JP4374408B2 - 歯ブラシ用毛材および歯ブラシ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製のブラシ用毛材および歯ブラシに関し、さらに詳しくは、優れた清掃性を維持すると共に、防汚性、つまり清掃により除去された食べカスや歯垢および歯磨き剤などが毛材内やタフト間に付着し難い特性が優れ、清潔感を改善した歯ブラシ用毛材および歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
歯ブラシに植毛される毛材への主たる要求性能としては、清掃性能、つまり歯間に詰まった食べカスや歯表面に付着した歯垢の除去性能が挙げられ、係る清掃性能を満たす毛材としては、従来からポリエステルモノフィラメントやポリアミドモノフィラメントなどの合成樹脂製モノフィラメントからなる歯ブラシ用毛材が一般的に使用されている。
【0003】
そして、清掃性能をさらに改善した歯ブラシ用毛材としては、先端をアルカリ処理することにより尖鋭化したブラシ毛材(例えば、特許文献1参照)が知られており、この毛材は歯間部への挿入性が高く、かつ隙間の除去効果が優れるという優れた効果を奏することから、これを使用した歯ブラシが増加しつつある。
【0004】
しかしながら、従来の歯ブラシ用毛材は、清掃性の機能が高い反面、植毛した毛材内やタフト間に汚れた異物および歯磨き剤が付着し易く、これらを簡単に除去しにくいため、いわゆる防汚性に問題があり、使用者によっては清潔感に劣る印象を抱きやすいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−141923号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、優れた清掃性を維持すると共に、防汚性、つまり清掃により除去された食べカスや歯垢および歯磨き剤などが毛材内やタフト間に付着し難い特性が優れ、清潔感を改善した歯ブラシ用毛材および歯ブラシ歯を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の歯ブラシ用毛材は、ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂に対し、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビリニデン三元共重合体を0.5〜25重量%含有せしめた樹脂組成物を溶融紡糸したモノフィラメントのカットブリッスルからなることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明の歯ブラシ用毛材においては、
記カットブリッスルの少なくとも片端が尖鋭なテーパー状であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、この条件を適用した場合にはさらに優れた効果の取得を期待することができる。
【0010】
また、本発明の歯ブラシは、上記の歯ブラシ用毛材を基台に植毛してなることを特徴とする
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の歯ブラシ用毛材および歯ブラシについて詳細に説明する。
【0012】
本発明で使用するポリエステル系樹脂については特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称する)あるいはこれらを主体とする共重合体などが挙げられるが、なかでもPBTの使用が最も好ましい。。
【0013】
一方、本発明で使用するポリアミド系樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612あるいはこれらを主体とする共重合体などが挙げられる。
【0014】
さらに、本発明で使用するフッ素系樹脂の具体例としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビリニデン三元共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプレピレン共重合体およびテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビリニデン三元共重合体が最も好ましく使用される。このテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビリニデン三元共重合体における3成分の共重合比率はいかなるものでもよいが、テトラフルオロエチレン5〜80モル%、プロピレンヘキサフルオロ2〜35モル%およびフッ化ビニリデン5〜90モル%の割合であることが好ましい。
【0015】
これらフッ素系樹脂のポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂に対する配合量は、0.5〜25重量%、特に1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、上記の範囲未満では、防汚性の改善効果が低く、上記の範囲を超えると、溶融紡糸が不安定となって、糸切れなどの支障をきたしたり、モノフィラメントの強度が低下する傾向となるため好ましくない。
【0016】
本発明の歯ブラシ用毛材を構成するモノフィラメントは、上記ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂に必要量のフッ素系樹脂を必要量混合せしめてから、溶融紡糸機に供し、紡出せしめた後冷却し、さらに必要に応じ延伸することによって得られる。
【0017】
そして、本発明の歯ブラシ用毛材は、上記で得られたモノフィラメントを束ねて紙テープなどにより周囲を固定した後、所望長さに切断してカットブリッスルとすることにより作成される。
【0018】
さらにこのカットブリッスルの片端または両端を化学的処理および機械的処理などの公知の方法により尖鋭なテーパー形態とすることによって、歯ブラシとしての清掃性能をより高めることができる。
【0019】
また、本発明のブラシ毛材には、本来の目的を阻害しない範囲であれば、着色剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、結晶化抑制剤および他の各種添加剤を含有させることができる。
【0020】
本発明の歯ブラシ用毛材の断面形状は、丸断面に限ったものではなく、楕円形、多角形、多葉形およびその他の異形断面形状にすることができる。
【0021】
モノフィラメントからなるカットブリッスルの糸径は、0.1〜0.3mm、特に0.15〜0.25mmの範囲に設定することが、歯ブラシ用毛材としての毛腰、歯ブラシとしての磨き心地などの点から好適であるが、ここでは特に限定されるものでない。
【0022】
なお、上記で得られた歯ブラシ用毛材を用いて歯ブラシを製造する場合の方法については特に制限はなく、例えばカットブリッスルの長手向中央部を折り曲げてこれを歯ブラシ基台の植毛穴へ植毛する方法などの通常の方法により製造することができる。
【0023】
かくしてなる本発明の歯ブラシ用毛材および歯ブラシは、優れた清掃性を維持すると共に、防汚性、つまり清掃により除去された食べカスや歯垢および歯磨き剤などが毛材内やタフト間に付着し難い特性が優れ、清潔感が改善されたものであることから、従来にない優れた性能を発揮する。
【0024】
なお、本発明の歯ブラシ用毛材は、その優れた清掃性および防汚性を生かして、歯ブラシ以外の用途、例えばボディブラシや食器洗浄ブラシなどへの適用も期待することができる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
十分に予備乾燥したPBT樹脂(東レ社製東レPBT1200S)95重量%と、フッ素系三元共重合体としてテトラフルオロエチレン約60モル%、ヘキサフルオロプロピレン約20モル%および6フッ化ビニリデン約20モル%からなる三元共重合体(住友スリーエム社製THV500G)5重量%とを混合し、均一に分散するまで撹拌した後、押し出し機に投入し280℃に加熱溶融させた樹脂を、口径0.8mmの円形状のノズルから押し出し、直ちに20℃の水冷中で冷却し、続いて60℃の温水、さらに130℃乾熱下で4.5倍に延伸した後、乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を行い、直線状に巻き取ることにより、糸径が0.2mmのモノフィラメントを得た。
【0026】
次に、上記で得られたモノフィラメントを、束径50mmに束ねて周囲に紙テープを巻いた後、27mmの長さにカットしてカットブリッスル(歯ブラシ用毛材)を得た。
[実施例2]
PBT樹脂/フッ素系三元共重合体の混合割合85重量%/15重量%とした以外は、実施例1と同一の方法により歯ブラシ用毛材を得た
実施例
実施例1において、PBT樹脂の代わりに、ナイロン610樹脂(東レ社製東レM2001)を使用した以外は、実施例1と同一の方法により歯ブラシ用毛材を得た。
[実施例
実施例1で得られたカットブリッスルについて、このカットした両端部を水酸化ナトリウウム水溶液中に浸漬してテーパー化処理することにより、両端部の8.0mmの範囲を尖鋭なテーパー状とした歯ブラシ用毛材を得た。
[比較例1]
PBT樹脂のみを用い、以下実施例1と同一の方法により歯ブラシ用毛材を得た。
[比較例2]
実施例1において、PBT樹脂の割合を99.7重量%、フッ素系三元共重合体の割合を0.3重量%とした以外は、実施例1と同一の方法により歯ブラシ用毛材を得た。
[比較例3]
ナイロン610樹脂のみを用い、以下実施例1と同一の方法により歯ブラシ用毛材を得た。
【0027】
上記の各実施例および各比較例で得た歯ブラシ用毛材を、同一形状である34穴の歯ブラシ基台に植毛することにより歯ブラシを作成し、得られた歯ブラシの性能について、次の方法により評価した。
[防汚性評価]
(1)水、200mlにシリカ10g加えた汚れ浸漬液を、100rpmで撹拌しながら、この汚れ浸漬液にあらかじめ柄と毛材の重量を測定した歯ブラシの植毛部を3分間浸漬し、汚れが付着した歯ブラシを得た。
(2)その後、歯ブラシについた水気を歯ブラシを振って取り除き、40℃の乾燥機にて5時間乾燥させた。
(3)汚れ付着歯ブラシを秤量し、先に測定した重量を差し引くことにより、付着した汚れ量を求めた。
(4)汚れ量は、フッ素系樹脂を含有しない比較例1のPBTモノフィラメントの汚れ付着量を100とした時の指数で比較した。
[清掃性]
2枚のアクリル板の間に隙間を設けることにより、擬似歯のモデルを作製し、溝部の隙間を0.1mmに設定した。
【0028】
この擬似歯のモデルにあらかじめ歯科咬合チェック用スプレーで見かけの汚れを付着させた後、歯ブラシを用いて、負荷400g、振幅70mm、スピード180rpm/分で3分間ブラッシングを行い、ブラッシング後に清掃できた面積を測定して、ブラッシング前の見かけ汚れ付着面積に対する百分率を算出し、仮想汚れの除去率とした。
【0029】
以上の評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004374408
【0031】
表1の結果から明らかなように、PBT樹脂にフッ素系樹脂を含有させた実施例1〜の歯ブラシは、フッ素樹脂を含有しない歯ブラシ(比較例1)およびフッ素樹脂含有量が少ない歯ブラシ(比較例2)に比較して、防汚性が大幅に向上している。フッ素系樹脂として三元共重合体(THV500G)を含有する実施例1および2の歯ブラシは、特に優れた防汚性を発揮する。
【0032】
同様にN610にフッ素系樹脂を含有させた実施例の歯ブラシも、フッ素系樹脂を含有しない(比較例3)に比較して防汚性が向上している。
【0033】
さらに、実施例1のブラシ毛先を尖鋭なテーパー状にした実施例の歯ブラシにおいても、防汚性とともに清掃性が著しく向上している。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の歯ブラシ用毛材および歯ブラシは、優れた清掃性を維持すると共に、防汚性、つまり清掃により除去された食べカスや歯垢および歯磨き剤などが毛材内やタフト間に付着し難い特性が優れ、清潔感が改善されたものであることから、従来にない優れた性能を発揮する。

Claims (3)

  1. ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂に対し、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビリニデン三元共重合体0.5〜25重量%を含有せしめた樹脂組成物を溶融紡糸したモノフィラメントのカットブリッスルからなることを特徴とする歯ブラシ用毛材。
  2. 前記カットブリッスルの少なくとも片端が尖鋭なテーパー状であることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ用毛材。
  3. 請求項1または2に記載の歯ブラシ用毛材を基台に植毛してなることを特徴とする歯ブラシ。
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