JP2582149B2 - 立毛織編物及びその製造方法 - Google Patents

立毛織編物及びその製造方法

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JP2582149B2 JP1025267A JP2526789A JP2582149B2 JP 2582149 B2 JP2582149 B2 JP 2582149B2 JP 1025267 A JP1025267 A JP 1025267A JP 2526789 A JP2526789 A JP 2526789A JP 2582149 B2 JP2582149 B2 JP 2582149B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の利用分野] 本発明は立毛部を形成するポリエステル系合成繊維の
立毛部先端から立毛長の20%以上が先細化されており、
かつ該先細化された立毛表面の20%以上の範囲の繊維表
面が不規則な凹凸のランダム表面を形成している立毛織
編物及びその製造方法に関する。
[従来の技術] カツトパイル、モケツト、ダブルラツセル、ベロア、
ベルベツトのような立毛布帛は多様な外観および風合い
を有し、カーシート、カーペツト、植毛布等のインテリ
ア、人工スエード、衣服等幅広い分野に用途がある。
しかし、立毛部がポリエステル系繊維からなる立毛布
帛はアクリル、ナイロン、レーヨン、綿、毛等に比較し
て肌触りが硬く、かつ光沢、つやなどの外観が著しく劣
つており、さらに立毛部が毛だおれを起こせば光沢感が
異なつてハンドマークとか黒ズミ、白ボケといつた光沢
差、色差を生じやすい。
そのため、ポリエステル系繊維を立毛部にした場合、
単繊維繊度が小さすぎると立毛部の毛だおれが起きやす
くなり、品位をそこないやすくなる。
また、染色した場合も立毛部が羊毛、絹などの天然繊
維からなる立毛織編物に比較してマイルドな光沢が得ら
れにくく、風合いも自然さがなく、色の深みも得られに
くい等の欠点があつた。
その外観、風合いを改良するために、種々の加工法が
提案されている。なかでも、立毛部にポリエステル系繊
維を用いた立毛布帛物の先細加工技術は、外観、風合い
を改良するためには、重要な技術である。現在に至るま
で種々の先細加工法が提案されているが、これらのなか
で、比較的良好な先細形状が得られるものの代表として
は、ポリエステルの加水分解性を利用した例が多い。
これらの例を挙げると、 1) ポリエステル系繊維の立毛の先端部を、アルカリ
溶液に浸漬しながら加熱することによつてポリエステル
系繊維の加水分解性および毛細管現象を利用して先細化
する方法。
2) 1)の方法とは逆に毛細管現象を抑制する方法
で、予め立毛部の先端にアルカリ液を含浸させた後、加
熱アルカリ浴中で処理することにより先細化する方法。
3) 予め立毛部を実質的に溶解しない液中に浸漬し、
次いで該液を含有した状態の立毛部を該繊維の加水分解
剤を含有する溶液に浸漬して先細化する方法。
4) 撥水処理したポリエステル系繊維からなる立毛先
端に、粘度のあるアルカリ液を付与し、該先端を60℃以
下の温度で処理することにより先細化する方法。
などがある。
しかし、1)〜3)のような先細化法を用いた場合、
立毛長が10mm以上の立毛織編物を加工した場合は、立毛
部が良好な先細形状から成る立毛織編物が得られるが、
立毛長が10mm以下の立毛織編物を加工した場合、加水分
解が立毛部の先端のみならず根元まで進んでしまい、仮
に先細形状となつても単糸全体のデニールが細くなつて
しまうため、先細部以外の部分においても強度が低下し
たり柔かくなりすぎてしまう問題点がある。また加水分
解水溶液による浸漬法では、処理に長時間を要するた
め、加水分解剤が処理中に立毛をつたわつて基布部分ま
で到達してしまい、その結果基布部分を劣化させる恐れ
がある。
また、4)の方法で先細化した場合、予め撥水処理を
施す工程手間や低温処理のため、処理に長時間を要し、
工程能率が悪くなる欠点がある。
また、通常のポリエステル系繊維からなる立毛織編物
を先細化した場合、充分にテーパー状の形態が得られな
いと、その染色品は光の乱反射によつて黒ボケ、白ズミ
といつた光沢差、色差を生じやすく、立毛部が羊毛、絹
などの天然繊維からなる立毛織編物に比較して、色の鮮
明性および深味、さらにはマイルドな光沢、自然な風合
いといつた点で充分な結果が得られない。
従つてポリエステル系合成繊維を立毛部に有する織編
物で高級感のあるものは従来から得られないと考えられ
ていた。
しかし、ポリエステルは耐久性、耐光性、立毛部の耐
へたり性の点では他の合成繊維、天然繊維より優れてい
るため、ポリエステル繊維を立毛部に有する織編物の開
発には期待が集まつていた。
[発明の目的] 本発明者等は高級感のあるウールを立毛部に使用した
織編物を目標にしてポリエステルを立毛部に有する織編
物を鋭意検討した結果、特開昭55−107512に示すような
粗面化構造を有する表面をもつた糸を立毛部に使用する
ことおよび、加水分解剤を含む水溶液に、高粘度の非加
水分解性の溶液を混合することで、加水分解剤含有溶液
を高粘度の溶液とし、この溶液を立毛の先端部に付与
し、次いで温熱処理することによつて立毛の先端部から
適度な範囲まで先細化され、一方、根元部及び基布は処
理前のデニール及び強度が維持されることにより、落ち
着いた、しつとりとした光沢を有し、さらに自然で天然
繊維調の風合いを有する立毛織編物を発明するに至つ
た。
[発明の構成] 本発明は、従来の方法とは異なつた方法により、立毛
部を形成する繊維の先端部から立毛長の20%以上の範囲
で先細化させ、かつ該先細化された立毛繊維表面の20%
以上の範囲の表面に微細かつ複雑な凹凸形状を形成させ
ることによつて、該染色物の色の発色性が優れ、かつマ
イルドな光沢を有し、黒ズミ、白ボケといつた光沢差、
色差もなく、かつまた天然繊維に似た優れた風合いを有
するポリエステル系繊維からなる立毛繊編物を提供せん
とするものである。即ち、本発明は、 (1)ポリエステル系合成繊維からなる立毛部を有する
織編物において、該立毛部を形成する繊維の先端部から
立毛長の20%以上の範囲で先細化されており、かつ該先
細化された立毛繊維表面の20%以上の範囲の表面が不規
則な凹凸のランダム表面を形成しており、繊維軸に直交
する外周方向の凹部の最低点と隣り合う凹部の最低点ま
での平面距離をXとするとき、0.2μ<X<0.7μを満足
する凹凸が100μ当り10〜1000個存在することを特徴
とする立毛織編物。
(2)平均粒子径0.2μ以下の微粒子を0.3〜5wt%添加
したポリエステル系合成繊維を立毛部に使用した織編物
を該繊維に対して可溶性あるいは分解性を有する溶剤を
含有する高粘度の液を該立毛の先端部に付与し、次いで
80℃以上の温度で温熱処理し立毛部の繊維表面を溶出侵
蝕することを特徴とする立毛織編物の製造方法。
に関するものである。
本発明においてランダム表面とは、典型的には山の高
さが不規則な凸部と、谷の深さが不規則な凹部とが混在
する表面を意味するが、凸部の山の高さがほぼ同じで凹
部の谷の深さが不規則な表面や、逆に凹部の谷の深さは
ほぼ同じで凸部の山の高さが不規則である表面をも、ラ
ンダム表面として包含意味するものである。
本発明によれば、立毛織編物における立毛部のポリエ
ステル系合成繊維において、ポリエステル系合成繊維特
有のギラついた光沢をマイルドにし、なおかつ色の深み
を増加させるには、立毛部の先端部から立毛長の20%以
上の範囲が先細化され、さらには先細化された該繊維表
面一部以上が不規則な凹凸でランダム表面を形成してい
ることが重要である。
立毛の先端部から立毛長の20%以上の範囲が先細化さ
れることにより、光の乱反射を抑制し、黒ボケ、白ズミ
といつた光沢差、色差を消失させることが可能となる。
なおかつ、さらに発色性を改良するためにはランダム表
面を形成する凹凸は、より好ましくは繊維表面において
繊維軸に対して直角な外周方向に存在する凹部の最低点
と隣接する凹部の最低点までの平面上の距離をXとする
とき0.2μ<X<0.7μの範囲を満足し、しかも互いにそ
のXが一定でない各凹凸が繊維表面の表面積100μ
り10〜1000個の密度で存在していることである。Xの値
は走査型電子顕微鏡で、平面上の距離で表示できる。
前述の定義によるXで表示すると、Xが0.2μ未満の
ものしかない場合、または0.2μ<X<0.7μの凹凸個数
が100μ当り10個未満の場合には鏡面的反射率の低下
が少なく、光沢がぎらつき、風合のねとつき感の改良効
果も少ない。また、Xが0.7μより大、または0.2μ<X
<0.7μの凹凸個数が100μ当り1000個より大の場合は
セミダルの減量品と大差なく、光沢は重く沈んだ光沢と
なり、色がくすみ白つぽくなりやすく、かえつて効果が
なくなる。
また、立毛部が通常のブライトまたはセミダルのポリ
エステル系繊維からなる立毛織編物を本発明の方法で先
細化を行なつても、その先細化された立毛部の繊維表面
が滑らかなままであつたり、また凹凸が生成しても、大
きな穴しか出来ず、またその穴の数も少ない。
従つて上述のように立毛部を先細化しても未処理の該
立毛織編物に比較して白ボケ、黒ズミといつた光沢差、
色差は改善されるが、色が鮮明で、マイルドな光沢と自
然な風合いをもつ染色物とすることは不充分である。
これに対して本発明の立毛織編物の立毛部の繊維は、
立毛の先端部から立毛長の20%以上の範囲で先細化さ
れ、かつその先細化された繊維表面の一部以上に微細な
凹凸を形成しており、しかもその微細な凹凸が形成され
ている繊維表面が前述のような密度でもつて不規則な凹
凸のランダム表面を形成しているもので、従来の先細化
された繊維とは表面状態を大きく異にしていることが特
異的である。
そして本発明の立毛織編物の立毛部を形成する繊維に
おいては、立毛の先端部において立毛表面の20%以上の
範囲にある不規則で微細な凹凸と、立毛の先端部から立
毛長の20%以上の範囲において先細化されていること
で、立毛部の繊維表面へ入射する入射光が、反射する際
に微細凹凸部にて互いに反射光の干渉作用による打消し
合い効果と、また不規則なランダム表面を形成する凹凸
により、凹凸部に入射した光が該凹凸の囲りをめぐつて
次々に起こる反射と吸収の繰返しによつて反射光が低下
する効果を有するものと思われる。かつ、また、先細化
されていることによつて、繊維の断面・側面の区別がな
くなり、従つて立毛部をどの方向から見ても不規則な凹
凸をもつランダム表面を見ることになるため、視覚的に
鮮明で、しかも深味のある発色性を示し、なおかつウー
ルに似た光沢感が得られ、白ボケ・黒ズミといつた色
差、光沢差を全く感じさせないものとなるものである。
従つて本発明の立毛織編物の立毛部を形成する繊維は
上述のような立毛部の先細化および特異的な表面構造に
より従来のような先細化された立毛部がポリエステル繊
維あるいは改質されたポリエステル繊維からなる立毛織
編物では得られなかつた優れた光学的効果と天然毛皮に
類似した優れた肌触り感が得られるものである。
このような特異な表面構造は、繊維改質用として従来
用いられている微粒子状不活性物質の粒度を高度に微粒
化された、即ち繊維内部の微細構造オーダーにまで微粒
化した微粒子を巧みに利用し、該微粒子を添加した繊維
表面を溶出侵触することにより出現させることができ
る。即ち、微粒子の平均直径を0.2μ以下、好ましく
は、0.1μ以下の微粒子状不活性物質を0.3ないし5wt%
含有させたポリエステル系のポリマーを溶融紡糸し、延
伸してポリエステル繊維を製造する。
ここで言う微粒子としてシリカゾルは極微細な凹凸の
出現と紡糸、延伸等工程の安定性の面からも良好な性質
を有する(特開昭55−107512)。
上述のようなポリエステルポリマーを得る一例として
は平均粒径1mμ〜100mμのシリカ微粒子が単粒子状で存
在するコロイダルシリカの使用が推奨される。
このコロイダルシリカとはケイ素酸化物を主成分とす
る微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール
類またはこれらの混合物の分散媒としてコロイドとして
存在するものを言う。
ポリエステルポリマーを製造する際のコロイダルシリ
カのエステル化槽への添加方法としては、特開昭55−10
7512に記載されている方法に従う。
また、本発明で言うポリエステル系繊維とは主成分が
ポリエチレンテレフタレートおよび/もしくはポリブチ
レンテレフタレートであり、必要によつては他成分が約
15モル%以下の共重合されたポリエステル等でもよい。
他成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチル
グリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル
酸、スルホイソフタル酸およびそのナトリウム塩、ポリ
アルキレングリコール等の共重合成分が挙げられ、更に
は酸化チタン等の艶消剤、光沢改良剤、難燃剤あるいは
染色性改質剤を含んでも良い。
また、ポリエステル系繊維とは、第1図a〜hのよう
な断面をもつポリエステル系複合繊維も含まれる。
複合繊維の場合、本発明で目的とするような先細形状
を得るためには、一方の成分と他方の成分との加水分解
による溶解速度差が10倍以上あることが望ましい。
以上のようにして得られたポリエステル系繊維をパイ
ル編、パイル織、モケツト、ダブルラツセル、ベロア、
ベルベツトまたはタフテイング、電気植毛などの製造に
より該ポリエステル系繊維を立毛部として構成された立
毛織編物が得られるが、その製法については特に限定さ
れない。
立毛を構成するポリエステル系繊維の単繊維繊度は0.
1デニールより細くなると、毛だおれが起きやすく、風
合的にも腰が弱くなり、良好な立毛品は得られない。
立毛長は10mm以下が望ましく、10mmを越えると毛だお
れが起きやすくなる場合がある。
本発明で用いる加水分解剤としては、アルカリ性化合
物を用い、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムが用いられる。また、場合によつてはラウリルジベン
ジルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモ
ニウムクロライドなどの加水分解促進剤を併用してもよ
い。
また、加水分解剤が含有している溶液の増粘方法とし
てでんぷん、天然ガム、海藻類(アルギン酸ソーダ)な
どの天然高分子糊剤やポリビニルアルコール、ポリアク
リル酸ソーダ、スチレン・マレイン酸共重合物などの合
成高分子糊剤などが好ましいが、特に限定されるもので
はなく、糊剤がポリエステル系繊維に対して非加水分解
性で、かつ加水分解溶液と混合して均一に分散されるも
のであれば良い。
増粘剤を含有した加水分解剤による加水分解処理条件
は、例えば水酸化ナトリウムを用いた場合、(1)式で
示される濃度が1〜20wt%の範囲内で処理することが望
ましい。
また、増粘剤を含有した加水分解剤の特性として、加
水分解剤の加水分解性および毛細管現象を抑制し、目的
とする良好な先細形状を得るためには、少なくともその
粘度が100cps.以上であることが望ましい。
本発明で用いる立毛先端部への該加水分解剤の塗布方
法としてはグラビアコート法、キスコート法、ナイフコ
ート法、プリント法、ロータリースクリーン法、捺染機
を用いる方法等があるが、このいずれの方法でもよく、
特に限定されるものではない。
これらいずれかの方法によつて立毛先端部に加水分解
剤が塗布された立毛織編物の加熱処理法としては熱風、
赤外線ヒーターなどの乾熱処理やスチームなどの湿熱処
理などの技術が適用できるが、乾熱処理の場合、加水分
解剤の乾固が必要以上に早く起こつて十分な処理効果が
得られない場合もあるので、立毛部の繊維の組成、種
類、処理剤の内容、およびその他の処理条件などから加
熱処理方式や加熱温度および処理時間等は適宜選択する
ことが好ましい。
加熱処理の処理条件としては、処理温度は80〜180
℃、処理時間10〜120分の範囲内で湿熱処理することが
さらに望ましい。
立毛の先細化レベルは、立毛長の20%以下の長さであ
ると、表面タツチ、光沢の改良効果がやや少ない。しか
し、白ボケ、黒ズミの防止には効果がある。
一方、先細化のレベルが立毛全体あるいはそれに近い
レベルまで達してしまうと、白ボケ、黒ズミの改良効
果、発色性の改良には著しい効果があるが、やや立毛部
が柔くなりすぎて、かえつて腰が弱くなりすぎて毛だお
れが起きる傾向がある。従つて、先細化のレベルは加水
分解処理剤粘度、濃度、コーテイング量(厚)、処理温
度、処理時間等の処理条件を適宜変化させてコントロー
ルするのが良い。
本発明は前述のように、立毛部がポリエステル系繊維
からなる立毛織編物の立毛先端部に加水分解剤を含む高
粘度の液を付与したのち、加熱処理によつて立毛先端を
先細形状にすることによりウールのような天然毛皮に類
似した、即ち、光沢がマイルドで腰があり、しかもソフ
トな風合いを有する立毛織編物を従来の方法とは全く異
なつた方法で得ることができ、しかも工業的規模におい
ても、原料、設備コストの面から見て容易に生産できる
という点で、大いに実用性があることがわかる。
さらに先細加工された立毛織編物の染色品は、前述し
たように、その先細化された繊維に断面、側面の区別が
なくなること、およびその先細化された繊維の繊維表面
の一部以上に不規則な凹凸のランダム表面が形成されて
いることにより、入射光が立毛部の繊維表面で表面反射
することが抑制されて、鮮明な、かつ深みのある発色性
を有し、従来のポリエステル系繊維からなる立毛織編物
の欠点であつた光沢、即ち白ボケ、黒ズミが解決され、
外観がより高級感のある立毛織編物が得られた。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
実施例1 シリカゾル(粒径40mμ)の添加量が3.0wt%であり、
断面が第1図aで示されるポリエチレンテレフタレート
([η]=0.66、単糸1.5デニール)のスパン糸で立毛
部が構成されたダブルラツセル編物(立毛長2mm)に以
下の先細加工を施した。
先細加工のための処理剤として20wt%の水酸化ナトリ
ウム水溶液に増粘剤としてPVA−205(クラレ製)を水に
溶解して糊状にした液を各々混合した。この混合処理剤
中の水酸化ナトリウムの濃度は前述の(1)式より10wt
%、混合処理剤の粘度は1300cps.であつた。
この処理剤をドクターナイフコーターを用いて、分解
剤によつて腐食されない120メツシユのナイロン布上に
処理剤が高さ0.5mmのコーテイング厚となるよう均一に
塗布する。
この処理剤の塗布されたナイロン布上に該ダブルラツ
セル編物の立毛表面を接触させ、マングルローラーを用
いて、立毛部の先端から立毛長の50%の範囲に処理剤が
付与されるようプレスする。
プレス後立毛部が下向きになつた状態のまま、180℃
の過熱水蒸気スチーマー(H.T.スチーマー)にて30分間
湿熱処理し、その後酸水溶液で中和後、糊剤溶出洗浄、
温水洗浄の順で行ない、乾燥、セツトを施した。
処理された該ダブルラツセル編物の立毛先端部を光学
顕微鏡(NIKON社製、OPTIPHOT−POL)で観察したとこ
ろ、テーパー状の形態でしかも繊維表面に微細な凹凸が
見られた。
次にこの先細加工したダブルラツセル編物を種々の染
料(分散染料)で染色し、その外観および発色性を調べ
た。結果を第1表に示す。
第1表に見られるように、先細加工後は加工前に比べ
て、ギラつきや、黒ズミなどの光沢差、色差が解消され
た。また、発色性を見ると、染色がブルー系のものは青
味が強く(bが小さく)鮮明、かつ深みのある発色性
を示し、ベージユ系では光沢がマイルドになつたせいか
高級感を感じる色となつた。また肌触りはソフトで天然
繊維よりなる立毛品に類似しており、外観もベロア調で
非常に高級感のある立毛品となつた。
実施例2 シリカゾル(粒径45mμ)の添加量が3.0wt%であるポ
リエチレンテレフタレートにスルホイソフタル酸を2.5
モル共重合した、断面が第1図bで示されるようなフイ
ラメント糸([η]=0.68、単糸2デニール)で立毛部
が構成されたシンカーパイル編物(立毛長2mm)に以下
の先細加工を施した。
先細加工のための処理剤として20wt%水酸化ナトリウ
ム水溶液に増粘剤としてPVA−205(クラレ製)を水に溶
解して糊状にした液を各々混合した。この混合処理剤中
の水酸化ナトリウムの濃度は前述の(1)式より8.5wt
%、混合処理剤の粘度は1700cps.であつた。
この処理剤をプリント印紙用のロールコーターを用い
て、分解剤によつて腐食さない120メツシユのナイロン
布上に処理剤が高さ0.5mmのコーテイング厚となるよう
均一に塗布する。
この処理剤の塗布されたナイロン布上に該シンカーパ
イル編物の立毛表面を接触させ、マングルローラーを用
いて立毛部の先端部から立毛長の30%の範囲に処理剤を
付与されるようプレスする。
プレス後立毛部が下向きになつた状態のまま、150℃
の過熱水蒸気スチーマー(H.T.スチマー)にて30分間湿
熱処理した。
処理後酸水溶液で中和後、糊剤溶出洗浄、温水洗浄の
順で行ない、乾燥、セツトを施した。
処理された該シンカーパイル編物の立毛先端部を光学
顕微鏡(NIKON社製、OPTIPHOT−POL)で観察したとこ
ろ、テーパー状の形態でしかも繊維表面に微細な凹凸が
見られた。
次にこの先細加工したシンカーパイル編物を種々の染
料で染色し、その外観および発色性を調べた。結果を第
2表に示す。
第2表に見られるように、先細加工後は加工前に比べ
て、ギラつきや黒ズミなどの光沢差、色差が解消され
た。
また、肌触りは天然繊維よりなる立毛品に類似してお
り、外観もベロア調で非常に高級感のある立毛品となつ
た。
実施例3 シリカゾル(粒径30mμ)の添加量が2.0wt%であるポ
リエチレンテレフタレート([η]=0.68)を芯成分と
し、イソフタル酸8モル%共重合体にポリエチレングリ
コール6wt%練り込んだ成分を鞘成分とした第1図gで
示されるような糸の断面形状をもつ芯鞘型複合繊維のフ
イラメント糸(75デニール/24フイラメント、芯鞘比1:
2)を立毛部としたダブルラツセル編物(立毛長3mm)を
用い、以下の先細加工を施した。
先細加工のための処理剤として、25wt%の水酸化ナト
リウム水溶液を、増粘剤としてPVA−217(クラレ製)を
水に溶解して糊状にした液をそれぞれ混合した。この混
合処理剤中の水酸化ナトリウムの濃度は12.5wt%、混合
処理剤の粘度は950cps.であつた。
この処理剤をドクターナイフコーターを用いて、処理
剤によつて腐食されない100メツシユのナイロン布上に
処理剤が高さ1.5mmとなるよう均一に塗布し、この処理
剤の塗布されたナイロン布上に、該ダブルラツセル編物
の立毛表面を接触させ、マングルローラーを用いて立毛
部の先端から立毛長の50%の範囲に処理剤が付与される
ようプレスする。
プレス後、立毛部が下向きになつた状態のまま、80℃
の蒸気にて、60分間赤外線ヒーターにて乾熱処理を行な
つた。処理後酸水溶液で中和後、糊剤溶出洗浄、温水洗
浄の順で行ない、乾燥、セツトを施した。
処理された該ダブルラツセル編物の立毛先端部を光学
顕微鏡(NIKON社製、OPTIPHOT−POL)で観察したとこ
ろ、テーパー状の形態を有しており、先細部の先端から
先細全体の20%以上の範囲の繊維表面に微細な凹凸が見
られた。
次にこの先細加工したダブルラツセル編物を実施例1
と同様に染色し、その外観、発色性、肌触りを調べたと
ころ、実施例1と同様、外観、発色性、肌触りとも改善
され、天然繊維よりなる立毛品に類似していた。
比較例1 シリカゾルを添加していない、断面が第1図aで示さ
れるようなポリエチレンテレフタレート(セミダル、
[η]=0.65)のスパン糸(単糸1.5デニール)で立毛
部が形成されたダブルラツセル編物(立毛長2mm)に以
下の先細加工を施した。
先細加工のための処理剤として20wt%水酸化ナトリウ
ム水溶液に増粘剤としてPVA−205(クラレ製)を水に溶
解して糊状にした液を各々混合した。この混合処理剤中
の水酸化ナトリウムの濃度は前述の(1)式より10wt
%、混合処理剤の粘度は1300cps.であつた。
この処理剤をドクターナイフコーターを用いて、分解
剤によつて腐食されない120メツシユのナイロン布上に
処理剤が高さ0.5mmのコーテイング厚となるよう均一に
塗布する。
この処理剤の塗布されたナイロン布上に該ダブルラツ
セル編物の立毛表面を接触させ、マングルローラーを用
いて立毛部の先端から立毛長の50%の範囲に処理剤が付
与されるようプレスする。
プレス後立毛部が下向きになつた状態のまま、180℃
の過熱水蒸気スチーマー(H.T.スチーマー)にて30分間
湿熱処理し、その後酸水溶液で中和後、糊剤溶出洗浄、
温水洗浄の順で行ない、乾燥、セツトを施した。
処理された該ダブルラツセル編物の立毛先端部はテー
パー状に先細化されているが、その繊維表面は滑らかで
あつた。
次にこの先細加工したダブルラツセル編物を実施例1
と同様に染色し、その外観および発色性を調べた。結果
を第3表に示す。
先細加工後は加工前に比べて、ギラつき、黒ズミは解
消され、触感もソフトになるが、光沢は鈍く、重く沈ん
でおり、高級感というイメージからは程遠いものであつ
た。
比較例2 実施例1で用いたダブルラツセル編物を4.0wt%の水
酸化ナトリウム溶液中に浸漬し、95℃にて通常のアルカ
リ減量処理を行なつた。アルカリ減量率は10%におさま
るよう留意した。
減量したダブルラツセル編物の立毛部を光学顕微鏡で
観察したところ、繊維表面に微細な凹凸が見られた。
が、先細化にはならなかつた。
次に該ダブルラツセル編物を実施例1と同様の方法で
染色し、その外観、発色性を調べた。その結果、外観、
発色性とも改善されているが、ややギラつきがあり、黒
ズミなどの光沢差、色差は改善されていなかつた。これ
は、立毛先端部が先細化されていないため糸の断面が残
つており、そのため光沢差、色差が現われたものと思わ
れる。
【図面の簡単な説明】
第1図a〜hは本発明で用いた立毛部分のポリエステル
系繊維の代表的な断面形状の例を示す。ただし、複合繊
維の場合、斜線部または非斜線部(白色部)のいずれ
も、あるいはいずれかが本発明でいうポリエステルであ
ればよい。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−107512(JP,A) 特開 昭57−154460(JP,A) 特開 昭55−62267(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエステル系合成繊維からなる立毛部を
    有する織編物において、該立毛部を形成する繊維の先端
    部から立毛長の20%以上の範囲で先細化されており、か
    つ該先細化された立毛繊維表面の20%以上の範囲の表面
    が不規則な凹凸のランダム表面を形成しており、繊維軸
    に直交する外周方向の凹部の最低点と隣り合う凹部の最
    低点までの平面距離をXとするとき、0.2<X<0.7μを
    満足する凹凸が100μ当り10〜1000個存在し、繊度が
    0.1デニール以上、立毛長が10mm以下であることを特徴
    とする立毛織編物。
  2. 【請求項2】平均粒子径0.2μ以下の微粒子を0.3〜5wt
    %添加したポリエステル系合成繊維を立毛部に使用した
    織編物を該繊維に対して可溶性あるいは分解性を有する
    溶剤を含有する高粘度の液を該立毛の先端部に付与し、
    次いで80℃以上の温度で湿熱処理し、立毛部の繊維表面
    を溶出浸食することを特徴とする立毛織編物の製造方
    法。
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