから構成される無機化合物(b)として確認できる請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  3. 層状ケイ酸塩が、M2 SiF6 (式中、Mはアルカリ金属を示す)とタルクとを重量比で10:90〜50:50で混合した微粉末の加熱生成物である請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  4. 層状ケイ酸塩が、M2 SiF6 (式中、Mはアルカリ金属を示す)、タルクおよびA1化合物とを含む微粉末混合物の加熱生成物である請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  5. 層状ケイ酸塩が、一般式(III):
    Figure 0003585593
    (式中、Mはアルカリ金属を、pは0.05〜0.5の数字を、およびqは0.1〜1.0を示す)で表される層状ケイ酸塩および/または一般式(IV):
    Figure 0003585593
    (式中、Mおよびqは前記と同義)で表される層状ケイ酸塩および下記一般式(V)で表される化合物を含有する請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
    Figure 0003585593
    (式中、Mはアルカリ金属を示す)
  6. さらに、ポリエステル樹脂に反応または相互作用する官能基を有するα−オレフィン系共重合体を含有する請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
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