JPH08260349A - ポリエステル織編物の製造方法 - Google Patents

ポリエステル織編物の製造方法

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JPH08260349A
JPH08260349A JP7087609A JP8760995A JPH08260349A JP H08260349 A JPH08260349 A JP H08260349A JP 7087609 A JP7087609 A JP 7087609A JP 8760995 A JP8760995 A JP 8760995A JP H08260349 A JPH08260349 A JP H08260349A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】織編物表面に産毛様のフィブリルを形成し、産
毛調の優れた繊細な風合いと柔軟性を有すると共に、吸
水性をも兼備したポリエステル織編物を提供する。 【構成】一般式R−SO3 M(式中、Rは炭素数3〜3
0のアルキル基又は炭素数7〜40のアリール基、若し
くはアルキルアリール基、Mはアルカリ金属を示す)で
表される有機スルホン酸金属塩を0.1〜8重量%含有
するポリエステル繊維を20重量%以上用いて製織又は
製編した後、織編物に120℃以上の温度の発熱体によ
る加圧下での接触熱処理を施し、その後アルカリ性化合
物の水溶性にて、織編物に減量率5重量%以上の減量処
理を施して、ポリエステル織編物表面にフィブリル状繊
維端を突出させる方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産毛調の優れた繊細な
風合いと柔軟性を有し、且つ高い吸水性をも兼備したポ
リエステル織編物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、高級感のある審美性に優れた
商品を得るために、織物繊維の表面にフィブリル化した
産毛状の超極細糸を発生させ、繊細な触感とハンドライ
ティング効果が付与されている。
【0003】織物繊維の表面をフィブリル化させ産毛状
の超極細糸を発生させる方法として、各種繊維の特性を
考慮して種々の方法が提案されている。例えば、ポリノ
ジック、テンセル、レーヨン等のセルロース系繊維はア
ルカリ処理又は酵素処理することでフィブリル化するこ
とができるが、同処理はコストが大きく、そのため商品
が高額になってしまう。また、シルクはストーンウォッ
シュによりフィブリル化する方法が採用されているが、
シルク製品自体が高価である上に同処理を施したものは
家庭におけく通常の洗濯等によりその物性や形態が損な
われやすいため、取扱いに注意が必要である。
【0004】そこで比較的安価で取扱いの簡単な繊維で
あるポリエステル繊維においてフィブリル化させ、繊細
な触感とハンドライティング効果を付与することも検討
されて然るべきであるが、ポリエステル繊維のフィブリ
ル化現象は一般的には同繊維の品質上の欠点であるとさ
れており、むしろフィブリル化を抑制するための技術開
発が盛んになされ、フィブリル化を促進するための提案
は余りなされていない。
【0005】その少ない提案を例示するとすれば、特開
昭55−16906号公報、特公昭61−9427号公
報等が挙げられる。これらの提案によれば、繊維を積極
的にフィブリル化するために、ポリエステル以外のポリ
マーを多量に用いて繊維を製造する。そのため、織編物
の十分な風合いの向上、効果が期待できないばかりか、
染色性等に欠点を有するものであった。また、これら繊
維からなる織編物の製造においては、例えばポリアミド
ポリマーの膨潤剤で処理する等の煩雑な工程を要するば
かりでなく、ポリエステル繊維中のフィブリル構造のよ
うなミクロスケールの繊維構造を高度に抑制することは
できず、工業的に簡便かつ安定した方法によっては、フ
ィブリル化現象による新たな感触、風合い、機能等を織
編物に付与することが困難であった。
【0006】更に、特公平2−58374号公報には、
有機化合物からなりポリエステルとは非相溶性の添加
剤、例えば一般式R−SO3 Mで表される有機スルホン
酸の金属塩が配合されたポリエステル繊維を用いた織編
物にアルカリ加水分解処理の前後のいずれかでバッフィ
ング処理を施してフィブリル化させる方法が開示されて
いる。この方法では、フィブリル化を織編物の表面に発
生させるために、添加剤が配合されたポリエステル繊維
を織編物の表面に配するようにして織製又は編製がなさ
れる。また、特開昭56−68161号公報にはポリエ
ステル繊維の織編物をその表面を加熱加圧してから加水
分解処理を行い、その後にバッフィング、針布起毛等の
物理的な起毛加工を施す方法が開示されている。この方
法においては、ポリエステル繊維に変性ポリエステル等
の添加剤を配合することが開示されてはいるが、この添
加剤がフィブリル化を促進するためのものとは考えられ
ない。
【0007】これらの方法によれば、どちらも物理的な
起毛処理を施すことが前提とされている。しかしなが
ら、このような起毛処理を施すことは織編物に多大な負
担をかけることになり、織編物を損傷させ、強度が低下
するばかりでなく、起毛処理では加水分解処理時に切断
された繊維の脱落等により粉落ちが発生しやすく、生産
上のトラブルの要因にもなる。
【0008】また従来のポリエステル繊維の織編物が直
面している、吸水性及び吸汗性の向上という課題に対し
ては、特開昭54−101866号公報でポリエステル
繊維に微細孔を設けることが提案されている。微細孔を
設けるために、ポリエステルに有機スルホン酸金属塩を
配合して成形した後、アルカリ性化合物の水溶液で処理
することにより有機スルホン酸金属塩を溶融除去するこ
とが開示されている。この提案によれば織編物の吸水性
は繊維表面の前記微細孔及びその特殊な断面形状に依存
するものであり、繊維表面にフィブリル化を発生させな
いこを前提としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリエステ
ル繊維の織編物が従来有していた、表面に独特のヌメリ
感があり手触りが硬いという風合い面での課題、並びに
吸水性、吸汗性に劣るという機能面での課題を解決する
ものであり、その目的は、織編物表面に産毛様のフィブ
リルを形成し、産毛調の優れた繊細な風合いと柔軟性を
有し、更には高い吸水性をも兼備したポリエステル織編
物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】上記目的を達成
するため、本発明は、構成する繊維の20重量%以上が
有機スルホン酸塩を含有するポリエステル繊維である織
編物を製織又は製編した後に120℃以上の温度の発熱
体に加圧下で接触させる加熱加圧処理を施し、その後ア
ルカリ性化合物の水溶液にて織編物に減量率5重量%以
上で減量処理を施して織編物の表面にフィブリル状繊維
端を突出させることを特徴とするポリエステル織編物の
製造方法を提供する。
【0011】本発明に適用されるポリエステルとして
は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とす
るものであり、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘
導体をジカルボン酸成分とし、エチレングリコール又は
そのエステル形成性誘導体をジオール成分とするポリエ
ステルが代表的なものであるが、ジカルボン酸成分の一
部を他のジカルボン酸で、またジオール成分の一部を他
のジオールで置き換えたポリエステルからなるものであ
ってもよい。
【0012】更に、本発明方法により得られる織編物に
使用されるポリエステル繊維は、一般式R−SO3
(式中、Rは炭素数3〜30のアルキル基、又は炭素数
7〜40のアリール基、若しくはアルキルアリール基、
Mはアルカリ金属を示す)で表される有機スルホン酸金
属塩を含有することが必要であり、前記有機スルホン酸
金属塩を単独で、或いは同有機スルホン酸金属塩と平均
分子量が10,000以下のポリエチレンとの混合物と
して含有させる。
【0013】これは、アルカリ減量処理において、ポリ
エステル繊維に含有される有機スルホン酸金属塩がアル
カリ加水分解での活性点となり、ポリエステル繊維の繊
維表面に多数の微細な筋状溝を形成すると共に、フィブ
リルを発現するためである。この有機スルホン酸金属塩
はポリエステル繊維に対して、0.1〜8重量%、好ま
しくは、0.5〜5重量%で含有される。スルホン酸金
属塩の含有量が0.1重量%未満では筋状溝の形成及び
フィブリルの発現が不充分となり、風合い及び吸水性の
向上の目的が達成されず、一方8重量%を超えると、工
程通過安定性が悪化する。
【0014】また有機スルホン酸金属塩をポリエチレン
との混合物として含有させる場合にも、ポリエステル繊
維の繊維表面に多数の微細な筋状溝を形成すると共に、
フィブリルを発現するが、特にポリエチレンが共存して
いるため、この筋状溝の形成及びフィブリルの発現がよ
り促進される。このように有機スルホン酸金属塩を平均
分子量が10,000以下のポリエチレンに混合して含
有させる場合には、混合物の含有量がポリエステル繊維
に対して0.12〜10重量%、好ましくは、0.5〜
7重量%で含有される。混合物の含有量が0.12重量
%未満では筋状溝の形成及びフィブリルの発現が不充分
となり、風合い及び吸水性の向上の目的が達成されず、
一方、10重量%超えると工程通過安定性が悪化する。
また混合物として含有される場合にも、有機スルホン酸
金属塩の含有量は上述の0.1〜8重量%の範囲内で設
定されており、有機スルホン酸金属塩とポリエチレンと
の混合の比率は重量比で、有機スルホン酸金属塩:ポリ
エチレン=50:50〜95:5、より好ましくは6
0:40〜90:10の範囲で設定される。
【0015】また、本発明において、ポリエステル繊維
に単独に或いは混合物として含有される前記一般式で表
される有機スルホン酸金属塩としては、例えば、ブチル
スルホン酸、ヘキシルスルホン酸、オクチルスルホン
酸、デシルスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ミリスチ
ルスルホン酸、パルミチルスルホン酸、ステアリルスル
ホン酸等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、又
はトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸の
ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられ
る。かかる有機スルホン酸金属塩は、単一の化合物であ
る必要はなく、各種有機スルホン酸金属塩の混合物であ
ってもよく、好ましい具体例として、炭素数12〜17
のアルキルスルホン酸ナトリウム塩の混合物が挙げられ
る。
【0016】また、有機スルホン酸金属塩と混合される
ポリエチレンには、溶融粘度の高い有機スルホン酸金属
塩の溶融粘度を低下させるために、平均分子量が、1
0,000以下、好ましくは5,000以下の低粘度型
ポリエチレンを用いるのが好ましい。
【0017】有機スルホン酸金属塩又は有機スルホン酸
金属塩とポリエチレンとの混合物のポリエステル繊維へ
の含有は、繊維賦形前のポリエステルポリマーを製造す
る過程或いは紡糸階段で添加することによりなされ、繊
維の製造方法は特に限定されない。
【0018】また本発明に適用される織編物は有機スル
ホン酸塩を含有するポリエステル繊維のみを用いて構成
することもできるが、織編物の強度を保持するために、
アルカリ処理で減量されない又は減量されにくい他の繊
維が混用されていてもよく、他の繊維を混用する場合に
は、本発明による織編物の風合い及び吸水性を損なわな
い範囲に抑える必要があることから、他の繊維の混用率
は80重量%未満とすることが好ましい。
【0019】以下、本発明のポリエステル織編物の製造
方法について説明する。上述の有機スルホン酸金属塩又
は有機スルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物を含
有するポリエステル繊維が、織編物の構成繊維の20重
量%以上を占めるように、例えば経糸にのみ同繊維を使
用する等の方法で、織編物を製織又は製編する。
【0020】本発明による方法では、先ず織編物を発熱
体に加圧しながら接触させる加熱加圧処理が施されてか
ら、アルカリ減量処理が施される。これら処理は表面に
フィブリル化した繊維を有する織編物を製造するための
方法である本発明に必要不可欠な工程である。ここで、
加熱加圧処理はアルカリ減量処理の前に行われることが
条件となり、この条件を満たせば、加熱加圧処理はいず
れの段階で行われても良く、例えば生機段階、精練後、
リラックス後又は中間セット後等に行うことができる。
【0021】本発明では、有機スルホン酸金属塩を含有
するポリエステル繊維を用いた織編物に加熱加圧処理を
施すことが重要である。ここで、加熱処理と加圧処理と
を同時に行う意義は、加熱処理により繊維表面のフィブ
リル化を促進するための物性変化をもたらし、同時に加
圧処理を施すことにより表面の平滑性を高め、アルカリ
減量処理での処理液の浸透を促進させると共に、糸条を
構成する繊維を拡散して内層にある繊維を織編物表面に
表出させ、繊維の加熱加圧体への接触面積を増加させ伝
熱効果をより高めることにある。このことにより、ポリ
エチレン繊維に含有された有機スルホン酸金属塩又は有
機スルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物が、織編
物を表面層を構成する糸条の表層に存在する繊維だけに
止まらず、内層に存在していた繊維も加熱され、アルカ
リ減量処理においてより溶出しやすい状態となるため、
フィブリル化が一層促進され、何ら織編物に物理的な起
毛処理を施さなくても織編物の表面にフィブリルが発現
するといった、従来では予測できなかった画期的な効果
が得られるものである。
【0022】織編物にこれら処理を施すことによりポリ
エステル繊維の表面に形成された連続筋状溝は、幅0.
1〜3μm、長さ5μm以上、隣接する筋状溝同士の間
隔が5μm以下であり繊維軸方向に延びているものが最
適である。筋状溝の幅が0.1μm未満又は3μmを超
え、或いは長さが5μm未満であると、織編物への吸収
性が付与されないだけでなく、風合いの改良、ヌメリ感
の解消が充分になされないからである。
【0023】またこれら処理において織編物の表面の少
なくとも一部にフィブリル状繊維端が突出するが、その
フィブリル状繊維端の直径が0.05〜5μm、突出長
さが10μm以上であれば、織編物に産毛様の特異な風
合いを付与することができる。更により良好な風合い、
ソフト感を付与するためにはこのフィブリル状繊維端の
直径が0.1〜3μm、突出長さが20μm以上である
ことが好ましい。
【0024】以下、加熱加圧処理及びアルカリ減量処理
について、上述のような好ましい筋状物及びフィブリル
状繊維端を発現させるための、多数の実験結果及び検討
から得られた最適条件を示しながら詳細に説明する。
【0025】加熱加圧処理条件は、温度が120℃以
上、好ましくは140℃以上で、圧力は0.5Kg/c
2 以上、好ましくは2〜10Kg/cm2 であり、温
度が120℃未満であったり、或いは加圧せずに単に発
熱体に接触させるだけでは、ポリエステル繊維のフィブ
リルの発生が困難となることが確認されている。なお同
処理は、平プレス機又はローラプレス機等を用いて織編
物の両面又は片面から熱を加えながら加圧して行われ
る。この処理時間は平プレス機を用いた場合には1秒程
度、ローラプレス機を用いた場合にはローラの回転速度
が10m/分で抵触時間約0.1秒に設定することが好
ましい。
【0026】次いで、接触熱処理した織編物に対し、ア
ルカリ性化合物の水溶液にて減量処理が施される。この
アルカリ処理に用いるアルカリ性化合物としては、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニ
ウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム等が挙げられ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムが好ましい。このとき、アルカリ減量処理時間を短縮
し、アルカリ減量処理を安定化させる目的で、第4級ア
ンモニウム塩、リン酸エステル化合物、多価アルコール
系化合物等のアルカリ減量促進剤を添加することもでき
る。また、このアルカリ処理における水溶液の温度は9
0℃以上、好ましくは110℃以上である。
【0027】アルカリ減量処理方法としては、ポリエス
テル織編物に減量処理加工として一般に適用される例え
ば液流型染色装置等による液流方法等の任意の方法が適
用できる。このとき、処理中に織編物同士或いは織編物
と処理装置機器とが接触しただけで、織編物表面のポリ
エステル繊維のフィブリルが発現し、何ら物理的な外力
を加える必要がない。
【0028】このアルカリ減量処理により、ポリエステ
ル繊維に含有されたスルホン酸金属塩又はスルホン酸金
属塩とポリエチレンとの混合物がアルカリ性水溶液に溶
出して、これらが含有されていたポリエステル繊維の繊
維表面には繊維軸方向に延びる多数の連続筋状溝を形成
させると共に、織編物表面にフィブリル状繊維端を発現
させる。このポリエステル繊維に含有されたスルホン酸
金属塩又はスルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物
の溶出に伴い織編物の重量が減少するが、その減量率が
5重量%未満では繊維表面の筋状溝の形成が不充分とな
るため、好ましくは5〜40重量%である。
【0029】以上、上記条件下で本発明により製造され
たポリエステル織編物は、最適なフィブリル状繊維端を
有しており、同フィブリル端とポリエステル繊維の繊維
表面の筋状溝との相乗効果により、織編物に柔軟性と優
れた風合いを付与するだけでなく、高度の吸水機能を付
与し、さらに後加工における機能の相乗効果も期待でき
る。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて具
体的に説明する。本発明の実施例及び比較例に使用され
た織物は、平均炭素数が12〜17のアルキルスルホン
酸ナトリウムを80重量部及び平均分子量が2,000
のポリエチレンを20重量部を混合した混合物を3%含
有するポリエチレンテレフタレート繊維(75デニール
/36フィラメント、円形断面糸)と、高収縮糸のポリ
エチレンテレフタレート繊維(30デニール/8フィラ
メント、円形断面糸)とを混合して経糸とし、通常のポ
リエチレンテレフタレート繊維(150デニール/96
フィラメント、円形断面糸)からなる1500T/Mの
撚糸を施したものを緯糸として用い、経糸織密度120
本/インチ、緯糸織密度60本/インチの条件で製織さ
れており、同織物は常法に従って精練された後、120
℃加圧下で水中でリラックスを行い、乾燥し、180℃
で中間セットされている。
【0031】〈実施例1〉上記織物を160℃、1.5
Kg/cm2 の圧力下でローラプレス機により5m/分
の速度で加熱加圧処理を行った後、3%の水酸化ナトリ
ウム水溶液を用いて、沸騰温度で減量率37重量%のア
ルカリ減量処理を行った。 〈実施例2〉上記織物を実施例1と同一の加熱加圧処理
を施した後、3%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、
実施例1より処理時間を短縮して沸騰温度で減量率21
重量%のアルカリ減量処理を行った。 〈実施例3〉上記織物を実施例1よりも低温の150℃
で実施例1と同一の1.5Kg/cm2 の圧力下でロー
ラプレス機により5m/分の速度で加熱加圧処理を行っ
た後、実施例1と同一のアルカリ減量処理を行った。 〈実施例4〉上記織物を実施例3よりも更に低温の12
0℃で実施例1と同一の1.5Kg/cm2 の圧力下で
ローラプレス機により5m/分の速度で加熱加圧処理を
行った後、実施例1と同一のアルカリ減量処理を行っ
た。
【0032】〈比較例1〉上記織物を実施例1と同一の
加熱加圧処理を施し、アルカリ減量処理は行わなかっ
た。 〈比較例2〉上記織物を比較例3よりも更に低温の90
℃で実施例1と同一の1.5Kg/cm2 の圧力下でロ
ーラプレス機により5m/分の速度で加熱加圧処理を行
った後、実施例1と同一のアルカリ減量処理を行った。 〈比較例3〉上記織物を実施例1と同一の120℃で、
圧力をかけずに5m/分の速度でローラに接触させ熱処
理を施した後、実施例1と同一のアルカリ減量処理を行
った。 〈比較例4〉上記織物に加熱加圧処理を施さずに、実施
例1と同一のアルカリ減量処理を行った。 〈比較例5〉上記織物の経糸であるアルキルスルホン酸
ナトリウムとポリエチレンとの混合物含有のポリエチレ
ンテレフタレート繊維に替えて、通常のポリエチレンテ
レフタレート(75デニール/36フィラメント、円形
断面糸)を使用した織物に対して実施例1と同一の加熱
加圧処理及びアルカリ減量処理を行った。
【0033】〈実施例5〉上記織物を160℃、1.5
Kg/cm2 の圧力下でローラプレス機により5m/分
の速度で加熱加圧処理を行った後、3%の水酸化ナトリ
ウム水溶液を用いて、沸騰温度で減量率33重量%のア
ルカリ減量処理を行った。 〈実施例6〉上記織物を実施例5より低温の150℃、
1.5Kg/cm2 の圧力下でローラプレス機により5
m/分の速度で加熱加圧処理を行った後、3%の水酸化
ナトリウム水溶液を用いて、沸騰温度で減量率33重量
%のアルカリ減量処理を行った。 〈実施例7〉上記織物を実施例5より低温の150℃、
1.5Kg/cm2 の圧力下でローラプレス機により5
m/分の速度で加熱加圧処理を行った後、3%の水酸化
ナトリウム水溶液を用いて、沸騰温度で減量率40重量
%のアルカリ減量処理を行った。 〈実施例8〉上記織物を実施例5より低温の150℃、
1.5Kg/cm2 の圧力下でローラプレス機により5
m/分の速度で加熱加圧処理を行った後、3%の水酸化
ナトリウム水溶液を用いて、沸騰温度で減量率45重量
%のアルカリ減量処理を行った。
【0034】〈比較例6〉上記織物に加熱加圧処理を施
さずに、3%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、沸騰
温度で減量率36重量%のアルカリ減量処理を行った。
【0035】〈評価〉上述の実施例及び比較例の織物の
表面のフィブリル発生状況及び繊維の筋状溝発生状況に
ついて走査型電子顕微鏡により観察し、また織物の風合
い及び産毛調の風合いについて触感及び目視により評価
した。
【0036】更に実施例1と比較例5については吸水性
についても評価した。この吸水性の評価は、織物を直径
15cmの刺しゅう用丸枠に取り付け、水滴滴下法によ
り織物上にビュレットから蒸留水を1滴滴下してその水
滴が織物の繊維内に吸収されて織物表面から消失するま
での時間を計測して行った。このときビュレットの先端
と織物表面との距離を1cmとし、室温で、相対湿度5
5〜60%の条件下で測定を行い、サンプル毎に5〜7
回測定を繰り返し、その平均値を測定値とした。なお、
このとき水滴1滴の平均量は、0.039mlであっ
た。
【0037】表1に実施例1〜4及び比較例1〜5の織
物について、また表2に実施例5〜8及び比較例6の織
物について、それぞれ表面のフィブリル発生状況及び繊
維の筋状溝発生状況の走査型電子顕微鏡による観察結
果、織物の風合い及び産毛調の風合いの触感及び目視に
よる評価結果を◎、○、△、×の符号で表し、吸水性に
ついては上述の測定結果を示す。ここで◎は最も良好な
評価結果を表し、以下、順に評価が下がり、×が最も低
い評価を表しており、符号△及び×は実用に供し得ない
ものである。
【0038】
【表1】 表1の評価結果から以下のことが分かる。実施例1の織
物の経糸の筋状溝発生状況と織物表面のフィブリルの発
生状況について検討すると、その走査型電子顕微鏡によ
る観察において、経糸の繊維表面には連続筋状溝が良好
に形成されており、経糸の表面に表れている繊維は殆ど
フィブリル化しており、織物表面からはフィブリル状繊
維端が非常に良好に突出していることが確認された。ま
た電顕写真からは経糸の繊維表面に形成された筋状溝は
幅0.3〜1μm、長さ20μm以上、隣接する溝間隔
0.5〜2μmであり、また織物表面から突出している
フィブリル状繊維端は、直径0.3〜1μm、突出長さ
20〜100μmであることが概算された。このような
筋状溝及びフィブリル状繊維端が形成された織物の触感
及び目視による風合い及び産毛調の風合いも非常に良好
であり、実施例1の織物に施された加熱加圧処理及びア
ルカリ減量処理の条件が適度なものであることが確認さ
れる。
【0039】更に織物の吸水性はその測定値が2分15
秒であり、この値は良好な吸水性を有する織物であるこ
とを示しているものである。尚、織物の強力も、経糸中
の高収縮ポリエステル繊維により実用上問題ない引き裂
き強力を有していた。
【0040】次に、この良好な結果を示した実施例1と
2及び比較例1との比較により、アルカリ減量処理率、
即ちアルカリ減量処理時間と筋状溝及びフィブリル状繊
維端の形成状況及び織物の風合いとの相関については、
表1から明らかなように、アルカリ減量処理が施されて
いれば、筋状溝は良好に形成され、フィブリル状繊維端
の形成状況についてはアルカリ減量処理率の増加に伴い
向上し、同様に織物の風合いについても向上することが
わかる。このことからアルカリ減量処理は筋状溝の形成
に必要不可欠であり、その処理率は高い方が好ましい。
【0041】続いて、実施例1、3及び4と比較例3〜
5との比較により、加熱加圧処理条件と筋状溝及びフィ
ブリル状繊維端の形成状況及び織物の風合いとの相関に
ついて述べる。先ず実施例1と比較例4とを比較する
と、比較例4の織物には筋状溝が形成されてはいるもの
の、フィブリル化が殆ど成されておらず、このことから
本発明においてはこの加熱加圧処理がフィブリルの発現
に重要な影響を与えていることが立証される。
【0042】この加熱加圧処理の温度は、実施例1、3
及び4と比較例2を比較すると温度が高くなるにつれて
フィブリルの発生状況が向上していることから、温度は
高い方が好ましく、少なくとも120℃以上、好ましく
は150℃以上に設定される。
【0043】また、実施例1と比較例3との比較におい
て、比較例3の圧力をかけずに単に熱処理をしただけの
織物では筋状溝が形成されてはいるものの、フィブリル
化が殆どなされていないのに対し、加圧力1.5Kg/
cm2 で処理した実施例1は筋状溝及びフィブリル化が
どちらも良好になされている。このことから本発明にお
いては単に加熱するだけでなく、加熱と加圧を同時に行
うことが重要であり、また加圧は比較的に低い圧力で充
分であることがわかる。
【0044】また、比較例5においては、その織物の経
糸に通常のポリエチレンテレフタレート(75デニール
/36フィラメント、円形断面糸)が使用されており、
この織物に実施例1と全く同一のアルカリ減量処理及び
加熱加圧処理を施したにも関わらず、その評価結果は、
経糸の繊維に筋状溝は殆ど発生せず、またフィブリル化
も殆ど成されていない。またこの比較例5の織物の吸水
性を測定したところ、測定値は44分51秒であり、こ
の値はポリエステル繊維の欠点である吸水性の悪さを示
すものである。このことから、先にも述べたとおり本発
明の方法を適用する際には、有機スルホン酸金属塩を含
有した繊維を用いて織編物を製織製編することが必要で
あることを立証している。
【0045】
【表2】 更に表2の評価結果及び図1〜3から以下のことがわか
る。図1は本発明に適用されるポリエステル織編物に実
施例5の処理が施された繊維表面の走査型電子顕微鏡写
真であり、図1aは350、図1bは3500倍の写真
である。同様に図2は本発明に適用されるポリエステル
織編物に実施例8の処理が施された繊維表面の走査型電
子顕微鏡写真、図3は本発明に適用されるポリエステル
織編物に比較例6の処理が施された繊維表面の走査型電
子顕微鏡写真である。
【0046】図1b,図2b及び図3bの写真を観察す
ると、どの繊維においても筋状溝は形成されていること
が確認できる。しかしながら、図3bの写真を観察する
と、枝状に突出した繊維端が確認できず、フィブリル化
が殆どなされていない。これに対し図1b及び図2bの
写真では枝状に突出した繊維端が多数確認でき、フィブ
リル化が良好に形成されていることが分かる。更に図1
a及び図2aを比較すると、実施例5である図1aに較
べて実施例8である図2aの繊維の方がより多くフィブ
リル化しており、その突出した繊維端の広がり方も均一
である。これらのことから、フィブリル化には本発明の
特徴部である加熱加圧処理が必要不可欠であることが立
証され、またアルカリ減量処理率が高い程、フィブリル
化が促進されることがわかる。なお、実施例6及び実施
例7についても表2に示すごとく本発明の目的とする毛
羽と風合いを備えた極めて高級感のある織編物であっ
た。
【0047】
【発明の効果】以上、本発明方法によれば、有機スルホ
ン酸金属塩を含有したポリエステル繊維を使用した織編
物に、通常の精練等の各種後加工での工程中で、加熱加
圧処理を施してからアルカリ減量処理を施すだけで、他
に何ら物理的な外力を与えることなくアルカリ減量処理
において繊維表面に良好なフィブリル繊維端が自然と発
現し、格別の工程を通すことなくポリエステル織編物に
フィブリル状繊維端部を安定して且つ均一に形成するこ
とができる。
【0048】更に本発明による方法で製造された織編物
は、物理的な起毛処理を必要としないため、強度も充分
に保たれ、優れた産毛調の風合いと柔軟性を有すると共
に、吸水性をも兼ね備えた織編物であり、しかも、サン
ドシルク調、高級スエード調、ベルベット調ともいえる
今までにない独特の風合いを備えているものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用されるポリエステル織編物に実施
例5の処理が施された繊維表面の350倍及び3500
倍の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明に適用されるポリエステル織編物に実施
例8の処理が施された繊維表面の350倍及び3500
倍の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明に適用されるポリエステル織編物に比較
例6の処理が施された繊維表面の350倍及び3500
倍の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式R−SO3 M(式中、Rは炭素数
    3〜30のアルキル基又は炭素数7〜40のアリール
    基、若しくはアルキルアリール基、Mはアルカリ金属を
    示す)で表される有機スルホン酸金属塩を0.1〜8重
    量%含有するポリエステル繊維を20重量%以上用いて
    製織又は製編した後、織編物に120℃以上の温度の発
    熱体に加圧下で接触させる加熱加圧処理を施し、その後
    アルカリ性化合物の水溶液にて織編物に減量率5重量%
    以上のアルカリ減量処理を施すことにより織編物表面に
    フィブリル状繊維を発現させることを特徴とするポリエ
    ステル織編物の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1のポリエステル繊維に替えて、
    一般式R−SO3 M(式中、Rは炭素数3〜30のアル
    キル基、又は炭素数7〜40のアリール基、若しくはア
    ルキルアリール基、Mはアルカリ金属を示す)で表され
    る有機スルホン酸金属塩と平均分子量が10,000以
    下のポリエチレンとの混合物を0.12〜10重量%含
    有するポリエステル繊維を用いた請求項1記載のポリエ
    ステル織編物の製造方法。
  3. 【請求項3】 アルカリ減量処理において90℃以上の
    アルカリ性化合物の水溶液で処理を行う請求項1又は2
    記載のポリエステル織編物の製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式R−SO3 M(式中、Rは炭素数
    3〜30のアルキル基、又は炭素数7〜40のアリール
    基、若しくはアルキルアリール基、Mはアルカリ金属を
    示す)で表される有機スルホン酸金属塩と平均分子量が
    10,000以下のポリエチレンとの混合の比率は重量
    比で、有機スルホン酸金属塩:ポリエチレン=50:5
    0〜95:5の範囲で設定される請求項2記載のポリエ
    ステル織編物の製造方法。
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