JP4573983B2 - 被覆粒状農薬組成物およびその製造方法 - Google Patents

被覆粒状農薬組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、農薬活性成分の溶出速度を制御し、薬害の発生するおそれが少なく、しかも薬効が長期間持続する被覆粒状農薬組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
農業では、特に農薬を使用する際には、省力化・環境負荷の低減という面から、農薬の使用量および使用回数の減少と施用時期の早期化が望まれている。
このような要望を受けて、水稲作では、本田で使用していた農薬を播種・育苗期に施用して、移植後本田においてその効果を発揮させる育苗箱処理が行われている。また野菜等の栽培においては、育苗箱処理と類似したセル苗処理が行われている。しかしながら、これらの処理に通常の粒状農薬を使用すると、農薬活性成分が短期間で水中または土壌中に溶出あるいは放出されてしまうため、薬害が発生しやすく、また効果の持続期間も短くなるなどの欠点を有する。
【0003】
これを解決するために、農薬活性成分の溶出制御、溶出期間の長期化を目的として粒状農薬を非水溶性または難水溶性の被膜材料で被覆した被覆粒状農薬が開発されている。
被膜材料としては、合成樹脂が多く用いられており、そのなかでもアクリル樹脂は、耐水・耐透水性に優れ、低温造膜性が良く、経時変化が少ないなどの特徴を有しているため、被膜材料に適している。
【0004】
従来のアクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、およびこれらの2種以上の共重合体、またはこれら単量体とエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリルなどから選ばれる1種以上の単量体との共重合体が知られている。
【0005】
このようなアクリル樹脂にて粒状農薬を被覆する方法としては、アクリル樹脂を有機溶剤に溶かした液を粒状農薬に噴霧してその表面に成膜する方法(特開平6−9303号公報、特開平6−9304号公報)、およびアクリル樹脂の水性エマルションを粒状農薬に噴霧してその表面に成膜する方法(特開昭55−104201号公報、特開昭60−202801号公報、特開平5−163091号公報)がある。しかしながら、アクリル樹脂を有機溶剤に溶かした液を粒状農薬に噴霧してその表面に成膜する方法では、被覆乾燥(溶剤除去)工程での火災の危険性や、溶剤に起因する毒性・環境汚染の問題を引き起こすおそれがある。
【0006】
また、アクリル樹脂の水性エマルションを粒状農薬に噴霧して成膜する方法では、成膜工程において樹脂粒子同士が水の蒸発と共に接近して最密充填され均一に融着して粒状農薬表面に膜を形成することを必要とするが、融着が不均一であったり、不十分であるなどの理由により、形成された膜の耐水性が劣る場合がある。
【0007】
さらに、上記いずれの方法も、膜自体の水・耐透湿性が不足しているため、高い溶出制御効果を得るためには、樹脂量を増やして膜厚を厚くする必要があり、製造上、あるいはコスト面で問題がある。
また、特開平7−149606号公報には、農薬活性成分、または農薬活性成分と不活性な微粉体との混合物にて非吸油性粒状担体表面を被覆するに当たり、その接着剤として、水中に乳濁した状態にある水不溶性熱可塑性樹脂を用いることによって得られるコーティング型農園芸用粒剤が記載されている。また、該公報には、上記水不溶性熱可塑性樹脂としてアクリル酸エステルとシリコーンとの共重合体が示されているが、ここで使用される樹脂は、農薬活性成分を上記担体に付着させるための接着剤として機能しており、農薬活性成分はこの担体の外表面を被覆する樹脂層に接着されているため、農薬活性成分の溶出制御は困難であった。
【0008】
このように、従来のアクリル樹脂で被覆された粒状農薬は、作業時の安全性、農薬活性成分の溶出性、薬効、薬害等の観点からみて、必ずしも満足できるものとは言えず、さらなる技術改良が望まれていた。
本発明者らは、上記のような従来技術に伴う問題点を解決すべく鋭意研究したところ、農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物と、該粒状物を被覆するアクリルシリコーン樹脂とからなる被覆粒状農薬組成物が、従来よりも少ない樹脂被覆量で農薬有効成分の溶出を効率的に制御することができ、またこの組成物を施用した場合、残効性が長くなり、かつ薬害の軽減効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するもので、農薬活性成分の溶出速度を制御することができ、薬効が長期間持続し、しかも薬害の軽減化が可能な被覆粒状農薬組成物およびこの被覆粒状農薬組成物を好適に製造できる方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明の被覆粒状農薬組成物は、農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物と、該粒状物を被覆するアクリルシリコーン樹脂とからなることを特徴としている。
上記アクリルシリコーン樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体と重合性不飽和シリコーン単量体との共重合体であることが好ましい。
【0011】
また、上記被覆粒状農薬組成物中のアクリルシリコーン樹脂の含有量が0.1〜60重量%であることが好ましい。
さらに、上記アクリルシリコーン樹脂が、水性エマルションの形態で粒状物に噴霧被覆されてなることが好ましい。
本発明の被覆粒状農薬組成物の製造方法は、農薬活性成分、結合剤および固体担体を造粒し、得られた粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆することを特徴とする。
【0012】
この製造方法におけるアクリルシリコーン樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体と、重合性不飽和シリコーン単量体との共重合体であることが好ましい。
また、被覆粒状農薬組成物中のアクリルシリコーン樹脂の含有量が0.1〜60重量%となるようにアクリルシリコーン樹脂を粒状物に被覆することが好ましい。
【0013】
さらに、上記製造方法におけるアクリルシリコーン樹脂は、水性エマルションの形態で粒状物に噴霧被覆することが好ましい。
【0014】
【発明の具体的説明】
次に本発明の被覆粒状農薬組成物およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る被覆粒状農薬組成物は、農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物と、該粒状物の表面を被覆するアクリルシリコーン樹脂とからなることを特徴とする。
【0015】
農薬活性成分
本発明で用いる農薬活性成分は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調製剤など一般に農薬として使用されるものであればよく、また、これらの一種または二種以上を併用してもかまわない。
例えば、殺虫剤として、有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、クロロニコチニル系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系、およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤および殺線虫剤などが挙げられる。
【0016】
殺菌剤としては、例えば、無機銅剤、有機銅剤、無機硫黄剤、有機硫黄剤や、有機リン系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系、トリアゾール系、イミダゾール系、メトキシアクリレート系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤および天然物殺菌剤などが挙げられる。
【0017】
除草剤としては、例えば、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、アセトアニリド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、イミダゾリノン系、脂肪酸系、有機リン系、アミノ酸系、ジフェニルエーテル系、ニトリル系などの除草剤が挙げられる。
【0018】
植物生長調製剤としては、例えば、エチレン、インドール酢酸、ジベレリンなどが挙げられる。
これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック1998年版」(財団法人 日本植物防疫協会 平成10年12月15日発行)、「SHIBUYA INDEX 8th Edition」(平成10年12月15日発行)、「The Pesticide Manual Eleventh Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されている。
【0019】
本発明において使用される農薬活性成分としては、上記に限定されることはなく、農薬活性成分の溶出を制御する必要のあるものなら上記以外の農薬活性成分を適用することができる。
これらの農薬活性成分の添加量は、被覆粒状農薬組成物全量に対して、通常0.01〜90重量%、好ましくは、0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。
【0020】
結合剤
本発明で使用できる結合剤は、天然系、半合成系および合成系の高分子類などである。
例えば、天然系のものとしては、デンプン、アラビヤガム、トラガントガム、グアーガム、マンナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デキストラン、カードラン、プルラン、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0021】
半合成系としては、デキストリン、可溶性デンプン、酸化デンプン、α化デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどが挙げられる。
【0022】
合成系のものとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、エチレン-アクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
本発明における結合剤は、上記に限定されるものではなく、上記以外のものであってもよく、また、1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
結合剤の添加量は、被覆粒状農薬組成物組成物全量に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%である。
固体担体
本発明で使用できる固体担体としては、非水溶性固体担体と水溶性固体担体を挙げることができる。
【0024】
非水溶性固体担体としては、クレー、ケイ砂およびその粉砕物、ケイソウ土、ベントナイト、タルク、ジークライト、セリサイト、酸性白土、活性白土、珪石、軽石、ゼオライト、バーミキュライト、ホワイトカーボン、シラスバルーンなどを粉砕したガラス質粉末などの無機担体、セルロース、パルプ、モミガラ、木粉、デンプン、大豆粉などの有機担体が挙げられる。
【0025】
水溶性担体としては、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、尿素、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖などが挙げられる。
固体担体は、これらに限定されるものではなく、また、これらの1種を用いても2種以上を併用してもよい。
この固体担体の添加量は、被覆粒状農薬組成物全量に対して、通常、0.5〜99.79重量%、好ましくは10〜99.1重量%、さらに好ましくは20〜98重量%である。
【0026】
粒状物中の他の含有物
本発明における農薬活性成分、結合剤、固体担体を含有する粒状物には、農薬活性成分、結合剤、固体担体以外に必要に応じて、界面活性剤、溶剤、補助剤等が含まれていてもよい。これら他の含有物の含有量(合計)としては、被覆粒状農薬組成物組成物全量に対して、通常、0〜40重量%、好ましくは、0〜30重量%である。
【0027】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤などが用いられる。
例えば、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0028】
陰イオン界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩,ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ラウリル硫酸塩などがある。
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが挙げられる。
【0029】
両性界面活性剤としては、ジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタインなどが挙げられる。ただし、本発明で使用できる界面活性剤としてはこれらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用しても何ら問題はない。
本発明に使用できる溶剤としては、例えば、ソルベッソ150(エクソン化学株式会社製の商品名)、ハイゾールE、ハイゾールF(日本石油化学株式会社製の商品名)、カクタスソルベントP100、カクタスソルベントP150、カクタスソルベントP187、カクタスソルベントP200(日本鉱業株式会社製の商品名)、アルケン56N、アルケン60NH、アルケンL(日本石油化学株式会社製の商品名)などのアルキルベンゼン系溶剤、
カクタスソルベント220、カクタスソルベントP240(日本鉱業株式会社製の商品名)、ソルベッソ200(エクソン化学株式会社製の商品名)、精製メチルナフタレン(住金化工株式会社製)、ジイソプロピルナフタレン(商品名「KMC−113」呉羽化学工業株式会社製)などのアルキルナフタレン系溶剤、
イソパラフィン(商品名「アイソゾール300」日本石油化学株式会社製)、流動パラフィン、n-パラフィンなどのパラフィン系溶剤、
ナフテゾール(日本石油化学株式会社製)、Exsso1(エクソン化学株式会社製の商品名)などのナフテン系溶剤、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、
3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-1,3-ブタンジオールなどのアルコール系溶剤、
N-メチルピロリドン、n-オクチルピロリドン、n-ドデシルピロリドンなどのアルキルピロリドン系溶剤、
デュポンDBE(デュポン株式会社製の商品名)、フタル酸ジトリデジル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジアルキル(C10〜C12)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8〜C10)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリアルキル(C9)、トリメリット酸トリイソデジル、アジピン酸ジオレイルなどの多塩基酸エステル系溶剤、
オレイン酸イソブチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、パーム脂肪酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソトリデジル、ステアリン酸-2-エチルヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸デシルなどの脂肪酸エステル、
ジアリルエタンを基本骨格とする芳香族炭化水素系溶剤、ハイゾールSAS−296(日本石油化学株式会社製の商品名)、トリアリルジエタンを基本骨格とする芳香族炭化水素系溶剤、ハイゾールSAS−LH(日本石油化学株式会社製の商品名)などの溶剤、
さらに、米ヌカ油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステルなどの植物油脂肪酸エステル、ナタネ油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、コーン油などの植物油を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらの1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明で使用できる補助剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤などの安定化剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p-クロロ-m-キシレノール、p-オキシ安息香酸ブチルなどの防腐防バイ剤、クエン酸、リン酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどのpH調整剤などを挙げることができる。
本発明において用いる農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物は、例えば、農薬の製剤化において通常用いられる造粒法によって得ることができる。
【0031】
造粒法としては、押出し造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、撹拌混合造粒法、被覆造粒法および打錠法などを挙げることができる。円柱状の造粒物を得る場合は、押出し造粒法が好ましく、また、球状の造粒物を得る場合は、転動造粒法および撹拌混合造粒法が好ましい。
押出し造粒法においては、まず、農薬活性成分と固体担体を、結合剤とともにまたは結合剤なしで、また、必要に応じて界面活性剤、溶剤、補助剤を添加して、ジュースミキサー、ハンマーミル、レディゲミキサーまたはリボンミキサー等を用いて均一に混合する。この混合物に水および/または結合剤の水溶液または水分散液を添加して双腕ニーダーまたはリボンミキサー等を用いて混練する。
【0032】
次に、この混練物をバスケット式造粒機、スクリュー式造粒機等の押出し造粒機を用いて造粒する。造粒時の押出し穴径(スクリーン径)は通常0.3〜5mm、好ましくは0.5〜2mmの範囲である。得られた造粒物をマルメライザー等で整粒した後、流動層乾燥機やベッド式乾燥機等を用いて乾燥させ、次いで、篩別することにより本発明で用いられる上記粒状物が得られる。
【0033】
撹拌混合造粒法においては、まず、農薬活性成分と固体担体を、結合剤とともにまたは結合剤なしで、また、必要に応じて界面活性剤、溶剤、補助剤を添加して、ジュースミキサー、ハンマーミル、レディゲミキサーまたはリボンミキサー等を用いて均一に混合する。この混合物を撹拌混合造粒機の造粒ベッセル内で撹拌羽根を回転させて撹拌転動状態にする。転動状態の混合物に水および/または結合剤の水溶液または水分散液を滴下または噴霧して、適度な大きさまで粒子を成長させて造粒する。この造粒物を取り出し、流動層乾燥機やベッド式乾燥機等を用いて乾燥させた後、篩別することにより本発明で用いられる粒状物が得られる。
【0034】
転動造粒法や転動流動層造粒法により得られる粒状物は球状であり、本発明で用いられる粒状物としては直径または最大径が、通常0.1〜20mm、好ましくは0.5〜10mmの範囲にあるものが好ましい。
打錠法においては、押出し造粒法により得られた粒状物の所定量をそのまま打錠機を用いて加圧圧縮して整形造粒してもよく、また、農薬活性成分、固体担体および結合剤を、必要に応じて界面活性剤、溶剤、補助剤を添加して混合し、混合された粉体をそのまま打錠機で加圧圧縮することにより整形造粒して粒状物としてもよい。この場合の粒状物の形態は、打錠機の臼と杵の形によって決まるが、それらは、円形板状、長円形板状、角形板状、楕円球状など種々の形状、大きさのものを得ることができ、いずれも本発明において使用できる。これら打錠法により得られる粒状物のうち、本発明で用いられる粒状物としては、直径または最大径が、通常0.1〜30mm、好ましくは0.5〜20mmの範囲にあるものである。
【0035】
アクリルシリコーン樹脂
本発明の上記粒状物を被覆するアクリルシリコーン樹脂は、重合性アクリル系単量体と、重合性シリコーン単量体、および必要に応じてそれ以外の重合性単量体とを共重合させることにより得られる樹脂である。
重合性アクリル系単量体としては、アクリル酸およびアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0036】
重合性不飽和シリコーン単量体としては、下記式(1)〜(13)で表される単量体などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、分子中に1個以上のケイ素原子を含有して重合性不飽和結合を有する単量体であれば使用することができる。
【0037】
【化1】
Figure 0004573983
【0038】
【化2】
Figure 0004573983
【0039】
(式中、R1は次の式(14)〜(16)のいずれかの基を表し、kは1〜15の整数である。
【0040】
【化3】
Figure 0004573983
【0041】
2は水素またはメチル基、R3は炭素数1〜8の一価有機基、R4、R5、R6は炭素数1〜8の一価有機基または式-OSiR789(ただし、式中のR7、R8、R9は炭素数1〜8の一価有機基)で表されるシロキシ基、nは1〜12の整数、aは0または1である。)
上記一価有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などが挙げられる。その中でも、原料の入手、合成の容易さなどからメチル基である場合が最も好ましい。
【0042】
重合性アクリル系単量体、重合性シリコーン単量体以外に必要に応じて使用することができる単量体としては、スチレン、2-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
これら単量体の共重合により得られるアクリルシリコーン樹脂のうち、アクリル主鎖とアルコキシシリル基側鎖とを有するものが好ましく、側鎖のアルコキシシリル基が室温で空気中の水分と反応してシロキサン結合を生成することにより架橋し、三次元構造が形成され、強固で、耐水性の高い被膜が得られる。
【0043】
本発明で使用されるアクリルシリコーン樹脂は共重合反応を用いる公知の方法によって得ることができる。特公昭64−8033号公報、特開平3−4781号公報には、溶液重合による方法が開示され、特開平7−258309号公報には乳化重合法による方法が開示されている。また、特開平11−293131号公報には溶液重合し、得られた樹脂溶液に水を添加することにより転相させて水性エマルション化し、重合溶媒を除去することにより水性エマルションを得る方法が開示されている。
【0044】
本発明ではいずれの方法により得られたアクリルシリコーン樹脂でも使用することができるが、好ましくは乳化重合法により得られたアクリルシリコーン樹脂の水性エマルションや、溶液重合して得られた樹脂溶液に水を添加することにより転相させて水性エマルション化し、重合溶媒を除去することにより得られるアクリルシリコーン樹脂の水性エマルションなど、アクリルシリコーン樹脂の水性エマルションである。
【0045】
本発明の好ましいアクリルシリコーン樹脂の具体的な商品名を以下に挙げる。
(1)JSR SX-800A、 JSR SX-800B、 JSR SX-800T、
JSR SX-808(以上、JSR(株)製)
(2)ロイシール 6202、 ロイシール 6260(以上、昭和高分子(株)製)
(3)アクアブリッド AS-1053、 アクアブリッド UM-7760、 アクアブリッド UM-7879、
アクアブリッド UM-7611、 アクアブリッド 4901、 アクアブリッド MSi-04S、
アクアブリッド 903、 アクアブリッド ASi-753、 アクアブリッド ASi- 86、
アクアブリッド ASi- 91(以上、ダイセル化学工業(株)製)
本発明では、農薬活性成分、結合剤および固体担体を造粒し、得られた粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆して、本発明に係る被覆粒状農薬組成物を製造しているが、その製造方法については特に限定はない。例えば、加熱気流下での流動層中あるいは回転パン、回転ドラムでの転動中の粒状物に、溶剤に溶かしたアクリルシリコーン樹脂溶液またはアクリルシリコーン樹脂の水性エマルションを連続的にあるいは断続的に噴霧または滴下し、乾燥することにより、上記粒状物がアクリルシリコーン樹脂で被覆された被覆粒状農薬組成物が得られる。
【0046】
アクリルシリコーン樹脂の使用量は、被覆粒状農薬組成物中の含有量として、通常0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜35重量%の範囲である。アクリルシリコーン樹脂が0.1重量%より少ない場合には、芯材となる粒状物表面を十分に被覆することができずアクリルシリコーン樹脂で被覆されない部分が多くなり、あるいは被覆されない部分は少ないとしても、十分な厚さの樹脂層を芯材となる粒状物の表面に形成することができなくなって、必要とされる溶出制御効果が達成されず、薬害が生じやすくなる。
【0047】
一方、樹脂量が60重量%より多い場合には、形成される樹脂層の厚さが厚くなりすぎて農薬活性成分がほとんど溶出されなくなるため、所望の効果が得られず、農薬活性成分が長期にわたって被覆粒状農薬組成物中に残存し、後作物等に薬害などの影響を与えてしまうことにもなる。
また、このような量のアクリルシリコーン樹脂にて上記粒状物表面を被覆してなる被覆粒状農薬組成物においては、アクリルシリコーン樹脂層の平均厚さAは、芯材となる粒状物の表面形状、凝集状態等にもより、一概に決定されないが、例えば、通常0.3〜900μm厚、好ましくは1〜500μm厚、さらに好ましくは3〜250μm厚である。
【0048】
なお、上記アクリルシリコーン樹脂層の平均厚さAとは、心材粒子が円柱状の場合は、下記式(1)により求めた値であり、心材粒子が球状の場合は、下記式(2)により求めた値である。心材粒子の形状としては、前述のように、目的に応じて用いた造粒法などによって、例えば、円柱状、球状の他に、円形板状、長円形板状、角形板状、楕円球状など、種々のものを得ることができる。
【0049】
このような円柱状、球状以外の心材粒子を使用するときには、その使用する心材粒子の形状に応じて、円柱状または球状のうちの近似する方を選択して、式(1)または(2)を用いることによりアクリルシリコーン樹脂層の平均厚さAを求めることができる。
(1)心材粒子が円柱状の場合
【0050】
【数1】
Figure 0004573983
【0051】
Ga:用いたアクリルシリコーン樹脂量(g)
SG:アクリルシリコーン樹脂の比重
Gb:心材粒子の重量(g)
P :粒数(個/g)
π :円周率
Ra:個数基準の平均粒径(mm)
L :個数基準の粒長(mm)
(2)心材粒子が球状の場合
【0052】
【数2】
Figure 0004573983
【0053】
Rb:個数基準の平均粒子径(mm)
本発明においては、その目的に応じて、上記範囲内で被覆粒状農薬組成物中のアクリルシリコーン樹脂の含有量を適宜変えることにより、被覆面積および樹脂層の厚さをコントロールして、農薬活性成分が所望の溶出速度を示すように調整することができる。
【0054】
本発明の被覆粒状農薬組成物は、通常の粒状農薬物と同様な方法によって施用することができる。例えば、手での直接散粒、人力式散粒機、電動式散粒機、背負動力式散粒機、走行動力散粒機、トラクター搭載型散粒機、田植機搭載型散粒機、育苗箱散粒機、側条施用用施薬機等による方法を挙げることができる。
本発明の被覆粒状農薬組成物は、育苗箱施用や田植同時施用などのような薬害が起きやすい場面、また、長期的な効果の持続性が要求される場面に好適である。
【0055】
本発明の被覆粒状農薬組成物が、育苗箱において施用される場合の施用量は、育苗箱(通常、0.16m2)一枚あたり10〜200g、好ましくは25g〜100gである。水田や畑地に施用される場合の施用量は、10アールあたり、0.1〜10kg、好ましくは0.2kg〜5kgである。
【0056】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において「部」は「重量部」の意味である。
【0057】
【実施例1】
ジフェニルエーテル系除草剤であるビフェノックス7.0部、ポリビニルアルコール3.0部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部およびクレー89.3部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)にて均一に混合した後、この混合物に水7部を添加して双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)で混練した。
【0058】
次に、この加水混練物を孔径1.0mmのバスケット型スクリーンを付けた押出し造粒機で造粒した。得られた造粒物を流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製)で乾燥した後、1.4mm〜850μmのフルイで篩別して粒状物を得た。
この粒状物99.5部を通気式回転ドラム型コーティング装置「ハイコーターHCT-MINI」(フロイント産業株式会社製)に入れ、「アクアブリッド4901」(アクリルシリコーン樹脂エマルション、アクリルシリコーン樹脂47%含有、ダイセル化学工業株式会社製の商品名)1.06部と水4部を相溶させた液を噴霧して、この粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆した。
【0059】
被覆処理された粒状物をコーテイング装置より取り出した後、流動層乾燥機で最終乾燥を行い、上記粒状物99.5部がアクリルシリコーン樹脂0.5部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(1)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;2μm)を得た。
【0060】
【実施例2】
実施例1において、クレーを87.8部の量で、「アクアブリッド4901」を4.25部の量で用いた以外は、実施例1と同様にして、粒状物98部がアクリルシリコーン樹脂2部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(1)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;7μm)を得た。
【0061】
【実施例3】
トリアジン系除草剤であるシメトリン2.5部、デキストリン5.0部、ジアルキルスルホサクシネート0.5部、ベントナイト20部およびタルク70部をハンマーミルにて均一に混合した後、この混合物に水12部を添加して双腕ニーダーで混練した。次に、この加水混練物を孔径1.0mmのバスケット型スクリーンを付けた押出し造粒機で造粒した。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥した後、1.4mm〜850μmのフルイで篩別して粒状物を得た。
【0062】
この粒状物98部を、転動流動層コーティング装置「マルチプレックスMP−01」(株式会社パウレック製)に入れ、「JSR SX-800(B)-06」(アクリルシリコーン樹脂エマルション、アクリルシリコーン樹脂50%含有、JSR株式会社製)4部と水4部とを相溶させた液を該粒状物に噴霧して、この粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆した。
【0063】
被覆処理された粒状物をコーティング装置より取り出した後、流動層乾燥機で乾燥させて、上記粒状物98部がアクリルシリコーン樹脂2部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(1)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;7μm)を得た。
【0064】
【実施例4】
実施例3において、タルクを68部の量で、「JSR SX-800(B)-06」を8部の量で用いた以外は、実施例3と同様にして、粒状物96部がアクリルシリコーン樹脂4部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(1)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;14μm)を得た。
【0065】
【実施例5】
抗生物質系殺菌剤であるカスガマイシン2.0部、ジアルキルスルホサクシネート0.2部、ケイ砂微粉88.1部をハンマーミルで均一に混合した。この混合物90.3部を撹拌混合造粒機「NMC-10L」(株式会社奈良機械製作所製)に入れ、撹拌羽根、チョッパーを回転させて撹拌転動状態にした。ここに10%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液7部を噴霧し、粒子の成長が終了するまで撹拌を続けた。撹拌終了後、造粒物を取り出し、流動層乾燥機で乾燥し、4.75mm〜2.0mmのフルイで篩別して粒状物を得た。
【0066】
この粒状物91部を通気式回転ドラム型コーティング装置「ハイコーターHCT-MINI」に入れ、「アクアブリッドASi-91」(アクリルシリコーン樹脂エマルション、アクリルシリコーン樹脂30%含有、ダイセル化学工業株式会社製の商品名)30部を噴霧してこの粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆した。
【0067】
被覆処理された粒状物をコーティング装置から取り出した後、流動層乾燥機で最終乾燥を行い、上記粒状物91部がアクリルシリコーン樹脂9部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(2)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;55μm)を得た。
【0068】
【実施例6】
実施例5において、ケイ砂微粉を67.1部の量で、10%カルボキシメチルセルロ-スナトリウム水溶液を5部の量で、さらに「アクアブリッドASi-91」を100部の量で用いた以外は、実施例5と同様にして、上記粒状物70部がアクリルシリコーン樹脂30部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(2)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;240μm)を得た。
【0069】
【実施例7】
実施例5において、ケイ砂微粉を52.1部の量で、10%カルボキシメチルセルロ-スナトリウム水溶液を3部の量で、さらに「アクアブリッドASi-91」を150部の量で用いた以外は、実施例5と同様にして、上記粒状物55部がアクリルシリコーン樹脂45部にて被覆されている被覆粒状農薬組成物(式(2)により算出したアクリルシリコーン樹脂層の平均厚;450μm)を得た。
【0070】
【比較例1、2】
実施例1および2において、「アクアブリッド4901」を「モビニール700」(アクリル酸ブチルエステル-メタアクリル酸メチルエステル共重合樹脂エマルション、濃度47%、ヘキスト合成株式会社製)に代えた以外は、それぞれ実施例1および2と同様にして粒状農薬組成物を得た。
【0071】
【比較例3、4】
実施例3および4において、「JSR SX-800(B)-06」に代えて、「ゼビアンA-46293」(アクリル酸エチルエステル-スチレン-アクリル酸共重合樹脂エマルション、濃度50%、ダイセル化学工業株式会社製)を用いた以外は、それぞれ実施例3および4と同様にして粒状農薬組成物を得た。
【0072】
【比較例5、6】
実施例5および6において、「アクアブリッドASi-91」に代えて、「セビアンA-46132」(アクリル酸エチルエステル-メタクリル酸メチルエステル-アクリル酸共重合樹脂エマルション、濃度46%、ダイセル化学工業株式会社製)を19.6部(比較例5)および65部(比較例6)の量で用いた以外は、それぞれ実施例5および6と同様にして粒状農薬組成物を得た。
【0073】
実施例1〜7および比較例1〜6で調製した粒状農薬組成物について、次の方法にて試験を行った。
【0074】
【試験例1】
水中溶出率
1000ml容の大きさの共栓付き三角フラスコに、3度硬水1000mlを入れ、これに上記実施例、比較例で調製した粒状農薬組成物の所定量を投入し三角フラスコを30回倒立後、密栓して25℃の恒温器中に静置した。それから所定期間後に三角フラスコを取り出し、30回倒立した後、直ちに試験液5mlを採取した。試験液中の農薬活性成分濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または、ガスクロマトグラフィー(GC)により定量(分解物が生成した場合には、分解物も定量し、農薬活性成分濃度に換算して合算する)し、溶出率を次式により算出した。
【0075】
【数3】
Figure 0004573983
【0076】
その結果を表1〜3に示す。
【0077】
【表1】
Figure 0004573983
【0078】
表1より明らかなように、アクリルシリコーン樹脂で粒状物を被覆して得られる本発明の被覆粒状農薬組成物では、農薬活性成分であるビフェノックスの水中溶出速度が制御されて長期間にわたって薬効が持続していることが分かる。
また、アクリルシリコーン樹脂の使用量を調節することにより(実施例1、2のアクリルシリコーン樹脂量は、それぞれ0.5部、2部)、好適に農薬活性成分の水中溶出速度を制御できることが分かる。
【0079】
一方、比較例1に示すように、アクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸アルキルエステル共重合樹脂で粒状物を被覆して得られる粒状農薬組成物では、農薬活性成分の水中溶出速度の制御ができず、短期間で薬効が失われることが分かる。
また、実施例1と比較例2とを対比すると、実施例1の場合と同様な効果を得るためには、アクリルシリコーン樹脂を用いない場合には、樹脂量を多く必要とすることが分かる(比較例2の樹脂量2部は、実施例1の場合の4倍)。
【0080】
【表2】
Figure 0004573983
【0081】
表2より明らかなように、アクリルシリコーン樹脂で粒状物を被覆して得られる本発明の被覆粒状農薬組成物では、農薬活性成分であるシメトリンの水中溶出速度が制御されて長期間にわたって薬効が持続していることが分かる。
また、本発明によれば、アクリルシリコーン樹脂の使用量を調節することにより(実施例3、4のアクリルシリコーン樹脂量は、それぞれ2部、4部)、好適に農薬活性成分の水中溶出速度を制御できることが分かる。
【0082】
一方、比較例3、4に示すように、アクリル酸アルキルエステル−スチレン−アクリル酸共重合樹脂で粒状物を被覆して得られる粒状農薬組成物の場合には、樹脂量2部(比較例3)、4部(比較例4)では、農薬活性成分の溶出を制御することが難しく、薬効を長期間にわたって持続させることができないことが分かる。
【0083】
【表3】
Figure 0004573983
【0084】
表3より明らかなように、アクリルシリコーン樹脂で粒状物を被覆して得られる本発明の被覆粒状農薬組成物では、農薬活性成分であるカスガマイシンの水中溶出速度が制御され、しかもアクリルシリコーン樹脂量を9部(実施例5)、30部(実施例6)、45部(実施例7)と高めるに従って、農薬活性成分の溶出速度を低くすることができるので、薬害のない農作物に適した薬効で、非常に長期間にわたって農薬活性成分の作用を持続させることが可能となることが分かる。
一方、比較例5、6に明らかなように、アクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合樹脂で粒状物を被覆して得られる粒状農薬組成物においては、上記のような樹脂量では、本発明の被覆粒状農薬組成物のような薬効を長期間にわたって持続させることはできないことが分かる。
【0085】
【試験例2】
水稲薬害試験
5000分の1アールの大きさのポットに水田土壌(沖漬土壌)を充填し、基肥として化成肥料(17:17:17)をポット当たり3g施肥し、代かき後、湛水状態とした。そして2葉期の水稲苗(品種:日本晴)をポット当たり3株移植し、移植後湛水深3cmに調製した後、実施例1、2および比較例1、2の粒状農薬組成物をポット当たり120mg(10アール当たりの通常使用量の2倍量)施用した。また、対照例(慣行処理区)として、市販のビフェノックス含有量7%の粒剤を、実施例1、2と同様に120mg施用した。
【0086】
水稲薬害の調査では、農薬組成物施用後21日目に、茎鞘部および第2葉位において褐色に変色した部位の長さである褐変長(cm)を測定して、水稲薬害を評価した。
なお、本試験は3連制で行い、平均褐変長(cm)を求めた。
【0087】
得られた試験結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
Figure 0004573983
【0089】
表4より明らかなように、アクリルシリコーン樹脂で粒状物を被覆して得られる本発明の被覆粒状農薬組成物では、同量のアクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸アルキルエステル共重合樹脂で粒状物を被覆して得られる粒状農薬組成物と比較して、平均褐変長は小さく、薬害を良好に回避できることが分かる。
また、本発明の被覆粒状農薬組成物においては、樹脂量を0.5部(実施例1)から2部(実施例2)のように少し高めることにより、比較例2に比べて、その効果が著しく増加することが分かる。
【0090】
【試験例3】
除草効果(残効性試験)
通常の管理がなされた水田に水稲(品種:日本晴2葉期)を機械移植した後、1区6m2(2m×3m)の大きさに区切り、試験区を作った。移植3日後に湛水深3cmに調整した後、実施例1、2および比較例1、2の粒状農薬組成物、対照例として市販のビフェノックス含有量7%の粒剤をそれぞれの区に18gずつ均一に施用した。また、薬剤を施用しない無処理区を設けた。
【0091】
薬剤施用後、20日後、30日後、45日後に区内の任意の位置に30cm×30cmの範囲にタイヌビエの催芽種子を100粒ずつ播種した。
除草効果の調査では、タイヌビエの催芽種子14日後にそれぞれの残存タイヌビエを抜き取り、乾物重量を測定し、次式により除草率を求めた。
【0092】
【数4】
Figure 0004573983
【0093】
なお、本試験は3連制で行い、平均除草率を求めた。
得られた試験結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
Figure 0004573983
【0095】
表5から明らかなように、アクリルシリコーン樹脂で粒状物を被覆して得られる本発明の被覆粒状農薬組成物では、除草効果が長期間にわたり持続することが分かる。
【0096】
【発明の効果】
アクリルシリコーン樹脂で、農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物を被覆してなる本発明の被覆粒状農薬組成物では、農薬活性成分の溶出が従来よりも遅くなるように制御され、徐々に溶出するので、植物への薬害を回避することができる。また、残効性も長くなり、使用するアクリルシリコーン樹脂の量を適宜選択することにより、残効期間を、例えば、1.5〜5倍程伸ばすこともできる。さらに、本発明の被覆粒状農薬組成物は、溶出制御効果が高いので、樹脂の使用量を低減でき、製造容易であり、また環境への負荷も少ない。

Claims (8)

  1. 農薬活性成分、結合剤および固体担体を含有する粒状物と、該粒状物を被覆するアクリルシリコーン樹脂とからなることを特徴とする被覆粒状農薬組成物。
  2. アクリルシリコーン樹脂が、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体と、重合性不飽和シリコーン単量体との共重合体である請求項1に記載の被覆粒状農薬組成物。
  3. 被覆粒状農薬組成物中のアクリルシリコーン樹脂の含有量が0.1〜60重量%である請求項1または2に記載の被覆粒状農薬組成物。
  4. アクリルシリコーン樹脂が、水性エマルションの形態で粒状物に噴霧被覆されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の被覆粒状農薬組成物。
  5. 農薬活性成分、結合剤および固体担体を造粒し、得られた粒状物をアクリルシリコーン樹脂にて被覆することを特徴とする被覆粒状農薬組成物の製造方法。
  6. アクリルシリコーン樹脂が、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体と、重合性不飽和シリコーン単量体との共重合体である請求項5に記載の被覆粒状農薬組成物の製造方法。
  7. 被覆粒状農薬組成物中のアクリルシリコーン樹脂の含有量が0.1〜60重量%となるようにアクリルシリコーン樹脂を粒状物に被覆する請求項5または6に記載の被覆粒状農薬組成物の製造方法。
  8. アクリルシリコーン樹脂を、水性エマルションの形態で粒状物に噴霧被覆する請求項5〜7のいずれかに記載の被覆粒状農薬組成物の製造方法。
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