JPH0913591A - 防水層の固定部構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 固定部材によって防水シートを躯体に固定す
る形態で防水層を形成するにあたって、補修工事を行う
場合に、騒音の発生や躯体の強度低下を来すことなく、
当初に施工した固定部材を利用してその施工をできるよ
うにする。 【構成】 防水シート２を躯体１に固定自在な固定部材
３を覆った状態で躯体１への固定箇所を防水する防水カ
バー部材４を、固定部材３に対して非接着状態に被せて
防水シート２に接着してあると共に、防水カバー部材４
に、固定部材３に対応する箇所に目印を設けてある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建築物の屋根等に施工
されるシート防水工法における防水層の固定部構造に関
し、さらに詳しくは、躯体上に防水シートを配置し、前
記防水シートを固定部材によって前記躯体に固定し、前
記固定部材を覆った状態で前記固定部材による前記躯体
への固定箇所を防水する防水カバー部材を前記固定箇所
に設け、防水シートの全面を躯体に接着することをなく
し、もって、防水層が躯体から蒙る影響を少なくできる
ようにした防水層の固定部構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の防水層の固定部構造とし
ては、防水カバー部材を固定部材の上面全面に一様に接
着していた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来
の防水層の固定部構造においては、次のような問題があ
った。つまり、前述した防水層の固定部構造を用いたシ
ート防水工法は、防水シートの全面を躯体に接着するも
のではないので、施工時に防水シートを接着する作業が
少なくて済み、新規に防水層を形成する場合のみなら
ず、防水層の補修工事においてもしばしば用いられる。
先に述べた従来の技術によれば、防水シートを固定部材
の上面全面に接着していたから、補修工事において古い
防水層を除去した上で新たな防水層を施工しようとする
と、防水層の除去に手間が掛かるとともに、固定部材か
ら完全に剥してしまうこともむつかしく、固定部材を再
度利用して新たな防水シートを固定する施工法を採用し
にくい。そのため、古い防水層を残したままでその上か
ら別な固定部材によって新たな防水シートを固定する方
法が考えられるが、この場合には、固定部材の固着のた
めに新たにあと施工アンカー等を取り付けなければなら
ず、その取付用の穿孔工事に伴う騒音の発生の問題や、
特に躯体がＡＬＣ版等の場合に穿孔による強度低下の問
題があった。

【０００４】本発明の目的は、上記実情に鑑み、固定部
材によって防水シートを躯体に固定する形態で防水層を
形成するにあたって、補修工事を行う場合に、騒音の発
生や躯体の強度低下を来すことなく、当初に施工した固
定部材を利用してその施工が可能な防水層の固定部構造
を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
の本発明の防水層の固定部構造の特徴構成は、防水シー
トを躯体に固定自在な固定部材を覆った状態で前記躯体
への固定箇所を防水する防水カバー部材を、前記固定部
材に対して非接着状態に被せて前記防水シートに接着し
てあると共に、前記防水カバー部材に、前記固定部材に
対応する箇所に目印を設けてあるところにある（請求項
１に対応）。

【０００６】また、前記固定部材に対応する箇所の前記
防水カバー部材を膨出形成することで、その膨出部の内
部空間によって前記防水カバー部材を固定部材から非接
着状態に離隔すると共に、その膨出形態をもって前記目
印を構成してあってもよい（請求項２に対応）。

【０００７】

【作用】つまり、請求項１に係る本発明の特徴構成によ
れば、防水シートを躯体に固定自在な固定部材を覆った
状態で前記躯体への固定箇所を防水する防水カバー部材
を、前記固定部材に対して非接着状態に被せて前記防水
シートに接着してあると共に、前記防水カバー部材に、
前記固定部材に対応する箇所に目印を設けてあるから、
防水カバー部材は、固定部材に対して非接着であり、補
修等の際に防水層を除去するにあたって、固定部材の部
分の防水カバー部材だけを容易に取り外すことができ
る。しかも防水カバー部材を接着していた接着剤が固定
部材に残留することがないから、新たな防水層を施工す
るに際して既設の固定部材を確実に再利用することがで
きる。加えて、固定部材に対応する箇所に目印が施され
ているから、除去すべき防水カバー部材の箇所を極めて
容易に見付け出すことができる。

【０００８】また、請求項２に係る本発明の特徴構成に
よれば、前記固定部材に対応する箇所の前記防水カバー
部材を膨出形成することで、その膨出部の内部空間によ
って前記防水カバー部材を固定部材から非接着状態に離
隔すると共に、その膨出形態をもって前記目印を構成し
てあるから、膨出部が形成する内部空間を、防水カバー
部材を切断除去する際のカッターナイフ等の刃物の先端
側の入り込み空間として利用でき、防水層を除去するに
あたっての刃物の使い勝手が良くなる。しかも、膨出部
の形態自身がその位置に固定部材のあることの目印とな
っているから、印刷等の手段で目印を付記する構成に比
しても、気候等の環境条件や他物の当接等によっても目
印がなくなる虞が少ない。

【０００９】

【発明の効果】その結果、請求項１に係る本発明によれ
ば、補修工事等における旧防水層の除去に際して、簡単
に捜し出せる必要最小限の箇所の防水カバー部材を取り
外すだけで済み、なおかつ旧い防水層に用いていた固定
部材を有効に再利用して新たな防水層を施工することが
できるから、廃材の量が少なく、新たに穿孔の必要もな
く、施工手間少なくかつ騒音等の発生も少なく防水層の
やりかえ工事を行える優れた防水層の固定部構造にでき
た。

【００１０】また、請求項２に係る本発明によれば、そ
れに加えて、防水カバー部材の取り外しに際しての刃物
の使い勝手を良くでき、また、目印が消滅する虞も少な
くできるから、より一層防水層のやりかえ工事を手際よ
く行える効果がある。

【００１１】

【実施例】以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説
明する。

【００１２】図１及び図２は、本発明の防水層の固定部
構造の一例を示すもので、コンクリート製の躯体である
屋上スラブ（以後、単にスラブという）１上に配置した
防水シート２を、固定部材３によってスラブ１に固定
し、その固定箇所を防水する防水カバー部材４を、前記
固定部材３を覆った状態に配置して前記防水シート２に
接着して、もって、防水層の固定部Ｘを構成してある。

【００１３】前記防水シート２は、その面方向に間隔を
あけて各別に配置した複数の固定部Ｘにおいて、スラブ
１に固定してある。

【００１４】前記固定部材３は、塩ビ被覆した円盤状の
金属製プレート部材５と、そのプレート部材５をスラブ
に着脱自在に固着するボルト６・ナット７・ワッシャ７
ａ及びボルト６螺着用のアンカー８とによって構成して
ある。前記プレート部材５は、その下面に前記防水シー
ト２を押えて固定する押え部５ａを設け、円の中心部分
に、前記ボルト６挿通用の挿通孔５ｂを設けて構成して
あり、スラブ１に固着された前記アンカー８、及び、そ
のアンカー８に螺合させた前記ボルト６、及び、そのボ
ルト６に嵌合させた前記ナット７・ワッシャ７ａを介し
てスラブ１に取り付けてある。前記アンカー８は、前記
固定部Ｘに該当するスラブ１の部分に設けられた固定穴
Ｈ内に固定してあり、そのアンカー８に対して、上端部
がスラブ１面より上に突出する状態に前記ボルト６を螺
着してある。そして、前記防水シート２は、前記ボルト
６が貫通する状態に配置されており、その上から、前記
挿通孔５ｂにボルト６が貫通する状態に前記プレート部
材５を設置し、ボルト６に螺着させたナット７によって
プレート部材５を固定してある。従って、防水シート２
は、前記プレート部材５の押え部５ａによってスラブ１
側に押さえられた状態で固定されている。

【００１５】前記防水カバー部材４は、中央部を上方に
膨出させたハット形状に形成してあり、前記膨出させた
中央部内に前記固定部材３が納まる状態で前記固定部Ｘ
上に配置され、周囲の鍔部分のみを防水シート２に接着
して、前記固定部Ｘの防水性を確保してある。従って、
前記防水カバー部材４は、膨出部そのものが固定部材３
の設置位置の目印となり、固定部材３の位置確認が一目
瞭然となる。更には、防水カバー部材４の膨出部は、固
定部材３と非接着状態であるから、例えば、防水層の修
復に伴って固定部材を取り外す場合に、カッターやナイ
フ等の工具で防水カバー部材を簡単に切り取ることがで
きる上、取り外した固定部材３を、そのまま再利用する
ことが可能となる。

【００１６】次に、防水層の形成工事の手順を簡単に説
明すると、 ［１−１］ 図３に示すように、予め、スラブ１の前記
固定部Ｘに対応する所定位置にアンカー８、及び、ボル
ト６を設置しておき、その上から、防水シート２を被
す。その際、前記ボルト６によって盛り上がった防水シ
ート部分を切開することによって、その切開部にボルト
６を貫通させ、防水シート２をスラブ１に沿わせること
ができる。 ［１−２］ 前記ボルト６に対してプレート部材５及び
ワッシャ７ａを嵌めると共に、ナット７を螺合させて締
付けることによって、プレート部材５によって防水シー
ト２を押えて固定することができる。 ［１−３］ 固定部材３を設置した固定部Ｘの上から、
防水カバー部材４を被せ、防水シート２に接着する。

【００１７】以上の手順によって防水層の固定部Ｘを形
成することができる。また、このように形成された防水
層をやりかえる場合の手順を簡単に説明すると、 ［２−１］ 図４（イ）に示すように、目印となる防水
カバー部材４の膨出する形状を手掛かりにしてプレート
部材５の位置を捜し、プレート部材５に対応する部分の
防水カバー部材４を除去する。このとき、防水カバー部
材４の両側壁部分の下端をカッターナイフによって切断
するのであるが、膨出した形態によって内部に形成され
た空間があることでカッターナイフの刃先部分がその空
間内に入り込むから、防水シートの切断をスムースに行
うことができる。 ［２−２］ 次に、ナット７・ワッシャ７ａ及びプレー
ト部材５を取り外し、図４（ロ）に示すように、旧い防
水層の上から、新しい防水シート２を被せ、以下、前記
［１−１］〜［１−３］の手順で新たな防水層を形成す
る（図５参照）。但し、この場合は、アンカー８・ボル
ト６・ナット７・ワッシャ７ａ・プレート部材５からな
る固定部材３は、防水カバー部材４と非接着状態である
から、固定部材３には接着剤等がこびりついて残ってい
ることがなく、それらの被操作部であるナット７の外周
にプライヤーやモンキーレンチ等の工具を咬ませてナッ
ト７を支障なく取り外すことができると共に、新しい防
水シート２を固定するのに、再度、使用することが可能
となる。

【００１８】〔別実施例〕以下に、別実施例を説明す
る。

【００１９】〈１〉 前記固定部材３は、先の実施例で
説明したアンカー８・ボルト６・ナット７・ワッシャ７
ａ・円盤状のプレート部材５によって構成されたものに
限らず、例えば、ボルト６・ナット７に替えて、ビスを
用いることも可能である。更には、前記ボルト６を用い
る場合には、余め、躯体に埋め込んでおく構成をとるこ
とも可能である。また、プレート部材５は、円盤状のも
のに替えて、例えば、図６に示すように、帯板状のもの
であってもよい。この場合は、防水シート２と防水シー
ト２との継目部分の固定部にも用いることができるもの
であって、その固定部の構造を簡単に説明する。アンカ
ー８・ボルト６は、防水シート２どうしの継目部分にお
いてその継目の長手方向に沿って所定間隔をあけた状態
で、スラブ１に設置してあり、その上に端部が位置する
ように一方の防水シート２を配置してある（ボルトは防
水シート２を貫通）。そして、帯板状のプレート部材５
には、前記複数のボルト６に対応する位置に、各別に挿
通孔５ｂを設けてあり、その挿通孔５ｂに前記複数のボ
ルト６が各別に挿通するように前記プレート部材５を取
り付け、前記防水シート２上面に接当する状態に配置し
てある。また、プレート部材５の固定は、先の実施例と
同様に、ナット７・ワッシャ７ａによって行ってある。
次に、他方のシート（ボルト６・ナット７に対応する箇
所を、予め、切り抜いてある）２を、前記継目部に被
せ、一方の防水シート２に接着して固定してある。そし
て、ボルト６・ナット７の露出した部分に、ハット状の
防水カバー部材４を被せ、鍔部分を防水シート２に接着
して、固定部Ｘの防水を図ってある。このように、形成
した防水層のやりかえ工事においては、先の実施例と同
様に、防水カバー部材４の膨出部分を切取り（図７
（イ）参照）、ナット７・ワッシャ７ａを取り外した
後、プレート部材５上を覆う防水シート２を切取ってプ
レート部材５を取り外し（図７（ロ）参照）、以後、上
述のとおり新たな防水層を形成する手順によって実施す
ることができる（図８参照）。 〈２〉 先の実施例では、固定部材３は全て躯体として
の屋上スラブに固着するものを説明したが、本発明によ
る防水層の固定部構造は、屋上スラブにおける防水層の
固定のみならず、防水層の立上りを躯体としてのパラペ
ットに固定する場合に採用することも可能であり、躯体
としては、それら屋上スラブや屋上パラペット、或いは
屋内防水における床スラブや壁等を対象とすることがで
きる。図９に、スラブの立ち上がり部における防水層の
固定部構造を示す。この実施例によると、一方の防水シ
ート２と他方の防水シート２とを、固定部Ｘで重ねて接
着し、それらの継目部分を貫通するボルト６に、プレー
ト部材５・ナット７・ワッシャ７ａを取り付けて、両防
水シート２を押さえて固定し、その上から変形ハット形
状の防水カバー部材４を被せて鍔部分を前記防水シート
２に接着してある。

【００２０】〈３〉 防水カバー部材は、膨出形成して
固定部材３から完全に離れたもの以外に、図１０に示す
ように、膨出形成した上側部分を肉厚に形成し、固定部
材３を構成するボルト６とナット７の一部に嵌合するよ
うに構成してもよい。この構成により、例えば屋上防水
層を形成するに歩行型とする場合に、膨出部分の防水カ
バー部材４が踏まれたとしても固定部材３に受け止めさ
せることで防水カバー部材４の破損を少なくできる。な
お、４ａは、切断部分を示すとともに切断を容易化する
ための肉薄部である。

【００２１】〈４〉 図示はしないが、固定部材３に対
して防水カバー部材４を非接着状態に覆せるに際して、
先の実施例で説明したように防水カバー部材４に膨出部
分を形成する等の手段で形成した空間により防水カバー
部材を固定部材から離隔する構成に替えて、単に固定部
材３の当接する部分には接着剤を用いない等の手法で非
接着状態を現出してもよい。

【００２２】〈５〉 防水カバー部材に設ける目印は、
膨出形成そのものによって構成するものの他、例えば、
防水シートや防水カバー部材にラインやドットを塗装し
たりする手法を用いる等適宜変更が可能である。

【００２３】〈６〉 固定部材３の一つの構成部材であ
るプレート部材は、先の実施例では塩ビ被覆した鋼製の
プレート部材５を例に挙げて説明したが、それに替え
て、種々の形状・材質のものを採用できる。

【００２４】〈７〉 防水カバー部材を接着する手段と
しては、接着剤を用いるもの、熱融着によるもの、溶剤
溶着によるもの、等の他、任意の手段を、単独で或いは
適宜組み合わせて用いることができる。

【００２５】〈８〉 防水層を構成する防水シート及び
防水カバー部材の材質は適宜変更自在である。また、防
水シートと躯体との間に、例えば、断熱シートや不陸調
整用シートや躯体表面調整用シートや絶縁シート等を介
在させることも可能である。また、前記躯体は、現場打
ち鉄筋コンクリートからなるものの他、工場生産のＡＬ
ＣパネルやＰＣパネル等から構成されるものであっても
よい。

【００２６】尚、特許請求の範囲の項に、図面との対照
を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明
は添付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例の防水層固定部構造を示す断面図

【図２】実施例の防水層固定部構造を示す一部切欠斜視
図

【図３】実施例の防水層形成方法を示す分解斜視図

【図４】実施例の防水層やりかえ手順を示す分解斜視図

【図５】やりかえた防水層を示す断面図

【図６】別実施例の防水層形成手順を示す斜視図

【図７】別実施例の防水層やりかえ手順を示す分解斜視
図

【図８】別実施例の防水層やりかえ手順を示す分解斜視
図

【図９】別実施例の防水層固定部を示す断面図

【図１０】別実施例の防水層固定部を示す断面図

【符号の説明】

１ 躯体 ２ 防水シート ３ 固定部材 ４ 防水カバー部材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 隆司 大阪府吹田市江の木町24番10号 株式会社 ヤマデ内 (72)発明者 勝間 康晴 大阪府吹田市江の木町24番10号 株式会社 ヤマデ内 (72)発明者 山部 亮一 大阪府吹田市江の木町24番10号 株式会社 ヤマデ内 (72)発明者 坂植 理夫 大阪府吹田市江の木町24番10号 株式会社 ヤマデ内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 躯体（１）上に防水シート（２）を配置
   し、前記防水シート（２）を固定部材（３）によって前
   記躯体（１）に固定し、前記固定部材（３）を覆った状
   態で前記固定部材（３）による前記躯体（１）への固定
   箇所を防水する防水カバー部材（４）を設けてある防水
   層の固定部構造であって、 前記防水カバー部材（４）を、前記固定部材（３）に対
   して非接着状態に被せて前記防水シート（２）に接着し
   てあると共に、前記防水カバー部材（４）に、前記固定
   部材（３）に対応する箇所に目印を設けてある防水層の
   固定部構造。
2. 【請求項２】 前記固定部材（３）に対応する箇所の前
   記防水カバー部材（４）を膨出形成することで、その膨
   出部の内部空間によって前記防水カバー部材（４）を固
   定部材（３）から非接着状態に離隔すると共に、その膨
   出形態をもって前記目印を構成している請求項１に記載
   の防水層の固定部構造。