JP3419515B2 - 深色性に優れたポリエステル系繊維およびその製造方法 - Google Patents

深色性に優れたポリエステル系繊維およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は繊維表面が耐摩擦性を有
する不規則な凹凸表面であり、さらのその染色物が高度
の深色性を有し、かつキシミ調のドライタッチな風合を
有するポリエステル系繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリエステル系繊維は繊維表面は
滑らかであるために特有のワキシ−感があり、耐摩擦性
は、絹の乾いた感触とキシミ感、絹なり、木綿のさらっ
とした風合などの天然繊維に比較し、非常に劣ってい
る。また、溶融紡糸により得られるポリエステル系繊維
は、独特の鏡面光沢があり、染色した場合、羊毛、絹等
の天然繊維に比較し、色の深みが得られにくい欠点があ
る。このような欠点を改良すべく、各種の提案がこれま
でになされている。
【0003】たとえば、ポリエステル系繊維を構成する
ポリエステルにスルホイソフタル酸等のスルホン酸塩基
を共重合させ、大きな吸光係数を有するカチオン染料の
染着座席を導入する方法が提案されているが、いまだ不
十分である。一方、繊維表面を屈折率の低い化合物で被
覆することにより、色が濃く見え、深みが増すことが知
られている。現在までに有機フッ素系化合物、有機ケイ
素系化合物などの低屈折率化合物を繊維表面にコ−ティ
ングする方法が提案されている(特公平2−42938
号公報)。また、繊維表面に、光の波長より小さいピッ
チの微細な凹凸を形成させることにより繊維表面の反射
を抑制し、さらにはキシミ感を有する風合を付与する方
法も提案されている(特公昭59−24233号公報、
特公昭62−20304号公報、特公昭62−2822
9号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、繊維表
面を屈折率の低い化合物でコ−ティングする方法は、ド
ライクリ−ニングに対する耐久性に乏しく、また十分な
濃色効果を得るためには通常の風合加工で使用するより
も多量の該化合物をコ−ティングしなければならず、濃
色効果が達成されても風合の変化、染色物の堅牢度の低
下等の問題が生じる。また、繊維表面に微細な凹凸を形
成させる方法では繊維表面の光の反射は抑制されるが、
染色物の深色性はまだ不十分であり、該繊維からなる布
帛の着用時における摩擦耐久性が満足できるものではな
い。
【0005】本発明の目的は、上記の問題点を解決し、
染色物が高度の深色性を有し、かつキシミ調のドライタ
ッチな風合を有し、さらに該繊維からなる布帛の着用時
における摩擦耐久性を満足するポリエステル系繊維を提
供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、主たる繰り返
し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルか
らなり、下記式(I)および/または式(II)で示される化
合物を該ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の2
〜20モル%含有するポリエステル繊維であって、繊維
表面に微細な凹凸を有し、かつ摩擦に対する色差値ΔE
ab が1.5以下であることを特徴とするポリエステ
ル系繊維であり、その製造方法である。
【0007】
【化5】 (式中、mは0、1、または2を示す。)
【0008】
【化6】 (式中、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、n
は0、1、または2を示す。)
【0009】本発明におけるポリエステルは、主たる繰
り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステ
ルであり、本発明の目的を損なわない範囲内で上記式
(I)および/または式(II)で示される共重合成分以
外に第3成分を共重合させてもよい。
【0010】共重合可能な第3成分としては、イソフタ
ル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル
ジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエ−テルジカルボ
ン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,
4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′−ジ
フェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ジフ
ェノキシエタン−4′,4″−ジカルボン酸、アントラ
センジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、ジ
フェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナト
リウム等の芳香族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカ
ルボン酸;デカリンジカルボン酸、シクロヘキサンジカ
ルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;β−ヒドロキシエト
キシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、ヒドロキシプロピ
オン酸、ヒドロキシアクリル酸等のヒドロキシカルボン
酸;またはこれらのエステル形成性誘導体から誘導され
たカルボン酸、ε−カプロラクトン等の脂肪族ラクト
ン、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−
ル、ヘキサメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−
ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等
の脂肪族ジオ−ル;ヒドロキノン、カテコ−ル、ナフタ
レンジオ−ル、レゾルシン、ビスフェノ−ルA、ビスフ
ェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−
ルS、ビスフェノ−ルSのエチレンオキサイド付加物等
の芳香族ジオ−ル;シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂
環族ジオ−ルなどを挙げることができる。これらの第3
成分は1種のみまたは2種類以上共重合されていてもよ
い。
【0011】さらに本発明に係わるポリエステルには、
ポリエステルが実質的に線状である範囲内でトリメリッ
ト酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル
酸等の多価カルボン酸;グリセリン、トリメチロ−ルエ
タン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスルト−ル
等の多価アルコ−ルが含まれていてもよい。
【0012】本発明に係わるポリエステルには、下記式
(I)で表される化合物および/または下記式(II)で
表される化合物が共重合されていることが必要である。
【0013】
【化7】 (式中、mは0、1または2を示す。)
【0014】
【化8】 (式中、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、n
は0、1または2を示す。)
【0015】式(I)で示される化合物または式(II)
で示される化合物のみが共重合される場合、その共重合
量はポリエステルを構成するジカルボン酸成分に対して
2〜20モル%、好ましくは5〜15モル%の範囲であ
る。式(I)および式(II)の化合物を共重合成分とす
る場合は、その共重合量はそれらの和において、ジカル
ボン酸成分に対して2〜20モル%であり、5〜15モ
ル%の範囲であることが好ましい。
【0016】式(I)で示される化合物および/または
式(II)で示される化合物の共重合量が2モル%未満の
場合、ポリエステルのガラス転移温度があまり上昇せ
ず、これに起因して、繊維表面に形成された凹凸部の摩
擦に対する耐久性が不十分となる。一方、該化合物の共
重合量が20モル%を越える場合、ポリエステルの重合
性が低下するとともに、紡糸が困難となり、結晶性のポ
リエステル繊維が得られにくくなる。たとえ得られたと
してもその融点が低くなるため、ポリエステル繊維に要
求される耐熱性、機械物性の低下が大きく、また染色物
の堅牢度が低下する。
【0017】本発明に係わるポリエステルは、通常の方
法で重合することができる。たとえば、テレフタル酸と
エチレングリコ−ルとを直接エステル化させるか、テレ
フタル酸ジメチル等のテレフタル酸の低級アルキルエス
テルとエチレングリコ−ルとをエステル交換反応させる
か、またはテレフタル酸とエチレンオキシドとを反応さ
せるかしてテレフタル酸のエチレングリコ−ルエステル
および/またはその低重合体を生成させる第一段階の反
応、そして第一段階で得られた反応生成物を減圧下で加
熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段
階の反応によって製造される。その際、式(I)および
/または式(II)で示される化合物をそれぞれの所望量
を重縮合反応が終了するまでの任意の段階、たとえばポ
リエステルの出発原料、エステル交換反応後で重縮合反
応前に添加することができる。また、重合度を高めるた
めに、液相で重合を行なった後、固相重合することもで
きる。
【0018】本発明に係わるポリエステルは固有粘度
〔フェノ−ル/テトラクロロエタン(重量比50/5
0)の混合溶媒を用い、30℃で測定〕が0.4〜1.
5の範囲であることが好ましい。
【0019】本発明のポリエステル系繊維の表面に形成
された「微細な凹凸」とは、走査型電子顕微鏡を用いて
3000倍以上の倍率で観察した時に容易に観察される
程度の大きさを有する凹凸であれば、その径、密度に限
定はない。
【0020】ポリエステル繊維表面にこのような微細な
凹凸を形成させるためには、上記のポリエステルに平均
粒径が80mμ以下のアルカリ溶出性無機微粒子を0.
5〜10重量%含有させて紡糸、延伸し、ついで得られ
た繊維表面をアルカリ溶液で処理する方法があげられ
る。この方法により、繊維を構成するポリエステルの内
部の微細高次構造に変化を与え、繊維表面の無機微粒子
のアルカリ溶出の仕方が不均一になり、高度の耐摩耗性
を備えた微細でかつ複雑な凹凸形状が繊維表面に形成さ
れる。添加微粒子の平均粒径が80mμを越える場合、
繊維表面をアルカリ処理すると、繊維表面の凹凸形状が
粗雑になり、色のくすみや染色後の白っぽさが目立ち望
ましくない。また、無機微粒子の含有量が0.5重量%
未満の場合、繊維表面に微細な凹凸が形成されにくく、
染色物の深色性が不十分となる。一方、無機微粒子の含
有量が10重量%を越えると、紡糸性に問題が生じ、均
斉な紡糸ができなくなる。したがって、微粒子を均一に
ポリエステル中に分散させ、紡糸延伸時の工程安定性を
良好にし、染色物に高度の深色性を付与するためには、
ポリエステルに添加する微粒子の平均粒径が50mμ以
下であることが好ましく、その量は1〜7重量%である
ことが好ましい。
【0021】このようなアルカリ溶出性無機微粒子とし
ては、シリカゾル、微粒子状シリカ、アルミナゾル、粒
子状アルミナ、極微粒酸化チタン、炭酸カルシウム、カ
オリン等が挙げられるが、繊維の透明性、色の鮮明性、
良好な光沢の点からシリカゾル、とくにコロイドシリカ
ゾルが好ましい。
【0022】繊維表面のアルカリ処理は、織編物状で染
色する場合は染色処理前に、糸、綿状で染色する場合は
染色の前に綿または糸、あるいはトウの状態でアルカリ
処理を行なうことが染色の色合わせの点で望ましい。し
かしながら、染色後に実施しても表面に微細で複雑な凹
凸形状が得られることに変わりがなく、アルカリ処理は
適宜所望の工程で選択することができる。
【0023】通常、アルカリ処理により繊維表面に凹凸
形状を有するポリエステル繊維は、後処理工程における
高温熱水処理液中での糸間の摩耗、高張力下での摩耗に
対して、該凹凸形状がつぶれてしまう問題点を有し、ま
た該ポリエステル繊維からなる布帛の着用時における摩
擦に対して該凹凸形状がつぶれてしまう等の問題点を有
している。
【0024】しかしながら、本発明においては、上記式
(I)および/または(II)の化合物を共重合したポリ
エステルのガラス転移温度が、ポリエチレンテレフタレ
−トのガラス転移点温度に対して1.03〜1.3倍と
高いため、通常の延伸倍率よりも小さくして延伸するこ
とができ、したがって非常に微細な凹凸が繊維表面に形
成されて、上記のような後工程において繊維表面の凹凸
形状がつぶれることがない。とくに、液流染色機中の高
温高圧染色下で生じる凹凸形状の摩耗による消失、着用
時の摩擦による凹凸形状の消失を回避することができる
のである。一方、ポリエチレンテレフタレ−トのガラス
転移点温度の1.3倍を越えるガラス転移温度を有する
ポリエステルを得ようすると、上記式(I)で示される
化合物および/または式(II)で示される化合物を多量
に共重合させる必要があり、ポリエステルの重合性がか
えって低くなるとともに、紡糸性が困難となる場合があ
る。
【0025】本発明のポリエステル系繊維の表面に形成
された凹凸は上述したように摩擦に対する耐久性が非常
に優れており、JIS L 0849で規定された摩擦に
対する染色堅牢度試験前後で、 表色系にお
ける色差値ΔE ab が、1.5以下、とくに0.5以
下である。この色差値は少しでも変動があると視覚的に
感知できるものである。
【0026】本発明のポリエステル系繊維には、必要に
応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、紫外線吸収
剤、蛍光増白剤、艶消剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃補
助剤、潤滑剤、可塑剤、無機充填剤等の添加剤が配合さ
れていてもよい。
【0027】また、本発明のポリエステル系繊維は仮撚
捲縮加工等の高次加工により、五角、六角に類似した断
面形状になったりするが、紡糸時の異形断面ノズルによ
り三葉形、T字形、四〜八葉形等の多葉形や各種の断面
形状の異形断面形状にすることができる。また複合繊維
の一成分として使用することもできる。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳述するが、本
発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。実
施例中の各物性は以下の方法により測定した。
【0029】(1)ポリエステルの固有粘度(g/d
l) フェノ−ル/テトラクロロエタン(重量比50/50)
の混合溶媒を用いて30℃で測定した。
【0030】(2)ポリエステルのガラス転移温度
(℃) Differential Scanning Calorimeter (メトラ−TA3
000、パ−キンエルマ−社製)を使用し、試料10m
g、昇温および降温速度10℃/分の条件で、窒素置換
を行ないながら測定し、同じ試料でこの操作を2回繰り
返して2回目の値を実測値とした。
【0031】(3)ポリエステル系繊維表面の凹凸形状 走査型電子顕微鏡にて3000倍以上に拡大して繊維表
面の凹凸の有無を観察した。
【0032】(4)染色物の摩擦前後の色差値ΔE
ab の測定学振型染色物摩擦堅牢度試験機を用いて、J
IS L 0849に準拠して染色物の摩擦試験を行なっ
た。ついで該試験前後の試料について、日立307型カ
ラ−アナライザ−を用いて可視部反射率を測定し、各波
長の反射率から求められた三色刺激値および
、b 各値を算出し、さらに下記式により求めた。
すなわち、該試験機に摩擦子の先端に湿潤状態の試験片
をかぶせ、試験台上に固定した湿潤状態の試験片上10
cm間を30回/分の速度で5000回往復摩擦させ、
それぞれの試験片について評価を行なった。評価結果は
この試験を3回行ない、その平均値で示す。ΔE ab =〔(ΔL +(Δa +(Δb (1/2) ΔL :摩擦試験前後の 値の差Δa :摩擦試験前後の 値の差Δb :摩擦試験前後の 値の差
【0033】(5)ポリエステル繊維からなる布帛の深
色度(K/S) サンプル布の分光反射率(R)をカラ−アナライザ−
(日立307型、日立製作所製)で測定し、下記式ク−
ベルカ−ムンク(Kubelka-Munk) の式から求めた。こ
の値が大きいほど深色度が大であることを示す。 K/S=(1−R) /2R R:サンプル布の可視部反射率曲線の最大吸収波長位置
における反射率
【0034】実施例1 平均粒径が20mμのシリカゾルを濃度20重量%の水
系シリカゾルとして、それを室温でエチレングリコ−ル
に混合して十分攪拌した。ついで、パ−ヒドロジメタノ
ナフタレンジメタノ−ル〔式(I)で示される化合物に
おいてm=1である化合物〕が2重量%になるようにエ
チレングリコ−ル、テレフタル酸(エチレングリコ−ル
/テレフタル酸=1.2:モル比)を混合し、シリカゾ
ル含有スラリ−を調整した。このスラリ−を加圧下(絶
対圧2.5kg/cm )、温度250℃でエステル化
率が95%になるまでエステル化反応を行ない、続いて
280℃に昇温して重合を行なった。重合触媒として三
酸化アンチモンを使用した。
【0035】シリカゾルの含有量を0.1〜15重量%
まで代えてポリマ−を重合した。これらのポリマ−を用
いて、通常の条件で溶融紡糸・延伸して75デニ−ル/
36フィラメントの延伸糸を得た。得られた延伸糸を経
糸および緯糸として用い、タフタを製織した。その生機
密度は経糸78本/インチ、緯糸72本/インチであっ
た。この生機タフタを炭酸ナトリウム2g/リットル、
アクチノ−ルR−100(松本油脂製)1g/リットル
の混合浴中で100℃、20分間糊抜きした後、テンタ
−にて180℃でプリセットを行ない、糊抜き後の織物
を、4重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液中、95℃
でアルカリ処理を行なった。アルカリ減量率は約10重
量%とした。アルカリ処理を行なった後の織物を以下の
染色条件で染色し、染色物の摩擦堅牢度試験を行なっ
た。結果を表1に示す。
【0036】 染色条件 染料:Kayalon Polyester Black G-SF(日本化薬社製)12%owf 分散均染剤:ト−ホ−ソルトTD(東邦化学社製) 0.5g/リットル pH調整剤:Ultra MT-M2 (大和化学社製) 0.7g/リットル 浴比 1:30 染色温度 135℃ 還元洗浄 ハイドロサルファイド 1g/リットル 水酸化ナトリウム 1g/リットル アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/リットル
【0037】実施例2〜4 実施例1において、パ−ヒドロジメタノナフタレンジメ
タノ−ルの共重合量を表1に示すように代える以外は同
様にしてポリマ−を重合し、ついで溶融紡糸・延伸し
た。得られた延伸糸を経糸、緯糸に用い、実施例1と同
様のタフタを製織し、糊抜き、プリセット、アルカリ処
理を行ない、染色を施した。染色物の摩擦堅牢度試験を
行ない、結果を表1に示す。
【0038】比較例1 ポリマ−として固有粘度0.65のポリエチレンテレフ
タレ−トを用いる以外は実施例1と同様にして溶融紡糸
・延伸を行ない、タフタを製織した。ついで該タフタを
糊抜き、プリセット、アルカリ処理を行ない、染色を施
した。染色物の摩擦堅牢度試験を行ない、結果を表1に
示す。
【0039】比較例2〜3 実施例1において、パ−ヒドロジメタノナフタレンジメ
タノ−ルの共重合量を表1に示すように代える以外は同
様にしてポリマ−を重合し、ついで溶融紡糸・延伸を行
なった。得られた延伸糸を経糸、緯糸に用い、実施例1
と同様のタフタを製織し、糊抜き、プリセット、アルカ
リ処理を行ない、染色を施した。染色物の摩擦堅牢度試
験を行ない、結果を表1に示す。パ−ヒドロジメタノナ
フタレンジメタノ−ルの共重合量が少ない比較例2で
は、繊維表面に形成された微細な凹凸が染色時における
摩擦等で潰れてしまい、摩擦に対する耐久性が低いもの
であった。また、パ−ヒドロジメタノナフタレンジメタ
ノ−ルの共重合量が多い比較例3では、ビス落ちが多
く、紡糸性が不調であった。
【0040】比較例4〜5 実施例2において、シリカゾルの含有量を表1に示すよ
うに代える以外は同様にしてポリマ−を重合し、ついで
溶融紡糸・延伸を行なった。得られた延伸糸を経糸、緯
糸に用い、実施例1と同様のタフタを製織し、糊抜き、
プリセット、アルカリ処理を行ない、染色を施した。染
色物の摩擦堅牢度試験を行ない、結果を表1に示す。シ
リカゾルの含有量が多い比較例4では、紡糸性が悪く、
均斉な繊維が得られなかった。またシリカゾルの含有量
が少ない比較例5ではアルカリ処理により繊維表面に微
細な凹凸が形成されず、染色物の深色性が悪いものであ
った。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】本発明のポリエステル系繊維は、染色物
の深色性が非常に高く、また繊維表面に形成された凹凸
は摩擦に対する耐久性に優れるために、該凹凸に起因す
る深色性が極めて長期にわたり持続する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // D06M 101:32 D06M 5/02 D K (72)発明者 中務 茂樹 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (56)参考文献 特開 平5−17560(JP,A) 特開 平7−70871(JP,A) 特開 昭61−124673(JP,A) 国際公開95/04846(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/92 301 - 309 D01F 6/84 301 - 311 D06M 11/38

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタ
    レ−トであるポリエステルからなり、下記式(I)および
    /または式(II)で示される化合物を該ポリエステルを構
    成するジカルボン酸成分の2〜20モル%含有するポリ
    エステル繊維であって、繊維表面に微細な凹凸を有し、
    かつ摩擦に対する色差値ΔE ab が1.5以下である
    ことを特徴とするポリエステル系繊維。 【化1】 (式中、mは0、1、または2を示す。) 【化2】 (式中、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、n
    は0、1、または2を示す。)
  2. 【請求項2】 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタ
    レ−トであるポリエステルに、下記式(I)および/また
    は式(II)で示される化合物を該ポリエステルを構成する
    ジカルボン酸成分の2〜20モル%、かつ平均粒径が8
    0mμ以下のアルカリ溶出性無機微粒子を0.5〜10
    重量%含有させてなるポリエステルからなる繊維をアル
    カリ処理することを特徴とするポリエステル系繊維の製
    造方法。 【化3】 (mは0、1、または2を示す。) 【化4】 (Rは水素原子または低級アルキル基を示し、nは0、
    1、または2を示す。)
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