JP3669054B2 - 被覆除草粒剤混合物およびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被覆除草粒剤混合物に関する。更に詳しくは、一定期間は内部の農薬活性成分の溶出を抑えた被覆除草粒剤であって、圃場に施用後1〜14日間に薬効が発現し始める短期溶出開始型被覆除草剤粒子および、圃場に施用後15〜40日間に薬効が発現し始める長期溶出開始型被覆除草剤粒子からなる混合物である被覆除草粒剤混合物とその使用方法ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、稲作の防除体系における除草は、初期剤(移植前後〜移植後3日に使用する除草剤)、中期剤(移植後15〜25日に使用する除草剤)および後期剤(幼穂形成期前までに使用する除草剤)からなる体系処理が一般的であったが、初中期剤(一発除草剤)が開発されて2回の体系散布または施用(以下「施用」とする)を1回で済ますことができるようになり省力化された。また環境を考慮した場合においても1回の施用で除草ができれば、環境負荷低減となり、環境に優しい施用法である。
除草剤施用に用いる機器としては手回し散粒器、電動散粒器、背負動力散粒機による多口ホース噴頭、短管、拡散噴頭等が用いられている。施用時間は短時間であり、均一な施用ができるようになったが、散粒機の重量はかなりあるため足場の悪い水田畦畔からの歩行施用や水田内の歩行施用は大変な重労働であり、農業従事者が高齢化しているため、農薬施用作業の省力化が求められている。
そこで開発されたのが施用量を従来の三分の一に軽量化した「1キロ粒剤」であり、保管する場所が少なくて済む等の効果があり、近年、急速に普及している。
【0003】
一般に、水稲における除草剤の施用作業は、移植作業とは別に行われており、経営面積を拡大しようとする場合、移植時に農作業が集中し、農業従事者には大きな負担となっている。
この問題点に関して、除草作業の時間短縮、省資源、低コスト等の目的で除草剤の移植時同時施用ができる装置が開発されている。これら施用機は、移植と除草剤同時施用による省力化に加えて高精度かつ均一な施用も実現しており水稲栽培のさらなる省力化が可能である。
稲の苗移植栽培は、育苗容器からの取り出し時に、根毛が切断されたりするなどして、多かれ少なかれ苗を痛めてしまう。さらに、育苗時と移植時では、その栽培環境が大きく変化し、移植直後の苗は、根が活着するまで不安定な状態であるといえる。この時期に、農薬活性成分が作用するとその通常の効力以上に効いてしまい、苗に悪影響を及ぼし、最悪の場合枯れてしまう。稲苗の移植栽培において前述の通り、移植と同時に除草剤を施用できればかなりの省力化ができる。また、従来の農薬粒剤では徐放化は達成されたが、初期の溶出または放出(以後、「溶出」とする)を抑えることができないため、移植後1週間程度経過後に一発除草剤を施用するのが現状であった。
【0004】
また、さらなる省力化、低コスト化栽培として直播栽培が推奨されている。栽培条件にもよるが、直播栽培では、除草剤の施用時期は植物体の状態に左右され、従来の農薬粒剤では薬害が発生したり、薬害がないよう施用時期を遅らすとその間、雑草が伸びることにより薬効が低下してしまうなど、直播栽培に適合した除草に卓効を示す農薬粒剤はほとんどないのが現状であった。
現在使用されている除草粒剤はほとんどが練り込み造粒法によるものであり、この方法では残効性が長くても30日である。これは、製剤法を工夫することによりより長い残効性を付与することができるが、そうすれば施用初期に効かない農薬粒剤となってしまう。
ノビエに代表される水田の雑草は、代かき直後から発芽生育を始めるため、2〜3葉期まで有効である農薬活性成分が用いられているが、この生育ステージが上がると農薬活性を示さないか、かなり活性が低いものとなってしまう。このため、殺草に適用するには一時的にある程度の除草剤濃度が必要であり、そのように除草剤を適用することによって2〜3葉期のノビエを攻撃する。その後は水田の中にあるノビエの種子の発芽を抑えることにより農薬活性成分の効力が十分に発揮されるが、この抑草作用は殺草よりも低い農薬活性成分濃度でよい。
【0005】
本発明者らは、これら問題点に関して種々提案している。しかし、単一の農薬粒剤では溶出後半の溶出量が不足しがちで薬効が持続しにくい傾向にある。つまり、30日以降薬効切れが起こるとノビエは発生するが、これは稲の生育収量に影響するというよりも、そのときのノビエから生産されるノビエの種子により、次年度の発生量に大きく関係し、農薬粒剤の施用量を増やさなければならない原因になってしまう。また、30日前後からそれ以降の防除は農薬粒剤施用時に稲が生長しているため葉について薬害がでたり、2度目の施用ということで労力を要する等のデメリットが多く、より長く効く農薬粒剤が望まれている。
したがって、稲苗移植と同時に除草粒剤を施用するには、圃場に施用後一定期間溶出せず、また薬効を現在よりものばすことが必要であり、それにより次年度以降に減農薬でき、さらに省力化することができる。
また、異なる種類の農薬活性成分を用いると現在の後期剤を含めた完全一発剤を達成する事もできるため、多くの農業従事者からこのような農薬粒剤が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上述のように薬効が長期間持続し、溶出が制御された被覆除草粒剤を提供すべく鋭意研究を行った。その結果圃場に施用後、移植苗が薬害を起こさず雑草に除草剤が有効に作用する期間は内部の農薬活性成分の溶出を抑えた被覆除草粒剤を用いて、それとは異なる溶出抑制期間を有する被覆除草粒剤と種々配合すると所望の被覆除草粒剤混合物が得られることを知見し、さらに該混合物の施用適期に用いると省力化に有効であるといったこれらの知見に基づいて本発明を完成した。
以上の記述からも明らかのように本発明の目的は、農薬活性成分が一定期間溶出せず、溶出開始すると速やかに当該農薬活性成分を溶出し、かつ薬効が長期間保持することができる被覆除草粒剤混合物とそれを用いた効果的な除草方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の(1)から(6)の構成を有する。
【0008】
(1)圃場に施用後一定期間は被膜内部物質中の少なくとも一種以上の除草作用を有する農薬活性成分の溶出を抑える如くしてなる被覆除草粒剤であって、該粒剤が複数の異なる溶出抑制期間を有する被覆除草剤粒子群が2種以上配合されてなる被覆除草粒剤混合物。
【0009】
(2)被膜内部物質が農薬活性成分と少なくとも一種以上の水膨潤性物質を主成分とする農薬粒剤であり、その表面に熱可塑性樹脂を主成分とする被膜材料を被覆した被覆除草粒剤を用いてなる前記(1)に記載の被覆除草粒剤混合物。
【0010】
(3)被膜の透湿性により被覆除草粒剤内部物質に水分を作用させ、該被膜に対して内部応力を与え、一定期間後に亀裂を発生させ、該被膜を破壊させることにより、施用の一定期間後に農薬活性成分を外部に放出させる溶出機構を有する被覆除草粒剤を用いてなる前記(1)または(2)に記載の被覆除草粒剤混合物。
【0011】
(4)複数の溶出抑制期間の異なる被覆除草剤粒子群が、圃場に施用後1〜14日間に薬効が発現し始める短期溶出開始型被覆除草剤粒子および15〜40日間に薬効が発現し始める長期溶出開始型被覆除草剤粒子からなる混合物であることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の被覆除草粒剤混合物。
【0012】
(5)圃場に施用後1〜14日間に薬効が発現し始める短期溶出開始型被覆除草剤粒子および15〜40日間に薬効が発現し始める長期溶出開始型被覆除草剤粒子の混合物である被覆除草粒剤を圃場において稲苗移植と同時に施用することを特徴とする被覆除草粒剤混合物の使用方法。
【0013】
(6)少なくとも1種以上の除草作用を有する農薬活性成分からなる農薬粒剤の表面に熱可塑性樹脂を主成分とする被膜材料で被膜を形成させ、該材料で完全に被覆することにより得られる複数の異なる溶出抑制期間を有する被覆農薬粒子群よりなる被覆除草粒剤であって、該粒子群を少なくとも2種以上配合して製造することを特徴とする被覆除草粒剤混合物の製造方法。
【0014】
本発明の構成と効果について以下に説明する。
従来型の溶出を抑えていない、いわゆる一発型除草剤(以下「一発除草剤」とする)に含有する農薬活性成分を施用するにはその施用量をかなり少なくしなければならないがこれでは薬効が持続しないため、移植直後から薬効が発現し始めるまで一定期間溶出を抑制する農薬粒剤が、移植直後に施用することができる農薬粒剤である。
本発明に用いることができるものは施用後一定期間溶出を抑制した除草粒剤であり、例えば、農薬粒剤を熱可塑性樹脂を主成分とする被膜材料で完全に被覆した被覆農薬粒剤等が挙げられる。具体的には被膜の溶解により溶出を開始する被覆農薬粒剤に関して特開平6−9304号公報や特開平6−72805号公報が開示されており、被膜の亀裂により溶出を開始する被覆農薬粒剤に関して、特開平6−9303号公報、特開平6−80514号公報が開示されている。
このほかで本発明者らは圃場に施用後、該農薬粒剤の被膜の透湿性により圃場に供給された水分を内部の農薬担体に作用させ、被膜に亀裂を生じさせ、破壊することにより、一定期間経過後に内部の農薬活性成分を外部に溶出させる被覆農薬粒剤(特願平7−212910号)等を開発した。この被覆農薬粒剤は、圃場に施用後から被膜に亀裂が入るまでの期間の制御が数日間単位で可能であるため、本発明で用いる被覆除草粒剤の構成上に好ましい性能である。
【0015】
本発明で好ましく用いられる被覆除草粒剤の被膜の主成分である熱可塑性樹脂は、例えば、オレフィン重合体、オレフィンの共重合体、塩化ビニリデンを含む共重合体、ジエン系重合体、ワックス類、石油樹脂、天然樹脂、油脂およびその変性物から選ばれた1種または2種以上の物質を挙げることができる。これらのなかでオレフィン重合体またはオレフィンの共重合体がより好ましい。
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・一酸化炭素共重合体、ポリブテン、ブテン・エチレン共重合体、ブテン・プロピレン共重合体、ポリスチレン、オレフィンを含む共重合体には、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸エステル共重合体等を示すことができる。
【0016】
水膨潤性物質とは、水を吸収して体積が増加する性質を有するものであり、農薬粒剤を膨張させ被膜を破壊させるためのものである。具体的には、ベントナイト、澱粉、高吸水性高分子等を挙げることができる。これらのなかでベントナイトが性能、価格の面で最も好ましい。
一般的に一発除草剤は稲苗移植後5〜10日前後に施用しており、精密な時限溶出制御が可能であれば施用後の溶出抑制期間の範囲は大きくなる。この薬効が発現し始める時期または溶出抑制期間(以下「溶出抑制期間」とする)を短期間に制御すれば稲苗移植と同時に施用することができる。これを短期溶出開始型被覆農薬粒剤(粒剤A)とする。更に、溶出抑制期間を粒剤Aよりも長期間制御した農薬粒剤である長期溶出開始型被覆農薬粒剤(粒剤B)を粒剤Aに配合することにより溶出後半の薬効切れを防止することができる。
この粒剤Aが必要とする溶出抑制期間の範囲は1〜14日であり、好ましくは2〜7日である。また、粒剤Bは粒剤Aの薬効が低下する時期までの溶出抑制期間があればよいが長すぎると効果的に防除できないため、その範囲は15〜40日である。これら農薬粒剤はそれぞれの溶出抑制期間の範囲内であれば異なる該期間の異なる農薬活性成分の該農薬粒剤を種々配合することができる。また、薬効が発現し始める時期とは該農薬粒剤から溶出開始し農薬活性が発現する所定の濃度、量に達した時期のことであり、およそ溶出開始から数時間〜2日の範囲である。
【0017】
粒剤Aと粒剤Bの配合割合はそれぞれの農薬活性成分の種類、含有量、薬効持続期間等で異なるが、同じ農薬活性成分を用い同じ該含有量の農薬粒剤を用いた場合、重量比で粒剤A:粒剤B=50:50〜99:1である。この値は農薬活性成分の活性により異なり、水に溶解しにくい成分であるほど粒剤Aの含有量の方が多くなる。
本発明の被覆除草粒剤混合物は、従来の一発除草剤に用いられている農薬活性成分からなる粒剤Aと、後期剤に用いられている農薬活性成分からなる粒剤Bを組み合わせることにより完全一発剤を容易に製造することができる。この場合の配合割合は農薬活性成分が異なるためこれら成分の性質に合わせて最適な割合で配合されるべきである。
【0018】
本発明に係わる農薬活性成分は除草効果があるものであれば用いることができる。粒剤Aと粒剤Bに用いることができる農薬活性成分はそれぞれ1種又は2種以上の組成で使用することができる。これらの含有量は配合割合等により変化するが同じでも良い。これらの具体例を下記に挙げるがこれらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
例えば2,4−ジクロロフェノキシ酢酸のナトリウム塩またはジメチルアミン塩、エチルエステル。2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸のナトリウム塩またはエチル、ブチルエステル。2−メチル−4−クロロフェノキシ酪酸のナトリウム塩またはエチルエステル。α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド、S−1−メチル−1−フェニルエチル=ピペリジン−1−カルボチオアート、S−(4−クロロベンジル)−N,N−ジエチルチオカーバメート、5−ターシャリーブチル−3−(2,4−ジクロル−5−イソプロポキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、2−〔4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ〕アセトフェノン、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチル−5−ピラゾリル−p−トルエンスルホネート、3−イソプロピル−2,1,3−ベンゾ−チアジアジノン−(4)−2,2−ジオキシドまたはそのナトリウム塩、2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−s−トリアジン、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−s−トリアジン、2−メチルチオ−4,6−ビス(イソプロピルアミノ)−s−トリアジン、1−(α,α−ジメチルベンジル)−3−(パラトリル)尿素、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−ο−トルアート、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド、1−(2−クロロイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル尿素、S−ベンジル=1,2−ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2´,6´−ジメチルアセトアニリド等を挙げることができる。
【0019】
本発明に係る被覆除草粒剤製造に使用される農薬粒剤は、粒径が0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmとなるように造粒されることが好ましい。これら造粒方法は、公知方法に準じて行うことができるが、押し出し造粒法が最も簡易である。
本発明に係る被覆農薬粒剤の製造方法は、流動状態の農薬粒剤に対し、熱可塑性樹脂組成物からなる被膜材料が溶媒により溶解された混合溶解液を噴霧する一方、高速熱風流により、該農薬粒剤上の溶媒を除去乾燥し、農薬粒剤の表面に被膜材料を被覆する製造方法である。
該製造方法に使用し得る被覆装置の一例を、添付図面を参照しながら説明する。本発明の製造方法は、図1に示される噴流層を用いて行うのが最も好ましい。この噴流層は、転動または流動状態にある農薬粒剤に対し、被膜材料の混合溶解液12をポンプ6によって、スプレーノズル4により噴霧し、農薬粒剤5の表面に吹き付けて、該表面を被覆すると同時並行的に、熱交換器8で加熱された高温気体をブロアー10によって噴流塔1に下部から流入させ、該高速熱風流によって、該粒体表面に付着している混合溶解液中の溶媒を瞬時に蒸発乾燥させるものである。
さらに、被膜材料に水との親和性が乏しく撥水性が強い熱可塑性樹脂組成物を用いた場合、例えば水田等に施用する際または湛水時に浮上による薬効発現への悪影響回避のため、本発明の農薬粒剤に親水処理することができる。親水処理方法は公知方法に準じて実施すればよいが、例えば、撥水性が強い熱可塑性樹脂組成物からなる最表層に界面活性剤及び/またはSiO2 ダスト等の微粉体を付着させればよい。
【0020】
本発明の被覆除草粒剤混合物の使用方法は、稲苗の移植と同時に、被覆除草粒剤を施用する方法である。
本発明では、農薬活性成分が必要となる時期に合わせて、農薬活性成分を溶出させることができ、農作物に対し薬害を発生させず、環境を悪化させることのない低濃度で溶出を持続させることができる。
これにより、稲苗の移植と同時に、被覆除草粒剤を施用しても、根が活着してから農薬活性成分の溶出が開始し、溶出された該活性成分は、除草のために全てが消費されるので、移植苗に悪影響を及ぼさず、農作物を安全に生産することができる。
本発明では、希望する時期に被覆除草粒剤を施用して何ら差し支えないが、稲苗の移植と同時に施用すると農作業時間の大幅な短縮ができる。
【0021】
【実施例】
以下、被覆除草粒剤混合物の製造例および実施例を用い、詳細を説明する。なお、本実施例は本発明をなんら限定するものではない。尚、以下の実施例における「%」は特にことわりがない限り「重量%」である。
(農薬粒剤の製造)
水膨潤性物質としてベントナイト60重量%、クレイ35重量%、農薬活性成分として2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(87.3%)15重量%をとり、ニーダーで均一に混合し、加水混練した。この混合物をスクリュー押し出し式造粒機(スクリーン径0.8mmφ)で押し出し造粒した後、球形整粒機で整粒した。次に該造粒物を熱風循環乾燥機を用いて100℃で乾燥して篩分けを行い、農薬活性成分13%を含有した粒径0.8〜1.4mmφの農薬粒剤を得た。
(被覆除草粒剤の製造例)
塔径250mm、高さ2000mm、空気噴出口径50mm、円錘角50度の形状を有する噴流塔1内へ、高温熱風を下部から上部に向けて流入する。高温熱風は、ブロアー10から送風され、オリフィス流量計9を通り、熱交換器8によって高温に加熱されて、噴流塔1に流入され、噴流塔1の上部に設置されている排ガス用出口3から排出される。この高温熱風が循環している噴流塔1の内部に、製造された農薬粒剤を、噴流塔1の側面に設置されている農薬粒剤投入口2から10kg投入し、図1に示されるように農薬粒剤5を流動させる。
この際、流量および熱風温度は、各サンプル毎に適宜調節する必要があり、流量はオリフィス流量計で測定しながら調節し、熱風温度は、T1ノ熱風温度、T 2の農薬粒剤温度、T3 の排気温度を測定しながら調節する。本実施各例においては、流量(9)4m3 /min、熱風温度(T1 )100℃±2℃で実施した。
他方、溶解槽11に、表1に示す被膜材料と溶媒としてテトラクロロエチレンを投入し、混合撹拌することによって、2.5%の均一な被膜材料溶解液を得る。該溶解液12は、ポンプ6によって噴流塔1の下部に設置されている開口0.6mmフルコーン型一流体ノズルであるスプレーノズル4に、流速0.3kg/minで輸送され、流動中の農薬粒剤5に、噴霧され、吹き付けられる。
該吹き付け工程は、流動中の農薬粒剤5のT2 が所定の温度に達した時点から開始し、所定時間スプレーした後、所定時間の乾燥を実施し、乾燥が終了した時点で、ブロアー10を止め、被覆された農薬粒剤を、噴流塔1の最下部にある抜き出し口7より排出し、表1に記載する被覆率を有する被覆除草粒剤を得た。
【0022】
【表1】
【0023】
PE−1:エチレン・一酸化炭素共重合体 MI=0.75 CO=0.95重量%
PE−2:低密度ポリエチレン MI=23 d=0.916g/cm3
タルク:平均粒径 5μm
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース 150〜400cp 粒径 75μm 未満
熱硬化:300ml四口フラスコを用い、ジエチレングリコールジメチルエーテル100mlを入れた後、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン18.9gを溶解し、攪拌機で攪拌しながら内温を10℃まで冷却した後、無水マレイン酸4.6gを添加、反応させることにより得られた熱硬化性樹脂 粒径 75μm 未満
ノニオン:ヘキサオキシエチレンノニルフェニルエーテル HLB=13
【0024】
農薬1〜5は、農薬1、2、5が短期溶出開始型被覆除草粒剤、農薬3、4が長期溶出開始型被覆除草粒剤である。これらを用いて表2に示す割合で配合し本発明の被覆除草粒剤混合物を得た。
【0025】
【表2】
【0026】
(水田施用試験1)
前記製造例によって得られた各被覆除草粒剤混合物の水田施用試験を行った。1/5000aワグネルポットにノビエの発生量が多かった水田土壌(熊本県水俣市より採取)を2.5kg入れさらに水を入れ、1日静置後、土面から水面までの水深が5cmとなるように水を加え水田条件とした。このとき土壌層はポットの底から10cmであった。予め育苗箱で育苗された稲苗(品種:ヒノヒカリ)を3本植えで移植し、本発明の被覆除草粒剤混合物を各々0.1g施用した。比較例1として、無被覆の農薬粒剤を被覆除草粒剤と農薬活性成分が等しくなるように施用した。移植後は水の減量分を適宜補給しながら栽培した。この栽培を10日間続行し、薬害の有無を観察した。
【0027】
【表3】
【0028】
表3からも明らかの通り、無被覆の比較例1は薬害が発生したのに対し、実施例1〜6は薬害がみられず良好な生育を示した。このことにより、苗移植と除草剤施用を同時期に行うには、溶出を抑える期間が必要であることが確認できた。それには比較例2〜6や実施例1〜6のように被覆農薬粒剤が有効であることがわかった。
【0029】
(水田施用試験2)
水田施用試験1に引き続き、移植10日目に稲を刈取り、その他の条件は変えないで、以後40日目まで静置し、該農薬粒剤の持続効果の有無を観察した。
【0030】
【表4】
【0031】
比較例1及び2〜6は移植30日目では殺草及び抑草効果がみられたが、40日目になるとノビエがみられ、残効性が小さいことがわかった。特に比較例4、5はノビエの発生量が多かった。実施例1〜6はいずれもノビエの発生は無しかほとんど無く残効性が証明された。尚、各実施例は40日目以降も抑草作用を示した。
【0032】
(水田施用試験3)
上記試験1と2の同時期に該稲苗を移植しない以外は同条件での試験を設定し、水分の蒸発を抑えるためポリ塩化ビニリデンラップでポットの開口部を覆った。定期的に水層の中央部より水溶液をサンプリングし、農薬活性成分の分析を行った。試験期間中の平均水温は20℃で、施用後40日まで行った。同時に比較例2〜6を供試した。その代表例として比較例6の水中農薬活性成分濃度の推移を図2、本実施例1〜6を図3に示す。
図2は短期溶出開始型被覆除草粒剤についてであり、溶出を3日間抑え、その後急速に農薬活性成分を水中に放出し溶出していることが確認され、施用後20日の時点では濃度が低下し薬効切れが発生しているものと予測できる。図3に示された実施例1〜6は比較例と同じ施用量であるにも係わらず農薬活性成分の濃度を一定のレベルに維持しており、薬効が長期間持続していることは測定値からも明らかである。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、圃場に施用後一定期間は内部の農薬活性成分の溶出を抑えた被覆除草粒剤混合物を用いて、異なる溶出抑制期間を有する該農薬粒剤を配合することにより、従来困難であった精度の高い時限放出制御と薬効の長期持続、完全一発処理を兼ね備えた高機能除草粒剤である。
具体的には次の通りである。
(1)単一の時限崩壊型被覆農薬粒剤では、溶出を持続させるには含有量を増加させることでしか対処できなかったが、本発明の被覆除草粒剤混合物により、2段階に溶出開始させることで薬効を長期間持続させることができた。
(2)従来の除草剤は数回に分けて施用していたが、本発明の被覆除草粒剤混合物により、初中期から後期までの除草を1回の施用で済ます完全一発処理ができるため、農作業のさらなる省力化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造例に使用した噴流カプセル化装置のフローシート。
【図2】比較例6の短期溶出開始型被覆除草粒剤の水中農薬活性成分濃度の推移。
【図3】実施例1〜6の水中農薬活性成分濃度の推移。
【符号の説明】
1:噴流塔
2:粒剤投入口
3:排ガス出口
4:スプレーノズル
5:粒剤
6:ポンプ
7:抜き出し口
8:熱交換器
9:オリフィス流量計
10:ブロアー
11:溶解槽
12:混合溶解液
T1 :温度計
T2 :温度計
T3 :温度計
SL:加熱媒体
Claims (6)
- 圃場に施用後一定期間は被膜内部物質中の少なくとも一種以上の除草作用を有する農薬活性成分の溶出を抑える如くしてなる被覆除草粒剤であって、該粒剤が複数の異なる溶出抑制期間を有する被覆除草剤粒子群が2種以上配合されてなる被覆除草粒剤混合物。
- 被膜内部物質が農薬活性成分と少なくとも一種以上の水膨潤性物質を主成分とする農薬粒剤であり、その表面に熱可塑性樹脂を主成分とする被膜材料を被覆した被覆除草粒剤を用いてなる請求項1に記載の被覆除草粒剤混合物。
- 被膜の透湿性により被覆除草粒剤内部物質に水分を作用させ、該被膜に対して内部応力を与え、一定期間後に亀裂を発生させ、該被膜を破壊させることにより、施用の一定期間後に農薬活性成分を外部に放出させる溶出機構を有する被覆除草粒剤を用いてなる請求項1または請求項2に記載の被覆除草粒剤混合物。
- 複数の溶出抑制期間の異なる被覆除草剤粒子群が、圃場に施用後1〜14日間に薬効が発現し始める短期溶出開始型被覆除草剤粒子および15〜40日間に薬効が発現し始める長期溶出開始型被覆除草剤粒子からなる混合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被覆除草粒剤混合物。
- 圃場に施用後1〜14日間に薬効が発現し始める短期溶出開始型被覆除草剤粒子および15〜40日間に薬効が発現し始める長期溶出開始型被覆除草剤粒子の混合物である被覆除草粒剤を圃場において稲苗移植と同時に施用することを特徴とする被覆除草粒剤混合物の使用方法。
- 少なくとも1種以上の除草作用を有する農薬活性成分からなる農薬粒剤の表面に熱可塑性樹脂を主成分とする被膜材料で被膜を形成させ、該材料で完全に被覆することにより得られる複数の異なる溶出抑制期間を有する被覆農薬粒子群よりなる被覆除草粒剤であって、該粒子群を少なくとも2種以上配合して製造することを特徴とする被覆除草粒剤混合物の製造方法。
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