JPH08308922A - 排泄処理装置の挿入具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 糞便による先端部の閉塞や管内への詰まり現
象を解消しながら、円滑かつ安全に排便処理することで
きる排泄処理装置の挿入具を提供する。 【構成】 ホーン２を円筒状の保護カバー１で被包した
挿入部と超音波を発生させて前記ホーン２に機械的振動
を与えるための振動子を内蔵した広径本体部分４とが同
軸的に結合され、中軸部にイリゲーションニップル５に
連通してホーン先端から腸内に洗腸液を注入するための
供給孔６が貫通し、保護カバー１の後端部に破砕糞便を
吸引するためのサクションニップル７を設置した挿入具
構造において、前記保護カバー１のサクションニップル
以降の部位をシリンダー部１３として形成し、該シリン
ダー部１３に広径本体部分４とホーン２の結合部分に介
設したピストン部材１４を手動により前後移動可能に装
着した構造。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、排便困難症患者等の直
腸内に挿入し、糞便を円滑かつ安全に破砕・吸引しなが
ら体外に除去するための改良された排泄処理装置の挿入
具に関する。

【０００２】

【従来の技術】人口の高齢化が進むに従い、寝たきり老
人がますます増加の傾向にある。また交通事故や先天的
要因による肢体不自由者も多く、その約半数が神経麻痺
を伴っている。これらの人々にとって、排泄物の処理は
日常生活上の一大問題であるにも拘らず、排泄機器とし
ては採尿器が開発されている程度であり、糞便の排泄処
理に対しては依然として緩下剤、浣腸あるいは摘便など
によって排便を促す方法が採られている。

【０００３】特に糞便の固い排便困難症状を呈する患者
に対しては、高圧浣腸、摘便、坐剤などによる処置を組
み合わせて強制排泄する手段が施されているが、これら
の処置は患者にとって肉体的、精神的に著しい苦痛を与
えるとともに、、排便施術者側にとっても長時間に亘る
排便作業に携わらねばならず、しかも糞便の臭気に耐え
ねばならない嫌悪的な作業を余儀なくされる。

【０００４】このような排便処理上の諸問題を解決する
ための手段として、本発明者らは機械的な振動を利用し
て直腸内の糞便を効率よく破砕吸引除去する排泄処理装
置を開発し、挿入具の改良を含めて既に多くの提案を行
っている（特開平１−198540号公報、特公平４−22103
号公報、特公平４−22104 号公報、特公平５−40584号
公報、特公平５−76871 号公報、特公平６−32653 号公
報、実開平６−52835号公報、実開平７−18738 号公報
等）。

【０００５】これら先行技術における挿入具の基本的な
構造は、図６に示すようにホーン２を円筒状の保護カバ
ー１で被包した挿入部と超音波を発生させて前記ホーン
２に機械的振動を与えるための振動子３を内蔵した広径
本体部分４とが同軸的に結合されており、前記ホーン２
と振動子３の中軸部にはイリゲーションニップル５に連
通してホーン先端から腸内に洗腸液を注入するための供
給孔６が貫通し、保護カバー１と広径部分４を連結する
テーパー部位にホーン２と保護カバー１との間隙空間を
介して粉砕した糞便を吸引除去するためのサクションニ
ップル７を設置した構造となっている。使用に際して
は、挿入具の保護カバー１の部分を肛門から直腸内に挿
入し、ホーン２の先端に形成された小孔８から洗腸液を
注入するとともに超音波を発振させ、直腸内で固化して
いる糞便を破砕泥化させて体外に吸引除去する処置が施
される。

【０００６】実開平６−５２８３５号公報の構造は、前
記の基本的構造に改良を加えたもので、図７に示したよ
うに保護カバーの先端部分を、肛門挿入後にラッパ状に
拡開する弾力性柔軟材質で形成されたホーン２の保護部
材９と、肛門挿入前に前記保護部材９を収納し肛門挿入
後に保護部材周囲から除去される外套部材１０により構
成されている。したがって、排便処理時、固形糞便は保
護部材のラッパ状凹部に吸引されてホーンと直接接触
し、超音波パワーが最大限に機能して固い糞便が容易に
細かく破砕されて円滑に吸引除去され、同時にホーンと
直腸壁の接触は拡開した保護部材の隔壁作用により阻止
されるから安全に排泄処置が進行するという実用上の効
果がもたらされる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実開平
６−５２８３５号公報の構造においても、図８に示すよ
うに破砕泥化しきれなかった固形糞便の小塊１１がホー
ン２と保護カバー１の隙間に詰まったり、固形糞便の大
塊１２がそのまま保護部材９の前面を閉塞する事態が発
生することがある。このような現象が生じると、吸引物
の流路が塞がれて破砕泥化した糞便を体外に排出するこ
とが困難となり、またこの状態で注腸および破砕を行う
と腸内圧が上昇して肛門から泥状糞便が漏れ出したりし
て、円滑な排便処理が不可能となる。

【０００８】上記の現象は、実開平６−５２８３５号公
報の構造に限られず、図６に示した基本的構造を含む従
来構造の挿入具に共通して発生する不都合かつ未解決な
課題であった。

【０００９】本発明は、かかる課題を解決するために開
発されたもので、その目的とするところは、糞便による
先端部の閉塞や管内への詰まり現象を解消しながら、常
に円滑かつ安全に固形糞便を破砕・吸引除去することが
できる排泄処理装置の挿入具を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による排泄処理装置の挿入具は、ホーンを円
筒状の保護カバーで被包した挿入部と超音波を発生させ
て前記ホーンに機械的振動を与えるための振動子を内蔵
した広径本体部分とが同軸的に結合され、中軸部にイリ
ゲーションニップルに連通してホーン先端から腸内に洗
腸液を注入するための供給孔が貫通し、保護カバーの後
端部に破砕糞便を吸引除去するためのサクションニップ
ルを設置した挿入具構造において、前記保護カバーのサ
クションニップル以降の部位をシリンダー部として形成
し、該シリンダー部に広径本体部分とホーンの結合部分
に介設したピストン部材を手動により前後移動可能に装
着したことを主要な構成上の特徴とする。

【００１１】上記構造において、保護カバーの先端部分
を、肛門挿入後にラッパ状に拡開する弾力性柔軟材質の
保護部材として形成し、保護カバーの周囲に、肛門挿入
前には前記保護部材を収納し、肛門挿入後には保護部材
周囲から除去されるか水分と接触して容易に溶解もしく
は分散する材質の外套部材を設置すると、一層円滑で安
全な排便処理を行うことができる。

【００１２】また、広径本体部分の先端部を、ピストン
部材が保護カバーのシリンダー部を移動する距離に相当
する長さの範囲で狭径化し、シリンダー部の後端部にピ
ストン部材の離脱を防止するための係止片を設け、かつ
広径本体部分の狭径部に前記係止片と係合する突起片を
設置することが実用上好ましい。

【００１３】

【作用】本発明に係る排泄処理装置の挿入具によれば、
保護カバー内に装着したピストン部材を手動で前後移動
させることにより、ホーンの先端を保護カバーから突出
させたり収納させることができる、この際、ピストン部
材はシリンダー内部を気密的に摺動しながら往復運動す
るから、後進させた場合には吸引力が働き、前進させた
場合には吸引した腸内容物等を前方に噴出する力が働
く。したがって、排便処理の適宜な時点でピストン部材
を前後移動させると、吸引時には固形糞便をホーン先端
部まで引き寄せて破砕効率を高めることができ、またホ
ーンと保護カバーの隙間に固形糞便の小塊が詰まった
り、保護カバーの先端部が固形糞便の大塊で閉塞された
ようなときにはピストン部材を後進させて小塊の詰まり
を解除し、引き続きピストン部材を前進させ、発生する
噴出力により小塊および大塊を前方に吹き飛ばすことが
できる。

【００１４】保護カバーの先端部分を、肛門挿入後にラ
ッパ状に拡開する弾力性柔軟材質の保護部材として形成
した場合には、固形糞便は保護部材のラッパ状凹部に吸
引されてホーンと直接接触し、超音波パワーが最大限に
機能して固い糞便が容易に細かく破砕され、泥状となっ
て吸引除去される。この処理を通じ、ホーンと直腸壁の
接触は拡開した保護部材の隔壁作用により阻止されるか
ら安全に排泄処置が進行する。また、処理過程で蠕動運
動等により直腸が収縮した場合には、弾力性柔軟材質の
保護部材が適度の反発力を保ちながらホーンを被包する
ように自動収縮してホーンが直腸壁と接触する事態を防
止する。直腸の収縮が緩和されれば、直腸壁の変形状態
に応じて保護部材の拡開形状が回復し、再び固形糞弁を
引き込んで破砕をおこなう。

【００１５】このような各種の作用が相俟って、患者に
苦痛や不快感を与えることなく、常に安全かつ効率的に
排泄処理をおこなうことが可能となる。

【００１６】

【実施例】以下、本発明を図１〜５に示した実施例に基
づいて詳細に説明する。なお、これら図において既に説
明した図６〜８と同一部材および対象物には同一の符号
を付した。

【００１７】図１および図２は本考案に係る排泄処理装
置の挿入具を例示したもので、図１はピストン部材を前
方に移動した状態を示した一部切欠側面図、図２はピス
トン部材を後方に移動した状態を示した一部切欠側面図
である。これらの図において、１は保護カバー、２はホ
ーン、４は振動子を内蔵した広径本体部分、５はイリゲ
ーションニップル、６は供給孔、７はサクションニップ
ルであり、その基本構成は内部構造を含めて図６に示し
た従来の挿入具と同一である。

【００１８】本発明は前記の挿入具構造において、保護
カバー１の側面に設置されたサクションニップル７より
以降の部位がシリンダー部１３として形成されており、
該シリンダー部１３の内部に広径本体部分４とホーン１
の結合部分に介設されたピストン部材１４が手動により
前後移動可能に装着されているところに主要な改良点が
ある。

【００１９】保護カバー１は、その先端部分を図７の構
造と同様に肛門挿入後にラッパ状に拡開する弾力性柔軟
材質の保護部材９として形成し、保護カバー１の周囲に
肛門挿入前には前記保護部材９を収納し、肛門挿入後に
は保護部材９の周囲から除去されるか、水分と接触して
容易に溶解もしくは分散する材質で構成された外套部材
１０を設置した構造に設計することが好ましい。こうす
ることにより、肛門挿入前には保護カバー１と略同等の
外径を有する円筒状の外套部材１０に収縮変形した状態
で収納されているため肛門内への挿入に抵抗がなく、肛
門挿入後に外套部材１０を除去すると保護部材９がラッ
パ状に拡開して、ホーン２が隔離的に湾曲壁面で取り囲
まれた状態となる。外套部材１０を除去する手段として
は、例えば外套部材１０の後端部に引抜き糸を連結して
おき、肛門挿入後に該引抜き糸を手前に引っ張って移動
させ、保護部材９を露出開放させる方法でおこなうこと
ができ、その具体的構成については実開平６−５２８３
５号公報に詳細に説明されている。また、外套部材１０
を例えばプルラン、デキストリン等の多糖類、ポリビニ
ルアルコールのような水溶性樹脂、澱粉、寒天、ゼラチ
ンのような水分散性物質のような直腸内の水分と接触し
て容易に溶解もしくは分散する材質で形成すると、肛門
挿入後に自然に保護部材９がラッパ状に拡開する。この
際、外套部材１０の形状を、実開平７−１８７３８号公
報に記載されているような球形先端状のサック形体とし
て形成することもできる。

【００２０】保護カバー１の保護部材９を構成する弾力
性柔軟材質としては、例えばシリコーンゴム、天然ゴ
ム、ネオプレンゴム、ポリウレタンゴム等のゴム類ある
いは軟質塩化ビニルやポリエチレン等のエラストマー類
を挙げることができる。一方、保護カバー１、サクショ
ンニップル７およびシリンダー部１３は硬質の材料によ
り一体に形成されるが、ホーン２の可動状態、便の有無
および破砕状況等を外部から視認し得ることが施療処理
上から有利となるため、シリンダー部１３、保護カバー
１および保護部材９などの部材は、透明の材質で形成し
ておくことが好ましい。例えば、シリンダー部１３、保
護カバー１などはポリスチレン樹脂、ポリカーボネート
樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂あるいはポリスル
フォン樹脂等の透明硬質樹脂類で構成し、保護部材９は
ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹
脂あるいはポリエチレン樹脂等の弾力性柔軟樹脂により
構成することができる。

【００２１】ピストン部材１４は、シリンダー部１３を
気密的に内面摺動しながら移動し、腸内容物を外部に漏
出することがないように設計される。したがって、例え
ばネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム
等の硬質ゴム材料によりピストン部材１４を形成するこ
とが好適である。

【００２２】シリンダー部１３と広径本体部分４は、広
径本体部分４の先端部分を、ピストン部材１３が保護カ
バー１のシリンダー部１３を移動する距離に相当する長
さの範囲で狭径化し、シリンダー部１３の後端部にピス
トン部材１３がシリンダー部１３から離脱するのを防止
するための係止片１５を設置することにより結合するこ
とができる。また、シリンダー部１３の端部には、手動
による移動操作がし易いようにフランジ部１６を設置し
ておくことが好ましい。更に、広径本体部分４の狭径部
の最後端部位に前記の係止片１５と係合する突起片１７
を設けておき、係合離脱し得る構造にしておくことが好
ましい設計態様となる。この場合には、図３（図１のＡ
−Ａ′断面図）のようにピストン部材１４を押し込んだ
状態でシリンダー部１３あるいは広径本体部分４を回転
することにより係止片１５が突起片１７と係合または離
脱する構造となる。

【００２３】使用に際しては、外套部材１０を前方に移
動させて保護部材９に収納した状態で挿入具の先端を患
者の肛門に挿入する。挿入具が直腸の内部に挿入された
ら、外套部材１０を後方に移動させるか、水分と接触さ
せて溶解もしくは分散させることにより保護部材９をラ
ッパ状に拡開させる。ついで、イリゲーションニップル
５から供給孔６を介して洗腸液を注入すると同時に振動
子３を作動させてホーン２から超音波パワーを発振させ
たのち、サクションニップル７から吸引しながら排便処
理をおこなう。

【００２４】排便処理過程における適宜な時点でピスト
ン部材１４を前後移動させると、吸引時に固形糞便がホ
ーン２の先端部まで引き寄せられ、ホーン２の先端と直
接接触して強力な超音波パワーによって効率よく破砕さ
れる。また、ホーン２と保護カバー１の隙間に固形糞便
の小塊１１が詰まったり、ラッパ状の保護部材９が固形
糞便の大塊１２で閉塞された場合には、図４に示したよ
うにピストン部材１４を後進させて小塊１１の詰まりを
解除し、引き続き図５に示すようにピストン部材１４を
前進させ、発生する噴出力により小塊１１および大塊１
２を前方に吹き飛ばす。このような操作を反復しなが
ら、処理を継続することにより糞便の詰まりや閉塞を防
止しながら、円滑な破砕・吸引除去が行われる。

【００２５】

【発明の効果】以上のとおり、本発明に係る排泄処理装
置の挿入具を用いれば、糞便による先端部の閉塞や管内
への詰まり現象を生じることなしに、常に円滑かつ安全
に固形糞便を破砕・吸引除去することができる。したが
って、排便困難症の患者に対しても苦痛を与えずに短時
間の強制排便処理が可能となるから、優れた医療処置上
の実用的効果がもたらされる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る排泄処理装置の挿入具を例示した
もので、ピストン部材を前方に移動した状態を示した一
部切欠側面図である。

【図２】本発明に係る排泄処理装置の挿入具を例示した
もので、ピストン部材を後方に移動した状態を示した一
部切欠側面図である。

【図３】図１のＡ−Ａ′線に沿う断面図である。

【図４】ピストン部材を後方に移動した状態を示した使
用説明図である。

【図５】ピストン部材を前方に移動した状態を示した使
用説明図である。

【図６】従来技術の基本構成による排泄処理装置の挿入
具を示した一部切欠側断面図である。

【図７】従来技術による別の排泄処理装置の挿入具を示
した一部切欠側断面図である。

【図８】従来技術による挿入具を使用した際に生じる糞
便の閉塞および詰まり状態を示した説明図である。

【符号の説明】

１ 保護カバー ２ ホーン ３ 振動子 ４ 広径本体部分 ５ イリゲーションニップル ６ 供給孔 ７ サクションニップル ８ 小孔 ９ 保護部材 10 外套部材 11 固形糞便の小塊 12 固形糞便の大塊 13 シリンダー部 14 ピストン部材 15 係止片 16 フランジ部 17 突起片

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ホーンを円筒状の保護カバーで被包した
   挿入部と超音波を発生させて前記ホーンに機械的振動を
   与えるための振動子を内蔵した広径本体部分とが同軸的
   に結合され、中軸部にイリゲーションニップルに連通し
   てホーン先端から腸内に洗腸液を注入するための供給孔
   が貫通し、保護カバーの後端部に破砕糞便を吸引除去す
   るためのサクションニップルを設置した挿入具構造にお
   いて、前記保護カバーのサクションニップル以降の部位
   をシリンダー部として形成し、該シリンダー部に広径本
   体部分とホーンの結合部分に介設したピストン部材を手
   動により前後移動可能に装着したことを特徴とする排泄
   処理装置の挿入具。
2. 【請求項２】 保護カバーの先端部分を、肛門挿入後に
   ラッパ状に拡開する弾力性柔軟材質の保護部材として形
   成し、保護カバーの周囲に、肛門挿入前には前記保護部
   材を収納し、肛門挿入後には保護部材周囲から除去され
   るか水分と接触して容易に溶解もしくは分散する材質の
   外套部材を設置した請求項１記載の排泄処理装置の挿入
   具。
3. 【請求項３】 広径本体部分の先端部を、ピストン部材
   が保護カバーのシリンダー部を移動する距離に相当する
   長さの範囲で狭径化し、シリンダー部の後端部にピスト
   ン部材の離脱を防止するための係止片を設け、かつ広径
   本体部分の狭径部に前記係止片と係合する突起片を設置
   した請求項１又は２記載の排泄処理装置の挿入具。
4. 【請求項４】 シリンダー部、保護カバーおよび保護部
   材が、透明の材質で形成されている請求項１、２又は３
   記載の排泄処理装置の挿入具。