JPH0899175A - ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

ガスシールドアーク溶接方法

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JPH0899175A
JPH0899175A JP23570994A JP23570994A JPH0899175A JP H0899175 A JPH0899175 A JP H0899175A JP 23570994 A JP23570994 A JP 23570994A JP 23570994 A JP23570994 A JP 23570994A JP H0899175 A JPH0899175 A JP H0899175A
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水 孝 夫 冷
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藤 穆 近
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 引張強度が690N/mm以上の高張力を
有する板厚10mm以下程度の高張力薄鋼板の溶接を行
ったときでも、溶接金属の機械的性質を良好なものにす
ることが可能であると共にスパッタの発生が少なく溶接
作業性にも優れたものとすることができるガスシールド
アーク溶接方法を提供する。 【構成】 重量%で、C:0.15%以下、Si:0.
3〜0.9%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.02
%以下、S:0.02%以下、Ti:0.02〜0.2
0%、Al:0.10%以下、B:0.001〜0.0
04%、O:0.010%以下、N:0.015%以
下、残部Feおよび不純物よりなる溶接用ワイヤを用
い、アルゴンガスと炭酸ガスとの混合量がAr+5〜5
0体積%である混合ガスをシールドガスとしてパルスア
ーク方式によりパルスマグ溶接を行うガスシールドアー
ク溶接方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、引張強度が590N/
mm(60kgf/mm)級ないしは690N/m
(70kgf/mm)級の高張力を有しかつまた
板厚が10mm以下の高張力薄鋼板の溶接にも好適であ
って、このような高張力薄鋼板を使用した自動車,建設
機械等々のパネルやフレームなどの溶接に利用するのに
適したガスシールドアーク溶接方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、溶接方法には、電気的エネルギ
−,化学的エネルギー,機械的エネルギー,超音波エネ
ルギー,光エネルギーなどを用いたものがあり、電気的
エネルギーを用いたものには、アーク溶接法,抵抗溶接
法,高周波溶接法,電子ビーム溶接法,エレクトロスラ
グ溶接法,プラズマ溶接法などがあり、アーク溶接法に
は、被覆アーク溶接法,サブマージアーク溶接法,ガス
シールドアーク溶接法,セルフシールドアーク溶接法な
どがある。
【0003】そして、ガスシールドアーク溶接法には、
シールドガスとして炭酸ガスを用いる炭酸ガスアーク溶
接法、アルゴン等の不活性ガスと炭酸ガスとの混合ガス
を用いる混合ガスシールドアーク溶接法(マグ溶接法
(MAG溶接法;MetalActive Gas w
elding method))などがある。
【0004】一方、引張強度が590N/mm(60
kgf/mm)級ないしは690N/mm(70k
gf/mm)級の高張力鋼が開発されており、従来は
建築用鉄骨や橋梁用鋼材などの比較的板厚の大きい用途
に用いられていた。
【0005】他方、自動車の分野においては、車体重量
の軽減による走行性能の向上,低燃費化の要請が絶えず
なされており、上記したような高張力鋼板、とくに板厚
が10mm以下程度の高張力薄鋼板の採用が、ドアアウ
タ,フロントフェンダ,フロントサイドメンバ,リヤサ
イドメンバ,フロアフレームなどに使用されるようにな
ってきている。
【0006】また、このような高張力鋼の溶接に使用さ
れる溶接用ワイヤとして、例えば、JIS Z 331
2に制定されているYGW21,YGW22等があっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の高張力鋼溶接用ワイヤを用いて、自動車用等
に使用される板厚が10mm以下程度の高張力薄鋼板を
溶接する場合には、溶接により得られる溶接金属が硬化
しすぎるために溶接継手部分の靭延性が低下したり、溶
接作業時にスパッタの発生が多いために溶接作業性が低
下したりすることがあるという問題点があったため、こ
のような問題点を解決することが課題であった。
【0008】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、引張強度が590N/m
以上ないしは690N/mm以上の高張力を有す
る板厚10mm以下程度の高張力薄鋼板の溶接を行なっ
たときでも、溶接金属の機械的性質を良好なものにする
ことが可能であると共に、溶接時におけるスパッタの発
生が少なく溶接作業性にも優れたものとすることが可能
であるガスシールドアーク溶接方法を提供することを目
的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるガスシー
ルドアーク溶接方法は、重量%で、C:0.15%以
下、Si:0.3〜0.9%、Mn:1.2〜2.5
%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Ti:
0.02〜0.20%、Al:0.10%以下、B:
0.001〜0.004%、O:0.010%以下、
N:0.015%以下、残部Feおよび不純物よりなる
溶接用ワイヤを用い、不活性ガスと炭酸ガスとの混合ガ
スをシールドガスとしてパルスアーク方式によりパルス
マグ溶接するようにしたことを特徴としている。
【0010】そして、本発明に係わるガスシールドアー
ク溶接方法の実施態様にあっては、パルスマグ溶接にお
いてアルゴンガスと炭酸ガスと(場合によっては少量の
酸素ガスと)の混合ガスをシールドガスとし、Ar+5
〜50体積%COの混合ガスをシールドガスとして用
いるようにすることができる。
【0011】また、同じく、本発明によるガスシールド
アーク溶接方法の実施態様においては、パルスアーク方
式によりパルスマグ溶接するに際してのパルス周波数を
60〜120Hzとしたり、パルス幅を1.0〜1.3
msecとしたり、ピーク溶接電流を420〜480
A,平均溶接電流を280A以下としたり、入熱量を1
5kJ/cm以下としたり、溶接速度を80cm/mi
n以上としたりすることができる。
【0012】また、本発明によるガスシールドアーク溶
接方法の実施態様においては、溶接後に得られる溶接金
属の引張強度が690N/mm以上であって、引張強
度690N/mm級の高張力薄鋼板よりなる被溶接材
料の溶接に適用されるものとすることができる。
【0013】次に、本発明に係わるガスシールドアーク
溶接方法において用いられる溶接用ワイヤの成分組成
(重量%)の限定理由について説明する。
【0014】C:0.15%以下 Cは溶接後に得られる溶接金属の強度を高めるのに有効
な必須の元素であるが、過剰に含有すると溶接金属の硬
さが増大して靭延性の低下を来たすこととなるので、
0.15%以下としている。
【0015】Si:0.3〜0.9% シールドガス中に炭酸ガスを含むマグ溶接を行う場合に
は、高温で炭酸ガスが解離して酸素を発生することによ
り酸化性を有するものとなるので、Siは溶接金属の脱
酸のために添加する。しかし、Si含有量が0.3%未
満では十分な脱酸作用を得ることができないので、0.
3%以上としている。他方、Si含有量が多すぎると、
溶接金属の靭延性が低下することとなるので、0.9%
以下としている。
【0016】Mn:1.2〜2.5% Mnは上記Siと同様に、溶接金属の脱酸のため、なら
びに、溶接金属の強度および靭延性を向上させるために
添加するが、Mn含有量が1.2%未満では十分な作用
を得ることができないので、1.2%以上としている。
しかし、Mn含有量が多すぎると、溶接時にスパッタの
発生量が増加して溶接作業性を低下させることとなるの
で、2.5%以下としている。
【0017】P:0.02%以下 P含有量が多すぎると、溶接金属に割れを発生させる原
因となるので、P含有量は少ないことが望ましく、0.
02%以下としている。
【0018】S:0.02%以下 S含有量が多すぎると、Pと同様に、溶接金属に割れを
発生させる原因となるので、S含有量は少ないことが望
ましく、0.02%以下としている。
【0019】Ti:0.02〜0.20% Tiは、上記SiやMnと同様に、シールドガス中に含
まれる炭酸ガスは溶接アーク中で強い酸化性を示すの
で、溶接金属の脱酸のために添加すると共に、高電流域
における溶接アークの安定化とスパッタ発生量の減少の
ため、および溶接金属の結晶粒微細化などのために添加
するが、これらの作用を良好に得るために、Ti含有量
は0.02%以上としている。しかし、Ti含有量を必
要以上に多くしても上記作用は増大しないとともに、む
しろ溶接金属の靭延性を低下させることとなるので、
0.20%以下としている。
【0020】Al:0.10%以下 Alは、上記Si,Mn,Tiと同様に溶接金属の脱酸
のために添加するが、Al含有量が多すぎると溶接作業
時にスパッタの発生量が多くなるので、0.10%以下
としている。
【0021】B:0.001〜0.004% Bは、溶接後に得られる溶接金属の組織を微細化し、そ
の強靭性を増加させる作用の著しい元素であるので、
0.001%以上含有させることとしている。しかし、
過剰に添加してもその作用はさほど向上しないと共に、
むしろ溶接作業時にスパッタの発生量を増加させること
となるので、B含有量は0.004%以下としている。
【0022】O:0.010%以下 O含有量が多いと溶接金属の機械的性質を低下させるこ
ととなるので、できるだけ少ないことが望ましく、0.
01%以下としている。
【0023】N:0.015%以下 N含有量が多いと溶接金属の機械的性質を低下させるこ
ととなるので、できるだけ少ないことが望ましく、0.
015%以下としている。
【0024】Fe:残部 Feは溶接金属の基本成分であるので不純物と共に残部
としている。そして、このようなFe基地中の合金元素
として上記のほかに、例えば、3%以下のNi,3%以
下のCr,2%以下のMo,2%以下のCu,2%以下
のV等の1種または2種以上を添加することによって、
溶接金属の強度および靭性が向上するようにし、溶接入
熱を大きくしたときでも強度および靭性が低下するのを
防止するようになすことも可能ではあるが、とくに低コ
ストが要求される場合には、このような合金元素の添加
は価格の上昇をもたらすこととなる。
【0025】次に、このような成分組成を有する溶接用
ワイヤを用い、不活性ガスと炭酸ガスと(場合によって
は少量の酸素ガスと)の混合ガスをシールドガスとして
パルスアーク方式によりパルスマグ溶接するに際し、上
記混合ガスよりなるシールドガスとしては、Ar+5〜
50体積%COガスを用いることが望ましい。
【0026】すなわち、シールドガス中において不活性
ガス例えばArガスの含有量が多いときには溶接金属の
強度は向上するものとなるが、Arガス中のCOガス
量を5体積%以上とすることによって、アークの安定性
が向上するものとなる。
【0027】一方、Arガス中のCOガス量が50体
積%以上となると相対的にArガス量が少なくなって溶
接時におけるスパッタ発生量が多くなると共に溶接金属
の強度が低下することとなるので、COガスの混合量
は5〜50体積%とするのが良い。
【0028】本発明では、上記した成分組成を有する溶
接用ワイヤを用い、上記した混合ガスをシールドガスと
してパルスアーク方式によりパルスマグ溶接を行うよう
にしているが、このようなパルスマグ溶接では、これを
自動車用高張力薄鋼板の溶接に適用した場合に、溶接速
度を上昇できると共に、薄板の溶接に際して入熱過剰に
ならないために所望の溶接継手を得やすく、さらには溶
接時のスパッタ発生量が少ないため溶接作業性を良好な
ものにできるなどといった利点がもたらされる。
【0029】そして、このようなパルスマグ溶接を行う
場合におけるパルス周波数としては、60〜120Hz
とすることが望ましく、この場合、パルス周波数が60
Hzよりも低いとスパッタ発生量は低下するものの入熱
量が不足し、融合不良などの欠陥が発生しやすくなるの
で好ましくなく、反対に、パルス周波数が120Hzよ
りも高いとスパッタ発生量が多くなったり、入熱量が過
大になり溶け落ちが生じやすくなったりすることがある
ので好ましくない。
【0030】さらに、パルスマグ溶接を行う場合におけ
るパルス幅は、1.0〜1.3msecとすることが望
ましく、パルス幅が小さすぎると入熱不足となって溶け
込みが不安定になりやすく、パルス幅が大きすぎると入
熱過剰となって溶接金属の靭延性が低下したりスパッタ
発生量が増大したりするので好ましくない。
【0031】さらにまた、パルスマグ溶接を行う場合に
おけるピーク溶接電流を420〜480A,平均溶接電
流を280A以下とすることが望ましく、ピーク溶接電
流が小さすぎると入熱不足となって溶け込みが不安定に
なることがあり、反対にピーク溶接電流が大きすぎた
り、平均溶接電流が大きすぎるときには、入熱量が過大
なものとなって溶接金属の靭延性が低下したり、溶け落
ちが発生しやすくなったりするので好ましくない。そし
て、ベース溶接電流は50A程度とすることができる。
【0032】さらにまた、パルスマグ溶接を行う場合に
おける入熱量は15kJ/cm以下とすることが望まし
く、入熱量が過大になると溶接金属の強度および靭性な
どの機械的性質が劣化するので好ましくない。
【0033】さらにまた、パルスマグ溶接を行う場合に
おける溶接速度を80cm/min以上とし、溶接部へ
の入熱量が過大なものとならないようにすることが望ま
しい。
【0034】前述のような溶接用ワイヤを用いて上記し
た溶接条件によりパルスマグ溶接を行うことによって、
引張強度590N/mm以上、ないしは引張強度69
0N/mm以上の高張力を有する板厚10mm以下程
度の高張力薄鋼板の溶接を実施したときでも、溶接部分
への入熱量が過大にならず、溶接金属の硬さが過大なも
のとならないことから、強度および靭性の優れた溶接継
手が得られると共に、溶接時においてスパッタの発生量
が少ないために溶接作業性も良好な溶接を行うことが可
能となり、かつまた均一なビードからなる溶接金属を得
ることができると共に溶け込みが安定した溶接金属を得
ることができ、このような溶接条件(例えば、溶接入熱
(kJ/cm)=[60×電流(A)×電圧(V)]/
[溶接速度(cm)]をもとにしてパルス周波数,パル
ス幅,ピーク溶接電流,平均溶接電流,ベース溶接電流
等を選定することによる適切な溶接入熱が与えられる溶
接条件)を適切に選定することによって高張力薄鋼板に
対する良好なガスシールドアーク溶接を行うことが可能
となって、全姿勢溶接にも適用することが可能となる。
【0035】
【発明の作用】本発明に係わるガスシールドアーク溶接
方法では、重量%で、C:0.15%以下、Si:0.
3〜0.9%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.02
%以下、S:0.02%以下、Ti:0.02〜0.2
0%、Al:0.10%以下、B:0.001〜0.0
04%、O:0.010%以下、N:0.015%以
下、残部Feおよび不純物よりなる溶接用ワイヤを用
い、不活性ガスと炭酸ガスとの混合ガスをシールドガス
としてパルスアーク方式によりパルスマグ溶接するよう
にしたから、引張強度が590N/mm以上ないしは
690N/mm以上の高張力を有する板厚10mm以
下程度の高張力薄鋼板の溶接を行ったときでも、溶接金
属の硬さが過大なものとならず靭性が良好なものとなっ
て溶接金属の引張強度が590N/mm以上ないしは
690N/mm以上で被溶接母材である高張力薄鋼板
と同程度の引張強度が得られると共にしかも靭性も良好
であって機械的性質に優れたものとなり、溶接時のスパ
ッタ発生量も少ないものとなって溶接作業性が良好なガ
スシールドアーク溶接が行えるものとなる。
【0036】そして、実施態様にあっては、パルスマグ
溶接においてアルゴンガスと炭酸ガスとの混合ガスをシ
ールドガスとし、Ar+5〜50体積%COの混合ガ
スを用いるようにすることによって、アーク安定性や溶
滴の移行性がより一層良好なものになると共に溶接金属
の強度および靭性もより一層良好なものとなる。
【0037】また、パルスアーク方式によりパルスマグ
溶接するに際してのパルス周波数を60〜120Hzと
したり、パルス幅を1.0〜1.3msecとしたり、
ピーク溶接電流を420〜480A,平均溶接電流を2
80A以下としたり、入熱量を15kJ/cm以下とし
たり、溶接速度を80cm/min以上としたりするこ
とによって、溶接部分への入熱量が不足したり過剰とな
ったりすることがなく、溶接金属のビードが均一なもの
になると共に溶け込みが安定したものとなり、溶接金属
の強度および靭性が良好なものになると共に溶接時にお
けるスパッタ発生量が減少して溶接作業性が良好なもの
となる。
【0038】したがって、溶接金属の引張強度が690
N/mm以上のものが得られることとなって、引張強
度が690N/mm以上の高張力薄鋼板よりなる被溶
接材料の溶接にも適したものとなる。
【0039】
【実施例】容量2トンの電気アーク炉を用いて表1に示
す化学成分組成の鋼(鋼種A〜G)を溶製したのち、分
塊圧延,線材圧延ならびに冷間伸線および電気めっきを
含む工程を経ることによって、線径1.2mmのガスシ
ールドアーク溶接用ワイヤを製造した。
【0040】
【表1】
【0041】一方、表2に示す化学成分組成を有しかつ
板厚が2.4mm,引張強度が690N/mm(70
kgf/mm)級の高張力鋼板を用意し、開先角度を
30°として、上記各ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
を用いて、JIS Z 3121に制定されている突合
せ溶接継手の引張試験方法に準じて突合せ溶接を実施し
た。このときの溶接条件を表3に示す。また、溶接時に
はスパッタの発生状況を観察した。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】そして、溶接後において、溶接継手部を含
む高張力薄鋼板から、JIS Z3121に制定する1
号引張試験片を切出して、この引張試験片を用いた引張
試験を行った。
【0045】また、上記溶接継手部を含む高張力薄鋼板
から、JIS Z 3128に制定する溶接継手の衝撃
試験方法に準じて、JIS Z 2202に制定する1
/4サイズ4号試験片(幅:2.5mm)を切り出し、
この衝撃試験片を用いたシャルピー衝撃試験を行った。
これらの結果を表4に示す。なお、衝撃試験において評
価した靭性は、衝撃吸収エネルギーで表わしている。
【0046】
【表4】
【0047】表1および表4に示すように、溶接用ワイ
ヤの化学成分組成が適切であり、また、溶接条件も適切
である試験No.1,3,6,7においては、溶接金属
の強度および靭性が良好であると共に、溶接時のスパッ
タの発生も少ないことが認められた。
【0048】一方、パルス幅が大きめである供試No.
2では、溶接金属の強度および靭性は良好であるが、ス
パッタ発生量がやや多いものとなっていた。また、パル
ス幅が小さめである供試No.5においても、溶接金属
の強度および靭性は良好であるが、スパッタ発生量がや
や多いものとなっていた。
【0049】他方、溶接の際の入熱量が多い供試No.
4では、溶接金属の強度および靭性があまり良くないも
のとなっていた。
【0050】さらに、シールドガス中のCO量が多い
供試No.8では、スパッタ発生量が多いものとなって
いた。
【0051】さらにまた、溶接用ワイヤの化学成分にお
いてBを含有していない供試No.9,10では、溶接
金属の強度が溶接母材である高張力薄鋼板の強度に比べ
て低いものとなっており、また、溶接用ワイヤの化学成
分において、C,Si,Mn,Tiの含有量が多い供試
No.11では溶接金属の引張強度が過大であって靭性
がかなり劣っていると共に、スパッタ発生量も多いもの
となっていた。
【0052】
【発明の効果】本発明に係わるガスシールドアーク溶接
方法では、重量%で、C:0.15%以下、Si:0.
3〜0.9%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.02
%以下、S:0.02%以下、Ti:0.02〜0.2
0%、Al:0.10%以下、B:0.001〜0.0
04%、O:0.010%以下、N:0.015%以
下、残部Feおよび不純物よりなる溶接用ワイヤを用
い、不活性ガスと炭酸ガスとの混合ガスをシールドガス
としてパルスアーク方式によりパルスマグ溶接する構成
としたから、引張強度が590N/mm以上ないしは
690N/mm以上の高張力を有する板厚10mm以
下程度の高張力薄鋼板の溶接を行ったときでも、溶接金
属の硬さが大きくなりすぎない適度なものにすることが
可能であって溶接金属の靭性を良好なものにすることが
可能であり、溶接金属の機械的性質を優れたものにする
ことが可能であると共に、溶接時のスパッタ発生量を少
ないものにすることが可能であって溶接作業性を良好な
ものにすることが可能であり、自動車用フレーム材やパ
ネル材への高張力鋼板の適用をさらに増大させることが
可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0053】そして、パルスマグ溶接において、アルゴ
ンガスと炭酸ガスとの混合ガスをシールドガスとし、A
r+5〜50体積%COの混合ガスを用いることによ
って溶接時のアーク安定性や溶滴の移行性をより一層良
好なものとすることができると共に溶接金属の強度およ
び靭性をより一層良好なものとすることが可能である。
【0054】また、パルスアーク方式によりパルスマグ
溶接するに際してのパルス周波数を60〜120Hzと
したり、パルス幅を1.0〜1.3msecとしたり、
ピーク溶接電流を420〜480A,平均溶接電流を2
80A以下としたり、入熱量を15kJ/cm以下とし
たり、溶接速度を80cm/min以上としたりするこ
とによって、溶接部分への入熱量を適切なものとするこ
とが可能となって、溶接金属のビードを均一なものにす
ることが可能であると共に溶け込みを安定したものとす
ることが可能であり、溶接金属の強度および靭性を良好
なものとすることが可能であると共に、溶接時における
スパッタ発生量を減少させて溶接作業性を良好なものと
することが可能である。
【0055】そして、溶接金属の引張強度を690N/
mm以上のものとすることが可能であることから、引
張強度が690N/mm以上の高張力薄鋼板よりなる
被溶接材料の溶接にも適したものとなり、自動車のパネ
ル材やフレーム材等への高張力鋼板の適用をさらに拡大
させることが可能になるという著しく優れた効果がもた
らされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹之内 優 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.15%以下、Si:
    0.3〜0.9%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.
    02%以下、S:0.02%以下、Ti:0.02〜
    0.20%、Al:0.10%以下、B:0.001〜
    0.004%、O:0.010%以下、N:0.015
    %以下、残部Feおよび不純物よりなる溶接用ワイヤを
    用い、不活性ガスと炭酸ガスとの混合ガスをシールドガ
    スとしてパルスアーク方式によりパルスマグ溶接するこ
    とを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
  2. 【請求項2】 パルスマグ溶接においてアルゴンガスと
    炭酸ガスとの混合ガスをシールドガスとし、Ar+5〜
    50体積%COの混合ガスをシールドガスとして用い
    ることを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアー
    ク溶接方法。
  3. 【請求項3】 パルスアーク方式によりパルスマグ溶接
    するに際してのパルス周波数を60〜120Hzとする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のガスシール
    ドアーク溶接方法。
  4. 【請求項4】 パルスアーク方式によりパルスマグ溶接
    するに際してのパルス幅を1.0〜1.3msecとす
    ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載
    のガスシールドアーク溶接方法。
  5. 【請求項5】 パルスアーク方式によりパルスマグ溶接
    するに際してのピーク溶接電流を420〜480A,平
    均溶接電流を280A以下とすることを特徴とする請求
    項1ないし4のいずれかに記載のガスシールドアーク溶
    接方法。
  6. 【請求項6】 パルスアーク方式によりパルスマグ溶接
    するに際しての入熱量を15kJ/cm以下とすること
    を特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のガス
    シールドアーク溶接方法。
  7. 【請求項7】 パルスアーク方式によりパルスマグ溶接
    するに際しての溶接速度を80cm/min以上とする
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の
    ガスシールドアーク溶接方法。
  8. 【請求項8】 溶接後に得られる溶接金属の引張強度が
    690N/mm以上であって、引張強度690N/m
    級の高張力薄鋼板よりなる被溶接材料の溶接に適用
    されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに
    記載のガスシールドアーク溶接方法。
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