JPH0917674A - 希土類系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

希土類系焼結磁石の製造方法

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JPH0917674A
JPH0917674A JP7183443A JP18344395A JPH0917674A JP H0917674 A JPH0917674 A JP H0917674A JP 7183443 A JP7183443 A JP 7183443A JP 18344395 A JP18344395 A JP 18344395A JP H0917674 A JPH0917674 A JP H0917674A
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slurry
rare earth
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Yoshihisa Kishimoto
芳久 岸本
Osamu Yamashita
治 山下
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Hitachi Metals Ltd
Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 希土類含有合金粉末とバインダーとの反応を
抑制し、焼結後の焼結体の残留酸素量、残留炭素量を低
減させるとともに、成形時の粉体の流動性、潤滑性を向
上させて、成形体の寸法精度の向上及び生産性の向上を
図り、薄肉形状や小型形状でかつ優れた磁気特性を有す
るR−Fe−B系やR−Co系などの希土類系焼結永久
磁石の製造方法の提供。 【構成】 予め疎水処理した該希土類含有合金粉末に少
なくとも1種以上のポリマーと水からなるバインダーを
添加してスラリー状に撹拌した後、スプレードライヤー
装置のチャンバー内で噴霧して液滴を作り、そのまま瞬
時に乾燥固化させて造粒粉となすことにより、圧縮成形
時の粉体の流動性、潤滑性を向上させて、成形サイクル
の向上、成形体の寸法精度を向上させ、かつ予め疎水処
理したことから水との酸化反応が抑制されて磁気特性の
優れた薄肉形状や複雑形状の焼結永久磁石を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、流動性の高い球形状
の造粒粉でかつ磁気特性の優れた粉末を得て、該造粒粉
を用いて成形することによりR−Fe−B系合金やR−
Co系合金などの希土類(R)系永久磁石を製造する方
法に係り、予め疎水処理した該希土類含有合金粉末に少
なくとも1種以上のポリマーと水からなるバインダーを
添加してスラリー状に撹拌した後、スプレードライヤー
装置のチャンバー内で噴霧して液滴を作り、そのまま瞬
時に乾燥固化させて造粒粉となすことにより、圧縮成形
時の粉体の流動性、潤滑性を向上させて、成形サイクル
の向上、成形体の寸法精度を向上させ、かつ予め疎水処
理したことから水との酸化反応が抑制されて磁気特性の
優れた薄肉形状や複雑形状の焼結永久磁石を提供するこ
とができる希土類系焼結磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、家電製品を初めコンピュータの周
辺機器や自動車等の用途に用いられる小型モーターやア
クチュエータ等には、小型化、軽量化とともに高性能化
が求められており、その磁石材料も小型化、軽量化、薄
肉化からさらに磁石材料表面の所定位置に凹凸を設けた
り、貫通孔を設ける等、複雑な形状製品が要求されてい
る。現在の代表的な焼結永久磁石材料としては、フェラ
イト磁石、R−Co系磁石、そして、出願人が先に提案
したR−Fe−B系磁石(特公昭61−34242号
等)が挙げられる。上記の中でも、特に、R−Co系磁
石やR−Fe−B系磁石などの希土類系磁石は、他の磁
石材料に比べて磁気特性が格段にすぐれるために、各種
用途に多用されている。
【0003】上記の希土類系磁石、例えばR−Fe−B
系焼結永久磁石は、最大エネルギー積((BH)ma
x)が40MGOeを超え、最大では50MGOeを超
える極めて優れた磁気特性を有するが、それを発現させ
るためには、所要組成からなる合金を1〜10μm程度
の平均粒度に粉砕することが必要となる。しかし、合金
粉末の粒度を小さくすると、成形時の粉末の流動性が悪
くなり、成形体密度のバラツキや成形機の寿命を低下さ
せるとともに、焼結後の寸法精度にもバラツキを生じる
こととなり、特に薄肉形状や小型形状の製品を得るのが
困難であった。
【0004】また、希土類系磁石は、大気中で酸化し易
い希土類元素や鉄を主成分として含有するため、合金粉
末の粒度を小さくすると、酸化により磁気特性が劣化す
る問題があり、特にR−Fe−B系焼結永久磁石は、従
来から知られる希土類コバルト磁石等に比べ極めて優れ
た磁気特性を発現するという特徴を有するが、その磁気
特性の発源となる希土類やBとの新たな組織の特定の化
合物や化合物相が活性なため、合金粉末の粒度を小さく
すると、酸化により磁気特性が劣化する問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そのため、特に成形性
を改良するために、成形前の合金粉末に、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル等を添加したもの(特公平4−
80961号)、それらにさらにパラフィンやステアリ
ン酸塩を添加したもの(特公平4−80962号、特公
平5−53842号)、またオレイン酸を添加したもの
(特公昭62−36365号)等が提案された。しか
し、ある程度の成形性は向上できるものの、その改善効
果にも限界があり、近年要求される薄肉形状や小型形状
の成形は依然困難であった。
【0006】また、上記のバインダーや潤滑剤の添加と
ともに、さらに成形性を改良し、薄肉形状品や小型形状
品を製造する方法として、成形前の合金粉末に飽和脂肪
族カルボン酸や不飽和脂肪族カルボン酸にミリスチン酸
エチルやオレイン酸からなる滑剤を添加して混練した
後、造粒を行なって成形する方法(特開昭62−245
604号)、あるいはパラフィン混合物に飽和脂肪族カ
ルボン酸や不飽和脂肪族カルボン酸等添加、混練後、造
粒した後成形する方法(特開昭63−237402号)
も提案されている。
【0007】しかし、上記の方法では、粉末粒子の結合
力が十分でなく、造粒粉が壊れやすいために、十分な粉
末の流動性を実現することが困難であった。成形性を向
上させたり、粉末粒子の結合力を高めるためには、種々
バインダーや潤滑剤の添加量を増やすことが考えられる
が、多量に添加すると、希土類系合金粉末中のR成分と
バインダーとの反応により、焼結後の焼結体の残留酸素
量、残留炭素量が増加し、磁気特性の劣化を招くことに
なるので、添加量にも制限があった。
【0008】また、希土類含有の磁性合金粉末を対象と
するものではないが、Co系スーパーアロイ粉末を対象
とした圧縮成形用のバインダーとして、対象合金粉末に
対して、1.5〜3.5wt%のメチルセルロースとさ
らに所定量の添加物であるグリセリンとほう酸を混合し
た組成が提案(USP4,118,480)され、ま
た、工具用合金粉末の射出成形用のバインダーとして、
特殊組成からなり、対象合金粉末に対して0.5〜2.
5wt%のメチルセルロースに水、グリセリン等の可塑
剤、ワックスエマルジョン等の滑剤、離型剤を添加した
組成が提案(特開昭62−37302号)されている。
しかし、それらはいずれも所定の流動性と成形体強度を
確保するため、いずれも対象合金粉末に対して、上記の
ように例えば0.5wt%以上もの比較的多量のバイン
ダーを使用するもので、しかも種々のバインダー添加剤
の添加、例えばグリセリン等の可塑剤をメチルセルロー
スと同量程度添加することが不可欠であるため、射出成
形や圧縮成形後、脱脂した後、焼結後でもかなりの炭素
と酸素が残留し、特に希土類系磁石の場合、磁気の劣化
を招くので、容易には適用できない。
【0009】また、フェライトなどの酸化物粉末を対象
として、平均粒度1μm以下の粉末に、バインダーとし
て0.6〜1.0wt%のポリビニルアルコールを添加
したのち、スプレードライヤー装置により造粒粉を製造
し、該造粒粉を成形、焼結する方法が知られている。し
かし、それらはいずれも酸化物粉末に対して0.6wt
%以上もの多量のバインダーを使用するもので、脱脂処
理を施したのちの焼結体にもかなりの炭素及び酸素が残
留するため、非常に酸化及び炭化しやすい性質を有し、
少しの酸化あるいは炭化によっても極端に磁気特性が劣
化するこの発明の対象とする希土類含有合金粉末に、上
記のような酸化物を対象とした方法をそのまま適用する
ことはできない。
【0010】特に、酸化物の場合は比較的多量のバイン
ダーを用いても大気中で脱脂、焼結できるため、脱脂、
焼結時にバインダーが燃焼してある程度の残留炭素の抑
制を図ることができるが、この発明の対象とする希土類
含有合金粉末の場合は、酸化により磁気特性が劣化する
ため大気中で脱脂、焼結することができないので、多量
のバインダー添加は得られる焼結磁石の磁気特性に致命
的な悪影響を及ぼすこととなる。このように、成形前の
合金粉末に、種々のバインダーや潤滑剤を添加したり、
さらに造粒を行なって、成形性を改良する試みが種々提
案されてはいるが、いずれの方法によっても、近年要求
されるような、薄肉形状や小型形状でかつ優れた磁気特
性を有する希土類系磁石を製造するのは困難であった。
【0011】この発明は、優れた磁気特性を有する希土
類系磁石を製造するのに必要な造粒粉を容易に製造で
き、希土類含有合金粉末とバインダーとの反応を抑制
し、焼結後の焼結体の残留酸素量、残留炭素量を低減さ
せるとともに、成形時の粉体の流動性、潤滑性を向上さ
せて、成形体の寸法精度の向上及び生産性の向上を図
り、薄肉形状や複雑形状でかつ優れた磁気特性を有する
R−Fe−B系やR−Co系などの希土類系焼結永久磁
石の製造方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】発明者らは、成形性の良
好な造粒粉を容易に製造できる製造方法について種々検
討した結果、回転ディスク型スプレードライヤー装置に
着目し、磁性粉末と所要のバインダーとを添加、混練し
てスラリー状となして、該スラリーを噴霧、乾燥させる
ことにより、該スラリーを所要の平均粒径の造粒粉とな
すことができ、その後、該造粒粉を用いて成形すると、
造粒粉自体が十分な結合力を有するため、粉体の流動性
が格段に向上し、成形体密度のバラツキや成形機の寿命
を低下させることもなく、焼結後の寸法精度にもすぐ
れ、薄肉形状や小型形状でかつすぐれた磁気特性を有す
る希土類系焼結永久磁石が効率よく得られることを知見
した。
【0013】発明者らは、上記の製造方法において、特
に希土類含有合金粉末との反応を抑制でき、焼結体の残
留酸素量、残留炭素量を低減させるバインダーについて
種々検討した結果、ポリビニルアルコール、セルロース
エーテル誘導体、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオ
キサイド、水溶性ポリビニルアセタール、ポリアクリル
酸、ポリアクリル酸誘導体等を用いて、造粒化を行う場
合、その添加量を合金粉末100重量部に対して0.5
重量部以下としても、成形時に金型へ粉末を供給するた
めのフィーダー内における振動にも充分耐えられる程度
の一次粒子の粒子間結合力と、充分な流動性および成形
体強度を得ることができることを知見した。
【0014】また、発明者らは、希土類系合金粉末との
反応を抑制でき、焼結体の残留炭素量、残留酸素量を低
減させる上記のバインダーを用い、スプレードライヤー
装置にて造粒した所要の平均粒径の造粒粉は粉体の流動
性が格段に向上して、焼結後の寸法精度にもすぐれ、薄
肉形状や複雑形状の焼結磁石が得られるが、さらに、優
れた磁気特性を有する焼結磁石を得る方法を種々検討し
た結果、希土類系合金粉末に予め疎水処理を施し、合金
粉末表面に疎水性を付与した後、少なくとも1種以上の
ポリマーと水からなる前記バインダーを用いることによ
り、焼結前の工程における合金粉末とバインダー中の水
との反応を抑制することができ、焼結後の焼結体の残留
酸素量、残留炭素量を大幅に低減できるとともに優れた
残留磁束密度を有する焼結磁石が得られることを知見
し、この発明を完成した。
【0015】すなわち、この発明は、希土類系合金粉末
100重量部に対し疎水剤を0.01〜2重量部添加し
て疎水処理し、次いで少なくとも1種以上のポリマーと
水からなるバインダーを添加、混練してスラリー状とな
し、該スラリーをスプレードライヤー装置により造粒粉
となし、該造粒粉を用いて成形、焼結する粉末冶金法に
より焼結永久磁石を得ることを特徴とする希土類系焼結
磁石の製造方法である。
【0016】希土類含有合金粉末 この発明において、対象とする希土類含有合金粉末は、
希土類元素Rを含有するいずれの組成のものも適用可能
であるが、中でもR−Fe−B系合金粉末や、R−Co
系合金粉末あるいはそれらの合金粉末中の希土類元素以
外の元素を別の元素で置換したもの、例えば、R−Fe
−B系のFeをCo等の遷移金属で、BをCやSi等の
半金属で置換したものなどが最も適している。特に、希
土類含有合金粉末としては、所要組成からなる単一の合
金を粉砕した粉末や、異なる組成の合金を粉砕した後、
混合して所要組成に調整した粉末、保磁力の向上や製造
性を改善するため添加元素を加えたものなど、公知のR
−Fe−B系合金粉末、R−Co系合金粉末を用いるこ
とができる。
【0017】また、その製造方法も、溶解・粉化法、超
急冷法、直接還元拡散法、水素含有崩壊法、アトマイズ
法等の公知の方法を適宜選定することができ、その粒度
も特に限定しないが、合金粉末の平均粒度が1μm未満
では大気中の酸素あるいはバインダー及び溶媒と反応し
て酸化しやすくなり、焼結後の磁気特性を低下させる恐
れがあるため好ましくなく、また、10μmを超える平
均粒径では粒径が大きすぎて焼結密度が95%程度で飽
和し、該密度の向上が望めないため好ましくない。よっ
て1〜10μmの平均粒度が好ましい範囲である。特に
好ましくは1〜6μmの範囲である。
【0018】この発明は、希土類系合金粉末に予め疎水
処理を施し、該合金粉末表面に疎水性を付与することを
特徴とする。疎水性を付与する方法としては、疎水性基
を有する化合物を合金粉末表面に導入する方法が最も簡
便であるが、合金表面と化学結合をもって疎水性化合物
を結合させる場合、より強固な疎水性が付与されるが、
反面後の脱バインダー、焼結工程において、この化学結
合が切れ難く、金属炭化物等の形態で焼結体に残存し、
残留炭素量の増加を招く。その結果、得られる焼結体の
磁気特性(残留磁束密度、固有保磁力)が低下すること
になる。従ってこの発明では、脱バインダー、焼結工程
において容易に合金表面から離脱できる疎水処理方法と
して、合金表面を疎水性基を有する化合物で被覆吸着さ
せる方法が簡便であり好ましい。
【0019】この発明で用いる、合金粉末表面を被覆す
るための疎水性基を有する化合物としては、充分な疎水
性基を有し、合金粉末に対して不活性であり、かつ合金
粉末に対する被覆性が良好であると同時に、優れた脱炭
性を有することが必要である。このような特性を有して
いれば、その化学構造、分子量等に制限はないが、一般
的に高い疎水性を得るためには、疎水性基として長鎖飽
和(不飽和)脂肪族基を有している化合物が特に好まし
い。例えば、C12〜C30の炭化水素、C12〜C30の飽和
(不飽和)脂肪酸、C12〜C30の飽和(不飽和)脂肪酸
アミド、C12〜C30の飽和(不飽和)脂肪酸エステル、
12〜C30の飽和(不飽和)脂肪酸の金属石鹸、C12
30の飽和(不飽和)脂肪族アルコール等である。
【0020】これらの化合物を具体的に例示すると、炭
化水素系化合物としては、C12〜C20程度の流動パラフ
ィン、C20〜C30のパラフィンワックスがあり、脂肪酸
系化合物としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステ
アリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等が
あり、脂肪酸アミド系化合物としては、ステアリルアミ
ド、パルミチルアミド、オレイルアミド等のモノアミ
ド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステア
ロアミド等のジアミドがあり、脂肪酸エステル系化合物
としては、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、
パルミチン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、オレイン酸
ブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸オクチル等の
1価脂肪族アルコールエステルの他、エチレングリコー
ルモノステアレート、エチレングリコールジステアレー
ト、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステア
レート等の多価アルコールエステル等があり、脂肪酸の
金属石鹸としてはウラリン酸、ステアリン酸、パルミチ
ン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のLi、Mg、C
a、Sr、Ba、Zn、Cd、Al、Sn、Pb塩等が
あり、脂肪族アルコール系化合物としては、ラウリルア
ルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、
ミリスチルアルコール等がある。また、これらの成分を
含有する天然ワックスとして、カルナウバロウ、カンデ
リラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタロウ等
を用いることもできる。
【0021】この発明によれば、この希土類系合金粉末
に疎水性を付与する処理として、少なくとも1種の上述
の疎水化剤を希土類系合金粉末に分散混合して、合金粉
末表面を該疎水化剤で被覆し、次いでスラリー化し造粒
粉末を製造し、得られた造粒粉末を焼結永久磁石製造時
のプレス成形工程に成形材料として使用する。これら疎
水化剤の合金粉末への添加混合時期は希土類系合金の微
粉砕前、微粉砕中、および微粉砕後のいずれであっても
よい。
【0022】希土類系合金粉末に疎水化剤として混合被
覆する上述の化合物の添加量は、用いる疎水化剤の親油
性、原料合金粉末の粒径、スラリー混練条件、造粒条件
等に応じて適宜選定すればよいが、添加被覆量が少なす
ぎると、合金粉末表面に付与される疎水性効果が小さく
なり、水との酸化反応抑制効果が充分でなく、また逆に
添加被覆量が多すぎると、後続の脱炭、焼結工程におい
て完全に合金表面から脱離せず、残留炭素量が増加し磁
気特性の低下を招く。このような観点から、疎水化剤の
好ましい添加量は、希土類系合金粉末100重量部に対
して、0.01〜2重量部の範囲、より好ましくは0.
02〜1.0重量部の範囲である。
【0023】また、この発明において、上述の疎水化剤
の合金粉末への混合は、乾式混合と溶剤を用いての湿式
混合のいずれの方式でもよいが、少量の疎水化剤を合金
粉末中に均一に分散させ、合金粉末表面に疎水性を付与
するためには、簡易に混合できる乾式混合の場合が好ま
しい。また、添加混合の時期は、合金粉末の微粉砕工程
の前か後、あるいは微粉砕工程中のいずれでもよい。ま
た、これらの疎水化剤の混合被覆時の温度は室温から5
0℃が適当である。
【0024】この発明において、合金粉末をスラリー状
にするために添加するバインダーはポリマーと水からな
るもので、水に溶解するポリマー成分は、ポリビリルア
ルコール、ポリアクリルアミド、水溶性セルロースエー
テル、ポリエチレンオキサイド、水溶性ポリビニルアセ
タール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体から選
ばれた少なくとも1種が選定される。
【0025】上記ポリビニルアルコール、ポリアクリル
アミド、水溶性セルロースエーテル、ポリエチレンオキ
サイド、水溶性ポリビニルアセタール、ポリアクリル
酸、ポリアクリル酸誘導体から選ばれたポリマーは、そ
の添加量を合金粉末100重量部に対して0.5重量部
以下としても、成形時に金型へ粉末を供給するためのフ
ィーダー内における振動にも充分耐えられる程度の一次
粒子の粒子間結合力と、充分な流動性および成形体強度
を得ることができる。また、少量の添加で均一なスラリ
ーとなし、しかも該スラリー粘度をスプレー造粒を行う
ために好適な粘度に調整することが容易であるととも
に、乾燥後においても高い結合力を保持することがで
き、また添加量が少量でよいため、粉末中の残留酸素
量、残留炭素量を低減することができる。
【0026】この発明で用いるポリマーにおいて、ポリ
ビニルアルコールは水に容易に溶解し、かつ強力な接着
力を有し、化学的安定性、熱分解性にも優れ、圧縮成形
時の潤滑性にも優れ、工業的に安価に入手できることか
ら、この発明に用いるポリマーとして好適である。これ
らの特性を充分に活かすためには、重合度の目安とし
て、20℃、4%水溶液濃度が3〜70cpsのポリマ
ーを用いるのが好ましい。3cps未満の重合度ではポ
リマー自体の破断強度が低くなり、得られる造粒粉の粒
子間結合力が低下し、完全に造粒化せず、一次粒子の微
粉のまま残存することになる。また、70cpsを越え
る重合度においてはスラリー粘度が著しく上昇し、スプ
レードライヤーへの定常的な供給が困難となり生産性が
著しく低下する。また、用いるポリマーの鹸化度は70
〜99モル%が好適である。70モル%未満の鹸化度で
は、残存するアセチル基が多いためポリビニルアルコー
ルが本来有する特性が充分得られず、逆に99モル%を
越える鹸化度を有するポリマーを工業的に入手すること
は困難である。
【0027】この発明で用いるポリマーにおいて、ポリ
アクリルアミドは水に容易に溶解し、かつ強力な接着力
を有し、高い破断強度を有し、化学的安定性にも優れ、
熱分解性にも優れ、圧縮成形時の潤滑性にも優れ、工業
的に安価に入手できることから、本発明に用いるポリマ
ーとして好適である。これらの特性を充分に活すために
は、平均分子量数千〜百万程度のポリマーが好ましい。
数千程度以下の重合度では、ポリマー自体の破断強度が
低くなり、得られる造粒粉の粒子間結合力が低下し、完
全に造粒化せず、一次粒子の微粉のまま残存することに
なる。また、百万程度以上の重合度においてはスラリー
粘度が著しく上昇し、スプレードライヤーへの定常的な
供給が困難となり生産性が著しく低下する。
【0028】この発明で用いるセルロースエーテル誘導
体は、セルース骨格中、1グルコースユニットあたり有
する3個の−OH基をエーテル化剤により一部エーテル
化した水溶性ポリマーである。用いるエーテル化剤によ
り種々のセルロースエーテルが得られるが、例えば、メ
チルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロー
ス、シアンエチルセルロース、トリチルセルロース、カ
ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロ
ース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げら
れる。これらのセルロースエーテルは、水溶性に優れ、
増粘性を備え、界面活性を有し、化学的安定性に優れる
ことから好適である。用いるポリマーの重合度は、エー
テル化の種類、置換度によって異なるが、目安として2
0℃、2%水溶液粘度が、10〜30000cps程度
が好ましい。10cps未満の重合度ではポリマー自体
の破断強度が低くなり、得られる造粒粉の粒子間結合力
が低下し、完全に造粒化せず、一次粒子の微紛のまま残
存することになる。また、30000cpsを越える重
合度においてはスラリー粘度が著しく上昇し、スプレー
ドライヤーへの定常的な供給が困難となり生産性が著し
く低下する。
【0029】この発明で用いるポリマーにおいて、ポリ
エチレンオキサイドは、水に容易に溶解し、加温しても
ゲル化せず、熱分解性も良好であり、スラリー作製時の
粉末の分散性にも優れ、プレス成形時の潤滑性にも優れ
ていることから、この発明に用いるポリマーとして好適
である。これらの特性を充分に活すためには、その平均
分子量が2万〜数百万のものが好ましい。分子量が2万
以下であると、ポリマー自体がロウ状固体から液体とな
り、ポリマー自体の強度が充分でなく、その結果、造粒
工程において乾燥後の合金粒子に対する結合力が不足
し、完全に造粒せず、微粉のまま残存することがある。
また、その分子量が数百万を超えると、結合力は向上す
るが、水溶液粘度が著しく上昇し、スラリー作製時に少
量の添加でもスラリー粘度が高くなるため、回転ディス
クへの供給安定性が悪くなり、得られる造粒粉の粒度分
布が乱れることがある。またこれ以上の分子量のもの
は、工業的に汎用的には製造されておらず、経済的にも
不利である。
【0030】この発明で用いるポリマーにおいて、水溶
性ポリビニルアセタールはポリビニルアルコールとアル
デヒドの縮合反応で得られるポリマーであリ、この反応
で得られるポリマーの特性は、出発原料のポリビニルア
ルコールの分子量、鹸化度、およびアセタール化度等に
より大きく異なる。この発明においては、目的とする結
合力を有するとともに適当なスラリー粘度とスラリー分
散性を得ることができれば、これらの値に制限されるも
のではないが、一般的には鹸化度70〜99モル%、重
合度数百から数千程度のポリビニルアルコールを用い、
数モル%から数十モル%程度をアセタール化したポリマ
ーが好適である。
【0031】この発明で用いるポリマーにおいて、ポリ
アクリル酸、およびポリアクリル酸誘導体は、水溶性の
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびこれらの金
属塩、アンモニウム塩等である。ポリアクリル酸、ポリ
メタクリル酸は無定形であり、非常に硬いポリマーであ
ることから、合金粒子に対して充分な結合力を与え、そ
の結果、少量の添加で造粒性を付与することが可能であ
る。また、それらの塩は、強度的には上記の2種のポリ
マーに比べて劣るものの、解膠作用を有することから、
スラリーの作製工程においてスラリーの均一性を向上さ
せるのに好適である。
【0032】この発明においては、合金粉末に上記ポリ
マーおよび溶媒である水を添加し、攪拌、混練すること
によりスラリーを作製するが、スラリー濃度はスラリー
粘度、合金粉末の分散性、スプレー造粒工程における処
理量等の観点から適宜選択することができるが、一般的
にはスラリー中の合金粉末濃度を40〜80重量%とす
ることが望ましい。40重量%未満では、攪拌混練工程
において固液分離が生じ、スラリーの分散性が低下し、
不均一なスラリーとなるのみならず、攪拌混練槽からス
プレードライヤー装置への供給中に供給パイプ内で沈降
が起こり、得られる造粒粉に造粒化されていない微紛が
混入したり、球状でない造粒になったりする。また、逆
に80重量%を超えるとスラリー粘度が著しく上昇し、
均一な攪拌混練ができないのみならず、攪拌混練槽から
スプレードライヤー装置まで該スラリーを供給できな
い。
【0033】この発明において、スプレードライヤーに
供給するスラリーは、少なくとも合金粉末、上記ポリマ
ーを含むポリマー類、溶媒である水からなるが、この時
添加するポリマー類の添加量は、該合金粉末100重量
部に対して、0.05重量部〜0.7重量部好ましくは
0.05〜0.5重量部である。添加量が0.05重量
部未満では造粒粉内の粒子間の結合力が弱く、粉末中に
未造粒の微紛が混入したり、成形前の給紛時に造粒粉が
壊れるとともに紛体の流動性が著しく低下する。また、
0.7重量部を超えると、焼結体における残留酸素量と
残留炭素量が増加して保磁力が低下し磁気特性が劣化す
るためである。
【0034】この発明においては、合金粉末表面に疎水
性を付与することにより、溶媒である水との酸化反応を
抑制できるが、その効果をさらに高めるためには、用い
る水、脱溶存酸素処理した純水、あるいは窒素等の不活
性ガスでバブリング置換した水を用いることが望まし
い。
【0035】この発明において、合金粉末へのバインダ
ーの添加、該スラリーの撹拌は、0℃〜30℃の温度範
囲で行うことが好ましく、合金粉末と水との酸化反応を
より抑制することができる。逆に30℃を越える温度範
囲の撹拌は、合金粉末と水との酸化反応を促進させ、そ
の結果得られる焼結体中の残存酸素量が増加し、磁気特
性が劣ることになる。従って、撹拌は0℃〜30℃の温
度範囲に保持する必要があり、そのためには予め該温度
に冷却した水を用いたり、撹拌槽を冷却水で保冷する等
の手段などを採用することができる。
【0036】また、上記スラリーに可塑剤を添加するこ
とが好ましい。可塑剤は、造粒化した粉末を用いてプレ
ス成形する際に、少しの力で粉末の形態を永久変形する
ために添加するものである。この発明におけるポリマー
類は、造粒化を容易にするために高い粒子間結合力を有
する。そのため、保形性は優れているものの、プレス成
形時において一定加圧下でも、その保形性を保持するた
め、圧粉体密度が下がったり、時には磁場中成形時にお
いて印加磁場に対して、その優れた粒子間結合力のため
完全に配向せず、その結果得られる焼結体の残留磁束密
度が低下し、磁気特性が劣化する原因となる。
【0037】そこで、ポリマー鎖の分子間相互作用を低
下させ、ガラス転移温度を低くするために可塑剤を添加
する。用いる可塑剤は、その可塑効果、ポリマーとの相
溶性、化学的安定性、物理特性(沸点、蒸気圧等)、合
金粉末との反応性等を考慮して、一般の公知の可塑剤を
用いることができ、本発明のごとく水溶性ポリマーを用
いた水系スラリーの場合には、エチレングリコール、ト
リメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペ
ンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、
プロピレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等を用
いることができる。
【0038】水溶性スラリーへの可塑剤の添加量は、可
塑剤の上記特性により適宜選択できるが、通常スラリー
に添加するポリマー100重量部に対して、2〜100
重量部、好ましくは5〜70重量部である。添加量が2
重量部未満では、可塑効果が充分でなく、磁場中での配
合性が向上せず得られる焼結体の磁気特性(残留磁束密
度)が低下する。一方、100重量部を越える添加で
は、粒子間結合力が低下し、造粒性が低下し流動性が低
下するのみならず、これら水溶性可塑剤は一般的に吸湿
性が高いため、造粒工程での乾燥性が低下し粉末中の残
留水分が増加し酸化の原因になったり、粉末の保管中に
吸湿するといった問題を生じる。さらに必要に応じて、
解膠剤(分散剤)、滑剤、消泡剤、表面処理剤等の添加
剤を、焼結体の残留炭素濃度が大きく増加しない範囲で
添加することが可能である。
【0039】スプレードライヤー装置 この発明において、合金粉末に後述するバインダーを添
加、混練したスラリーは、スプレードライヤー装置によ
って造粒粉にする。まず、スプレードライヤー装置を用
いた造粒粉の製造方法を説明すると、スラリー撹拌機か
らスラリーをスプレードライヤー装置に供給する、例え
ば、回転ディスクの遠心力で噴霧したり、加圧ノズル先
端部で霧状に噴霧され、噴霧された液滴は、加熱された
不活性ガスの熱風によって瞬時に乾燥されて造粒粉とな
り、回収部内の下部に自然落下する。
【0040】この発明において、スプレードライヤー装
置として回転ディスク型には、ベーン型、ケスナー型、
ピン型等種々のタイプがあるが、原理的にはどのタイプ
でも、上下2枚のディスクから構成され、そのディスク
が回転する構造となっている。スプレードライヤー装置
全体の構成としては、公知の開放型スプレードライヤー
装置を用いてもよいが、造粒する磁性粉末が希土類含有
合金粉末は非常に酸化し易いために、装置のスラリー収
納部内あるいは造粒粉の回収部内を不活性ガスなどで置
換でき、かつその酸素濃度を常時3%以下に保持できる
密閉構造であることが好ましい。
【0041】また、スプレードライヤー装置の回収部内
の構成としては、上述した回転ディスクにより噴霧され
た液滴を瞬時に乾燥させるために、回転ディスクの上方
に加熱された不活性ガスを噴射する噴射口を配置し、ま
た回収部内の下部に、噴射されたガスを回収部外へ排出
する排出口を設けるが、その際、予め装置外部あるいは
装置に付属された加熱器で所要温度に加熱された不活性
ガスの温度を低下させないように、上記噴射口を不活性
ガスの温度に応じた温度、例えば60〜150℃に保持
することが好ましい。
【0042】すなわち、不活性ガスの温度が低下する
と、噴霧された液滴を短時間で十分乾燥することができ
なくなるため、スラリーの供給量を減少させなければな
らず能率が低下してしまう。また、比較的大きな粒径の
造粒粉を作る場合は、回転ディスクの回転数を低下させ
るが、その際に不活性ガスの温度が低下していると、噴
霧された液滴を十分乾燥することができないので、結果
としてスラリーの供給量を減少させることにより、大き
な粒径の造粒粉を得る場合には極端に能率が低下するこ
とになる。従って、予め加熱された不活性ガスの温度を
そのまま維持しながら回収部内へ送り込むには、噴射口
の温度を60〜150℃に保持することが好ましく、特
に100℃前後に保持することが最も好ましい。
【0043】また、不活性ガスの噴射口と排出口の温度
差が小さい場合も処理能率が低下する傾向があるので、
排出口の温度は50℃以下、好ましくは40℃以下、特
に好ましくは常温に設定することが望ましい。不活性ガ
スとしては、窒素ガスやアルゴンガスが好ましく、加熱
温度は60〜150℃が好ましい。
【0044】得られる造粒粉の粒度は、スプレードライ
ヤー装置へ供給するスラリーの濃度やその供給量、ある
いは回転ディスクの回転数によって制御することができ
るが、例えば、希土類含有合金造粒粉の平均粒径が10
μm未満では、造粒粉の流動性がほとんど向上せず、ま
た、平均粒径が400μmを超えると、粒径が大きすぎ
て成形時の金型内への充填密度が低下するとともに成形
体密度も低下し、ひいては、焼結後の焼結体密度の低下
を来たすこととなるため好ましくなく、よって、造粒粉
の平均粒径は10〜400μmが好ましい。さらに好ま
しくは40〜200μmである。
【0045】また、ふるいによりアンダーカット、オー
バーカットを行うことにより、さらに極めて流動性に富
んだ造粒粉を得ることができる。さらに、得られた造粒
粉にステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ス
テアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ほ
う酸エステル類等の潤滑剤を少量添加することにより、
さらに流動性を高めることも可能である。
【0046】焼結永久磁石の製造方法 この発明による造粒粉を用いて焼結永久磁石を製造する
工程、すなわち、成形、焼結、熱処理など条件、方法は
公知のいずれの粉末冶金的手段を採用することができ
る。以下に好ましい条件の一例を示す。成形は、公知の
いずれの方法も用いることができるが、圧縮成形で行う
ことが最も好ましく、その圧力は0.3ton/cm2
〜2.0ton/cm2程度が好ましい。また、磁気異
方性を有する焼結磁石を得る場合、従来と同様に、磁場
コイル等を付設した金型を用いて、プレス成形中に金型
内の造粒粉末に所定の横磁場または縦磁場を印加して、
磁性粉末の磁化容易方向が揃うように合金粉末を回転さ
せる。この場合の磁場強度としては10〜20kOeが
好ましい範囲である。
【0047】つぎに、このようにして得られた成形体を
脱バインダー処理を施すことが好ましい。例えば、焼結
前に真空中で加熱する一般的な方法や、水素気流中で1
00〜200℃/時間で昇温し、300〜600℃で1
〜2時間保持する方法などにより、容易に脱バインダー
処理を行うことが可能である。脱バインダー処理を施す
ことにより、バインダー中のほぼ全炭素が脱炭され、磁
気特性が向上する。
【0048】なお、R元素を含む合金粉末は、水素を吸
蔵しやすいために、水素気流中での脱バインダー処理後
には脱水素処理を行うことが好ましい。脱水素処理は、
真空中で、50〜200℃/時間の昇温速度で昇温し、
500〜800℃で1〜2時間程度保持することによ
り、吸蔵されていた水素はほぼ完全に除去される。な
お、脱水素処理後は、引き続いて昇温加熱して焼結を行
うことが好ましく、500℃を越えてからの昇温速度は
任意に選定すればよく、例えば100〜300℃/時間
など、焼結に際して一般的に採用される公知の昇温方法
が可能である。
【0049】脱バインダー処理後の成形品の焼結並びに
焼結後の熱処理条件は、選定した合金粉末組成に応じて
適宜選定されるが、例えばR−Fe−B系磁石の場合で
あれば、焼結並びに焼結後の熱処理条件としては、10
00〜1200℃、1〜6時間保持する焼結工程、45
0〜800℃、1〜8時間保持する時効処理工程などが
好ましい。
【0050】さらに、希土類含有合金粉末がR−Fe−
B系合金粉末の場合、該粉末中のR成分とバインダー及
び有機溶媒との反応を抑制するために、従来の粉末冶金
法で一般的に使用されている所要の単一組成のR−Fe
−B系合金原料粉末の代わりに、R2Fe14B相を主相
とする平均粒径1〜10μmの主相系合金粉末と、R3
Co相を含むCoまたはFeとRとの金属間化合物相に
一部R2(FeCo)14B相等を含みかつ希土類含有量
が多く、極力有機バインダーとの反応を抑えるように主
相系合金より平均粒径の大きい平均粒径8〜40μmの
液相系化合物粉末の2種類の原料粉末を用いることによ
り、焼結後の残留酸素量を低減できる。
【0051】
【作用】この発明による焼結永久磁石の製造方法の作用
を図面に基づいて詳述する。図1はこの発明で用いる回
転ディスク型スプレードライヤー装置のディスク部を示
す部分説明図である。図1に示す回転ディスク1は、一
対のディスク2,2を、複数の所要長さの非磁性材ピン
3を円周部に所定間隔で立設配置しナット4で固定し
て、所定の対向距離を保持させてあり、この回転ディス
ク1の中心に回転シャフト5を配置して周辺部をスラリ
ー供給口となした構成のピン型回転ディスクである。密
閉構造からなる図示しないチャンバー内に回転ディスク
1が回転駆動可能に水平配置され、回転ディスク1上方
の所要位置には不活性ガスのノズルが下方に噴霧可能に
配置され、チャンバーの下方が造粒粉の回収部となって
いる。
【0052】R−Fe−B系合金粉末やR−Co系合金
粉末等の希土類系磁性粉末は、該希土類系合金の微粉砕
前、微粉砕中、および微粉砕後のいずれかにおいて、少
なくとも1種の疎水化剤が添加されて、分散混合するこ
とにより、該合金粉末表面を該疎水化剤で被覆してあ
る。この磁性粉末に所定のバインダーを添加、撹拌した
スラリーは、スラリー撹拌機から当該スプレードライヤ
ー装置に供給され、スラリーは回転ディスク1の遠心力
により噴霧される。噴霧された液滴は、加熱された不活
性ガスの熱風によって瞬時に乾燥されて造粒粉となり、
回収部内の下部に自然落下する。
【0053】すなわち、合金粉末表面を該疎水化剤で被
覆してある希土類含有合金粉末に、水溶性ポリマー、さ
らに必要に応じて添加する可塑剤と水からなるバインダ
ーを、添加、混練してスラリー状となし、該スラリーを
上記構成からなるスプレードライヤー装置により平均粒
度10μm〜400μmの流動性の高い球状の造粒粉と
なすことにより、バインダー自体のすぐれた流動性とも
相まって、粉体の流動性が格段に向上し、成形サイクル
が向上するとともに、成形体密度のバラツキや成形機の
寿命を低下させることもなく、焼結後の寸法精度にもす
ぐれる、薄肉形状や複雑形状が得られ、かつ合金粉末表
面への疎水性付与効果により、スラリー混練中の溶媒で
ある水との酸化反応が大幅に抑制される結果、得られる
焼結体の残留酸素量が大幅に低減される結果、磁気特性
(残留磁束密度)が大きく向上する。
【0054】なお、この発明における造粒粉は、それ自
体は等方性であるので、磁場を印加せずに成形した場合
は当然のことながら等方性の成形体になるが、磁場を印
加しながら成形すると、圧縮応力と磁場の作用によっ
て、造粒粉が壊れて元の一次粒子となり、該一次粒子が
磁場によって配向し、異方性の成形体が得られるので、
用途に応じて等方性磁石と異方性磁石の両方を製造する
ことができるという利点も有する。さらに、この発明に
おける造粒粉は、バインダーによって被覆されているた
め、大気中において酸化し難いので、成形工程における
作業性が向上するという利点も有する。
【0055】
【実施例】
実施例1 Nd:13.3原子%、Pr:0.31原子%、Dy:
0.28原子%、Co:3.4原子%、B:6.5原子
%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる原料を、
Arガス雰囲気中で高周波溶解して、ボタン状溶製合金
を得た。次に、該合金を粗粉砕した後、ジョークラッシ
ャーなどにより平均粒度15μmに粉砕し、さらにジェ
ットミルにより平均粒度3μmの粉末を得た。得られた
粉末に、流動パラフィンを合金粉末100重量部に対し
て、0.01重量部添加混練して疎水処理を施した。そ
の後さらに、ポリマーとして、ポリエチレンオキサイド
(平均分子量:500000)を用い、合金粉末100
重量部に対して、水、可塑剤を表1に示す組成で配合
し、室温で撹拌混練を行うことによりスラリーを作製
し、該スラリーをディスク回転型スプレードライヤー装
置により、不活性ガスとして窒素を用い、熱風入口温度
を100℃、出口温度を40℃に設定して造粒を行っ
た。得られた造粒粉を、#440のふるいにより微粒子
をアンダーカットし、また、#70のふるいにより粗粒
子をオーバーカットした。該造粒粉の平均粒度を表1に
示す。
【0056】上記造粒粉末を圧縮磁場プレス機を用い
て、磁場強度15kOe、圧力1ton/cm2で10
mm×15mm×厚み10mmの形状に成形した後、水
素雰囲気中で100℃/時間の昇温速度で、室温から3
00℃まで加熱し脱バインダー処理を行った。引き続い
て真空中で1100℃まで昇温し1時間保持する焼結を
行い、さらに焼結完了後、Arガスを導入して7℃/分
の速度で800℃まで冷却し、その後100℃/時間の
速度で冷却して550℃で2時間保持することにより時
効処理を施し、異方性の焼結体を得た。成形時の造粒粉
の流動性、および得られた焼結磁石の磁気特性を表1に
示す。なお、流動性は、内径5mmのロートの管を50
gの粉末が自然落下し通過するまでに要した時間で測定
した。また、得られた焼結体には、割れ、ヒビ、変形な
どは全く見られなかった。
【0057】実施例2〜実施例10 実施例1で用いた合金粉末を用い、表1に示す種々の疎
水化処理剤、バインダー成分に代えて、実施例1と同様
に疎水化処理、造粒化、成形、脱バインダー、焼結、熱
処理を施し、焼結体を作製した。実施例1と同様の試験
結果を表1に示す。また、これら実施例2〜10におい
て得られた焼結体には、割れ、ヒビ、変形などは全く見
られなかった。
【0058】比較例1 実施例1で用いた合金粉末を、疎水化処理せずに造粒を
行い、実施例1と同様に焼結磁石を作製した。実施例1
と同様の試験結果を表1に示す。
【0059】比較例2〜比較例3 実施例1で用いた疎水化処理剤、バインダー成分にかえ
て、表1に示す疎水化処理剤、およびその添加量、バイ
ンダー成分を用いた点を除き、実施例1と同様に疎水化
処理、造粒化、成形、脱バインダー、焼結、熱処理を施
し、焼結体を作製した。実施例1と同様の試験結果を表
1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】実施例11〜実施例20 Sm11.9at%、Cu8.8at%、Fe12.6
at%、Zr1.2at%、残部Co及び不可避的不純
物からなる原料を、Arガス雰囲気中で高周波溶解し
て、ボタン状溶製合金を得た。次に、該合金を粗粉砕し
た後、ジョークラッシャーなどにより平均粒度約15μ
mに粉砕し、さらにジェットミルにより平均粒度3μm
の粉末を得た。得られた粉末に、表2に示す疎水化処理
剤を用いて添加混練して疎水処理を施し、その後さら
に、表2に示す添加量のポリマー、有機溶媒、可塑剤を
添加して室温で混練、撹拌してスラリー状となし、該ス
ラリーをディスク回転型スプレードライヤー装置によ
り、不活性ガスに窒素を用い、熱風入口温度を100
℃、出口温度を40℃に設定して造粒を行なった。
【0062】該造粒粉を圧縮磁場プレス機を用いて、磁
場強度15kOe、圧力1ton/cm2で10mm×
15mm×厚み10mmの形状に成形した後、水素雰囲
気中で室温から300℃までを昇温速度100℃/時で
加熱する脱バインダー処理を行ない、引き続いて真空中
で1200℃まで昇温し1時間保持する焼結を行ない、
さらに焼結完了後、1160℃にて溶体化処理を施し、
Arガスを導入して800℃から400℃まで多段時効
処理を施した。成形時の造粒粉の流動性、及び得られた
焼結磁石の残留酸素量、残留炭素量、磁気特性を表2に
示す。なお、流動性は、内径5mmのロートの管を50
gの原料粉が自然落下し通過するまでに要した時間で測
定した。また、得られた焼結体には、ワレ、ヒビ、変形
などは全く見られなかった。
【0063】比較例4 実施例11で用いた合金粉末を、疎水化処理せずに造粒
を行い、実施例11と同様に焼結磁石を作製した。実施
例11と同様の試験結果を表2に示す。
【0064】比較例5〜比較例6 実施例11で用いた疎水化処理剤、バインダー成分にか
えて、表2に示す疎水化処理剤、およびその添加量、バ
インダー成分を用いた点を除き、実施例11と同様に疎
水化処理、造粒化、成形、脱バインダー、焼結、熱処理
を施し、焼結体を作製した。実施例11と同様の試験結
果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】表1、表2から明らかなように、この発明
によれば、希土類系合金粉末表面に予め疎水性を有する
化合物を混合被覆した後、スプレー造粒により流動性に
優れた造粒粉末を製造し、該造粒粉末を用いて成形、焼
結することにより、疎水化処理による合金粉末表面への
疎水性付与効果により、スラリー中の溶媒である水と合
金粉末との酸化反応を抑制できることから、得られる焼
結体の残留酸素量が大幅に低減でき、その結果得られる
焼結体の磁気特性(残留磁束密度、最大エネルギー積)
が大幅に向上する。
【0067】また、表1、表2に示す比較例から明らか
なように、疎水化処理剤を用いない場合、あるいは本発
明の範囲以下においては疎水性付与の効果はあまり見ら
れず、そのためスラリー混練中に合金粉末が水により酸
化され得られる焼結体の残留酸素量が増大し、磁気特性
が低下する。一方、疎水化処理剤を本発明の範囲を越え
て過剰に添加した場合、酸化反応は抑制されるものの、
残留炭素量が著しく増大し、磁気特性が低下する。
【0068】
【発明の効果】この発明による希土類系焼結永久磁石の
製造方法は、希土類系合金粉末に所定量の疎水化剤を添
加して疎水処理し、次いで少なくとも1種以上のポリマ
ーと水からなるバインダーを添加、混練してスラリー状
となし、該スラリーをスプレードライヤー装置により平
均粒度10μm〜400μmの流動性の高い球状の造粒
粉となし、該造粒粉を用いて、成形、焼結、熱処理する
ため、造粒粉のバインダー自体の優れた流動性とも相ま
って、粉体の流動性が格段に向上し、成形サイクルが向
上するとともに、成形体の密度のばらつきや成形機の寿
命を低下させることもなく、さらに予め疎水化処理した
合金粉末を用いているため、造粒工程時のスラリー混練
中において、水と合金粉末との酸化反応が抑制され、残
留酸素量が少なく、磁気特性に優れ、かつ寸法精度にも
優れる複雑形状や薄肉形状の希土類系焼結磁石が効率よ
く得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に用いる回転ディスク型スプレードラ
イヤー装置の回転ディスク部を示す部分説明図である。
【符号の説明】
1 回転ディスク 2 ディスク 3 非磁性材ピン 4 ナット 5 回転シャフト

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類系合金粉末100重量部に対し疎
    水剤を0.01〜2重量部添加して疎水処理し、次いで
    少なくとも1種以上のポリマーと水からなるバインダー
    を添加、混練してスラリー状となし、該スラリーをスプ
    レードライヤー装置により造粒粉となし、該造粒粉を用
    いて成形、焼結する粉末冶金法により焼結永久磁石を得
    ることを特徴とする希土類系焼結磁石の製造方法。
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