JP3760031B2 - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプリペイドカードに使用するのに適した磁気カードに関するものであり、特に磁気信号の改ざん、偽造による不正使用を困難にした磁気カードに関するものである。
【0002】
【従来技術】
最近の磁気カードにおいてはプリペイドカードと呼ばれる前払い方式の磁気カードが広く普及してきた。しかしこのプリペイドカードは市場において金券同様に扱われるため、磁気信号の改ざん偽造による不正使用を防止しなければならず、これまでに種々の考案がなされている。
そのうち、安全性の高い方法として、磁気カードに真偽判定情報として固定パターンを利用するものがある。例えば実開昭58−65644号公報に開示されたような磁性インキによる固定パターンを形成する方法がある。また、特開平6−203366号公報、特開平7−210859号公報に開示されたような磁気記録可能な第1の磁性層に磁気記録し、この上に第1の磁性層に磁気記録した磁気パターン(磁気記録信号)に対応した書換不能な固定パターンを第2の磁性層に形成する方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のこれらの方法は磁気信号の改ざん、偽造による不正使用を防止するのに必ずしも十分とはいえない。例えば実開昭58−65644号公報に開示されたような方法では、磁性インキによる固定パターンをスクリーン印刷等の方法で形成されるため、固定パターンの種類の数だけシルク版を準備する必要があり、一般に同一の固定パターンをもつ大量の磁気カードが製造されてしまうという欠点をもち、偽造されるおそれがある。これに対し特開平6−203366号公報、特開平7−210859号公報に開示されたような方法では、磁気記録可能な第1の磁性層に磁気記録した磁気パターンに対応した固定パターンが第2の磁性層に形成されるため、個々の磁気カードで異なった真偽判定情報を固定パターンとして形成できる利点がある。
【0004】
しかし特開平6−203366号公報に開示されたような方法では、固定パターンは第1の磁性層に磁気記録した磁気パターンの磁束反転部に磁性粒子が集まって形成されるため、磁気パターンの1回の磁束反転に対し固定パターンは2回の磁束反転を有し、この2回の磁束反転による信号波長は第1の磁性層に磁気記録した記録波長に関係なく一定である。このため記録密度がある程度高くなると単一波長の固定信号に近づき、F2F方式のような周波数変調方式には対応できなくなるという欠点をもつ。また特開平7−210859号公報に開示されたような方法では、第2の磁性層を形成するときの配向処理により第一の磁性層に磁気記録した磁気パターンと等しい信号波長の固定パターンを形成できる。しかし固定パターンの形成は磁性粒子の粗密により形成されるものであり、従来技術に共通の欠点として、印刷等で形成した固定パターンと同様の手段で読み取り可能であること、また固定パターンは凹凸として形成されるため読み取り信号と同様の固定パターンが目視可能であるという欠点をもつ。
本発明者らはこのような問題点に照らし、固定信号の読取方法による真偽判定性および視認性を改善したさらに安全性の高い磁気記録媒体を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基体上に少なくとも1つの磁気記録可能な第1の磁性層を形成し、さらに、少なくとも2つの保磁力の異なる第2、第3の磁性層を積層して成る磁気記録媒体であり、前記第2、第3の磁性層は前記第1の磁性層に記録された信号による磁界並びに互いに逆向きの直流配向磁界の影響により、それぞれ磁気記録媒体の面内の同一線上に各々反転した固定パターンとして書換不能な固定信号が形成されている。各々反転した固定パターンとは、前記第2、第3の磁性層に形成された固定パターンが磁性粒子の粗密による凹凸として形成され、第2の磁性層の凸部には第3の磁性層の凹部が、また第2の磁性層の凹部には第3の磁性層の凸部がそれぞれ等しい信号ピッチで積層されていることである(図1)。
【0006】
本発明の磁気記録媒体は次のように製造される。先ず非磁性基体上に磁気記録可能な磁性材料から成る第1の磁性層を形成し、次いで前記第1の磁性層に所定の信号を磁気記録し、その後第2の磁性層を形成する磁性塗料を塗布、乾燥、固化する。更に次いで前記第2の磁性層と保持力の異なる磁性塗料を塗布、乾燥、固化し、第3の磁性層を形成する。
前記第2の磁性層を形成するとき、前記磁性塗料が乾燥、固化する前に前記第1磁性層の保磁力以下の磁界強度で、塗布方向に対し平行な直流磁界を使用して直流配向処理をすることにより、前記第2の磁性層に前記第1の磁性層に磁気記録した信号と同じ固定信号を形成できる。
前記第3の磁性層を形成するとき、前記第2の磁性層を形成した直流配向処理と逆極性の直流配向処理を行うことにより、前記第1の磁性層に磁気記録した信号と逆の固定パターン、つまり前記第2の磁性層と反転した固定パターンの固定信号を形成できる。
【0007】
前記磁気記録媒体の使用方法としては、先ず磁気ヘッドで所定の極性のバイアス磁界を印加しながら、または印加後に前記磁気記録媒体を読み取ったときの出力レベルと所定の極性と逆極性のバイアス磁界を印加しながら、または印加後に前記磁気記録媒体を読み取ったときの出力レベルとを比較し、その出力レベルの差を認識することができる。例えば第2の磁性層の保磁力が第3の磁性層の保磁力より大きく、所定のバイアス磁界が第2の磁性層を磁化できず、第3の磁性層を十分に磁化できる関係にあるとき、まず磁気記録媒体の固定パターン上を第1、第2、第3の磁性層が十分に磁化できる直流磁界をかけながら磁気ヘッドを走査し、次にこれと同じ極性の所定のバイアス磁界を流しながら再生出力を読み取る。このとき第2の磁性層と第3の磁性層の固定パターンは同一方向に磁化されているため再生出力はほとんど得られない(図3)。
【0008】
次に前記の極性と逆極性の所定のバイアス磁界を流しながら再生出力を読み取る。このとき第2の磁性層と第3の磁性層の固定パターンは逆方向に磁化されているため磁化反転が生じ十分な再生出力が得られる(図2)。
【0009】
本発明の効果としては、まず第2の磁性層と第3の磁性層に形成された2つの固定パターンで1つの固定信号を形成しているため非常に偽造しにくく、バイアス磁界の極性を変えることにより2つの固定パターンの磁化方向を同一方向と逆方向に変化させられる。このとき再生出力の差は従来にない本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性である。さらに第2の磁性層と第3の磁性層の固定パターンは磁気記録媒体の面内の同一線上に各々反転した固定パターンとして形成されているため、第2の磁性層と第3の磁性層の固定パターンの凹と凸または凸と凹が重なり合う。このため外観上の固定パターンは平坦なものとなり、視認性が悪く、目視での確認が困難である。よって本発明の磁気記録媒体は極めて偽造、変造しにくく、不正使用防止効果が高い。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の磁気記録媒体を実施例により説明する。
図1は本発明の一実施例としての磁気記録媒体の断面図である。この実施例においては、非磁性基体1上に第1の磁性層2を形成し、第1の磁性層2上に第2の磁性層3が固定信号として形成してある。さらに第2の磁性層3上に第3の磁性層4が第2の磁性層3の固定信号と逆パターンの固定信号として形成し、第2の磁性層3と第3の磁性層4の固定信号は磁気記録媒体の面内の同一線上に各々反転した固定パターンとして形成してある。
非磁性基体1にはプラスチック、紙、または非磁性金属板であっても良いが、特にプラスチックを用いる場合にはポリエチレンテレフタレートが好ましい。
第1の磁性層2はγ−Fe2O3、Co被着γ−Fe2O3、Baフェライトなどの磁性粉と適当な結合剤、添加剤よりなる通常用いられる磁気記録層であって良い。
第2の磁性層3は第1の磁性層2と同様の通常の磁気記録層であって良く、またはカルボニル鉄粉、Fe−Al合金、Fe−Ni合金、Fe−Al−Si合金、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライトなどの軟磁性粉と適当な結合剤、添加剤よりなる磁性層であって良い。
第3の磁性層4は第2の磁性層3と同様であって良い。ただし、第2の磁性層3とは保磁力が異なることが好ましい。
【0011】
【実施例】
図1の実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
まず、厚さ188μmの白色ポリエチレンテレフタレートの非磁性基体1上に保磁力2750 OeのBaフェライト粉と樹脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤とを溶剤中で均一に混合した磁性塗料をグラビア塗布し、厚さ5μmの第1の磁性層2を形成した。
次に第1の磁性層2の所定の領域に150 BPIのFM信号を飽和記録した。
第1の磁性層2上に保磁力が950 OeのBaフェライトと樹脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤とを溶剤中で均一に混合した磁性塗料をナイフ塗布し、厚さ5μmの第2の磁性層3を形成した。このとき磁性塗料が乾燥固化する前にソレノイドコイル配向装置を用い磁界強度1200 Oeの直流配向処理を行い、第1の磁性層2の所定の領域に記録した150 BPIのFM信号に等しい固定信号を形成した。
第2の磁性層3上に保磁力が20 Oeのカルボニル鉄粉と樹脂、分散剤、硬化剤、その他添加剤とを溶剤中で均一に混合した磁性塗料をナイフ塗布し、厚さ3μmの第3の磁性層4を形成した。このとき磁性塗料が乾燥固化するまえにソレノイドコイル配向装置を用い磁界強度600 Oeで、第2の磁性層3を形成したときと逆極性の直流配向処理を行い、第1の磁性層2の所定の領域に記録した150 BPIのFM信号と反転した、逆パターンの固定信号を形成した。
これをカードサイズに打ち抜いた。
【0012】
次に実施例1の本発明をその使用方法により詳細に説明する。
まず第1の磁性層2に飽和記録できるライトヘッドを装着したリーダーライターで第1の磁性層2に記録された信号を直流消去した。次に同じリーダーライターに装着されたバイアスコイル付きリードヘッドで第2の磁性層3の飽和磁界以下、第3の磁性層4の飽和磁界以上の磁界が発生する20mAのバイアス電流を所定の極性で流しながら再生出力を読み取ったところ、図2に示すように十分な出力レベルが得られた。さらに次にバイアスコイルに流れる電流の向きを逆にし、20mAのバイアス電流を流しながら再生出力を読み取ったところ、図3に示すように出力レベルが低く、信号の再生は不可能であり、本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性が得られた。
また第2の磁性層3と第3の磁性層4に形成された固定パターンの凹凸が反転しているため表面側が平坦となり固定信号の視認性が悪く、目視で確認することは困難であった。
【0013】
(実施例2)
実施例1の磁気記録媒体と同様の製造方法で、第2の磁性層3に保磁力が270 Oeのγ−Fe2O3粉を用い、塗布方向に平行な600 Oeの直流配向処理を行い、厚さ5μmで形成した。次に第3の磁性層4に保磁力が950 OeのBaフェライト粉を用い、第2の磁性層3を形成したときと逆極性の1200 Oeの直流配向処理を行い、厚さ5μmで形成した。
実施例2について、実施例1と同様の評価を行った。
まず実施例1で使用したリーダーライダーで第1の磁性層2に記録された信号を直流消去した。次に第2の磁性層3の飽和磁界以上、第3の磁性層の飽和磁界以下の磁界が発生する80mAのバイアス電流を所定の極性で流しながら再生出力を読み取ったところ図2と同様に十分な出力レベルが得られ、次にバイアスコイルに流れる電流の向きを逆にして、80mAのバイアス電流を流しながら再生出力を読み取ったところ、図3と同様に出力レベルが低く、信号の再生は不可能であり、本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性が得られた。
また第2の磁性層3と第3の磁性層4に形成された固定パターンの凹凸が反転しているため表面側が平坦となり固定パターンの視認性が悪く、目視で確認することは困難であった。
【0014】
(実施例3)
実施例2の本発明の磁気記録媒体を用いて、以下のような読取方法を行った。まず実施例1で使用したリーダーライターで第1の磁性層2に記録された信号を直流消去した。次に80mAのバイアス電流を所定の極性で流し配向処理を行った。これをバイアス電流を流さずに再生出力を読み取ったところ、図2と同様に十分な出力レベルが得られた。次にバイアスコイルに流れる電流の向きを逆にして、80mAのバイアス電流を流し、逆向きに配向処理を行った。これをバイアス電流を流さずに再生出力を読み取ったところ、図3と同様に出力レベルが低く、信号の再生は不可能であり、本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性が得られた。
【0015】
(実施例4)
実施例1の磁気記録媒体と同様の製造方法で、第1の磁性層に保磁力が1900 OeのBaフェライト粉を用い、厚さ5μmの第1の磁性層2を形成した。次に、第2の磁性層3に保磁力が2750 OeのBaフェライト粉を用い、塗布方向に平行な1000 Oeの直流配向処理を行い、厚さ5μmで形成した。次に第3の磁性層4に保磁力が270 Oeのγ−Fe2O3粉を用い、第2の磁性層3を形成したときと逆極性の600 Oeの直流配向処理を行い、厚さ5μmで形成した。
実施例4の本発明の磁気記録媒体を以下のような読み取り方法で行った。まず実施例1で使用したリーダーライターのライトヘッドを用い、第2の磁性層3の飽和磁界以上が発生する400mAの電流を所定の極性で流し配向処理を行った。これをバイアス電流を流さずに再生出力を読み取ったところ、図3と同様に出力レベルが低く信号の再生は不可能であった。次にリードヘッドを用い、第2の磁性層の飽和磁界以下、第3の磁性層4の飽和磁界以上が発生する所定の極性と逆極性の80mAのバイアス電流を流し、逆向きに配向処理を行った。これをバイアス電流を流さずに再生出力を読み取ったところ、図2と同様に十分な出力レベルが得られ、本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性が得られた。
また第2の磁性層3と第3の磁性層4に形成された固定パターンの凹凸が反転しているため表面側が平坦となり固定信号の視認性が悪く、目視で確認することは困難であった。
【0016】
(比較例1)
実施例1と同様の製造方法で第2の磁性層の製造工程を省略し、第1の磁性層上に第3の磁性層による固定信号のみを形成し、同様の方法で固定信号のバイアス依存性を確認した。図4、図5に示すようにバイアス磁界の極性による出力レベルの変化は見られなかった。
【0017】
(比較例2、3、4)
実施例1、2、4の本発明の磁気記録媒体について、第2の磁性層3と第3の磁性層4を形成するときの直流配向処理の方向を同極にし、実施例1、2、3、4と同様の評価を行ったところ、実施例と同様に本発明の磁気記録媒体と特有のバイアス依存性を示した。しかし、第2の磁性層3と第3の磁性層4に同じ凹凸の固定パターンが重なって形成されるため、表面からの視認性が良く、容易に目視可能であった。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、磁気記録媒体の面内の同一線上に各々反転した固定パターンを形成した少なくとも2つ以上の保磁力の異なる磁性層が積層して形成されているため、本発明の磁気記録媒体に特有のバイアス依存性をもつ。また目視での固定パターンの確認が困難である。このため、形成された固定信号と合わせて、バイアス依存性を利用することにより媒体を特定するための識別情報として使用すれば、偽造や変造に対し極めて安全性の高い磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例としての磁気記録媒体の断面図である。
【図2】 実施例1の磁気記録媒体を所定の極性でバイアスリードしたときのエンベロープを示す。
【図3】 実施例1の磁気記録媒体を所定の極性と逆極性でバイアスリードしたときのエンベロープを示す。
【図4】 比較例1の磁気記録媒体を所定の極性でバイアスリードしたときのエンベロープを示す。
【図5】 比較例1の磁気記録媒体を所定の極性と逆極性でバイアスリードしたときのエンベロープを示す。
【符号の説明】
1 非磁性基体
2 第1の磁性層
3 第2の磁性層
4 第3の磁性層
Claims (2)
- 非磁性基体上の全体または一部に、磁気記録可能な第1の磁性層を形成し、さらに、少なくとも2つの保磁力の異なる第2、第3の磁性層を積層して成る磁気記録媒体において、前記第2、第3の磁性層は前記1の磁性層に記録された同一信号による磁界並びに互いに逆向きの直流配向磁界の影響によりそれぞれ形成された書換不能な固定信号が、前記磁気記録媒体の面内の同一線上に各々反転した固定パターンとして記録されていることを特徴とする磁気記録媒体。
- 非磁性基体上に磁気記録可能な磁性材料から成る第1の磁性層を形成し、次いで前記第1の磁性層に所定の信号を磁気記録し、その後磁性塗料を塗布、乾燥、固化して前記第2の磁性層を形成し、次いで第2の磁性層とは保磁力の異なる磁性塗料を塗布、乾燥、固化することにより第3の磁性層を形成することよりなり、前記第2の磁性層は、前記磁性塗料が乾燥固化する前に前記第1磁性層の保磁力以下の磁界強度で且つ一つの磁界極性で、塗布方向に対し平行な直流配向処理を受け、次いで前記第3の磁性層は、前記磁性塗料が乾燥固化する前に前記第1磁性層の保磁力以下の磁界強度で且つ前記第2の磁性層に対する前記一つの磁界極性とは異なった磁界極性で、塗布方向に対し平行な直流配向処理を受けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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