JP3401730B2 - 先細繊維、その製造方法およびそれからなる立毛製品 - Google Patents
先細繊維、その製造方法およびそれからなる立毛製品Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は張り、腰のある風合と、
優れた発色性、色の深みを有し、縫製後の縫い目に白ボ
ケが生じない立毛製品を構成する先細繊維に関し、カ−
シ−ト、カ−ペット等のインテリア分野から人工スエ−
ド、衣料分野等にまで幅広い用途を有するポリエステル
系の立毛製品、それを構成する先細繊維に関する。 【0002】 【従来の技術】カットパイル、モケット、ダブルラッセ
ル、ベロア、ベルベットのような立毛製品は多様な外
観、および風合を有し、カ−シ−ト等の車両用内装材;
カ−ペット、植毛布等のインテリア;人工スエ−ド、衣
服等幅広い分野に用途がある。またポリエステル、とく
にポリエチレンテレフタレ−トからなる繊維は衣料用、
産業用あるいは建装用等の分野に幅広く利用されてい
る。 【0003】とくに近年、車両用内装材の用途におい
て、ポリエチレンテレフタレ−ト繊維の優れた耐光性が
活かされ、急速にその使用量が増加している。しかしな
がら、このポリエチレンテレフタレ−ト繊維からなる立
毛製品は、アクリル、ナイロン、レ−ヨン、絹、羊毛等
に比較して肌触りが硬く、光沢、艶等の外観が著しく劣
っている。また染色した場合も立毛製品の立毛部が羊
毛、絹等の天然繊維からなる立毛部に比較して、その表
面が平滑であるためマイルドな光沢が得られにくく、風
合も自然さがなく、色の深みも得られにくい等の欠点が
あった。 【0004】一般に、立毛製品の色を濃く見せるために
はポリエステル繊維に無機微粒子が添加されていないス
−パ−ブライトタイプを用いればよいが、この繊維を立
毛部に用いた立毛製品は発色性は向上するものの、見る
角度によってはギラツキが見られ、高級感が損なわれ、
実用的ではない。このギラツキ感を解消するためにポリ
エステル繊維に酸化チタンを少量添加したセミダルタイ
プの糸が立毛部に用いられているが、発色性が悪くな
り、淡色系に染色した場合に色が白茶けて見え、高級感
に欠ける。また、該立毛部の色調が見る角度によって異
なり、艶、色濃度に変化を生じ、部分的に黒ずんで見え
たり、埃をかぶったように白っぽく見えることが多い。
さらに該立毛品を縫製した場合、縫製部には立毛倒れが
生じ、立毛倒れ部分が白っぽく見える、いわゆる縫い目
白化が生じ、非常に高級感を損なう欠点がある。この一
原因として、ポリエステル繊維の屈折率が大きく、表面
形状が平滑であることによる表面反射率が大きいこと、
ポリエステル繊維側面と断面との屈折率の差が大きいこ
と等による発色性の低下が挙げられる。 【0005】かかる欠点、すなわち、立毛製品の立毛部
に用いたポリエステル繊維の発色性を向上させるために
種々の提案がなされている。まず、ポリエステル繊維を
芯部とし、カチオン可染性ポリエステルを鞘部とした芯
鞘型複合繊維において、鞘部を芯部より濃色に染色する
ことで繊維側面が立毛製品の表面に露出してもそれが目
立たないようにすることが特開昭62−268855号
公報に開示されている。しかしながら、鞘部をカチオン
染料で染色し、濃色化するので耐光性が悪化し用途によ
っては使用できない場合がある。 【0006】また、芯鞘型複合ポリエステル系繊維にお
いて、芯部に鞘部より多く酸化チタンを添加することに
より複合繊維側面の鏡面反射を小さくし、複合繊維断面
の鏡面反射と大差が生じないようにしたパイル布帛が特
開平3−124858号公報に、鞘部にのみ屈折率の高
い無機微粒子を添加させることにより発色性が良好でギ
ラツキ感のないパイル布帛が特開平1−306646号
公報に開示されている。しかしながら、芯部および/ま
たは鞘部に酸化チタン等の屈折率の高い無機微粒子を添
加させることにより、ポリエステル繊維断面の表面反射
率が繊維側面の表面反射率と近似し、該複合繊維を立毛
部とした立毛製品の極端な毛倒れによる白ボケ、縫い目
白化等を解決するにはいたっていない。 【0007】さらに、ポリエステル繊維の表面(側面)
を粗面化することにより、光が該粗面に当たると、その
凹部でジグザグな反射を繰り返している間に、光が繊維
内部に吸収されてしまい、表面反射率が小さくなること
は知られている。この技術を応用して、芯鞘型複合繊維
の鞘部表面を粗面化して、繊維表面の反射率を小さく
し、さらに先端を先細化させることにより、先細部に当
たった光を乱反射させ表面反射率を大きくし、ポリエス
テル系複合繊維の繊維断面と繊維側面の表面反射率の差
を小さくすることも特開平4−214412号公報に開
示されている。該技術により、ポリエステル系複合繊維
の繊維断面と繊維側面との表面反射率の差は小さくな
り、かかる繊維を立毛部とした立毛製品の黒ズミ、白ボ
ケは解消されるが、縫い目白化という極端な毛倒れの場
合の色斑の解消にはいたっていない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、黒ズ
ミ、白ボケ、毛倒れによる縫目白化等の色差、光沢差が
ない立毛製品を得ることにあり、このような立毛製品を
構成し得る先細繊維を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、高級感の
あるウ−ルを立毛部に使用した布帛を目標にしてポリエ
ステル繊維を立毛部に有する立毛製品を鋭意検討した結
果、立毛部には優れた発色性およびマイルドな光沢を有
し、また黒ズミ、毛倒れによる白ボケ、縫い目白化等の
色差、光沢差がなく、さらに腰のある風合を有する立毛
製品を見出だした。 【0010】本発明は、芯部に非アルカリ溶出性の無機
微粒子を0.3〜15重量%、鞘部にアルカリ溶出性の
無機微粒子を0.5〜5重量%含有してなる芯鞘型ポリ
エステル系繊維をアルカリ処理して、先端部をテーパー
状にすることを特徴とする先細繊維の製造方法である。 【0011】本発明における芯鞘型複合ポリエステル系
繊維(以下、複合繊維と略称する)とは、単芯、多芯の
芯鞘断面を持つ複合繊維であり、溶融複合紡糸が可能で
しかも芯部と鞘部の相互接着性のあるポリエステル成分
同志の組み合わせが好ましい。とくに単芯の場合が好ま
しく、単芯の場合は同心であっても偏心であってもよ
い。 【0012】また複合繊維断面、芯部断面は丸断面のみ
ならず、異形断面であってもよく、複合繊維断面と芯部
断面の形状は同じであってもよく、異なっていてもよ
い。複合繊維における芯部と鞘部の複合比は20/80
〜70/30(重量比)、とくに30/70〜60〜4
0の範囲が好ましい。 【0013】複合繊維の芯部および鞘部を構成するポリ
エステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PE
T)、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリナ
フタレンテレフタレ−ト(PEN)等が挙げられ、ポリ
エステル自身の結晶性を阻害しない範囲で少量の共重合
成分、たとえばジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグ
リコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサ
ンジカルボン酸、イソフタル酸、スルホイソフタル酸お
よびそのナトリウム塩、ポリアルキレングリコ−ル等を
共重合せしめることもできる。また、光沢改良剤、難燃
剤、染色改良剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含有されて
いてもよい。 【0014】さらにポリエステルの重合度についてもと
くに制限はなく、通常の繊維に用いられる範囲、たとえ
ば極限粘度が0.6〜0.8程度が好ましく用いられ
る。 【0015】複合繊維の先端部をアルカリ処理により先
細化するためには、鞘部に用いられるポリエステルのア
ルカリ溶解速度が、芯部に用いられるポリエステルのア
ルカリ溶解速度より速いことが好ましいが、後述する添
加無機微粒子の種類、量によってはアルカリ溶解速度が
鞘部、芯部で逆転することがあるので、複合繊維の先端
部がアルカリ処理により先細となるように、ポリエステ
ルの組み合わせを適宜設定することが必要である。た
だ、鞘部と芯部のポリエステルのアルカリ溶解速度差が
あまり大きすぎると、アルカリ処理による分解が選択的
に生じ、その結果良好な先細形状が得られるものの、繊
維全体の繊度が小さくなり、腰の弱い立毛製品しか得ら
れないことがある。なお、アルカリ溶解速度とは、鞘部
および芯部を構成するポリエステル(添加剤を含んでい
る場合にはそれを同じ組成割合で添加する)を各々単独
で、複合繊維と同じ繊度、フィラメント数の糸とし、4
0g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、9
6℃で40分間処理した時の減量率で示される。 【0016】本発明の特徴は、芯露出部以外の複合繊維
の表面(鞘部表面)および先細部の芯露出部の表面にそ
れぞれ異なる大きさの凹部が特定数形成されていること
にある。すなわち、芯露出部以外の複合繊維の表面(鞘
部表面)には径が0.2〜0.7μmの凹部が20〜1
000個/100μm↑2の割合で形成され、先細部の
芯露出部には径が0.5〜5μmの凹部が0.1〜20
個/100μm↑2の割合で形成されている。 【0017】まず、芯露出部以外の複合繊維の表面(鞘
部表面)に形成される凹部について説明する。該凹部の
径とは、繊維軸に対して直角な外周方向に存在する凹部
の最低点と、隣接する凹部の最低点までの平面上の距離
を示し、該距離および数は走査型電子顕微鏡で測定でき
得る。このような凹部は先細化された芯露出部以外の繊
維表面(鞘部表面)に形成されるが、芯露出部以外の繊
維表面全体にわたって形成される必要はなく、少なくと
も芯露出部以外の先細部表面に形成されていることによ
り本発明の目的は達成される。一層の色の深み、マイル
ドな光沢を得るためには、芯露出部以外の繊維表面全体
にわたって凹部が形成されることが好ましい。 【0018】上述の定義による径が0.2μm未満の凹
部しかない場合、または径が0.2〜0.7μmの範囲
の凹部の数が20個/100μm↑2未満の場合には繊
維表面の鏡面反射率の低下が少なく、光沢のギラツキ、
ネトツキ等の改良効果が少ない。また径が0.7μmを
越えると光の拡散を生じ、かえって繊維表面の吸光性を
小さくすることになる。さらに径が0.2〜0.7μm
の範囲の凹部の数が1000個/100μm↑2を越え
ると、繊維表面の粗面構造が小さくなりすぎ、摩耗等に
より粗面構造がくずれ、かえって鏡面的光沢となり、色
がくすみ白っぽくなりやすくなる。繊維表面(鞘部表
面)における光の鏡面反射を小さくし、光の繊維への吸
収を促進させるために、径が0.4〜0.6μmの凹部
が50〜500個/100μm↑2の範囲で存在するこ
とが好ましい。 【0019】次に複合繊維の先細部における芯露出部に
形成される凹部について説明する。芯露出部に形成され
る凹部の径も上述の繊維表面(鞘部表面)に形成される
凹部の径の定義と同じであり、その径、数は走査型電子
顕微鏡にて測定され得る。上述の定義による径が0.5
μm未満の凹部しかない場合、または径が0.5〜5μ
mの範囲の凹部の数が0.1個/100μm↑2未満の
場合には黒ズミが発生し易い。また径が5μmを越える
と、本発明の先細繊維を立毛とした立毛製品の触感が悪
くなる。さらに径が0.5〜5μmの範囲の凹部の数が
20個/100μm↑2を越えても同様に立毛製品の触
感が悪くなる。 【0020】芯露出部における光の吸光性を小さくする
ために、径が0.7〜2μmの凹部が0.1〜10個/
100μm↑2の範囲で存在することが好ましい。 【0021】本発明においては、立毛製品の立毛部に、
先細部の芯露出部と該露出部以外の繊維表面(鞘部表
面)にそれぞれ異なる形状の凹部が形成されている先細
繊維を用いることにより、黒ズミ、白ボケ等はもちろん
のこと、縫い目白化の解消された立毛製品が得られるの
である。 【0022】すなわち、立毛部の繊維表面に入射した光
が、芯露出部以外の繊維表面(鞘部表面)に形成された
微細な凹部により反射光が干渉され打ち消し合い、また
該凹部の周囲をめぐって次々と起こる反射と吸収の繰り
返しによって反射光が低下し、繊維表面(鞘部表面)の
鏡面反射率が小さくなる。一方、芯露出部に形成された
凹部の径は繊維表面(鞘部表面)に形成された凹部の径
より大きく、その数も少ないため、芯露出部に入射した
光は該凹部により拡散されるため、芯露出部の吸光性が
小さくなる。さらに、芯露出部は先細化されているた
め、立毛部の繊維の側面と断面の区別がなくなるのであ
る。 【0023】通常、ポリエステル繊維を立毛とした立毛
製品は、ポリエステル繊維断面の鏡面反射率が小さく、
ポリエステル繊維表面の吸光性が小さいため黒ズミ、白
ボケ、縫い目白化等の問題が生じていたが、本発明によ
りこれらの問題が解消されたのである。 【0024】立毛部における先細化は、立毛の先端部か
ら立毛長の20%以上の範囲が好ましく、毛倒れを防ぐ
上で、立毛長の50%以下の範囲が先細化されているこ
とが好ましい。なお、先細化されている部分とは、立毛
の直径が立毛根元部と比較して実質的に小さい部分、具
体的には根元部直径の90%以下となっている部分を意
味している。 【0025】本発明の立毛製品は立毛長が10mm以
下、とくに5mm以下であることが好ましい。10mm
を越えると本発明による効果は助徐々に減少する。立毛
密度は7×10↑3〜8×10↑6本/cm↑2が適し
ており、さらに望ましくは10↑4〜2×10↑5本/
cm↑2である。立毛密度が高すぎると後述するアルカ
リ処理による立毛部先端の先細加工が均一に行なわれに
くく、一方低すぎると、適正な先細形状となりにくい。 【0026】立毛を構成する先細繊維の先細化されてい
ない根元部が細くなりすぎると、毛倒れが生じ易く、風
合的にも腰が弱くなる。そのため立毛根元部の繊度は2
〜6デニ−ルの範囲が好ましい。従来、3デニ−ル以上
になると立毛部がチクチクして不快感を与えていたが、
本発明によるとチクチク感も解消されるため、繊度の大
きい繊維を立毛部として使用でき、毛倒れ性が改良され
る。本発明の立毛製品において、立毛部を構成する繊維
の全てが上述した先細繊維である必要はなく、立毛部の
一部、たとえば立毛を構成する繊維本数の30%以上が
上述の先細繊維であればよく、とくに50%以上が先細
繊維であることが好ましい。 【0027】本発明の複合繊維を先細化し、その表面に
特定形状の凹部を形成させるための一方法として以下の
方法が挙げられる。芯部に非アルカリ溶出性の無機微粒
子が0.3〜15重量%含有され、鞘部にアルカリ溶出
性の無機微粒子が0.5〜5重量%含有された芯鞘型複
合ポリエステル系繊維をアルカリ処理することにより、
少なくとも一方の先端部をテ−パ−状に先細化し、先細
部の芯露出部および芯露出部以外の繊維表面に特定形状
の凹部を特定数形成させることができる。 【0028】芯部に含有される非アルカリ溶出無機微粒
子としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、
リトポン、硫酸バリウム等が挙げられるが、この中でも
ポリエステル中に均一に分散しやすいこと、ポリエステ
ルより屈折率が高いことから酸化チタンが好ましい。該
微粒子の含有量が0.3重量%未満の場合、本発明の先
細繊維の芯露出部に形成される凹部の数が少なくなり、
アルカリ減量加工条件を調整しても所望の凹部形状は得
られない。一方該微粒子の含有量が15重量%を越える
と、紡糸時のノズル詰まりや断糸が発生し、製糸性が著
しく阻害される。非アルカリ溶出性無機微粒子の平均粒
径はとくに制約されないが、先細繊維の芯露出部に径が
0.5〜5μmの凹部が0.1〜20個/100μm↑
2の割合で形成されるためには、1.0μm以下、とく
に0.5μm以下であることが好ましい。 【0029】鞘部に含有されるアルカリ溶出性無機微粒
子としてはシリカ、炭酸カルシウム、カオリン等が挙げ
られるが、この中でも屈折率がポリエステルより小さい
コロイダルシリカが好ましい。該微粒子の含有量が0.
5重量%未満の場合、本発明の先細繊維の芯露出部以外
の繊維表面に形成される凹部の数が少なくなり、本発明
の効果が奏されにくい。一方該微粒子の含有量が5重量
%を越えると、凹部の個数は多くなるものの、粒子の凝
集塊が発生し易くなり、製糸の均斉性が阻害され易い。
アルカリ溶出性無機微粒子の平均粒径はとくに制約され
ないが、先細繊維の芯露出部以外の繊維表面に径が0.
2〜0.7μmの凹部を20〜1000個/100μm
↑2の割合で形成されるためには、0.2μm以下、と
くに0.1μm以下であることが好ましい。 【0030】無機微粒子の粒径は光学的方法、レ−ザ−
散乱法により測定した値である。 【0031】アルカリ処理条件としては、通常のアルカ
リ減量加工に用いられる条件でさしつかえないが、増粘
剤を含む加水分解剤液を使用することが、先細化の均一
性の点から好ましい。加水分解剤としては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物が挙げら
れる。場合によってはラウリルベンジルアンモニウムク
ロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等
の加水分解促進剤を併用してもよい。 【0032】加水分解剤に含まれる増粘剤としてはデン
プン、天然ガム、海藻類(アルギン酸ナトリウム)等の
天然高分子糊剤;ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル
酸ナトリウム、スチレン・マレイン酸共重合物等の合成
高分子糊剤などが挙げられるが、とくに限定されるもの
ではなく、糊剤が複合繊維に対して非加水分解性で、か
つ加水分解剤液中に均一に分散されるものであればよ
い。増粘剤を含有した加水分解剤液の粘度は、加水分解
剤液の加水分解性および毛管現象を抑制し、目的とする
良好な先細形状を得るために、室温条件下において10
0〜2000cps.の範囲であることが好ましい。 【0033】また、立毛製品の立毛部を構成する複合繊
維の先細化、凹部の形成のためのアルカリ処理も、複合
繊維のアルカリ処理と同様にして施される。パイル編、
パイル織、モケット、ダブルラッセル、ベロア、ベルベ
ットまたはタフティング、電気植毛等の方法により、前
述の複合繊維を立毛部として構成した立毛製品の立毛先
端部に増粘剤を含む加水分解剤液をパディング法、グラ
ビアコ−ト法、キスコ−ト法、ナイフコ−ト法、プリン
ト法、ロ−タリ−スクリ−ン法、捺染機を用いる方法等
で塗布する。これらの方法のうち、とくにパディング
法、たとえば立毛製品を、加水分解剤液面上を立毛部の
みが浸漬されるように立毛製品の立毛面を下にして加水
分解剤液上を通過させたのち、マングルで絞り加水分解
剤液を除去する方法を用いると、立毛根元部まで特定形
状の凹部が形成されるので好ましい。マングルで絞る際
のピックアップ率は、立毛製品重量に対して30〜70
重量%、とくに40〜60重量%の加水分解剤液が含有
されるように絞液することが好ましい。また、このパデ
ィング法により付与する際の加水分解剤液の粘度は、と
くに150〜1000cps.の範囲が好ましく、加水
分解剤として水酸化ナトリウムを用いる場合には、アル
カリ濃度が1〜30重量%の範囲であることが好まし
い。 【0034】これらいずれかの方法によって立毛部に加
水分解剤液が塗布された立毛製品の加熱処理法としては
熱風、赤外線ヒ−タ−等の乾熱処理、スチ−ム等の湿熱
処理などの技術が適用できるが、乾熱処理の場合、加水
分解剤液の乾固が必要以上に早く起こって十分な処理効
果が得られない場合もあるので、立毛部の繊維の組成、
種類、処理剤の内容、その他の処理条件などから加熱処
理方式や加熱温度および処理時間等は適宜選択すること
が好ましい。加熱処理条件としては、処理温度が80〜
180℃、処理時間が5〜120分の範囲内で湿熱処理
を施すことが好ましい。 【0035】本発明は、前述のように、立毛部が芯鞘型
複合ポリエステル系繊維からなる立毛製品の立毛先端部
に加水分解剤を含む粘性の液体を付与した後、加熱処理
によって立毛先端を先細形状とするとともに、先細部の
芯露出部および該芯露出部以外の繊維表面に特定形状で
特定数の凹部を形成させることにより、ソフトな風合を
有する立毛製品が得られる。さらに該立毛製品の染色品
は、繊維表面に入射した光が、芯露出部以外の繊維表面
(鞘部表面)に形成された微細な凹部により反射光が低
下し、繊維表面(鞘部表面)の鏡面反射率が小さくな
る。また、芯露出部に入射した光は芯露出部に形成され
た凹部により拡散されるため、芯露出部の吸光性が小さ
くなり、さらに、芯露出部が先細化されているため、立
毛部の繊維の側面と断面の区別がなくなり、従来のポリ
エステル系繊維からなる立毛製品の欠点であった光沢差
・色差に起因する黒ズミ、白ボケ、とくに極端な毛倒れ
に起因する縫い目白化等の問題が解消されるのである。 【0036】 【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。な
お、実施例における測定値は以下の方法に従って測定し
た値である。 【0037】 (1)ポリエステルの極限粘度(dl/g) 試料をフェノ−ル/テトラクロロエタン(等重量比)の
混合溶媒に溶解し、30℃で測定した値である。 (2)凹部径および数 3本の試料を、走査型電子顕微鏡を用いて5000倍以
上の倍率で観察し、1本の試料について2箇所観察し
た。凹部の数はその平均を示す。 【0038】(3)立毛製品の評価 下記の点について官能評価した。 風合 ◎:肌に滑らかな触感でありかつソフトな風
合である。 ○:滑らかな触感を有する。 △:少しチクチクした触感を有する。 ×:チクチクした触感を有し、ざらついている。 外観 ◎:適度な光沢と落ち着いた外観を有する。 ○:マイルドな光沢を有する。 △:白茶けた外観である。 ×:ギラツキ感を有する。 黒ズミ ◎:全く黒ズミが見られない。 ○:黒ズミが認められない。 △:直射日光下で見ると黒ずんで見える。 ×:布帛全体に黒ズミが認められる。 白ボケ ◎:全く白ボケが見られない。 ○:折り曲げても白ボケが見えにくい。 △:折り曲げて浅い角度から見ると、白ボケが目立つ。 ×:布帛全体に白ボケが見える。 縫い目白化◎:全く縫い目白化が見られない。 ○:縫い目白化が見えにくい。 △:紺系では縫い目白化が目立たないが、ベ−ジュ系で
は目立つ。 ×:紺系およびベ−ジュ系共に縫い目白化が目立つ。 【0039】実施例1 屈折率が2.5で、平均粒径が0.2μmおよび0.0
5μmの酸化チタンを表1に示す割合で含有する極限粘
度が0.65のポリエチレンテレフタレ−トまたは極限
粘度が0.80のポリブチレンテレフタレ−トを芯部と
し、屈折率が1.45で、平均粒径が0.03μmのコ
ロイダルシリカを表1に示す割合で含有する極限粘度が
0.68のポリエチレンテレフタレ−トを鞘部とし、芯
部および鞘部の複合比が1:2(重量比)である複合繊
維を紡糸し、速度1000m/分で巻き取った。巻き取
り後、75℃で3.2倍に延伸し、緊張下で130℃で
熱処理を行ない、200デニ−ル/72フィラメントの
同心円状芯鞘型複合繊維のを延伸糸を得た。 【0040】この延伸糸を用いてダブルラッセル編地を
作成した(立毛密度:18000本/cm↑2)。グラ
ンド糸としてポリエステル糸(75デニ−ル/24フィ
ラメント)を使用した。この編地をシャ−リングにより
パイル長が3mmになるようにカットし、ピンテンタ−
にて180℃で乾熱によりプレセット加工を施した。つ
いで、得られた編地の立毛部に、増粘剤としてアルギン
酸ソ−ダ3重量%が含有された水酸化ナトリウム水溶液
(濃度:28重量%、B型粘度計にて20℃、65%
R.H.の条件で測定した粘度:12000cps.)
をロ−タリ−スクリ−ンにて塗布した後、H.T.スチ
−マ−にて処理温度150℃、処理時間5〜15分の温
熱蒸気処理を施した。 【0041】処理済の編地を紺系統、ベ−ジュ系統の2
種類の分散染料を用いてオ−バ−マイヤ−染色機にて染
色した。染色したサンプルの立毛部の先端部形状を光学
顕微鏡により観察したところ、立毛長の25〜30%が
テ−パ−状に先細化されていた。先細部の芯露出部およ
び芯露出部以外の繊維表面を走査型電子顕微鏡で観察し
たところ、表1に示す径および数の凹部が観察された。 【0042】テ−パ−状でなだらかな先細形状を有する
サンプル2〜6のパイル糸は、タッチがソフトであるに
も拘らず、張り、腰があり、視覚的に深みのある発色性
を呈し、黒ズミ、白ボケおよび縫い目白化はほとんど目
立たなかった。サンプル1のパイル糸は、芯露出部に形
成される凹部の数が少ないため、縫い目白化が紺系、ベ
−ジュ系共に生じていた。 【0043】 【表1】 【0044】比較例1〜8 芯部に含有される無機微粒子または/および鞘部に含有
される無機微粒子の種類、含有量を表2のように変える
以外は実施例1と全く同様にしてダブルラッセル編地を
作成した。ついで増粘剤を含有する水酸化ナトリウム水
溶液で該編地の立毛部の先細化処理を処理条件を変えて
施し、紺系統、ベ−ジュ系統の染色を行なった。染色し
た編地の評価を行なった。結果を表2および表3に示
す。 【0045】 【表2】 【0046】 【表3】【0047】比較例1のダブルラッセル編地は、芯露出
部にアルカリ処理による少量の細かい凹部が形成されて
いるため、汚れは付着しにくかったが、黒ズミ、白ボ
ケ、縫い目白化がとくにベ−ジュ系で目立っていた。比
較例2のダブルラッセル編地は、鞘部表面に少量の大き
な凹部しか形成されていないため、染色後の発色性は深
みのないものであり、外観が劣り、また縫い目白化も紺
系、ベ−ジュ系ともに目立っていた。比較例3および比
較例4のダブルラッセル編地は、鞘部表面に凹部がほと
んど形成されていないため、外観が劣り、白ボケ、縫い
目白化が目立っていた。比較例5のダブルラッセル編地
は、鞘部表面に形成される凹部の径が大きすぎるため、
吸光性が小さく、外観が非常に劣っていた。比較例6お
よび比較例7のダブルラッセル編地は、本発明で規定さ
れる径、数の凹部が存在しないため、黒ズミ、白ボケ、
縫い目白化の解消にはいたっていない。比較例8のダブ
ルラッセル編地は、芯露出部と鞘部に形成される凹部の
径と数が実施例で得られる編地と逆転しており、風合が
劣り、黒ズミ、白ボケ、縫い目白化の改良にはいたって
いない。 【0048】 【発明の効果】本発明の先細繊維は、芯成分および鞘成
分がともにポリエステリ系ポリマ−からなる芯鞘型複合
繊維であって、少なくとも一方の先端部がテ−パ−状に
先細化されており、先細化された部分の芯露出部および
鞘成分の表面にはそれぞれ異なる径の凹部が形成されて
おり、該繊維を立毛とする立毛製品は、腰のある風合と
優れた発色性、色の深みを有し、黒ズミ、白ボケといっ
た光沢差、色差なく、そのうえ縫い目白化が生じないの
で、カ−シ−ト等に好適である。
優れた発色性、色の深みを有し、縫製後の縫い目に白ボ
ケが生じない立毛製品を構成する先細繊維に関し、カ−
シ−ト、カ−ペット等のインテリア分野から人工スエ−
ド、衣料分野等にまで幅広い用途を有するポリエステル
系の立毛製品、それを構成する先細繊維に関する。 【0002】 【従来の技術】カットパイル、モケット、ダブルラッセ
ル、ベロア、ベルベットのような立毛製品は多様な外
観、および風合を有し、カ−シ−ト等の車両用内装材;
カ−ペット、植毛布等のインテリア;人工スエ−ド、衣
服等幅広い分野に用途がある。またポリエステル、とく
にポリエチレンテレフタレ−トからなる繊維は衣料用、
産業用あるいは建装用等の分野に幅広く利用されてい
る。 【0003】とくに近年、車両用内装材の用途におい
て、ポリエチレンテレフタレ−ト繊維の優れた耐光性が
活かされ、急速にその使用量が増加している。しかしな
がら、このポリエチレンテレフタレ−ト繊維からなる立
毛製品は、アクリル、ナイロン、レ−ヨン、絹、羊毛等
に比較して肌触りが硬く、光沢、艶等の外観が著しく劣
っている。また染色した場合も立毛製品の立毛部が羊
毛、絹等の天然繊維からなる立毛部に比較して、その表
面が平滑であるためマイルドな光沢が得られにくく、風
合も自然さがなく、色の深みも得られにくい等の欠点が
あった。 【0004】一般に、立毛製品の色を濃く見せるために
はポリエステル繊維に無機微粒子が添加されていないス
−パ−ブライトタイプを用いればよいが、この繊維を立
毛部に用いた立毛製品は発色性は向上するものの、見る
角度によってはギラツキが見られ、高級感が損なわれ、
実用的ではない。このギラツキ感を解消するためにポリ
エステル繊維に酸化チタンを少量添加したセミダルタイ
プの糸が立毛部に用いられているが、発色性が悪くな
り、淡色系に染色した場合に色が白茶けて見え、高級感
に欠ける。また、該立毛部の色調が見る角度によって異
なり、艶、色濃度に変化を生じ、部分的に黒ずんで見え
たり、埃をかぶったように白っぽく見えることが多い。
さらに該立毛品を縫製した場合、縫製部には立毛倒れが
生じ、立毛倒れ部分が白っぽく見える、いわゆる縫い目
白化が生じ、非常に高級感を損なう欠点がある。この一
原因として、ポリエステル繊維の屈折率が大きく、表面
形状が平滑であることによる表面反射率が大きいこと、
ポリエステル繊維側面と断面との屈折率の差が大きいこ
と等による発色性の低下が挙げられる。 【0005】かかる欠点、すなわち、立毛製品の立毛部
に用いたポリエステル繊維の発色性を向上させるために
種々の提案がなされている。まず、ポリエステル繊維を
芯部とし、カチオン可染性ポリエステルを鞘部とした芯
鞘型複合繊維において、鞘部を芯部より濃色に染色する
ことで繊維側面が立毛製品の表面に露出してもそれが目
立たないようにすることが特開昭62−268855号
公報に開示されている。しかしながら、鞘部をカチオン
染料で染色し、濃色化するので耐光性が悪化し用途によ
っては使用できない場合がある。 【0006】また、芯鞘型複合ポリエステル系繊維にお
いて、芯部に鞘部より多く酸化チタンを添加することに
より複合繊維側面の鏡面反射を小さくし、複合繊維断面
の鏡面反射と大差が生じないようにしたパイル布帛が特
開平3−124858号公報に、鞘部にのみ屈折率の高
い無機微粒子を添加させることにより発色性が良好でギ
ラツキ感のないパイル布帛が特開平1−306646号
公報に開示されている。しかしながら、芯部および/ま
たは鞘部に酸化チタン等の屈折率の高い無機微粒子を添
加させることにより、ポリエステル繊維断面の表面反射
率が繊維側面の表面反射率と近似し、該複合繊維を立毛
部とした立毛製品の極端な毛倒れによる白ボケ、縫い目
白化等を解決するにはいたっていない。 【0007】さらに、ポリエステル繊維の表面(側面)
を粗面化することにより、光が該粗面に当たると、その
凹部でジグザグな反射を繰り返している間に、光が繊維
内部に吸収されてしまい、表面反射率が小さくなること
は知られている。この技術を応用して、芯鞘型複合繊維
の鞘部表面を粗面化して、繊維表面の反射率を小さく
し、さらに先端を先細化させることにより、先細部に当
たった光を乱反射させ表面反射率を大きくし、ポリエス
テル系複合繊維の繊維断面と繊維側面の表面反射率の差
を小さくすることも特開平4−214412号公報に開
示されている。該技術により、ポリエステル系複合繊維
の繊維断面と繊維側面との表面反射率の差は小さくな
り、かかる繊維を立毛部とした立毛製品の黒ズミ、白ボ
ケは解消されるが、縫い目白化という極端な毛倒れの場
合の色斑の解消にはいたっていない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、黒ズ
ミ、白ボケ、毛倒れによる縫目白化等の色差、光沢差が
ない立毛製品を得ることにあり、このような立毛製品を
構成し得る先細繊維を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、高級感の
あるウ−ルを立毛部に使用した布帛を目標にしてポリエ
ステル繊維を立毛部に有する立毛製品を鋭意検討した結
果、立毛部には優れた発色性およびマイルドな光沢を有
し、また黒ズミ、毛倒れによる白ボケ、縫い目白化等の
色差、光沢差がなく、さらに腰のある風合を有する立毛
製品を見出だした。 【0010】本発明は、芯部に非アルカリ溶出性の無機
微粒子を0.3〜15重量%、鞘部にアルカリ溶出性の
無機微粒子を0.5〜5重量%含有してなる芯鞘型ポリ
エステル系繊維をアルカリ処理して、先端部をテーパー
状にすることを特徴とする先細繊維の製造方法である。 【0011】本発明における芯鞘型複合ポリエステル系
繊維(以下、複合繊維と略称する)とは、単芯、多芯の
芯鞘断面を持つ複合繊維であり、溶融複合紡糸が可能で
しかも芯部と鞘部の相互接着性のあるポリエステル成分
同志の組み合わせが好ましい。とくに単芯の場合が好ま
しく、単芯の場合は同心であっても偏心であってもよ
い。 【0012】また複合繊維断面、芯部断面は丸断面のみ
ならず、異形断面であってもよく、複合繊維断面と芯部
断面の形状は同じであってもよく、異なっていてもよ
い。複合繊維における芯部と鞘部の複合比は20/80
〜70/30(重量比)、とくに30/70〜60〜4
0の範囲が好ましい。 【0013】複合繊維の芯部および鞘部を構成するポリ
エステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PE
T)、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリナ
フタレンテレフタレ−ト(PEN)等が挙げられ、ポリ
エステル自身の結晶性を阻害しない範囲で少量の共重合
成分、たとえばジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグ
リコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサ
ンジカルボン酸、イソフタル酸、スルホイソフタル酸お
よびそのナトリウム塩、ポリアルキレングリコ−ル等を
共重合せしめることもできる。また、光沢改良剤、難燃
剤、染色改良剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含有されて
いてもよい。 【0014】さらにポリエステルの重合度についてもと
くに制限はなく、通常の繊維に用いられる範囲、たとえ
ば極限粘度が0.6〜0.8程度が好ましく用いられ
る。 【0015】複合繊維の先端部をアルカリ処理により先
細化するためには、鞘部に用いられるポリエステルのア
ルカリ溶解速度が、芯部に用いられるポリエステルのア
ルカリ溶解速度より速いことが好ましいが、後述する添
加無機微粒子の種類、量によってはアルカリ溶解速度が
鞘部、芯部で逆転することがあるので、複合繊維の先端
部がアルカリ処理により先細となるように、ポリエステ
ルの組み合わせを適宜設定することが必要である。た
だ、鞘部と芯部のポリエステルのアルカリ溶解速度差が
あまり大きすぎると、アルカリ処理による分解が選択的
に生じ、その結果良好な先細形状が得られるものの、繊
維全体の繊度が小さくなり、腰の弱い立毛製品しか得ら
れないことがある。なお、アルカリ溶解速度とは、鞘部
および芯部を構成するポリエステル(添加剤を含んでい
る場合にはそれを同じ組成割合で添加する)を各々単独
で、複合繊維と同じ繊度、フィラメント数の糸とし、4
0g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、9
6℃で40分間処理した時の減量率で示される。 【0016】本発明の特徴は、芯露出部以外の複合繊維
の表面(鞘部表面)および先細部の芯露出部の表面にそ
れぞれ異なる大きさの凹部が特定数形成されていること
にある。すなわち、芯露出部以外の複合繊維の表面(鞘
部表面)には径が0.2〜0.7μmの凹部が20〜1
000個/100μm↑2の割合で形成され、先細部の
芯露出部には径が0.5〜5μmの凹部が0.1〜20
個/100μm↑2の割合で形成されている。 【0017】まず、芯露出部以外の複合繊維の表面(鞘
部表面)に形成される凹部について説明する。該凹部の
径とは、繊維軸に対して直角な外周方向に存在する凹部
の最低点と、隣接する凹部の最低点までの平面上の距離
を示し、該距離および数は走査型電子顕微鏡で測定でき
得る。このような凹部は先細化された芯露出部以外の繊
維表面(鞘部表面)に形成されるが、芯露出部以外の繊
維表面全体にわたって形成される必要はなく、少なくと
も芯露出部以外の先細部表面に形成されていることによ
り本発明の目的は達成される。一層の色の深み、マイル
ドな光沢を得るためには、芯露出部以外の繊維表面全体
にわたって凹部が形成されることが好ましい。 【0018】上述の定義による径が0.2μm未満の凹
部しかない場合、または径が0.2〜0.7μmの範囲
の凹部の数が20個/100μm↑2未満の場合には繊
維表面の鏡面反射率の低下が少なく、光沢のギラツキ、
ネトツキ等の改良効果が少ない。また径が0.7μmを
越えると光の拡散を生じ、かえって繊維表面の吸光性を
小さくすることになる。さらに径が0.2〜0.7μm
の範囲の凹部の数が1000個/100μm↑2を越え
ると、繊維表面の粗面構造が小さくなりすぎ、摩耗等に
より粗面構造がくずれ、かえって鏡面的光沢となり、色
がくすみ白っぽくなりやすくなる。繊維表面(鞘部表
面)における光の鏡面反射を小さくし、光の繊維への吸
収を促進させるために、径が0.4〜0.6μmの凹部
が50〜500個/100μm↑2の範囲で存在するこ
とが好ましい。 【0019】次に複合繊維の先細部における芯露出部に
形成される凹部について説明する。芯露出部に形成され
る凹部の径も上述の繊維表面(鞘部表面)に形成される
凹部の径の定義と同じであり、その径、数は走査型電子
顕微鏡にて測定され得る。上述の定義による径が0.5
μm未満の凹部しかない場合、または径が0.5〜5μ
mの範囲の凹部の数が0.1個/100μm↑2未満の
場合には黒ズミが発生し易い。また径が5μmを越える
と、本発明の先細繊維を立毛とした立毛製品の触感が悪
くなる。さらに径が0.5〜5μmの範囲の凹部の数が
20個/100μm↑2を越えても同様に立毛製品の触
感が悪くなる。 【0020】芯露出部における光の吸光性を小さくする
ために、径が0.7〜2μmの凹部が0.1〜10個/
100μm↑2の範囲で存在することが好ましい。 【0021】本発明においては、立毛製品の立毛部に、
先細部の芯露出部と該露出部以外の繊維表面(鞘部表
面)にそれぞれ異なる形状の凹部が形成されている先細
繊維を用いることにより、黒ズミ、白ボケ等はもちろん
のこと、縫い目白化の解消された立毛製品が得られるの
である。 【0022】すなわち、立毛部の繊維表面に入射した光
が、芯露出部以外の繊維表面(鞘部表面)に形成された
微細な凹部により反射光が干渉され打ち消し合い、また
該凹部の周囲をめぐって次々と起こる反射と吸収の繰り
返しによって反射光が低下し、繊維表面(鞘部表面)の
鏡面反射率が小さくなる。一方、芯露出部に形成された
凹部の径は繊維表面(鞘部表面)に形成された凹部の径
より大きく、その数も少ないため、芯露出部に入射した
光は該凹部により拡散されるため、芯露出部の吸光性が
小さくなる。さらに、芯露出部は先細化されているた
め、立毛部の繊維の側面と断面の区別がなくなるのであ
る。 【0023】通常、ポリエステル繊維を立毛とした立毛
製品は、ポリエステル繊維断面の鏡面反射率が小さく、
ポリエステル繊維表面の吸光性が小さいため黒ズミ、白
ボケ、縫い目白化等の問題が生じていたが、本発明によ
りこれらの問題が解消されたのである。 【0024】立毛部における先細化は、立毛の先端部か
ら立毛長の20%以上の範囲が好ましく、毛倒れを防ぐ
上で、立毛長の50%以下の範囲が先細化されているこ
とが好ましい。なお、先細化されている部分とは、立毛
の直径が立毛根元部と比較して実質的に小さい部分、具
体的には根元部直径の90%以下となっている部分を意
味している。 【0025】本発明の立毛製品は立毛長が10mm以
下、とくに5mm以下であることが好ましい。10mm
を越えると本発明による効果は助徐々に減少する。立毛
密度は7×10↑3〜8×10↑6本/cm↑2が適し
ており、さらに望ましくは10↑4〜2×10↑5本/
cm↑2である。立毛密度が高すぎると後述するアルカ
リ処理による立毛部先端の先細加工が均一に行なわれに
くく、一方低すぎると、適正な先細形状となりにくい。 【0026】立毛を構成する先細繊維の先細化されてい
ない根元部が細くなりすぎると、毛倒れが生じ易く、風
合的にも腰が弱くなる。そのため立毛根元部の繊度は2
〜6デニ−ルの範囲が好ましい。従来、3デニ−ル以上
になると立毛部がチクチクして不快感を与えていたが、
本発明によるとチクチク感も解消されるため、繊度の大
きい繊維を立毛部として使用でき、毛倒れ性が改良され
る。本発明の立毛製品において、立毛部を構成する繊維
の全てが上述した先細繊維である必要はなく、立毛部の
一部、たとえば立毛を構成する繊維本数の30%以上が
上述の先細繊維であればよく、とくに50%以上が先細
繊維であることが好ましい。 【0027】本発明の複合繊維を先細化し、その表面に
特定形状の凹部を形成させるための一方法として以下の
方法が挙げられる。芯部に非アルカリ溶出性の無機微粒
子が0.3〜15重量%含有され、鞘部にアルカリ溶出
性の無機微粒子が0.5〜5重量%含有された芯鞘型複
合ポリエステル系繊維をアルカリ処理することにより、
少なくとも一方の先端部をテ−パ−状に先細化し、先細
部の芯露出部および芯露出部以外の繊維表面に特定形状
の凹部を特定数形成させることができる。 【0028】芯部に含有される非アルカリ溶出無機微粒
子としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、
リトポン、硫酸バリウム等が挙げられるが、この中でも
ポリエステル中に均一に分散しやすいこと、ポリエステ
ルより屈折率が高いことから酸化チタンが好ましい。該
微粒子の含有量が0.3重量%未満の場合、本発明の先
細繊維の芯露出部に形成される凹部の数が少なくなり、
アルカリ減量加工条件を調整しても所望の凹部形状は得
られない。一方該微粒子の含有量が15重量%を越える
と、紡糸時のノズル詰まりや断糸が発生し、製糸性が著
しく阻害される。非アルカリ溶出性無機微粒子の平均粒
径はとくに制約されないが、先細繊維の芯露出部に径が
0.5〜5μmの凹部が0.1〜20個/100μm↑
2の割合で形成されるためには、1.0μm以下、とく
に0.5μm以下であることが好ましい。 【0029】鞘部に含有されるアルカリ溶出性無機微粒
子としてはシリカ、炭酸カルシウム、カオリン等が挙げ
られるが、この中でも屈折率がポリエステルより小さい
コロイダルシリカが好ましい。該微粒子の含有量が0.
5重量%未満の場合、本発明の先細繊維の芯露出部以外
の繊維表面に形成される凹部の数が少なくなり、本発明
の効果が奏されにくい。一方該微粒子の含有量が5重量
%を越えると、凹部の個数は多くなるものの、粒子の凝
集塊が発生し易くなり、製糸の均斉性が阻害され易い。
アルカリ溶出性無機微粒子の平均粒径はとくに制約され
ないが、先細繊維の芯露出部以外の繊維表面に径が0.
2〜0.7μmの凹部を20〜1000個/100μm
↑2の割合で形成されるためには、0.2μm以下、と
くに0.1μm以下であることが好ましい。 【0030】無機微粒子の粒径は光学的方法、レ−ザ−
散乱法により測定した値である。 【0031】アルカリ処理条件としては、通常のアルカ
リ減量加工に用いられる条件でさしつかえないが、増粘
剤を含む加水分解剤液を使用することが、先細化の均一
性の点から好ましい。加水分解剤としては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物が挙げら
れる。場合によってはラウリルベンジルアンモニウムク
ロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等
の加水分解促進剤を併用してもよい。 【0032】加水分解剤に含まれる増粘剤としてはデン
プン、天然ガム、海藻類(アルギン酸ナトリウム)等の
天然高分子糊剤;ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル
酸ナトリウム、スチレン・マレイン酸共重合物等の合成
高分子糊剤などが挙げられるが、とくに限定されるもの
ではなく、糊剤が複合繊維に対して非加水分解性で、か
つ加水分解剤液中に均一に分散されるものであればよ
い。増粘剤を含有した加水分解剤液の粘度は、加水分解
剤液の加水分解性および毛管現象を抑制し、目的とする
良好な先細形状を得るために、室温条件下において10
0〜2000cps.の範囲であることが好ましい。 【0033】また、立毛製品の立毛部を構成する複合繊
維の先細化、凹部の形成のためのアルカリ処理も、複合
繊維のアルカリ処理と同様にして施される。パイル編、
パイル織、モケット、ダブルラッセル、ベロア、ベルベ
ットまたはタフティング、電気植毛等の方法により、前
述の複合繊維を立毛部として構成した立毛製品の立毛先
端部に増粘剤を含む加水分解剤液をパディング法、グラ
ビアコ−ト法、キスコ−ト法、ナイフコ−ト法、プリン
ト法、ロ−タリ−スクリ−ン法、捺染機を用いる方法等
で塗布する。これらの方法のうち、とくにパディング
法、たとえば立毛製品を、加水分解剤液面上を立毛部の
みが浸漬されるように立毛製品の立毛面を下にして加水
分解剤液上を通過させたのち、マングルで絞り加水分解
剤液を除去する方法を用いると、立毛根元部まで特定形
状の凹部が形成されるので好ましい。マングルで絞る際
のピックアップ率は、立毛製品重量に対して30〜70
重量%、とくに40〜60重量%の加水分解剤液が含有
されるように絞液することが好ましい。また、このパデ
ィング法により付与する際の加水分解剤液の粘度は、と
くに150〜1000cps.の範囲が好ましく、加水
分解剤として水酸化ナトリウムを用いる場合には、アル
カリ濃度が1〜30重量%の範囲であることが好まし
い。 【0034】これらいずれかの方法によって立毛部に加
水分解剤液が塗布された立毛製品の加熱処理法としては
熱風、赤外線ヒ−タ−等の乾熱処理、スチ−ム等の湿熱
処理などの技術が適用できるが、乾熱処理の場合、加水
分解剤液の乾固が必要以上に早く起こって十分な処理効
果が得られない場合もあるので、立毛部の繊維の組成、
種類、処理剤の内容、その他の処理条件などから加熱処
理方式や加熱温度および処理時間等は適宜選択すること
が好ましい。加熱処理条件としては、処理温度が80〜
180℃、処理時間が5〜120分の範囲内で湿熱処理
を施すことが好ましい。 【0035】本発明は、前述のように、立毛部が芯鞘型
複合ポリエステル系繊維からなる立毛製品の立毛先端部
に加水分解剤を含む粘性の液体を付与した後、加熱処理
によって立毛先端を先細形状とするとともに、先細部の
芯露出部および該芯露出部以外の繊維表面に特定形状で
特定数の凹部を形成させることにより、ソフトな風合を
有する立毛製品が得られる。さらに該立毛製品の染色品
は、繊維表面に入射した光が、芯露出部以外の繊維表面
(鞘部表面)に形成された微細な凹部により反射光が低
下し、繊維表面(鞘部表面)の鏡面反射率が小さくな
る。また、芯露出部に入射した光は芯露出部に形成され
た凹部により拡散されるため、芯露出部の吸光性が小さ
くなり、さらに、芯露出部が先細化されているため、立
毛部の繊維の側面と断面の区別がなくなり、従来のポリ
エステル系繊維からなる立毛製品の欠点であった光沢差
・色差に起因する黒ズミ、白ボケ、とくに極端な毛倒れ
に起因する縫い目白化等の問題が解消されるのである。 【0036】 【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。な
お、実施例における測定値は以下の方法に従って測定し
た値である。 【0037】 (1)ポリエステルの極限粘度(dl/g) 試料をフェノ−ル/テトラクロロエタン(等重量比)の
混合溶媒に溶解し、30℃で測定した値である。 (2)凹部径および数 3本の試料を、走査型電子顕微鏡を用いて5000倍以
上の倍率で観察し、1本の試料について2箇所観察し
た。凹部の数はその平均を示す。 【0038】(3)立毛製品の評価 下記の点について官能評価した。 風合 ◎:肌に滑らかな触感でありかつソフトな風
合である。 ○:滑らかな触感を有する。 △:少しチクチクした触感を有する。 ×:チクチクした触感を有し、ざらついている。 外観 ◎:適度な光沢と落ち着いた外観を有する。 ○:マイルドな光沢を有する。 △:白茶けた外観である。 ×:ギラツキ感を有する。 黒ズミ ◎:全く黒ズミが見られない。 ○:黒ズミが認められない。 △:直射日光下で見ると黒ずんで見える。 ×:布帛全体に黒ズミが認められる。 白ボケ ◎:全く白ボケが見られない。 ○:折り曲げても白ボケが見えにくい。 △:折り曲げて浅い角度から見ると、白ボケが目立つ。 ×:布帛全体に白ボケが見える。 縫い目白化◎:全く縫い目白化が見られない。 ○:縫い目白化が見えにくい。 △:紺系では縫い目白化が目立たないが、ベ−ジュ系で
は目立つ。 ×:紺系およびベ−ジュ系共に縫い目白化が目立つ。 【0039】実施例1 屈折率が2.5で、平均粒径が0.2μmおよび0.0
5μmの酸化チタンを表1に示す割合で含有する極限粘
度が0.65のポリエチレンテレフタレ−トまたは極限
粘度が0.80のポリブチレンテレフタレ−トを芯部と
し、屈折率が1.45で、平均粒径が0.03μmのコ
ロイダルシリカを表1に示す割合で含有する極限粘度が
0.68のポリエチレンテレフタレ−トを鞘部とし、芯
部および鞘部の複合比が1:2(重量比)である複合繊
維を紡糸し、速度1000m/分で巻き取った。巻き取
り後、75℃で3.2倍に延伸し、緊張下で130℃で
熱処理を行ない、200デニ−ル/72フィラメントの
同心円状芯鞘型複合繊維のを延伸糸を得た。 【0040】この延伸糸を用いてダブルラッセル編地を
作成した(立毛密度:18000本/cm↑2)。グラ
ンド糸としてポリエステル糸(75デニ−ル/24フィ
ラメント)を使用した。この編地をシャ−リングにより
パイル長が3mmになるようにカットし、ピンテンタ−
にて180℃で乾熱によりプレセット加工を施した。つ
いで、得られた編地の立毛部に、増粘剤としてアルギン
酸ソ−ダ3重量%が含有された水酸化ナトリウム水溶液
(濃度:28重量%、B型粘度計にて20℃、65%
R.H.の条件で測定した粘度:12000cps.)
をロ−タリ−スクリ−ンにて塗布した後、H.T.スチ
−マ−にて処理温度150℃、処理時間5〜15分の温
熱蒸気処理を施した。 【0041】処理済の編地を紺系統、ベ−ジュ系統の2
種類の分散染料を用いてオ−バ−マイヤ−染色機にて染
色した。染色したサンプルの立毛部の先端部形状を光学
顕微鏡により観察したところ、立毛長の25〜30%が
テ−パ−状に先細化されていた。先細部の芯露出部およ
び芯露出部以外の繊維表面を走査型電子顕微鏡で観察し
たところ、表1に示す径および数の凹部が観察された。 【0042】テ−パ−状でなだらかな先細形状を有する
サンプル2〜6のパイル糸は、タッチがソフトであるに
も拘らず、張り、腰があり、視覚的に深みのある発色性
を呈し、黒ズミ、白ボケおよび縫い目白化はほとんど目
立たなかった。サンプル1のパイル糸は、芯露出部に形
成される凹部の数が少ないため、縫い目白化が紺系、ベ
−ジュ系共に生じていた。 【0043】 【表1】 【0044】比較例1〜8 芯部に含有される無機微粒子または/および鞘部に含有
される無機微粒子の種類、含有量を表2のように変える
以外は実施例1と全く同様にしてダブルラッセル編地を
作成した。ついで増粘剤を含有する水酸化ナトリウム水
溶液で該編地の立毛部の先細化処理を処理条件を変えて
施し、紺系統、ベ−ジュ系統の染色を行なった。染色し
た編地の評価を行なった。結果を表2および表3に示
す。 【0045】 【表2】 【0046】 【表3】【0047】比較例1のダブルラッセル編地は、芯露出
部にアルカリ処理による少量の細かい凹部が形成されて
いるため、汚れは付着しにくかったが、黒ズミ、白ボ
ケ、縫い目白化がとくにベ−ジュ系で目立っていた。比
較例2のダブルラッセル編地は、鞘部表面に少量の大き
な凹部しか形成されていないため、染色後の発色性は深
みのないものであり、外観が劣り、また縫い目白化も紺
系、ベ−ジュ系ともに目立っていた。比較例3および比
較例4のダブルラッセル編地は、鞘部表面に凹部がほと
んど形成されていないため、外観が劣り、白ボケ、縫い
目白化が目立っていた。比較例5のダブルラッセル編地
は、鞘部表面に形成される凹部の径が大きすぎるため、
吸光性が小さく、外観が非常に劣っていた。比較例6お
よび比較例7のダブルラッセル編地は、本発明で規定さ
れる径、数の凹部が存在しないため、黒ズミ、白ボケ、
縫い目白化の解消にはいたっていない。比較例8のダブ
ルラッセル編地は、芯露出部と鞘部に形成される凹部の
径と数が実施例で得られる編地と逆転しており、風合が
劣り、黒ズミ、白ボケ、縫い目白化の改良にはいたって
いない。 【0048】 【発明の効果】本発明の先細繊維は、芯成分および鞘成
分がともにポリエステリ系ポリマ−からなる芯鞘型複合
繊維であって、少なくとも一方の先端部がテ−パ−状に
先細化されており、先細化された部分の芯露出部および
鞘成分の表面にはそれぞれ異なる径の凹部が形成されて
おり、該繊維を立毛とする立毛製品は、腰のある風合と
優れた発色性、色の深みを有し、黒ズミ、白ボケといっ
た光沢差、色差なく、そのうえ縫い目白化が生じないの
で、カ−シ−ト等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の先細繊維における先細部の芯露出部表
面形状を示す写真である。 【図2】本発明の先細繊維における繊維側面(鞘部表
面)の表面形状を示す写真である。
面形状を示す写真である。 【図2】本発明の先細繊維における繊維側面(鞘部表
面)の表面形状を示す写真である。
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(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
D01F 8/14
D03D 27/00
D06M 11/00 - 11/84
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 芯部に非アルカリ溶出性の無機微粒子を
0.3〜15重量%、鞘部にアルカリ溶出性の無機微粒
子を0.5〜5重量%含有してなる芯鞘型ポリエステル
系繊維をアルカリ処理して、先端部をテーパー状にする
ことを特徴とする先細繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28043393A JP3401730B2 (ja) | 1992-10-13 | 1993-10-13 | 先細繊維、その製造方法およびそれからなる立毛製品 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4-274344 | 1992-10-13 | ||
JP27434492 | 1992-10-13 | ||
JP28043393A JP3401730B2 (ja) | 1992-10-13 | 1993-10-13 | 先細繊維、その製造方法およびそれからなる立毛製品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06212515A JPH06212515A (ja) | 1994-08-02 |
JP3401730B2 true JP3401730B2 (ja) | 2003-04-28 |
Family
ID=26550996
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP28043393A Expired - Fee Related JP3401730B2 (ja) | 1992-10-13 | 1993-10-13 | 先細繊維、その製造方法およびそれからなる立毛製品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3401730B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TW200525065A (en) * | 2003-12-16 | 2005-08-01 | Teijin Fibers Ltd | Plush fabric and method for production thereof |
JP5072216B2 (ja) * | 2005-11-21 | 2012-11-14 | 株式会社ジャパンディスプレイセントラル | 両面表示装置 |
-
1993
- 1993-10-13 JP JP28043393A patent/JP3401730B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06212515A (ja) | 1994-08-02 |
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