JP6231470B2 - ジルコニア原料粉末およびその製造方法 - Google Patents

ジルコニア原料粉末およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、透光性を有するジルコニア焼結体の製造に用い得るジルコニア原料粉末およびそのジルコニア原料粉末の製造方法に関する。
ジルコニア焼結体(ZrO2)は、低温では単斜晶系であるが、1000(℃)程度で正方晶系に、更に高温で立方晶系に可逆的に相転移する。この相転移は体積変化を伴うため、昇降温を繰り返すと焼結体は破壊に至る。特に、単斜晶系から正方晶系への相転移は、約4(%)もの体積収縮があり、寸法変化自体も問題となる。
そのため、ジルコニア焼結体は、安定化剤を固溶させることによって相転移が抑制された安定化ジルコニア(Fully Stabilized Zirconia;FSZ)或いは部分安定化ジルコニア(Partially Stabilized Zirconia;PSZ)の態様で利用される。正方晶ジルコニア多結晶体(Tetragonal Zirconia Polycrystal;TZP)は、部分安定化ジルコニアとは区別される場合もあるが、本願においては、TZPも含めて部分安定化ジルコニア(PSZ)と称する。上記の安定化剤としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)等が用いられている。
上記の安定化ジルコニアは、安定化剤を固溶させることによって低温まで立方晶系の安定な領域を広げ、温度変化に対して相転移することのない結晶構造を実現したものである。また、上記の部分安定化ジルコニアは、安定化ジルコニアに必要な量よりも安定化剤の量を少なくして正方晶を生じさせたもので、亀裂先端に掛かった応力によって正方晶から単斜晶への相転移が生じ、その際の体積膨張が亀裂を閉じる方向に作用するので、機械的強度が高められる。部分安定化ジルコニアは、例えば主として立方晶から成る組織中に正方晶を析出させたものであるが、正方晶ジルコニア多結晶体は、安定化剤の量を部分安定化ジルコニアの中でも特に減じると共に、正方晶の安定領域で焼結させて結晶粒径を0.1〜2(μm)程度の微細粒径に制御することにより、極めて高い機械的強度を実現したものである。
特開2008−050247号公報 特開2010−150064号公報 特開平05−116944号公報 特開平08−119730号公報 特許第4470378号公報
ところで、例えば歯科材料用途では、3点曲げ強度で800(MPa)以上の高い強度と、全光線透過率で少なくとも40(%)以上の高い透光性とを共に備えることが要求されている。前述したような部分安定化ジルコニアは、歯科材料として十分な機械的強度を備えているが、透光性は低いため、その改善が望まれていた。
これに対して、2〜4(mol%)のイットリアを含むジルコニア焼結体において、3点曲げ強度が1700(MPa)以上、且つ、厚さ0.5(mm)での全光線透過率が43(%)以上の特性を備えたものが提案されている(例えば、前記特許文献1を参照。)。このジルコニア焼結体は、上述した歯科材料としての条件を満たすものであるが、10(μm)以上の大きさの気孔を完全に消滅させることによって、機械的強度および全光線透過率を向上させたものであり、相対密度95(%)以上の焼結体を半密閉状態の容器に入れ、50(MPa)以上の等方圧下で1200〜1600(℃)に加熱するHIP処理を施すことで得られる。
また、2〜4(mol%)のイットリアを含み、アルミナを含有しないジルコニア焼結体において、相対密度が99.8(%)以上、且つ、厚さ1.0(mm)での全光線透過率が35(%)以上のジルコニア焼結体が提案されている(例えば、前記特許文献2を参照。)。このジルコニア焼結体は、BET比表面積が10〜16(m2/g)、大気中において昇温速度300(℃/hr)で焼成したときの相対密度70(%)から90((%)までの焼結収縮速度(Δρ/ΔT)が0.0120〜0.0135(g/cm3・℃)である粉末を用いて成形および常圧にて焼成処理を施すことで製造される。このような焼結収縮速度の範囲内にある原料粉末を用いることで、上述したような99.8(%)以上の相対密度が得られ、高い透光性が得られるものとされている。すなわち、この技術によれば、HIP処理を必要とすることなく、常圧焼結でも機械的強度および透光性に共に優れたジルコニア焼結体が得られる。
しかしながら、前記特許文献1に記載される技術は、前述したように透光性を得るためにHIP処理を必須とする。このHIP処理のための装置は、一般に歯科医院に備えられていないため、患者ごとに型取りして補綴物等が製作される歯科材料用途では、HIP処理を必須とする上記材料は、実用性に問題がある。
一方、前記特許文献2に記載される技術によれば、HIP処理が無用であるため、一般の歯科医院においても容易に透光性の高い補綴物等を製作できる。しかし、この特許文献2に記載の焼結体と同等の焼結体で再現実験を行ってみても、厚さ0.5(mm)の全光線透過率で38(%)程度までの特性しか得られなかった。しかも、この技術では、原料粉末を製造するための仮焼処理において、温度や保持時間等の条件を種々変更して複数種類の粉末を作製し、これを加圧成形した成形体を熱収縮計で測定することにより、大気中、昇温速度300(℃/hr)における相対密度70(%)〜90(%)の焼結収縮速度を求め、その値に基づいて仮焼条件を決定する。そのため、原料製造のための仮焼条件を決定するに際して、成形および焼成処理が必須となるので、手間が掛かると共に、それらの処理条件の差異に起因して仮焼条件の適否判断を誤る可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、機械的強度が高く且つ透光性の優れたジルコニア焼結体と、その製造に用い得るジルコニア原料粉末を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明のジルコニア原料粉末の要旨とするところは、結晶相が専ら正方晶から成り、CuKα線を用いた粉末XRD測定における第1ピークの半価幅が0.268〜0.304度の範囲内、且つBET比表面積が17(m2/g)以上であることにある。
また、第2発明の結晶相が専ら正方晶から成るジルコニア原料粉末の製造方法の要旨とするところは、(a)ジルコニア一次原料粉末から一部を抜き取って試験粉を複数用意し、互いに異なる複数種類の条件で仮焼処理を施す仮焼試験工程と、(b)前記仮焼処理を施した前記試験粉の各々に対してCuKα線を用いた粉末XRD測定およびBET比表面積測定を行う試験粉評価工程と、(c)前記複数種類の条件のうち前記試験粉のXRD測定結果の第1ピークの半価幅が0.268〜0.304度の範囲内、且つBET比表面積が17(m 2 /g)以上になる条件を仮焼条件として決定する工程と、(d)前記決定した仮焼条件で前記ジルコニア一次原料粉末を仮焼する仮焼工程とを、含むことにある。
前記第1発明および第2発明によれば、ジルコニア原料粉末は、結晶相が専ら正方晶から成ると共に、粉末XRD測定におけるその正方晶の第1ピークの半価幅が0.268〜0.304°の範囲内の十分に小さい値に留められ、且つ、BET比表面積が17(m2/g)以上の微粉であることから、この原料粉末を用いて、所望の形状に加圧成形し、更に焼成処理を施すと、透光性が高く且つ機械的強度も高いジルコニア焼結体を得ることができる。ジルコニア原料粉末は、半価幅が小さいほど粒子内部の欠陥が少なく、これを成形して焼成処理を施すと、その粒子内部の欠陥に由来する欠陥が減じられるため、欠陥の少ない焼結体が得られる。また、比表面積が十分に大きいことから、高い活性を有するので、焼結体の粒界の欠陥が減じられる。この結果、透光性が高く且つ機械的強度も高くなるものと考えられる。
なお、本願発明において、第1ピークの半価幅は、小さいほど欠陥が少なくなるもので、前記上限値0.304°はこの観点で定められているが、半価幅を小さくするためには原料粉末を仮焼する際に保持時間を長く或いは昇温速度を遅くする必要がある。その結果、原料粉末の活性は低下傾向になり、透光性および機械的強度が却って低下するため、半価幅は0.268°以上にする必要がある。
また、本願発明において、BET比表面積は17(m2/g)以上にすることが必要で、これにより、原料粉末が十分に高い活性を有するので、焼結が促進されて粒界の欠陥が減じられる。比表面積が大きくなっても、粒内の欠陥は減じられないが、前述したように第1ピークの半価幅を十分に小さい値とすることで、粒内の欠陥が減じられる。このようにして、これら2種の欠陥が共に減じられることで、前述したように高い透光性が得られるのである。これに対して、前記特許文献2に記載されるようにBET比表面積を16(m2/g)以下にすると、低活性であることから、粒界の欠陥が残り易いので、十分に高い透光性が得られないものと考えられる。
また、本願において、「専ら正方晶から成る」とは、正方晶により現れる物性が他の結晶相により現れる物性よりも支配的であることを意味する。例えば、粉末XRD測定の結果から求められる正方晶の全体に占める割合が70(%)以上であれば、これに該当する。他の結晶相は、立方晶であっても単斜晶であってもよい。
因みに、ジルコニア原料粉末或いはジルコニア焼結体のXRD測定で得られるピークの半価幅を制御して特性改善を図ることは、従来から種々行われている。例えば、ジルコニア原料粉末の正方晶(200)面に相当するX線回折のピークの半価幅を0.5°以上とすることにより、平均粒径が1〜100(μm)の比較的粗い原料粉末でも焼結性を高め、焼成時の高い脱脂性と焼結体の高い機械的強度とを両立させることが提案されている(例えば、前記特許文献3を参照。)。半価幅が大きいほど結晶格子が歪んで結晶性が低下することから、焼成時の結合作用が促進されるものとされている。
また、焼結体表面のX線回折測定による正方晶ジルコニアの(101)面のピークの半価幅を0.3°以上にすることにより、水熱安定性を向上させることが提案されている(例えば、前記特許文献4を参照。)。半価幅を大きくすることで、正方晶から単斜晶への相変態の抑制効果が十分に得られ、強度の経時劣化が抑制されるものとされている。
また、焼結体のX線回折パターンの正方晶(111)面ピークの半価幅を0.42〜0.47°とすることにより、強度および靭性を高めることが提案されている(例えば、前記特許文献5を参照。)。一般に、セラミック焼結体においては、半価幅が大きいほど欠陥が多く、強度や靭性が低くなるものと考えられてきたが、ジルコニア焼結体においては従来よりも大きい半価幅で高強度・高靭性が得られることを見出したとされている。
しかしながら、上記各文献に記載の技術は、何れも半価幅の数値範囲が本願発明とは異なるもので、しかも、解決しようとする課題も異なり、透光性を改善することは全く検討されていない。
また、第1発明および第2発明によれば、ジルコニア原料粉末は、粉末XRD測定の半価幅およびBET比表面積が共に前記範囲内にあるように仮焼条件を定めればよい。すなわち、仮焼条件を定めるに際しては、一次原料に応じて条件を適宜調整して仮焼処理を施し、得られた原料粉末の物性を測定して、前記範囲内の値が得られるか否かでその条件の適否を判断できる。そのため、前記特許文献2に記載の技術において焼結収縮速度を求めるために必須であった仮焼原料粉末の成形・焼成が無用であることから、それらの処理の手間を要せず、しかも、成形・焼成条件の差異に起因する仮焼条件の適否判断の誤りが生じ得ない利点がある。
また、好適には、前記第2発明のジルコニア焼結体は、0.5(mm)厚みの試料の分光光度計による波長600(nm)の全光透過率が42(%)以上である。このようにすれば、十分に高い透光性を有することから、審美的に透光性が求められる歯科材料に好適である。一般に、歯の先端縁部は0.5(mm)程度の厚さ寸法を有し、この先端縁部が透けて見えることが審美的に好ましい。したがって、上記のように0.5(mm)厚みで40(%)以上の全光透過率を有していれば、十分な審美性が得られる。因みに、従来から歯科用補綴物に用いられてきたジルコニア焼結体は、透光性の高いものでも全光透過率が35〜37(%)程度に留まっていた。これは全光透過率が例えば40(%)以上である天然歯のエナメル質に比較して劣るので、機械的強度を保ったままジルコニア焼結体の透光性を一層高めることが望まれていた。
また、好適には、前記第1発明のジルコニア原料粉末は、一次粒子径が30〜140(nm)の範囲内である。このようにすれば、一次粒子径が十分に小さいことから、高い焼結性を有するので、原料粉末の欠陥が減じられていることと相俟って透過率の一層高いジルコニア焼結体を製造し得る。
また、好適には、前記第1発明のジルコニア原料粉末は、Y2O3を3(mol%)程度の割合で安定化剤として含むものである。本発明のジルコニア原料粉末は、良く知られたカルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、イットリア(Y2O3)、セリア(CeO2)等の種々の安定化剤を任意に選択して、適宜の添加量で用いることができるが、中でもY2O3を3(mol%)含むものは機械的強度が高く、且つ、透光性も高いため好ましい。
また、好適には、前記第2発明のジルコニア焼結体は、前記ジルコニア原料粉末を1軸加圧成形装置で成形した後、等方圧で加圧処理を施し、その後、焼成処理を施すことによって製造される。このようにすれば、未焼成の成形体の密度が高められ且つ均質化させられることから、相対密度が一層高く、機械的強度や透光性が一層高いジルコニア焼結体が得られる。
また、好適には、前記第2発明のジルコニア焼結体は、大気中常圧下において、昇温速度50〜200(℃/hr)の範囲内、最高温度1350〜1550(℃)の範囲内、保持時間1〜5(hr)の範囲内で焼成処理を施すことにより得られる。このようにすれば、機械的強度や透光性が一層高いジルコニア焼結体が得られる。
本発明の一実施例のジルコニア粉末の製造方法を説明する工程図である。 図1の工程により製造されたジルコニア粉末のXRDチャートである。 図1の工程により製造された種々のジルコニア粉末のXRD第1ピーク半価幅とジルコニア焼結体の光の透過率との関係を示すグラフである。 図1の工程により製造された種々のジルコニア粉末の比表面積とジルコニア焼結体の光の透過率との関係を示すグラフである。 図1の工程により製造されたジルコニア粉末の電子顕微鏡写真である。 比較例のジルコニア粉末の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のジルコニア粉末の製造方法の一例を説明する工程図である。図1において、合成工程P1では、例えば、オキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム塩の加水分解反応により、水和ジルコニアゾルを生成し、これに塩化イットリウム等を添加して乾燥させて、一次原料を合成する。
次いで、仮焼試験P2においては、上記の合成した一次原料の一部を取り、種々の条件、一例を挙げると、昇温速度20〜200(℃/hr)の範囲内、最高温度600〜1100(℃)の範囲内、最高温度における保持時間1.2〜20(hr)の範囲内で仮焼処理を施す。仮焼した一次原料は、試験粉粉砕工程P3において、例えば、回転式或いは振動式のボールミル等を用いて、0.1〜5(μm)程度の粒径に粉砕する。
次いで、試験粉評価工程P4では、粉砕して得られた仮焼粉末の評価を行う。試験粉の評価項目は、XRD測定および比表面積測定である。XRD測定は、例えばCuKα線を用い、50(kV)、50(mA)の出力で、5〜80°までの角度範囲の回折線強度を求め、その結果から、30.5°付近に現れる第1ピークの半価幅を求める。また、比表面積測定は、例えば、ガス吸着法(BET法)によって行う。
図2に得られたXRDチャートの一例を示す。この粉末は、例えば、昇温速度200(℃/hr)、最高温度960(℃)、保持時間1.2(hr)の条件で仮焼を施したもので、30.3°付近に第1ピーク、50.3°付近に第2ピーク、60.1°付近に第3ピーク、50.7°付近に第4ピーク、59.5°付近に第5ピークが認められる。また、単斜晶特有のピークである28.4°、31.5°付近の強度はバックグラウンドよりも僅かに高い程度に留まる。上記第1ピーク、第2ピークは立方晶も略同じ角度にピークを有するが、第3〜第5ピークは正方晶特有の角度であって、立方晶特有の35.0°および59.8°付近の強度は低いので、結晶相は専ら正方晶である。また、この粉末の比表面積は、例えば、24(m2/g)であった。
上記の試験粉XRD測定および比表面積測定は、仮焼条件を決定するために行われる。仮焼条件決定工程P5では、XRDチャートの30.3°付近に現れている第1ピークの半価幅が0.26〜0.31°の範囲内になり、且つ、比表面積が17(m2/g)以上になる条件の中から、製造効率や安定性等を考慮して仮焼条件を決定する。
なお、上記の仮焼条件の選択は、予め種々実験をして得られたジルコニア粉末の第1ピークの半価幅および比表面積と、その粉末を成形・焼成処理して得られるジルコニア焼結体の光の透過率および機械的強度との関係等に基づいて為される。すなわち、前記合成工程P1に先立って、仮焼条件を種々変更したジルコニア粉末を用意して、ジルコニア焼結体の光の透過率と曲げ強度とを評価した結果として、半価幅が0.26〜0.31°の範囲内且つ比表面積が17(m2/g)以上になると、42(%)以上の光の透過率と、800(MPa)以上の曲げ強度が得られることが判明している。本実施例では、このような先行評価試験で得られた半価幅と透光性および強度との関係に基づき、仮焼したジルコニア原料粉末のXRD測定を行うだけで、高い透光性と高い強度とが得られる仮焼条件を選定することができる。
このようにして仮焼条件を決定した後、仮焼工程P6では、前記合成工程P1で合成した一次原料の全量をその仮焼条件で仮焼する。次いで、粉砕工程P7では、仮焼した一次原料を、試験粉と同様に、例えば、回転式或いは振動式のボールミル等を用いて、0.1〜5(μm)程度の粒径に粉砕する。原料評価工程P8では、粉砕した原料粉末の一部を取ってXRD測定および比表面積測定を行う。XRD測定のピークの位置、大きさ、特に第1ピークの半価幅等から、結晶相が専ら正方晶から成り、第1ピークの半価幅が0.26〜0.31°の範囲内であることを確認すると共に、BET比表面積が17(m2/g)以上であることを確認する。すなわち、これらの観点により、試験の際と同じ条件で仮焼処理が為され、所期の原料粉末が得られているか否かを確認する。
次いで、スラリー調製工程P9では、原料粉末に、有機結合剤、分散剤、水等を混合して、スラリーを調製する。噴霧乾燥工程P10では、このスラリーを、良く知られたスプレードライヤ装置を用いて、噴霧乾燥して造粒する。このようにして得られたジルコニア原料粉末を所望の形状に加圧成形し、原料粉末の一次粒径や仮焼条件等に応じて定められた適宜の条件、例えば、最高温度1450(℃)、2時間保持等の条件で焼成処理を施す。これにより、例えば、0.5(mm)厚での全光透過率が42(%)以上で、3点曲げ強度が800(MPa)以上の特性を有するジルコニア焼結体が得られる。すなわち、歯科用補綴物として十分な物性を備えたジルコニア焼結体を得ることができる。
このように、本実施例によれば、ジルコニア原料粉末は、結晶相が専ら正方晶から成ると共に、粉末XRD測定におけるその正方晶の第1ピークの半価幅が0.26〜0.31°の範囲内の十分に小さい値に留められ、且つ、BET比表面積が17(m2/g)以上の微粉であることから、この原料粉末を用いて、所望の形状に加圧成形し、更に焼成処理を施すと、透光性が高く且つ機械的強度も高いジルコニア焼結体を得ることができる。
また、本実施例によれば、ジルコニア原料粉末の仮焼条件は、粉末XRD測定の半価幅およびBET比表面積が、前述した条件を満たすように定めればよい。すなわち、仮焼条件を定めるに際しては、一次原料に応じて条件を適宜調整して仮焼処理を施し、得られた原料粉末の物性を測定して、前記範囲内の値が得られるか否かでその条件の適否を判断できる。そのため、仮焼原料粉末の成形・焼成が無用であることから、それらの処理の手間を要せず、しかも、成形・焼成条件の差異に起因する仮焼条件の適否判断の誤りが生じ得ない利点がある。
下記の表1は、一次原料および仮焼条件を種々変更して、ジルコニア原料粉末を製造し、焼結体を作製して評価した結果をまとめたものである。表1において、No.5、6、7、11、12が比較例、他が本発明の範囲内の実施例である。評価に供した一次原料は、例えば加水分解ゾル濃度を変化させることにより、粒径が30(nm)、70(nm)、140(nm)と異なる3種を用意した。仮焼条件は、昇温速度が20〜200(℃/hr)の範囲、最高温度が960(℃)、その最高温度における保持時間が1.2〜20.0(hr)の範囲である。そして、前述した原料製造工程に従って粉砕や噴霧造粒等を経て、ジルコニア原料粉末を作製し、加圧成形および焼成処理を施すことでジルコニア焼結体を作製して全光透過率と曲げ強度とを評価した。なお、全光透過率の評価には、JIS K 7361「全光線透過率の試験方法」に準拠して、厚みが0.5(mm)の試料を作製し、曲げ強度の評価には、JIS R1601「曲げ強さ試験方法」に準拠して、幅4(mm)、厚さ3(mm)、長さ40(mm)以上の試料を用意した。上記寸法は何れも焼成、研磨後の値である。
上記の表1において、「一次粒径」は、仮焼処理を施す前の一次原料の粒径であるが、仮焼して得られる二次粒子においても、一次粒子の粒界は残存しており、その一次粒径に変化は見られない。
また、評価結果欄において、「半価幅」は、XRD測定結果から求めたもので、30.3°付近に現れている第1ピークの半価幅である。前記仮焼条件の範囲では、第1ピークの半価幅は実施例が0.268〜0.304°、比較例が0.228〜0.250°および0.322〜0.374°の範囲となった。
また、「比表面積」は、前述したBET法により測定した値であり、仮焼、粉砕後に測定する。比表面積は、実施例では17〜24(m2/g)の範囲と、十分に大きいが、比較例のNo.7では13(m2/g)、No.12では15(m2/g)に留まり、曲げ強度が507〜734(MPa)と、歯科材料で望まれる800(MPa)を下回った。なお、比表面積が17(m2/g)以上の試料では、実施例、比較例ともに800(MPa)を越える曲げ強度が得られている。この結果から、比表面積は17(m2/g)以上とすることが必要である。また、Y2O3量は、一次原料の合成時に添加したY2O3がZrO2に所期の3(mol%)の割合で固溶していることの確認のために測定したもので、概ね所期の値が得られていることが確かめられた。
図3は、上記表1に示した評価において、ジルコニア原料粉末の第1ピークの半価幅を横軸に、ジルコニア焼結体の0.5(mm)厚での光の透過率を縦軸にとってグラフ化したものである。一次粒径が30(nm)のデータを◆、70(nm)のデータを□、140(nm)のデータを△で示した。半価幅が0.228〜0.250°の前記表1のNo.5〜7では、透過率が40.71〜41.58(%)に留まる。また、半価幅が0.374のNo.11では、透過率が38.76(%)に留まる。これに対して、第1ピークの半価幅を0.26〜0.31°に制御した実施例のNo.1〜4、8〜10、13では、42.04〜44.06(%)もの高い光の透過率が得られた。図3によれば、第1ピークの半価幅が0.26〜0.31°の範囲になれば、42(%)以上の透過率が得られることが明らかである。なお、半価幅が0.27°のNo.10において、44(%)を越える透過率が得られているが、それよりも半価幅が小さくなると、却って光の透過率が低下する傾向が認められる。また、No.12は、半価幅が0.322°、透過率が42.50(%)の特性が得られているが、前述したように比表面積が小さいため曲げ強度が不十分なものである。
図4は、ジルコニア原料粉末の比表面積と、ジルコニア焼結体の光の透過率との関係を表したものである。これらの間には相関関係は特に認められず、評価した比表面積の範囲の略全体に亘って高い光の透過率が得られている。比表面積は前述したように専ら曲げ強度に影響するものであるが、光の透過率への影響は殆ど無いものと考えられる。
図5は、前記実施例のNo.8のジルコニア原料粉末の電子顕微鏡写真であり、図6は、比較例のNo.11のジルコニア原料粉末の電子顕微鏡写真である。実施例の原料粉末は、粒子表面にムラが認められず、単結晶に近い状態になっているものと考えられる。すなわち、粒子表面や粒内に欠陥が少ない状態である。これに対して、比較例の原料粉末は、表面に著しいムラが認められるが、これは粒子表面や粒内に多数の欠陥が存在するためである。このように多数の欠陥が存在する原料粉末を用いて、成形、焼成処理を経て焼結体を製造すると、その焼結体には粒子欠陥に起因する多数の欠陥が生ずることとなる。その結果、光の透過率が低下することになる。しかしながら、半価幅が0.31°以下まで小さくされた実施例の原料粉末によれば、粒子表面、粒内の欠陥が少ないことから、それら粒子欠陥に起因する欠陥が焼結体に生じ難いので、欠陥が少ない焼結体が得られることになる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

Claims (2)

  1. 結晶相が専ら正方晶から成り、CuKα線を用いた粉末XRD測定における第1ピークの半価幅が0.268〜0.304度の範囲内、且つBET比表面積が17(m2/g)以上であることを特徴とするジルコニア原料粉末。
  2. ジルコニア一次原料粉末から一部を抜き取って試験粉を複数用意し、互いに異なる複数種類の条件で仮焼処理を施す仮焼試験工程と、
    前記仮焼処理を施した前記試験粉の各々に対してCuKα線を用いた粉末XRD測定およびBET比表面積測定を行う試験粉評価工程と、
    前記複数種類の条件のうち前記試験粉のXRD測定結果の第1ピークの半価幅が0.268〜0.304度の範囲内、且つBET比表面積が17(m 2 /g)以上になる条件を仮焼条件として決定する工程と、
    前記決定した仮焼条件で前記ジルコニア一次原料粉末を仮焼する仮焼工程と
    を、含むことを特徴とする結晶相が専ら正方晶から成るジルコニア原料粉末の製造方法。
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