JPH09268103A - 被覆農薬粒剤、その製造方法およびこの被覆農薬粒剤の使用方法 - Google Patents

被覆農薬粒剤、その製造方法およびこの被覆農薬粒剤の使用方法

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JPH09268103A
JPH09268103A JP17996596A JP17996596A JPH09268103A JP H09268103 A JPH09268103 A JP H09268103A JP 17996596 A JP17996596 A JP 17996596A JP 17996596 A JP17996596 A JP 17996596A JP H09268103 A JPH09268103 A JP H09268103A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圃場に施用後直ちには農薬活性成分を溶出せ
ず、一定期間後に溶出を開始し、農作物の栽培期間内に
溶出を完了する被覆農薬粒剤、特に難水溶性の農薬活性
成分への適用に有効な被覆農薬粒剤、その製造方法およ
びこの被覆農薬粒剤の使用方法を提供することである。 【解決手段】 1種以上の難水溶性農薬活性成分と1種
以上の水膨潤性物質とからなる農薬粒剤の表面が、熱可
塑性樹脂を主成分とする被膜で被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、時限溶出型の徐放
性農薬に関する。さらに詳しくは、難水溶性の農薬活性
成分と水膨潤性物質からなる農薬粒剤の表面を、熱可塑
性樹脂を主成分とする被膜で被覆してなる被覆農薬粒
剤、その製造方法およびこの被覆農薬粒剤の使用方法に
関する。
【0002】
【背景技術】農作物の栽培には、殺虫剤、殺菌剤あるい
は除草剤等の農薬が不可欠となっている。農薬の施用に
際しては、作業の省力化の観点から一度に多量の農薬を
施用することが好ましいが、高濃度の農薬活性成分が作
物へ薬害もしくは人体へ被害を及ぼしたり、農薬活性成
分の流亡等による損失や効果の持続時間が短くなるとい
う欠点を有する。
【0003】水稲に代表されるように苗の移植を必要と
する作物では、移植時に毛根が切れたり作物が折れる等
の傷みを生じ、さらに苗床と本圃場との環境変化が大き
いので、移植後根が活着するまでは苗は不安定な状態に
ある。従って、この時期に殺草作用のある農薬を施用す
ることは、薬害による苗の発育不良や枯死を招く恐れが
ある。苗の移植時に除草剤等の農薬を施用できれば、農
作業の省力化に有効であるが、水稲の場合には、田植え
から約1週間経過した後でなければ除草剤を施用できな
いのが現状である。このような欠点を解消する目的で、
圃場に施用された農薬から徐々に農薬活性成分が溶出す
るように工夫された各種の徐放性農薬が知られている。
【0004】特開平2−286602号公報には、液状
の農薬活性成分を含浸させた鉱物質粒体の表面を疎水性
の微粉で被覆してなる粒状の徐放性農薬が開示されてい
る。しかし、この徐放性農薬は施用された直後から農薬
活性成分が溶出されるので、苗の移植時に施用するには
不適当である。特公昭64−5002号公報には、水溶
性または蒸散性の農薬活性成分を熱可塑性樹脂で被覆し
てなる徐放性農薬が開示されている。しかし、この徐放
性農薬では、農薬活性成分は熱可塑性樹脂からなる被膜
を透過して放出されるものであるから、水溶性または蒸
散性の農薬活性成分には有用であるが、難水溶性の農薬
活性成分に適用することは困難である。一般に除草剤に
用いられる農薬活性成分には、難水溶性のものが多く、
これらの農薬活性成分を特公昭64−5002号公報に
記載された被膜で被覆すると、溶出速度が極めて遅く所
期の除草効果が得られないばかりか、作物が収穫された
後まで土壌中に農薬活性成分が残留し、土壌を汚染する
という問題を生ずる。
【0005】特開平6−9304号公報および特開平6
−72805号公報には、圃場に施用後、被膜の一部が
溶解して生じた空隙から農薬活性成分が溶出する、時限
溶出型の徐放性農薬が開示されている。また、特開平6
−9303号公報および特開平6−80514号公報に
は、圃場に施用後、被膜の一部に生じた亀裂から農薬活
性成分が溶出する、時限溶出型の徐放性農薬が開示され
ている。しかし、これらの時限溶出型の徐放性農薬で
は、いずれも被膜を二重構造とすることにより時限溶出
性を得ており、その製造方法は複雑で、製品は高価なも
のとなる。また、農薬活性成分の溶出は被膜に生じた小
さな空隙を介して行われるので溶出速度が遅く、難水溶
性の農薬活性成分への適用が困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、徐放性農薬
の上記現状を改善しようとするもので、圃場に施用後直
ちには農薬活性成分を溶出せず、一定期間後に溶出を開
始し、農作物の栽培期間内に溶出を完了する被覆農薬粒
剤、特に難水溶性の農薬活性成分への適用に有効な被覆
農薬粒剤、その製造方法およびこの被覆農薬粒剤の使用
方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、上記の課題
の解決のため鋭意検討した結果、難水溶性の農薬活性成
分と水膨潤性物質とからなる農薬粒剤の表面を熱可塑性
樹脂を主成分とする被膜で被覆した被覆農薬粒剤を圃場
に施用すると、外部より被膜を透過して、徐々に内部へ
浸透した水分を水膨潤性物質が吸収し、水膨潤性物質を
含む農薬粒剤が次第に膨張して、一定期間後に被膜に亀
裂を生じさせることにより、亀裂から多量の水分を吸収
させ、農薬粒剤を急速に膨張させることにより、被膜の
亀裂を大きく成長させて被膜を崩壊し、農薬粒剤中の難
水溶性農薬活性成分に多量の水を接触させ、難水溶性農
薬活性成分を外部に溶出させることにより所期の目的が
達成されることを知り、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は以下の構成を有する。 (1)1種以上の難水溶性農薬活性成分と1種以上の水
膨潤性物質とからなる農薬粒剤の表面が、熱可塑性樹脂
を主成分とする被膜で被覆されている被覆農薬粒剤。 (2)熱可塑性樹脂がオレフィン重合体およびオレフィ
ンを主成分とするオレフィン系共重合体である前記第
(1)項に記載の被覆農薬粒剤。 (3)被膜内に、エチレン・酢酸ビニル共重合体が15
重量%以下配合されている前記第(1)項または前記第
(2)項のに記載の被覆農薬粒剤。 (4)被膜内に、界面活性剤が配合されている前記第
(1)項ないし前記第(3)項のいずれか1項に記載の
被覆農薬粒剤。 (5)被膜内に、水に不溶性または水に難溶性の無機粉
体が配合されている前記第(1)項ないし前記第(4)
項のいずれか1項に記載の被覆農薬粒剤。 (6)被膜が一層構造である前記第(1)項ないし前記
第(5)項のいずれか1項に記載の被覆農薬粒剤。 (7)外部より被膜を透過して、徐々に内部へ浸透した
水分を水膨潤性物質が吸収し、水膨潤性物質を含む農薬
粒剤が次第に膨張して、一定期間後に被膜に亀裂を生じ
させることにより、亀裂から多量の水分を吸収させ、農
薬粒剤を急速に膨張させることにより、被膜の亀裂を大
きく成長させて被膜を崩壊し、農薬粒剤中の難水溶性農
薬活性成分に多量の水を接触させ、難水溶性農薬活性成
分を外部に溶出させることのできる前記第(1)項ない
し前記第(6)項のいずれか1項に記載の被覆農薬粒
剤。 (8)熱風流により流動状態にある農薬粒剤に対し、被
膜構成材料が溶媒により溶解された混合溶解液を噴霧す
る一方、該農薬粒剤上の溶媒を乾燥除去し、農薬粒剤の
表面に被膜を形成させる被覆農薬粒剤の製造方法。 (9)苗の移植時に、被覆農薬粒剤を施用する被覆農薬
粒剤の使用方法。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、被膜が崩壊するまでの一定期間は、農薬粒剤に含ま
れる難水溶性の農薬活性成分が外部へ溶出されることは
ないが、溶出開始後は、農薬活性成分が徐々に外部へ溶
出される時限溶出型徐放性被覆農薬粒剤である。本発明
の被覆農薬粒剤は、外部より被膜を透過して、徐々に内
部へ浸透した水分を水膨潤性物質が吸収し、次第に膨潤
してゆく水膨潤性物質により、被膜の限界まで応力がか
かると、被膜に亀裂が発生し、生じた亀裂から水分の進
入が急速に進んで、水膨潤性物質の膨潤を加速させるこ
とにより、被膜の亀裂を大きく成長させ、被膜を速やか
に崩壊し、農薬粒剤に含まれている難水溶性農薬活性成
分に多量の水を接触させ、難水溶性農薬活性成分の溶出
を開始させる機能を有するものである。被覆農薬粒剤の
被膜崩壊写真を図1に示す。図1−aは、被覆農薬粒剤
の写真であり、図1−bは、被膜崩壊後の被覆農薬粒剤
の写真である。
【0010】本発明では、被覆農薬粒剤を施用した後、
被膜が崩壊し難水溶性農薬活性成分が溶出を開始するま
での時間(以下、被膜崩壊時間)を調整することができ
るが、これには、被膜の透湿性、被膜の限界強度および
農薬粒剤の膨潤性を考慮する必要がある。被膜の透湿性
は、被膜の構成成分に大きく依存しており、被膜に用い
られる熱可塑性樹脂や必要によって用いられる界面活性
剤や無機粉体らが大きな影響を与える。被膜の限界強度
は、被膜の構成成分と被膜の厚みに大きく依存してお
り、被膜に用いられる熱可塑性樹脂や被膜の厚みおよび
厚みの均一性が大きな影響を与える。農薬粒剤の膨潤性
は、農薬粒剤の構成成分である水膨潤性物質に依存して
いる。限界強度が大きく、透湿性が乏しく、厚く均一な
被膜を用い、膨潤性の劣る水膨潤性物質を使用すること
により、難水溶性農薬活性成分の被膜崩壊時間を長くで
きる。反面、限界強度が小さく、透湿性に優れ、薄く不
均一な被膜を用い、膨潤性の優れる水膨潤性物質を使用
することにより、被膜崩壊時間を短かくできる。中で
も、被膜崩壊時間は、被膜の透湿性に影響を受け易いの
で、被膜の透湿性の調整には注意を払う必要がある。被
膜の透湿性が高すぎると、被覆農薬粒剤を水田のような
水分の豊富な場所に施用した場合、水膨潤性物質が急激
に膨張し、施用と同時に被膜が崩壊してしまったりする
恐れがある。本発明では、このような被膜の透湿性、被
膜の限界強度および農薬粒剤の膨潤性を調整すること
で、使用に供する作物やその栽培条件に合った被覆農薬
粒剤を得ることができるのである。
【0011】本発明の被覆農薬粒剤には、農薬活性成分
として殺虫作用、殺菌作用、除草作用および植物の生長
調整作用等を有する難水溶性農薬活性成分を使用する。
また、難水溶性農薬活性成分は、単独の成分であって
も、複数の成分であっても良く、それらの種類および組
み合わせには格別の制限はない。本発明において、難水
溶性農薬活性成分とは、農薬活性成分の水への溶解度が
1000ppm(25℃)以下のものをいう。本発明に
おいては、1000ppm(20℃)以下の難水溶性農
薬活性成分が好ましく、600ppm以下が特に好まし
く、50ppm以下がさらに好ましい。水への溶解度の
大きい農薬活性成分を使用すると、被覆農薬粒剤が溶出
を開始する初期の段階において、多量の農薬活性成分が
溶出し、作物に薬害を与えたり、長期間薬効を持続させ
ることができなくなるので好ましくない。
【0012】難水溶性農薬活性成分の具体例として、1
−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイ
ミダゾリジン−2−イリデンアミン、3−アリルオキシ
−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシ
ド、2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピル
アミノ−s−トリアジン、1−(2−クロロイミダゾ
[1,2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−
(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル尿素、2−
クロル−4,6−ビス(エチルアミノ)−S−トリアジ
ン、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチ
ルアセトアニリド、メチル=α−(4,6−ジメトキシ
ピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−
ο−トルアート、S−(4−クロロベンジル)−N,N
−ジエチルチオカーバメート、S−ベンジル=1,2−
ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート、2,4
−ジクロロフェニル−3′−メトキシ−4′−ニトロフ
ェニルエーテル、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−
6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリア
ジン、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−
ジメチル−5−ピラゾリル−p−トルエンスルホネー
ト、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−
s−トリアジン、S−1−メチル−1−フェニルエチル
=ピペリジン−1−カルボチオアート、1−(α,α−
ジメチルベンジル)−3−(パラトリル)尿素、2−ク
ロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2´,6´
−ジメチルアセトアニリド、2−クロロ−2´,6´−
ジエチル−N−(ブドキシメチル)アセトアニリド、
2,4−ジクロロフェノキシ酢酸エチル、2−メチル−
4−クロロフェノキシ酢酸エチル、(E)−(S)−1
−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−
(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタ
−1−エン−3−オール、(2RS,3RS)−1−
(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1
H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−
3−オール、4´−クロロ−2´−(α−ヒドロキシベ
ンジル)イソニコチンアニリド等を例示することができ
る。
【0013】本発明の被覆農薬粒剤に使用する水膨潤性
物質とは、水を吸収することにより体積が膨張する物質
であり、ベントナイト、澱粉、高吸水性高分子等を挙げ
ることができる。ベントナイトには、その組成や粒度に
より膨潤性が異なる。カルシウムイオンとマグネシウム
イオンに富んだ膨潤性の低いカルシウム系ベントナイ
ト、ソーダ処理により膨潤活性を人工的に付与した活性
化ベントナイトなどの種類でも特に問題はないが、多量
の水を吸収し膨潤性の高いナトリウム系ベントナイトが
好ましい。澱粉には、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉等の
天然の澱粉のほか、酸化澱粉、メチル澱粉、カルボキシ
メチル澱粉等の各種の加工澱粉を示すことができる。高
吸水性高分子には、セルロ−ス系高吸水性高分子、ポリ
ビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸ナトリウム等を例示
することができる。これらの水膨潤性物質は、単独で使
用しても良く、複数の物質を併用しても良く、それらの
種類および組み合わせには格別の制限はない。
【0014】本発明においては、上記難水溶性農薬活性
成分と上記水膨潤性物質とを混合し農薬粒剤とする。農
薬粒剤は、0.5〜10mmの粒径のものが好ましく、
1〜5mmの粒径のものがより好ましい。このような農
薬粒剤は、慣行法に準じて造粒することによって得られ
るが、押し出し造粒法を用いると容易に得ることができ
る。また、この際、造粒助剤や結合剤を使用すると、上
記農薬粒剤が得易くなる。造粒助剤には、クレイ、カオ
リン、バーミキュライト等の無機質の粉粒体、籾殻等の
有機質粉粒体さらには尿素、硫安、塩安等の肥料を例示
することができる。結合剤には、アラビアゴム、カルボ
キシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、
ポリビニルアルコール等を例示することができる。
【0015】本発明においては、上記の農薬粒剤に対し
て、熱可塑性樹脂を主成分とする被膜で被覆する。被膜
の主成分として用いられる熱可塑性樹脂としては、透水
性の小さな樹脂が好ましく、具体的には、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン、ポリブテン、塩化ビニリデン、、ポ
リスチレン等のオレフィン重合体、エチレン・プロピレ
ン共重合体、エチレン・一酸化炭素共重合体、ブテン・
エチレン共重合体、ブテン・プロピレン共重合体、エチ
レン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一
酸化炭素共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エ
チレン・メタアクリル酸エステル共重合体等のオレフィ
ンを主成分とするオレフィン系共重合体、塩化ビニリデ
ン・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合
体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレ
ン重合体、ブタジエン・スチレン共重合体、EPDM重
合体、スチレン・イソプレン共重合体等のジエン系重合
体、密ロウ、木ロウ、パラフィン等のワックス類等が使
用できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用しても
良く、複数の物質を併用しても良い。また、必要に応じ
て、天然ゴム、ロジン等の天然樹脂、油脂、油脂変性物
等を混合しても良い。これらの種類および組み合わせに
は格別の制限はない。
【0016】なお、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エ
チレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体およびジエン
系重合体のような弾性力の強い熱可塑性樹脂は、被膜に
柔軟性を与え、農薬粒剤の膨潤による内部応力を緩和さ
せる効果があるため、被膜崩壊時間を調節することがで
きるが、これらの重合体が被膜中に多量に存在すると、
被膜崩壊時間が極端に長くなったり、亀裂が生じなくな
る恐れがあるため、被膜中の配合量は、20重量%未満
が好ましく、15重量%以下とするのが更に好ましい。
【0017】本発明においては、被膜の透湿性を調節す
ることにより、被覆農薬粒剤の被膜の被膜崩壊時間を調
節する目的で、被膜に界面活性剤を添加することができ
る。界面活性剤は、被膜の透湿性を向上させることがで
きるので、被膜崩壊時間を早める効果がある。被膜に用
いる熱可塑性樹脂の種類によっては、得られる被膜の透
湿性が実用以上に低くなり、亀裂が発生し難くなる場合
があるが、このような場合に用いると効果的である。
【0018】界面活性剤としては、HLBが6〜20、
好ましくは9〜16、さらに好ましくは11〜13のも
のを使用すると良い。界面活性剤のHLBが20を超す
ほど親水性が強くなり、界面活性剤が被膜中に均一に分
散することができず、被膜に欠落が生成する原因となる
ことがある。また、界面活性剤のHLBが6未満の親油
性の強いものであると、被膜の透湿性を高めて被膜崩壊
時間を早くするという効果が得られなくなるので好まし
くない。
【0019】界面活性剤としては、アニオン界面活性
剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両
性界面活性剤をいずれも使用することができ、単一種の
界面活性剤であってもよく、複数の界面活性剤を混合物
として上記HLBの範囲に調整して用いることもでき
る。特に、本発明においてはノニオン界面活性剤が好ま
しい。界面活性剤の具体例としては、アニオン界面活性
剤として、高級脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸
塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキル
・スルフォン酸塩類、高級アルキル・ジスルフォン酸塩
類、スルフォン化高級脂肪酸塩類、高級アルキル燐酸エ
ステル塩類等を挙げることができ、カチオン性界面活性
剤として、高級アルキル・アミン塩類、第4級アンモニ
ウム塩等を例示することができ、ノニオン性界面活性剤
として、ポリオールの脂肪酸エステル、ポリエチレン・
オキサイド縮合型等を例示することができる。
【0020】また、界面活性剤の添加量としては、被膜
全量に対して、0.01〜20重量%の範囲であること
が好ましく、0.05〜10重量%の範囲がより好まし
い。0.01重量%より少ないと、用いる界面活性剤の
効果が得られ難くなり、反面20重量%を越えると不経
済となる。
【0021】本発明においては、被覆農薬粒剤の被膜崩
壊時間を調整する目的で、被膜内に無機粉体を添加する
ことができる。無機粉体は、被膜の被膜崩壊時間を早め
る効果がある。無機粉体としては、水に不溶性ないし難
水溶性のものが好ましい。具体的には、タルク、クレ
イ、金属酸化物、珪酸塩鉱物、硫黄等を挙げることがで
きる。これらの無機粉体は、被膜内に完全に埋没する必
要があるので、その粒径が50μm以下のもの、好まし
くは20μm以下のものを使用し、またその添加量は、
被膜全量に対して50重量%以上とするのが好ましい
が、格別これらの値に限定されるものではない。
【0022】本発明の被覆農薬粒剤の製造方法は、熱風
流により流動状態にある農薬粒剤に対し、被膜構成材料
が溶媒により溶解された混合溶解液を噴霧する一方、該
農薬粒剤上の溶媒を乾燥除去し、農薬粒剤の表面に被膜
を形成させる被覆農薬粒剤の製造方法である。
【0023】製造方法に使用し得る被覆装置の一例を、
添付図面を参照しながら説明する。本発明の製造方法
は、図2に示される噴流層を用いて行うのが最も好まし
い。この噴流層は、転動または流動状態にある農薬粒剤
5に対し、被膜構成材料の混合溶解液12をポンプ6に
よって、スプレーノズル4により噴霧し、農薬粒剤5の
表面に吹き付けて、該表面を被覆すると同時並行的に、
熱交換器8で加熱された高温気体をブロアー10によっ
て噴流塔1に下部から流入させ、該高速熱風流によっ
て、農薬粒剤5の表面に付着している混合溶解液中の溶
媒を瞬時に蒸発乾燥させるものである。
【0024】本発明の被覆農薬粒剤の使用方法は、苗の
移植と同時に、被覆農薬粒剤を施用する方法である。本
発明では、農薬活性成分が必要となる時期に合わせて、
難水溶性農薬活性成分を溶出させることができ、農作物
に対し薬害を発生させず、環境を悪化させることのない
低濃度で溶出を持続させることができる。これにより、
苗の移植と同時に、被覆農薬粒剤を施用しても、根が活
着してから難水溶性農薬活性成分の溶出が開始し、溶出
された難水溶性農薬活性成分は、除草、殺菌および殺虫
のために、全てが消費されるので、移植苗に悪影響を及
ぼさず、農作物を安全に生産することができる。本発明
では、希望する時期に被覆農薬粒剤を施用して何ら差し
支えないが、移植と同時に施用すると農作業時間の大幅
な短縮ができる。
【0025】
【実施例】以下、農薬粒剤の調整、製造例および実施例
を用い、詳細を説明する。なお、本実施例は本発明をな
んら限定するものではない。尚、以下の実施例における
「%」は特にことわりがない限り「重量%」である。
【0026】(農薬粒剤の調整)表1に示される組成か
らなる粒剤原料を、加水しながらニーダーで混練し、こ
れを押し出し造粒し、整粒機にて球形造粒した。次に、
該造粒物を乾燥し、難水溶性農薬活性成分を含有した粒
径0.8〜1.4mmφの各種農薬粒剤を得た。なお、
農薬粒剤Dにおいて用いた高分子は、水に溶解して加え
た。
【0027】(製造例)塔径250mm、高さ2000
mm、空気噴出口径50mm、円錘角50度の形状を有
する噴流塔1内へ、高温熱風を下部から上部に向けて流
入する。高温熱風は、ブロアー10から送風され、オリ
フィス流量計9を通り、熱交換器8によって高温に加熱
されて、噴流塔1に流入され、噴流塔1の上部に設置さ
れている排ガス用出口3から排出される。この高温熱風
が循環している噴流塔1の内部に、表2に示される農薬
粒剤5を、噴流塔1の側面に設置されている粒剤投入口
2から10Kg投入し、図1に示されるように農薬粒剤
5を粉体流動させる。この際、流量および熱風温度は、
各サンプル毎に適宜調節する必要があり、流量はオリフ
ィス流量計で測定しながら調節し、熱風温度は、T1の
熱風温度、T2の粒剤温度、T3の排気温度を測定しな
がら調節する。本実施各例においては、流量(9)4m
3 /min、熱風温度(T1)100℃±2℃で実施し
た。他方、溶解槽11に、表2に示される被膜材料と溶
媒としてテトラクロロエチレンを投入し、混合撹拌する
ことによって、2.5%被膜材料溶解液を得る。該溶解
液は、ポンプ6によって噴流塔1の下部に設置されてい
る開口0.6mmフルコーン型一流体ノズルであるスプ
レーノズル4に、流速0.3kg/minで輸送され、
粉体流動中の農薬粒剤5に向かって噴霧され、吹き付け
られる。このような吹き付け操作は、流動中の農薬粒剤
のT2が所定の温度に達した時点から開始され、所定時
間スプレーした後、所定時間の乾燥を実施し、乾燥が終
了した時点で、ブロアー10を止め、被覆された農薬粒
剤5を、噴流塔1の最下部にある抜き出し口7より排出
し、表2に記載する被覆率を有する実施例1〜12の被
覆農薬粒剤を得た。
【0028】(放出確認試験)前記製造例によって得ら
れた各被覆農薬粒剤の放出確認試験を実施した。放出確
認試験は、該被覆農薬粒剤に亀裂が入り、被膜が破壊さ
れることにより、内部の農薬粒剤が外部に放出されるま
での時間(放出開始時間)を測定したものである。試験
方法は以下の記載に準じて行った。ビーカーに500m
lの蒸留水と0.1gの該被覆農薬粒剤を投入し、経時
的な該被覆農薬粒剤の被膜崩壊状態を観察した。また、
ビーカー中の蒸留水を、定期的にサンプリングし、蒸留
水中の難水溶性農薬活性成分を、高速液体クロマトグラ
フィにて分析を行い、難水溶性農薬活性成分の溶出が検
出された時間を、農薬粒剤の放出開始時間とした。この
ときの水温は20℃で、投入後30日まで測定を行っ
た。この結果を表2に示す。
【0029】また、実施例2の崩壊過程を図3に示し
た。図3−aは、実施例2の該被覆農薬粒剤をビーカー
に投入してから6時間後、図3−bは、6時間5分後、
図3−cは、6時間10分後の連続写真である。図3の
連続写真より明らかなように、該被覆農薬粒剤は、亀裂
が発生するまでに一定時間を要し、その間の難水溶性農
薬活性成分の溶出は全く起こらないが、ひとたび亀裂が
発生すると、被膜崩壊が加速度的に起こり、内部の農薬
粒剤が速やかに放出される。また、実施例2〜6は、界
面活性剤の添加量を変動させたものであるが、加える界
面活性剤の量が多くなるほど、放出開始時間が短くな
り、放出開始時間の調整に有効であることが判る。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】PE−1:低密度ポリエチレン MI=2
0 d=0.922g/cm3 PE−2:エチレン・一酸化炭素共重合体 MI=0.
75 CO=0.95重量% PP :エチレン3%を含むコポリマー型アタクチッ
クポリプロピレン Mw=60,000 E V A:エチレン・酢酸ビニル共重合体 MI=20
酢酸ビニル30重量% W A X:ポリエチレンワックス Mw=8,000
d=0.97g/cm3 P C L:ポリ−ε−カプロラクトン Mw=50,0
00 ノニオン:ヘキサオキシエチレンノニルフェニルエーテ
ル HLB=13 タ ル ク:平均粒径 5μm 炭 カ ル:炭酸カルシウム 平均粒径 5μm ク レ イ:平均粒径 5μm
【0033】
【発明の効果】以上のように、本発明の被覆農薬粒剤
は、難水溶性農薬活性成分を含有した農薬粒剤を任意に
放出できるものであり、これにより、具体的に以下の効
果が得られた。 (1)従来の農薬は、施用すると同時に環境水と接する
ため施用後、直ちに溶出が開始していたが、本発明の被
覆農薬粒剤は、一定期間難水溶性農薬活性成分の溶出を
抑制することができる。 (2)従来の被覆農薬粒剤では、被膜の透過性を利用し
た水分移動によって、農薬活性成分を外部に溶出してい
るので、難水溶性農薬活性成分を使用できなかったが、
本発明の被覆農薬粒剤では、難水溶性農薬活性成分の使
用が可能となり、使用できる農薬活性成分の選択幅が広
がった。 (3)本発明の被覆農薬粒剤は、被膜が崩壊し、難水溶
性農薬活性成分を含有する農薬粒剤を放出できるで、従
来の徐放型被覆農薬粒剤と異なり、被膜内部の農薬活性
成分水溶液濃度が低くなるに従い、溶出速度が遅くなっ
たり、被膜内部に長期間農薬活性成分残留物が存在する
ことがないので、難水溶性農薬活性成分を完全溶出で
き、使用効率が良く、残留物による危険がない。また、
難水溶性農薬活性成分の使用量を低減させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆農薬粒剤の被膜破壊写真
【図2】噴流層のフローシートの図
【図3】実施例2の被覆農薬粒剤の経時的被膜破壊写真
【符号の説明】
1.噴流塔 2.粒剤投入口 3.排ガス出口 4.スプレーノズル 5.農薬粒剤 6.ポンプ 7.抜き出し口 8.熱交換器 9.オリフィス流量計 10.ブロアー 11.溶解槽 12.被膜材料の混合溶解液 T1 .熱風温度 T2 .粒体温度 T3 .排気温度 SL.スチーム
【手続補正書】
【提出日】平成8年8月8日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】
【表1】

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1種以上の難水溶性農薬活性成分と1種以
    上の水膨潤性物質とからなる農薬粒剤の表面が、熱可塑
    性樹脂を主成分とする被膜で被覆されていることを特徴
    とする被覆農薬粒剤。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂がオレフィン重合体およびオ
    レフィンを主成分とするオレフィン系共重合体であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の被覆農薬粒剤。
  3. 【請求項3】被膜内に、エチレン・酢酸ビニル共重合体
    が15重量%以下配合されていることを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の被覆農薬粒剤。
  4. 【請求項4】被膜内に、界面活性剤が配合されているこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項
    に記載の被覆農薬粒剤。
  5. 【請求項5】被膜内に、水に不溶性または水に難溶性の
    無機粉体が配合されていることを特徴とする請求項1な
    いし請求項4のいずれか1項に記載の被覆農薬粒剤。
  6. 【請求項6】被膜が一層構造であることを特徴とする請
    求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の被覆農薬
    粒剤。
  7. 【請求項7】外部より被膜を透過して、徐々に内部へ浸
    透した水分を水膨潤性物質が吸収し、水膨潤性物質を含
    む農薬粒剤が次第に膨張して、一定期間後に被膜に亀裂
    を生じさせることにより、亀裂から多量の水分を吸収さ
    せ、農薬粒剤を急速に膨張させることにより、被膜の亀
    裂を大きく成長させて被膜を崩壊し、農薬粒剤中の難水
    溶性農薬活性成分に多量の水を接触させ、難水溶性農薬
    活性成分を外部に溶出させることのできる請求項1ない
    し請求項6のいずれか1項に記載の被覆農薬粒剤。
  8. 【請求項8】熱風流により流動状態にある農薬粒剤に対
    し、被膜構成材料が溶媒により溶解された混合溶解液を
    噴霧する一方、該農薬粒剤上の溶媒を乾燥除去し、農薬
    粒剤の表面に被膜を形成させることを特徴とする被覆農
    薬粒剤の製造方法。
  9. 【請求項9】苗の移植時に、被覆農薬粒剤を施用するこ
    とを特徴とする被覆農薬粒剤の使用方法。
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