JP2024028485A - 粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】常圧焼結であっても、高い透光性を有する焼結体が得られ、なおかつ、工業的な製造に適したジルコニアの粉末、その製造方法、これを用いた仮焼体の製造方法、及び、これを用いた焼結体の製造方法、の少なくともいずれかを提供する。【解決手段】2mol%以上8mol%以下の安定化元素及び50ppm以下のチタン(Ti)を含み、なおかつ、活性化エネルギーが225kJ/mol以上300kJ/mol以下である、ジルコニアの粉末。このような粉末は、ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液のpHを3.5以上5.5以下とする工程、該原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程、該ジルコニア溶液とアルカリ溶液を混合して共沈物を得る工程、及び、該共沈物を熱処理する工程、を有する製造方法により得られることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本開示は、ジルコニアをマトリックスとする粉末、その製造方法、並びに、これを使用する仮焼体及び焼結体に関する。
ジルコニア(酸化ジルコニウム;ZrO)の焼結体は、粉砕用途、光学用途、装飾用途、歯科用途など、幅広い用途で使用されている。ジルコニアは、機械的特性に加え透け感(いわゆる透光感)を有するため、歯科用途や装飾用途へ適用の検討が広くなされている。さらに、これらの用途に適した製造方法や原料粉末について検討がなされている。
例えば、熱間静水圧プレス処理(HIP処理)を用いて焼結することにより、市販のジルコニアの粉末から、高い全光線透過率を有する焼結体が得られることが開示されている(特許文献1)。これに対し、常圧焼結における相対密度70%から90%に至る焼結収縮速度が制御された粉末により、常圧焼結であっても全光線透過率の高い焼結体が得られることが開示されている(特許文献2)。さらに、一次粒子径が30nm未満のナノジルコニア粒子を使用することで、常圧焼結により比較的高い光透過率を有する焼結体が得られることが開示されている(特許文献3)。
国際公開2008/013099号 特開2010-150064号公報 特開2016-060687号公報
特許文献1では、透光性を付与するためのHIP処理が必要であるため、安価な粉末を使用できるものの、透光性を有する焼結体の製造方法としては製造コストが高くなりやすい。また、特許文献2の粉末は常圧焼結で高い透光性を有する焼結体が得られるが、このような粉末を工業的に安定して製造するためには精緻な製造条件の制御が必要となる。また、特許文献3のナノジルコニアは、超臨界乾燥という特殊な製造設備を使用するため製造コストが高く、工業的製造の観点からは適してない。
本開示は、常圧焼結であっても、高い透光性を有する焼結体が得られ、なおかつ、工業的な製造に適したジルコニアの粉末、その製造方法、これを用いた仮焼体の製造方法、及び、これを用いた焼結体の製造方法、の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
本開示では、透光性を有するジルコニアの焼結体の原料粉末として適した工業的なジルコニアの粉末及びその製造方法について検討した。その結果、粉末の状態、特に組成とエネルギー状態に着目することで、常圧焼結であっても、より高い透光性を有する焼結体が得られる粉末を見出した。これと同時に、製造工程の一部を改良することで、特殊な製造設備や精緻な製造条件の制御を要することなく、このような粉末が得られることを見出した。
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 2mol%以上8mol%以下の安定化元素及び50ppm以下のチタン(Ti)を含み、なおかつ、活性化エネルギーが225kJ/mol以上300kJ/mol以下である、ジルコニアの粉末。
[2] 前記安定化元素が、イットリウム、カルシウム及びマグネシウムの群から選ばれる1以上である、上記[1]に記載の粉末。
[3] 塩素を含む、上記[1]又は[2]に記載の粉末。
[4] 塩素含有量が100ppm以上500ppm以下である、上記[3]に記載の粉末。
[5] BET比表面積が6m/g以上、15m/g以下、である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載の粉末。
[6] 一次粒子径が80nm以上、150nm以下、である上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載の粉末。
[7] アクチノイド元素を含む、上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載の粉末。
[8] ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液のpHを3.5以上5.5以下とする工程、該原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程、該ジルコニア溶液とアルカリ溶液を混合して共沈物を得る工程、及び、該共沈物を熱処理する工程、を有することを特徴とする、上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載のジルコニアの粉末の製造方法。
[9] 前記原料溶液が、塩化アンモニウムを含む上記[8]に記載の製造方法。
[10] 上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の粉末を使用する仮焼体の製造方法。
[11] 上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の粉末を使用する焼結体の製造方法。
本開示により、常圧焼結であっても、高い透光性を有する焼結体が得られ、なおかつ、工業的な製造に適したジルコニアの粉末、その製造方法、これを用いた仮焼体の製造方法、及び、これを用いた焼結体の製造方法、の少なくともいずれかを提供することができる。
以下、本開示の粉末について実施形態の一例を示して説明する。
本実施形態は2mol%以上8mol%以下の安定化元素及び50ppm以下のチタン(Ti)、を含み、なおかつ、活性化エネルギーが225kJ/mol以上300kJ/mol以下である、ジルコニアの粉末である。
本実施形態はジルコニアの粉末に係る。本実施形態におけるジルコニアの粉末(以下、「ジルコニア粉末」ともいう。)とは、ジルコニア(ZrO)をマトリックス(主成分)とする粉末であり、ジルコニアのみからなる粉末に限定されない。さらに、本実施形態のジルコニア粉末におけるジルコニアは部分安定化ジルコニアであってもよい。
本実施形態の粉末は安定化元素を含む。安定化元素は、ジルコニアの結晶構造を安定化する機能を有する元素であり、ジルコニアを着色せずにその結晶構造を安定化する元素であることが好ましい。具体的な安定化元素として、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の群か選ばれる1以上、更にはイットリウムが例示できる。
安定化元素の含有量は、ジルコニアの結晶相が正方晶を含む結晶相で安定化される量であり、2mol%以上8mol%以下である。好ましい安定化元素の含有量(以下、「安定化元素量」ともいい、安定化元素がイットリウム等である場合は「イットリウム量」等ともいう。)として、2mol%超、2.5mol%以上又は3mol%以上であり、また、7mol%以下、6mol%以下、4.5mol%以下又は4mol%以下、が挙げられ、また、2mol%超7mol%以下、2.5mol%以上6mol%以下、3mol%以上4.5mol%以下、又は、3mol%以上4mol%以下であることが挙げられる。
本実施形態における安定化元素量は、酸化物換算した安定化元素及びジルコニアの合計に対する、酸化物換算した安定化元素のモル割合[mol%]である。さらに、チタンを含有する粉末における安定化元素量は、TiO換算したチタン、酸化物換算した安定化元素及びジルコニアの合計に対する、酸化物換算した安定化元素のモル割合[mol%]から求めればよい。本実施形態における安定化元素の酸化物換算は、イットリウムがY、カルシウムがCaO及びマグネシウムがMgOとすればよい。
本実施形態の粉末は50ppm以下(50質量ppm以下)のチタン(Ti)を含む。焼結体の結晶粒子の粒成長を促進するため2000ppm(0.2質量%)以上のチタンをジルコニアに添加することが知られている。これに対し、本実施形態の粉末はチタンを含み(すなわち、チタンの含有量が0ppm超(0質量ppm超)であり)、かつ、実質的に焼結体の結晶粒子の粒成長を促進させない量を含有する。このような微量のチタンを含み、なおかつ、後述の活性化エネルギーを有することで、焼結過程の中でも、比較的高い温度域の熱処理における焼結が促進されやすくなる。これにより、通常の常圧焼結であっても高い透光性を有する焼結体が得られると考えられる。本実施形態の粉末が含有するチタンは原料由来のチタンであることがより好ましく、これにより、本実施形態の粉末の活性化エネルギーが得られやすくなる。本実施形態の粉末は測定限界以上(例えば、0ppm超、更には5ppm超、また更には10ppm超)のチタン、好ましくは10ppm以上又は20ppm超のチタンを含み、また、40ppm以下又は30ppm以下のチタンを含むことが好ましく、0質量ppm超50質量ppm以下、5質量ppm超40質量ppm以下、又は、10質量ppm超30質量ppm以下が挙げられる。
本実施形態におけるチタンの含有量(以下、「チタン量」ともいう。)は、TiO換算したチタン、酸化物換算した安定化元素及びジルコニアの合計に対する、TiO換算したチタンの質量割合[ppm]である。なお、本実施形態の粉末がアルミナ等を含む場合のチタン量は、酸化物換算した金属元素、TiO換算したチタン、酸化物換算した安定化元素及びジルコニアの合計に対する、TiO換算したチタンの質量割合[ppm]であればよい。
チタン量の測定において、一般的なICP質量分析装置(例えば、装置名:NexION300S、Perkin Elmer社製)を使用したICP質量分析により、これらを測定すればよい。
本実施形態の粉末は、アルミナを含まなくとも、これを常圧焼結することで高い透光性を有する焼結体が得られるが、アルミナ(Al)を含んでいてもよい。アルミナの含有量は、0質量%以上又は0質量%超であり、また、0.5質量%以下、0.3質量%以下又は0.25質量%以下、0.25質量%未満、0.1質量%未満又は0.05質量%未満であることが挙げられ、また、0質量%以上0.5質量%以下、0質量%以上0.25質量%以下、0質量%以上0.25質量%未満、0質量%以上0.1質量%以下、0質量%超0.25質量%未満、又は、0質量%超0.05質量%未満が例示できる。得られる焼結体の強度が高くなる観点から、アルミナ含有量は0.1質量%以上3質量%以下、更には0.1質量%以上0.5質量%以下であってもよい。
本実施形態におけるアルミナの含有量(以下、「アルミナ量」ともいう。)は、Al換算したアルミニウム、酸化物換算した金属元素、酸化物換算した安定化元素及びジルコニアの合計に対する、Al換算したアルミニウムの質量割合[質量%]である。
安定化元素量及びアルミナ量の測定において、一般的なICP質量分析装置(例えば、装置名:7300DV、Perkin Elmer社製)を使用したICP発光分析により、それぞれ、安定化元素及びアルミニウムを測定すればよい。
本実施形態の粉末は、ジルコニアの不可避不純物であるハフニア(HfO)を含んでいてもよい。ハフニアの含有量はジルコニアの原料鉱石や、その処理法により変化する。また、本実施形態において、密度などの組成に基づく値を算出する場合、ハフニアはジルコニアとみなしてこれを求めればよい。
本実施形態の粉末は、安定化元素、チタン及び、必要に応じてアルミナ、を含むジルコニアからなっていればよいが、十分に少ない量であれば、アクチノイド元素を含んでいてもよい。本実施形態の粉末に含まれ得るアクチノイド元素は、アクチニウム(Ac)、トリウム(Th)及びプロトアクチニウム(Pa)の群から選ばれる1以上、また更にはトリウムが挙げられる。アクチノイド元素は、ジルコンサンドなどの原料鉱石に由来し、これらが粉末に残存することで、粉末の活性化エネルギーに影響を与え得ると考えられる。
アクチノイド元素を含む場合、その含有量(以下、「アクチノイド量」ともいい、アクチノイドがトリウム等である場合は、それぞれ「トリウム量」等ともいう。)は測定限界以上(例えば、0質量ppb以上、0質量ppb超、100質量ppb超、200質量ppb以上、又は、400質量ppb以上)であり、かつ、700質量ppb以下又は500質量ppb以下であることが例示でき、0質量ppb以上700質量ppb以下、0質量ppb以上500質量ppb以下、0質量ppb超700質量ppb以下、又は、0質量ppb超500質量ppb以下、が挙げられる。
本実施形態におけるアクチノイド量は、粉末の質量に対するアクチノイド(元素)の質量割合[ppb]である。
アクチノイド量の測定において、一般的なICP質量分析装置(装置名:NexION300S、Perkin Elmer社製)を使用したICP質量分析によりアクチノイドを測定すればよい。
本実施形態の粉末は塩素(Cl)を含んでいてもよい。本実施形態の粉末の塩素含有量として、0質量ppm以上、0質量ppm超又は100質量ppm以上であり、また、500質量ppm以下、300質量ppm以下又は250質量ppm以下であることが例示でき、また、0質量ppm以上500質量ppm以下、又は、0質量ppm超300質量ppm以下が挙げられる。
本実施形態における塩素量は、蛍光X線回折から求まる、粉末質量に対する塩素の質量割合[ppm]である。
例えば、本実施形態の粉末が、イットリウム、トリウム、チタン及びアルミナを含むジルコニアの粉末である場合、イットリウム量[mol%]は、Y[mol]/(Y+ZrO)[mol]から、チタン量[ppm]は、TiO[g]/(Y+ZrO+TiO+ThO+Al)[g]から、及び、アルミナ量[ppm]は、Al[g]/(Y+ZrO+TiO+ThO+Al)[g]から、それぞれ求められる。
また、当該粉末において、アクチノイド量はアクチノイド(元素)の質量/粉末の質量[ppb]、から求められ、同様に非金属元素である塩素は、塩素(Cl)の質量/粉末の質量[ppm]、から求められる。アクチノイド量及び塩素量の算出における粉末の質量はIg.Loss質量であり、大気雰囲気、1000℃、1~2時間(好ましくは2時間)で処理後の粉末の質量である。
本実施形態の粉末は活性化エネルギーが225kJ/mol以上300kJ/mol以下であるジルコニアの粉末、である。安定化元素及び微量のチタン、好ましくは原料由来のチタン、を含有し、なおかつ、このような活性化エネルギーを有することで、高温域における焼結が促進される。その結果、結晶粒径の成長に先立ち、緻密化が促進されやすくなる。活性化エネルギーは225kJ/mol以上、240kJ/mol以上又は260kJ/mol以上であり、また、300kJ/mol以下、290kJ/mol以下又は270kJ/mol以下であることが好ましい。活性化エネルギーとして225kJ/mol以上300kJ/mol以下、240kJ/mol以上290kJ/mol以下、260kJ/mol以上290kJ/mol以下、又は、260kJ/mol以上270kJ/mol以下であることが例示できる。
本実施形態において、活性エネルギーは、成形した粉末を測定試料とし、これを昇温したときの測定試料の試料長さ(以下、「試料長」ともいう。)のアレニウスプロットから求められる。
試料長の測定条件は以下の条件である。
測定試料 : 縦4mm×横4mm×長さ5mmの直方体形状の成形体
昇温・降温雰囲気 : 大気雰囲気
昇温速度 : 5℃/分
最高到達温度 : ~1500℃
試料長の測定間隔 : △T=5℃間隔
降温速度 : 5℃/分
測定試料の昇温及び降温は一般的な熱膨張計(例えば、TD5020SE、NETZSCH製)を使用して行えばよい。
測定試料は、本実施形態の粉末を1.25±0.01g秤量し、これを成形圧20MPaで一軸加圧成形した後に200MPaで冷間静水圧プレス処理(以下、「CIP処理」ともいう。)し、縦4mm×横4mm×長さ5mmの直方体形状の成形体とし、これを大気雰囲気、500℃、1時間で焼成すればよい。
昇温中の試料長の測定値(L’)は、熱膨張の影響を含む値である。そのため、活性化エネルギーの算出に使用する試料長(L)の値は、測定値(L’)から熱膨張の影響を除いた補正値とする。該補正値は測定値を熱膨張係数で補正することで求められ、また、熱膨張係数による補正は、標準試料を使用する方法など、使用する熱膨張計に応じた公知の方法で行うことができる。
昇温前の試料長(L)に対する、補正後の試料長(L)の変化量(△L)が0%以上4%以下の範囲について、得られる温度Tにおける補正後の試料長(L)及び温度Tを、ln[T3/5・△(1-L/L)/△T]の形式でアレニウスプロットし、該プロットから得られる一次近似式の傾きから活性化エネルギーを求めればよい。
なお、上記のアレニウスプロットは以下の式の左辺に相当し、当該プロットを、右辺の式で解析することにより活性化エネルギーは求められる。すなわち、当該プロットから得られ一次近似式の傾きが下式のQ/RTに相当するため、これよりQを求めればよい。
上式において、βは頻度因子、Qは活性化エネルギー[kJ/mol]、Rはガス定数(=8.31[J/(mol・K)])、Tは温度[K]、Lは昇温前の試料長[mm]、Lは温度Tでの補正後の試料長[mm]及び△Tは5[K]である。
本実施形態の粉末のBET比表面積は、6m/g以上又は7m/g以上であり、また、15m/g以下、12m/g以下又は10m/g以下であることが挙げられ、6m/g以上15m/g以下、7m/g以上12m/g以下、又は、7m/g以上10m/g以下であればよい。
本実施形態において、BET比表面積は、JIS R 1626に準じた定量法で測定される値であり、一般的な比表面積自動測定装置(例えば、Tristar3000、Micromeritics社製)、及び、吸着ガスに窒素を使用した5点法により測定すればよい。測定に先立ち、大気雰囲気、550℃で30分間の脱気処理を施し、前処理すればよい。
本実施形態の粉末の一次粒子径は80nm以上又は100nm以上であり、また、150nm以下、135nm以下、125nm以下又は120nm以下であることが挙げられ、80nm以上150nm以下、80nm以上135nm以下、100nm以上135nm以下、100nm以上125nm以下、又は、100nm以上120nm以下であればよい。
本実施形態における平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察される一次粒子径(いわゆるTEM径)の平均値であり、透過型電子顕微鏡を用いて得られた観察図より、300個の粒子を抽出し、画像解析ソフト(例えば、ImageJ)を使用して抽出した各粒子の円相当径を求め、その平均値である。
本実施形態の粉末は凝集が少ないことが好ましく、平均二次粒子径は0.7μm以下、0.5μm以下又は0.45μm以下であることが好ましい。平均二次粒子径は平均一次粒子径以上であればよく、例えば、0.15μm以上、0.2μm以上又は0.3μm以上であることが挙げられる。好ましい平均二次粒子径の範囲として0.15μm以上0.7μm以下、0.2μm以上0.5μm以下、又は、0.3μm以上0.45μm以下が挙げられる。
本実施形態にお行ける平均二次粒子径は、湿式法で測定される粉末の体積粒子径分布におけるメジアン径(D50)であり、一般的な装置(例えば、MT3300EXII、マイクロトラック・ベル社製)を使用して測定することができる。測定試料は、大気雰囲気、400~600℃で熱処理した後、超音波処理などの分散処理により緩慢凝集を除去した粉末をスラリーとしたものを使用すればよい。
本実施形態の粉末の単斜晶率は0%以上又は3%以上であり、また、10%以下、6%以下又は5%以下であることが挙げられ、0%以上10%以下、又は、3%以上5%以下であればよい。
本実施形態において単斜晶率は、ジルコニアの結晶相に占める、単斜晶ジルコニアの割合である。粉末の粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンを使用し、単斜晶率は以下の式から求めることができる。
={I(111)+I(11-1)}/[I(111)
+I(11-1)+I(111)+I(111)]×100
上式において、fは単斜晶率(%)、I(111)及びI(11-1)は、それぞれ、単斜晶ジルコニアの(111)面及び(11-1)面に相当するXRDピークの面積強度、I(111)は正方晶ジルコニアの(111)面に相当するXRDピークの面積強度、並びにI(111)は立方晶ジルコニアの(111)面に相当するXRDピークの面積強度である。
XRDパターンの測定の条件として、以下の条件を挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 連続スキャン
スキャンスピード : 4°/分
ステップ幅 : 0.02°
測定範囲 : 2θ=26°~33°
上述のXRDパターン測定において、好ましくは、ジルコニアの各結晶面に相当するXRDピークは、以下の2θにピークトップを有するピークとして測定される。
単斜晶ジルコニアの(111)面に相当するXRDピーク : 2θ=31±0.5°
単斜晶ジルコニアの(11-1)面に相当するXRDピーク: 2θ=28±0.5°
正方晶ジルコニア及び立方晶ジルコニアの(111)面に相当するRDピークは重複して測定され、そのピークトップの2θは、2θ=30±0.5°である。
各結晶面のXRDピークの面積強度は、計算プログラムに“PRO-FIT”を使用し、H. Toraya,J. Appl. Crystallogr.,19,440-447(1986)に記載の方法で、各XRDピークを分離した上で求めることができる。
本実施形態の粉末は、仮焼体及び焼結体の少なくともいずれかの製造方法に使用することができ、仮焼体及び焼結体の前駆体として使用できる。
本実施形態の粉末を使用する仮焼体の製造方法は任意であるが、成形体を仮焼する工程(以下、「仮焼工程」ともいう。)、を有する仮焼体の製造方法であればよい。
成形体は、本実施形態の粉末の圧粉体であり、これは本実施形態の粉末を公知の方法で成形することで得られる。成形方法としては、例えば、一軸加圧、CIP処理、スリップキャスティング及び射出成形の群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは一軸プレス、CIP処理及び射出成形の群から選ばれる少なくとも1種、が挙げられる。
仮焼は、成形体(圧粉体)を焼結温度未満で熱処理すればよく、仮焼条件として以下の条件が挙げられる。
仮焼雰囲気 : 大気雰囲気
仮焼温度 : 800℃以上1200℃未満
本実施形態の粉末を使用する焼結体の製造方法は任意であるが、本実施形態の粉末を含む成形体及び仮焼体の少なくともいずれかを焼結する工程(以下、「焼結工程」ともいう。)、を有する焼結体の製造方法であればよい。
焼結は、公知の焼結方法であればよく、例えば、加圧焼結、真空焼結及び常圧焼結の群から選ばれる1以上、好ましくは常圧焼結及び加圧焼結、より好ましくは常圧焼結が挙げられる。好ましい焼結条件として以下の条件が挙げられる。
焼結方法 : 常圧焼結
焼結雰囲気 : 大気雰囲気
焼結温度 : 1200℃以上又は1350℃以上、かつ、
1600℃以下又は1550℃以下
なお、本実施形態において常圧焼結とは、焼結時に被焼結物(成形体や仮焼体など)に対して外的な力を加えずに加熱することにより焼結する方法である。
本実施形態の粉末により得られる焼結体は、常圧焼結により得られる焼結体、いわゆる常圧焼結体であることが好ましい。
本実施形態の粉末により得られる焼結体は、試料厚さ1mm、JIS K 7361-1に準じて測定される全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」ともいう。)が38.5%以上、更には40%以上であることが好ましい。全光線透過率が高いほど透光性が高くなるが、全光線透過率は、50%以下又は46%以下であることが例示できる。全光線透過率の範囲は38.5%以上50%以下、40%以上50%以下、又は、40%以上46%以下が挙げられる。
本実施形態において全光線透過率は、JIS K 7361-1に準じた方法で測定することができる。全光線透過率は、測定試料として、試料厚さ1mm、かつ、両面の表面粗さRa≦0.02μmである円板状の焼結体を使用し、測定装置として、光源にD65光源を備えたヘーズメータ(例えば、ヘーズメータ NDH4000、日本電色社製)を使用して測定すればよい。
本実施形態の粉末から得られる仮焼体及び焼結体は、これらを含む部材として、公知のジルコニア焼結体の用途に使用することができる。例えば、仮焼体は、歯科材等の生体材料として、また、焼結体は、粉砕機用部材,精密機械部品,光コネクター部品等の構造材料、歯科材等の生体材料、装飾部材及び電子機器外装部品等の外装材料として使用することができる。
次に、本実施形態の粉末の製造方法について説明する。
本実施形態の粉末は、ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液のpHを3.5以上5.5以下とする工程、該原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程、該ジルコニア溶液とアルカリ溶液を混合して共沈物を得る工程、及び、該共沈物を熱処理する工程、を有することを特徴とする製造方法、により得ることができる。
本実施形態の粉末の製造方法方においては、ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液のpHを3.5以上5.5以下とする工程(以下、「析出工程」ともいう。)を有する。本実施形態の粉末の製造方法においては、いわゆる水熱合成によって、ジルコニウムゾルを得る。析出工程では、水熱合成に先立ち、原料溶液のpHを制御することにより、ジルコニウム源に微量に共存している金属元素を選択的に沈殿させる一方、過剰に含まれる出発原料由来の金属元素の沈殿を防ぐことができる。これにより、次いで行われる原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程において、チタン等の、ジルコニアの特性改善に寄与し得る金属元素を含んだジルコニウムゾルを得ることがきる。
析出工程に供するジルコニウム源は、ジルコニウムを含む塩(ジルコニウム塩)であればよい。ジルコニウム塩は、工業的に使用されるジルコニウム塩であればよく、天然鉱石から得られるジルコニウム塩、更にはジルコンサンドから得られるジルコニウム塩であることが好ましい。このようなジルコニウム塩は十分量のチタン、場合によってはチタン及びアクチノイド元素、を含む。なお、ジルコニウム源として試薬等の高純度のジルコニウム塩も使用できるが、製造コストの観点から、このような過度に純度が高いジルコニウム塩を使用する必要はない。
具体的なジルコニウム塩として、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びオキシ塩化ジルコニウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、オキシ塩化ジルコニウムであることが好ましく、ジルコンサンドから得られるオキシ塩化ジルコニウムであることがより好ましい。
安定化元素源は、安定化元素を含む化合物又は塩であり、安定化元素を含む酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩及び酢酸塩の群から選ばれる1以上、更には安定化元素を含む酸化物、水酸化物及び塩化物の群から選ばれる1以上、また更には安定化元素を含む塩化物、が挙げられる。安定化元素がイットリウムである場合、安定化元素源(以下、安定化元素がイットリウム等である場合、それぞれ、「イットリウム源」等ともいう。)は酸化イットリウム(イットリア)及び塩化イットリウムの少なくともいずれかであることが好ましい。
得られる粉末の一次粒子が凝集しにくくなるため、ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液は、塩化アンモニウムを含むことが好ましい。
原料溶液の溶媒は任意であり、例えば、水及びアルコールの少なくともいずれか、更には水であることが挙げられる。
原料溶液のジルコニウム濃度は0.05mol/L以上又は0.1mol/L以上であり、また、1mol/L以下又は0.5mol/L以下であることが挙げられ、0.05mol/L以上1mol/L以下、又は、0.1mol/L以上0.5mol/L以下であればよい。原料溶液の安定化元素濃度は、目的とする粉末の安定化含有量となる量であればよく、例えば、0.003mol/L以上又は0.005mol/L以上であり、また、0.02mol/L以下又は0.05mol/L以下であることが挙げられ、0.003mol/L以上0.02mol/L以下、又は、0.005mol/L以上0.05mol/L以下であればよい。
析出工程では、原料溶液のpHを3.5以上5.5以下、好ましくは4以上5以下とする。原料溶液のpHがこの範囲となれば、その方法は任意であるが、原料溶液とアルカリ溶液を混合することが好ましく、原料溶液にアルカリ溶液を添加する方法や、アルカリ溶液に原料溶液を添加する方法などが例示できる。具体的な方法として、pHが4±0.5、好ましくはpHが4.5±0.5、となるようにアルカリ溶液を混合溶液に添加する方法が挙げられる。
析出工程に供するアルカリ溶液は、金属カチオンを含まないアルカリ溶液であることが好ましく、アンモニア水が挙げられる。
本実施形態の粉末の製造方法は、原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程(以下、「ゾル工程」ともいう。)を有する。これにより、ジルコニアゾルが生成する。原料溶液の加熱条件は、原料溶液の使用量や、加熱機器の方式や特性などにより適宜設定すればよいが、例えば、以下の条件が挙げられる。
加熱温度 :120℃以上250℃以下
加熱時間 :30分以上100時間以下
加熱状態 :撹拌状態又は静置状態、好ましくは撹拌状態
本実施形態の粉末の製造方法は、該ジルコニアゾル溶液とアルカリ溶液を混合して共沈物を得る工程(以下、「共沈工程」ともいう。)、を有する。共沈工程により安定化元素が均一に分散したジルコニアゾルが共沈物として析出する。
共沈工程に供するアルカリ溶液(以下、「共沈アルカリ溶液」ともいう。)は、析出工程に供したアルカリ溶液(以下、「析出アルカリ溶液」ともいう。)と同じであってもよく、また、異なっていてもよいが、アンモニア水であることが好ましい。
ジルコニアゾル溶液と共沈アルカリ溶液との混合方法は、実用的な収率で共沈物が生成する方法であればよく、ジルコニアゾル溶液に共沈アルカリ溶液を添加する方法や、共沈アルカリ溶液にジルコニアゾル溶液を添加する方法などが例示できる。ジルコニアゾル溶液のpHは析出工程の原料溶液のpHよりも低くなりやすいため、共沈アルカリ溶液を添加してpHを上昇させることで共沈物が生成する。より効率的に共沈物を生成させるため、混合方法は、ジルコニアゾル溶液のpHが5以上6.5以下、更には5以上6以下、となるように、ジルコニアゾル溶液に共沈アルカリ溶液を添加する方法、であることが好ましい。具体的な方法として、pHが5±0.5、好ましくはpHが5.5±0.5、となるように共沈アルカリ溶液をジルコニアゾル溶液に添加する方法が挙げられる。
本実施形態の粉末の製造方法においては、ジルコニウム源、安定化元素源、析出アルカリ溶液及び共沈アルカリ溶液の少なくともいずれかが塩化物塩を含むことが好ましい。
本実施形態の粉末の製造方法は、共沈物を回収する工程(以下、「回収工程」ともいう。)を有する。回収工程は、共沈物を回収し、これを洗浄及び乾燥してもよい。回収、洗浄及び乾燥の方法は、ジルコニアの粉末の製造方法に適用し得る方法であればよい。例えば、共沈物の回収方法として、濾過、限外濾過、フィルタープレス、遠心分離及び沈降分離の少なくともいずれか、更には限外濾過及びフィルタープレスの少なくともいずれかが例示できる。共沈物の洗浄方法として、十分量の純水を共沈物に流通させることが例示できる。乾燥方法は、条件は共沈物に物理的に吸着した水分が除去される条件であればよく、大気雰囲気、100℃~200℃で乾燥すればよい。
本実施形態の粉末の製造方法は、該共沈物を熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ともいう。)、を有する。熱処理工程により、本実施形態の粉末が得られる。熱処理条件として、以下の条件が例示でき、熱処理に供する共沈物の処理量及び熱処理炉の特性に応じて適宜設定すればよい。
熱処理雰囲気 : 大気雰囲気
熱処理温度 : 800℃以上又は900℃以上、かつ、
1100℃以下又は1050℃以下
熱処理時間 : 30分以上又は1時間以上、かつ、
24時間以下又は12時間以下
本実施形態の粉末の製造方法は、熱処理後の粉末を粉砕する工程(以下、「粉砕工程」ともいう。)を有していてもよい。これにより粉末の平均粒子径及びBET比表面積を調整することができる。粉砕方法は湿式粉砕及び乾式粉砕の少なくともいずれかであればよく、湿式粉砕であることが好ましく、ボールミル及び振動ミルの少なくともいずれかによる粉砕であることがより好ましい。湿式粉砕に供する場合、粉末を含むスラリーの粉末含有量(以下、「固形分濃度」ともいう。)は、40質量%以上60質量%以下が例示できる。
本実施形態の粉末がアルミナを含む場合、粉砕工程においてジルコニア粉末とアルミナ源とを混合することが好ましい。
アルミナ源は、アルミナの粉末及びゾルの少なくともいずれかであり、アルミナ粉末更にはα-アルミナ粉末であることが好ましい。アルミナ源の添加量は、目的とするジルコニア粉末のアルミナ量と同等の量であればよい。
操作性(ハンドリング性)が向上するため、本実施形態の粉末の製造方法においては、粉末を顆粒化する工程(以下、「顆粒化工程」ともいう。)を有していてもよい。顆粒化の方法は、公知の方法を使用することができる。顆粒化方法は、粉末をスラリーとし、これを噴霧乾燥する方法であればよい。例えば、粉砕工程において湿式粉砕で粉砕した場合、粉砕所のスラリーをそのまま、又は、必要に応じてスラリー中の粉末含有量(固形分濃度)を調整した後、噴霧乾燥すること、が挙げられる。また、顆粒化に供するスラリーの粘度を調整するため、有機バインダーを使用してもよい。有機バインダーは、所望の収率となるようにスラリーの粘度及び使用する噴霧乾燥機に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリルバインダーが挙げられる。有機バインダーの含有量は、スラリーの粘度に応じて適宜変更すればよく、例えば、スラリーの質量に対して0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明する。しかしながら、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(活性化エネルギー)
粉末を1.25±0.01g秤量し、これを成形圧20MPaで一軸加圧成形した後に200MPaでCIP処理し、縦4mm×横4mm×長さ5mmの直方体形状の成形体とし、これを大気雰囲気、500℃、1時間で焼成し、測定試料とした。
マイクロメーターで測定される昇温前の測定試料の長さ(L)[μm]を測定した後、熱膨張計(装置名:TD5020SE、NETZSCH製)を使用して、該測定試料を以下の条件で昇温及び降温した。
昇温・降温雰囲気 : 大気雰囲気
昇温速度 : 5℃/分
最高到達温度 : ~1500℃
試料長の測定間隔 : △T=5℃間隔
降温速度 : 5℃/分
昇温前の試料長(L)に対する、補正後の試料長(L)の変化量(△L/L)が0%以上4%以下の範囲について、得られる温度Tにおける補正後の試料長(L)及び温度Tを、ln[T3/5・△(1-L/L)/△T]の形式でアレニウスプロットした。上述の式に基づき、該プロットから得られる一次近似式の傾きから活性化エネルギー(Q[kJ/mol])を求めた。なお、試料長の測定値(L’)は、降温時に△T=5℃間隔として、温度と試料長との関係から求められた熱膨張係数(9.3×10-6[/℃])を使用し、補正した。
(BET比表面積)
一般的な比表面積自動測定装置(装置名:Tristar3000、Micromeritics社製)、及び吸着ガスとして窒素を使用し、粉末試料のBET比表面積を測定した。測定に先立ち、粉末試料は大気雰囲気、550℃で30分間の脱気処理を施し、前処理とした。
(単斜晶率)
一般的なX線回折装置(装置名:MiniFlex600、リガク社製)を使用し、粉末試料のXRDパターンを得た。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 連続スキャン
スキャンスピード : 1°/分
ステップ幅 : 0.02°
測定範囲 : 2θ=26°~33°
単斜晶率fは、上述の式から求めた。
(平均一次粒子径)
透過型電子顕微鏡を用いて得られたTEM観察図より、300個の粒子を抽出した。抽出した粒子を画像解析ソフト(ソフト名:ImageJ)で解析することで、各粒子の円相当径を求め、その平均値をもって平均一次粒子径とした。
(平均二次粒子径)
マイクロトラック粒度分布計(装置名:MT3300EXII、マイクロトラック・ベル社製)のHRAモードにより、粉末の体積粒子径分布曲線を、メジアン径(D50)を測定し、これを平均二次粒子径とした。測定に先立ち、粉末を大気雰囲気、550℃で熱処理した後、純水に懸濁させ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散させ、緩慢凝集を取り除いた。
(塩素量)
走査型蛍光X線分析装置(装置名:ZSX PrimusIV、リガク製)を使用し、検量線法によって、粉末の塩素量を求めた。
(全光線透過率)
全光線透過率は、ヘーズメータ(装置名:NDH4000、日本電色社製)を用い、D65光源を使用して、JIS K 7361-1に準拠した方法によって測定した。
測定試料は、表面粗さRa≦0.02μmとなるように両面研磨した、厚み1mmの円板状の焼結体を使用した。
(曲げ強度)
曲げ強度は、JIS R1601に準じた三点曲げ試験で測定した。測定は、支点間距離30mmで、幅4mm、厚さ3mmの柱形状の焼結体試料を使用して行い、10回測定した平均値をもって曲げ強度とした。
(劣化試験)
焼結体試料を140℃の熱水中に24時間浸漬させることで、劣化試験を行った。劣化試験後の焼結体試料を切断し、その断面をSEM観察した。SEM観察において焼結体表面に確認された多数のクラックを含む組織を劣化層とみなし、該劣化層の厚みを測定した。
<粉末の作製>
実施例1
ジルコンサンドを水酸化ナトリウム水溶液で溶融後、塩酸で分解し、オキシ塩化ジルコニウム溶液を得た。塩化アンモニウム、塩化イットリウム純水及び得られたオキシ塩化ジルコニウムを混合し、オキシ塩化ジルコニウム濃度0.3mol/L、塩化アンモニウム濃度0.5mol/L及び塩化イットリウム濃度0.0064mol/Lである原料水溶液を得た。原料水溶液のpHが4.5±0.5となるようにpHを測定しながら、該原料水溶液を撹拌しながら、これにアンモニア濃度0.1mol/Lのアンモニア水(NHOH)を滴下した。アンモニア水の滴下後の原料水溶液を130℃で50時間加熱することでジルコニアゾルを生成させ、ジルコニアゾル溶液を得た。得られたジルコニアゾル溶液に液にアンモニア濃度0.1mol/Lのアンモニア水を添加することで共沈物を得た。アンモニア水の添加は、反応液を撹拌しながら、なおかつ、反応液のpHが5~6となる様に添加速度を適宜調整しながら行った。得られた共沈物を濾過、水洗及び乾燥させ、乾燥粉末を得た。次いで、大気雰囲気、1010℃で2時間、乾燥粉末を熱処理した。
熱処理後の粉末と純水を混合して固形分濃度50質量%のスラリーを得、これを8時間、ボールミルで処理した。ボールミルの粉砕媒体には直径10mmのジルコニアボールを使用した。処理後のスラリーの質量に対して3.5質量%のアクリルバインダーを混合し、混合後のスラリーを噴霧乾燥して顆粒粉末を得、これを本実施例の粉末とした。
本実施例の粉末は、BET比表面積が11.2m/g、平均一次粒子径が115nm、平均二次粒子径が0.44μm、及び、単斜晶率が6%であった。
実施例2
原料水溶液の塩化イットリウム濃度を0.0114mol/Lとしたこと、及び、仮焼熱処理温度を1050℃としたこと以外は、実施例1と同様な方法で本実施例の粉末及び焼結体を得た。
本実施例の粉末は、BET比表面積が9.2m/g、平均一次粒子径が116nm、平均二次粒子径が0.44μm、及び、単斜晶率が0%であった。
実施例3
仮焼温度を1050℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で熱処理して得られた粉末(粉末1)、実施例3と同様な方法で熱処理して得られた粉末(粉末2)を、仮焼粉末1:仮焼粉末2が49:51(質量比)となるように混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、本実施例の粉末を得た。
本実施例の粉末は、BET比表面積が9.8m/g、平均一次粒子径が123nm、平均二次粒子径が0.44μm、及び、単斜晶率が3%であった。
実施例4
熱処理温度を1100℃としたこと、並びに、該熱処理後の粉末、0.24質量%のアルミナ粉末及び純水を混合して、固形分濃度50質量%のスラリーをボールミルで処理した以外は実施例1と同様の方法で本実施例の粉末を得た。
本実施例の粉末は、BET比表面積が8.1m/g、平均一次粒子径が130nm、平均二次粒子径が0.47μm、及び、単斜晶率が7%であった。
比較例1
市販の3mol%イットリウム含有ジルコニア粉末(製品名:TZ-3YSB-E、東ソー社製)を本比較例の粉末とした。
比較例2
市販の3mol%イットリウム含有ジルコニア粉末(製品名:TZ-3YS、東ソー社製)に、チタン含有量が45ppmとなるようにチタニア(TiO)を混合した。
これらの実施例及び比較例の結果を下表に示す。
実施例5乃至8
アクリルバインダーを使用せずに噴霧乾燥したこと以外は、実施例1と同様な方法で、実施例5の粉末を得た。本実施例の粉末は、活性化エネルギーが280kJ/mol、BET比表面積が11.2m/g、平均一次粒子径が115nm、平均二次粒子径が0.44μm、及び、単斜晶率が6%であり、組成及びこれらの物性は、バインダーの影響を受けないことが確認できた。
また、アクリルバインダーを使用せずに噴霧乾燥したこと以外は、それぞれ、実施例2、3及び4と同様な方法で、実施例6、7及び8の粉末を得た。結果を下表に示す。
上表より、組成、活性化エネルギー、BET比表面積、平均一次粒子径、平均二次粒子径及び単斜晶率は、バインダーの影響を受けないことが確認できる。
<仮焼体及び焼結体の作製>
実施例9乃至13、並びに、比較例3及び4
実施例1乃至4及び8、並びに、比較例で得られた粉末を、それぞれ、金型プレスにより成形圧力20MPaで成形した後に、200MPaの成形圧力で静水圧プレスして成形体を得た。この成形体を50℃/時間の速度で昇温して1000℃で2時間仮焼して仮焼体を得た。その後、600℃/時間の速度で昇温して以下に示す焼結温度で2時間焼成して焼結体を得た。
実施例の焼結体はいずれも35%超の高い全光線透過率を有しており、更に、アルミナを含まない実施例9乃至11の焼結体の全光線透過率は39%以上であった。また、実施例12及び13から、バインダーの有無による全光線透過率、曲げ強度及び劣化層の厚みに対する影響はほとんどないことが確認できる。

Claims (5)

  1. ジルコニウム源及び安定化元素源を含む原料溶液のpHを3.5以上5.5以下とする工程、該原料溶液を加熱しジルコニアゾル溶液を得る工程、該ジルコニア溶液とアルカリ溶液を混合して共沈物を得る工程、及び、該共沈物を熱処理する工程、を有することを特徴とする、の2mol%以上8mol%以下の安定化元素及び50ppm以下のチタン(Ti)を含み、なおかつ、活性化エネルギーが225kJ/mol以上300kJ/mol以下であるジルコニアの粉末の製造方法。
  2. 前記原料溶液が、塩化アンモニウムを含む請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ジルコニウム源が、ジルコンサンドから得られるジルコニウム塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 原料溶液の加熱温度が120℃以上250℃以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. ジルコニアゾル溶液と共沈アルカリ溶液との混合方法が、ジルコニアゾル溶液のpHが5以上6.5以下となるように、ジルコニアゾル溶液に共沈アルカリ溶液を添加する方法、である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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