JPH09322821A - 歯ブラシ - Google Patents

歯ブラシ

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JPH09322821A
JPH09322821A JP8142789A JP14278996A JPH09322821A JP H09322821 A JPH09322821 A JP H09322821A JP 8142789 A JP8142789 A JP 8142789A JP 14278996 A JP14278996 A JP 14278996A JP H09322821 A JPH09322821 A JP H09322821A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 歯間部や歯頸部、小窩裂溝等の、歯垢が堆積
しやすく、しかも通常歯ブラシでは堆積した歯垢の除去
が困難であると認識されている口腔内細部に対する清掃
効果に優れ、歯肉への当たりは柔らかくて歯肉を傷つけ
たり痛みを感じさせないにもかかわらず毛腰が強く歯垢
除去効果に優れる歯ブラシを提案せんとするものであ
る。 【解決手段】 ポリエステル樹脂製の海部の中にポリア
ミド樹脂製の2〜5つの島部を散在させた海島型複合繊
維が植毛台に植毛され、前記植毛された海島型複合繊維
は植毛基部から一定の長さにわたり島部と海部からなる
複合部を有し、それより先側については島部のみを露出
させて2〜5本の芯毛が所定長形成された歯ブラシ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯間部や歯頸部、
小窩裂溝等の、歯垢が堆積しやすく、しかも通常歯ブラ
シでは堆積した歯垢の除去が困難であると認識されてい
る口腔内細部に対する清掃効果を高めた歯ブラシに関す
る。
【0002】
【従来の技術】歯間部や歯頸部、小窩裂溝等は歯垢が堆
積しやすく、しかも堆積した歯垢の除去が困難であるこ
とから、従来よりこれら口腔内細部が効果的に清掃でき
る歯ブラシが求められている。これら口腔内細部の清掃
を目的とした歯ブラシとしては特開平6−141923
号で開示された先鋭テーパー加工したものが知られてい
る。この歯ブラシはフィラメントが先細であるため、フ
ィラメント先端を口腔内細部に挿入しやすい利点がある
反面、比較的鋭利な先端構造を有するため歯肉を傷つけ
たり痛みを感じさせたりする欠点がある。またフィラメ
ントの毛腰も不十分になりやすいことに加えて清掃対象
部位に接触するフィラメント先端面の合計面積が少ない
ことから、刷掃力が弱く、必ずしも満足のいく歯垢除去
効果が得られないという欠点がある。
【0003】一方、フィラメント先端を複数本の極細繊
維に分繊した複合モノフィラメントを用いて細部清掃を
可能にせんとする技術もある。このような技術としては
例えば特開平6−277117号、特開平7−2318
13号、特開平3−99604号がある。ここで複合モ
ノフィラメントという意味は異種材質の繊維が複合して
1本のモノフィラメントを構成しているという意味であ
る。
【0004】例えば特開平6−277117号では、束
ねた極細繊維の周囲を合成樹脂で被覆し、その先端側所
定範囲の被覆樹脂を除去して極細繊維を露出させた複合
モノフィラメントを用いることが提案されている。
【0005】また特開平7−231813号では、易溶
解成分を含むポリマーの混合体を溶融紡糸機を用いて紡
糸し、得られたモノフィラメントをハンドルに植毛した
後、このモノフィラメントの先端部をカ性ソーダ水溶液
等の加水分解薬剤に浸漬して浸食させることにより、モ
ノフィラメント先端をランダムに分割した複合モノフィ
ラメントを用いる技術が提案されている。
【0006】これら先端を複数本化した複合モノフィラ
メントを用いたブラシは、被清掃物との接触が先端細毛
で行われるため当たりがソフトで被清掃物を傷つけるこ
とがなく、しかも先端以外は全体が一体化したモノフィ
ラメントであるため適度な毛腰も発揮できるという一般
的な効果を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら特開平6
−277117号で提案された技術は、洗車用ブラシ、
塗料用ブラシ等をも含むブラシ一般についての技術であ
るために歯ブラシ固有の問題に対しての考察が不十分で
あり、したがってこの技術を歯ブラシに応用するには問
題があった。
【0008】つまり特開平6−277117号記載の技
術では、束ねた芯毛の周囲を樹脂被覆することにより全
体を一体化しているが、このような複合モノフィラメン
トは、芯毛間に存在する空隙に水分が残留するため、雑
菌が繁殖しやすく不衛生である。また芯毛を包囲してい
る被覆樹脂が裂けやすく、耐久性に劣るという問題があ
る。
【0009】また特開平7−231813号記載の技術
では、易溶解成分を含むモノフィラメント先端を易溶解
成分の溶解により複数の繊維に分割しているため、芯毛
の本数や直径の制御が困難であり、しかも特開平6−2
77117号と同様、使用途上で分割の根元が裂けて当
初の毛腰が維持できなくなる可能性がある。
【0010】このような問題点をある程度解消した技術
としては特開平3−99604号がある。ここで用いら
れている複合モノフィラメントは植毛基部から所定範囲
を海部の中に異材質樹脂製の島部を散在させた海島型複
合繊維部(以下、複合部と称す)となし、この複合部よ
り先端側は島部のみを露出させて芯毛の集合体としたも
のである。この複合モノフィラメントは芯毛相互間に樹
脂が海状に充填されているため、芯毛基部より植毛基部
側に水分が侵入することはなく、芯毛基部が使用中に裂
けるというようなこともない。また芯毛の本数や太さも
制御できるので設計通りの仕様の複合モノフィラメント
が得られ、細部清掃性を重視した歯ブラシ用の複合モノ
フィラメントとして利用できる可能性がある。しかしな
がらこの公報記載の技術も洗車用ブラシ、塗料用ブラシ
等を含むブラシ一般を対象としたものであることから、
歯ブラシに適用した際の固有の条件については考慮され
ていず、この複合モノフィラメントの利点を最大限生か
した歯ブラシの構成は提案されていない。
【0011】本発明は、かかる現況に鑑みてなされたも
のであり、歯間部や歯頸部、小窩裂溝等の、歯垢が堆積
しやすく、しかも通常歯ブラシでは堆積した歯垢の除去
が困難であると認識されている口腔内細部に対する清掃
効果に優れ、更に詳しくは歯肉への当たりが柔らかくて
歯肉を傷つけたり痛みを感じさせないにもかかわらず毛
腰が強く歯垢除去効果に優れる歯ブラシを提案せんとす
るものであり、具体的にはこの目的を達成できる複合モ
ノフィラメントの諸条件を歯ブラシ固有の問題を考察す
ることによって具体的に規定せんとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記課題を
解決するにあたり、歯間部や歯頸部、小窩裂溝等の口腔
内細部に対する清掃性を高めるために必要となる歯ブラ
シの諸特性を鋭意検討した結果、上記目的に叶う歯ブラ
シは次の内容を有する必要があるとの結論にいたった。
先ず複合モノフィラメントの基本構成としては特開平3
−99604号で開示されたもの、即ち植毛基部側にお
いては海部の中に島状芯部が散在し、海部を構成する樹
脂が島状芯部の周囲を取り囲み且つ島状芯部相互間を埋
める複合的な断面構造を有し、且つ先端側においては島
状芯部のみが所定長さ露出して芯毛を構成している形態
(以下、海島型複合繊維と称し、基部側における海部と
島部が複合している部分を複合部と称す)が採用でき
る。また島状芯部の素材(以下、島成分と称す)として
はポリアミド樹脂を用い、海部を構成する素材(以下、
海成分と称す)としてはポリエステル樹脂が適してい
る。更に芯毛の本数は2〜5本の範囲から選択する。
【0013】複合部の直径は0.150〜0.300m
m、芯毛の直径は0.03〜0.07mm、芯毛の露出
長は0.2〜4.0mmの範囲から選択することが好ま
しく、より好ましい芯毛の露出長は0.5〜4.0mm
の範囲である。
【0014】また植毛された海島型複合繊維の植毛基部
から先端までの長さは7〜11mmに設定することが好
ましい。
【0015】また複合部の端部側所定範囲にはテーパー
加工を施すことが好ましい。
【0016】複合部の端部に施すテーパー加工の程度と
しては、複合部の根幹部の直径を100%としたとき、
露出した芯毛と複合部との境界を基点として、この基点
より複合部側に1mm寄った位置での直径が70±15
%、3mmで89±8%、5mmで93±7%となるよ
うなテーパー加工が採用できる。
【0017】
【作用】本発明の歯ブラシは各複合モノフィラメントの
先端に露出した2〜5本の芯毛の全てあるいはその一部
が、歯間部や歯頸部、小窩裂溝等の口腔内細部に入り込
み、その背後に位置する複合部が複合モノフィラメント
全体の毛腰を維持する。芯毛は細毛であることからこれ
ら部位に入り込みやすく、また柔らかい。またポリアミ
ド樹脂製であることから適度な吸水性を示し、歯や歯肉
に馴染みやすい。したがって芯毛が歯肉に接触しても歯
肉を傷つけたり痛みを感じることはない。また島状芯部
の周囲及び島状芯部相互間には海成分が隙間なく充填さ
れているため、芯毛基部より植毛基部側には水分は侵入
せず、また使用中に芯毛基部から裂け目が入ることもな
い。しかも海成分がポリエステル樹脂であることから、
吸水性が低く水中での使用に優れている。
【0018】複合部の直径を0.150〜0.300m
m、芯毛の直径を0.03〜0.07mm、芯毛の露出
長を0.2〜4.0mmとした場合、口腔内細部への挿
入性、口腔内細部内奥への到達性、到達した芯毛による
歯垢除去作用はより好ましいものとなり、更に芯毛の露
出長を0.5〜4.0mmとした場合、口腔内細部への
挿入性、口腔内細部内奥への到達性、到達した芯毛によ
る歯垢除去作用はより一層好ましいものとなる。
【0019】また植毛された海島型複合繊維の植毛基部
から先端までの長さが7〜11mmの範囲であれば、清
掃効果を得るうえでの充分な毛腰が得られるとともに歯
間部への挿入性にも優れ、操作もしやすい。
【0020】複合部の端部側所定範囲にテーパー加工を
施すことで、細部への挿入性、到達性は一層高まる。
【0021】
【発明の実施の形態】次に本発明の詳細を説明する。図
1は植毛部1とハンドル2とから構成された歯ブラシの
標準形状を示している。本発明が対象とする歯ブラシは
このような標準的なものは勿論のこと、植毛部1及びハ
ンドル2の形状を変形させたものも含んでいる。植毛部
1は図2に示すような植毛束3を集合させることにより
構成され、この植毛束3は10〜40本のフィラメント
4から構成されている。通常、フィラメント4としては
単繊維であるモノフィラメントが用いられているが、本
発明では、先端側を複数本に分繊した複合モノフィラメ
ントを用いる。
【0022】図3は本発明に用いる複合モノフィラメン
ト4Aの概要である。複合モノフィラメント4Aは複合
部5と分繊部6とから構成されている。本発明ではこの
複合モノフィラメントの具体的構成が重要である。複合
部5は図4に示すように離間配置された3つの島状芯部
7とこれら島状芯部の周囲を取り囲み且つ島状芯部相互
間を埋める海部8とよりなる断面構造を有し、島状芯部
7と海部8とが一体となっている。分繊部6は海部8を
除いて島状芯部7のみを複合部5から所定長さ露出させ
て構成され、3本の芯毛7Aは正三角形の頂点位置にそ
れぞれ離間配置させた構成となっている。
【0023】島状芯部7相互間には隙間のない状態で海
部8が存在するため複合部5に水分が残留することはな
く、雑菌が繁殖することはないとともに、複合モノフィ
ラメント全体の毛腰も強くしている。
【0024】また複合部5の先端部における一定範囲に
はテーパー加工を施している。この複合部5のテーパー
加工は、本複合繊維を製造過程で行われる海部8の溶解
と同時に行うことができ、その程度は溶解を制御するこ
とによって調整できる。
【0025】テーパー加工の程度としては、例えば根幹
部の直径を100%としたときに、露出した芯毛と複合
部との境界を基点として、この基点より複合部側への距
離dを1mmとした位置での直径が70±15%、3m
mで89±8%、5mmで93±7%となるようなテー
パー加工であることが好ましい。尚、ここで示した各位
置での直径の範囲は、各位置における直径がこの範囲で
あれば全く自由に選択できるということを意味しない。
一つの位置における直径がその範囲内において上限値に
近いような場合は他の位置における直径もほぼ同様に上
限値に近い値をとるように調整する。複合部5をテーパ
ー状にすることで細部への挿入性、到達性がさらに良く
なる。テーパーの程度が前述したものよりも鋭くなる
と、細部への挿入性、到達性は良くなる反面、強度が落
ち、清掃性が悪くなる。またテーパーの程度が前述のも
のより鈍くなると、強度を保持でき清掃性も良くなる反
面、挿入性、到達性があまり良くなくなる。前記範囲で
あれば強度及び清掃性を保持しながら、挿入性及び到達
性も良くなる。
【0026】島状芯部7(芯毛7A)はポリアミド樹脂
を素材とし、他方、海部8はポリエステル樹脂を素材と
している。ポリアミド樹脂製の芯毛7Aは適度な吸水性
を示し、歯や歯肉に馴染みやすく、また比較的柔らかい
ため歯肉を傷つけることもない。一方、ポリエステル樹
脂製の海部8は吸水性が低く、水中での使用に優れてい
るため複合モノフィラメントのへたりを防止する。島成
分としてポリアミド樹脂を用い、海成分としてポリエス
テル樹脂を用いることにはフィラメント製造上の利点も
ある。即ち、本発明に用いる複合モノフィラメントは、
先ず海部内に島状芯部を散在させた複合繊維を紡糸した
のち、この複合繊維を多数本束ねて溶解液中に浸漬し、
結束した複合繊維束の両端面から一定深さ入り込んだ位
置までの海部を選択的に溶解させることによって芯毛が
露出した分繊部を形成するのであるが、ポリアミド樹脂
を溶解させることなくポリエステル樹脂のみを選択溶解
させる溶解液は粘度が上昇せず、有害なガスの発生もな
いため、取扱いも容易であるという利点がある。
【0027】本発明においては分繊部6を構成する芯毛
7Aの本数も重要である。芯毛7Aの本数は2〜5本の
範囲である。芯毛7Aが5本を超えると芯毛が互いに接
触する可能性があり、裂けや水分残留の原因となって好
ましくない。最適本数は3本である。
【0028】複合部5及び芯毛7Aのそれぞれの直径並
びに芯毛7Aの露出長も重要な要素である。複合部5の
直径D1は0.150〜0.300mmの範囲が好まし
い。0.150mm未満では毛腰が不十分であるととも
に耐久性に劣り、他方、0.300mmを超えると毛腰
が強すぎて歯肉を傷める可能性がある。芯毛7Aの直径
D2は0.03〜0.07mmの範囲が好ましい。0.
03mm未満では芯毛7Aが柔らかくなり過ぎて芯毛7
A先端部による歯垢の掻き取り効果が期待できない。他
方、0.07mmを超えると芯毛間の距離が狭くなり芯
毛同士が接触して、裂けや水分残留の原因となる。また
口腔内細部への到達性も悪くなる。また芯毛7Aの露出
長L1は0.5〜4.0mmの範囲に設定することが好
ましい。0.5mm未満であると歯間部や歯頸部、小窩
裂溝等の奥部に到達させるには不十分である。芯毛7A
の露出長さは長いほど細深部に対する清掃効果は高い
が、その反面、耐久性が低下する。実用的な耐久性を維
持できる露出長さは4.0mm以下である。芯毛7Aの
露出長さL1は図5に示すように歯間部や歯頸部、小窩
裂溝奥部への到達性に直に反映される。小窩裂溝の深さ
は平均1.050mm、幅は平均0.064mmであり
(歯科新報 ,22,377-381,1929 )、歯間離開度は、次の
表の様な割合で存在している(日歯周誌 ,31(2),608-62
9,1989)。 よって、概ね上記数値範囲であれば、対応できる。
【0029】特に好ましい寸法範囲は、複合部5の直径
D1が0.150〜0.300mm、芯毛7Aの直径が
0.03〜0.05mm、芯毛7Aの露出長L1が1.
0〜2.5mmの範囲である。
【0030】本発明の最も好ましい実施例の1つとして
は、複合部の直径R1が0.20mm、芯毛の直径D2
が0.04mm、芯毛の露出長L1が2.00mm、芯
毛本数が3本であり、且つ芯毛素材でもある島成分がナ
イロン610、海成分が飽和ポリエステル樹脂の一種で
あるポリブチレンテレフタレートを用いたものが例示で
きる。
【0031】また植毛された海島型複合繊維の植毛基部
から先端までの長さは7〜11mmの範囲とすることが
好ましい。あまり長すぎると口中における操作性が悪く
なるとともに毛腰が柔らかくなりすぎて充分な清掃効果
が得られない。他方、短すぎるとブラッシング中の毛の
たわみが少なくなって使用感が悪くなるとともに歯間部
への挿入性も悪くなる。
【0032】複合モノフィラメントは植毛前は図6に示
すように両端に芯毛7Aを露出させた形態、若しくは片
端のみを露出させた形態で供給される。複合モノフィラ
メントの植毛穴への植設は、前記複合モノフィラメント
4Aを10〜40本束ねたうえ、図7に示すようにその
長手方向中央位置に平線20を押し当ててフィラメント
束をU字変形させながら、植毛穴21に打ち込むことに
よって行う。複合モノフィラメント4Aの折曲位置は、
フィラメントの長手方向中央位置とするのが一般的であ
るが、その折曲位置を中央からずらして折曲後のフィラ
メント先端位置に段差を設けることも考えられる。
【0033】複合部5の断面構造は図4で示すもの以外
にも、図8(a)で示すように2本の芯毛を設けたも
の、図8(b)で示すように4本の芯毛を設けたもの、
図8(c)で示すように5本の芯毛を設けるもの等など
が採用できる。また芯毛の断面形状も楕円(図9
(a))、三角形(図9(b))、四角形(図9
(c))等が適宜採用できる。
【0034】
【実施例】次に本発明のより具体的な実施例と、これら
実施例の効果を検証するために行った試験について述べ
る。海成分として極限粘度1.0のポリブチレンテレフ
タレート、島成分として相対粘度2.7のナイロン61
0を用い、海部と島部の面積比率が9:1で、3本の島
状芯部が海部内に散在した海島型複合繊維を溶融紡糸
し、水中に押出して冷却固化させた後、一段目60℃の
温水中で、2段目120℃乾燥雰囲気中で4.5倍に延
伸し、次いで乾熱雰囲気中で弛緩熱セットを実施のう
え、直線状に巻き取って、直径0.200mmの海島型
複合繊維を得た。この海島型複合繊維を束径45mmに
束ねて、包装した後、27mmの長さにカットした。次
いでこのカットされた両端面を露出させた状態で海島型
複合繊維の束を加温した苛性ソーダ溶液に浸漬して、両
端部のポリブチレンテレフタレートよりなる海成分を選
択的に溶解除去し、ナイロン610よりなる島状芯部を
露出させた。このような処理を行った結果、複合部の両
端にそれぞれ長さ2mmの芯毛が露出した複合モノフィ
ラメントを得た。この複合モノフィラメントを24本束
ねたうえ、平線を打ち込み8行3列の植毛部を有する歯
ブラシを作製した。歯ブラシの全体形状としては図1で
示した標準的なものを用いた。植設後の複合モノフィラ
メントは、直径0.200mm×長さ8.0mmの複合
部の先端側に直径0.040mm×長さ2.0mmの芯
毛が露出した寸法関係を有していた。この歯ブラシを用
いて通常のブラッシングを行ったところ、この歯ブラシ
はフィラメント先端を歯間部や歯頸部、小窩裂溝等に無
理なく挿入できるとともに歯垢を除去するのに十分な毛
腰も有していることが確認された。そしてこの歯ブラシ
は口腔内細部に対しての清掃効果に優れるとともに歯肉
への当たりが柔らかくて歯肉を傷つけたり痛みを感じさ
せることがなく、しかも歯垢除去効果に優れ、且つ耐久
性にも優れていた。
【0035】次にこれら効果を確認するために行った試
験について述べる。試験にはそれぞれ図10(a)〜
(d)で示すフィラメントを用いた。図10(a)は複
合部の先端側に3本の芯毛を形成した複合モノフィラメ
ントであり、本発明の実施例である。図10(b)は先
端1.50mmの範囲をテーパ加工したナイロン製モノ
フィラメント、図10(c)は先端8.0mmの範囲を
先鋭テーパー加工したナイロン製モノフィラメント、図
10(d)は先端0.2mmの範囲を先丸加工したナイ
ロン製モノフィラメントである。植毛基部の直径は図1
0(b)のテーパー加工品が0.210mm、図10
(c)の先鋭テーパー加工品が0.180mm、図10
(d)の先丸加工品が0.210mmである。図10
(a)の本発明実施例の複合部の根元部直径は0.20
0mmである。また本発明実施例に関してはその芯部露
出長と芯部直径がそれぞれ異なる9種類のサンプルを用
意して評価した。
【0036】<試験1:細部に対する清掃性>図11
(a)に示すようにL字形に折曲したアクリル板30,
30を対向設置させて、アクリル板間に0.1mmの溝
31を形成し、対向面に仮想汚れを塗布した試験具32
を作製した。この試験具32の上端面に図11(b)に
示すように荷重300gの力で歯ブラシを押し当て、ア
クリル板長手方向に直交する方向に振幅5mm、スピー
ド250rpmでブラッシングを行った。そして図11
(c)に示すようにアクリル板対向面における汚れが除
去された領域の面積Sで細部への清掃性を評価した。汚
れ除去面積は画像解析装置(株式会社ピアス製LA−5
55)を用いて測定した。結果を表1に示す。また、各
例においてフィラメント先端が溝に挿入される様子とこ
の挿入状態でブラッシングした際に、除去される汚れの
領域を図12に示す。
【0037】
【表1】
【0038】試験結果より明らかなように、先端に芯毛
を露出させた本発明実施例の歯ブラシはいずれも細部清
掃性を有し、特に芯部直径0.040mm、芯部露出長
1.5mm以上に設定したものは極めて優れた細部清掃
性を有していることがわかる。これに対して比較例の歯
ブラシのうち先鋭テーパー加工品及びテーパー加工品は
多少の細部清掃性は有するものの充分とはいえず、また
先丸加工品にいたっては細部清掃性はほとんどないこと
が確認された。このような汚れ除去面積の差は、本発明
実施品では芯毛の集合体としての分繊部は溝間に深く入
り込むことができ、且つ入り込んだ分繊部は先端にいた
るまでその束径が維持されており、しかもこの分繊部を
構成する芯毛が独立動作して溝内面を刷掃することがで
き、また全ての芯毛が挿入できなくても何本かの芯毛は
挿入できることから図12(a)に示すように歯ブラシ
植毛部の幅内の汚れを全域にわたって万遍なく除去する
ことができるのに対し、先鋭テーパー加工品は先細であ
ることからフィラメント先端を溝内に挿入させることは
できるものの、フィラメントは先端にいくほど窄まり、
しかもフィラメント本数が1本であることから図12
(c)に示すように汚れ除去に取り残しがあることに原
因がある。また先丸加工品に細部清掃性がほとんどない
のは図12(d)に示すように、この試験で用いた溝幅
がこれらフィラメントの設計思想が前提としている溝幅
よりも狭いためにフィラメント先端が溝間にほとんど挿
入できなかったためである。これらテーパー加工品や先
丸加工品では清掃できないこのような細部は口腔内には
実際多くあり、細部清掃性という観点から評価した場
合、テーパー加工品や先丸加工品では口腔内清掃は不十
分であることがわかる。
【0039】細部の清掃性には主として細部へのフィラ
メントの挿入性と到達性、並びに挿入されたフィラメン
トの特性、形態更にはフィラメント根元側を含むフィラ
メント全体の毛腰等が関係している。図13はこれら要
素のうち細部へのフィラメントの挿入性と到達性をわか
りやすく表したグラフである。この図では本発明実施品
2を本発明の代表例として記載している。このグラフか
らもわかるようにテーパー加工品や先丸加工品はフィラ
メント直径がフィラメント先端に近い位置まで植毛基部
とほぼ同径であるのに対し、本発明実施例では先端から
2.0mm離れた位置までが直径0.06mmの芯毛の
集合体となっており、この各芯毛が個別に細部に侵入し
うる能力を有していることが細部に対する清掃性が発揮
できる原因となっていることが理解される。
【0040】<試験2:耐久性>次に耐久性についての
試験について述べる。サンスター株式会社製ブラッシン
グマシーンを用いて、37℃の水中で荷重300gをか
けた状態でエポキシ板表面に対して10000ストロー
クのブラッシングを行い、刷掃面の広がり指数を測定す
ることで耐久性を評価した。ここで広がり指数とは図1
4に示すように初期状態における刷掃面の横幅をAmm
となし、ブラッシング終了後の刷掃面の横幅をBmmと
なしたときに(B/A)×100で表される数値を意味
している。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】試験結果から明らかなように本発明実施例
のものは比較例であるテーパー加工品、先鋭テーパー加
工品及び先丸加工品に比べてフィラメントのへたりが少
なく耐久性に優れていることがわかる。特に芯部露出長
が1.0mm以下のものは極めてへたりが少ないことが
わかる。これは露出した芯毛が短いほど芯毛は物理的に
強いからである。
【0043】<試験3:使用感>次に使用感についての
官能試験を行った。試験は株式会社サンスター社従業員
15人を対象とし、本発明実施例の歯ブラシと3種類の
比較例歯ブラシを一日ずつ交互に30日間(1種類の歯
ブラシの使用日数は合計10日)使用してもらい、アン
ケートに答えてもらう方式で行った。質問項目は「出血
の有無」と「刺激の有無」である。結果を表3に示す。
尚、ここでは本発明実施品8で本発明を代表させた。
【0044】
【表3】
【0045】表3に示すように、本発明実施例の歯ブラ
シは出血も少なく、また痛みやチクチクする等の刺激も
なく使用感に優れている。これに対して比較例であるテ
ーパー加工品及び先鋭テーパー加工品は出血も多く刺激
も多いことがわかる。これは本発明実施例では細くて柔
らかい芯毛が接触するため、当たりが柔らかく刺激が少
ないのに対し、テーパー加工品では歯肉に接触する直前
位置までが太くて硬いため刺激が強いためであり、また
先鋭テーパー加工品では毛先が硬くて尖っているためで
ある。
【0046】以上、細部清掃性、耐久性、使用感の全て
を総合的に評価した結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】以上、述べたように本発明の歯ブラシは清
掃性、耐久性及び使用感の全てについて満足でき、細部
清掃性を重視した歯ブラシとして極めて高い評価を与え
ることができる。
【0049】
【発明の効果】本発明の歯ブラシはポリエステル樹脂製
の海部の中にポリアミド樹脂製の2〜5の島部を散在さ
せた複合部を植毛基部から所定範囲にわたって存在させ
るとともに、この複合部より先端側には前記島部のみを
所定長さ露出させることによって形成した芯毛2〜5本
が集合した分繊部を存在させた複合モノフィラメントを
使用したので、ブラッシングを行ったときには分繊部を
構成する芯毛の全て、あるいはその一部が、清掃対象部
位である口腔内細部に入り込んで奥部にまで到達し、且
つその背後に位置する複合部が複合モノフィラメント全
体の毛腰を維持するように作用するので、歯間部や歯頸
部、小窩裂溝等の歯垢の堆積しやすく、且つ通常ブラシ
では除去しにくい口腔内細部内の歯垢を効果的に除去す
ることができる。また芯毛は細いため柔らかく、しかも
ポリアミド樹脂製であることから適度な吸水性を有し、
歯や歯肉に馴染みやすいので、歯肉を傷つけたり痛みを
感じさせることもない。また複合部においては島状芯部
相互間には海部が充填状態で存在するため複合部に水分
が侵入して残留することはなく、また使用中に芯毛基部
から裂け目が入ることもない。しかも海成分はポリエス
テル樹脂製であることから、吸水性が低く、水中での使
用に優れている。このように本発明によれば、従来、共
に満足させることが難しかった細部清掃性、耐久性、使
用感の全てについてほぼ満足できる歯ブラシを得ること
ができる。
【0050】複合部の直径を0.150〜0.300m
m、芯毛の直径を0.03〜0.07mm、芯毛の露出
長を0.2〜4.0mmとした場合、口腔内細部への挿
入性、口腔内細部内奥への到達性、到達した芯毛による
歯垢除去作用はより好ましいものとなり、更に芯毛の露
出長を0.5〜4.0mmとした場合、口腔内細部への
挿入性、口腔内細部内奥への到達性、到達した芯毛によ
る歯垢除去作用はより一層好ましいものとなる。
【0051】さらに複合部の直径を0.150〜0.3
00mm、芯毛の直径を0.03〜0.05mm、芯毛
の露出長を1.0〜2.5mmに設定した場合、口腔内
細部への挿入性、口腔内細部内奥への到達性、到達した
芯毛による歯垢除去作用はより一層好ましいものとな
る。
【0052】また植毛された海島型複合繊維の植毛基部
から先端までの長さが7〜11mmの範囲であれば、清
掃効果を得るうえでの充分な毛腰が得られるとともに歯
間部への挿入性にも優れ、操作もしやすい。
【0053】複合部の端部側所定範囲にテーパー加工を
施した場合、細部への挿入性、到達性は一層高まり、特
にテーパー加工の程度を、複合部根幹部の直径を100
%としたとき、露出した芯毛と複合部との境界を基点と
して、この基点より複合部側に1mm寄った位置での直
径が70±15%、3mmで89±8%、5mmで93
±7%となるように設定した場合、十分な強度及び清掃
性を維持しながら、優れた挿入性及び到達性が発揮でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の歯ブラシの1実施例を示す正面図
【図2】 複合モノフィラメントを束ねて植設した植毛
部の一部を示す拡大正面図
【図3】 本発明に用いる複合モノフィラメントの構成
を示す説明図
【図4】 同複合モノフィラメントの複合部の断面図
【図5】 複合モノフィラメントの芯毛が口腔内細部に
挿入される様子を示す概念図
【図6】 植設前の複合モノフィラメントの説明図
【図7】 植毛穴にに複合モノフィラメントを打ち込む
様子を示す説明図
【図8】 (a)(b)(c)は芯毛の本数を変化させ
た複合モノフィラメントの他の例を示す説明図
【図9】 (a)(b)(c)は芯毛の形状を変化させ
た複合モノフィラメントの他の例を示す説明図
【図10】 本発明の効果を確かめるために用いたフィ
ラメントの形状を示し、(a)は本発明の複合モノフィ
ラメント、(b)はテーパー加工品、(c)は先鋭テー
パー加工品、(d)は先丸加工品を示す。
【図11】 (a)は細部清掃性の試験に用いる試験
具、(b)は細部清掃性の試験の様子を示す説明図、
(c)は汚れが除去された領域を示す説明図
【図12】 (a)、(b)、(c)、(d)は試験対
象の各歯ブラシのフィラメントが試験具の間隙に位置づ
けられる様子と、ブラッシングによって汚れが除去され
た領域を示す説明図
【図13】 試験対象の各歯ブラシに使用したフィラメ
ントにおけるフィラメント先端からの距離とフィラメン
ト直径との関係を示すグラフ
【図14】 耐久性の評価方法を示す説明図
【符号の説明】
1 植毛部 2 ハンドル 3 植毛束 4 フィラメント 4A 複合モノフィラメント 5 複合部 6 分繊部 7 島状芯部 7A 芯毛 8 海部 20 平線 21 植毛穴 30 アクリル板 31 溝 32 試験具
【手続補正書】
【提出日】平成8年7月3日
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 仁 大阪府吹田市千里丘上37−1−618 (72)発明者 西村 紘紀 岡崎市矢作町字高縄手21−1 (72)発明者 久保 幸一 岡崎市北本郷町字河原21−6

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル樹脂製の海部の中にポリア
    ミド樹脂製の2〜5つの島部を散在させた海島型複合繊
    維が植毛台に植毛され、 前記植毛された海島型複合繊維は植毛基部から一定の長
    さにわたり島部と海部からなる複合部を有し、それより
    先側については島部のみを露出させて2〜5本の芯毛が
    所定長形成された歯ブラシ。
  2. 【請求項2】 複合部の直径が0.150〜0.300
    mm、芯毛の直径が0.03〜0.07mm、芯毛の露
    出長が0.2〜4.0mmである請求項1記載の歯ブラ
    シ。
  3. 【請求項3】 複合部の直径が0.150〜0.300
    mm、芯毛の直径が0.03〜0.07mm、芯毛の露
    出長が0.5〜4.0mmである請求項1記載の歯ブラ
    シ。
  4. 【請求項4】 植毛された海島型複合繊維の植毛基部か
    ら先端までの長さを7〜11mmとした請求項1〜3の
    いずれか1項に記載の歯ブラシ。
  5. 【請求項5】 複合部の端部側所定範囲にテーパー加工
    が施してある請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯ブ
    ラシ。
  6. 【請求項6】 根幹部の直径を100%としたとき、露
    出した芯毛と複合部との境界を基点として、この基点よ
    り複合部側に1mm寄った位置での直径が70±15
    %、3mmで89±8%、5mmで93±7%となるよ
    うなテーパー加工が複合部の端部に施されている請求項
    5記載の歯ブラシ。
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