JP6661953B2 - 高純度銅スパッタリングターゲット材 - Google Patents
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Description
そこで、上述の配線膜の微細化および薄膜化にともない、Alよりも比抵抗の低い材料である銅(Cu)からなる配線膜が提供されている。
そこで、下記の特許文献1〜5には、純銅のスパッタリングターゲットにおいて、成膜時における異常放電の発生を抑制する技術が提案されている。
ここで、上述した特許文献1〜5に記載された発明においては、成膜中に異常放電(アーキング)を十分に抑制することができず、微細化および薄膜化された配線膜を効率良く安定して形成することができなかった。
一方、スパッタ面のビッカース硬さが35Hv以上とされているので、結晶粒径を比較的小さくすることができ、スパッタが進行した際にスパッタ面に凹凸が形成されることを抑制でき、異常放電の発生を抑制できる。
本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材は、半導体装置、液晶や有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等において配線膜として使用される高純度銅膜を基板上に成膜する際に用いられるものである。
以下に、本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲット材の組成、GOS、平均結晶粒径、ビッカース硬さを上述のように規定した理由について説明する。
配線膜(高純度銅膜)をスパッタにて成膜する場合、異常放電(アーキング)を抑えるために不純物を極力低減することが好ましい。ここで、Cuの純度が99.99998mass%以上であれば、精製処理を必要以上に行う必要がなく、製造コストが大幅に上昇することを抑制することができる。
Alは、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Alの含有量を0.005massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
Siは、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Siの含有量を0.05massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
Feは、銅に比べて、酸化物、炭化物、窒化物等を形成しやすい元素であることから、高純度銅スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい傾向にある。そこで、Feの含有量を0.02massppm以下に制限することで、Cuの純度が99.99998mass%以上であっても、成膜時の異常放電(アーキング)の発生を抑制することが可能となる。
Sは、他の不純物元素と反応して硫化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい元素である。また、単体で存在している場合、成膜時にガス化及びイオン化し、真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.03massppm以下に制限している。
Clは、他の不純物元素と反応して塩化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい元素である。また、単体で存在している場合、成膜時にガス化及びイオン化し、真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Clの含有量を0.1massppm以下に制限している。
スパッタリングターゲットで成膜する場合、真空中雰囲気で実施されることから、これらのガス成分が多く存在していると、成膜時に真空度を下げ、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。また、異常放電によってパーティクルが発生し、高純度銅膜の品質が劣化してしまうおそれがある。以上のことから、本実施形態では、O、H、Nの含有量をそれぞれ1massppm以下に制限している。
Cは、他の不純物元素と反応して炭化物を形成し、スパッタリングターゲット内に異物として残存しやすい。また、Cは、単体としてもスパッタリングターゲット内に残存しやすいため、異常放電(アーキング)を誘発するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を1massppm以下に制限している。
ここで、O,H,N,Cを除く不純物元素の分析は、グロー放電質量分析装置(GD−MS)を用いて行うことができる。
また、Oの分析は、不活性ガス融解−赤外線吸収法、H,Nの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法、Cの分析は、燃焼−赤外線吸収法によって実施することができる。
EBSD測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位差の平均値(GOS)が4°を超えると比較的ひずみが大きいことから、このひずみが存在する領域において、スパッタ時における2次電子の発生状況が不安定になるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、上述のGOSを4°以下とすることにより、結晶粒内のひずみを少なくして、スパッタ時における2次電子の発生状況を安定させることが可能となる。
なお、スパッタ時における2次電子の発生状況を確実に安定させるためには、上述のGOSを3°以下とすることが好ましい。
スパッタレートは、結晶方位によって異なることから、スパッタが進行するとスパッタ面に、上述のスパッタレートの違いに起因して結晶粒に応じた凹凸が生じることになる。
ここで、平均結晶粒径が70μmを超えると、スパッタ面に生じる凹凸が大きくなり、凸部に電荷が集中して異常放電が発生しやすくなる。
このような理由から、本実施形態の高純度銅スパッタリングターゲットにおいては、平均結晶粒径を70μm以下に規定している。
なお、スパッタが進行した際のスパッタ面の凹凸を抑えて異常放電を確実に抑制するためには、平均結晶粒径を60μm以下とすることが好ましく、50μm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態である高純度銅スパッタリングターゲットにおいて、ビッカース硬さが55Hvを超える場合には、結晶粒内の内部ひずみが大きくなって、スパッタ時における2次電子の発生状況が不安定となり、成膜を安定して行うことができないおそれがある。また、内部ひずみによってスパッタレートが不均一になり、スパッタ面に凹凸が生じ、マイクロアーク放電回数が増大してしまうおそれがある。一方、ビッカース硬さが35Hv未満の場合には、結晶粒径が粗大化することから、スパッタが進行した際にスパッタ面の凹凸が生じ、異常放電が発生しやすくなる。
このような理由から、本実施形態においては、ビッカース硬さを35Hv以上55Hv以下の範囲内に規定している。
なお、結晶粒径が粗大化を抑えて異常放電を確実に抑制するためには、ビッカース硬さの下限を37Hv以上とすることが好ましく、39Hv以上とすることがさらに好ましい。また、スパッタレートを均一化して膜厚のばらつきやマイクロアーク放電を確実に抑制するためには、スパッタ面におけるビッカース硬さの上限を53Hv以下とすることが好ましく、50Hv以下とすることがさらに好ましい。
まず、銅の純度が99.99mass%以上の電気銅を準備し、これを電解精製する。上述の電気銅をアノードとし、チタン板をカソードとし、これらアノード及びカソードを電解液に浸漬して電解を行う。ここで、電解液は、試薬の硝酸銅を水で希釈することにより調製し、さらに塩酸を添加したものを使用する。このように、硝酸銅電解液中に塩酸を加えることにより、亜硝酸ガスの発生を抑制でき、電着銅中の不純物量を低減することが可能となるのである(特許第3102177参照)。このような電解精製実施することにより、O、H、N、Cを除いたCuの純度を99.99998mass%以上とした高純度銅が得られる。
Cは、溶解温度を上げるとCu中への溶解度が増すが、溶解温度を低く保てば、高純度グラファイト容器中で溶解しても所定の濃度以下に保つことが可能となる。具体的には、1150℃以下で溶解すれば所定のC濃度を維持することが可能となる。
得られた高純度銅インゴットに対して、450〜700℃の温度範囲で熱間鍛造を行う。これにより、鋳造組織を破壊して等軸の結晶粒を有する組織に調節する。
なお、冷間加工及び熱処理を複数回繰り返すことで、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位の局所方位差の平均値(GOS)が4°以下となるように調整してもよい。
また、酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、塩化物等を形成して異物として残存しやすい元素であるAlの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされているので、スパッタリングターゲット内における異物の発生を抑制でき、異物に起因した異常放電の発生を抑制することができる。
さらに、成膜時におけるガスの発生原因となるS、Cl、O、H、Nの含有量が上述のように規制されているので、真空度を維持することができ、成膜を安定して実施することができる。
また、ビッカース硬さが55Hv以下とされているので、結晶粒内の内部ひずみが小さく、スパッタ時における2次電子の放出が均一となって、安定してスパッタ成膜を行うことができる。また、内部ひずみによってスパッタレートが不均一になることを抑制でき、スパッタが進行してスパッタ面に大きな凹凸が形成されることを抑制でき、異常放電の発生を抑制できる。
本実施形態では、配線膜として高純度銅膜を形成するスパッタリングターゲットを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の用途で高純度銅膜を用いる場合であっても適用することができる。
また、製造方法については、本実施形態に限定されることはなく、他の製造方法によって製造されたものであってもよい。
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
次に、上記の熱処理材に、圧下率20%で冷間圧延を行って、厚さ10mm圧の冷間圧延板を得た。このときの圧延率は90%であった。
次に、冷間加工材に、温度400℃、保持時間1.5時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
次に、上記の熱処理材に、圧下率15%で冷間圧延を行った。このときの圧延率は80%であった。
次に、冷間加工材に、温度550℃、保持時間2時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
Alが1massppm以下、Siが1massppm以下、Feが1massppm以下、さらにその他の不純物(O,H,N,Cを除く)が20massppm以下の電気銅を原料として用い、実施の形態で例示した電解精製条件で電解精製を行うことにより、銅原料を製造した。
上記製造方法で製造した原料を、高純度カーボンで作製した坩堝に入れ、1130℃で真空溶解(圧力10−5Pa)した。その後、高純度カーボンで作製したモールド内に真空状態(圧力10−5Pa)で流し込み、直径150mm×高さ200mmの高純度銅鋳塊を作製した。
次に、上記の熱処理材に、圧下率20%で冷間圧延を行った。このときの圧延率は95%であった。
次に、冷間加工材に、温度350℃、保持時間1時間の熱処理を行った。
その後、直径125mm、厚さ5mmに切り出して、高純度スパッタリングターゲット材とし、Cr―Zr−Cu(C18150)のバッキングプレートとHIP接合した。
比較例1においては、電解液に塩酸を添加しないで電解し、クリーンルームの代わりに一般室で電解を実施した。カソードを平滑にする添加剤として、通常のニカワとエチレングリコールを用いた。溶解鋳造は、窒素雰囲気、大気圧で、高純度グラファイト坩堝を用いて1300℃で実施した。得られた鋳塊(直径150mm×高さ200mm)を、500℃で熱間鍛造して鋳造組織を破壊し、等軸晶とした後、熱処理しないで、圧下率5%で冷間圧延し、400℃で1時間保持の熱処理を行った。このときの圧延率は40%であった。
O,H,N,Cを除く不純物元素の分析は、グロー放電質量分析装置(VG Elemental社製VG−9000型)を用いて実施した。分析手順は、ASTMに準じて実施した。
Oの分析は、不活性ガス融解−赤外線吸収法(JIS H 1067)によって実施した。具体的には、LECO社製TCEN600を用いて、JIS Z 2613に準じて分析を実施した。
Hの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法によって実施した。具体的には、LECO社製RHEN602を用いてJIS Z 2614に準じて分析を実施した。
Nの分析は、不活性ガス融解−熱伝導法によって実施した。具体的には、LECO社製TCEN600を用いて分析を実施した。
Cの分析は、燃焼−赤外線吸収法によって実施した。具体的には、LECO社製CSLS600を用いてJIS Z 2615に準じて分析を実施した。
まず、各試料について、圧延方向(RD方向)に沿う縦断面(TD方向に見た面)を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(日本電社製 ショットキー電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7001F、EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)を用いた。まず,EBSD測定装置の電子線の加速電圧は15kV,測定視野は800μm×1200μmとした。測定点の形状を正6角形とし,測定間隔は2.5μmとした。同一結晶粒内における一の測定点と残り全ての測定点間の結晶方位の局所角度差の平均値を求めた。ただし、局所角度差が5°以上の隣接する測定点は,測定点間に粒界があるものとみなし、平均値の算出時に除外した。
平均結晶粒径の測定は、圧延面(ND面)にて、光学顕微鏡を使用してミクロ組織観察を行い、JIS H 0501:1986(切断法)に基づき測定した。
試料の硬さは,ターゲットとして使用される表面にて,JIS Z 2244に準拠してマクロビッカース硬さ試験機にて測定を行った。
スパッタ方式は,DCマグネトロンスパッタ法とした。スパッタするターゲットをチャンバー内のカソードに取り付け、到達真空:5×10−4Pa以下になるように真空に引いた。まず、ターゲット加工面の汚れや加工疵を除去するために、徐々にスパッタパワーを上げてプリスパッタを行い、スパッタパワーを3000Wまで上げた。なお、プリスパッタの電力は660Whとした。
引き続き、スパッタパワー3000W、スパッタ圧0.4Paで1分間の放電と停止を繰り返し、スパッタ電力が10kWhに達するまで実施した。そして、放電中に発生した異常放電回数を,ランドマークテクノロジー社製,マイクロアークモニター(MAM Genesis)で計測した。
比較例2は、Al,Si,Fe,Sの含有量が本発明の範囲外とされ、GOSの値も本発明の範囲外とされており、異常放電回数が912回と多かった。
比較例3は、Cl,O,H,Nの含有量が本発明の範囲外とされ、GOSの値も本発明の範囲外とされており、異常放電回数が550回と多かった。
比較例4は、Cl,O,H,N、Cの含有量が本発明の範囲外とされており、異常放電回数が850回と多かった。
以上のことから、本発明例によれば、高電圧を負荷した場合でも異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことができる高純度銅スパッタリングターゲット材を提供可能であることが確認された。
Claims (1)
- O,H,N,Cを除いたCuの純度が99.99998mass%以上とされ、Alの含有量が0.005massppm以下、Siの含有量が0.05massppm以下、Feの含有量が0.02massppm以下,Sの含有量が0.03massppm以下、Clの含有量が0.1massppm以下、Oの含有量が1massppm以下、Hの含有量が1massppm以下、Nの含有量が1massppm以下、Cの含有量が1massppm以下とされており、
電子後方散乱回折を用いた結晶方位測定によって得られた、同一結晶粒内における一の測定点と他の全ての測定点間の結晶方位差の平均値が4°以下であり、
平均結晶粒径が70μm以下とされ、ビッカース硬さが35Hv以上50Hv以下の範囲内とされていることを特徴とする高純度銅スパッタリングターゲット材。
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