JPH08990B2 - 超高純度銅の製造方法 - Google Patents

超高純度銅の製造方法

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JPH08990B2 JP1002848A JP284889A JPH08990B2 JP H08990 B2 JPH08990 B2 JP H08990B2 JP 1002848 A JP1002848 A JP 1002848A JP 284889 A JP284889 A JP 284889A JP H08990 B2 JPH08990 B2 JP H08990B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、純度が99.99999%(7N)以上の超高純度銅
及びその製造方法に関し、特に常温での伸び30%以上、
ビッカース硬度42以下という金に近い特性を有する、IC
ボンディングワイヤー用等の新規用途に適した銅材に関
する。
[従来の技術] 従来、高純度銅の製造方法としては、硫酸酸性硫酸銅
電解法や硝酸酸性硝酸銅電解法或いは帯熔融精製法を何
回か繰返す方法、又はこれらの手法を組合せて精製を行
なう方法などが知られていた。しかしながら、これらの
従来の方法では最終純度5N〜6Nが限界であり、その場合
の最も除去困難な不可避不純物は主にAgとSであること
が知られていた。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら近年、ICボンディングワイヤー用等エレ
クトロニクス分野や超電導安定化材料用等の新規分野に
おいては、従来不可避不純物としてある程度の混入が容
認されていたAg、及びSまでもが徹底的に除去された7N
グレイドの超高純度銅材の豊富な供給が望まれていた。
しかしながら、従来の製造技術では、上述純度の達成は
難しく何らかの解決策を講じることが望まれていた。
[課題を解決する為の手段] 本発明者等は、斯かる課題を解決するため鋭意研究を
行なった結果、液温、液電位、添加剤の種類および量等
の諸条件を極めて厳密に制御しながら、精製原料として
の高純度銅を陽極とし、硫酸酸性硫酸銅溶液を電解液と
して100A/m2以下の陰極及び陽極電流密度で精製電解を
行ない、陰極種板上に第一次精製銅を得た後、続いて、
前記第一次精製銅を陽極とし、硝酸酸性硝酸銅溶液を電
解液として、100A/m2以下の陰極及び陽極電流密度で精
製電解を行ない、陰極種板上に第二次精製銅を得ること
からなる2段構えの精製電解を慎重に実施することによ
り、99.99999%(7N)以上の超高純度銅を安定的に製造
することが可能であることを見出し、本発明を達成し
た。さらに、上記電解精製法において電解時の電解液電
位を極低電位領域に移行させることにより、Ag及びSが
極めて顕著に除去され得ることを発見し、またその液電
位を調整する媒体として水素ガス又は/及びヒドラジン
又は/及びその他の還元剤の存在が極めて有効であるこ
とを見い出した。
すなわち、本発明者等は、従来の一般電解精製法によ
る銅の精製において、電解時の液電位を、好ましくは還
元剤の使用により、通常では到底出来ない低電位領域へ
故意に移行させることにより、たとえば硫酸酸性硫酸銅
電解においてAgがより強力に除去され、また、従来Agの
除去には不適当とされていた硝酸酸性硝酸銅電解におい
ても、極微量AgレベルにおいてもAgの除去がなされ、か
つSは完全に除去されることを確認した。
すなわち、本発明は、上記の方法により、また、さら
に好ましくは電解浴に、たとえば水素ガス又は/及びヒ
ドラジン又は/及びその他適用可能な還元剤を作用させ
る等の手段により、故意に液電位を低下させ、かつそれ
を維持し、通常では存在しえない液電位領域で電解精製
を行なうことによって、純度99.99999%(7N)以上の超
高純度銅を製造することのできる全く新規な銅の電解精
製法を提供するものである。この方法によって得られる
製品は、常温での伸びが30%以上であり、ビッカース硬
度が42以下であり、純度が99.99999%(7N)以上である
ことを特徴とする超高純度銅である。
[作用] 本発明は、第一工程が硫酸酸性硫酸銅電解による第一
次精製であり、続く第二工程が硝酸酸性硝酸銅電解によ
る第二次精製であり、好ましくは、これら電解工程にお
ける電解浴液電位が極低電位レベルに故意に制御されて
いることを特徴とする銅の電解精製法である。すなわ
ち、精製工程が二段の電解精製により構成されている。
必要に応じ、第二次精製銅を真空脱ガス処理した後真空
鋳造してさらに純度を高めることも可能である。
銅の電解精製におけるAgの陰極への放電析出の経路は
大きく分けて、以下の2つが考えられる。
陽極分極圧の上昇により一部のAgが電気化学的に溶
出し、陰極へ放電析出する。
陽極スライムからAgの自然溶解が起り、陰極へ拡散
し、放電析出する。
上記の経路によるAgの溶出を防ぐためには、陽極分
極圧を低下維持させることが必要であり、それには陽極
電流密度を低く設定し、かつ、電解液の銅濃度を、陰極
電着状態に支障を及ぼさない範囲で低く抑えることが肝
要である。電解液の銅濃度を低くすることにより、さら
には、陽極スライムの陽極溶解面からの離脱が容易とな
り、陽極溶解面近傍の銅イオンの拡散及び陰イオンの補
給が充分になされ、陽極分極圧の低下が達成される。本
発明方法では、第一工程及び第二工程共に、電解液の銅
濃度は30g/l以下に設定されており、かつ陽極電流密度
に関しては、電解終了時点で100A/m2を超えないように
配慮して設定されている。
また及びいずれに関しても、電解液の温度の設定
は重要な因子となる。すなわち高温設定においては陽極
分極圧低下を招き、に関しては望ましいがのAgの自
然溶解を助長し、かつ陰極分極圧が低下し陰極電着荒を
招くと考えられる。したがって本発明においては、温度
選定に関しては、陽極及び陰極分極圧並びにスライムの
溶出等の点から総合的に判断され、30〜50℃が最適温度
範囲と決定された。本発明においては、たとえば硫酸酸
性硫酸銅電解(たとえば、Cu:25g/l,F.A.160g/l,陰極及
び陽極電流密度90A/m2)において電解液温度20℃におい
ては陽極不働態化現象が起き、回収電気銅中Agの増加が
観察された。一方、高温電解試験(60℃)においては、
陰極分極圧低下により、平滑剤としてのゼラチンの効果
が薄れ、極端な陰極電着荒を起こし、局部的に電解液の
巻き込みが観察された。したがって本発明方法における
電解液温は20℃より高く、60℃より低くする必要があ
る。望ましい液温度は30〜50℃であり、より好ましくは
40±5℃であることが確認された。
一方、従来、銅の電解精製において電解液中のAgを除
去する目的で遊離塩素を共存させる方法が公知である。
本発明方法における第一工程においては、従来法におけ
る一般の遊離塩素の添加量が30〜60mg/lであったのに比
し、遊離塩素100〜500mg/lを用いている。より好ましい
添加量は150〜250mg/lである。このように従来の添加量
に比し多くした理由は、より積極的にAgを除去する目的
に寄与させる遊離塩素の他に、ゼラチンとの組合せ効果
により、陰極電着状態における平滑化傾向を顕著に改善
させるための遊離塩素の存在が必要であることを見出し
たからである。
なお、第二工程は、通常、精製の最終工程であるた
め、汚染防止の目的から、遊離塩素は全く添加せず、純
粋な硝酸酸性硝酸銅浴を用いることが好ましい。本発明
の方法においては、第一工程で硫酸酸性硫酸銅電解を採
用し、電解の諸条件を通常、銅濃度30g/l以下、遊離硫
酸160〜180g/l、温度30〜50℃、遊離塩素100〜500mg/
l、ゼラチン30〜80g/t電着銅とすることができる。より
好ましい電解条件の一例は、銅濃度20〜25g/l、遊離硫
酸濃度170g/l、温度40±5℃、遊離塩素150〜250mg/lで
あり、陰極及び陽極電流密度は100A/m2以下、好ましく
は50A/m2以下である。
また、第二工程では、第一工程で得られた電気銅(第
一次精製銅)を陽極に用い、通常、pHが1.5前後の硝酸
酸性硝酸銅浴において電解精製を行なう。銅濃度、電解
液温度及び電流密度等の条件は第一工程と全く同じでよ
いが、ゼラチン等の有機質添加剤及び遊離塩素の添加は
全くしないのが好ましいことは既述の通りである。
次に電解液の液電位の作用について述べる。本発明に
おいては、電解液電位を極低電位領域まで故意に低下維
持し電解することにより、特に第一工程においてはAgの
除去が、また第二工程においてはAg及びSの除去が極め
て顕著であることを見い出したものである。即ち、たと
えば第一工程において、銅濃度25g/l、電解液温度40
℃、遊離硫酸160g/l、遊離塩素200mg/l、陰極及び陽極
電流密度は50A/m2、陽極Ag品位が10ppm、電解液の波電
位が850mV(vs NHE)の条件で、電解回収された電気銅
中のAg品位が0.20ppmであったのに対し、故意に液電位
を660mV(vs NHE)まで下げた場合にはAg品位は0.09ppm
であった。
また、第二工程において、たとえば、銅濃度25g/l、
電解液温度40℃、pH=1.5、陰極及び陽極電流密度は50A
/m2、陽極Ag品位が0.13ppm、電解液の液電位が840mV(v
s NHE)の条件で、電解回収された電気銅中のAg品位が
0.10ppmであったのに対し、故意の還元剤投入により510
mV(vs NHE)まで下げ電解回収した電気銅中のAg品位は
0.03ppmであった。
またSに関しては、2.5ppmS含有の陽極を用い、上記
と同じ電解条件において、種々の液電位下で電解回収さ
れた電気銅中のS品位を調べたところ、850mV(vs NH
E)でS=0.05ppm、780mV(vs NHE)でS=0.02ppmであ
り、次に故意に還元剤を投入した低液電位下での電解、
730mV,670mV,530mV(vs NHE)では、回収電気銅中S品
位はすべて0.01ppm以下であった。
この理由については、必ずしも明確な説明は出来ない
が、本発明者等は、以下のごとく推測している。すなわ
ちAgに関しては、それぞれの液電位と平衡するAgイオン
濃度に着目した場合、たとえば通常の電位850mV(vs NH
E)では7.3モル/lであり、一方、故意に調整した液電位
600mV(vs NHE)では4.3×10-4モル/lであり、約10,000
倍以上の差を生ずると考えられる(データ;Atlas of El
ectrochemical Equilibria in Aqueous Solution;by Ma
rcel Pourbaix)。これにより陽極スライム中のAgの自
然溶解が抑えられ、したがって陽極電流密度を低く設定
し陽極分極圧を下げ、電気化学的なAgの溶解を抑えるこ
とにより低Ag電気銅の製造が可能になると思われる。一
方、第二工程における回収電気銅中Sの品位が電解液の
液電位に著しく関係する現象については、現状理論では
必ずしも説明が出来るものではない。
本発明方法は、好ましくは通常の電解精製における液
電位領域とは全く違う領域で電解を行なうものである。
このためには、故意の還元剤投入が極めて有効である。
還元剤存在の効果は、たとえばガスを用いる場合には、
アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスはほとんど効果
がなく、微量なりとも水素ガスの存在が必要であること
によっても裏付けられる。水素化物を還元剤とする場合
には、電解浴の汚染防止及び効果の点からヒドラジンが
最も有効である。ヒドラジンには、抱水ヒドラジン、塩
酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等があるが、電解浴中の
塩素イオンや硫酸根の蓄積を避ける意味から抱水ヒドラ
ジンが最適である。
硝酸酸性硝酸銅電解によって得られた第二次精製銅を
必要に応じ真空脱ガス処理した後、真空鋳造することか
らなる第三工程を経て得られる第三次精製銅は、さらに
純度の高められた超高純度銅となり得る。
以下実施例により、さらに詳細に説明する。
[実施例1] 第一工程 A鉱山産4N電気銅(品位;Ag=13ppm,S=7ppm)を陽極
として用い、硫酸酸性硫酸銅溶液中で以下の条件下によ
り電解精製を行なった。
銅濃度 25g /l 遊離硫酸 170g /l 遊離塩素 200mg/l ゼラチン 45g /t電着銅 液温度 40℃ 陰極電流密度 35A /m2 陽極電流密度 35A /m2(電解終了時) また電解浴液電位調整は、純水素ガスを用い、ガラス
ボールフィルターを介し、直接液中に吹き込み、約660m
V(vs NHE)へ低下させることによって行なった。な
お、液電位は電解途中に上昇傾向を示すため、適宜適時
水素ガスを吹き込んで安定させた。得られた電気銅の品
位は、Ag=0.08ppm,S=2.7ppmであった。
第二工程 第一工程で得られた電気銅を陽極として、硝酸酸性硝
酸銅溶液中で、以下の条件により電解精製を行なった。
銅濃度 25g/l pH 1.5 温度 40℃ 陰極電流密度 35A/m2 陽極電流密度 35A/m2(電解終了時) 液電位 530mV(vs NHE) なお、電解溶液電位の調整は、水素ガスを用い第一工
程と同様に行ない、さらに電解途中においては、特級グ
レイド抱水ヒドラジンも併用した。
得られた電気銅の品位を第1表に示す。
なお、分析はグロー放電質量分析装置によるものであ
る。
第1表 第二工程回収電気銅品位 (単位:ppm) Na<0.01 K <0.01 Mg<0.01 Al<0.01 Si<0.01 S <0.01 Fe<0.01 Ni<0.01 Cr<0.01 As<0.01 Sb<0.02 Bi<0.01 Ag 0.01 Pb<0.01 Zn<0.02 Cd<0.02 尚、同時に同電気銅をスパークソース型質量分析装置
に供し、品位を確認したところ、Ag以外は全く検出する
ことができなかった。従って、両質量分析によって評価
・検出された不純物はAgのみであり、その値は0.01ppm
であった。
これらの結果から、本発明法によって得られた銅材の
純度は99.99999%(7N)以上の優れた超高純度品である
ことが理解される。
尚、第二工程で得られた電気銅を黒鉛ルツボを用い1
×10-5torrの真空下で1150℃、2時間溶解処理を行なっ
た。次いで、本インゴットから各特性値測定用の試料片
を作製し、Ar雰囲気下500℃で1時間焼鈍処理を施し、
測定に供した。尚、比較のために、市販無酸素銅(4N)
についての測定結果も同時に記した。
[発明の効果] 以上のように本発明方法によって、従来法では得られ
なかった99.99999%(7N)以上の超高純度銅を簡易な手
段で得ることが可能になった。
これらの超高純度銅は、従来の4N銅や無酸素銅からは
つくれなかったICボンディングワイヤー、レーザー用ミ
ラー、酸化物系超電導体の安定化剤、高性能音響用ケー
ブル等の主として金材が用いられていた物品をつくるた
めの金材の代替品としての新規分野に広く用途をもつも
のである。
なお、本発明方法で使用できる還元剤には、本明細書
に開示したもののほかにも種々適用可能なものがあるこ
とは当業者の容易に理解するところであり、したがっ
て、いかなる修正も可能であり、そのような還元剤の使
用によって実施する方法も当然本発明の技術範囲に含ま
れるものである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(イ)精製原料としての高純度銅を陽極と
    し、硫酸酸性硫酸銅溶液を電解液として100A/m2以下の
    陰極及び陽極電流密度で精製電解を行ない、陰極種板上
    に第一次精製銅を得る第一工程;及び (ロ)前記第一次精製銅を陽極とし、硝酸酸性硝酸銅溶
    液を電解液として、100A/m2以下の陰極及び陽極電流密
    度で精製電解を行ない、陰極種板上に第二次精製銅を得
    る第二工程; からなることを特徴とする超高純度銅の製造方法。
  2. 【請求項2】(イ)精製原料としての高純度銅を陽極と
    し、硫酸酸性硫酸銅溶液を電解液として100A/m2以下の
    陰極及び陽極電流密度で精製電解を行ない、陰極種板上
    に第一次精製銅を得る第一工程; (ロ)前記第一次精製銅を陽極とし、硝酸酸性硝酸銅溶
    液を電解液として、100A/m2以下の陰極及び陽極電流密
    度で精製電解を行ない、陰極種板上に第二次精製銅を得
    る第二工程;及び (ハ)前記第二次精製銅を真空脱ガス処理した後、真空
    鋳造して第三次精製銅を得ることからなる第三工程; からなることを特徴とする超高純度銅の製造方法。
  3. 【請求項3】超高純度銅が純度99.99999%(7N)以上で
    ある請求項1または2記載の超高純度銅の製造方法。
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