JP6661953B2 - 高純度銅スパッタリングターゲット材 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、半導体装置、液晶や有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等において配線膜(高純度銅膜)を形成する際に用いられる高純度銅スパッタリングターゲット材に関するものである。
従来、半導体装置、液晶や有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等の配線膜としてAlが広く使用されている。最近では、配線膜の微細化(幅狭化)および薄膜化が図られており、従来よりも比抵抗の低い配線膜が求められている。
そこで、上述の配線膜の微細化および薄膜化にともない、Alよりも比抵抗の低い材料である銅(Cu)からなる配線膜が提供されている。
ところで、上述の配線膜は、通常、スパッタリングターゲットを用いて真空雰囲気中で成膜される。ここで、スパッタリングターゲットを用いて成膜を行う場合、スパッタリングターゲット内の異物に起因して異常放電(アーキング)が発生することがあり、そのため均一な配線膜を形成できないことがある。ここで異常放電とは、正常なスパッタリング時と比較して極端に高い電流が突然急激に流れて、異常に大きな放電が急激に発生してしまう現象であり、このような異常放電が発生すれば、パーティクルの発生原因となったり、配線膜の膜厚が不均一となったりしてしまうおそれがある。したがって、成膜時の異常放電はできるだけ回避することが望まれる。
そこで、下記の特許文献1〜5には、純銅のスパッタリングターゲットにおいて、成膜時における異常放電の発生を抑制する技術が提案されている。
特許文献1には、純度6N以上の高純度銅からなるスパッタリングターゲットが提案されている。この特許文献1に記載された高純度銅スパッタリングターゲットにおいては、P,S,O,Cの含有量をそれぞれ1ppm以下とするとともに、粒径0.5μm以上20μm以下の非金属介在物を30,000個/g以下とすることにより、スパッタリングターゲット内の異物を低減して、異常放電(アーキング)及びパーティクルの抑制を図っている。
特許文献2には、O、H、N、Cを除いたCuの純度が99.999980mass%以上99.999998mass%以下の範囲内とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下とされた高純度銅スパッタリングターゲットが提案されている。
特許文献3には、純度が99.96mass%以上である純銅インゴットを所定の条件で加工することにより、全粒界長さLに対する全特殊粒界長さLσの比率を25%以上とした純銅板(スパッタリングターゲット)が提案されている。また、ビッカース硬さが40〜90、平均結晶粒径が10〜120μmとされている。
特許文献4には、純度が99.99mass%以上である純銅からなり、平均結晶粒径が40μm以下とされ、EBSD法にて測定した全結晶粒界長さLとΣ3粒界長さLσ3及びΣ9粒界長さLσ9の和L(σ3+σ9)との比率である(Σ3+Σ9)粒界長さ比率(L(σ3+σ9)/L)が28%以上とされたスパッタリングターゲットが提案されている。
特許文献5には、純度が99.995mass%以上である純銅において、実質的に再結晶組織を有し、平均結晶粒径が80μm以下、かつビッカース硬さを100以下としたスパッタリングターゲットが提案されている。
特許第4680325号公報 特開2015−034337号公報 特開2011−162835号公報 特開2014−201814号公報 特開平11−158614号公報
ところで、最近では、半導体装置、液晶や有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等においては、配線膜のさらなる高密度化が求められており、従来にも増して、微細化および薄膜化された配線膜を安定して形成する必要がある。また、さらなる高速成膜のために高電圧を負荷する必要があり、この場合においても異常放電の発生を抑制することが求められている。
ここで、上述した特許文献1〜5に記載された発明においては、成膜中に異常放電(アーキング)を十分に抑制することができず、微細化および薄膜化された配線膜を効率良く安定して形成することができなかった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、高電圧を負荷した場合でも異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことができる高純度銅スパッタリングターゲット材を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の高純度銅スパッタリングターゲット材は、O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、電子後方散乱回折(Electron Backscattering Diffraction:EBSD)を用いた結晶方位測定(以後、単にEBSD 測定と呼ぶ)によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値(Grain Orientation Spread:GOS)が4°以下であり、平均結晶粒径が70μm以下とされ、ビッカース硬さが35Hv以上50Hv以下の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成の高純度銅スパッタリングターゲット材においては、O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされているので、スパッタリングターゲット内における酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、塩化物等からなる異物の発生を抑制でき、異物に起因した異常放電の発生を抑制することができる。さらに、成膜時におけるガスの発生を抑制して真空度を維持することができ、成膜を安定して実施することができる。
また、EBSD測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値が4°以下とされているので、結晶粒内における局所方位差が小さく、スパッタ時の2次電子の発生状況が安定することになり、異常放電の発生を抑制することが可能となる。
パッタレートは、結晶方位によって異なることから、スパッタが進行するとスパッタ面に、上述のスパッタレートの違いに起因して凹凸が生じる。スパッタ面のおける結晶粒の粒径が大きいと、この凹凸が大きくなり、凸部に電荷が集中して異常放電が発生しやすくなる。そこで、スパッタ面における平均結晶粒径を70μm以下に制限することで、異常放電の発生をさらに抑制することが可能となる。
またスパッタ面のビッカース硬さが50Hv以下に制限されているので、結晶粒内の内部ひずみが小さく、スパッタ時の2次電子の放出が均一となって、安定して成膜を行うことができる。また、内部ひずみを小さくすることでスパッタレートが均一になり、スパッタが進行した際にスパッタ面に凹凸が形成されることを抑制でき、異常放電の発生を抑制できる。
一方、スパッタ面のビッカース硬さが35Hv以上とされているので、結晶粒径を比較的小さくすることができ、スパッタが進行した際にスパッタ面に凹凸が形成されることを抑制でき、異常放電の発生を抑制できる。
本発明によれば、高電圧を負荷した場合でも異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことができる高純度銅スパッタリングターゲット材を提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る高純度銅スパッタリングターゲット材について説明する。
本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材は、半導体装置、液晶や有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等において配線膜として使用される高純度銅膜を基板上に成膜する際に用いられるものである。
そして、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材の組成は、O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされている。
また、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材においては、EBSD測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値(GOS)が4°以下とされている。
さらに、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材においては、平均結晶粒径が70μm以下とされるとともに、ビッカース硬さが35以上55Hv以下の範囲内とされている。
以下に、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材の組成、GOS、平均結晶粒径、ビッカース硬さを上述のように規定した理由について説明する。
(Cu:99.99998mass%以上)
配線膜(高純度銅膜)をスパッタにて成膜する場合、異常放電(アーキング)を抑えるために不純物を極力低減することが好ましい。ここで、Cuの純度が99.99998mass%以上であれば、精製処理を必要以上に行う必要がなく、製造コストが大幅に上昇することを抑制することができる。
(Al:0.005massppm以下)
Alは、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Alの含有量を0.005massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
(Si:0.05massppm以下)
Siは、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Siの含有量を0.05massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
(Fe:0.02massppm以下)
Feは、銅に比べて、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、高純度銅スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Feの含有量を0.02massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
(S:0.03massppm以下)
Sは、他の不純物元素と反応して硫化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい元素である。また、単体で存在している場合、成膜時にガス化及びイオン化し、真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.03massppm以下に制限している。
(Cl:0.1massppm以下)
Clは、他の不純物元素と反応して塩化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい元素である。また、単体で存在している場合、成膜時にガス化及びイオン化し、真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Clの含有量を0.1massppm以下に制限している。
(O、H、N:それぞれ1massppm以下)
スパッタリングターゲットで成膜する場合、真空中雰囲気で実施されることから、これらのガス成分が多く存在していると、成膜時に真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。また、異常放電によってパーティクルが発生し、高純度銅膜の品質が劣化してしまうおそれがある。以上のことから、本実施形態では、O、H、Nの含有量をそれぞれ1massppm以下に制限している。
(C:1massppm以下)
Cは、他の不純物元素と反応して炭化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい。また、Cは、単体としてもスパッタリングターゲット内に残存しやすいため、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を1massppm以下に制限している。
なお、本実施形態では、上述のように、各種の不純物元素の含有量の上限をそれぞれ設定しているが、O、H、N、Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上となるように、不純物元素の合計量を規制する必要がある。
ここで、O,H,N,Cを除く不純物元素の分析は、グロー放電質量分析装置(GD−MS)を用いて行うことができる。
また、Oの分析は、不活性ガス融解−赤外線吸収法、H,Nの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法、Cの分析は、燃焼−赤外線吸収法によって実施することができる。
(GOSの値が4°以下)
EBSD測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位差の平均値(GOS)が4°を超えると比較的ひずみが大きいことから、このひずみが存在する領域において、スパッタ時における2次電子の発生状況が不安定になるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、上述のGOSを4°以下とすることにより、結晶粒内のひずみを少なくして、スパッタ時における2次電子の発生状況を安定させることが可能となる。
なお、スパッタ時における2次電子の発生状況を確実に安定させるためには、上述のGOSを3°以下とすることが好ましい。
(平均結晶粒径:70μm以下)
スパッタレートは、結晶方位によって異なることから、スパッタが進行するとスパッタ面に、上述のスパッタレートの違いに起因して結晶粒に応じた凹凸が生じることになる。
ここで、平均結晶粒径が70μmを超えると、スパッタ面に生じる凹凸が大きくなり、凸部に電荷が集中して異常放電が発生しやすくなる。
このような理由から、本実施形態の高純度銅スパッタリングターゲットにおいては、平均結晶粒径を70μm以下に規定している。
なお、スパッタが進行した際のスパッタ面の凹凸を抑えて異常放電を確実に抑制するためには、平均結晶粒径を60μm以下とすることが好ましく、50μm以下とすることがさらに好ましい。
(ビッカース硬さ:35Hv以上55Hv以下)
本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲットにおいて、ビッカース硬さが55Hvを超える場合には、結晶粒内の内部ひずみが大きくなって、スパッタ時における2次電子の発生状況が不安定となり、成膜を安定して行うことができないおそれがある。また、内部ひずみによってスパッタレートが不均一になり、スパッタ面に凹凸が生じ、マイクロアーク放電回数が増大してしまうおそれがある。一方、ビッカース硬さが35Hv未満の場合には、結晶粒径が粗大化することから、スパッタが進行した際にスパッタ面の凹凸が生じ、異常放電が発生しやすくなる。
このような理由から、本実施形態においては、ビッカース硬さを35Hv以上55Hv以下の範囲内に規定している。
なお、結晶粒径が粗大化を抑えて異常放電を確実に抑制するためには、ビッカース硬さの下限を37Hv以上とすることが好ましく、39Hv以上とすることがさらに好ましい。また、スパッタレートを均一化して膜厚のばらつきやマイクロアーク放電を確実に抑制するためには、スパッタ面におけるビッカース硬さの上限を53Hv以下とすることが好ましく、50Hv以下とすることがさらに好ましい。
次に、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材の製造方法について説明する。
まず、銅の純度が99.99mass%以上の電気銅を準備し、これを電解精製する。上述の電気銅をアノードとし、チタン板をカソードとし、これらアノード及びカソードを電解液に浸漬して電解を行う。ここで、電解液は、試薬の硝酸銅を水で希釈することにより調製し、さらに塩酸を添加したものを使用する。このように、硝酸銅電解液中に塩酸を加えることにより、亜硝酸ガスの発生を抑制でき、電着銅中の不純物量を低減することが可能となるのである(特許第3102177参照)。このような電解精製実施することにより、O、H、N、Cを除いたCuの純度を99.99998mass%以上とした高純度銅が得られる。
そして、本実施形態では、電解精製工程において用いられるアノード(電気銅)のAl、Si、Feの含有量をそれぞれ1massppm以下に規定しており、さらに、電解液中のAl、Si、Feの含有量をそれぞれ1massppm以下に規定している。また、電解精製を実施する室内のクリーン度をクラス10000以下としている。このような条件で電解精製を行うことにより、Alの含有量を0.005massppm以下、Siの含有量を0.05massppm以下、Feの含有量を0.02massppm以下とすることが可能となる。
また、本実施形態では、電解精製の際に、S低減のため硝酸系電解液が使用されている。その電解液には、カソード表面を平滑化するために添加されるニカワや有機系高分子にS等の不純物が含有されており,これらがカソードに取り込まれると,カソード中のS濃度が上昇する。そこで、本実施形態では、硝酸系の電解液に,添加剤としてS含有量の少ないポリエチレングリコールとポリビニルアルコールの混合物等の合成高分子を組み合わせて用いた。
さらに、Cl,O,H,Nは,10-4Pa以下の高真空中で溶解することによって、真空中にガスとなって揮発し、所定の濃度まで低減することが可能となる。
Cは、溶解温度を上げるとCu中への溶解度が増すが、溶解温度を低く保てば、高純度グラファイト容器中で溶解しても所定の濃度以下に保つことが可能となる。具体的には、1150℃以下で溶解すれば所定のC濃度を維持することが可能となる。
以上のようにして、O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされた高純度銅を得ることができる。
次に、この高純度銅を溶解原料とし、真空溶解炉で溶解して高純度銅インゴットを作製する。
得られた高純度銅インゴットに対して、450〜700℃の温度範囲で熱間鍛造を行う。これにより、鋳造組織を破壊して等軸の結晶粒を有する組織に調節する。
次に、熱間鍛造材に対して、同一結晶粒内における結晶方位の局所方位差を低減するため,700〜900℃の温度範囲で1〜2時間保持の熱処理を行った後、冷間加工を行う。ここで、微細で均一でかつ,結晶粒内のひずみを小さくするには,冷間圧延のときの圧下率を大きくとることが有効である。そうすることによって,引き続き行われる冷間加工後の熱処理で容易に再結晶が生じ,結晶粒内のひずみが少なくなる。このため、1回の圧延パスにおける圧下率は15%以上25%以下の範囲内とすることが好ましい。さらに、圧延全体における圧延率は40%以上とすることが好ましい。
次に、冷間加工材に対して、再結晶熱処理を行う。熱処理温度は、350℃以上450℃以下,保持時間は1時間以上2時間以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、冷間加工及び熱処理を複数回繰り返すことで、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値(GOS)が4°以下となるように調整してもよい。
以上のようにして、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材が製造されることになる。
以上のような構成とされた本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材によれば、O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされているので、精製工程を必要以上に実施する必要がなく、比較的低コストで製造することが可能となる。
また、酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、塩化物等を形成して異物として残存しやすい元素であるAlの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされているので、スパッタリングターゲット内における異物の発生を抑制でき、異物に起因した異常放電の発生を抑制することができる。
さらに、成膜時におけるガスの発生原因となるS、Cl、O、H、Nの含有量が上述のように規制されているので、真空度を維持することができ、成膜を安定して実施することができる。
また、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材においては、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値(GOS)が4°以下とされているので、結晶粒内のひずみが少なく、スパッタ時における2次電子の発生状況が安定することになり、異常放電の発生を抑制することが可能となる。
また、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材においては、平均結晶粒径が70μm以下とされているので、スパッタが進行してスパッタ面に結晶粒に応じた凹凸が形成された場合であっても、凹凸が大きくならず、異常放電の発生をさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材においては、ビッカース硬さが35Hv以上とされているので、結晶粒径を比較的小さくすることができ、スパッタが進行してスパッタ面に結晶粒に応じた凹凸が形成された場合であっても、異常放電の発生を抑制できる。
また、ビッカース硬さが55Hv以下とされているので、結晶粒内の内部ひずみが小さく、スパッタ時における2次電子の放出が均一となって、安定してスパッタ成膜を行うことができる。また、内部ひずみによってスパッタレートが不均一になることを抑制でき、スパッタが進行してスパッタ面に大きな凹凸が形成されることを抑制でき、異常放電の発生を抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、配線膜として高純度銅膜を形成するスパッタリングターゲットを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の用途で高純度銅膜を用いる場合であっても適用することができる。
また、製造方法については、本実施形態に限定されることはなく、他の製造方法によって製造されたものであってもよい。
以下に、前述した本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材について評価した評価試験の結果について説明する。
(本発明例1〜7)
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
得られた高純度鋳塊を、600℃で熱間鍛造し、850℃で2時間保持の熱処理を行った。
次に、上記の熱処理材に、圧下率20%で冷間圧延を行って、厚さ10mm圧の冷間圧延板を得た。このときの圧延率は90%であった。
次に、冷間加工材に、温度400℃、保持時間1.5時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
(本発明例8)
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
得られた高純度鋳塊を、550℃で熱間鍛造し、800℃で2時間保持の熱処理を行った。
次に、上記の熱処理材に、圧下率15%で冷間圧延を行った。このときの圧延率は80%であった。
次に、冷間加工材に、温度550℃、保持時間2時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
(本発明例9)
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
得られた高純度鋳塊を、500℃で熱間鍛造し、800℃で1時間保持の熱処理を行った。
次に、上記の熱処理材に、圧下率20%で冷間圧延を行った。このときの圧延率は95%であった。
次に、冷間加工材に、温度350℃、保持時間1時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
(比較例)
比較例1においては、電解液に塩酸を添加しないで電解し、クリーンルームの代わりに一般室で電解を実施した。カソードを平滑にする添加剤として、通常のニカワとエチレングリコールを用いた。溶解鋳造は、窒素雰囲気、大気圧で、高純度グラファイト坩堝を用いて1300℃で実施した。得られた鋳塊(直径150mm×高さ200mm)を、500℃で熱間鍛造して鋳造組織を破壊し、等軸晶とした後、熱処理しないで、圧下率5%で冷間圧延し、400℃で1時間保持の熱処理を行った。このときの圧延率は40%であった。
比較例2においては、電解精製を一般室で行い,添加剤にニカワとエチレングリコールを使用して電解した。また高純度グラファイト坩堝を用いて、真空中(圧力10−5Pa)において1300℃で溶解した。得られた鋳塊(同形状)を500℃で同様に熱間鍛造して鋳造組織を破壊し、等軸晶とした後、熱処理しないで、圧下率10%で冷間圧延し、350℃で1時間保持の熱処理を行った。このときの圧延率は80%であった。
比較例3においては、電解精製を一般室で行い、電解のときにポリエチレングリコールとポリビニルアルコールを添加剤として使用した。真空溶解の代わりに窒素雰囲気の大気圧で、高純度グラファイト坩堝を用いて1150℃で溶解した。得られた鋳塊を同様に鍛造し、熱処理しないで、圧下率10%で冷間圧延し、400℃で1時間保持の熱処理を行った。このときの圧延率は60%であった。
比較例4においては、窒素雰囲気で大気圧にて溶解し、グラファイト坩堝を用いて1300℃で溶解した。得られた鋳塊は、500℃で熱間鍛造後、熱処理しないで、圧延率10%で冷間圧延し、450℃で2時間保持の熱処理を行った。このときの圧延率は60%であった。
得られたスパッタリングターゲット材について、成分組成(不純物量)、GOS、平均結晶粒径、ビッカース硬さ、異常放電回数について、以下の手順で評価した。また、評価結果を表1、2に示す。
(不純物量)
O,H,N,Cを除く不純物元素の分析は、グロー放電質量分析装置(VG Elemental社製VG−9000型)を用いて実施した。分析手順は、ASTMに準じて実施した。
Oの分析は、不活性ガス融解−赤外線吸収法(JIS H 1067)によって実施した。具体的には、LECO社製TCEN600を用いて、JIS Z 2613に準じて分析を実施した。
Hの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法によって実施した。具体的には、LECO社製RHEN602を用いてJIS Z 2614に準じて分析を実施した。
Nの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法によって実施した。具体的には、LECO社製TCEN600を用いて分析を実施した。
Cの分析は、燃焼−赤外線吸収法によって実施した。具体的には、LECO社製CSLS600を用いてJIS Z 2615に準じて分析を実施した。
(GOSの測定)
まず、各試料について、圧延方向(RD方向)に沿う縦断面(TD方向に見た面)を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(日本電社製 ショットキー電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7001F、EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)を用いた。まず,EBSD測定装置の電子線の加速電圧は15kV,測定視野は800μm×1200μmとした。測定点の形状を正6角形とし,測定間隔は2.5μmとした。同一結晶粒内における一の測定点と残り全ての測定点間の結晶方位の局所角度差の平均値を求めた。ただし、局所角度差が5°以上の隣接する測定点は,測定点間に粒界があるものとみなし、平均値の算出時に除外した。
(平均結晶粒径)
平均結晶粒径の測定は、圧延面(ND面)にて、光学顕微鏡を使用してミクロ組織観察を行い、JIS H 0501:1986(切断法)に基づき測定した。
(ビッカース硬さ)
試料の硬さは,ターゲットとして使用される表面にて,JIS Z 2244に準拠してマクロビッカース硬さ試験機にて測定を行った。
(異常放電)
スパッタ方式は,DCマグネトロンスパッタ法とした。スパッタするターゲットをチャンバー内のカソードに取り付け、到達真空:5×10−4Pa以下になるように真空に引いた。まず、ターゲット加工面の汚れや加工疵を除去するために、徐々にスパッタパワーを上げてプリスパッタを行い、スパッタパワーを3000Wまで上げた。なお、プリスパッタの電力は660Whとした。
引き続き、スパッタパワー3000W、スパッタ圧0.4Paで1分間の放電と停止を繰り返し、スパッタ電力が10kWhに達するまで実施した。そして、放電中に発生した異常放電回数を,ランドマークテクノロジー社製,マイクロアークモニター(MAM Genesis)で計測した。
Figure 0006661953
Figure 0006661953
比較例1においては、不純物量が多く、銅の純度が本発明の範囲外であり、GOSの値も本発明の範囲外とされており、異常放電回数が750回と多かった。
比較例2は、Al,Si,Fe,Sの含有量が本発明の範囲外とされ、GOSの値も本発明の範囲外とされており、異常放電回数が912回と多かった。
比較例3は、Cl,O,H,Nの含有量が本発明の範囲外とされ、GOSの値も本発明の範囲外とされており、異常放電回数が550回と多かった。
比較例4は、Cl,O,H,N、Cの含有量が本発明の範囲外とされており、異常放電回数が850回と多かった。
これに対して、銅の純度、不純物量、GOSが本発明の範囲内とされた本発明例においては、異常放電回数が200回以下となっていた。
以上のことから、本発明例によれば、高電圧を負荷した場合でも異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことができる高純度銅スパッタリングターゲット材を提供可能であることが確認された。

Claims (1)

  1. O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされており、
    電子後方散乱回折を用いた結晶方位測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位差の平均値が4°以下であり、
    平均結晶粒径が70μm以下とされ、ビッカース硬さが35Hv以上50Hv以下の範囲内とされていることを特徴とする高純度銅スパッタリングターゲット材。
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