JP2824129B2 - 立毛織編物及びその製造方法 - Google Patents

立毛織編物及びその製造方法

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JP2824129B2 JP2180320A JP18032090A JP2824129B2 JP 2824129 B2 JP2824129 B2 JP 2824129B2 JP 2180320 A JP2180320 A JP 2180320A JP 18032090 A JP18032090 A JP 18032090A JP 2824129 B2 JP2824129 B2 JP 2824129B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、先端部が先細化された立毛繊維からなる立
毛部を有する立毛織編物に関する。
〔従来の技術〕
カツトパイル、モケツト、ダブルラツセル、ベロア、
ベルベツトのような立毛布帛は多様な外観および風合い
を有し、カーシート、カーペツト、植毛布等のインテリ
ア、人工スエード、衣服等幅広い分野に用途がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、立毛部がポリエステル系繊維からなる立毛布
帛はアクリル、ナイロン、レーヨン、綿、毛等に比較し
て肌触りが硬く、かつ光沢、つやなどの外観が著しく劣
つており、さらに立毛部が毛だおれを起こせば光沢感が
異なつてハンドマークとか黒ズミ、白ボケといつた光沢
差、色差を生じやすい。そのため、ポリエステル系繊維
を立毛部にした場合、単繊維繊度が小さすぎると立毛部
の毛だおれが起きやすくなり、品位をそこないやすくな
る。
また、染色した場合も立毛部が羊毛、絹などの天然繊
維からなる立毛織編物に比較してマイルドな光沢が得ら
れにくく、風合いも自然さがなく、色の深みも得られに
くい等の欠点があった。
その外観、風合いを改良するために、種々の加工法が
提案されている。なかでも、立毛部にポリエステル系繊
維を用いた立毛布帛物の先細加工技術は、外観、風合い
を改良するためには、重要な技術である。
しかしながら、通常のポリエステル系繊維からなり立
毛織編物を先細化した場合、充分にテーパー状の形態が
得られないと、その染色品は光の乱反射によつて黒ズ
ミ、白ボケといつた光沢差、色差を生じやすく、立毛部
が羊毛、絹などの天然繊維からなる立毛繊維物に比較し
て、色の鮮明性および深味、さらにはマイルドな光沢、
自然な風合いといつた点で充分な結果が得られない。し
かし、ポリエステル系繊維は耐久性、耐光性、、立毛部
の耐へたり性の点では他の合成繊維、天然繊維より優れ
ているため、ポリエステル繊維を立毛部に有する織編物
の開発には期待が集まつていた。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は高級感のあるウールを立毛部に使用した
織編物を目標にしてポリエステルを立毛部に有する織編
物を鋭意検討した結果、特開昭55−107512号公報に示す
ような粗面化構造を有する表面をもつた繊維が立毛部と
なつていることおよび、加水分解剤を含む液と粘度を高
めるための物質を混合することで、加水分解剤含有液を
高粘度の液とし、この液に、粗面化形成性物質添加ポリ
エステル繊維を立毛部とする立毛布帛の立毛部を浸漬
し、ニツプし、次いで温熱処理することによつて立毛の
先端部から適度な範囲まで先細化され、かつ先細化され
ている部分の表面および先細化されていない部分の表面
が共に粗面化構造となることにより、落ち着いた、しつ
とりとしたマイルドな光沢を有し、そして色の深みも有
し、さらに自然で天然繊維調の風合いを有する立毛織編
物を発明するに至つた。本発明において、先細化された
部分の表面のみならず、実質的に先細化されていない部
分の表面も粗面化されていることが重要な事件であり、
この要件により、特に、マイルドな光沢と色の深みが一
層高度に達成される。さらに本発明により、黒ズミ、白
ボケと言つた問題点も解決される。
すなわち本発明は、ポリエステル系合成繊維からなる
立毛部を有する織編物において、該立毛部を形成する繊
維の先端部から立毛長の20%以上の範囲で立毛繊維が先
細化されており、立毛繊維の該先細化された部分の表面
および先細化されていない部分の表面のそれぞれ50%以
上の表面には不規則な凹凸が形成されており、そして該
凹凸形成表面には、繊維軸に直交する外周方向の凹部の
最低点と隣り合う凹部の最低点までの平面距離をXとす
るとき、0.2μ<X<0.7μを満足する凹部が100μ
り10〜1000個存在することを特徴とする立毛織編物であ
り、好ましくは、立毛部を形成するポリエステル系合成
繊維が、該繊維内部に平均粒子径0.2μ以下の微粒子を
0.3〜5wt%含有する上記の立毛織編物であり、さらに立
毛を構成する繊維の単繊維繊度が少なくとも0.1デニー
ル以上の繊維で構成され、かつ立毛長が10mm以下である
上記の立毛織編物である。
また本発明は、平均粒子径0.2μ以下の微粒子を0.3〜
5wt%含有するポリエステル系合成繊維を立毛部に使用
した立毛織編物に、該繊維に対して分解性を有する薬剤
を含有する100cps.以上の粘性液をパデイング法により
付与し、次いで80℃以上の温度で処理して立毛部の繊維
表面を凹凸化すると同時に立毛部を形成している繊維の
先端部を先細化することを特徴とする立毛織編物の製造
方法であり、好ましくは、微粒子の平均粒子径が0.1μ
以下のコロイダルシリカである上記製造方法である。
本発明において不規則な凹凸表面とは、典型的には山
の高さが不規則な凸部と谷の深さが不規則な凹部とが混
在する表面を意味するが、凸部の山の高さがほぼ同じで
凹部の谷の深さが不規則な表面や、逆に凹部の谷の深さ
はほぼ同じで凸部の山の高さが不規則である表面をも、
不規則な凹凸表面として包含意味するものである。
本発明によれば、立毛繊維物における立毛部のポリエ
ステル系合成繊維において、ポリエステル系合成繊維特
有のギラついた光沢をマイルドにし、なおかつ色の深み
を増加させるには、前述したように、立毛部の先端部か
ら立毛長の20%以上の範囲が先細化され、さらには立毛
繊維の先細化された部分の表面および先細化されていな
い部分のそれぞれ50%以上が不規則な凹凸でランダム表
面となつていることが重要である。20%未満の範囲の先
細化の場合、風合やタツチがソフトとならないと共に黒
ズミ、白ボケを防ぐこともできない。さらに不規則な凹
凸表面が、先細化された部分の表面の50%未満である場
合や先細化されていない部分の表面の50%未満である場
合には、マイルドな光沢と色の深みが不十分である。
なお本発明において先細化された部分とは、立毛根元
部の繊維の平均半径(r0)に対して繊維の平均半径
(r)が0.9以下となつている半径を有する繊維部分を
意味しており、先細化されていない部分とは(r/r0)が
0.9を越える繊維部分を意味している。なお平均半径
は、繊維の横断面積に相当する面積の円の半径を意味し
ている。
なお発色性を改良するためには不規則な凹凸表面を形
成する凹凸は、繊維表面において繊維軸に対して直角な
外周方向に存在する凹部の最低点と隣接する凹部の最低
点までの平面上の距離をXとするとき0.2μ<X<0.7μ
の範囲を満足し、しかもそのXが一定でない凹部が繊維
表面の平面的な表面積100μ当り10〜1000個の密度で
存在していることである。Xの値は走査型電子顕微鏡
で、平面上の距離で表示できる。
前述の定義によるXで表示すると、Xが0.2μ未満の
ものしかない場合、または0.2μ<X<0.7μの凹部個数
が100μ当り10個未満の場合には鏡面的反射率の低下
が少なく、光沢がぎらつき、風合のねとつき感の改良効
果も少ない。また、Xが0.7μより大、または0.2μ<X
<0.7μの凹部個数が100μ当り1000個より大の場合は
セミダルの減量品と大差なく、光沢は重く沈んだ光沢と
なり、色がくすみ白つぽくなりやすく、かえつて効果が
なくなる。
また、立毛部が通常のブライトまたはセミダルのポリ
エステル系繊維からなる立毛織編物を本発明の方法で先
細化を行なつても、その先細化された立毛部の繊維表面
は滑らかなままであつたり、また凹凸が生成しても、大
きな穴しか出来ず、またその穴の数も少ない。
従つて上述のように立毛部を先細化しても未処理の該
立毛織編物に比較して白ボケ、黒ズミといった光沢差、
色差は改善されるが、色が鮮明で、マイルドな光沢と自
然な風合いをもつ染色物とすることは不充分である。
これに対して本発明の立毛織編物の立毛部の繊維は、
立毛の先端部から立毛長の20%以上の範囲で先細化さ
れ、かつ立毛繊維の該先細化された部分の表面および該
先細化されていない部分の表面のそれぞれ50%以上の表
面に微細な凹凸が形成されており、しかもその微細な凹
凸が形成されている繊維表面が前述のような密度でもつ
て不規則な凹凸のランダム表面を形成しているもので、
従来の先細化された繊維とは表面状態を大きく異にして
いることが特異的である。
このような不規則な凹凸のランダム表面を有している
ことで、立毛部の繊維表面へ入射する入射光が、反射す
る際に微細凹凸部にて互いに反射光の干渉作用による打
消し合い効果と、また不規則な凹凸表面を形成する凹凸
により、凹凸部に入射した光が該凹凸の囲りをめぐつて
次々に起こる反射と吸収の繰返しによつて反射光が低下
する効果を有するものと思われる。かつ、また、先細化
されていることによつて、繊維の断面・側面の区別がな
くなり、従つて立毛部をどの方向から見ても不規則な凹
凸をもつランダム表面を見ることになるため、視覚的に
鮮明で、しかも深味のある発色性を示し、なおかつウー
ルに似た光沢感が得られ、白ボケ・黒ズミといった色
差、光沢差を全く感じさせないものとなる。
従つて本発明の立毛織編物の立毛部を形成する繊維は
上述のような立毛部の先細化および特異的な表面構造に
より従来のような先細化された立毛部がポリエステル繊
維あるいは改質されたポリエステル繊維からなる立毛織
編物では得られなかつた優れた光学的効果と天然毛皮に
類似した優れた肌触り感が得られるものである。
このような特異な表面構造は、繊維改質用として従来
用いられている微粒子状不活性物質の粒度を高度に微粒
化した、即ち繊維内部の微細構造オーダーにまで微粒化
した微粒子を巧みに利用し、該微粒子を添加した繊維表
面を分解溶出侵触することにより発現させることができ
る。即ち、微粒子の平均直径が0.2μ以下、好ましく
は、0.1μ以下の微粒子状不活性物質を0.3ないし5wt%
含有させたポリエステル系のポリマーを溶融紡糸し、延
伸してポリエステル繊維を製造する。
ここで言う微粒子として、シリカゾルは極微細な凹凸
の出現と紡糸、延伸等工程の安定性の面からも良好な性
質を有する。
上述のようなポリエステルポリマーを得る一例として
は平均粒径1mμ〜100mμのシリカ微粒子が単粒子状で存
在するコロイダルシリカの使用が推奨される。
このコロイダルシリカとはケイ素酸化物を主成分とす
る微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール
類またはこれらの混合物を分散媒としてコロイドとして
存在するものを言う。
ポリエステルポリマーを製造する際のコロイダルシリ
カのエステル化槽への添加方法としては、例えば特開昭
55−107512号公報に記載されている方法に従う。
また、本発明で言うポリエステル系繊維とは、主成分
がポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレ
フタレートであり、必要によつては他成分が約15モル%
以下の割合で共重合されたポリエステル等でもよい。他
成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグ
リコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル
酸、スルホイソフタル酸およびそのナトリウム塩、ポリ
アルキレングリコール等の共重合成分が挙げられ、更に
は酸化チタン等の艶消剤、光沢改良剤、難燃剤あるいは
染色性改質剤等を含んでいても良い。
また、ポリエステル系繊維とは、第1図a〜dのよう
な単一ポリマーからなる繊維以外に、第1図e〜hで示
すような断面をもつポリエステル系複合繊維も含まれ
る。もちろん、複合繊維の場合には、微細凹凸形成性微
粒子含有ポリマーを繊維表面に存在させなければ、本発
明が達成されないことは言うまでもない。
以上のようにして得られたポリエステル系繊維をパイ
ル編、パイル織、モケツト、ダブルラツセル、ベロア、
ベルベツトまたはタフテイング、電気植毛などの製造方
法により該ポリエステル系繊維を立毛部として構成され
た立毛織編物が得られるが、その製法については特に限
定されない。
立毛を構成するポリエステル系繊維の単繊維繊度はそ
の根元部で0.1デニールより細くなると、毛だおれが起
きやすく、風合的にも腰が弱くなり、良好な立毛品は得
られない。また10デニールより太くなつても風合、ソフ
ト性の点で好ましくない。特に好ましくは0.5〜5デニ
ールの範囲である。
立毛長は10mm以下が望ましく、10mmを越えると毛だお
れが起きやすくなる場合がある。
本発明で用いる加水分解剤としては、アルカリ性化合
物が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウムが用いられる。また、場合によつてはラウリルベ
ンジルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアン
モニウムクロライドなどの加水分解促進剤を併用しても
よい。
また、加水分解剤を含有している液の増粘方法として
は、でんぷん、天然ガム、海藻類(アルギン酸ソーダ)
などの天然高分子糊剤やポリビニルアルコール、ポリア
クリル酸ソーダ、スチレン・マレイン酸共重合物などの
合成高分子糊剤などが好ましいが、特に限定されるもの
ではなく、糊剤がポリエステル系繊維に対して非加水分
解性で、かつ加水分解液と混合して均一に分散または溶
解されるものであれば良い。
増粘剤を含有した加水分解剤による加水分解処理条件
は、例えば水酸化ナトリウムを用いた場合、(1)式で
示される濃度が1〜30wt%の範囲内で処理することが望
ましい。
また、増粘剤を含有した加水弁解剤の特性として、加
水分解剤の加水分解性および毛細管現象を抑制し、目的
とする良好な先細形状を得るためには、少なくともその
粘度が100cps.以上であることが望ましい。さらに好ま
しくは100cps.〜1000cps.である。
また、本発明において、立毛先端部への該加水分解液
の塗布方法としては、パデイング法が適用される。ここ
でいうパデイング法とは、立毛布帛の立毛部を該加水分
解液に浸漬、基布には極力加水分解液が浸入しないよう
に(デイツプ)した後、マングルで絞り(ニツプ)、下
述で示される式から求められる値(ピツクアップ率)に
よつて塗布量をコントロールする方法である。なおピツ
クアツプ率としては30〜70%、特に40〜60%が好まし
い。
パデイング法によつて加水分解液が塗布された立毛布
帛の加熱処理法としては熱風、赤外線ヒーターなどの乾
熱処理やスチームなどの湿熱処理などの技術が適用でき
るが、乾熱処理の場合、加水分解剤の乾固が必要以上に
早く起こつて十分な処理効果が得られない場合もあるの
で、立毛部の繊維の組成、種類、処理剤の内容、および
その他の処理条件などから加熱処理方式や加熱温度およ
び処理時間等は適宜選択することが好ましい。
加熱処理の処理条件としては、処理温度は80〜180
℃、処理時間10〜120分の範囲内でアルカリ減量率5〜3
0%、特に10〜25%となるように湿熱処理することが望
ましい。
先細化のレベルは加水分解処理剤粘度、濃度、ピツク
アツプ率(%)、処理温度、処理時間等の処理条件を適
宜変化させてコントロールするのが良い。本発明方法で
先細化が達成できる機構は、布帛を温熱処理する場合に
立毛部先端の方が立毛部根元に比較して加熱効果が高
く、適度な温度句配が形成されるためと考えられる。
本発明は、前述のように、立毛部が特定のポリエステ
ル系繊維からなる立毛織編物の立毛部に加水分解剤を含
む高粘度の液を付与したのち、加熱処理によつて立毛先
端を先細形状にすることによりウールのような天然毛皮
に類似した、即ち、光沢がマイルドで腰があり、しかも
ソフトな風合いを有する立毛織編物を、従来の方法とは
全く異なつた方法で得ることができ、しかも工業的規模
においても、原料、設備コストの面から見て容易に生産
できるという点で、大いに実用性があることがわかる。
さらに先細加工された立毛織編物の染色品は、前述し
たように、その先細化された繊維に断面、側面の区別が
なくなること、およびその先細化された部分および先細
化されなかつた部分の表面の大部分に不規則な凹凸のラ
ンダム表面が形成されていることにより、入射光が立毛
部の繊維表面で表面反射することが抑制されて、鮮明
な、かつ深みのある発色性を有し、従来のポリエステル
系繊維からなる立毛織編物の欠点であつた光沢、即ち白
ボケ、黒ズミが解決され、外観がより高級感のある立毛
織編物が得られた。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
実施例1 シリカゾル(粒径40mμ)の添加量が3.0wt%であり、
断面が第1図aで示されるポリエチレンテレフタレート
(〔η〕=0.68、単糸デニール2テニール)のフイラメ
ント糸で立毛部が構成されたダブルラツセル編物(立毛
長2mm、立毛密度1800本/cm2)を編成した。この場合、
クランド糸としてポリエステル糸を使用した。編成後、
ピンテンターにて180℃の乾熱によりプレセツト加工を
施した。
この様にして得られたダブルラツセル編地の立毛面
に、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えた種々の
アルカリ組成、粘度の処理剤を1デイツプ−1ニツプの
パデイングにより塗布した。デイツプの方法としては、
立毛面を下側にし、立毛部のみがアルカリ液に浸漬され
るようにダブルラツセル編地をアルカリ液表面を通過さ
せる方法を用いた。
塗布後、スチーマーにより、処理温度175℃、処理時
間8分の過熱蒸気処理を施した。
この処理したダブルラツセル編地を紺系統、ベージユ
系統の2種の分散染料を用いてオーバーマイヤー染色機
にて染色した。これら染色したサンプルの立毛糸の先端
部形状を光学顕微鏡により観察したところ、表1に示す
ように立毛長の20〜40%の範囲がなだらかな先細形状を
もつていた。
表1に示すように、先細加工後は加工前に比べても、
風合、外観とも優れ、タツチがソフトであるにもかかわ
らず、はり、腰があり、視覚的にも鮮明で深みのある発
色性を呈し、かつ黒ズミがまつたく目立たず、さらにほ
こりの付着のない、極めて優れた先細加工品であつた。
なお、これらの立毛部繊維の先細処理部の繊維表面に
は、全面的に、繊維軸に直交する外周方向の短径が0.3
μ程度の凹部が30個/100μ存在しているのが走査型電
子顕微鏡で観察できた。また先細となつていない立毛部
分の表面の約90%相当表面部には同様の凹凸が同様の密
度で存在していた。
比較例1 実施例1で編成したダブルラツセル編地の立毛面に増
粘剤を混合していないアルカリ液を実施例1と同様の条
件でパデイングして塗布し、塗布後スチーマーにより、
処理温度175℃、処理時間8分の過熱蒸気処理を施し
た。この処理したダブルラツセル編地を紺系統、ベージ
ユ系統の2種の分散染料を用いてオーバーマイヤー染色
機にて染色した。
これら染色したサンプルの立毛糸の先端部形状を光学
顕微鏡により観察したところ、立毛部は先細形状となつ
ておらず、従来のアルカリ液浸漬減量処理後の形状と酷
似していた。また加工品においても加工前に比べてタツ
チが若干ソフトになつてはいるが、外観においては黒ズ
ミが目立ち、またほこりも付着しやすい加工品であつ
た。
実施例2 シリカゾル(粒径45mμ)の添加量が3.0wt%であるポ
リエチレンテレフタレートにスルホイソフタル酸ソーダ
を2.5モル共重合した、断面が図1aで示されるようなフ
イラメント糸(〔η〕=0.53、単糸デニール)で立毛分
が構成されたダブルラツセル織物(立毛長2mm、立毛密
度18000本/cm2)を編成し、ピンテンターにて180℃の乾
熱によりプレセツト加工を施した。このようにして得ら
れたダブルラツセル編地の立毛面に実施例1サンプルN
o.2と同様の加工法で先細加工を施した。この処理した
ダブルラツセル編地を紺系統、ベージユ系統の2種の分
散染料を用いてオーバーマイヤー染色機にて染色した。
これら染色したサンプルの立毛糸の先端部形状を顕微
鏡により観察したところ、テーパー状で立毛長の35%が
なだらかな形状をもつていた。また、このサンプルは、
風合、外観とも優れ、タツチがソフトであるにもかかわ
らず、はり、腰があり、視覚的にも鮮明で深みのある発
色性を呈し、かつ黒ズミ、白ボケがまつたく目立たず、
さらにほこりの付着の少ない、極めて優れた先細加工品
であつた。
なお、これらの立毛部繊維の先細処理部の繊維表面に
は、全面的に繊維軸に直交する外周方向の短径が0.3μ
程度の凹部が30個/100μ存在しているのが走査型電子
顕微鏡で観察できた。また先細となつていない立毛部分
の表面の約90%相当表面部にも同様の凹部の同様の密度
で存在していた。
比較例2 シリカゾルを添加していない、断面が第1図aで示さ
れるような艶消し剤が0.3%含有するポリエチレンテレ
フタレート(〔η〕=0.68)のフイラメント系(単糸2
デニール)で立毛部が構成されたダブルラツセル編地
(立毛長2mm、立毛密度18500本/cm2)を編成し、ピンテ
ンターにて180℃の乾熱によりプレセツト加工を施し
た。このようにして得られたダブルラツセル編地の立毛
面に実施例1と同様の加工法で先細加工を施した。この
処理したダブルラツセル編地を紺系統、ベージユ系統の
2種の分散染料を用いてオーバーマイヤー染色機にて染
色した。
これら染色したサンプルの立毛糸の先端部形状を光学
顕微鏡および走査型電子顕微鏡により観察したところ、
立毛先端部はテーパー状に先細化されているが、その繊
維表面は1μ以上の粗大な凹凸であつた。また、この先
細加工サンプルは加工前に比べて、ギラつき、黒ズミ等
は改善され、風合もソフトになつているが、光沢は鈍
く、重く沈んでおり、高級感というイメージからは程遠
いものであつた。
【図面の簡単な説明】
第1図a〜hは本発明で用いられる立毛部分のポリエス
テル系繊維の代表的な断面図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D06M 11/38 D06M 15/03 15/03 5/02 L (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D03D 27/00 D03D 15/00 D01F 6/92 D01F 6/62

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエステル系合成繊維からなる立毛部を
    有する織編物において、該立毛部を形成する繊維の先端
    部から立毛長の20%以上の範囲で立毛繊維が先細化され
    ており、立毛繊維の該先細化された部分の表面および先
    細化されていない部分の表面のそれぞれ50%以上の表面
    には不規則な凹凸が形成されており、そして該凹凸形成
    表面には、繊維軸に直交する外周方向の凹部の最低点と
    隣り合う凹部の最低点までの平面距離をXとするとき、
    0.2μ<X<0.7μを満足する凹部が100μ当り10〜100
    0個存在することを特徴とする立毛織編物。
  2. 【請求項2】平均粒子径0.2μ以下の微粒子を0.3〜5wt
    %含有するポリエステル系合成繊維を立毛部に使用した
    立毛織編物に、該繊維に対して分解性を有する薬剤を含
    有する100cps以上の粘性液をパデイング法により付与
    し、次いで80℃以上の温度で処理して立毛部の繊維表面
    を凹凸化すると同時に立毛部を形成している繊維の先端
    部を先細化することを特徴とする立毛織編物の製造方
    法。
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