JPH08698B2 - 部分安定化ジルコニア粉末 - Google Patents

部分安定化ジルコニア粉末

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JPH08698B2
JPH08698B2 JP61091541A JP9154186A JPH08698B2 JP H08698 B2 JPH08698 B2 JP H08698B2 JP 61091541 A JP61091541 A JP 61091541A JP 9154186 A JP9154186 A JP 9154186A JP H08698 B2 JPH08698 B2 JP H08698B2
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信夫 木村
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は、高強度で靱性に優れ、機械部分、耐磨耗
性、切削材等の構造材料としての応用が期待されている
部分安定化ジルコニアに関する。
〔従来技術〕
ジルコニア焼結体を安定化するための安定化剤として
は、CaO,MgO,Y2O3等が知られているが、その中でY2O3
安定化したジルコニア焼結体が優れた機械特性を有し、
高強度ジルコニア焼結体にはY2O3が使用されることが多
い。
Y2O3で部分安定化した高強度ジルコニアにおいては、
従来、Y2O3の含有率は通常3モル%前後であり、2モル
%程度が低モル化の限界となっている。2モル%以下に
なると、公知の構造方法では単斜晶が急激に増加するた
め、Y2O3含有率が2モル%未満の高強度ジルコニア焼結
体は存在しない。
一方、Y2O3含有率の低下は高靱性化という観点から重
要な意味を持っている。Y2O3含有率が2モル%に近い領
域において比較的優れた靱性、強度を持つ焼結体が得ら
れているが、この領域の焼結体はこの熱劣化という問題
を持っており、実用上は、この問題を避けるため、通
常、Y2O3含有率3モル%程度の焼結体が使用されてい
る。
Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体中の正方晶の存在に
関しては、Y2O3含有率に対する臨界粒径があり、その粒
径を越えると正方晶として存在し得なくなり、含有率が
3モル%の時は臨界粒径は1μmを越えるが、2モル%
となると0.2μm程度と非常に小さくなる。従来、低モ
ル比の限界が2モル%程度であったのは、粒径を0.2μ
mあるいはそれ以下に抑えて緻密化させることが可能な
ほど低温で、十分緻密化させることが出来なかったため
である。
〔発明が解決しようとする問題点〕
部分安定化ジルコニアの高密度焼結体を得るために
は、常圧下では、1400℃以上、通常1500℃以上の焼成温
度が必要である。1400℃以上での焼成では、ジルニアの
粒子は通常0.5μm以上に成長してしまうため、Y2O3
3モル%以下にすると熱劣化現象を生ずるため、高価な
Y2O3を多量に使用する必要があった。
本発明は、これらの欠点を克服し、高価なY2O3を低減
化し、低温焼結性で耐熱劣化性に優れたY2O3含有部分安
定化ジルコニア焼結体が得られる粉末を提供することを
主な目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、下記の部分安定化ジルコニア粉末に係るも
のである。
ジルコニアを主成分とする粉末において、Y2O3を1.
0〜3.0モル%、 TiO2を0.5〜30モル%含み、Y2O3及びTiO2がジルコニ
アに固溶しており、かつ、結晶子径が400Å以下でBET比
表面積が2m2/g以上である部分安定化ジルコニア粉末。
本発明の部分安定化ジルコニア粉末は、ジルコニウム
化合物、イットリウム化合物及びチタニウム化合物を含
有する溶液から、これらの金属の複合沈澱を形成させ、
該沈澱を仮焼することにより、Y2O3及びTiO2がZrO2に固
溶している部分安定化ジルコニア粉末が得られる。
上記原料化合物としては、水溶性でpH調整により沈澱
を生成し、仮焼により酸化物となるものであればよい。
具体的には、ジルコニウム化合物としては、オキシ酸化
物、オキシ硝酸塩、オキシ酢酸塩、オキシ硫酸塩等が挙
げられる。イットリウム化合物としては、塩化物、硝酸
塩、カルボン酸塩、金属アルコキシド等が挙げられる、
チタニウム化合物としては、四塩化チタン、硫酸チタニ
ル、酢酸チタニル等が挙げられる。
沈澱の形成法は、通常の共沈法等を適用することが出
来る。例えば、イットリウム、チタニウム及びジルコニ
ウムの塩化物の混合水溶液をアンモニウ水中に滴下し、
三成分の共沈粉末を調製し、濾過、水洗、乾燥した後、
600〜1000℃で仮焼する。
本発明の部分安定化ジルコニア粉末は、Y2O3及びTiO2
がZrO2に固溶しており、結晶相がホタル石型正方晶単一
相の粉末である。本粉末を焼結原料として耐熱劣化性の
優れた焼結体を得るためには、沈澱調製法、仮焼温度、
粉砕条件を適宜選択し、結晶子径400Å以下、BET比表面
積2m2/g以上となるようにする必要がある。上記の特性
を有する本発明の粉末を形成し、常圧下、1400℃以下の
温度で焼成することにより耐熱劣化性に優れた、高強
度、高靱性の焼結体を得ることが出来る。
該燃焼体の結晶構造は、ホタル石型正方晶80%以上で
あり80%未満では靱性等が十分にえられない。
Y2O3の含有率は、1.0モル%未満では、TiO2を加えて
も、焼結冷却過程でホタル石型単斜晶へ相転移し、ホタ
ル石型正方晶が得られず、焼結体中にクラックが生じ
る。3.0モル%を越えると破壊靱性値が低下するばかり
か、高価なY2O3量が増えるため工業的に好ましくない。
TiO2の含有率は、0.5モル%未満では、正方晶構造を
安定化する効果が少ないばかりか、1200℃前後の低温焼
結で十分に密度を上げることが困難となる。30モル%を
越えると破壊靱性値が低下する。
成形は、通常の金型成形で十分であるが、低圧による
金型成形後、静水圧加圧を行った方が、最終焼結体の焼
結体密度、機械的強度等の向上のためにはより好まし
い。
焼結は通常のいずれの方法でもよいが、空気雰囲気の
常圧焼結法で十分に目的を達することが出来る。焼結温
度は、Y2O3及びTiO2含有率により異なり、通常1100〜14
00℃程度の範囲であるが、Y2O3含有率が低い場合、特に
2モル%程度あるいはそれ以下の場合は1300℃以下が好
ましい。
〔作用〕
TiO2はジルコニア粉末中に固溶した状態で存在し、14
00℃以下の低温で、ジルニアの体積拡散を活発化させ、
その結果、この低温度でも焼結体を十分に緻密化するこ
とができたものと推定される。TiO2は焼結体中でもジル
コニアに固溶しており、正方晶構造を安定化させる効果
があるばかりか、高価なY2O3を減らすことを可能とし
た。このTiO2の固溶による正方晶構造の安定化も耐熱劣
化性を向上できた別の理由と推定される。
以下、実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、
本発明の範囲はこれらの実施例により何等限定されるも
のではない。
実施例 オキシ塩化ジルコニウム、塩化イットリウム及び四塩
化チタンの水溶液をそれぞれ目的組成になるように加
え、十分混合した後、アンモニア水中へ滴下し、三成分
の共沈粒子を生成させた。沈澱を濾過、洗浄後110℃で
乾燥し、更に所定温度で1時間仮焼し、Y2O3及びTiO2
ZrO2に固溶した粉末を得た。該粉末をエタノール中でミ
リング粉砕後、乾燥し、2t/cm2のCIPで成形した後、110
0〜1400℃で焼成し焼結体を得た。
比較例 比較例1〜3及び5では実施例と同様にして焼結体を
得た。比較例4では、四塩化チタンの添加は行わず、他
は実施例と同様の操作により得たZrO2−Y2O3共沈、仮焼
粉末に、TiO2粒子を加え、ミリング粉砕により混合して
焼結原料粉末を得た。TiO2はZrO2中へ固溶していない。
調製した粉末の組成及び仮焼温度を第1表に示す。ま
た、粉末特性、焼結条件、焼結体特性を第2表に示す。
〔原料粉末及び焼結体の特性測定〕
諸特性の測定は以下の通りに行った。
(A)結晶子径:D X線回折ピーク幅の広がりから、下記に示すシエラー
の式に基づき算出した。
D=0.9λ/βcosθ λ:X線の波長 β:回折ピークの広がり幅 θ:回折角 (B)BET比表面積 マイクロメリティクス(Micromeritics・島津製作所
製)を使用して測定した。
(C)破壊靱性値:KIC 鏡面研磨した試料の表面にビッカース圧子を打ち込
み、得られた圧痕の大きさ及び圧痕から発生した亀裂の
長さから、新原等の提案による下記式により算出した。
圧子の打ち込み荷重は30kgfとした。
(KICΦ/Ha1/2)(H/EΦ)0.4=0.035(1/a)−1/2 Φ:拘束係数(〜3) Hv:ビッカース硬度 E:弾性係数 a:圧痕の対角線の長さの1/2 1:圧痕の中心から亀裂先端までの長さ (D)曲げ強度 3×4×40mmの試料により、JIS−1601の規定に基づ
き測定した。スパン:30mm、クロスヘッドスピード:0.5m
m/minとした。同一の条件で製造した5試料の平均値を
求めた。
(E)耐熱劣化性 焼結体を3μmのダイヤモンドスラリーで鏡面まで仕
上げた試料を、200℃で200時間保持したときに鏡面の正
方晶率の減少率が5%以内であれば(○)、5〜20%で
あれば(△)、それ以上であれば(×)とした。
(F)正方晶相含有率 試料の表面を3μmのダイヤモンドスラリーで研磨し
た後、X線回折を行い、次式により算出した。
(111)t:正方晶(111)面回折強度 (111)m:単斜晶(111)面回折強度 (111)m:単斜晶(111)面回折強度 (111)t回折ピークは、立方晶の(111)c回折ピー
クを含むが、全て正方晶として計算した。
比較例を除く全試料とも、焼結体中のZrO2の正方晶相
含有率は95%以上であることを確認した。
〔効果〕 TiO2の固溶した本発明の部分安定化ジルコニア粉末
は、1200℃前後の非常に低温での焼成が可能であり。粒
子成長を抑制するばかりか、TiO2により正方晶構造を安
定にし、耐熱劣化性の優れた部分安定化ジルコニア焼結
体を得ることが出来た。
また、Y2O3は高価な材料であるため、Y2O3含有率の低
下は経済的にも大きな効果と言える。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジルコニアを主成分とする粉末において、
    Y2O3を1.0〜3.0モル%、 TiO2を0.5〜30モル%含み、Y2O3及びTiO2がジルコニア
    に固溶しており、かつ、結晶子径が400Å以下でBET比表
    面積が2m2/g以上である部分安定化ジルコニア粉末。
JP61091541A 1986-04-21 1986-04-21 部分安定化ジルコニア粉末 Expired - Fee Related JPH08698B2 (ja)

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