JPH09138940A - 磁気記録媒体とその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体とその製造方法

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JPH09138940A
JPH09138940A JP7314911A JP31491195A JPH09138940A JP H09138940 A JPH09138940 A JP H09138940A JP 7314911 A JP7314911 A JP 7314911A JP 31491195 A JP31491195 A JP 31491195A JP H09138940 A JPH09138940 A JP H09138940A
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signal
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JP7314911A
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English (en)
Inventor
Sadaichi Isshiki
貞一 一色
Masayuki Hatano
真之 波多野
Junichi Hashimoto
潤一 橋本
Etsushi Kanda
悦史 神田
Ikuo Naruse
育男 成瀬
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Toppan Infomedia Co Ltd
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Tokyo Magnetic Printing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 偽造や変造等の不正行為に対して高い安全性
を要求される磁気記録媒体及びその製造方法に関し、複
数の磁性層を積層して成り、その内の少なくとも一つの
磁性層に書き換え不能な固定パターンを読み出し効率良
く形成すること。 【解決手段】 基体上に、少なくとも、磁気記録再生が
可能な第1の磁性層と、保磁力が前記第1の磁性層と同
等以下で且つ4000 Oe以下の磁性粒子をバインダ
中に分散してなり、前記第1の磁性層に記録された信号
による磁界並びに配向磁界の影響により、前記信号の磁
化の方向に対応して磁性粒子の存在が密なる部分と疎な
る部分とが互いに隣接して交互に形成された書き換え不
能な固定パターンが記録されている第2の磁性層とを積
層してなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリペイドカード
等のように、偽造や変造等の不正行為に対して高い安全
性を要求される磁気記録媒体及びその製造方法に関する
ものであり、特に複数の磁性層を積層して成り、その内
の少なくとも一つの磁性層に書き換え不能な固定パター
ンを形成した磁気記録媒体及びその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年急速に普及したプリペイドカードを
はじめとする各種磁気カードは、その普及にともなって
偽造・変造などの不正行為に対する安全性が強く求めら
れるようになってきている。磁気カードの安全性を高め
るための手段としては、通常の磁気記録再生領域とは別
の箇所に、書き換えが困難な固定パターンを媒体固有の
識別情報として付与することが提案されている。例えば
特公昭49−37529号公報にあるように、針状磁性
粉の磁化容易軸の配列方向を媒体の読み取り方向に対し
て規則的に変化させて磁気パターンを設けた磁気記録媒
体や、特開昭50−79311号公報にあるように、通
常の磁性層に磁気記録された信号磁界の作用下に、磁性
粒子を分散した磁性塗料を塗布して下層の情報に支配さ
れた磁性粒子の配向を物理的に固定した媒体、特開平7
−29157号公報にあるように磁気記録された磁性層
の上に、保磁力が100 Oe以下の磁性粒子を分散し
た磁性塗料を塗布することにより、信号の記録パターン
の磁化反転部に磁性粒子を集中させて物理的に固定した
媒体、特開平5−318974号公報にあるように、通
常の磁性層に磁気記録された情報を、その上に積層され
た保磁力が4500 Oe以上の高保磁力の磁性粒子を
有する磁性層に転写させることにより、通常用いられる
磁気ヘッドでは書き換えが困難な情報を付与した媒体な
どが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
49−37529号公報に開示されている磁気記録媒体
は、媒体を製造する時には特殊な配向装置を必要とし、
更に通常の読み取り方法では読み取り出力が低く、読み
取りに当たっても特殊な部品や装置を必要とするので製
造コストおよび読み取り装置のコストがアップするとい
う問題を有している。一方、特開昭50−79311号
公報および特開平7−29157号公報に開示されてい
る媒体は、下層に記録された信号から発生する磁界のみ
の影響下で磁性粒子の配向や分散を物理的に固定するた
め、固定パターンの読み取り出力が低いという欠点を有
している。また、特開平5−318974号公報に開示
されている媒体も読み取り出力が低いという欠点の他
に、固定パターンが通常の磁気ヘッドでは飽和磁化が困
難な4500 Oe以上の高保磁力磁性層中に形成され
ているため、固定パターン部の残留磁化状態を制御し
て、必要なときのみ固定パターンを読み出すことができ
ず、例えば磁気造影剤等を使用することにより固定パタ
ーンが目視できてしまうという問題点をも有している。
この問題点を解決するために、本発明者らは特願平6−
11319号および特願平6−209326号により、
少なくとも2つの磁性層を積層してなり、そのうちの少
なくとも一つの磁性層はバインダ中に保磁力が4000
Oe以下の磁性粒子を分散してなり、他の磁性層に記
録された信号磁界並びに配向磁界の影響により作製さ
れ、磁性粒子の含有率が交互に異なることにより形成さ
れた書き換え不能な固定パターンが記録された磁気記録
媒体とその製造方法を提案した。しかし、その後鋭意研
究を続けた結果、前記少なくとも一つの磁性層(第2の
磁性層)の保磁力は前記他の磁性層(第1の磁性層)の
保磁力と同等以下でないと十分な特性が得られず、また
第2の磁性層を塗布する際に印加する配向磁界の向き
は、塗布面に対して略水平である場合に限らず、第1の
磁性層に記録した信号の残留磁化の方向に対して略平行
であれば十分な効果が得られるという知見を得た。本発
明は上記従来技術の改良を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、基体上に、少なくとも、磁気記録再生が可
能な第1の磁性層と、保磁力が前記第1の磁性層と同等
以下で且つ4000Oe以下の磁性粒子をバインダ中に
分散してなり、前記第1の磁性層に記録された信号によ
る磁界並びに配向磁界の影響により、前記信号の磁化の
方向に対応して磁性粒子の存在が密なる部分と疎なる部
分とが互いに隣接して交互に形成された書き換え不能な
固定パターンが記録されている第2の磁性層とを積層し
てなることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。前記
書き換え不能な固定パターンは、磁性粒子が密なる部分
と疎なる部分の長さがそれぞれ異なるパターンとして記
録することができる。
【0005】本発明はまた、前記磁気記録媒体の製造方
法であって、先ず基体上に磁気記録再生が可能な磁性材
料から成る第1の磁性層を形成し、次いで前記第1の磁
性層に、所定の信号を磁気記録し、その後保磁力が前記
第1の磁性層と同等以下で且つ4000 Oe以下の磁
性体をバインダ中に分散して作製した磁性塗料を塗布
し、前記磁性塗料が乾燥固化する前に、前記第1の磁性
層に記録された信号が減衰しない程度の磁界強度で、且
つ方向が第1の磁性層に記録した信号の残留磁化の方向
に対して略平行であり且つ実質的に一定である磁場配向
処理を施し、しかる後に前記磁性塗料を乾燥固化するこ
とにより、第1の磁性層に記録された信号の磁化の方向
に対応して磁性粒子の存在が密なる部分と疎なる部分と
が互いに隣接して交互に形成された書き換え不能な固定
パターンを第2の磁性層中に形成することを特徴とする
磁気記録媒体の製造方法を提供する。また、第1の磁性
層に記録した信号の残留磁化の方向が塗布面に対して垂
直方向(垂直記録)、または垂直方向にも磁化成分を有
する場合は、前記第2の磁性層を配向するための配向手
段として、異極同士を近接して対向配置した永久磁石を
用いると都合がよい。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明
を詳細に説明する。図1は本発明に使用する磁気記録媒
体の一例を示す平面図である。図2は図1のX−Xに沿
う部分の断面図である。図1、図2において、磁気記録
媒体1は、基体2の上に磁気記録再生可能な第1の磁性
層3と、前記第1の磁性層と同一または異なる磁性材料
からなる第2の磁性層4とが順次積層されて構成されて
いる。第2の磁性層4には、例えば媒体を特定するため
の識別情報や、媒体で使用することが出来る金額や度数
を表す価値情報としての固定パターンが記録された固定
信号トラック5が設けられている。この固定信号トラッ
ク5には、磁性粒子の存在が密なる部分4Aと磁性粒子
の存在が疎なる部分4Bとが交互に形成されている。
【0007】図3は本発明の磁気記録媒体の製造方法の
一例を示す概略図である。図において10はロール状に
巻かれた基体2を送り出すための巻き出し装置、11は
第1の塗工ヘッド、12は第1の磁性層を形成するため
の第1の磁性塗料、13は第1の磁性層に配向処理を施
すための第1の配向装置、14は第1の磁性層を乾燥固
化するための第1の乾燥装置、15は第1の磁性層に固
定パターンを作製するための信号を書き込むための磁気
ヘッド、16は第2の塗工ヘッド、17は第2の磁性層
を形成するための第2の磁性塗料、18は第2の磁性層
に固定パターンを形成するための第2の配向装置、19
は第2の磁性層を乾燥固化するための第2の乾燥装置、
20は第1及び第2の磁性層が塗布された基体を巻き取
るための巻き取り装置である。
【0008】本発明の磁気記録媒体1は、以下の方法で
製造することができる。巻き出し装置10より送り出さ
れた基体2に、第1の塗工ヘッド11で第1の磁性塗料
12を塗布し、その後例えば同極性の永久磁石を近接し
て対抗配置してなる第1の配向装置13で配向処理を施
し、続いて第1の乾燥装置14により乾燥固化して先ず
第1の磁性層3を形成する。この第1の磁性層3に、磁
気ヘッド15で所定の信号を磁気記録する。次に第2の
塗工ヘッド16で第2の磁性塗料17を塗布し、その直
後に例えばソレノイドコイルなどよりなる第2の配向装
置18で、第1の磁性層3に記録した信号の残留磁化の
方向に対して平行(図3の場合は、塗布面に対して平
行)で、実質的に一定方向の配向磁界を加える。その後
第2の乾燥装置19で第2の磁性塗料17を乾燥固化さ
せると、第2の磁性層4には第1の磁性層3に記録した
信号の磁化の向きおよび長さに従って磁性粒子の存在が
密なる箇所と疎なる箇所とが交互に形成される。その
後、第1及び第2の磁性層が形成された基体2は巻き取
り装置20に巻き取られる。
【0009】図4の(A)〜(D)は、本発明による磁
気記録媒体に、書き換え不能な固定パターンを形成する
過程を詳しく説明するための図である。図4の(A)
は、第1の磁性層3に、固定パターン作製用の信号を記
録した後の、第1の磁性層3の磁化状態及びその読み取
り波形を示す図である。この信号は、図中実線の矢印で
示すように残留磁化の方向が交互に必ず反転するよう、
磁気ヘッドを用いて磁気記録されている。記録信号の符
号化方式は、後述する理由により、所定の長さの中に必
ず磁化反転が存在する方式である必要があり、記録密度
にもよるが一般にはFM、PM、MFMなどが使用され
る。この記録信号をリング型磁気ヘッドで読み取ると、
図で示すように記録信号の磁化が反転する箇所で正およ
び負のパルスが交互に発生する。図4の(B)は、この
第1の磁性層3の上から第2の磁性塗料を塗布し、乾燥
前に所定の方向の配向磁界(図では右向きの矢印で示し
た)を印加したときの、第2の磁性層4に加わる磁界の
向きを模式的に示した図である。参照番号4A’の箇所
では、配向磁界の向きと第1の磁性層に記録した信号か
ら発生する信号磁界の向きとが一致するので、両者が足
し合わされて磁界強度は大きくなる。参照番号4B’の
箇所では、配向磁界と信号磁界の向きが逆向きとなるた
めそれぞれの磁界が打ち消しあって第2の磁性層4に加
わる磁界強度は小さくなる。つまり、第2の磁性層4に
は、第1の磁性層3に記録された信号の磁化の方向に従
って強い磁界の箇所4A’と弱い磁界の箇所4B’とが
交互に現れる。流動状態にある磁性粒子は、磁界の弱い
箇所から強い箇所に集中するので、図4の(C)に示す
ように第2の磁性層中の磁性粒子は、磁界の弱い箇所4
B’から強い箇所4A’に移動し、その結果、第2の磁
性層4には第1の磁性層3に記録した信号の磁化の方向
に従って、磁性粒子の密なる部分と疎なる部分とが交互
に形成される。この状態で第2の磁性塗料を乾燥固化さ
せ、その後第1の磁性層に記録した信号を消去すると、
図4の(D)に示すように、磁性粒子の疎密による固定
パターンをもつ第2の磁性層4が形成される。密なる部
分(4A)と疎なる部分(4B)のそれぞれの長さは、
第1の磁性層3に記録した信号のそれぞれの磁化の方向
の長さに対応して形成されるので、信号の符号化方式に
前述のようなFM、PM、MFM等を使用すると、密な
る部分(4A)と疎なる部分(4B)のそれぞれの長さ
の違いによって符号化された固定パターンが形成され
る。この固定パターンの読み取り波形は、図4の(D)
に示すように、磁性粒子の存在が密なる部分(4A)と
疎なる部分(4B)との境界部分で、密から疎、疎から
密に応じて正と負のパルスが交互に発生する。図から明
らかなように、磁性粒子の密なる部分(4A)と疎なる
部分(4B)との境界は、第1の磁性層3に記録した信
号の磁化反転箇所と一致するので、この波形は図4の
(A)に示した第1の磁性層3に記録された信号からの
読み取り波形とほぼ相似な形状となる。
【0010】上述の通り、第2の磁性層4に形成される
固定パターンは、第1の磁性層3に記録した信号磁界と
外部から印加する配向磁界との合成磁界の強弱で決定さ
れる。而るに、第1の磁性層3に記録した信号の磁化反
転間隔が広い場合は、磁化反転部分からの距離が離れた
箇所では信号磁界強度が弱くなり、配向磁界を印加した
ときの記録信号の磁化方向の違いによる合成磁界強度の
差が少なくなる。そのため、磁性粒子は磁化反転部分近
傍にしか集中しなくなる。磁化反転間隔が1mm以内で
ある場合は、隣接する磁化反転部分の間での合成磁界強
度の差が確保されるので本発明の効果は有効に現れる
が、この効果は磁化反転間隔が短くなるほど顕著にな
る。従って、本発明においては、第1の磁性層3に記録
する信号の磁化反転間隔、すなわち第2の磁性層4に形
成された磁性粒子の存在が密なる部分及び疎なる部分の
読み取り方向の長さは、それぞれ1mm以内、より好ま
しくは0.25mm以内とするのが良い。
【0011】図5の(A)及び(B)は、信号を記録し
た第1の磁性層3の上に第2の磁性塗料を塗布する際に
配向磁界を印加しない従来技術を説明するための図であ
る。図5の(A)は、所定の信号を磁気記録した第1の
磁性層3の上に、第2の磁性層6を塗布したときの状態
を示した図である。配向磁界を印加しない場合は、第1
の磁性層3に記録した信号の磁化反転部分のみに磁束が
集中しているので、塗料中の磁性粒子は図に示したよう
に、磁化反転部近傍に集中する。図5の(B)は、この
状態で塗料を乾燥固化させ、その後第1の磁性層3に記
録した信号を消去したときの状態及びその読み取り波形
を示す図である。第1の磁性層3に記録した信号の磁化
反転部近傍には、磁性粒子の密なる部分(6A)が生
じ、固定パターンが形成されている。しかし、この場合
の密なる部分(6A)の長さは、本発明とは異なり記録
信号の磁化反転間隔の如何に関わらずほぼ一定となる。
この固定パターンの読み取り波形は、図の5(B)に示
すように磁性粒子の密なる箇所(6A)の両端で正負1
対のパルスが発生する。この波形と、図4の(A)に示
した第1の磁性層3に記録した信号の読み取り波形とは
全く異なる形状となっている。すなわち、本発明の固定
パターンからは、図4の(D)に示したように第1の磁
性層3に記録した信号の読み取り波形とほぼ相似の波形
が得られるのに対し、従来技術では第1の磁性層3に記
録した信号の磁化反転毎に正負1対のパルスが再生され
る。従って、本発明の磁気記録媒体に記録されている固
定信号の読み取りに当たっては、通常の磁気記録信号を
読み取るための、従来からの読み取り回路がそのまま使
用することができるという利点がある。
【0012】以上の説明から明らかなように、図3で示
した製造方法において、第2の磁性層4を塗布する際に
使用する第2の配向装置18としては、該装置を通過中
に配向磁界の方向が、第1の磁性層3に記録した信号の
残留磁化の方向に対しほぼ平行で且つ乾燥固化するまで
実質的に一定であることが望ましく、残留磁化の方向が
塗布面に対して平行方向(長手記録)の場合は、ソレノ
イドコイルまたは図6に示すような構造の1対のヨーク
20付き永久磁石22を使用することができる。また、
第1の磁性層3に記録した信号の残留磁化の方向が塗布
面に対して垂直方向(垂直記録)、または垂直方向にも
磁化成分を有する場合は、第2の配向装置18として
は、図7に示すような異極同士を近接して対抗配置した
永久磁石を用いることができる。図8の(A)及び
(B)はそのときに第2の磁性層4に固定パターンが形
成される様子を説明するための図である。この場合も、
第1の磁性層3に記録された信号から発生する磁界の方
向と配向磁界の方向とが一致した箇所(4A’)には、
乾燥固化後に磁性粒子の密なる部分(4A)が形成さ
れ、両者の向きが逆向きの箇所(4B’)には、乾燥固
化後に磁性粒子が疎なる部分(4B)が形成される。更
に、図3で示した製造方法においては、第1の磁性層3
に記録した信号から発生する信号の残留磁化の方向と略
平行で且つ実質的に一定な配向磁界の影響下第2の磁性
層4を塗布するとより特性が向上する。
【0013】これまでの説明では、塗工部と乾燥装置を
それぞれ2つずつ持つ磁気媒体製造装置を用い、第1の
磁性層3と第2の磁性層4とを連続的に形成する例を述
べたが、本発明の磁気記録媒体の製造方法はこれに限定
されるものではなく、第1の磁性層3と第2の磁性層4
とをそれぞれ単独に形成しても良い。この場合、第1の
磁性層3への信号の記録は、該磁性層が塗布・乾燥され
た直後に行ってもよいし、第2の磁性層4を塗布する直
前に行ってもよい。また、信号を記録する工程のみを単
独に設けてもよい。また、第2の配向装置18は少なく
ともその一部が第2の乾燥装置19の中に設けられてい
てもよい。
【0014】ここで本発明の磁気記録媒体を構成する材
料について述べる。基体2はポリエチレンテレフタレー
ト(PET)、硬質塩化ビニル樹脂(PVC)、合成紙
等のプラスチックフィルムや紙、樹脂含浸紙等、磁気カ
ード、磁気シート用の公知のものを使用することができ
る。第1の磁性層3は、例えばγFe23 、Fe34
、CrO2 、Co含有γFe23 、メタル粉、バリ
ウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の磁気記
録媒体に使用される公知の磁性材料を、公知の方法で4
〜20μm程度の厚みとなるよう形成されている。
【0015】第2の磁性層4は、第1の磁性層3と同一
または異なる磁性材料を高分子樹脂バインダ中に分散し
て作製した磁性塗料を公知の方法で塗布・乾燥して形成
されている。この第2の磁性層4に使用される磁性材料
としては、第1の磁性層3に記録された信号から発生す
る磁界および配向磁界によって磁化されるものであれば
よく、例えばパーマロイ、センダスト、アモルファスな
どの鱗片状高透磁率磁性金属粉や、鉄粉などの軟磁性金
属粉、Mn−Zn、Ni−Znなどの軟磁性フェライト
粉、更にγFe23 、Fe34 、Co含有γFe2
3 、メタル粉、バリウムフェライトなどの磁気記録媒
体として用いられる公知の磁性材料を使用することがで
きる。第2の磁性層4を塗布したとき、第1の磁性層3
に記録した信号から発生する磁界および配向磁界の影響
で磁性粒子の疎密が生じるためには、印加される磁界で
磁性粒子が磁化される必要がある。第2の磁性層4とし
て、保磁力が低い高透磁率磁性材料を使用した場合に
は、それらは弱い外部磁界でも強く磁化されるので、容
易に磁性粒子の疎密が生じる。一方、記録用の磁性材料
は、保磁力が比較的低い場合には、第1の磁性層3に記
録した信号から発生する磁界により磁化されるが、保磁
力が高い磁性材料の場合は信号磁界のみでは磁化され難
い。一般に、磁気記録用磁性粒子は、製膜後に磁気配向
処理をかけるまでは、微粒子であるといえども複数の磁
区を持つ構造となっている。すなわち、粒子一つ一つの
内部は部分的に異なる方向に磁化され、全体としては磁
化が極めて弱い状態になっている。従って、保磁力が高
い場合には、磁性粒子の疎密を生じさせるためには配向
磁界の強さが重要になる。すなわち、一つ一つの粒子内
部の磁化方向を揃え、粒子自体の磁化量を増加させるに
十分な配向磁界を印加する必要がある。その結果、粒子
から発生する磁界と外部磁界との相互作用で、粒子は物
理的に移動するのである。
【0016】一つ一つの粒子内部の磁化方向を完全に揃
えるためには、磁性粒子の保磁力に近い磁界を加える必
要があるので、第1の磁性層3の保磁力より第2の磁性
層4の保磁力の方が高い場合には、該磁性層の磁性粒子
を強く磁化させるために配向磁界を強くすると第1の磁
性層3に記録した信号が減衰または消去されてしまう。
一方、第1の磁性層3が減衰または消去しない程度の弱
い配向磁界では、第2の磁性層4の磁性粒子を十分磁化
させることができない。従って、第2の磁性層4の保磁
力は、第1の磁性層3の保磁力と同等以下でないと十分
な効果が得られず、且つ後述する理由から4000 O
e以下であることが好ましい。
【0017】本発明の磁気記録媒体の固定パターンの読
み取りは以下の方法で行う。先ず第2の磁性層4が残留
磁化を生じない低保磁力磁性材料より構成されている場
合は、読み取りヘッドからバイアス磁界を発生させなが
ら、第2の磁性層4に形成されている固定信号トラック
5を走査する。このとき第2の磁性層4の磁性粒子の存
在が密なる部分4Aと疎なる部分4Bとの境界部分で磁
気抵抗が変化するので、読み取りヘッドのコイルには磁
束の変化に比例した出力波形が発生する。第2の磁性層
4が残留磁化を生ずる記録用の磁性材料より構成されて
いる場合は、先ず消去ヘッドで第1の磁性層3を飽和磁
化できる強さの磁界を発生させながら固定信号トラック
5を走査し、第1の磁性層3に記録されている固定パタ
ーン作製用信号を直流消去する。第2の磁性層4の保磁
力は第1の磁性層3と同等以下なので、このとき固定パ
ターン部も同時に飽和磁化される。次に読み取りヘッド
で固定信号トラック5を走査すると、固定パターン部の
磁性粒子の存在が密なる部分4Aと疎なる部分4Bとの
境界で残留磁化量が変化するので、読み取りヘッドのコ
イルには磁化量の変化に比例した出力波形が発生する。
なお、この場合読み取った後の固定パターンには残留磁
化が生じているので、例えば磁気造影剤等を使用すると
該パターンを目視できてしまうという問題が起きる。そ
こで、該パターンを読み取った後には、第1の磁性層3
に記録した信号を消去した方向と逆向きの適当な強さの
磁界を印加しながら固定パターンを走査するなどの方法
で、実質的に残留磁化が生じないようにするのが好まし
い。また、上述のように、固定パターンを読み取るため
には、第2の磁性層4が磁気ヘッドなどで容易に飽和磁
化される必要があり、そのためには第2の磁性層4に使
用される磁性材料の保磁力は4000 Oe以下とする
必要がある。このようにして読み取ることができる固定
パターンは、磁性層の物理的構造の違いとして形成され
ているので、磁気ヘッドなどによる消去や書き換えは全
く不可能である。
【0018】なお本発明は上述の例に限定されず、第2
の磁性層4の上に着色隠蔽層、印刷層、保護層などを適
宜設けてよいし、必要に応じて印字層を設けてもよい。
また保磁力の異なる3層以上の磁性層を有する磁気記録
媒体においても、最下層の磁性層以外の任意の磁性層
に、本発明による固定パターンを形成することができ
る。また、第1の磁性層3と第2の磁性層4は互いに接
合されている必要はなく、本発明の主旨が生かせる範囲
内の厚さの非磁性の中間層を第1の磁性層3と第2の磁
性層4の間に設けてもよい。更にシリコンなどの剥離剤
を塗布した基体の上に保護層、隠蔽着色層等を必要に応
じて積層した上に、上述した方法で少なくとも第1の磁
性層及び書き換え不能な固定パターンを含む第2の磁性
層を形成し、最上層に接着剤を塗布したカード用転写テ
ープ及びその製造方法にも適用することができる。
【0019】
【実施例】以下に、本発明による磁気記録媒体を、磁気
カードとして適用した場合について、より具体的な実施
例を用いて詳細に説明する。 実施例1 厚さ188μmの白色ポリエステルフィルム基体の一方
の面全面に、保磁力が2750 Oeのバリウムフェラ
イト磁性粉をバインダ樹脂、分散剤、硬化剤、その他添
加剤と溶剤とを混合・分散して作製した磁性塗料をグラ
ビア法で塗布し、乾燥後の厚みが8μmの第1の磁性層
を形成した。次に第1の磁性層の所定の位置に、記録密
度が25bpi、100bpiおよび210bpiでF
M変調された信号をそれぞれ飽和記録した。その上に、
保磁力が15 Oeで平均粒径が12μmの高透磁率の
Fe−Si系合金の鱗片状粉末をバインダ樹脂、分散
剤、硬化剤、その他添加剤と溶剤とを混合・分散して作
製した磁性塗料をナイフコート法で塗布した。その際に
はソレノイドコイルによる配向装置を塗工部出口近傍に
配置し、塗工部での磁界強度が100 Oeとなるよう
にした。塗布後は前記配向装置を通過して600 Oe
の磁場配向をかけ、その後乾燥装置で乾燥し、厚みが1
0μmの第2の磁性層を形成した。
【0020】実施例2 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、保磁力が1
8 Oeで平均粒径が1.5μmのカルボニル鉄粉をバ
インダ樹脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤と溶剤とを
混合・分散して作製した磁性塗料をグラビア法で塗布し
た。その際には実施例1と同じ条件で配向磁界を印加し
た。その後乾燥装置で乾燥し、厚みが4μmの第2の磁
性層を形成した。
【0021】実施例3 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、保磁力が3
00 OeのγFe23 磁性粉をバインダ樹脂、分散
剤、硬化剤、その他添加剤と溶剤とを混合・分散して作
製した磁性塗料をグラビア法で塗布した。その際にはソ
レノイドコイルによる配向装置を塗工部出口近傍に配置
し、塗工部での磁界強度が100 Oeとなるようにし
た。塗布後は前記配向装置を通過して1200 Oeの
磁場配向をかけ、その後乾燥装置で乾燥し、厚みが10
μmの第2の磁性層を形成した。
【0022】実施例4 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、保磁力が1
750 Oeのバリウムフェライト磁性粉をバインダ樹
脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤と溶剤とを混合・分
散して作製した磁性塗料をグラビア法で塗布した。その
後ソレノイドコイルによる配向装置で1500 Oeの
磁場配向をかけ、その後乾燥装置で乾燥し、厚みが6μ
mの第2の磁性層を形成した。
【0023】実施例5 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、第1の磁性
層と同じ磁性塗料をグラビアコート法で塗布した。その
直後、異極同士を近接して対向配置した永久磁石による
配向装置で磁界強度が1500 Oeで塗布面に対して
垂直方向の磁場配向をかけ、その後乾燥装置で乾燥し、
厚みが6μmの第2の磁性層を形成した。
【0024】比較例1 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、保磁力が6
000 Oeのストロンチウムフェライト磁性粉をバイ
ンダ樹脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤と溶剤とを混
合・分散して作製した磁性塗料をグラビア法で塗布し
た。その後ソレノイドコイルによる配向装置で2000
Oeの磁場配向をかけ、その後乾燥装置で乾燥し、厚
みが8μmの第2の磁性層を形成した。
【0025】比較例2 実施例1と同じ方法で作製した第1の磁性層に、実施例
1と同じ方法で信号を記録した。その上に、実施例2と
同じ方法で作製した第2の磁性塗料を同じ方法で塗布
し、配向磁界は一切かけずに乾燥し、厚みが4μmの第
2の磁性層を形成した。
【0026】実施例1〜5および比較例1、2で作製し
た磁気シートを86×54mmのサイズに打ち抜き磁気
カードを得た。保磁力が2750 Oeの磁気媒体を飽
和書き込みできる磁気ヘッドを装着したリーダー・ライ
ターで、各実施例、比較例で作製した磁気カードの固定
信号トラックを走査し、第1の磁性層に記録されていた
信号を直流消去した。次に同じリーダー・ライターに装
着されたバイアスコイル付き読み取りヘッドにバイアス
電流を流し、ヘッドの前部ギャップから約800 Oe
のバイアス磁界を発生させながら固定信号トラックを走
査し、固定パターンを読み取った。その結果、実施例1
〜5のカードは何れも、固定信号トラックに記録された
25bpi、100bpiおよび210bpiの各記録
密度のFM信号は、それぞれ十分な出力レベルで読み取
ることができた。ただし各サンプルとも25bpiより
も100bpi及び210bpiの信号の方が再生振幅
レベルが高く且つ波形の歪みも少なく、より安定に復調
することができた。特に、実施例5のカードでは25b
piよりも100bpi、更に100bpiよりも21
0bpiの方が出力が高く、記録密度が高い方がより高
い固定信号出力が得られることが確認された。一方、比
較例1のカードは、25bpi、100bpiおよび2
10bpiのFM信号は共に実施例3〜5と比較して出
力が低く、十分なSN比が確保されなかった。また、比
較例2のカードは、実施例1と比較して出力は低く、再
生波形も実施例2とは異なり、第1の磁性層に記録した
信号の再生波形とは全く違うものであった。
【0027】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
る磁気記録媒体は、書き換え不能な固定パターンが形成
されている第2の磁性層の保磁力が、第1の磁性層の保
磁力と同等以下になっており、また第2の磁性層を形成
する際に印加する配向磁界の方向が、第1の磁性層に記
録された信号の残留磁化の方向に対してほぼ平行であ
り、且つ実質的に一定となっているので、固定パターン
の読み取り出力はより高く、SN比の良好な信号を得る
ことができる。この固定パターンを、媒体を特定するた
めの識別情報等として使用すれば、前記パターンは媒体
処理装置等によっては書き換えることができず、消去す
るためには媒体を破壊するしか方法がないので、媒体の
偽造や変造に対して極めて安全性の高い磁気記録媒体を
供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する磁気記録媒体の一例を示す平
面図である。
【図2】図1のX−Xに沿う部分の断面図である。
【図3】本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例を示す
概略図である。
【図4】本発明による磁気記録媒体に書き換え不能な固
定パターンを形成する過程を詳しく説明するための図で
ある。
【図5】信号を記録した第1の磁性層の上に第2の磁性
塗料を塗布する際に配向磁界を印加しない従来技術を説
明するための図である。
【図6】本発明に使用できる水平配向型の磁場配向装置
の一例を示す。
【図7】本発明に使用できる垂直配向型の磁場配向装置
の一例を示す。
【図8】第1の磁性層が垂直磁化型の記録を有する場合
に第2の磁性層4に固定パターンが形成される様子を説
明するための図である。
【符号の説明】
1:磁気記録媒体 2:基体 3:磁気記録再生可能な第1の磁性層 4:第2の磁性層 4A:磁性粒子の存在が密なる部分 4B:磁性粒子の存在が疎なる部分 5:固定信号トラック 10:巻き出し装置 11:第1の塗工ヘッド 12:第1の磁性塗料 13:第1の配向装置 14:第1の乾燥装置 15:磁気ヘッド 16:第2の塗工ヘッド 17:第2の磁性塗料 18:第2の配向装置 19:第2の乾燥装置 20:巻き取り装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 悦史 東京都台東区台東1丁目5番1号東京磁気 印刷株式会社内 (72)発明者 成瀬 育男 東京都台東区台東1丁目5番1号東京磁気 印刷株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に、少なくとも、磁気記録再生が
    可能な第1の磁性層と、保磁力が前記第1の磁性層と同
    等以下で且つ4000 Oe以下の磁性粒子をバインダ
    中に分散してなり、前記第1の磁性層に記録された信号
    による磁界並びに配向磁界の影響により、前記信号の磁
    化の方向に対応して磁性粒子の存在が密なる部分と疎な
    る部分とが互いに隣接して交互に形成された書き換え不
    能な固定パターンが記録されている第2の磁性層とを積
    層してなることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 第2の磁性層に記録された書き換え不能
    な固定パターンは、磁性粒子が密なる部分と疎なる部分
    の長さがそれぞれ異なるパターンにより構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 基体上に少なくとも2つの磁性層を積層
    してなる磁気記録媒体の製造方法であって、 先ず、基体上に磁気記録再生が可能な磁性材料から成る
    第1の磁性層を形成し、次いで前記第1の磁性層に、所
    定の信号を磁気記録し、その後保磁力が前記第1の磁性
    層と同等以下で且つ4000 Oe以下の磁性体をバイ
    ンダ中に分散して作製した磁性塗料を塗布し、前記磁性
    塗料が乾燥固化する前に、前記第1の磁性層に記録され
    た信号が減衰しない程度の磁界強度で、且つ方向が第1
    の磁性層に記録した信号の残留磁化の方向に対して略平
    行であり且つ実質的に一定である磁場配向処理を施し、
    しかる後に前記磁性塗料を乾燥固化することにより、第
    1の磁性層に記録された信号の磁化の方向に対応して磁
    性粒子の存在が密なる部分と疎なる部分とが互いに隣接
    して交互に形成された書き換え不能な固定パターンを第
    2の磁性層中に形成することを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第2の磁性層を配向するための配向
    手段は、異極同士を近接して対向配置した永久磁石であ
    ることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体の製
    造方法。
JP7314911A 1995-11-09 1995-11-09 磁気記録媒体とその製造方法 Pending JPH09138940A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014213469A (ja) * 2013-04-23 2014-11-17 凸版印刷株式会社 転写媒体及び転写体

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014213469A (ja) * 2013-04-23 2014-11-17 凸版印刷株式会社 転写媒体及び転写体

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Effective date: 20040316