JP2009026716A - 導電層つき電気絶縁性シートの除電方法および除電装置 - Google Patents

導電層つき電気絶縁性シートの除電方法および除電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
電性被覆加工を施された電気絶縁性シートにおける、導電性被覆加工を施されていない面の帯電を、加工された導電性被覆の接地状態や抵抗値の変動によらず、簡単な構成で、容易に、安定的に、除去する。
【解決手段】
導電性被覆加工を施されていない面に相対して、シートの搬送方向に、逆極性の電圧を印加した除電電極を交互に配置することで、導電性被覆の電位を、接地状態や抵抗値の変動によらず、実質的にゼロ電位としながら除電する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、導電層つき電気絶縁性シートの除電方法および除電装置に関する。
プラスチックフィルム等の電気絶縁性シートにおける帯電は、シートを加工する工程において所望の加工を阻害することがある。例えば、静電気放電に起因するスタチックマークと呼ばれる局所的に強い帯電や放電痕が存在するシートに真空蒸着やスパッタリング等により金属被覆加工を施すと、加工製品にスタチックマークが現れる。スタチックマークによる強い帯電は、静電気力によるフィルムの他部材への密着をもたらし、搬送不良や位置あわせ、カットシートのつきそろえ不良など様々な問題を発生させる原因となることが知られている。(例えば、特許文献1、参照)。この対策として、かかる問題を回避するために、従来、接地されたブラシ状の導電体を、帯電した電気絶縁性シートに接近させ、ブラシ先端でコロナ放電を発生させて除電する自己放電式除電器や、針状電極に商用周波数の高電圧や直流高電圧を印加してコロナ放電を発生させて除電する交流式や直流式の電圧印加式除電器が使用されている。これら自己放電式の除電器や、電圧印加式除電器においては、コロナ放電によるによるイオンを、電気絶縁性シートの帯電による電界によって引き寄せ、電気絶縁性シートの帯電を中和(除電)するものである。これにより、高い電位に帯電しているシートの電位を下げることが可能とされている。
しかし、電気絶縁性シートにおける帯電は、(シート上での静電気放電などにより)シートの片面、あるいは、両面に、狭いピッチで正極性と負極性の帯電領域が混在していることが多い。このような帯電をもつ電気絶縁性シートにおける電界は、シートの内部(厚み方向)や、シートの表面近傍のみに集中する。そのため、電気絶縁性シートから少し離れた位置にある除電器のイオン生成部分(ブラシ先端や針状電極の針先)から十分なイオンを引き寄せられず、このような細かな帯電模様を持つシートに対する除電効果はほとんど得られなかった。
これに対し、電気絶縁性シートを挟んで離間配置されたイオン生成電極とイオン吸引電極とに逆位相の交流電圧を印加することを特徴とする、図4に示すシートの除電装置4が知られている(例えば、特許文献2、参照。)。また、逆極性の電圧を印加した複数組のイオン生成電極をシートSから間隔をおいて配置し、シートの両面に、同時に、逆極性のイオンを照射し、かつ、シートの各面の各部位に、シートの搬送に伴って両極性のイオンを照射する、図5、図6に示すシートの除電装置5、6が知られている(例えば、特許文献1、および、特許文献3、参照。)。
特開2005−222925号公報 特許第2651476号公報 特開2006−236976号公報
しかし、これら従来技術における除電装置は、金属被覆加工等の導電性被覆加工を施す前の電気絶縁性シートに対して除電を行うことにより、導電性被覆加工後の電気絶縁性シートに生じる搬送不良や位置あわせ、カットシートのつきそろえ不良などの問題を抑えようとするものであった。ところが、本発明者らの知見によると、シートの片面に導電性被覆加工を施された電気絶縁性シートは、その搬送や巻取、各種表面加工等の際に、その導電性被覆加工を施されていない面が帯電しやすい。これは、導電性被覆加工を施された電気絶縁性シートにおいては、その静電容量が大きいため、導電性被覆加工を施されていない面に多くの電荷が注入されやすいためである。
このように、本発明者らの知見によると、片面に導電性被覆加工を施された電気絶縁性シートの導電性被覆加工を施されていない面が、帯電した場合には、その帯電により生じる問題を抑えることはできなかった。
本発明者らの知見によると、この加工された導電性被覆層の抵抗が数Ω/□程度の低抵抗であって、かつ、導電性被覆が搬送部材などを通じて接地されている場合には、その導電性被覆加工を施されていない面に、除電器を近接させて除電を行えば、その面の除電を比較的容易に行うことができる。
これは、除電器をシートに近接していると、シート(の接地された導電性被覆層)との間に強い電界が形成され、イオンが多量にシートに照射されるためである。比較のために、シートに導電性被覆層がない場合を考えると、除電器をたとえシートに近接して配置しても、照射されたイオンがシートに付着することによってシートの電位の絶対値が大きくなり、除電器とシートとの間の電界が弱くなるため、シートに照射できるイオンの量はわずかである。ここで、接地された低抵抗の導電性被覆層がある場合には、照射されたイオンが付着した部位において、フィルムと被覆層の境界面に、付着したイオンと逆極性の電荷が誘導される(接地点から導電性被覆層に、直接電荷が注入される)。そのため、イオンが照射されてもシートの電位の絶対値はほとんど大きくならず、イオン生成電極とシートとの間の強い電界が維持されるので、多量のイオンを照射できるのである。
しかし、本発明者らの知見によると、加工された導電性被覆層の抵抗が比較的高く、表面抵抗が10の4乗〜8乗Ω/□程度と高い場合や、表面抵抗が低くても、搬送部材等を通じて接地されていない場合には、導電性被覆加工を施されていない面に対して十分な除電を行うことができなかった。
これは、導電性被覆層の抵抗が比較的高い場合や、表面抵抗が低くても接地されていない場合には、イオンが照射された部位におけるフィルムと被覆層の境界面に、付着したイオンと逆極性の電荷がすみやかに誘導されなくなる(注入される電荷が少ない)ためと考えられる。そのため、照射されたイオンによって、シートの電位の絶対値が大きくなり、イオン生成電極とシートとの間の電界が弱くなり、シートに照射されるイオンの量が減少する。
この問題は、図4に示す除電装置4を用いたとしても、ほとんど解消されない。除電器4において、シートの導電性被覆面に接近しておかれたイオン吸引電極は4dは、高圧電源4cに接続されることによって、シートの導電性被覆層とイオン吸引電極との間に電界を形成する働きはあるが、イオンを照射する能力がないため、導電性被覆層に直接イオンを注入できない。したがって、図4に示す除電装置4を用いても、導電性被覆層の抵抗が比較的高い場合や、表面抵抗が低くても接地されていない場合には、十分な除電ができなかった。
一方、図5,6に示す除電装置5や、除電装置6を用いて、導電性被覆加工後のシートに対して、その位置あわせやつきそろえなどの直前に除電を行えば、導電性被覆加工を施されていない面を除電することが原理的に可能である。しかし、除電装置5や、除電装置6においては、図5、6に示すように、電気絶縁性シートの両面に相対して交流電源5cと5eや、直流電源6cと6eに接続された除電電極を有する電極ユニットEUf−mと、EUd−m(ただし、mは1からnまでの整数)とが複数(n個)配置されている。これにより、導電性被覆加工を施された面が、除電装置5や、除電装置6の高圧を印加された除電電極に接近するため、シートのバタツキやエッジ部分の接近などにより容易に火花放電を起こしてしまい、実用上安定して除電を行い難い問題があった。また、実際には除電の必要のない導電性被覆加工を施された面に対しても除電(イオンの照射)を行うことから、構成部品(特に除電電極)の増大、放電に伴い生じるオゾン発生量の増大、電力利用効率の等の問題があった。
本発明の目的は、上述した従来の技術の上記問題点を解決し、片面に導電性被覆加工を施された電気絶縁性シートにおける、導電性被覆加工を施されていない面の帯電を、加工された導電性被覆の接地状態や抵抗値の変動によらず、簡単な構成で、容易に、安定的に、除去することが出来る除電方法および除電装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、電気絶縁性シートの一方の面に導電層が形成された導電層つき電気絶縁性シートの搬送経路に対し、該シートの他方の面に相対し、該シートの搬送方向に間隔をおいて設けられた少なくとも2個の除電電極を有する導電層つき電気絶縁性シートの除電装置であって、前記除電電極の数をnとするとき(nは、2以上の整数)、n個の除電電極のうち、n/4個以上(小数点以下切り上げ)の前記除電電極に印加される電圧が、他の除電電極に印加される電圧とは逆極性の電圧であることを特徴とする、導電層つき電気絶縁性シートの除電装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、すべての前記除電電極において、前記シートの搬送方向に隣接する前記除電電極への印加電圧が、互いに逆極性であることを特徴とする、導電層つき電気絶縁性シートの除電装置が提供される。
また、本発明の別の形態によれば、前記電気絶縁性シートの除電装置を用いて、実質的に前記導電層の電位をゼロに保ちながら除電を行うことを特徴とする導電層つき電気絶縁性シートの除電方法が提供される。
また、本発明の別の形態によれば、前記導電層つき電気絶縁性シートの除電方法により導電層つき電気絶縁性シートを除電することにより、導電層つき電気絶縁性シートを製造する除電済み導電層つき電気絶縁性シートの製造方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記導電層の表面抵抗が10の8乗Ω/□以下であることを特徴とする、導電層つき電気絶縁性シートの製造方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記導電層の表面抵抗が10の4乗Ω/□以上であることを特徴とする、導電層つき電気絶縁性シートの製造方法が提供される。本発明が適用される導電層つき電気絶縁性シートの基材となる電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルム、布帛、紙等のシートや枚葉体があるが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ナイロンフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムは、電気絶縁性が高いため、本発明を適用するのに特に好適である。
一方、本発明が適用される導電層つき電気絶縁性シートの導電性被覆としては、真空蒸着や、スパッタなどによる、金属や、酸化金属被覆、カーボンブラックやチタン粒子などの導電性粒子を含んだ塗布膜などがあげられる。
本発明における「導電層」の導電性の測定は、JIS規格C6481(1994)に記載の方法に添って導電層の表面抵抗を測定することによって行う。導電層は、例えば、表面抵抗が10の4乗Ω/□以下の場合は比較的抵抗が低い導電層といい、表面抵抗が10の4乗Ω/□以上10の8乗Ω/□以下の場合は比較的抵抗が高い導電層という。
本発明において、「イオン」とは、電子、電子を授受した原子、電荷をもった分子、分子クラスター、浮遊粒子等、さまざまな形態の電荷担体をいう。
本発明において、「イオン生成電極」とは、高電圧の印加によるコロナ放電等によって、電極先端近傍の空間において、イオンを生成する電極をいう。
本発明において、「シールド電極」とは、イオン生成電極近傍に配置され、イオン生成電極との間に適当な電位差を与えることで、イオン生成電極先端でのコロナ放電を補助する電極をいう。
本発明によれば、後述の通り、実施例と比較例の対比からも明らかなように、片面に導電性被覆加工を施された電気絶縁性シートにおいて、その接地状態や抵抗値の変動によらず、シートの電位の絶対値が照射されたイオンによって大きくならないようにしながら除電を行えるので、導電性被覆加工を施されていない面の帯電を、簡単な構成で、容易に、安定的に、除去することが出来る。
以下、本発明の除電装置の好ましい実施形態例を図面を参照しながら説明する。電気絶縁性シートとしてプラスチックフィルム(以下、単に、フィルムという)の一方の面に一様な(回路パターンなどが形成されていないソリッドな)導電性被覆加工を施されたフィルム(以下、単に、導電層つきフィルムという)を用いる場合を例にとって、説明する。本発明は、これらの例に限られるものではない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る除電装置の実施形態例の正面概略図である。この除電装置1は導電層つきフィルムの除電に好ましく用いられる。図1において、ガイドロール1aとガイドロール1bとに、搬送されるフィルムSが掛け渡されている。フィルムSは導電層つきフィルムであって、図の下側がフィルムの導電性被覆加工を施された面200(以下、単に、導電面という)である。
ガイドロール1a、および、ガイドロール1bは、それぞれモータ−(図示せず)により、右廻りに回転される。フィルムSは、ガイドロール1a、1bの回転により、矢印1abの方向に、速度u[単位:mm/秒]で連続的に搬送する。ガイドロール1aとガイドロール1bとの間に、フィルムの導電性被覆加工を施されていない面100(以下、単に、絶縁面という)に対向して、n個(ただし、nは2以上の整数)の除電電極SE1、・・・SEnがフィルムSの搬送方向(矢印1abの方向)に間隔をおいて設けられ、これらの除電電極SE1、・・・、SEnにより、除電装置1が構成されている。
各除電電極SEm(但し、mは1以上n以下の整数)は、イオン生成電極1dmと、イオン生成電極に対する開口部を有するシールド電極1gmとを有しており、実質的に同じ形状の電極である。フィルムの搬送方向に関し、上流から数えて奇数番目の除電電極のイオン生成電極1d1、1d3、…と、偶数番目の除電電極のイオン生成電極1d2、1d4、…とは、互いに逆極性の交流電源1cと、1eとに接続されている。
次に、除電装置1における各除電電極SEmの動作を図2により説明する。この説明は、1番目の除電電極SE1と、2番目の除電電極SE2を代表させて行われる。図2は、本発明の一実施形態の除電ユニットの機能に関する概略説明図である。
図2において、フィルムが1番目の除電電極SE1から正イオンを照射され、2番目の除電電極SE2から負イオンを照射される場合について考える。フィルムの導電面200が10の8乗Ω/□以下の抵抗を持つ場合、導電層内を電荷がある程度移動しうるので、1番目の除電電極SE1と、2番目の除電電極SE2とを近接しておけば、正イオンを照射された部位(1番目の除電電極SE1に相対する部分)のフィルムと導電層の界面には負の誘導電荷があらわれ、負イオンを照射された部位(2番目の除電電極SE2に相対する部分)のフィルムと導電層の界面には正の誘導電荷があらわれる。したがって、フィルムの電位の絶対値は照射されたイオンによって大きくならず、イオン生成電極とフィルムとの間の強い電界が維持される。これにより、フィルムの導電性被覆層の10の4乗〜8乗Ω/□程度と高い場合であっても、導電性被覆が搬送部材等を通じて接地されていない場合であっても、多量のイオンを照射することが可能となる。なお、導電面が比較的低抵抗で10の4乗Ω/□未満であり、かつ、積極的に接地されている場合においても、フィルムの電位がほぼゼロとなることには相違ないので、本装置構成で除電を行って問題はない。
ここで、フィルムと、除電電極との間に強い電界を形成するために、除電電極をフィルムに近接させて配置する必要がある。除電電極とフィルムとの距離や印加電圧を特許文献1および特許文献3で示されるように定めるのが好ましい。
すなわち、本発明において、除電電極SEmとほぼゼロ電位となるフィルムとの間に形成される電界は、特許文献1および特許文献3で示される、逆極性電圧が印加されたイオン生成電極が、フィルムをはさんで対向配置された構成において、フィルムと上部電極ユニットEuf−mとの間に形成される電界と等価と見なせるためである。これは、フィルムの導電面を対称面とした鏡像法の考え方により容易に推定できる。
すなわち、特許文献1においては、交流電圧を印加する場合に、逆極性電圧を印加された第1のイオン生成電極と第2のイオン生成電極との電位差の実効値を2V[V]とし、フィルムをはさんで対向配置された第1のイオン生成電極の先端と前記第2のイオン生成電極の先端との間の前記フィルムの法線方向における距離をd1[mm]とし、たとえば、90×d1≦V≦530×d1とすれば、第1のイオン生成電極と第2のイオン生成電極とから、フィルムに強制的にイオンを照射できることが示されている。
本発明においては、イオン生成電極の先端とフィルムとの距離をl[mm]とし、印加電圧の実効値をUrms[V]とすれば、d1を2lに置き換え、2V/2をUに置き換えればよいため、180×l≦Urms≦1060×lを満たすことで、フィルムに強制的にイオンを照射できることになる。
特許文献3においては、直流電圧を印加する場合に、イオン生成電極間電位差の時間的平均値をV[kV]、フィルムをはさんで対向配置された第1のイオン生成電極の先端と前記第2のイオン生成電極の先端との間の前記フィルムの法線方向における距離をd1[mm]として、
|V|/d1>0.26を得ている。
本発明においては、除電電極とフィルムとの距離をl[mm]とし、印加電圧のゼロピーク値の絶対値をU0-p[V]とすれば、d1を2lに置き換え、1000×V/2をUに置き換えればよいため、U0-p>260lを満たすことで、フィルムに強制的にイオンを照射できることになる。
その他、鏡像法で考えることにより、本発明の除電装置に使用する除電電極の形状(開口幅、開口位置)、隣接する除電電極相互の距離なども、特許文献1および、特許文献3に示される形状および距離とすることが好ましい。
このように、除電電極をフィルムの片面のみに複数配置し、かつ、隣接する除電電極に印加する電圧をそれぞれ逆極性とすることで、強制的に接地しなくても、導電層つきフィルムの電位の絶対値を照射されたイオンによって上昇しないようにすることができるので、多量のイオンを強制照射でき、効果的な除電が可能となる。ここで、除電電極に印加する電圧は交流、直流のいずれでもよい。また、複数本の除電電極により、導電層つきフィルムの電位の絶対値を照射されたイオンによって上昇しないように出来れば、必ずしも、隣接する除電電極に逆極性電圧を印加せず、特に導電層の抵抗が比較的低い場合には、上流側の半数の除電電極に同極性電圧を印加した後に、下流側の半数の除電電極に上流側とは逆極性の電圧を印加してもよい。除電電極に同極性電圧だけを印加するのは好ましくなく、全体の除電電極の半分以上が互いに逆極性の電圧の関係となるようにするのが好ましく、少なくとも、全体の1/4以上の除電電極に、他とは逆極性の電圧を印加するのが好ましい。除電電極に相対する位置のフィルム電位を極力ゼロに近づけるために、本実施の形態に示すように、隣接する除電電極に印加する電圧をそれぞれ逆極性とする方法が最も好ましい。
実施例および比較例における除電の効果は、次の方法により評価された。
[フィルムの帯電分布の評価方法]
除電後のフィルムの絶縁面に、複写機で用いるトナーをふりかけ、そのトナーの付着度合い、緻密さについて調べた。
[フィルム絶縁面電位の測定方法]
フィルムの導電面を、直径10cmのハードクロムメッキロールからなる金属ロールに密着させ、電位を測定した。電位計として、モンロー社製モデル244を、そのセンサとして、開口部直径0.5mmを有するモンロー社製プローブ1017EHを用いた。電位計をフィルム上0.5mmの位置に置いた。この位置での視野は、モンロー社カタログより、直径約1mmの範囲である。金属ロールをリニアモータを使用し、約1m/分の低速で回転させながら、電位計で電位Vf[単位:V]を測定した。
[スベリの測定方法]
フィルムを105mm×150mmに切り出し、切り出したフィルムより一回り大きい水平なSUS板の上に、絶縁面がSUS板と接触する様にして、なるべく平坦になるように載せ、フィルムを水平に引き出し、フィルムが移動し始める際の最大荷重をバネばかりで測定した。測定された値が大きい場合、フィルムはべたつきがちな状態になり、シワや搬送不良の原因となるため好ましくなく、この値が低いほど、フィルムは滑りやすく搬送できる。値が30g以上では、フィルムは滑りがたくなるが、5g以下であればほとんど抵抗無くフィルムを滑らせることができる。
[実施例1]
図1に示される除電装置において、電気絶縁性シートSとして、幅150mm、厚さ5μmの2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーY747)の片面に1.4×10の4乗Ω/□の導電膜が形成され、逆面は易接着加工処理により非常に強く帯電しているフィルムを使用した。フィルムSを速度30m/分で搬送させた。除電前のフィルムの絶縁面にトナーを振り掛けるとトナーが非常に濃く、緻密に付着した。絶縁面電位は−70〜+60Vで非常に大きく、かつ、数mm程度の細かな周期で振れ、すべりは250g以上で、はかりで測定できないほどのべたつきがあった。
除電電極として、図3に示される針電極列を備えたものを使用した。この針の幅方向の間隔は、10mmであった。除電電極を、フィルムSの面と平行になるように、フィルムの搬送方向にそって10並べた。
除電電極の先端とフィルムとの距離は、20mm、シールド電極とフィルムとの距離は、17mm、シールド電極開口幅は、19mmであった。
隣接する除電電極の間隔は、全て同じで35mmとした。フィルムの搬送方向上流から奇数番目の除電電極は第1の交流電源1cに、フィルムの搬送方向上流から偶数番目の除電電極は第2交流電源1eに接続した。交流電源1cと、1eの周波数はともに、60Hz、実効電圧ともに6kVとし、互いに位相が逆になるよう、電源内部の昇圧トランスの入力を切り替えた。シールド電極は接地した。
除電後のフィルムの絶縁面にトナーをふりかけると、トナーは全体的に付着するものの、除電前のフィルムと比べると大幅に付着量が減少し、全体にぼやけたような形になった。
絶縁面の電位は、−20〜+25Vであって、電位の振れる周期は2〜3cmと非常に緩やかな変動であった。また、すべりは最大で4.3gで、抵抗無くフィルムをすべらせることができた。
[比較例1]
図1において、全ての除電電極を交流電源1cに接続したほかは、実施例1と同じとして除電を行った。すなわち、これは全ての除電電極に印加される電圧を同極性にするということである。
除電後のフィルムの絶縁面にトナーをふりかけると、トナーは、除電前と比較してわずかに薄くなっているものの非常に濃く、緻密に付着した。絶縁面電位は−60〜+15Vで非常に大きく、かつ、数mm程度の細かな周期で振れた。すべりは最大で10.5gで、すべらせるのにやや抵抗があった。
[比較例2]
比較例1の各除電電極と、フィルムをはさんで対称になる位置にさらに電極を追加し、追加した電極を交流電源1cと逆極性の交流電源1eに接続したほかは、比較例1と同じとして除電を行った。途中、フィルムがばたついた部分で大きな音と光とを伴う火花放電が発生し、電源が緊急停止して除電を行えなくなった。火花放電発生までの部位において除電後のフィルムの絶縁面にトナーをふりかけると、トナーは全体的に付着するものの、除電前のフィルムと比べると大幅に付着量が減少し、全体にぼやけたような形にトナーが付着した。
絶縁面の電位は、−25〜+25Vであって、電位の振れる周期は2〜3cmと非常に緩やかな変動であった。また、すべりは最大で4gで、抵抗無くフィルムをすべらせることができた。
[実施例2]
図1に示される除電装置において、電気絶縁性シートSとして、幅150mm、厚さ5μmの2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーY747)の片面に4×10の6乗Ω/□の酸化アルミ膜が形成され、逆面は易接着加工処理により非常に強く帯電しているフィルムを使用したほかは、実施例1と同じとして除電を行った。除電前のフィルムの絶縁面にトナーを振り掛けるとトナーが非常に濃く、緻密に付着した。絶縁面電位は−50〜+80Vで非常に大きく、かつ、数mm程度の細かな周期で振れ、すべりは250g以上であった。
除電後のフィルムの絶縁面にトナーを振り掛けると、トナーは全体的に付着するものの、除電前のフィルムと比べると大幅に付着量が減少し、全体にぼやけたような形になった。
絶縁面の電位は−25V〜+25Vであって、電位の振れる周期は2〜3cmと非常に緩やかな変動であった。また、すべりは最大で4.5gで、抵抗無くフィルムをすべらせることができた。
本発明は、片面が導電面、片面が絶縁面である電気絶縁性シートの絶縁面の帯電を除去することを可能とするため、このようなシートの製造に適する。たとえば、片面のみに帯電防止層を有するシートなどに適用できるほか、ガラス基板に導電層が形成されたような枚葉物についても適用が可能である。
本発明の一実施形態に係る除電装置の実施形態例の正面概略図である。 本発明の一実施形態の除電ユニットの機能に関する概略説明図である。 本発明の除電装置における除電電極の一態様の概略正面断面図である。 従来技術における除電装置の正面概略図である。 従来技術における除電装置の正面外略図である。 従来技術における除電装置の正面外略図である。
符号の説明
1:除電装置
1a:ガイドロール
1b:ガイドロール
1c:交流電源
1dm:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電電極のイオン生成電極
1e:交流電源
1gm:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電電極のシールド電極
4:除電装置
4a:交流電源
4b:イオン生成電極
4c:交流電源
4d:吸引電極
5:除電装置
5c:交流電源
5e:交流電源
6:除電装置
6c:直流電源
6e:直流電源
100:フィルムの導電性被覆加工を施されていない面
200:フィルムの導電性被覆加工を施された面
300:フィルムに照射された正のイオン
400:フィルムに照射された負のイオン
500:正の誘導電荷
600:負の誘導電荷
EUf−m:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電ユニットの上部電極ユニット
EUd−m:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電ユニットの下部電極ユニット
S:フィルム
SEm:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電電極
SUm:シートの搬送方向に関し、上流から数えてm番目の除電ユニット

Claims (6)

  1. 電気絶縁性シートの一方の面に導電層が形成された導電層つき電気絶縁性シートの搬送経路に対し、該シートの他方の面に相対し、該シートの搬送方向に間隔をおいて設けられた少なくとも2個の除電電極を有する導電層つき電気絶縁性シートの除電装置であって、前記除電電極の数をnとするとき(nは、2以上の整数)、n個の除電電極のうち、n/4個以上(小数点以下切り上げ)の前記除電電極に印加される電圧が、他の除電電極に印加される電圧とは逆極性の電圧であることを特徴とする、導電層つき電気絶縁性シートの除電装置。
  2. すべての前記除電電極において、前記シートの搬送方向に隣接する前記除電電極への印加電圧が、互いに逆極性であることを特徴とする、請求項1に記載の導電層つき電気絶縁性シートの除電装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電気絶縁性シートの除電装置を用いて、実質的に前記導電層の電位をゼロに保ちながら除電を行うことを特徴とする導電層つき電気絶縁性シートの除電方法。
  4. 請求項3に記載の導電層つき電気絶縁性シートの除電方法により導電層つき電気絶縁性シートを除電することにより、導電層つき電気絶縁性シートを製造する除電済み導電層つき電気絶縁性シートの製造方法。
  5. 前記導電層の表面抵抗が10の8乗Ω/□以下であることを特徴とする、請求項4に記載の導電層つき電気絶縁性シートの製造方法。
  6. 前記導電層の表面抵抗が10の4乗Ω/□以上であることを特徴とする、請求項5に記載の導電層つき電気絶縁性シートの製造方法。
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