JPH07231813A - 高機能ブラシ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 清掃性・ワイピング性や塗布物質の含浸性に
優れ、又使用感や耐久性に優れた各種ブラシを提供す
る。 【構成】 先端部が複数の細かい繊維に分割された合成
重合体モノフィラメントをブラシ毛材として有する高機
能ブラシ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ワィピング特性とソフ
ト感に優れ、しかも使用上十分のコシおよび弾性回復に
優れるワイピングブラシ、歯ブラシ、化粧用ブラシある
いは塗料用ブラシなどの高機能ブラシに関する。

【０００２】

【従来の技術】ブラシ毛材の先端形状をテーパー状にす
る技術は古くから知られており、例えば特公昭４９−６
１５９号，特公昭４９−１０５５８号，特公昭５０−４
０１９４号などが開示されている。また、最近では実開
平５−１５８３４号にもポリエステルをアルカリなどの
薬品で先端をテーパー状にして、かつ特殊な手法で歯ブ
ラシに植毛する技術が開示されている。しかしながらこ
れら先行技術は繊維の先端をただ細くするのみであり、
その先端が細く、例えば歯ブラシ用毛材として使用した
場合は、歯と歯肉との間隙に先端が入りやすいという利
点はあるものの逆に歯との接触面積が低下し歯表面の洗
浄効果が落ちるなどの難点があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】以上の観点に基づき、
本発明は、各種ブラシ用毛材として使用可能な剛直性を
有してかつその使用感がソフトでかつ清掃能力に非常に
優れるブラシを提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、先端
部が２以上に分割された合成重合体モノフィラメントを
ブラシ毛材として有してなる高機能ブラシであり、さら
に詳しい実施態様としては、前記合成重合体モノフィラ
メントの直径が０．０５〜１ｍｍで、かつ先端部の分割
長が０．０１〜２ｍｍである高機能ブラシ、前記合成重
合体モノフィラメントの主成分がポリエステルまたは／
およびポリアミドである高機能ブラシおよび前記ブラシ
毛材の直径が０．１〜０．３ｍｍである歯磨き用の高機
能ブラシが挙げられる。

【０００５】合成重合体モノフィラメントの直径は使用
される用途により適宜変更され、化粧用や塗料用ブラシ
であれば０．０５〜０．１５ｍｍの範囲が好ましく、ワ
イピング用途や歯ブラシでは０．１〜０．３ｍｍの範囲
が好ましい。

【０００６】本発明の骨子はブラシのブラシ毛先端が分
割されることにより、そのミクロな割繊部がブラッシン
グ対象表面の微細凹凸における清掃性・ワイピング性を
向上させる点である。例えば歯ブラシの場合は歯表面の
凹凸ばかりか歯と歯肉間の清掃に極めて優れ、場合によ
っては歯磨きペーストを用いなくてもほぼ同様の清掃効
果が期待されることに因る。また、ワイピングブラシ、
例えば光学レンズなどの清掃用に用いる場合は、従来の
レンズブラシでは清掃できなかったレンズ周辺や例えば
レンチキュラーレンズなどの複雑な凹凸を持つレンズの
清掃に極めて優れる。さらには、塗料用や化粧用ブラシ
の場合は塗料や化粧剤のブラシへの付着性が良好であり
優れた塗装性を提供する。洗顔ブラシの様な汚れを落と
す用途では上記のワイピングと同様の作用がある事は言
うまでもない。以上の理由については、極細繊維からな
るワイピングクロスが眼鏡清掃布などに用いられている
ように、その極細分割された端部がブラッシング対象面
の凹凸部に入り込みワイピング効果を発揮し、又逆に入
り込んだ先端形状が塗料や化粧剤の載りを良好にするも
のと考えられる。しかしながらかかる効果は本発明のよ
うにモノフィラメントの先端部が多数本の極細繊維で構
成されて初めて発現するのであって、該ワイピング布で
は当然ながらブラッシングが不可能である。

【０００７】本発明における合成重合体モノフィラメン
ト繊維の根元部分は、従来どおりの極太であることは重
要であり、その直径は好ましくは０．０５〜１ｍｍ、よ
り好ましくは０．１〜０．５ｍｍであり、０．１ｍｍ以
上の場合に、ブラッシング機能に好適な剛直性を持つこ
とができる。この様な剛直なモノフィラメントはブラッ
シング対象の表面に接触する部分は極細に分割されてい
るので、例えば歯の象牙質や肌をいたずらに痛める事な
く、さらにはそのソフトなタッチが良好な使用感をもた
らす。さらに本実施例で述べる手法により作成されたブ
ラシ毛材を用いると先端部が摩耗してもさらに自然と繊
維の分割が進むので自動的に分繊部が出てくるという、
使用耐久性に優れる各種ブラシを得る事ができる。

【０００８】図１は本特許のブラシの使用例としての歯
ブラシの一例を示す側面図であり、図２はそのブラシ毛
材の先端形状を模式的に示したものである。

【０００９】すなわち本発明は、図２のようなブラシ毛
または図１に示す様な歯ブラシを例にする各種ブラシに
おいて、その先端形状が複数本に分割されていることに
よりその結果が発揮される。

【００１０】ここで、本発明におけるブラシ毛材として
好ましく用いられる主素材としては、ポリエステルやポ
リアミドあるいはそれらの混合物を主成分とするもので
ある。ここに言うポリエステルとはポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン
ナフタレートなどのいわゆるポリエステルあるいは、そ
れらを主成分とする共重合体が好ましい。また、ここで
いうポリアミドとは６ナイロン、４６ナイロン、６６ナ
イロン、６−１２ナイロンまたはそれらを主成分とする
共重合体である。

【００１１】本発明では、そのブラシ毛先の形状が２以
上に分割されていればその効果を発現するが、好ましい
分割数は３〜２００、より好ましくは５〜５０であり、
その用途により適正な分割数を適宜選択できる。

【００１２】先端部を分割する方法は特に限定されない
が、以下のような手法が推奨される。すなわち合成重合
体モノフィラメントの主成分ポリマーに対してアルカリ
に溶解しやすい成分、例えばポリオキシアルキレングリ
コール系水溶性高分子を紡糸の前段階に混合する。ポリ
オキシアルキレングリコールとは具体的には、ポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン
オキシドとプロピレンオキシドとのランダムまたはブロ
ック共重合体、ポリテトラメチレングリコールにエチレ
ンオキシドを付加して得られるブロック共重合体、ネオ
ペンチルグリコールやビスフェノール系グリコールにエ
チレンオキシドを付加した化合物の両末端が水酸基であ
るポリオキシアルキレン化合物等を挙げることができ
る。

【００１３】歯ブラシ用毛材の場合にこれらの中で特に
好ましいのは、食品添加物として扱えるポリグリセリド
と脂肪酸とのエステル化合物である、いわゆる脂肪酸モ
ノグリセリド類である。これらの化合物の分子量は１，
０００〜５０，０００、好ましくは１０，０００〜３
０，０００である。また、毛先の主材料がポリアミドで
ある場合は、前述のポリエステルやその共重合体であっ
ても良い。

【００１４】ポリマーと添加重合物または添加ポリマー
の混合手法は、予めメルト状態で混合溶解してチップ化
する事が推奨されるが、溶解エクストルーダー直前にチ
ップ状態で混合してもかまわない。この易溶解成分は全
体の２０重量部以下、好ましくは１０重量部以下である
のが本発明の作用が良好に発現する。ただし、混合体が
ポリエステルや共重合ポリエステルの場合は、最大５０
重量％でも良好な分割様態が得られる。

【００１５】この様にして準備されたポリマーの混合体
は、通常の溶融紡糸機により紡糸する事ができる。この
様にして得られたモノフィラメントは植毛のカット長に
された後、または植毛後、そのブラシ毛材の先端部をカ
性ソーダ水溶液などの加水分解薬剤に浸積し、該溶出成
分を部分的にまたは全体を溶出することで繊維の先端の
みが極細繊維に分割された特殊な先端形状を作成するこ
とができる。

【００１６】なおこの際、処理液のアルカリ濃度や処理
温度・時間を調整する事で分割長を調整することができ
る。分割長はその用途によっても異なるが、通常０．０
１〜２ｍｍである。使用感・ワイピング性の観点からは
分割長は長い方が良いが、あまり長いと耐久性に劣って
来る。従って、分割長は０．０１〜１ｍｍ程度がより好
ましく、０．０１〜０．１ｍｍが性能と耐久性のバラン
スの点で良い。分割長が短いと凹凸への侵入が十分でな
く、逆に長すぎるとブラシの耐久性を損ねる。

【００１７】塗料用か化粧用ブラシ、特に後者や歯ブラ
シ等においては、そのソフトな使用感が重要であり、ブ
ラシ毛の先端は全体として根元から２／３程度にテーパ
ー化されるとさらに好適である。この場合、ブラシ毛材
の主成分はそれ自身がアルカリなどに減量されるポリエ
ステル類である事が推奨される。

【００１８】

【発明の効果】以上の様に、本発明のブラシ用毛および
それを用いた各種ブラシは、そのブラシ先端が分割され
ることにより、そのミクロな割繊部がブラッシング対象
表面の微細凹凸や歯間における清掃性・ワイピング性さ
らには塗料等の付着性を向上させる。さらに本繊維の根
元部分は極太のモノフィラメントであるので十分なコシ
・耐ヘタリ性を持つ、その一方で毛材が歯の表面に接触
する部分は極細に分割されているので対象面をいたずら
に痛める事なく、さらにはそのソフトなタッチが良好な
使用感をもたらすという相反する効果を発揮する事がで
きる。また、本実施例で述べる手法により作成されたブ
ラシ毛材を用いると先端部が摩耗してもさらに自然と繊
維の分割が進むので自動的に分繊部が出てくるという、
使用耐久性に優れるブラシを可能とする。

【００１９】

【実施例】以下実施例により本発明を説明する。 実施例１ 極限粘度０．６２のポリブチレンテレフタレート９５重
量部と分子量約２万のポリエチレングリコール５重量部
を４０℃で１２時間真空乾燥した後、２軸押し出し機に
て溶融混合して、原料レジンを調製した。このレジンを
１．５ｍｍ径のノズルより紡糸し、水浴冷却後直ちに８
５℃に調節した２対ローラー間で３倍に延伸し、最終の
直径０．２２ｍｍのモノフィラメントを得た。この繊維
を図１の用に植毛して歯ブラシを成形した。この歯ブラ
シをカ性ソーダ３０ｇ／ｌの９０℃浴中でブラシ毛全体
が１０％減量される条件選択しブラシの先端のみを多数
本に分割した。この際分割された長さは先端から約０．
１ｍｍであり、平均して１０ないし２５本に分割されて
いた。この様に作製されたブラシの実用性評価を表１に
示す。本実施例によれば、極めて優れた触感と腰の強さ
を合わせ持ち、洗浄効果も極めて優れたブラシであるこ
とが判る。

【００２０】実施例２ 実施例１において減量率を５％に変更した以外は同様の
操作を行った。分割した長さは０．０５ｍｍであり、分
割数も２ないし５本と低下した。この様に作製されたブ
ラシの実用性評価を同様に表１に示す。実施例１に比べ
ると清掃性に若干劣るものの毛の耐久性は向上した。

【００２１】実施例３ 実施例１のポリブチレンテレフタレートの代わりに極限
粘度０．６０のポリエチレンテレフタレートを用いた他
は同様の操作を行った。先端の分割長０．１２ｍｍ、分
割数も２０ないし３０本と実施例１に近かったが、先端
が根元に比べて約１／２にテーパー状に細くなった歯ブ
ラシが得られた。この様に作製されたブラシの実用性評
価を表１に示す。実施例１および２に比べると繊維のコ
シの強さおよび弾性回復性に若干劣るが他の性能は良好
であった。

【００２２】実施例４ 実施例３のポリエチレンテレフタレートを５０重量部と
６−１２ナイロン５０重量部を混合して用いた他は同様
の操作を行った。減量の際はポリエステル成分が約１／
２溶出される厳しい条件を採用することで、先端の分割
長０．０７ｍｍ、分割数も１０ないし１５本のモノフィ
ラメントを得た。それで作製したブラシの実用性評価を
表１に示す。他の実施例に比べると繊維の腰の強さおよ
び弾性回復性に非常に優れるが反面分割長が短いことに
よる清掃性に若干劣った。

【００２３】実施例５ 実施例１繊維の太さを０．１２ｍｍにする事で、レンズ
清掃用ブラシに成形し、顕微鏡接眼レンズを清掃したと
ころ、従来のブラシで清掃できなかったレンズと外枠と
の接合部いわゆるレンズ周辺部も極めて良好に清掃可能
となった。

【００２４】比較例１ 実施例１のポリブチレンテレフタレートを１００％のみ
を用いた。従って、紡糸に先立つ溶融混合は省略した。
減量処理に実施例１より時間を有したが、先端部分は分
割せずモノフィラメント表面に若干の筋状の凹凸が生じ
たのみであった。この様に作製されたブラシの実用性評
価を表１に示す。比較例では腰の強さは認められるもの
の、触感が悪くまた、洗浄効果も各実施例に比べ劣る物
であった。

【００２５】

【表１】

【００２６】なお、実施例および比較例に示す評価方法
は以下に示す方法によった。 （清掃性）噛み合わせた成人歯形模型の歯表面にグルコ
ース５ｍｌおよび、人から直接採取した唾液成分１０ｍ
ｌの混合液を均一に塗布し、３６℃湿度８５％に調製さ
れた恒温・恒湿漕に１２時間設置し、口内細菌を全面に
十分繁殖させた。各実施例・比較例で作製したモノフィ
ラメントを５０本のバンドルを基本単位として各列に８
つのバンドルが等間隔に配列するように、軸方向に平行
に４列植毛して歯ブラシを成形した。この際、ブラシ毛
は軸から先端まで約１０ｍｍ長であった。このブラシに
歯磨材（ペースト：ホワイトアンドホワイト，ライオン
株式会社製）を１ｇつけて、該調製した歯形模型を５分
間、通常の押し圧でブラッシングした後、蒸留水にて十
分洗浄した。丸型シャーレーに予め準備した寒天台地に
歯表面を約１分間押しつけた後のち、シャーレを密封
し、４０℃の恒温漕にて１２時間繁殖させ、コロニーの
成長状態でその清掃除去性能を評価した。表中良好は、
菌の繁殖がほとんど無く、以下その成長状況をコロニー
数で相対的に評価した。

【００２７】（耐久性）歯形模型の表面に通常の押し圧
よりもかなり強い約５００ｇｆの押し圧でペーストをつ
けないで往復運動を行い、ブラシ毛がその植毛時の方向
すなわち軸部にたいして垂直な位置から平均して、２０
度曲がるまでの回数で評価した。すなわち本発明ではそ
の繰り返し数が１００回以上を良好、１００回未満５０
回以上をやや良好、５０回未満２５回以上をやや劣る、
２５回未満を不良と判定した。また、各一律５０回往復
して後の毛先の摩耗状態を相対的に評価した。すなわち
毛先がもとの状態とほとんど変化しない（新しく分割し
た場合を含む）時を良好、ほとんど摩耗する場合を不良
とし、その中間段階はもとの分割長の半分の長さないし
分割数を境にしてやや良好、およびやや劣るを判断し
た。

【００２８】（触感）ペーストをつけないで指先でブラ
シ毛先端部を触感する。実際の歯磨きペーストを付けて
洗浄するときの使用感特に、歯肉との接触感を、通常の
硬度を合わせた獣毛ブラシと比較した触感を、男女５名
ずつ（３０ないし４０才）の１０名の被険者でモニター
した。獣毛の比べて総合的に触感・使用感に優れると判
断した人の割合を求めそれが８０％以上の場合を良好、
８０％未満５０％以上をやや良好、５０％未満２０％以
上をやや劣る、２５％未満を不良と判定した。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のブラシの一例である歯ブラシの側面か
ら見た概略図である。

【図２】本発明のブラシ毛の先端部の例を模式的に示す
概略図である。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端部が２以上に分割された合成重合体
   モノフィラメントをブラシ毛材として有してなる高機能
   ブラシ。
2. 【請求項２】 合成重合体モノフィラメントの直径が
   ０．０５〜１ｍｍで、かつ先端部の分割長が０．０１〜
   ２ｍｍである請求項１の高機能ブラシ。
3. 【請求項３】 合成重合体モノフィラメントの主成分が
   ポリエステルまたは／およびポリアミドである請求項１
   の高機能ブラシ。
4. 【請求項４】 ブラシ毛材の直径が０．１〜０．３ｍｍ
   である歯磨き用の請求項１の高機能ブラシ。