JPH0927694A - 磁気シールド材およびその製造方法 - Google Patents

磁気シールド材およびその製造方法

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JPH0927694A
JPH0927694A JP19900395A JP19900395A JPH0927694A JP H0927694 A JPH0927694 A JP H0927694A JP 19900395 A JP19900395 A JP 19900395A JP 19900395 A JP19900395 A JP 19900395A JP H0927694 A JPH0927694 A JP H0927694A
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JP
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alloy powder
soft magnetic
magnetic
shield material
magnetic alloy
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JP19900395A
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English (en)
Inventor
Masao Shigeta
政雄 重田
Asako Kajita
朝子 梶田
Kazunori Hirai
一法 平井
Shinko Karatsu
真弘 唐津
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 様々な応力が加わった場合でもシールド特性
の安定性が良好であり、また、シールド特性が良好でし
かも高温・高湿環境下でのシールド特性の劣化が少ない
磁気シールド材を提供する。 【構成】 扁平状の軟磁性合金粉末と結合剤とを含有
し、前記軟磁性合金粉末が正の磁歪をもつ軟磁性合金粉
末と零または負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末とである磁
気シールド材。正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末としてア
モルファス合金粉末を用い、零または負の磁歪をもつ軟
磁性合金粉末として結晶質合金粉末を用いる。正の磁歪
をもつ扁平状の軟磁性合金粉末を含む塗料と、零または
負の磁歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉末を含む塗料とを
混合して、塗布用の最終塗料を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気シールド材およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁化物体等の磁界発生源が他の物体や電
気回路等に影響を与えないようにするために、磁気シー
ルド材が用いられている。磁気シールド材としては高透
磁率の金属板がシールド特性からは望ましいが、金属板
は性質・コストなどの面で用途が著しく制限される。一
方、粉末材料の場合には、これを塗料の形でシールドの
必要な個所に塗布したり、あるいは適当な可撓性支持体
などに塗布してシールド板としたり、様々な利用が可能
である。
【0003】高透磁率の粉末を用いた磁気シールド材料
に関しては、各種の提案がなされている。
【0004】例えば、特開昭59−201493号公報
には、軟磁性アモルファス合金を粉砕した扁平状粉末を
高分子化合物の結合剤中に混合した磁気シールド塗料が
記載されている。
【0005】特開昭58−59268号公報には高透磁
率合金の扁平状粉末を高分子化合物の結合剤中に混合し
た磁気シールド塗料が記載されている。
【0006】実公昭58−50495号公報には、フレ
ーク状センダスト合金の塗膜を磁気シールド膜として用
いることが記載されている。
【0007】特公昭62−58631号公報には、Fe
−Ni系合金、Fe−Ni−Co系合金、Fe−Si−
Al系合金、Fe−Ni−Mo系合金、すなわち、パー
マロイ合金やモリブデンパーマロイ合金、あるいはセン
ダスト合金等の扁平な不定形状の粒子を、高分子化合物
結合剤中に混合してなる磁気遮蔽用塗料が記載されてい
る。
【0008】特公昭63−39966号公報には、パー
マロイの磁気遮蔽膜が記載されている。
【0009】特開平1−223627号公報には、Cr
=0.5〜20重量%、Si=0.5〜9重量%(1〜
16.5原子%)、Al=0.5〜15重量%のいずれ
か1種を含む扁平磁性鉄粉の塗布膜をシールド用の保護
膜として用いることが記載されている。
【0010】これらの磁気シールド膜や磁気シールド材
料において、扁平状合金粒子を用いる理由は、塗料化さ
れた磁気シールド材料を塗布すると、扁平状合金粒子の
主面が塗膜面内方向となるように配向するため、磁気シ
ールド材として使用する方向に扁平方向が一致し、扁平
形状に由来する反磁界の小ささから素材自体の高い透磁
率を活用できるからである。そして、反磁界による塗膜
面内方向の磁気特性の低下が防止され、良好な磁気シー
ルド特性が得られるからである。
【0011】上記したFe基アモルファス合金をシール
ド材に使った場合、耐食性が良好なのでシールド特性の
環境劣化は小さいが、正の磁歪のために応力劣化が大き
くなる。具体的には、正の磁歪をもつ合金粉末は、扁平
化の際の応力、結合剤と混練して塗料化する際の応力、
磁気シールド材として使用する際の応力等によって、透
磁率が劣化してしまう。一方、センダスト等の結晶質合
金をシールド材に使った場合、零または負の磁歪のため
にシールド特性の応力劣化は一般に少ないが、耐食性が
低いために環境劣化は大きくなる。
【0012】なお、負の磁歪をもつ合金粉末は、塗料化
する際の応力などでは透磁率は一般に劣化しないが、張
力等による応力などによって透磁率が劣化することがあ
る。このように合金粉末が負の磁歪をもっていても様々
な応力に対する対応は困難であり、シールド特性の安定
性の点では問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、様々
な応力が加わった場合でもシールド特性の安定性が良好
であり、また、シールド特性が良好でしかも高温・高湿
環境下でのシールド特性の劣化が少ない磁気シールド材
を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(4)のいずれかの構成により達成される。 (1) 扁平状の軟磁性合金粉末と結合剤とを含有し、
前記軟磁性合金粉末が正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末と
零または負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末とである磁気シ
ールド材。 (2) 正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末がアモルファス
合金粉末であり、零または負の磁歪をもつ軟磁性合金粉
末が結晶質合金粉末である上記(1)の磁気シールド
材。 (3) 正の磁歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉末を含む
塗料と、零または負の磁歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉
末を含む塗料とを混合する工程を有する磁気シールド材
の製造方法。 (4) 上記(1)または(2)の磁気シールド材を製
造する上記(3)の磁気シールド材の製造方法。
【0015】
【作用および効果】本発明では、磁気シールド材中に正
の磁歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉末と零または負の磁
歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉末とを含有させる。この
ため、各種の応力によるシールド特性の劣化が軽減され
る。たとえば、結合剤による応力では、正の磁歪をもつ
軟磁性合金粉末の透磁率は劣化するが、零磁歪の軟磁性
合金粉末の透磁率は劣化せず、負の磁歪をもつ軟磁性合
金粉末の透磁率はこの応力によりかえって向上する。一
方、シールド材に加わる外力の種類によっては、例えば
引っ張りの力が加わった場合には、負の磁歪をもつ軟磁
性合金粉末の透磁率が劣化するが、この場合には正の磁
歪をもつ軟磁性合金粉末の透磁率がかえって向上する。
したがって、どのような応力が加わった場合でも、シー
ルド材全体としてのシールド特性劣化が緩和される。
【0016】また、正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末とし
てアモルファス合金粉末を用い、零または負の磁歪をも
つ軟磁性合金粉末として結晶質合金粉末を用いれば、ア
モルファス合金粉末の耐食性の高さと結晶質合金粉末の
磁気特性の高さとにより、耐食性が高くシールド特性も
良好な磁気シールド材が実現する。扁平状粒子からなる
合金粉末は塗布により配向し、扁平状粒子の面内が塗膜
面内とほぼ平行となるので、塗膜表面付近のアモルファ
ス合金粉末が塗膜内部の合金粉末を被覆することになっ
て良好な耐食性が得られる。したがって、磁気特性の低
下を抑えるためにアモルファス合金粉末の比率を低くし
た場合でも、十分な耐食性が得られる。なお、このよう
な耐食性向上効果は、シールド材表面付近にある結晶質
合金粉末の耐食性が低い場合に特に高くなる。すなわ
ち、シールド材表面付近にある耐食性の低い結晶質合金
粉末が錆びて溶出してしまえば、シールド材表面全面
が、耐食性の高いアモルファス合金粉末や、結晶質合金
粉末の酸化物、結合剤などで覆われることになり、シー
ルド材内部の保護効果が著しく高くなる。
【0017】磁気シールド材用軟磁性合金粉末は、前述
したように、通常、扁平化するが、この扁平化の際の最
適条件は、素材ごとに異なる。すなわち、塗布型シール
ド用粉末として最適な形状および寸法の扁平粉を製造す
るためには、素材特有の脆性、延性等に応じて扁平化条
件を適宜選択する必要がある。扁平化は、通常、湿式で
行なうが、この際には素材に応じて最適な溶剤を選択す
る必要がある。このとき用いる溶剤の影響により、粉末
の表面性状は大きく変化する。また、粉末の組成によっ
ても表面性状は異なる。このため、素材の異なる複数の
扁平状粉末を均一に混ぜ合せることは困難であり、単純
に粉末同士を混合してから結合剤と混練して塗料化しよ
うとすると、粉末の分散がほとんど不可能となり、塗料
化が実質的に不可能となる。従来、複数の扁平粉を混合
したシールド材が提案されていないのは、このような理
由によると考えられる。
【0018】これに対し本発明では、各粉末ごとに結合
剤と混練して塗料化した後、塗料同士を混合するため、
粉末の分散の良好な塗料が得られる。
【0019】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成を詳細に説明
する。
【0020】本発明の磁気シールド材は、扁平状の軟磁
性合金粉末と結合剤とを含有する。本発明では、軟磁性
合金粉末として、正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末と零ま
たは負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末とを用いる。
【0021】正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末と零または
負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末との具体的組み合わせは
特に限定されないが、上述したように耐食性とシールド
特性とが共に良好となることから、正の磁歪のものとし
てアモルファス合金粉末を用い、零または負の磁歪のも
のとして結晶質合金粉末を用いることが好ましい。
【0022】正の磁歪をもつアモルファス合金粉末とし
ては、Fe基アモルファス合金からなるものを用いるこ
とが好ましい。アモルファス合金粉末の組成は特に限定
されず、磁気シールド材料に好適な磁気特性をもつもの
であればよく、例えば、特開平2−180005号公報
に開示されているような強磁性金属とガラス化元素とを
含むものが好ましい。この場合の強磁性金属としては、
Feまたはその一部をCoやNiで置換したもの、ガラ
ス化元素としては、B、Si、C、P、Ge等、特にB
およびSiである。具体的には、 式 (Fe1-y Niy100-x-wx (Si,B)w で表わされる組成が好ましい。上記式は原子比を表わ
し、x=0〜10、好ましくは2〜8、y=0〜0.
4、w=15〜37、好ましくは18〜30である。ま
た、Mは、Ti、V、Nb、Ta、Zr、Cr、Mo、
W、MnおよびCoの少なくとも1種であり、耐食性の
点からは、CrおよびNbの少なくとも1種、特にCr
を必須として含むことが好ましい。xが10を超える
と、飽和磁化の低下が問題となる。w=15〜37は非
晶質形成領域である。
【0023】零または負の磁歪をもつ結晶質合金も特に
限定されず、例えばセンダスト系合金やパーマロイ系合
金等のいずれであってもよいが、好ましくは特願平2−
115583号に開示されている合金粉末、すなわちD
3 構造をもつFe−Si−Al系合金や、特願平2−
97241号に開示されている合金粉末、すなわち、F
3 Siを中心とした組成にCrを添加した合金粉末な
どが好ましく、特に、特願平2−97241号に開示さ
れている合金粉末が好ましい。この合金粉末の組成は、
Fe、SiおよびCrの3元組成図(原子比)において A:Fe78Si22Cr0 、 B:Fe70Si30Cr0 、 C:Fe60Si30Cr10、 D:Fe63Si18Cr19、 E:Fe76Si18Cr6 としたとき、A、B、C、D、E、Aを順に結んで得ら
れる5角形の辺上およびその内側で表わされる組成であ
る。この合金も、DO3 構造を有することが好ましい。
DO3 構造をもつことにより劈開が容易に生じるように
なるので、後述する扁平化が容易となる。また、Crを
含む場合には耐食性が良好となる。
【0024】なお、正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末およ
び零または負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末は、いずれも
2種以上の合金粉末を含むものであってよい。
【0025】本発明で用いる軟磁性合金粉末の飽和磁歪
定数λs は特に限定されないが、正の磁歪をもつ合金粉
末のλs は+5×10-6〜+35×10-6であることが
好ましい。λs が小さすぎると、飽和磁化が小さくなっ
て磁気シールド特性が不十分となる。一方、λs が大き
すぎると、応力による透磁率の変化が大きくなりすぎ
る。また、零または負の磁歪をもつ合金粉末のλs は0
〜−10×10-6であることが好ましい。λs が負側に
大きくなりすぎると、応力による透磁率の変化が大きく
なりすぎる。
【0026】正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末と零または
負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末との混合比率は、各合金
粉末の飽和磁歪定数、透磁率、耐食性、平均粒径、アス
ペクト比等を考慮して決定したり実験的に決定したりす
ればよいが、軟磁性合金粉末全体中の正の磁歪をもつも
のの比率は、好ましくは10〜90重量%、より好まし
くは20〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重
量%である。この比率が低すぎると、磁気シールド材の
耐食性が低くなってしまう。一方、この比率が高すぎる
と、結合剤による応力によって磁気シールド材の透磁率
が低くなってしまう。
【0027】軟磁性合金粉末は、扁平状であることが好
ましい。扁平状軟磁性合金粉末の平均厚さは1μm 以
下、特に0.01〜1μm であることが好ましい。平均
厚さが0.01μm 未満となると、結合剤への分散性が
低下する。また、透磁率等の磁気特性が低下し、シール
ド特性が不十分となる。一方、平均厚さが1μm を超え
ると、磁気シールド材を薄く塗布する場合に軟磁性合金
粉末が均一に分散された塗膜を形成することができず、
また、塗膜の厚さ方向の扁平状軟磁性粒子の存在数が少
なくなるため、シールド特性が不十分となる。なお、平
均厚さが0.01〜0.6μm となると、より好ましい
結果が得られる。平均厚さは、分析型走査型電子顕微鏡
で測定すればよい。
【0028】扁平状軟磁性合金粉末の平均アスペクト比
は10〜3000、特に10〜500であることが好ま
しい。本明細書において平均アスペクト比とは、扁平状
軟磁性粉末の平均粒径をその平均厚さで除した値であ
る。平均アスペクト比が10未満であると反磁界の影響
が大きくなり、透磁率などの磁気特性が低下し、シール
ド特性が不十分となる。一方、上記した範囲内の平均厚
さを有する扁平状軟磁性合金粉末において平均アスペク
ト比が3000を超える場合、平均粒径が大きくなりす
ぎるので、結合剤と混練する際に破断が生じて磁気特性
が劣化しやすくなる。
【0029】なお、この場合の平均粒径とは重量平均粒
径D50を意味し、軟磁性合金粉末を構成する粒子の重量
を粒径の小さい方から積算し、この値が軟磁性合金粉末
全体の重量の50%に達したときの粒子の粒径である。
また、この場合の粒径は、光散乱法を用いた粒度分析計
で測定した粒径である。より具体的には、光散乱法を用
いた粒度分析とは、試料を例えば循環しながらレーザー
光やハロゲンランプ等を光源としてフランホーファ回折
あるいはミィ散乱の散乱角を測定し、粒度分布を測定す
るものである。この詳細は、例えば「粉体と工業」VOL.
19 No.7(1987)に記載されている。上記のD50は、この
ような粒度分析計により得られた粒度分布により決定す
ることができる。本発明で用いる扁平状軟磁性合金粉末
は、このようにして決定されるD50が、5〜30μm 、
特に5〜25μm であることが好ましい。
【0030】また、粒子の主面形状において、その長軸
の長さ(最大径)をa、短軸の長さ(最小径)をbとし
たとき、軸比の平均a/bは、磁気シールドに方向性が
要求される場合には1.2以上のできるだけ大きい値が
望ましい。磁界源が方向性を有する場合には、その方向
へ配向磁場を作用させながら磁性塗料を硬化させればそ
の方向の透磁率の向上ができ、磁気シールド効果を大き
くすることができる。この場合、a/bが1.2〜5で
あると、より好ましい結果が得られる。そして、後述す
る媒体攪拌ミルによれば、このような軸比を容易に実現
することができる。粒子の長軸および短軸は、分析型透
過型電子顕微鏡により測定すればよい。
【0031】次に、扁平状軟磁性合金粉末の製造方法を
説明する。
【0032】合金粉末の製造は、合金溶湯の急冷や合金
インゴットの粉砕により行なえばよく、その方法に特に
制限はない。合金溶湯を急冷する方法に特に制限はない
が、粉砕工程なしで所望の粒径の合金粉末が得られて生
産性が高いことから、水アトマイズ法を用いることが好
ましい。水アトマイズ法は、合金溶湯に高圧水を噴射し
て凝固・粉末化した後、水中で冷却するものであり、そ
の詳細は、例えば、本発明者らによる特願平1−122
67号に記載されている。水アトマイズ法の他、溶湯を
冷却基体に衝突させて、薄帯状や薄片状、あるいは粒状
の合金を得る方法を用いてもよい。このような方法とし
ては、片ロール法や双ロール法、あるいはアトマイズ法
が挙げられる。これらの方法では、得られた急冷合金を
必要に応じて粉砕し、所望の粒径の合金粉末とすればよ
い。合金インゴットの粉砕により合金粉末を製造する場
合、インゴッットに容体化処理を施した後、粉砕するこ
とが好ましい。合金粉末の平均粒径は、目的とする扁平
状粉末の粒径やアスペクト比に応じて適宜決定すればよ
いが、通常、重量平均粒径D50で5〜30μm 、好まし
くは7〜20μm とすればよい。なお、合金粉末には、
結晶構造を整えるための熱処理が施されることが好まし
い。
【0033】合金粉末を扁平化する手段に特に制限はな
く、所望の扁平化が可能であればどのような手段を用い
てもよい。ただし、上記したような結晶質合金粉末では
主として劈開により合金粒子の扁平化が進行するので、
劈開を効率よく行なえる手段を用いることが好ましい。
このような手段としては、媒体攪拌ミル、転動ボールミ
ル等が挙げられ、これらのうち、特に媒体攪拌ミルを用
いることが好ましい。媒体攪拌ミルは、ピン型ミル、ビ
ーズミルあるいはアジテーターボールミルとも称される
攪拌機であり、例えば特開昭61−259739号公
報、本発明者らによる特願平1−12267号などに記
載されている。一方、上記したようなアモルファス合金
粉末の扁平化にも媒体攪拌ミルを用いることが好まし
い。アモルファス合金粉末では、ミルにより圧延・剪断
がなされ、また、同時にアモルファス化が進められる。
【0034】扁平化は湿式法で行なうことが好ましい。
この場合、合金粉末の種類に応じ、例えばメチルアルコ
ール、エチルアルコール、IPA等のアルコール類、ト
ルエン、アセトン等から最適な溶剤を選択すればよい。
なお、溶剤中に粉砕助剤等を添加してもよい。
【0035】扁平状軟磁性粒子には、熱処理が施される
ことが好ましい。この熱処理は、磁気特性を向上させる
ためであり、また、上記した結晶質合金粉末ではDO3
型結晶構造を形成あるいは整えるためのものである。
【0036】アモルファス合金粉末に対する熱処理は、
通常、350〜500℃にて10分間〜5時間程度行な
えばよい。また、前記した結晶質合金に対する熱処理
は、通常、100〜600℃にて10分間〜10時間、
好ましくは300〜500℃にて30分間〜2時間行な
えばよい。処理温度が低すぎたり処理時間が短すぎたり
すると熱処理による効果が不十分となり、処理温度が高
すぎたり処理時間が長すぎたりすると発火や焼結が生じ
易い。なお、熱処理は、真空中、あるいは窒素、水素、
Ar等の不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。
この熱処理は、磁場中で行なってもよい。
【0037】本発明の磁気シールド材は、このようにし
て得られる軟磁性合金粉末と結合剤とを含有し、結合剤
中に軟磁性合金粉末が分散されているものである。
【0038】磁気シールド材作製のための塗料は、正の
磁歪をもつ軟磁性合金粉末を含む塗料と、零または負の
磁歪をもつ軟磁性合金粉末を含む塗料とを混合して調製
することが好ましい。結合剤を溶解した溶剤(ビヒク
ル)中に2種以上の合金粉末を投入して混合した場合、
合金粉末の表面性状の違いにより分散が極めて困難とな
り、特に、合金粉末が扁平化されている場合には、扁平
化処理により表面性状が著しく異なっているので、塗料
化が実質的に不可能となってしまう。
【0039】各合金粉末の塗料化に用いるビヒクルは特
に限定されず、結合剤には、公知の熱可塑性樹脂、熱硬
化性樹脂、放射線硬化性樹脂等を利用すればよく、溶剤
には公知の各種有機溶剤などを利用すればよい。なお、
塗料の硬化は両塗料を混合した後に行なうため、各塗料
調製に用いるビヒクルは、硬化条件がほぼ同じとなるよ
うに適宜選択することが好ましい。
【0040】均一な塗膜を形成するためには、混合後の
最終塗料中の合金粉末の含有率を40〜95重量%とす
ることが好ましいが、混合前の各塗料中における各合金
粉末の含有率もこのような範囲とすることが好ましい。
【0041】なお、塗料中には、硬化剤、分散剤、安定
剤、カップリング剤等が含まれていてもよい。
【0042】最終塗料は、通常、塗布または成形され、
次いで、必要に応じて加熱硬化されて磁気シールド材と
して用いられる。硬化は、一般に、加熱オーブン中で5
0〜80℃にて1〜100時間程度加熱すればよい。
【0043】磁気シールド材中における軟磁性合金粉末
の充填率は、60〜95重量%であることが好ましい。
充填率が60重量%未満であると磁気シールド効果が急
激に減少し、95重量%を超えると軟磁性合金粉末が結
合剤によって強固に結び付くことができず、磁気シール
ド材の強度が低下する。充填率が70〜90重量%であ
ると、特に良好な磁気シールド効果が得られ、シールド
材の強度も十分である。
【0044】本発明の磁気シールド材を、薄膜状あるい
は薄板状として磁気シールド用に用いる場合、磁気シー
ルド材の厚さは5〜200μm であることが好ましい。
このような厚さ範囲とするのは、本発明の磁気シールド
材は5μm の厚さでも高い磁気シールド効果を示し、ま
た、シールド材が磁気飽和しない程度の強度を有する磁
界のシールドをする場合、200μm を超える厚さに形
成しても磁気シールド効果は顕著には向上せず、200
μm 以下とすればコスト的にも有利だからである。
【0045】塗料を塗布する際に、配向磁界をかけたり
あるいは機械的に配向することにより、方向性の高い磁
気シールド材とすることができる。特に、磁気シールド
材を板状あるいは膜状としたときには、膜面と平行な方
向の磁界に対して高い磁気シールド効果を示し、上記の
ような厚さ範囲にて十分な効果を示す。
【0046】なお、磁気シールド材に適用するに際し、
軟磁性合金粉末には、Cu、Ni等の導電性被膜を形成
してもよく、耐食性向上のために表面に酸化膜を設けて
もよい。
【0047】このような軟磁性合金粉末を用いた本発明
の磁気シールド材は、安価かつ高性能であり、磁気カー
ド、スピーカ、CRT等の磁気シールド等の他、極めて
広い範囲に適用することができる。
【0048】
【実施例】以下、具体的実施例を挙げて、本発明をさら
に詳細に説明する。
【0049】<アモルファス合金粉末塗料>水アトマイ
ズ法により合金粉末を製造し、次いで媒体攪拌ミルを用
い、エチルアルコール中で圧延・剪断して扁平化すると
共にアモルファス化を進めた。次いで、450℃で1時
間熱処理を施し、アモルファス合金粉末を得た。このア
モルファス合金粉末の組成(原子比)は Fe68Cr3 Nb4 Si178 であり、D50は15μm 、平均厚さは0.2μm 、アス
ペクト比は75であった。なお、平均厚さは分析型走査
型電子顕微鏡により測定し、D50は光散乱を利用した粒
度分析計により測定した。また、この組成における飽和
磁歪定数λs を測定した。なお、λs は、アモルファス
リボンを用いて微小磁化回転法により測定した。結果を
表1に示す。
【0050】このアモルファス合金粉末を下記の結合
剤、硬化剤および溶剤からなるビヒクルと混合して塗料
化とした。
【0051】結合剤 塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体[エスレックA(積
水化学社製)]100重量部 ポリウレタン[ニッポラン2304(日本ポリウレタン
社製)]100重量部(固型分換算)
【0052】硬化剤 ポリイソシアネート[コロネートHL(日本ポリウレタ
ン社製)]10重量部
【0053】溶剤 MEK850重量部
【0054】塗料中における{アモルファス合金粉末/
(アモルファス合金粉末+結合剤+硬化剤)}は、80
重量%とした。
【0055】<結晶質合金粉末塗料>水アトマイズ法に
より合金粉末を製造し、次いで媒体攪拌ミルを用いて、
トルエン中で合金粉末を扁平化し、さらに熱処理を施し
て、結晶質合金粉末を得た。熱処理は、1体積%の酸素
を含む窒素雰囲気中にて350℃で1時間行なった。熱
処理後にX線回折分析を行なったところ、面指数(00
2)のピークが認められ、DO3 型結晶構造が存在する
ことが確認された。この結晶質合金粉末の組成(原子
比)は Fe77Si20Cr3 であり、D50は15μm 、平均厚さは0.2μm 、アス
ペクト比は75であった。この組成における飽和磁歪定
数λs を表1に示す。λs は、3端子容量法で測定し
た。この結晶質合金粉末を用い、上記アモルファス合金
粉末塗料と同様にして塗料化した。
【0056】次に、アモルファス合金粉末と結晶質合金
粉末とが表1に示す比率となるように上記2種の塗料を
混合して、磁気シールド用の最終塗料とした。混合には
媒体攪拌ミルを用いた。次いで、最終塗料を、厚さ75
μm の長尺PET基板に25μm 厚に塗布し、ロール状
に巻き取った後、60℃にて60分間加熱して硬化し
た。これをシート状に切断し、シールド板サンプルとし
た。また、比較のために、アモルファス合金粉末塗料お
よび結晶質合金粉末塗料をそれぞれ単独で最終塗料とし
て用いたサンプルも作製した。
【0057】作製したシールド板サンプルを磁石上に設
置し、シールド板サンプルから0.5cmの位置での漏れ
磁束φを測定し、これとシールド板がない場合の磁束φ
0 との比φ/φ0 を算出し、これを初期のシールド比と
した。結果を表1に示す。なお、この測定条件におい
て、シールド比が0.1以下の値であれば十分なシール
ド効果が得られていることになるが、実際はシールド比
が小さいほど好ましい。
【0058】また、シールド材の耐食性を評価するため
に、各サンプルを60℃・95%RHの環境に96時間
放置した後、シールド比を算出した。結果を表1に示
す。
【0059】また、応力による劣化を調べるために、各
サンプルに樹脂板を載せて1kg/mm2の荷重を加え、荷重
印加時のシールド比を求めた。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】表1から、2種の合金粉末を併用すること
により良好なシールド特性が得られると共に、高温・高
湿環境下で使用してもシールド特性の劣化が小さくなる
こと、また、荷重印加時のシールド特性の劣化が抑えら
れることがわかる。これに対し、1種の粉末だけを使用
した比較サンプルでは、放置後または応力印加時のシー
ルド比が0.1を超えてしまっている。
【0062】なお、扁平化後の上記アモルファス合金粉
末と扁平化後の上記結晶質合金粉末とを混合した後、上
記ビヒクルと混練したところ、両合金粉末とビヒクルと
の馴染みが悪く、分散が著しく不良となり、塗料化が実
質的に不可能であった。
【0063】以上の実施例から、本発明の効果が明らか
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 唐津 真弘 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 扁平状の軟磁性合金粉末と結合剤とを含
    有し、前記軟磁性合金粉末が正の磁歪をもつ軟磁性合金
    粉末と零または負の磁歪をもつ軟磁性合金粉末とである
    磁気シールド材。
  2. 【請求項2】 正の磁歪をもつ軟磁性合金粉末がアモル
    ファス合金粉末であり、零または負の磁歪をもつ軟磁性
    合金粉末が結晶質合金粉末である請求項1の磁気シール
    ド材。
  3. 【請求項3】 正の磁歪をもつ扁平状の軟磁性合金粉末
    を含む塗料と、零または負の磁歪をもつ扁平状の軟磁性
    合金粉末を含む塗料とを混合する工程を有する磁気シー
    ルド材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2の磁気シールド材を製
    造する請求項3の磁気シールド材の製造方法。
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