JPH08318141A - 液体混合物分離膜 - Google Patents

液体混合物分離膜

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JPH08318141A JP12652295A JP12652295A JPH08318141A JP H08318141 A JPH08318141 A JP H08318141A JP 12652295 A JP12652295 A JP 12652295A JP 12652295 A JP12652295 A JP 12652295A JP H08318141 A JPH08318141 A JP H08318141A
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Yasuo Matsuo
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 液体混合物から水を極めて効率的に分離する
ことができ、しかも、透過安定性にも優れたパーベーパ
レーション用液体混合物分離膜を提供する。 【構成】 多孔質支持体上に種結晶を担持させてからA
型ゼオライト膜を析出させてなる液体混合物分離膜。 【効果】 ゼオライトの分子ふるい能により、著しく高
い水選択透過性を示す。パーベーパレーション法による
液体混合物の分離において、分離効率が高く、透過安定
性にも優れ、しかも、化学的安定性、取り扱い性も良好
で実用的な液体混合物分離膜が1回の成膜操作で提供さ
れる。従来の分離膜では分離が困難であった水−エタノ
ール混合液等についても安定かつ効率的な分離を行うこ
とができる。ベーパーパーミエーション法においてもパ
ーベーパレーション法と同様有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液体混合物分離膜に係
り、特に、パーベーパレーション法或いはベーパーパー
ミエーション法による液体混合物の分離に使用される液
体混合物分離膜に関する。
【0002】
【従来の技術】非多孔質高分子膜を利用した、パーベー
パレーション法及びベーパーパーミエーション法による
液体混合物の分離プロセスの研究の歴史は古く、蒸留で
は分離が困難な混合物系の分離を主目的に多くの研究が
なされてきた。例えば、Binningによってポリビ
ニールアルコール膜を用いた共沸混合物の分離(米国特
許第2953502号)が検討され、またスチレン/ア
クリル酸共重合体膜等を用いた水−ホルムアルデヒド混
合液の分離(米国特許第4035291号)が報告され
ている。しかしながら、これらの高分子膜では透過性及
び分離能力が充分でなく、未だ実用化には至っていな
い。
【0003】これに対して、近年、省エネルギー的な立
場から、パーベーパレーション法及びベーパーパーミエ
ーション法は、従来の蒸留法を補うもしくは代替する有
望な分離プロセス技術として注目されるようになった。
特に、水−エタノールなどの共沸混合物を形成するもの
の分離には、蒸留法は有効ではなく、パーベーパレーシ
ョン法或いはベーパーパーミエーション法が望ましい方
法と考えられている。そのため、パーベーパレーション
法及びベーパーパーミエーション法について活発な研究
開発が行れ、既に実用化された膜も多く提案されるよう
になった。例えば、特開昭59−109204号公報で
はセルロースアセテート膜とポリビニールアルコール膜
が、また、特開昭59−55305号公報にはポリエチ
レンイミン系架橋膜が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開昭59−109204号公報や特開昭59−5530
5号公報などで提案された膜は、いずれも物性が近似し
た物質の分離、とりわけメタノール−水の分離性能が低
く、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などのよ
うな有機溶剤への耐久性もないため、水−有機物混合物
としては、限られた物質(エタノールより多い炭素数、
即ち炭素数3以上のアルコール類、ケトン類等)にしか
使用できず、実用性に乏しいという欠点がある。
【0005】本発明は上記従来の分離膜の欠点を解決
し、液体混合物を極めて効率的に分離することができ、
しかも、透過安定性にも優れたパーベーパレーション或
いはベーパーパーミエーション用液体混合物分離膜を提
供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の液体混合物分離
膜は、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に種結晶を担
持させてから析出させたA型ゼオライト膜とからなるこ
とを特徴とする。
【0007】以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明の液体混合物分離膜において、A型
ゼオライトを析出させる多孔質支持体としては、ムライ
トなどのAl23 −SiO2 系セラミックスが好適で
ある。その他、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チッ化
ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス、アルミニウム、
銀、ステンレス等の金属、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリ
イミド等の有機高分子よりなる多孔質材料も用いること
ができる。多孔質支持体としては、その平均気孔径が
0.05〜10μmで、気孔率が10〜60%程度のも
のが好適である。
【0009】多孔質支持体の平均気孔径が0.05μm
未満であると、透過速度が小さく実用的でない。この平
均気孔径が10μmを超えると選択性が低下する。ま
た、気孔率が10%未満では透過速度が小さく、60%
を超えると選択性が低下する上に、支持体としての強度
が得られない。
【0010】多孔質支持体としては、特に、平均気孔径
0.1〜2μm,気孔率30〜50%であり、Al2
3 含有率が30〜80wt%であるAl23 −SiO
2 系セラミックス多孔質支持体が好ましい。
【0011】なお、多孔質支持体の形状には特に制限は
ないが、一般にパーベーパレーション法或いはベーパー
パーミエーション法に用いられる分離膜形状としては、
外径10mm前後、長さ20〜100cmのパイプであ
って、その厚さは0.2mm〜数mmのもの、或いは、
外径30〜100mm程度、長さ20〜100cm及び
それ以上の円柱に内径2〜12mm程度の孔が軸方向に
多数個形成された蓮根状であることが好ましい。
【0012】本発明の液体混合物分離膜は、このような
多孔質支持体上に種結晶を担持させた後、A型ゼオライ
ト膜を析出させる。
【0013】種結晶としては平均粒径が200μm以下
とりわけ1〜5μmのA型ゼオライトが好適である。種
結晶の担持量は、0.1〜90mg/cm2 とくに0.
5〜5mg/cm2 が好ましい。
【0014】種結晶を担持させるには、種結晶の粉末を
溶媒(好ましくは水)に分散させ、多孔質支持体上に塗
付するのが好ましいが、多孔質支持体製造時に原料の一
部としてA型ゼオライトの粉末を混入させても良い。
【0015】A型ゼオライトを析出させる方法として
は、シリカ源としてのケイ酸ナトリウム、シリカゲルや
ゾル、シリカ粉末など、アルミナ源としてのアルミン酸
ナトリウム、水酸化アルミニウムなどを出発原料とし
て、水熱合成法や気相法などの合成法で析出させる方法
が挙げられる。
【0016】なお、水熱合成法によりA型ゼオライトの
成膜を行う場合、その好ましい合成温度条件は60〜1
50℃とりわけ80〜100℃であり、このような温度
にて1〜24時間とくに2〜5時間とりわけ3〜4時間
の反応を1回行うことにより、高分離特性の膜を成膜で
きる。
【0017】多孔質支持体がAl23 含有量30〜8
0wt%のAl23 −SiO2 系セラミックスである
場合には、90〜100℃で2時間以上、好ましくは2
〜4時間の処理条件とすることにより、1回の操作で分
離性能に優れたA型ゼオライトの成膜が可能である。
【0018】原料の仕込み組成比(モル比。以下組成比
はモル比で示す。)は、H2 O/Na2 O=20〜30
0,Na2 O/SiO2 =0.3〜2,SiO2 /Al
23 =2〜6,特に、H2 O/Na2 O=60,Na
2 O/SiO2 =1,SiO2 /Al23 =2となる
ように調整するのが好ましい。
【0019】このようにして、A型ゼオライト膜を多孔
質支持体の表面に、種結晶を担持させた後、A型ゼオラ
イト膜の膜厚が10〜50μmであり、支持体を含む分
離膜の全膜厚が0.5〜2mm程度となるように析出さ
せることにより、本発明の液体混合物分離膜を得ること
ができる。
【0020】このような本発明の液体混合物分離膜は、
パーベーパレーション法或いはベーパーパーミエーショ
ンによる液体混合物の分離に極めて有効に使用すること
ができる。
【0021】本発明の液体混合物分離膜の分離対象とす
る液体混合物としては、水,メタノール、エタノール、
プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチ
ルケトン等のケトン類、四塩化炭素、トリクロロエチレ
ン等のハロゲン化炭化水素のごとき有機液体を挙げるこ
とができ、本発明において分離の対象とする液体混合物
とは上記液状化合物を2種類もしくはそれ以上含む混合
物である。
【0022】本発明の液体混合物分離膜が特に優れた分
離選択性を示す液体混合物の例としては、水−有機液体
混合物、特に水−メタノール、水−エタノール等の水−
アルコール系炭化水素混合物を挙げることができる。
【0023】
【作用】ゼオライトは分子ふるい能を有することから、
液体混合物分離膜としての可能性が期待されるが、本発
明により多孔質支持体上に種結晶を担持させたA型ゼオ
ライトを成膜することにより、分離性能に優れ、実用的
な強度、化学的安定性、取り扱い性を備えた分離膜が容
易に提供される。
【0024】本発明の液体混合物分離膜は、ゼオライト
の分子ふるい能により著しく高い水選択透過性を示す。
このため、従来の分離膜では分離が困難であった水−エ
タノール混合液等も、効率的に分離することができ、透
過安定性にも優れた液体混合物分離膜が提供される。
【0025】なお、ゼオライトにはA型,X型,Y型な
どがあるが、本発明においてA型ゼオライトを採用する
理由は、以下の実施例に示すように、高い分子ふるい能
を有し、優れた分離選択性を示す上に、低温度の水熱条
件で加圧密封容器などの複雑な反応装置を使用せず、合
成できるためである。
【0026】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。
【0027】多孔質支持体としてアルミナ質多孔質支持
体を用いた場合 実施例1 ケイ酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム/水酸化ア
ルミニウム混合液とを組成比H2 O/Na2 O=60、
Na2 O/SiO2 =1、SiO2 /Al23 =2と
なるように、円筒状のガラス容器に仕込み、表面に種結
晶を担持させた管状の多孔質アルミナ支持体(三井研削
砥石製マルチポアロン:直径(外径)1cm,長さ20
cm,肉厚1mm,孔径1μm,気孔率40%)を浸漬
後、100℃で3時間、水熱合成を行った。合成後、水
で洗浄し70℃で乾燥した。得られた液体混合物分離膜
の全膜厚は約1.05mmであった。
【0028】なお、種結晶を多孔質支持体に担持させる
には、200メッシュ以下(345μm以下)の粒径の
市販のゼオライト4Aの粉末30gを500gの水に分
散させ、多孔質支持体表面に刷毛塗りし、乾燥させた。
種結晶の担持量は平均で1mg/cm2 であった。
【0029】製膜したゼオライト膜のX線回折図のピー
クパターンを市販品のゼオライト4A及びアルミナ支持
体のピークパターンと共に、図1に示す。図1より、こ
のゼオライト膜のピークパターンは、市販品のゼオライ
ト4Aのものと良く一致し、支持体表面にA型ゼオライ
トが生成していることが確認された。
【0030】このようにして得られた液体混合物分離膜
を用いて、パーベーパレーション法及びベーパーパーミ
エーション法により水−エタノール混合液の分離を行っ
た。
【0031】パーベーパレーション及びベーパーパーミ
エーション測定に用いた装置を図2に示す。図2におい
て、1は液体混合物分離膜、2はセル、3は被分離液で
あって、ポンプ11Aを備えた配管11よりセル2内に
導入され、熱交換器12Aを備える配管12より排出さ
れる。4は排出液である。また、分離膜1内の透過側
は、真空ポンプ5により配管13,13A,13B,1
4を経て吸引され0.1Torrの真空度とされてい
る。透過物は液体窒素により冷却されて冷却トラップ5
に集められる。15は窒素ガスの排出配管である。
【0032】なお、セル2は恒温槽7内に設置されてお
り、表1に示す各処理温度に調節されている。
【0033】用いた液体混合物分離膜1の有効膜面積は
47cm2 である。また、被分離液の供給流速は12〜
30cm3 /minとした。
【0034】液組成の測定はガスクロマトグラフにより
行い、分離膜の透過性能は単位面積、単位時間当りの全
透過束(kg/m2 ・hr)Qと分離係数αにより比較
した。分離係数αは以下の式により求めた。
【0035】
【数1】
【0036】パーベーパレーション法による処理温度,
被分離液中の水分濃度,全透過流束Q及び分離係数αを
表1に示す。
【0037】実施例2 H2 O/Na2 Oを60としたこと以外は実施例1と同
様にして液体混合物分離膜を製造した。
【0038】実施例3 水熱合成時間を2時間としたこと以外は実施例2と同様
にして液体混合物分離膜を製造した。
【0039】実施例4 水熱合成時間を6時間としたこと以外は実施例2と同様
にして液体混合物分離膜を製造した。
【0040】比較例1 水熱合成時間を1時間としたこと以外は実施例2と同様
にして液体混合物分離膜を製造した。
【0041】比較例2 水熱合成時間を0.5時間としたこと以外は実施例2と
同様にして液体混合物分離膜を製造した。
【0042】比較例3 水熱合成温度を80℃としたこと以外は実施例1と同様
にして液体混合物分離膜を製造した。
【0043】比較例4〜11 種結晶を全く担持させず、且つ混合液組成比等の条件を
表1の通りとし、さらに、成膜回数を複数回としたこと
以外は実施例と同様にして液体混合物分離膜を製造し
た。
【0044】実施例2〜4、比較例1〜11にて得られ
た分離膜の分離特性を実施例1と同様にして測定した。
結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】表1より、本発明例によると1回の成膜に
より高い分離係数の液体混合物分離膜を製造できること
が明らかである。
【0047】なお、比較例1〜3では種結晶を用いてい
るが、反応時間が短かすぎる(比較例1,2)、あるい
は反応温度が低すぎる(比較例3)ために高分離係数の
液体混合物分離膜が製造されない。
【0048】多孔質支持体が多孔質ムライトである場合 実施例6〜8 多孔質支持体として、Al23 56wt%、気孔率3
9%の多孔質ムライト支持体を用い、条件を表2の通り
としたほかは実施例1と同様にして液体混合物分離膜を
製造した。
【0049】比較例12〜16 種結晶を用いず、その他の条件を表2の通りとしたほか
は実施例6〜8と同様にして液体混合物分離膜を製造し
た。
【0050】実施例6〜8,比較例12〜16の液体混
合物分離膜の分離特性を実施例1と同様にして測定し
た。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】表2より、実施例5〜8によると、1回の
成膜により高分離係数の液体混合物分離膜を製造できる
ことが明らかである。
【0053】なお、多孔質支持体がアルミナである場合
よりもムライトである場合の方が分離係数が高い。ま
た、種結晶の担持量は0.5〜10mg程度が好適であ
ることが認められる。
【0054】比較のため、GFT(架橋ポリビニルアル
コール)膜、PAA(ポリアクリル酸)/ポリイオン
膜、キトサン膜、ポリイミド膜、ポリイミドasym.
(PMDA−ODAポリイミド)膜を用いた場合のパー
ベーパレーション法による分離結果を表3に示した。
【0055】表3より、本発明の液体混合物分離膜によ
れば高い水選択透過性を示し、水−エタノール混合液を
効率的に分離できることが明らかである。
【0056】
【表3】
【0057】また、ベーパーパーミエーション法による
処理温度、被分離液中の水分濃度、全透過流束Q及び分
離係数αを表4に示す。
【0058】比較のため、キトサン膜、宇部興産製ポリ
イミド膜、日立造船製セルロース系膜を用いた場合のベ
ーパーパーミエーション法による分離結果を表4に示し
た。
【0059】
【表4】
【0060】表4より、本発明の液体混合物分離膜は、
高い水蒸気選択透過性を示し、水−エタノール混合物を
効率的に分離できることが明らかである。
【0061】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の液体混合物
分離膜によれば、パーベーパレーション法及びベーパー
パーミエーション法による液体混合物の分離において、
分離効率が高く、透過安定性にも優れ、しかも、化学的
安定性、取り扱い性も良好で実用的な液体混合物分離膜
が1回の成膜操作により提供される。
【0062】本発明の液体混合物分離膜によれば、従来
の分離膜では分離が困難であった水−エタノール混合液
等についても安定かつ効率的な分離を行うことが可能と
される。従って、本発明の液体混合物分離膜は、メンブ
レンリアクターとして化学反応プロセス或いは溶剤の精
製プロセスにおいて、省エネルギーでコンパクトなパー
ベーパレーション膜分離装置及びベーパーパーミエーシ
ョン膜分離装置の実用化に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いた多孔質アルミナ支持体と、成
膜したゼオライト膜と、ゼオライト4Aの各X線回折図
を示すグラフである。
【図2】実施例で用いた測定装置を示す系統図である。
【符号の説明】
1 液体混合物分離膜 2 セル 3 被分離液 4 排出液 5 真空ポンプ 6A,6B 冷却トラップ 7 恒温槽
フロントページの続き (72)発明者 三宅 範一 東京都中央区築地5丁目6番4号 三井造 船エンジニアリング株式会社内 (72)発明者 松尾 保夫 東京都中央区築地5丁目6番4号 三井造 船株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質支持体と、該多孔質支持体上に種
    結晶を担持させてから析出させたA型ゼオライト膜とか
    らなる液体混合物分離膜。
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