JPH09303501A - 撓み噛み合い式歯車装置の歯部の被膜形成方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性を改善するために内歯表面に形成し
たメッキ被膜によって両歯車の正常な噛み合いが阻害さ
れることのない撓み噛み合い式歯車装置を実現するこ
と。 【解決手段】 撓み噛み合い式歯車装置１１の内歯歯車
１２の内歯１２ａの表面にはメッキ被膜１２１が形成さ
れた耐摩耗性が改善されている。メッキ被膜１２１の表
面によって規定される歯形が、正常な噛み合い状態を形
成するための基準歯形になるように、メッキ被膜の厚さ
ｔを考慮して、内歯１２の表明形状１２２が予め設定さ
れている。このようにすれば、メッキ被膜形成後の内歯
は基準歯形となっているので、外歯と正常な噛み合い状
態を形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、歯部の耐摩耗性を
改善するために当該歯部にメッキ処理により被膜が形成
された構成の撓み噛み合い式歯車装置における被膜の形
成方法に関するものである。また、本発明は、当該被膜
形成方法によって被膜が形成された歯部を備えた撓み噛
み合い式歯車装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】撓み噛み合い式歯車装置は、一般に、内
周面に内歯が形成された環状の剛性内歯歯車と、この内
側に、前記内歯に噛み合う外歯が外周面に形成された環
状の可撓性外歯歯車が配置された構成となっている。さ
らに、この可撓性外歯歯車の内側には、楕円形の波動発
生器が嵌め込まれて、可撓性外歯歯車が楕円形状に撓め
られている。可撓性外歯歯車はこのように楕円形状に撓
められているので、その楕円形状の長軸方向の２箇所の
位置において、外歯が内歯に噛み合っている。波動発生
器はモータ等の高速回転源に連結されて高速回転する。

【０００３】波動発生器が回転すると、外歯と内歯の噛
み合わせ位置も円周方向に移動する。外歯と内歯には歯
数差（一般には２枚の歯数差）があるので、噛み合わせ
位置が円周方向に移動すると、両歯車の間には相対回転
が発生する。したがって、一方の歯車を固定すれば、他
方の歯車から歯数差に応じて大幅に減速された減速回転
出力を取り出すことができる。この減速原理は公知であ
るので、その詳細な説明は省略する。

【０００４】このように、可撓性外歯歯車は半径方向に
撓みを繰り返しながら、剛性内歯歯車の内歯に対して間
欠的に噛み合い状態になる。従って、一般的な歯車同士
の噛み合いに比べて、これらの歯車の歯部の摩耗が激し
い。このため、歯部の耐摩耗性を高めておく必要があ
る。

【０００５】歯部の耐摩耗性を高めるために、従来にお
いては、剛性内歯歯車および可撓性外歯歯車の歯部に様
々な表面処理を施して、その耐摩耗性の改善を図ってい
る。例えば、メッキ処理により被膜を形成することに
り、歯部の耐摩耗性を改善している。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに歯部に表面処理を施して被膜を形成すると、被膜が
形成された分だけ、当該歯部の寸法精度が低下すること
になる。歯部の寸法精度が低下すると、両歯車の正常な
噛み合い状態を維持することが出来なくなってしまう。
正常な噛み合いを維持できないと、被膜を形成したにも
かかわらず、逆に、歯部の耐摩耗性が低下することにも
繋がる。本発明者等の実験によれば、被膜厚さが２μｍ
以上の場合には、被膜形成により発生した歯部の寸法精
度に低下に起因した弊害が顕著になる。

【０００７】本発明の課題は、この点に鑑みて、被膜を
形成することにより両歯車の歯部の噛み合いに支障をき
たし、当該歯部の摩耗性が低下してしまうことの無い撓
み噛み合い式歯車装置の歯部の被膜形成方法を提案する
ことにある。

【０００８】また、本発明の課題は、当該被膜形成方法
によって被膜が形成された歯部を備えた撓み噛み合い式
歯車装置を実現することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、例えば、図１
および図２に示すように、内周面に内歯１２ａが形成さ
れた剛性内歯歯車１２と、前記内歯１２ａに噛み合う外
歯２４が外周面に形成された可撓性外歯歯車１３と、前
記内歯１２ａに対して前記外歯２４を部分的に噛み合わ
せ、これらの噛み合わせ位置を円周方向の移動させるこ
とにより、前記剛性内歯歯車１２および可撓性外歯歯車
１３の間に前記外歯２４と内歯１２ａの歯数差に応じた
相対回転を発生させる波動発生器１４とを有する撓み噛
み合い式歯車装置１１に関するものである。

【００１０】このような撓み噛み合い式歯車装置１１に
おいて、図３に示すように、剛性内歯歯車１２の内歯１
２ａの表面には、メッキ処理等によって、耐摩耗性被膜
１２１が形成されている。

【００１１】本発明では、被膜１２１が表面に形成され
た後の前記内歯１２ａの被膜表面１２１ａによって規定
される歯形が、両歯車１２、１３の間に正常な噛み合い
状態を形成するための基準歯形となるように、前記被膜
形成前の前記内歯１２ａの歯形１２２を前記被膜１２１
の厚さｔを考慮して予め修正した歯形としてある。

【００１２】例えば、図３には、メッキ処理により形成
される被膜１２１の厚さｔが各部分においてほぼ均一の
場合を示してある。この場合には、内歯１２ａの歯形１
２２を、基準歯形と相似曲線となるように、予め設定し
ておけばよい。

【００１３】勿論、メッキ膜厚ｔが内歯１２ａの表面の
各部分で異なる場合には、膜厚ｔを考慮して、内歯１２
ａの歯形１２２を予め設定しておけばよい。

【００１４】なお、図１、図２に示す撓み噛み合い式歯
車装置は、その可撓性外歯歯車がシルクハット形状をし
たシルクハット型撓み噛み合い式歯車装置である。これ
以外の形状の撓み噛み合い式歯車装置に対しても本発明
を適用できることは勿論である。例えば、可撓性外歯歯
車がカップ形状をしたカップ型撓み噛み合い式歯車装
置、可撓性外歯歯車が一般的な環状となっているフラッ
ト型撓み噛み合い式歯車装置にも本発明を適用できる。

【００１５】また、内歯の表面に形成されるメッキ被膜
は、例えば、ニッケルおよびクロムの電解メッキ被膜、
あるいは無電解メッキ被膜等を挙げることができる、被
膜の種類は特に限定されるものではない。

【００１６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
メッキ処理等により被膜が形成された後の内歯表面によ
って規定される歯形が、両歯車の正常な噛み合いを保持
するための基準歯形になるように、被膜形成前の内歯の
歯形を予め規定するようにしている。したがって、本発
明によれば、このように被膜厚さを考慮して歯形を設定
しているので、被膜形成後の内歯と外歯の噛み合いを適
切なものにすることができる。

【００１７】特に、被膜厚さが２μ以上の場合には、被
膜形成に起因して、両歯車の正常な噛み合いが阻害され
るおそれがある。しかし、本発明によれば、このような
弊害の発生を回避できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用可能な撓み噛み合い式歯車装置の
概略縦断面図である。

【図２】図１の装置を矢印の方向からみた側面図であ
る。

【図３】図１の装置の内歯の部分を拡大して示す説明図
である。

【符号の説明】

１１ 撓み噛み合い式歯車装置 １２ 内歯歯車 １２ａ 内歯 １２２ 内歯の歯形 １３ 外歯歯車 ２４ 外歯 １４ 波動発生器 １２１ 被膜 １２１ａ 被膜表面によって規定される歯形 ｔ 被膜の厚さ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内周面に内歯が形成された剛性内歯歯車
   と、前記内歯に噛み合う外歯が外周面に形成された可撓
   性外歯歯車と、前記内歯に対して前記外歯を部分的に噛
   み合わせ、これらの噛み合わせ位置を円周方向の移動さ
   せることにより、前記剛性内歯歯車および可撓性外歯歯
   車の間に前記外歯と内歯の歯数差に応じた相対回転を発
   生させる波動発生器とを有し、前記内歯の表面には耐摩
   耗性被膜が形成された撓み噛み合い式歯車装置の歯面の
   被膜形成方法であって、 前記被膜が形成された後の前記内歯における被膜表面に
   よって規定される歯形が基準歯形となるように、前記被
   膜形成前の前記内歯の歯形を前記被膜の厚さを考慮して
   予め修正した歯形としておくことを特徴とする撓み噛み
   合い式歯車装置の歯部の被膜形成方法。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記被膜を２μｍ以
   上の厚さにすることを特徴とする被膜形成方法。
3. 【請求項３】 請求項１に記載の被膜形成方法によって
   厚さが２μｍ以上の被膜が形成された内歯を備えた撓み
   噛み合い式歯車装置。