JPH09202496A - 重合体フィルムの帯電処理方法と装置および巻取方法ならびにそれから得られる重合体フィルム - Google Patents

重合体フィルムの帯電処理方法と装置および巻取方法ならびにそれから得られる重合体フィルム

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JPH09202496A
JPH09202496A JP1301496A JP1301496A JPH09202496A JP H09202496 A JPH09202496 A JP H09202496A JP 1301496 A JP1301496 A JP 1301496A JP 1301496 A JP1301496 A JP 1301496A JP H09202496 A JPH09202496 A JP H09202496A
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向岡 季
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修 斎田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の第1の目的は、重合体フィルムに充分
な両面両極性電荷を与える処理を効率的でかつ安定に施
す帯電フイルムの帯電処理方法および装置を提供する。
また、第2の目的は、重合体フィルムをロール状に巻き
取るに際し、フィルム端部の滑りを防止するために充分
な静電気帯電を安定に行なってから巻き取る重合体フイ
ルムの巻取方法および装置を提供する。 【解決手段】重合体フィルムの一方の面に対して電圧を
印加された放電電極により帯電処理を施した後、該一方
の面の帯電電荷により該重合体フィルムの他方の面に前
記一方の面の帯電と逆極性の電荷を与えることを特徴と
する重合体フィルムの帯電処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は重合体フィルムの帯
電処理、特に、巻取時または巻取後の重合体フィルムロ
ールの端面ずれ、巻き崩れ、巻出時の重合体フィルムの
蛇行を防止する重合体フィルムの帯電処理方法と装置お
よび巻取方法ならびにそれから得られる重合体フィルム
に関する。
【0002】
【従来の技術】重合体フィルムロールの端面ずれ、蛇行
を防止するために、従来より、重合体フィルムの耳部な
ど幅方向の一部に表面処理を施すことが知られている。
この表面処理は、エンボス加工、縞状の凸部形成などを
フィルムに施し、フィルム同士間の摩擦係数を増大せし
め、フィルム同士間の密着性を高めるものである。
【0003】しかし、これらの表面処理では、充分な滑
り止め効果が得られず、フィルムの端面ずれが発生する
ことが多い。また、フィルムへの圧力の調整が難しく、
製膜条件、フィルム厚みなどによって変更する必要があ
る。さらに、同一条件下でも部品の経時変化などで圧力
が変わり、フィルムに穴を開けコンタミの問題を生じる
ことがある。
【0004】上記の機械的処理による不具合を改善する
ための処理方法として、特開昭51−46354号公
報、特開昭51−71351号公報、特開昭51−71
352号公報に開示された帯電処理方法がある。これら
の方法は、フィルムの片側の耳部または両側の耳部の一
部分に静電気を印加し、ロール状に巻かれたフィルムと
新たに巻き付けるべきフィルムとが静電気の作用により
密着するように滑り止め処理を施すものである。
【0005】しかし、これらの公知の帯電処理方法は次
の問題がある。すなわち、 (A)特開昭51−71351号公報などに開示された
方法では、フィルムの片面しか帯電していないために、
静電気力が弱く十分な滑り止め効果が得られない。
【0006】フィルム同士の間に十分な静電気付着力を
与えるためには、フィルムの1つの面に正または負の電
荷を与え、もう1つの面にそれと逆極性の電荷を与える
必要がある。以降、フィルムのこのような帯電状態を両
面両極性帯電と呼ぶ。
【0007】(B)特開昭51−46354号公報、特
開昭51−71351号公報および特開昭51−713
52号公報に開示された方法では、針電極に高電圧を印
加しコロナ放電をさせ、コロナ放電で作られたイオンを
利用してフィルムの帯電処理を施している。針電極を用
いる方法は、次のような問題点がある。
【0008】a.針電極の先端が劣化してコロナ放電が
不安定であり、帯電効果に経時変化が起きる。
【0009】b.印加電圧が高すぎると異常放電が起こ
るために、印加電圧の制限で帯電レベルの限界がある。
【0010】c.帯電レベルはフィルムの移動速度によ
って変化する。
【0011】d.印加電圧は通常3〜20KVであるの
で、取扱いの際、高電圧に対する安全上の対策が不可欠
である。
【0012】上記(A)の問題を解決するための帯電処
理方法として、特開昭57−57152号公報に開示さ
れた帯電処理方法がある。この方法は、巻き取られる絶
縁性フィルム状体を介して互いに所定の間隔をおいて対
向した正電極と負電極とを備え、両電極に電界が形成さ
れ、その電界によってフィルム状体の上面と下面とが互
いに異極に帯電されることを特徴としている。しかし、
このような帯電方法には次の問題がある。印加電圧は約
1〜10KVであり、上記(B)の問題は解決されてい
ない。
【0013】一方、コロナ放電式以外の帯電方法とし
て、特開昭63−149669号公報、特公平5−16
033号公報および特開昭63−208878号公報な
どに開示された接触方式がある。これは、電子写真分野
装置の感光体の帯電を、交流および直流成分を有する電
源が接続されたローラなどの電極によって行なうもので
ある。ローラ電極により感光体表面に対して数100V
以上の電圧を印加すると、ローラ電極に印加した電圧に
比例した電位が感光体表面に付与される。しかし、感光
体表面の帯電は片面の帯電であり、この帯電方法だけで
は重合体フィルムの両面に異極性の電荷を与えることが
できない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、上記の問題を解決し、重合体フィルムに充分な両面
両極性電荷を与える処理を効率的でかつ安定に施す重合
体フイルムの帯電処理方法および装置を提供する。
【0015】本発明の第2の目的は、上記の問題を解決
し、重合体フィルムをロール状に巻き取るに際し、フィ
ルム端部の滑りを防止するために充分な静電気帯電を安
定に行なってから巻き取る重合体フイルムの巻取方法お
よび装置を提供する。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の構成は以下の通りである。
【0017】(1)重合体フィルムの一方の面に対して
電圧を印加された放電電極により帯電処理を施した後、
該一方の面の帯電電荷により該重合体フィルムの他方の
面に前記一方の面の帯電と逆極性の電荷を与えることを
特徴とする重合体フィルムの帯電処理方法。
【0018】(2)重合体フィルムの一方の面を接地導
電性ローラの部位に密着させ、他方の面を電圧を印加さ
れた放電電極により帯電させた後、前記重合体フィルム
を前記接地導電性ローラ面より剥離させることにより、
該重合体フィルムの他方の面に、上記一方の面の帯電電
荷とは逆極性の電荷を与えることを特徴とする重合体フ
ィルムの帯電処理方法。
【0019】(3)重合体フィルムの一方の面を接地導
電性ローラの部位に密着させ、他方の面に電圧を印加さ
れた放電電極を接触または近接させて30μC/m2
上の表面電荷密度に帯電させた後、前記重合体フィルム
を前記接地導電性ローラ面より剥離させることにより、
該重合体フィルムの他方の面に、上記一方の面の帯電電
荷とは逆極性の電荷を与えることを特徴とする重合体フ
ィルムの帯電処理方法。
【0020】(4)前記放電電極に、400V〜2,5
00Vの範囲の直流電圧、実効値400V〜2,500
Vの範囲の交流電圧、または400V〜2,500Vの
範囲の直流電圧に400V〜2,500Vの範囲の交流
電圧を加えた脈動電圧のいずれかを印加することを特徴
とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体フ
ィルムの帯電処理方法。
【0021】(5)重合体フィルムの片側端部または両
端部に対して帯電処理を行うことを特徴とする前記
(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体フィルムの帯
電処理方法。
【0022】(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記
載の重合体フィルムの帯電処理後の重合体フィルムを巻
き取ることを特徴とする重合体フィルムの巻取方法。
【0023】(7)搬送される重合体フィルムと接触す
る導電性部材と、該導電性部材と接触する重合体フィル
ムを帯電処理する放電電極と、該放電電極と接続された
電圧を印加する電圧印加手段を設けたことを特徴とする
重合体フィルムの帯電処理装置。
【0024】(8)重合体フィルムの搬送手段としての
ガイドローラ、該ガイドローラに密着している重合体フ
ィルムに接触または近接して設けた放電電極と、該放電
電極と前記ガイドローラとの間に直流電圧または交流電
圧を印加可能な直流電圧源または交流電圧源とを備えて
なることを特徴とする重合体フィルムの帯電処理装置。
【0025】(9)前記放電電極として表面に抵抗率1
4 Ωcm以上108 Ωcm以下の導電性ゴム層を有す
るローラを用いることを特徴とする前記(7)または
(8)に記載の重合体フィルムの帯電処理装置。
【0026】(10)放電電極が、重合体フィルムの片
側端部または両端部に対して帯電処理するものであるこ
とを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれかに記載の
重合体フィルムの帯電処理装置。
【0027】(11)前記(7)〜(10)のいずれか
の重合体フィルムの帯電処理装置に、巻取り手段を備え
たことを特徴とする重合体フィルムの巻取装置。
【0028】(12)前記(1)〜(6)に記載の方法
のいずれかを使用して製造された、または前記(7)〜
(11)に記載の装置のいずれかを使用して製造された
ことを特徴とする重合体フィルム。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明における重合体フィルム
は、付与される電荷が短時間(電荷が付与されてより巻
き取られる間での時間)の内に散逸してしまわない限
り、全ての重合体フィルムに適用できる。例えば、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフ
タレートなどに代表されるポリエステル、ポリエチレ
ン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフイン、
ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデンなどに代表され
るポリビニール、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリ
フェニレンサルファイドなどからなるフィルムが適用で
きる。
【0030】さらに、磁性塗料などの塗料の塗布、ある
いは印刷加工、蒸着加工、他種フィルムとのラミネート
加工などの2次加工が施されたシート状のフィルムに対
しても少なくともその片面において電荷が短時間に散逸
してしまわない限り適用できる。
【0031】以下、図面を参照しながら本発明の一実施
様態について詳細に説明する。
【0032】本発明の一実施様態に用いる装置の構成図
を図1に示す。
【0033】重合体(ポリエチレンテレフタレート)フ
ィルム1は、金属ガイドローラ2を含む多数のローラに
より左方向から右方向へ搬送され、最終的にフィルムロ
ール6に巻き取られる。フィルムロール6は反時計回
り、金属ガイドローラ2は時計回りに回転する。ここで
は、放電電極としてローラ3を用い、金属ガイドローラ
2に当接した(フィルムを挟んで)ニップローラとして
配置されている。
【0034】帯電用ローラ3は金属軸に導電性ゴムを被
覆したものであり、負極性の直流電圧−Va を供給する
直流電源4に接続されており、また、金属ガイドローラ
2は接地されている。なお、フィルムの全幅に対して帯
電処理を行う必要はなく、フィルム幅方向において数m
m〜数十mmの範囲での帯電で充分な密着効果をもたら
す。図1に示す実施様態では、ローラ3の幅は10mm
である。
【0035】重合体フィルムのプロセスにおいて、本発
明の放電電極の設置位置は特別な制限がない。例えば、
図1のように接地ガイドローラ2および放電電極ローラ
3を用いる場合、これらのローラの直径や、重合体フィ
ルム1の巻き付け角度は特別な制限がない。また、帯電
の原理から接地ガイドローラ2および放電電極ローラ3
が回転しなくても重合体フィルムが移動すれば帯電させ
ることができる。
【0036】さらに、負の直流電圧以外に、正の直流電
圧もしくは交流電圧を用いることもできる。また、上記
の実施態様においては放電電極として導電性ゴムの被覆
を有するローラをフィルムに接触する形で用いたが、金
属ローラや導電性ブラシなどを電極として用い、フィル
ムに接触または接近させることによっても同様の作用を
実現することができる。ただし、ローラ電極を用いた場
合、フィルム面との放電のために適切なギャップが自動
的に得られるという点が導電ブラシなどを用いる場合に
比べて優れている。
【0037】次に、図2を用いてこの装置によりフィル
ムを帯電させる動作を説明する。
【0038】図2は、図1における帯電処理部の拡大図
である。
【0039】フィルムを帯電させる動作は、ローラ3に
よるフィルム上面の帯電と、フィルムがガイドローラ2
から剥離される際に起きるフィルム下面の帯電の2段階
である。図2に示す例では、負の直流電圧4に接続され
ているローラ3とフィルムの間で微小放電が起き、フィ
ルムの上面が負に帯電し、さらに、フィルムがガイドロ
ーラ2から剥離された際に両者の間に放電(以降、剥離
放電と呼ぶ)が起き、フィルムの下面が正に帯電する。
すなわち、フィルムが両面両極性帯電となる。フィルム
が両面両極性帯電しているために、上下に重なったとき
にフィルムどうしの間に静電気付着力が生じる。
【0040】フィルムの下面が導電性を有する場合、フ
ィルムがガイドローラ2から剥離された際に両者の間に
放電が起きない。しかし、フィルムの下面に上面電荷と
同量の逆極性誘導電荷が生じるために、上下に重なった
ときにフィルムどうしの間に静電気付着力が生じる。
【0041】以上のように、重合体フィルムの片面(上
面)に対して電圧を印加された放電電極を接触または近
接させて帯電処理を施した後、上面の帯電電荷による放
電または誘導電荷を利用して該重合体フィルムの下面に
上面帯電と逆極性の電荷を与えることができる。
【0042】両面両極性帯電フィルム間の静電気付着力
fは、次式によって近似的に計算できる。
【0043】 f=σ2 /2ε0 [N/m2 ] …… ただし、2枚のフィルム間の距離をゼロとし、σは表面
電荷密度、ε0 は真空中の誘電率である。静電気付着力
は表面電荷密度の2乗に比例することから、重合体フィ
ルムの両面に適度な電荷密度の両極性電荷を与えれば充
分な密着効果および端面ずれ防止効果が得られる。
【0044】ローラ3による重合体フィルム1の上面帯
電と剥離放電による下面帯電は同じ原理によるものであ
り、ともに数10μm〜数100μmの空隙中の放電現
象が帯電に寄与している。空隙における絶縁破壊電圧は
パッシェンの法則により計算できる。また、これまでの
研究から重合体フィルムの表面電荷密度が30μC/m
2 以上になると剥離放電が発生することがわかる。
【0045】ここではローラ3による帯電について詳し
く説明する。
【0046】空隙における絶縁破壊電圧はパッシェンの
法則により計算される。大気圧中では空隙にかかる電圧
がある値(400V程度)を越えると、フィルムの帯電
電位は印加電圧の増加に比例して増加する。従って、数
10μmの空隙中の放電現象による帯電では、数100
Vという低い印加電圧を用いて帯電の制御ができる。ま
た、帯電の原理から言えば、放電電極をフィルム面に接
触させる必要はない。ただし、ローラによる方法では、
フィルム面と放電部位との距離が0mmの状態(ローラ
がフィルムに接触)からローラの半径に匹敵する距離ま
での状態を滑らかに連続的につくることができる。した
がって、放電が起こる数10μmの間隔が上記連続的な
距離変化の中で形成されるため、この間隔を意識的に高
精度に保つ必要がない。すなわち、ローラなどの電極を
フィルム面に接触させることにより、ローラの一部分と
フィルムの間に数十μmの空隙は容易に形成される。ロ
ーラのこの部分のみでパッシェンの法則にしたがって放
電が起き、ローラの他の部分では電荷の移動が起こらな
いために、一定な間隔を保つことと同じ効果が得られ
る。
【0047】導電ゴム層の被覆された金属ローラのよう
な導電性曲面表面を有する部材を放電電極とする場合の
放電の様子は次のように説明される。
【0048】放電による電荷移動が起きる電極部分の拡
大図を図3に示す。
【0049】帯電用ローラ3とフィルム1間の空隙(放
電ギャップ)にかかる電圧Vg は、 Vg =(Va −Vc )Z/(Ls /Ks +Z) …… で表される。ここでVa は印加電圧、Vc はフィルム表
面の帯電電位、Zは放電ギャップ、Ls はフィルムの厚
み、Ks はフィルムの比誘電率を表す。後に図4に示す
ように、Zのオーダは数10μmであるためにローラ3
の半径よりもはるかに小さい。
【0050】空隙における放電破壊電圧Vb はパッシェ
ンの法則により次の一次式で近似される。
【0051】Vb =312+6.2Z …… Vg 、Vb をZの関数としてプロットした曲線の一例を
図4に示す。
【0052】図4に示すように、Va −Vc がある値を
超えるとVg >Vb となり、ローラとフィルム間の空隙
で放電が起きる。放電が起きるVa −Vc の最小値を放
電開始印加電圧Vthと呼ぶ。Vthは、Vg =Vb とおい
たZの2次式で、判別式が0になる条件で求められる。
次に、Vthのいくつかの例を表1と表2に示す。
【0053】表1はPETフィルム(比誘電率3)の場
合の放電開始印加電圧Vthを示し、表2はPPフィルム
(比誘電率2.2)の場合の放電開始印加電圧Vthを示
す。
【表1】
【表2】 表1および表2に示すような種々のフィルムに対して、
放電電極への印加電圧がそれぞれのVthよりも高ければ
フィルムの表面を帯電させることができる。
【0054】本発明の帯電方法において、重合体フィル
ムを帯電できる最低印加電圧は約400Vである。一方
の最大印加電圧は、重合体フィルム自身の絶縁破壊強さ
に依存している。重合体フィルムの絶縁破壊強さは重合
体フィルムの材質や、環境の温度によって異なるが、数
100V/μmのオーダである。本発明の帯電方法およ
び巻取り方法において、重合体フィルムの厚さや、移動
速度によって印加電圧を厳密に調整する必要はない。実
用的な帯電レベルを得るために、400V〜2,500
Vの印加電圧範囲が好ましい。
【0055】次に、導電性ゴムのような電気抵抗をもつ
電極を用いる効果を説明する。
【0056】フィルムにピンホールがあるとき、ピンホ
ールの部分で空気の絶縁破壊が起き電極ローラ3がガイ
ドローラに通ずる導電路が形成される。これを異常放電
と呼ぶ。また、フィルムが破れた時、電極ローラ3がガ
イドローラ2と直接に導通する、いわゆる短絡である。
このような場合、電極ローラ3およびガイドローラ2の
表面は局部への集中電流によって破損する。
【0057】ピンホールでの異常放電またはフィルムが
破れた時の短絡が起こらずにかつ高速で帯電ができる適
正な電極条件(主に電気抵抗)は次のように考えられ
る。
【0058】ピンホールでの異常放電等を防止するた
め、すなわちピンホールで放電電極3がガイドローラ2
に通ずる導電路が形成しても大きな電流が流れないため
に、放電電極の電気抵抗がある値以上であるのが好まし
い。一方、帯電効果の要求から、正常の状態で電極での
電圧降下が小さい方がよい。電極での電圧降下が電極の
電気抵抗値に比例するので、放電電極の電気抵抗が小さ
い方がよい。
【0059】本発明の好ましい態様においては、放電電
極として抵抗率104 〜108 Ωcmの導電性ゴムを表
面層として有するローラ(ゴム被覆ローラ)を使用す
る。導電性ゴムは、EPDM(エチレンプロピレンゴ
ム)、CR(クロロプレンゴム)などの弾性ゴムにカー
ボンを分散させたものなどであるが、上記のような導電
性と適当な弾性を有する素材ならばなんでもよい。この
ような複合体は、一般に非オーム伝導を示している。す
なわち、電流−電圧関係は直線ではない。
【0060】本発明におけるゴム被覆ローラの電気抵抗
は次のような方法で測定する。
【0061】アルミニウムシートをローラの表面に接触
させ、アルミニウムシートとローラ軸(表面の導電性ゴ
ム層と電気的に接続されておればどこでもよい)との間
に電圧を印加して電流を測定する。アルミニウムシート
とローラの接触面積は10mm×5mmとする。
【0062】上記の方法で得られたゴム被覆ローラの電
流−電圧関係の例を図5に示す。
【0063】電流−電圧関係は直線ではないので、ロー
ラの電気抵抗は一定な値をもたない。印加電圧の増加に
伴って抵抗値が大幅に減少する。本発明における導電ゴ
ム層の抵抗率は印加電圧が100Vの条件で測定した平
均抵抗値(印加電圧を電流で除したもの)から求められ
たものである。
【0064】
【実施例】
実施例1 図1に示す装置において、幅3.5mの数種類の二軸延
伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを巻取っ
た。ローラ電極3は、直径100mm、幅10mmであ
り、厚さ3mm、電気抵抗率2×106 Ωcmの導電性
ネオプレン、ハイパロン、EPDMなどのゴム層を表層
としたものである。ローラ電極3への印加電圧は−1.
3KV〜−1.9KVの範囲である。ローラ2は、直径
350mmで、表面にハードクロムメッキされたスチー
ル製ローラである。フィルムの移動速度は200m/分
〜300m/分である。
【0065】印加電圧、電流の測定値および端面ズレ等
の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】 表3に示すように、本発明の帯電方法で重合体フィルム
を帯電させることにより充分な密着効果および端面ずれ
防止効果が得られた。
【0067】比較例1 機械ナール (1) 条件 フィルム端部の表面処理:溝状に、温度90℃にてエン
ボス加工 フィルムの厚さ(タイプ)、製膜速度は実施例1と同一
である。
【0068】(2) 巻きズレの結果 巻替え時、フィルムロール表層約50mの長さにおい
て、幅方向最大5cmのズレが発生した。
【0069】比較例2 針電極タイプ静電ナール (1) 条件 電極の形:針電極3本、フィルムとの間隔:5mm 印加電圧:3〜20KV、電流:0.1〜0.5mA フィルムの厚さ(タイプ)、製膜速度は実施例1と同一
である。
【0070】(2) 結果 5KVの印加電圧では十分な効果が得られなかった。
【0071】15KVの印加電圧では電極から火花放電
が発生した。
【0072】実施例1と同じ効果を出すのに、電極掃除
が1回/5日必要であり、電極が消耗して3ヶ月で交換
が必要であった。
【0073】
【発明の効果】以上のように本発明は、上記の構成とす
ることにより、 イ)重合体フィルムの両面に適度な電荷密度の両極性電
荷を与えることができ、これにより充分な密着効果およ
び端面ずれ防止効果が得られる。
【0074】ロ)また、2,500V以下という比較的
に低い印加電圧(従来は3KV〜20KV)で、従来の
技術よりも安定に重合体フィルムを帯電させることがで
きる。 ハ)さらに、比較的に簡易で安価な設備で確実
に帯電することができる。
【0075】ニ)さらにまた、重合体フィルムのピンホ
ールでの異常放電またはフィルムが破れた時の短絡が起
こらずにかつ高速で帯電させることがができる。
【0076】ホ)また、フィルムを巻き取る際の端面ず
れや巻き換えの際の端面ずれが発生しない重合体フィル
ムの巻取り方法、装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施様態例に用いる装置の構成図で
ある。
【図2】帯電が起きる電極部分の拡大図である。
【図3】重合体の上面を帯電させる電極部分の拡大図で
ある
【図4】放電開始電圧と放電ギャップとの関係を示す図
である。
【図5】ゴム被覆ローラの電流−電圧関係測定結果の例
を示す図である。
【符号の説明】
1:重合体フィルム 2:ガイドローラ 3:放電電極(ローラタイプ) 3a:放電電極ローラの芯金 3b:放電電極ローラの表面層 4:直流電圧源 5:コンタクトローラ 6:巻取りロール

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合体フィルムの一方の面に対して電圧を
    印加された放電電極により帯電処理を施した後、該一方
    の面の帯電電荷により該重合体フィルムの他方の面に、
    前記一方の面の帯電電荷とは逆極性の電荷を与えること
    を特徴とする重合体フィルムの帯電処理方法。
  2. 【請求項2】重合体フィルムの一方の面を接地導電性ロ
    ーラの部位に密着させ、他方の面を電圧を印加された放
    電電極により帯電させた後、前記重合体フィルムを前記
    接地導電性ローラ面より剥離させることにより、該重合
    体フィルムの他方の面に、上記一方の面の帯電電荷とは
    逆極性の電荷を与えることを特徴とする重合体フィルム
    の帯電処理方法。
  3. 【請求項3】重合体フィルムの一方の面を接地導電性ロ
    ーラの部位に密着させ、他方の面に電圧を印加された放
    電電極を接触または近接させて30μC/m2以上の表
    面電荷密度に帯電させた後、前記重合体フィルムを前記
    接地導電性ローラ面より剥離させることにより、該重合
    体フィルムの他方の面に上記一方の面の帯電と逆極性の
    電荷を与えることを特徴とする重合体フィルムの帯電処
    理方法。
  4. 【請求項4】前記放電電極に、400V〜2,500V
    の範囲の直流電圧、実効値400V〜2,500Vの範
    囲の交流電圧、または400V〜2,500Vの範囲の
    直流電圧に400V〜2,500Vの範囲の交流電圧を
    加えた脈動電圧のいずれかを印加することを特徴とする
    請求項1〜3のいずれかに記載の重合体フィルムの帯電
    処理方法。
  5. 【請求項5】重合体フィルムの片側端部または両端部に
    対して帯電処理を行うことを特徴とする請求項1〜4の
    いずれかに記載の重合体フィルムの帯電処理方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の重合体フ
    ィルムの帯電処理後の重合体フィルムを巻き取ることを
    特徴とする重合体フィルムの巻取方法。
  7. 【請求項7】搬送される重合体フィルムと接触する導電
    性部材と、該導電性部材と接触する重合体フィルムを帯
    電処理する放電電極と、該放電電極と接続された電圧を
    印加する電圧印加手段を設けたことを特徴とする重合体
    フィルムの帯電処理装置。
  8. 【請求項8】重合体フィルムの搬送手段としてのガイド
    ローラ、該ガイドローラに密着している重合体フィルム
    に接触または近接して設けた放電電極と、該放電電極と
    前記ガイドローラとの間に直流電圧または交流電圧を印
    加可能な直流電圧源または交流電圧源とを備えてなるこ
    とを特徴とする重合体フィルムの帯電処理装置。
  9. 【請求項9】前記放電電極として表面に抵抗率104 Ω
    cm以上108 Ωcm以下の導電性ゴム層を有するロー
    ラを用いることを特徴とする請求項7または8に記載の
    重合体フィルムの帯電処理装置。
  10. 【請求項10】放電電極が、重合体フィルムの片側端部
    または両端部に対して帯電処理するものであることを特
    徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の重合体フィル
    ムの帯電処理装置。
  11. 【請求項11】前記請求項7〜10のいずれかの重合体
    フィルムの帯電処理装置に、巻取り手段を備えたことを
    特徴とする重合体フィルムの巻取装置。
  12. 【請求項12】前記請求項1〜6に記載の方法のいずれ
    かを使用して製造された、または前記請求項7〜11に
    記載の装置のいずれかを使用して製造されたことを特徴
    とする重合体フィルム。
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