JPH09310595A - 接合用シートを具える防水シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄肉の防水シート本体部分に接合用シートを
接合してなる防水シートにおいて、二次覆工コンクリー
トの打設圧等から防水シート本体部分を有効に保護す
る。 【解決手段】 トンネルの周面に、それの長さ方向と直
交する方向に延在させて配設され、トンネルの長さ方向
に隣接するそれぞれの側辺部分を相互に液密に接合され
る長尺の防水シート３であって、薄肉の防水シート本体
部分２の両側部に、前記側辺部分を形成する、所定幅の
厚肉の接合用シート２を重ね合わせ接合したものにおい
て、配設姿勢の防水シート３の切羽側の接合用シート２
を、防水シート本体部分１よりトンネルの周面側に位置
させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、薄肉の防水シー
ト本体部分の両側部に、所定幅の厚肉の接合用シート
を、その防水シート本体部分の全長にわたって、液密に
重ね合わせ接合してなる長尺の防水シートに関するもの
であり、とくには、二次覆工コンクリートの打設に当っ
て、予めトンネル内周面に配設した防水シートの、厚肉
の接合用シートに作用するコンクリート打設圧等によっ
て薄肉の防水シート本体部分が破損等されるのを有効に
防止するものである。

【０００２】

【従来の技術】地山からの涌水が比較的少ないトンネル
においては、その周面に配設される防水シート、たとえ
ばゴムシート、プラスチックシート等は、その肉厚が比
較的薄くても十分な防水および止水機能を発揮すること
ができる。

【０００３】しかるに、薄肉、たとえば０．４ｍｍ程度
の厚さのプラスチックシートを防水シートとして用いた
場合には、各防水シートをトンネル周面に、トンネルの
長さ方向と直交する方向に延在させて配設した状態で、
トンネルの長さ方向に隣接する防水シートのそれぞれの
側辺部分を相互に液密にヒートシール接合するに際し
て、防水シートの側辺部分に不測の溶融穴等が発生する
おそれが高く、そのヒートシール接合部分の十分な液密
性を担保することが困難であった。

【０００４】そこで従来は、薄肉のプラスチックシート
等だけからなる防水シートによる防水施工が可能な場合
であっても、薄肉シートの両側辺部分に、比較的厚肉
の、たとえば０．８mm程度の厚さの接合用シートを重ね
合わせ接合し、その厚肉接合用シート部分にて、防水シ
ート側辺部分のヒートシール接合を行うことが一般的で
あった。

【０００５】ところで、このような防水施工に適用され
る従来の防水シートは、図４に幅方向断面図で例示する
ように、厚さが０．４mm程度の、薄肉の防水シート本体
部分１の両側部に、たとえば２５０mm程度の幅を有す
る、厚さが０．８mm程度の、厚肉の接合用シート２を、
所要のオーバラップ幅をもって重ね合わせるとともに、
防水シート本体部分１の全長にわたって液密にヒートシ
ール接合したものであって、かかる防水シート３の、ト
ンネル周面への配設下での、それぞれの側辺部分相互の
接合は、図５（ａ）にトンネルの長さ方向での要部断面
図で示すように、隣接する接合用シート２の相互を、防
水施工現場で合掌貼り接合した後、その貼合部分４を、
図５（ｂ）に示すように、多くは切羽側に向けて折り返
し、そこでさらに、熱風溶着等によって一方の接合用シ
ート２に接合することによって行われる。

【０００６】なお、図中５は、防水シート本体部分１の
裏面に、ホットメルト、ヒートシール等によって固着し
た、不織布その他からなる裏面緩衝材を示し、また、６
は、トンネル周面に、吹付けその他によって、直接に薄
く密着させた一次覆工コンクリートを、７は、裏面緩衝
材５を、その一次覆工コンクリート６に打付けるコンク
リート釘をそれぞれ示す。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ここで、従来の防水シ
ート３にあっては、厚肉の接合用シート２を、薄肉の防
水シート本体部分１に対して、裏面緩衝材５とは反対側
に重ね合わせて接合させていることから、それぞれの接
合用シート２の、図５に示すような接合の後に、防水シ
ート３の内周側に、たとえば全断面スライドセントル等
を用いて、坑口側から切羽側へ向けて二次覆工コンクリ
ートを順次に打設するに際し、通常は図５（ｂ）に矢印
Ａで示すように、坑口側から切羽側へ作用するコンクリ
ート打設圧、コンクリート重量などによって、とくに
は、一枚の防水シート３の切羽側に位置する接合用シー
ト２の、防水シート本体部分１へのオーバラップ端部分
が、図に矢印Ｂで示すようなめくれ方向の力を受けるこ
ととなる。この場合、接合用シート２が厚肉であること
によって、そこに作用する外力もまた自づと大きくなる
ため、薄肉の防水シート本体部分１に、破れその他の損
傷が生じるおそれがあり、防水シート３による、防水、
止水等の完全性を期し得ないうれいがあった。

【０００８】この発明は、従来技術の有するこのような
問題点を解決することを課題として検討した結果なされ
たものであり、この発明の目的は、薄肉の防水シート本
体部分の両側部に厚肉の接合用シートを重ね合わせ接合
してなる防水シートであっても、その薄肉の防水シート
本体部分の損傷を十分に防止できる構造とした防水シー
トを提供するにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この発明の、接合用シー
トを具える防水シートは、前述したように、トンネルの
シート防水工に使用され、隣接するそれぞれの側辺部分
を相互に液密に接合される長尺の防水シートであって、
薄肉の防水シート本体部分の両側部に、前記側辺部分を
形成する、所定幅の厚肉の接合用シートを、その防水シ
ート本体部分の全長にわたって重ね合わせ接合したもの
において、配設姿勢の防水シートの、少なくとも切羽側
の接合用シートを、防水シート本体部分よりトンネルの
周面側に位置させたものである。

【００１０】従ってここでは、一枚の防水シートの、切
羽側のみならず、坑口側の接合用シートをもまた、防水
シート本体部分よりトンネルの周面側に位置させ得るこ
とはもちろんであるが、より好ましくは、切羽側の接合
用シートを、防水シート本体部分よりトンネル周面側
に、そして、坑口側の接合用シートを、防水シート本体
部分よりトンネル周面から離れた側にそれぞれ位置させ
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図１は、この発明の一の実施形
態を示す、防水シートの幅方向断面図であり、図中従来
技術で述べた部分と同様の部分はそれと同一の符号で示
す。

【００１２】この例では、裏面緩衝材５に点状もしくは
線状に固着される薄肉の防水シート本体部分１、たとえ
ば、０．４mm厚さのＥＶＡシートの、切羽側および坑口
側のそれぞれの側部で、たとえば、２５０mmの幅と０．
８mmの厚さとを有するＥＶＡシートからなる厚肉の接合
用シート２を、その防水シート本体部分１の裏面緩衝材
側、つまり、防水シート３の配設姿勢の下ではトンネル
の周面側に重ね合わせて配置して、そこに、所定幅のオ
ーバラップ状態で、ヒートシール、超音波シール、その
他によって、防水シート本体部分１の全長にわたって液
密に接合させることによって防水シート３を構成する。

【００１３】このように構成してなる防水シート３は、
それを、トンネル周面に、トンネルの長さ方向と直交す
る方向に延在させて配設し、そして、それぞれの防水シ
ート３の、トンネルの長さ方向に隣接する側辺部分、い
いかえれば、接合用シート２を、図５について述べたと
同様にして相互に液密に接合した場合には、図２に断面
図で示すように、一の防水シート３における、切羽側お
よび坑口側のそれぞれの厚肉の接合用シート２はいずれ
も、防水シート本体部分１への接合部においてそれより
トンネル周面側に位置することになる。

【００１４】従って、この防水シート３を用いた防水施
工の後に、その内周側に二次覆工コンクリートを打設す
るに当り、コンクリート打設圧等が、図に矢印Ａで示す
ように、坑口側から切羽側へ作用しても、一の防水シー
ト３の、少なくとも切羽側側辺部分においては、従来技
術で述べたような、接合用シート２のめくれ現象が発生
するおそれは全くなく、これがため、薄肉の防水シート
本体部分１に不側の損傷が生じることもない。

【００１５】この一方において、防水シート３の坑口側
側辺部分では、接合用シート２よりもトンネルの内側に
位置することになる防水シート本体部分１の側縁近傍部
分１ａが、図に矢印Ｃで示すようなめくれ方向の外力を
受けることになるも、防水シート本体部分１は元来薄肉
であって、接合用シート２に比してはるかに柔軟である
ことから、そこに作用するめくれ外力はそれほど大きく
なることはなく、従って、このようなめくれ外力の作用
に対しても、防水シート本体部分１は、十分な耐久性を
発揮することができる。

【００１６】しかもここでは、防水シート本体部分１の
側縁近傍部分１ａへのコンクリート打設圧等の作用に対
しては、通常は、切羽側へ折り曲げられた、接合用シー
ト相互の貼合部分４があたかも防波堤の如くに機能し
て、その打設圧等が、側縁近傍部分１ａに、それをめく
る方向に直接的に作用するのを有効に緩和するので、側
縁近傍部分１ａに及ぼされるめくれ外力が有効に低減さ
れることにもなり、防水シート本体部分１の損傷が一層
効果的に防止されることになる。

【００１７】なおこのような防水シート３の幅方向にお
いて、防水シート本体部分１の坑口側に重ね合わせ接合
する接合用シート２を、防水シート本体部分１の、裏面
緩衝材５から離れた側の面に接合させた場合には、防水
シート３の側辺部分の相互の液密接合状態においては、
図３に断面図で示すように、トンネルの坑口側および切
羽側のいずれの側においても、防水シート本体部分１お
よび接合用シート２のいずれにも、コンクリート打設圧
等に起因するめくれ外力が作用する余地が存在しないの
で、防水シート本体部分１の損傷のおそれを十分に除去
することができる。

【００１８】以上、この発明を図示側に基づいて説明し
たが、図１中８は、裏面緩衝材５の幅方向の中央部に溶
着させたセンターフィンを示し、このセンターフィン８
は、それを一次覆工コンクリート６等に打付け固定する
ことで、裏面緩衝材５の、その一次覆工コンクリート６
等への取付けを可能ならしめる。

【００１９】

【発明の効果】かくしてこの発明によれば、配設姿勢の
防水シートの幅方向において、少なくとも切羽側の接合
用シートを、防水シート本体部分よりトンネルの周面側
に位置させることで、二次覆工コンクリートの打設時
の、薄肉の防水シート本体部分の不測の損傷を防止し
て、その防水シート本体部分の耐久性を大きく高めるこ
とができ、このことは、坑口側の接合用シートを、防水
シート本体部分よりトンネル周面から離れた側に位置さ
せた場合に一層顕著である。

【図面の簡単な説明】

【図１】防水シートの一の実施形態を示す幅方向断面図
である。

【図２】防水シート側辺部分の液密接合状態を例示する
要部断面図である。

【図３】防水シート側辺部分の他の液密接合状態を例示
する要部断面図である。

【図４】従来の防水シートを例示する幅方向断面図であ
る。

【図５】図４に示す防水シートの液密接合状態を示す断
面図である。

【符号の説明】

１ 防水シート本体部分 １ａ 側縁近傍部分 ２ 接合用シート ３ 防水シート ４ 貼合部分 ５ 裏面緩衝材 ６ 一次覆工コンクリート ７ コンクリート釘 ８ センターフィン

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トンネルのシート防水工に使用され、隣
   接するそれぞれの側辺部分を相互に液密に接合される長
   尺の防水シートであって、薄肉の防水シート本体部分の
   両側部に、前記側辺部分を形成する、所定幅の厚肉の接
   合用シートを、その防水シート本体部分の全長にわたっ
   て重ね合わせ接合したものにおいて、配設姿勢の防水シ
   ートの、少なくとも切羽側の接合用シートを、防水シー
   ト本体部分よりトンネルの周面側に位置させてなる接合
   用シートを具える防水シート。
2. 【請求項２】 配設姿勢の防水シートの切羽側の接合用
   シートを、防水シート本体部分よりトンネルの周面側に
   位置させる一方、坑口側の接合用シートを、防水シート
   本体部分よりトンネル周面から離れた側に位置させてな
   る請求項１記載の接合用シートを具える防水シート。