JPH089738B2 - バックリング発生予測装置 - Google Patents

バックリング発生予測装置

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JPH089738B2
JPH089738B2 JP3072991A JP7299191A JPH089738B2 JP H089738 B2 JPH089738 B2 JP H089738B2 JP 3072991 A JP3072991 A JP 3072991A JP 7299191 A JP7299191 A JP 7299191A JP H089738 B2 JPH089738 B2 JP H089738B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱処理炉内で、ロール
に巻き付けられて搬送される鋼帯のバックリング発生を
予測する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】連続焼鈍炉などの連続熱処理炉におい
て、鋼帯はロールに巻き付けられて搬送されながら所定
の熱処理が施される。通常、このロールには、鋼帯の蛇
行を防止するためにクラウンが設けられている。しか
し、このクラウンのため、鋼帯がロールに巻き付く時幅
方向に座屈する現象、いわゆるバックリングが発生する
ことがあり、安定操業上大きな問題となっている。その
ため、バックリングの発生を予測して、その発生を未然
に防ぐ方法が従来より考えられてきた。
【0003】すなわち、鋼帯の板幅、板厚、張力、クラ
ウン形状などの実機データを集めて、経験的に回帰式を
作成し、その式から外れないような操業条件を選択する
ことにより、バックリングの発生を未然に防いでいた。
また、特開昭61−207524号公報においては、鋼
帯の張力と、鋼帯およびロールの幅方向温度分布とか
ら、鋼帯の最大幅方向圧縮応力を算出する手段と、ロー
ルに巻き付く鋼帯を円筒殻とみなして座屈限界応力を算
出する手段とを備えた、バックリングの発生予測装置が
開示されている。この装置では、前記最大幅方向圧縮応
力と座屈限界応力とを比較して、前者が後者より大きく
なるときにバックリングが発生すると予測している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来法のうち、回
帰式を用いる方法には次のような問題があった。すなわ
ち、回帰式の作成に使用するパラメータが不完全で、バ
ックリングに影響を与える要因のすべてが考慮された式
を作成するのは困難である。また、回帰式は回帰範囲内
にしか適応できないので、例えば板厚や板幅がその範囲
外の鋼帯にはその回帰式を適用できず、新たな回帰式の
作成が必要となる。そして、バックリング発生予測の精
度を上げるためには、莫大な実機データの積み重ねが必
要である。
【0005】前記公報に記載の方法では、座屈限界応力
の算出を、ロールに巻き付く鋼帯を円筒殻とみなして行
っている。そのため、この座屈限界応力はバックリング
発生との関係を正確に表すものとは言いがたく、実験値
との兼ね合いで修正する必要がある。また、実際のロー
ルにはクラウンが付いているため、鋼帯を円筒殻とみな
したことによる補正が必要となる。そして、この補正の
掛け方は、クラウンの形状等によりかなり煩雑なものと
なる。
【0006】したがって、バックリング発生の予測方法
には、確実性および汎用性の向上が課題であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためのものであり、請求項1にかかるバックリン
グ発生予測装置は、鋼帯温度、板厚、板幅、ロール形
状、張力をパラメータとして三次元有限要素法解析で求
められた幅方向収縮量算出式に基づいて前記鋼帯のロー
ルに巻き付く直前の幅方向収縮量を演算する収縮量演算
手段と、同様に三次元有限要素法解析で求めた限界幅方
向収縮量算出式に基づいてバックリング発生限界となる
時の限界幅方向収縮量を演算する限界収縮量演算手段
と、前記収縮量演算手段による幅方向収縮量と限界収縮
量演算手段による限界幅方向収縮量とを比較してバック
リングの発生が予測される状態を判定する判定手段とを
備えている。
【0008】また、請求項2にかかるバックリング発生
予測装置は、鋼帯温度を検出する鋼帯温度検出手段と、
前記鋼帯に作用する張力を検出する張力検出手段と、ロ
ール温度に基づいてロールクラウンを演算するロールク
ラウン演算手段と、少なくとも前記鋼帯温度検出手段に
よる鋼帯温度およびロールクラウン演算手段によるロー
ルクラウンをもとに、鋼帯温度、板厚、板幅、ロール形
状、張力をパラメータとして三次元有限要素法解析で求
めた幅方向収縮量算出式および限界幅方向収縮量算出式
から算出した限界張力算出式に従って限界張力を演算す
る限界張力演算手段と、前記限界張力演算手段による限
界張力と前記張力検出手段による張力検出値とを比較し
てバックリングの発生が予測される状態を判定する判定
手段とを備えている。
【0009】
【作用】請求項1にかかるバックリング発生予測装置に
おいては、鋼帯温度、板厚、板幅、ロール形状、張力を
パラメータとして、ロールと鋼帯とをモデル化した三次
元有限要素法解析によって限界幅方向収縮量算出式を求
める。そして、この式に従って、バックリングの発生限
界となるときの限界幅方向収縮量を演算する。同様にし
て、三次元有限要素法解析により求めた幅方向収縮量算
出式に従って現在の幅方向収縮量を演算する。算出され
た幅方向収縮量と限界幅方向収縮量とを比較することに
より、バックリングの発生を正確に予測する判定を行
う。
【0010】請求項2にかかるバックリング発生予測装
置においては、あらかじめ、上記限界幅方向収縮量算出
式および幅方向収縮量算出式から、バックリング発生限
界となるときの限界張力を算出する限界張力算出式を導
出する。この式に従って限界張力を演算し、算出された
限界張力値と実際の鋼帯に作用する張力検出値とを比較
することにより、少ない演算量でバックリング発生を正
確に予測する判定を行う。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は本発明の一実施例を示す概略構成図であ
り、1は連続焼鈍炉を搬送される鋼帯である。この鋼帯
1は、連続焼鈍炉内に千鳥状に配設された、張力検出値
Tsを出力するテンションメータロール2、ロール温度
を出力する測温ロール3、ハースロール4,5を順に巡
って所定搬送速度で搬送される。各ロール2〜5は、図
2に示すように、円筒部6aと、その両端部に夫々形成
された予め設定されたロールクラウンTa(=tan
θ)を有する裁頭円錐部6b及び6cとからクラウンロ
ールに形成され、その円筒部6aの幅方向長さ即ちロー
ルフラット長Fが鋼帯1の板幅Wより短く選定されてい
る。また、測温ロール3に鋼帯1を挟んで対向する位置
に鋼帯温度を検出する放射型板温計7が配設されてい
る。
【0012】そして、測温ロール3から出力されるロー
ル温度がA/D変換器8を介してクラウン計算機9に供
給され、このクラウン計算機9でロール温度とイニシャ
ルクラウンとからサーマルクラウンを演算し、この演算
結果をロールクラウンTaとして限界張力演算機10に
出力する。
【0013】限界張力演算機10は、マイクロコンピュ
ータ等の演算処理装置を含んで構成されており、クラウ
ン計算機9から入力されるロールクラウンTa、放射型
板温計7から入力される鋼帯温度検出値Tm及び連続焼
鈍炉全体を制御している上位計算機11から入力される
鋼帯1の板幅Wおよび板厚Th、ロールフラット長Fに
基づいて下記(1)式の演算を行ってバックリング発生
限界となる限界張力T crを算出し、これを判定器12に
出力する。
【0014】 Tcr=g(ai )=A3 (W−F)U1TaU2TmU3ThU4 …………(1) ここで、A3 は定数、U1〜U4は乗数であり、これら
は有限要素法によって算出される。
【0015】この限界張力Tcrを表す(1)式は、有限
要素法によるシミュレーションによってバックリングの
解析を行うことによって導出される。この有限要素法の
シミュレーションにおいては、現象再現の忠実性を保つ
ため3次元でロールと鋼帯とをモデル化し、バックリン
グの判定は、時系列的な鋼帯の面外方向の変位の応答
と、最終的な板の形状とにより判断した。
【0016】この有限要素法解析の過程で得られる鋼帯
の幅方向の変位に着目したとき、その傾向即ち幅方向収
縮量Yを下記(2)式で表現した。 Y=f(ai )=A1 (W−F)X1TaX2TmX3ThX4TsX5…………(2) そして、さらに解析を継続してバックリングに成長した
鋼帯についてはその幅方向の収縮量を限界幅方向収縮量
crとして下記(3)式で表現した。
【0017】 Ycr=g(ai )=A2 (W−F)Z1TaZ2TmZ3ThZ4TsZ5………(3) この(3)式がバックリングを生じる限界幅方向収縮量
crを表しているので、前記(2)式で表される幅方向
収縮量Yが限界幅方向収縮量Ycr以上となるとバックリ
ングが発生するものと予測することが可能となる。
【0018】しかしながら、上記(2)式及び(3)式
を演算するには演算処理時間が多くなるので、(2)式
及び(3)式を連立して解くことにより、前記(1)式
の限界張力式を導出することができる。
【0019】そして、判定器12には、限界張力演算機
10からの限界張力Tcrが入力されると共に、テンショ
ンメータロール2から出力される実際の張力検出値Ts
がA/D変換器13を介して入力され、これら限界張力
crと実際の張力検出値Tsとを比較し、Ts ≧Tcr
あるときにバックリングの発生を予測して警報装置14
に警報信号を出力する。
【0020】次に、上記実施例の動作を説明する。今、
連続焼鈍炉内を鋼帯1がその両端部を他の鋼帯と溶接す
ることにより連続的に各ロール2〜5を巡って所定搬送
速度で搬送されているものとする。このとき、連続焼鈍
炉に搬送される鋼帯1の板幅Wおよび板厚Thとロール
フラット長Fとは連続焼鈍炉全体を管理する上位計算機
11に格納されており、これらが、鋼帯1が焼鈍炉内で
搬送開始される状態となると、限界張力演算機10に入
力される。
【0021】また、測温ロール3では、鋼帯1と接触し
ている部分のロール温度を検出し、そのロール温度検出
値がA/D変換器8でディジタル値に変換されてクラウ
ン計算機9に入力されるので、このクラウン計算機9で
ロール温度検出値と予め設定されたイニシャルクラウン
とに基づいてサーマルクラウンを算出し、算出されたサ
ーマルクラウンがロールクラウンTaとして限界張力演
算機10に入力される。
【0022】さらに、放射型板温計7では、鋼帯1の温
度を検出し、その鋼帯温度検出値Tmが限界張力演算機
10に入力される。このため、限界張力演算機10で
は、所定時間毎(例えば50msec) に各検出値を読込
み、これらに基づいて前記(1)式の演算を繰り返し実
行することにより、逐次限界張力Tcrを算出し、これを
判定器12の一方の入力側に出力する。一方、判定器1
2の他方の入力側には、テンションメータロール2で検
出された鋼帯1の張力検出値Tsが入力されているの
で、この判定器12で張力検出値Tsと限界張力Tcr
を比較し、Ts<Tcrであるときには、バックリングを
発生することがない正常状態であると判断して警報信号
の出力を停止し、Ts≧Tcrであるときには、バックリ
ングの発生が予測されると判断して警報信号を警報装置
14に出力し、この警報装置14で警報を発してオペレ
ータに通知する。
【0023】また、実際の連続焼鈍ラインにおけるバッ
クリング発生の有無を前記(1)式の限界張力算出式を
用いて評価した結果を図3に示す。この図3から明らか
なように、限界張力算出式はバックリングの発生の有無
を精度良く分離していることが確認された。
【0024】なお、上記実施例においては、有限要素法
解析によって表現される前記(2)式で表される幅方向
収縮量Yの算出式と前記(3)式で表される限界幅方向
収縮量Ycrの算出式とから前記(1)式で表される限界
張力Tcrを導出した場合について説明したが、これに限
定されるものではなく、幅方向収縮量Y及び限界幅方向
収縮量Ycrの双方を逐次演算して両者を比較することに
より、バックリングの発生を予測するようにしてもよ
い。
【0025】また、上記実施例では、警報装置14で警
報を発する場合について説明したが、これに限定される
ものではなく、判定器12からの警報信号を例えば連続
焼鈍炉を統括制御する上位計算機11に入力して、自動
的に操業条件を変更してバックリングの発生を未然に防
止するようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係るバ
ックリング発生予測装置では、バックリングの発生の予
測を、ロールに巻き付く直前の鋼帯の幅方向収縮量とい
う、ロール及び鋼帯の状態によって一義的に決まるパラ
メータを用いて行うようにしているので、あらゆる板
幅、板厚の範囲に適用することができ、汎用性の高いバ
ックリング予測を行うことができる。また、三次元有限
要素法解析によって幅方向収縮量及び限界幅方向収縮量
の算出式を導出したため、バックリング発生の予測を、
高精度で迅速に行うことができる効果が得られる。
【0027】また、請求項2に係るバックリング発生予
測装置では、幅方向収縮量及び限界幅方向収縮量の算出
式から限界張力算出式を導出し、これに逐次各種測定値
を代入して限界張力を算出し、算出された限界張力と実
際に検出した鋼帯の張力検出値とを比較することによ
り、バックリング発生予測を行うようにした。それによ
り、前述した請求項1の効果に加えて、限界張力算出手
段での演算時間を短縮することができ、応答性の高いバ
ックリング発生予測を行うことができる。それととも
に、高精度の限界張力式を利用して、バックリングが発
生しないための最適操業条件の確立とロールのイニシャ
ルクラウンの決定とを行うことができ、バックリング防
止対策を定量的に講じることができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】クラウンロールを示す正面図である。
【図3】限界張力算出式によりバックリング発生の有無
を評価したグラフである。
【符号の説明】
1 鋼帯 2 テンションメータロール 3 測温ロール 7 放射型板温計 9 クラウン計算機 10 限界張力演算機 11 上位計算機 12 判定器 14 警報装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中島 康久 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社千葉製鉄所内 (72)発明者 小川 博之 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社千葉製鉄所内 (72)発明者 川原 仁志 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社千葉製鉄所内 (56)参考文献 特開 昭63−86820(JP,A) 特公 昭62−15613(JP,B2)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱処理炉内をクラウン付きロールに巻き付
    けられて搬送される鋼帯のバックリング発生を予測する
    バックリング発生予測装置において、三次元有限要素法
    解析で求められた幅方向収縮量算出式に基づいて前記鋼
    帯のロールに巻き付く直前の幅方向収縮量を演算する収
    縮量演算手段と、三次元有限要素法解析で求められた限
    界幅方向収縮量算出式に基づいてバックリング発生限界
    となる時の限界幅方向収縮量を演算する限界収縮量演算
    手段と、前記収縮量演算手段による幅方向収縮量と限界
    収縮量演算手段による限界幅方向収縮量とを比較してバ
    ックリングの発生が予測される状態を判定する判定手段
    とを備えたことを特徴とする、バックリング発生予測装
    置。
  2. 【請求項2】熱処理炉内をクラウン付きロールに巻き付
    けられて搬送される鋼帯のバックリング発生を予測する
    バックリング発生予測装置において、鋼帯温度を検出す
    る鋼帯温度検出手段と、前記鋼帯に作用する張力を検出
    する張力検出手段と、ロール温度に基づいてロールクラ
    ウンを演算するロールクラウン演算手段と、少なくとも
    前記鋼帯温度検出手段による鋼帯温度およびロールクラ
    ウン演算手段によるロールクラウンをもとに、三次元有
    限要素法解析で求められた幅方向収縮量算出式および限
    界幅方向収縮量算出式から算出した限界張力算出式に従
    って限界張力を演算する限界張力演算手段と、前記限界
    張力演算手段による限界張力と前記張力検出手段による
    張力検出値とを比較してバックリングの発生が予測され
    る状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とす
    る、バックリング発生予測装置。
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