JP2923138B2 - ポリエステル斑延伸糸 - Google Patents

ポリエステル斑延伸糸

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JP2923138B2 JP4258844A JP25884492A JP2923138B2 JP 2923138 B2 JP2923138 B2 JP 2923138B2 JP 4258844 A JP4258844 A JP 4258844A JP 25884492 A JP25884492 A JP 25884492A JP 2923138 B2 JP2923138 B2 JP 2923138B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステルマルチフ
ィラメントからなる斑延伸糸に関する。詳細には、染色
した場合に色斑の目立たない無地杢調の自然な深みのあ
る外観、色調、および風合を有することのできる斑延伸
ポリエステルマルチフィラメント糸およびそれからなる
布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルマルチフィラメント糸は均
一性の高いことを特徴とするが、裏を返すとそのままで
は変化に乏しく、人工の冷たさを有しており、織編物に
した場合に、平坦で色調に深みがなく、風合も劣ったも
のになりがちである。
【0003】そこで、ポリエステルマルチフィラメント
糸のもつ上記のような欠点を改良して、ポリエステルマ
ルチフィラメント糸に紡績糸様の外観や風合を付与して
霜降り調の織編物をつくることができるようにしたり、
嵩高性やシャリ感などを付与ることが従来から試みられ
ている。
【0004】そして、上記した従来技術としては、ポ
リエステルマルチフィラメント糸を構成する各々のフィ
ラメントに長さ方向に未延伸部(太部)と延伸部(細
部)を設け、該未延伸部と延伸部をフィラメント糸中で
分散させて存在させたもの(特公昭51−7207号公
報、特開昭61−138732号公報など)、平均粒
径が0.9〜1.8μの無機粒子を0.5〜2.5重量
%の割合で均一に分散させた未延伸マルチフィラメント
糸を不均一に延伸したもの(特開昭59−94617号
公報)、酸化チタンを1.0重量%以上含有するポリ
エステル斑延伸糸であってスペクトログラフ上の周期5
0cmの値が最大値の1/2以下であるもの(特開昭6
2−85621号公報)、凹部を有する異形断面フィ
ラメントからなるポリエステルマルチフィラメント糸を
不均一に延伸したもの(特開平4−91219号公報)
などを挙げることができる。
【0005】上記した〜の従来のポリエステルマル
チフィラメント糸は、そのような加工を施していない通
常のポリエステルマルチフィラメント糸とは異なり、霜
降り調などの変化のある外観やスパンタッチな風合を有
しているという点で一応の効果を有している。しかしな
がら、それらの糸では、未延伸の太部が濃色に染まり、
一方延伸された細部が淡色に染まるために、色杢調のい
わゆる霜降り状の色調、外観、風合などを呈し、その色
調、外観、風合などに不自然な斑感(ギャップ感)があ
り、天然繊維からなる紡績糸にみるような色の濃淡や斑
(ギャップ)のない自然な無地杢調にならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、不自
然な色斑感などのギャップがなく、天然繊維からなる紡
績糸におけるような自然で且つ良好な深みのある色調、
外観、風合などを有するポリエステルマルチフィラメン
ト糸およびそれからなる布帛を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべき検討を重ねてきた。その結果、ポリエステ
ルマルチフィラメント糸において、糸を構成するすべて
のフィラメントを長さ方向に太さ斑を有する太細フィラ
メントとすると共に、該マルチフィラメント糸を、糸の
任意の一横断面において、フィラメントの断面明度およ
び断面積がいずれも3段階以上になり、且つ最大のフィ
ラメント断面積/最小のフィラメント断面積が6.0以
上になるようにして、フィラメント糸を種々の断面明度
および断面積を有するフィラメントの集合体にすると、
上記の目的を達成できることを見出して本発明を完成し
た。
【0008】すなわち、本発明は、斑延伸ポリエステル
マルチフィラメント糸であって、 (i)糸を構成する全てのフィラメントが長さ方向に太
細斑を有し、 (ii)糸の任意の一横断面を光学顕微鏡で観察した時
に、(a)各フィラメントの断面明度が3段階以上にな
っており、(b)各フィラメントの断面積が3段階以上
になっており、そして、(c)最大のフィラメント断面
積/最小のフィラメント断面積が6.0以上、であるこ
とを特徴とするポリエステル斑延伸糸、および該斑延伸
糸からなる布帛である。
【0009】本発明のポリエステル斑延伸糸について詳
しく述べると、まず本発明のポリエステル斑延伸糸は、
糸を構成するフィラメントの全てが長さ方向に太細斑を
有する斑フィラメントであること[要件(i)]が必要
である。本発明では、全てのフィラメントを太細斑を有
するフィラメントとすることによって、その集合体であ
るフィラメント糸に多様でバルキーな風合を付与するこ
とができる。
【0010】次に、糸の任意の一横断面を光学顕微鏡で
観察した時に、本発明のポリエステル斑延伸糸では、各
フィラメントの断面明度が3段階以上になっていて、糸
が多様な断面明度を有するフィラメントの集合体である
こと[要件(ii)(a)]が必要である。このことは、
本発明の糸のどの横断面をとっても、ほとんどの場合に
3段階以上で種々の光沢や色調のフィラメントが互いに
微細に混ざりあっていることを意味し、それによって糸
全体の光沢および色調が、きつくなったり極端にならず
に、多様な光沢および色調が混ざり合った、マイルドで
自然な深みのある外観、色調、風合を有するようにな
る。糸の任意の一横断面における断面明度の段階数が多
いほどそれらの明度が混ざりあってより微妙で深みのあ
る良好な色調、外観、風合などを現出させることができ
るので、断面明度が5段階以上になっているのがより好
ましい。断面明度の段階数の上限は特に限定されない
が、多すぎるとこなれ過ぎて無地になるので、12段階
程度以下にするのがよい。
【0011】限定されるものではないが、この要件[要
件(ii)(a)]をフィラメント糸に付与するための好まし
い方法の例として、ポリエステルの屈折率(1.7)に
近似した屈折率(好ましくは1.5〜2.0)を有する
特定の微粒子をポリエステル中に加えてポリエステルフ
ィラメント糸を製造し、それを斑延伸して、各フィラメ
ントにおいて、その長さ方向にボイド発生部分およびボ
イド未発生部分が微細に生じ、しかもボイド発生部分で
もそのボイド発生量が微妙に異なるようにし、しかもそ
の斑状態の周期が各フィラメントで互いに位相が微細に
ずれて糸全体に分散させる方法を挙げることができる。
その場合に、断面明度の段階数をより多くするために
は、ポリエステル斑延伸糸を単一デニールの太細フィラ
メントのみから構成する代わりに、デニール数の異なる
複数種の太細フィラメントを組み合わせたデニールミッ
クスフィラメント糸しておくのがよい。
【0012】上記のような特定の微粒子を含有するポリ
エステルフィラメント糸は、未延伸状態では一般にブラ
イト光沢を有するが、それを斑延伸してフィラメント中
にボイドを発生させると、ボイド発生部分ではダル糸的
な光沢となり、ボイド発生部分とボイド未発生部分とで
光沢が異なったものとなる。そして、ポリエステル中に
該微粒子を比較的多量(約4〜10重量%)に配合した
場合には、斑延伸した時に太部よりも細部にボイドが多
数発生する。また、ボイドは光を散乱させるために、糸
にボイドが存在すると透過光による糸断面は暗くなる。
【0013】そして、ボイドによって、フィラメント糸
の任意の横断面でその断面明度を3段階以上に異ならせ
るためには、該横断面において、各フィラメントにおけ
るボイド発生量や発生状態を3段階以上に異ならせてお
くことが必要である。そして、染色後もフィラメント中
に発生したボイドは消失することがないので、糸の任意
の一横断面において各フィラメントにおけるボイド発生
状態が3段階以上になっていることは、該糸の横断面に
おいて光散乱により色調(トーン)が3段階以上混ざり
あって存在することになる。
【0014】同じ斑延伸したポリエステルマルチフィラ
メント糸であっても、そこにおける無機微粒子が屈折率
の高い酸化チタンであると、糸の任意の一横断面におい
て各フィラメント間に断面明度の差が生じない。また、
微粒子の含量が上記したような4〜10重量%の範囲で
あっても均一延伸したポリエステルマルチフィラメント
糸ではやはり、糸の横断面において各フィラメント間で
断面明度に違いが生じない。
【0015】また、上記した方法以外にも、太細斑を有
するポリエステルフィラメントの製造時に屈折率などの
異なる微粒子を複数組み合わせて使用すると、ポリエス
テル斑延伸糸の横断面における断面明度を3段階以上に
することができる。その場合に、該複数の微粒子は、同
一のフィラメント中に含有させても、または各々の別の
フィラメント中に含有させてそれらのフィラメントを一
緒にして一本の糸にしてもよい。
【0016】更に、本発明のポリエステル斑延伸糸は、
糸の任意の一横断面において、各フィラメントの断面積
が3段階以上になっていること[要件(ii)(b)]が
必要であり、このことは本発明のポリエステル斑延伸糸
では糸のどの横断面をとってみても、ほとんどの場合に
断面積の異なるフィラメントが3種以上微細に混在した
状態になっていることを意味する。その上、本発明のポ
リエステル斑延伸糸は、そのような種々の断面積のフィ
ラメントの集合体であると同時に、その際に最大のフィ
ラメント断面積/最小のフィラメント断面積が6.0以
上になっていること[要件(ii)(c)]が必要であ
る。そして、これらの要件から、本発明の糸は、各フィ
ラメントの断面積が単に3段階以上になっているだけで
はなく、どの横断面をとってみてもほとんどの場合に、
極めて小さい横断面のものとそれの6.0倍以上もの大
きな横断面のものが微細に混在していることがわかる。
【0017】その場合に、糸の任意の一横断面における
断面積の段階数が多いほどそれらの種々の断面積のフィ
ラメントが混ざりあってより微妙で深みのある良好な外
観、風合、色調などを現出させることができるので、断
面積が5段階以上になっているのがより好ましい。断面
積の段階数の上限は特に限定されないが、好ましい無地
杢調を発現させるためには12段改程度以下にするのが
よい。また、糸の任意の一横断面における最大のフィラ
メント断面積/最小のフィラメント断面積は、特に7以
上であるのが望ましい。
【0018】ポリエステル斑延伸糸にこの(ii)の(b)お
よび(c)の要件を具備させるためには、ポリエステル斑
延伸糸を単一デニールの太細フィラメントのみから構成
する代わりに、デニール数の異なる複数種の太細フィラ
メントを組み合わせたデニールミックスフィラメント糸
しておくのがよい。その場合にデニールミックスフィラ
メント糸は、2種のデニール数のフィラメントの組み合
わせでも、または3種以上のデニール数のフィラメント
の組み合わせでもよい。特に要件(ii)(c)を満足するた
めには、デニール数にかなりの違いのあるフィラメント
同士を組み合わせるのがよい。
【0019】そして、本発明のポリエステル斑延伸糸を
そのようなデニールミックスフィラメント糸から構成す
る場合に、特に、平均デニールが1.5d/f以下、好
ましくは平均デニールが約0.5〜1.5d/fの太細
斑を有する細デニールフィラメントと、平均デニールが
4.0d/f以下、好ましくは平均デニールが約2.5
〜4.0d/fの太細斑を有する太デニールフィラメン
トとを組み合わせたデニールミックスフィラメント糸と
すると、上記(ii)の(b)〜(c)の要件を満たすポ
リエステル斑延伸糸を円滑に得ることができる。その際
に、限定されるものではないが、一本のポリエステル斑
延伸糸における細デニールフィラメント:太デニールフ
ィラメントの割合を、重量で50〜70:50〜30程
度にしておき、そして糸を構成するフィラメントの総数
を約10〜200f程度にしておくのが、繊維化工程
性、後加工性などの点から好ましい。
【0020】更に、ポリエステル斑延伸糸を上記のよう
なデニール数の異なる2種のフィラメントのデニールミ
ックスフィラメント糸から構成する場合に、太細斑を有
する太デニールフィラメントとして太部長さが1mm以
下で且つ隣り合う太部と細部との合計長さが1cm以下
のものを、また太細斑を有する細デニールフィラメント
として太部長さが主として5mm以下で且つ隣り合う太
部と細部との合計長さが10cm以下のものを組み合わ
せて使用すると、ポリエステル斑延伸糸において、太デ
ニールフィラメントと細デニールフィラメントとでその
太細の長さや周期(位相)が微細にずれて分散する結
果、ポリエステル斑延伸糸に変化および多様性に富み、
単調や平坦でなく、それでいながら自然で且つ極めて良
好な色調、風合、外観、触感などのを付与することがで
きる。しかしながら、勿論それに限定されない。また、
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸は、必要に
応じて、空気交絡やその他の方法によって交絡処理を施
してあってもよい。
【0021】本発明のポリエステル斑延伸糸を構成する
ポリエステルとしては、ポリエステル繊維の製造に一般
に使用できるポリエステルであればいずれも使用できる
が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート、或いはエチレンテレフタレート単位および/
またはブチレンテレフタレート単位を主たる構成単位と
しこれに少量の他の共重合成分を共重合させたコポリエ
ステルなどを使用するのが好ましい。
【0022】上記において、エチレンテレフタレート単
位および/またはブチレンテレフタレート単位を主とす
るコポリエステルの場合は、共重合成分として、イソフ
タル酸、5−金属スルホイソフタル酸、フタル酸、2,
6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸成
分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸
などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメ
リット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレング
リコール、プロピレングリコール、ブタンジオールまた
はエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリ
セリン、ペンタエリスリトールなどを使用することがで
きる。
【0023】糸を染色した場合に、フィラメントにおけ
る太部(未延伸部)が濃色に染色され、一方細部(延伸
部)が淡色に染色され、またボイドの多い部分は淡染状
に見え、ボイドの少ない部分は濃染状に見える。またデ
ニールミックスフィラメント糸では太デニールフィラメ
ントは濃染状になり細デニールフィラメントは淡染状に
なる。その結果、太デニールフィラメントの太部で且つ
ボイドの少ない部分が最も濃染状となり、細デニールフ
ィラメントの細部で且つボイドの多い部分が最も淡染状
となる。ところで、本発明のポリエステル斑延伸糸で
は、フィラメントの太細(断面積)およびボイドの多少
(断面明度)が糸の任意の一横断面において極めて多様
の段階になっており、それが糸の長さ方向に周期(位
相)がずれて微細に分散しているので、染色した際に濃
淡が極めて微細に均一に分散されてランダムでありなが
ら無地杢調の自然で高級な仕上がりを示し、この点で濃
淡の差が表面にでて色杢調に染色される従来の斑糸と大
きく相違している。このような本発明のポリエステル斑
延伸糸からなる染色布帛の2点間の色差△E(L.a.
b.測定系)は通常0.03〜2.00の範囲でランダ
ムとなっている。
【0024】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸の具体的な製造法としては下記の方法を挙げることが
できる。しかし、勿論それに限定されるものではなく、
上記した(i)および(ii)の(a)〜(c)の要件を
備えたポリエステル斑延伸糸はいずれも本発明に包含さ
れる。
【0025】本発明のポリエステル斑延伸糸の製造例: (1) 平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.3
〜0.8μmで、屈折率が1.5〜2.0の微粒子を4
〜10重量%含有するポリエステルまたはコポリエステ
ルを、例えば図1に示すような孔数を左右で変えてある
分割型の口金から樹脂の吐出量を左右で変えて、好まし
くは1500〜2500m/分、より好ましくは180
0〜2500m/分の紡糸速度で紡出させて、デニール
ミックスポリエステルフィラメント糸を製造する。
【0026】この(1)の紡糸操作において、一般に、
無機微粒子の平均粒径が1.0μmを超えると紡糸性が
極めて悪くなる。また無機微粒子の含有量が4重量%未
満であると糸を構成するフィラメントに太細斑が短周期
でランダムに出現しなくなり、一方10重量%を超える
と紡糸性が低下して操業性に欠けたものとなる。
【0027】また、使用する微粒子の屈折率が1.5〜
2.0の範囲から外れると、糸の断面明度が単一になっ
て3段階以上にならなくなる(1.5未満の場合はフィ
ラメント糸の断面明度が明るい単一の明度になり、一方
2.0を超すと暗い単一の明度になる)。このような点
から、本発明で使用するのに適する微粒子としては、硫
酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウ
ム、アルミナ、メタリン酸アルミニウム、リン酸カルシ
ウムなどを挙げることができる。
【0028】そして、デニールミックスフィラメント糸
を製造するに際しては、直接紡糸によらずに、デニール
数の異なるフィラメントを別々に紡糸し、それらを延伸
工程で合わせる方法を採用してもよいが、上記したよう
な同一口金を使用して直接紡糸により行うのが生産効率
の点で優れており望ましい。
【0029】また、紡糸速度が1500m/分未満であ
ると布帛にした場合に強度が不足し、一方紡糸速度が2
500m/分を超えると延伸後の斑発生およびボイド発
生が不足して、目的とするポリエステル斑延伸糸が得ら
れにくくなるので注意を要する。従来のシックアンドシ
ン糸の多くは斑を発生させるために1500m/分以下
の紡糸速度が採用されてきたが、本発明の場合は150
0〜2500m/分の紡糸速度を採用しても、目的とす
る糸を製造することができる。
【0030】そして、この紡糸操作においては、細デニ
ールフィラメントの平均デニールが下記(2)の延伸処
理後に1.5d以下となり、太デニールフィラメントの
平均デニールが下記(2)の延伸処理後に4.0d以下
となり、且つ延伸後のマルチフィラメント糸における細
デニールフィラメントの占める割合が50重量%以上に
なるように紡糸を行うのがよい。細デニールフィラメン
トおよび太デニールフィラメントの平均デニール並びに
マルチフィラメント糸における細デニールフィラメント
の割合がそのような範囲から外れた場合には、フィラメ
ントにおける太細斑の周期が長くなって、本発明におけ
る上記の(i)および(ii)の(a)〜(b)の要件を
備えた糸が得られにくくなる。
【0031】また、紡糸時には、下記(2)の延伸処理
中に各フィラメントの延伸点がバラけて分散されるよう
に(分散延伸が行われるように)、摩擦係数(特にFF
動摩擦係数)の低い油剤を使用するのが望ましく、その
際の油剤の付与量は0.8重量%以上とするのがよい。
油剤の量が0.8重量%未満の場合は、各フィラメント
における太細の周期が長くなり易く、太細斑が微細に分
散した斑糸が得られにくくなる。
【0032】(2) 次に、上記の紡糸工程で得られた
ポリエステルマルチフィラメント糸を低温で予熱した後
延伸し、次いで熱セットし、それによって目的とするポ
リエステル斑延伸糸を得ることができる。その場合に、
予熱は約35〜55℃の温度で行うのが好ましい。予熱
温度が55℃を超えると各フィラメントにおける太細斑
の周期が長くなって斑の安定性に欠けたものとなり易
く、一方35℃未満であると季節によって太細斑が変動
して品質が一定になりにくい。また、熱セット温度は、
高いほど伸度低下に効果があるが、それと同時に糸の強
度も低下するので、110〜140℃程度の温度とする
のが伸度および強度のバランスの上から好ましい。ま
た、延伸倍率は、下記の数式;
【0033】
【数1】 延伸倍率={(D/100)+1}×(0.5〜0.6) 式中、D=マルチフィラメント糸の破断伸度 とするのがよい。
【0034】本発明のポリエステル斑延伸糸は、通常の
ポリエステルマルチフィラメント糸と同様に、各種の織
編物にすることができ、特に衣料用の織編物に適してい
る。本発明のポリエステル斑延伸糸から製造された織編
物は、自然でありながら、変化や多様性に富み、長く使
用してもあきのこない良好な色調、外観、風合、触感な
どを有し、その染色物は色斑のない良好な無地杢調を有
する。その場合に、染色は糸の段階で行ってもまたは織
編物にした後に行ってもよい。
【0035】
【実施例】以下に実施例などにより本発明を具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の実
施例などにおいて、延伸後のデニールミックスマルチフ
ィラメント糸における太デニールフィラメントおよび細
デニールフィラメントの各平均デニールの測定;太デニ
ールフィラメントおよび細デニールフィラメントにおけ
る太部および細部の長さおよび隣り合う太部と細部との
合計の測定;糸の断面明度の段階数の判定;糸の断面積
の段階数の判定;最大のフィラメント断面積/最小のフ
ィラメント断面積;ボイドの観察;色差△Eの測定は、
次のようにして行った。
【0036】太デニールフィラメントおよび細デニール
フィラメントの平均デニール:得られた延伸糸を少なく
とも100m以上採取し、糸を構成するフィラメントを
太デニールフィラメント群と細デニールフィラメント群
とに分ける。太デニールフィラメント群の重量を測定
し、それを太デニールフィラメント群におけるフィラメ
ント数で割って、太デニールフィラメントの平均デニー
ル(d/f)を求める。細デニールフィラメント群につ
いても同様にする。
【0037】太デニールフィラメントおよび細デニール
フィラメントにおける太部および細部の長さ並びに隣り
合う太部と細部との合計長さ:得られた延伸糸を20c
m採取し、糸を構成するフィラメントを太デニールフィ
ラメント群と細デニールフィラメント群とに分ける。太
デニールフィラメントの顕微鏡写真(100〜500
倍)を撮影し、その写真から太部の長さおよびそれに隣
り合う細部の長さを測定して、太部の長さ、並びに隣り
合う太部と細部との合計長さを求める。細デニールフィ
ラメントについても同様にする。その場合に太部から細
部あるいは細部から太部へと次第に移行していて太部と
細部の境界が明確でない場合はその中間点をもって境界
とした。
【0038】糸の断面明度の段階数の判定:糸を3本以
上引き揃えて厚さ1mmの銅版穴に黒色色糸レーヨンと
共に通し、長さ方向に直角にカットする。その切断面を
顕微鏡(Nikon AFX−IIA;光量PHOTOレベル)
を使用して250倍で撮影し(ASA100フイルム使
用)、その顕微鏡写真により断面明度の段階数を肉眼で
判定する。通常肉眼でその段階数を明確に判定できる
が、判定が困難な場合には、JIS L−0805のグ
レースケールを使用して判定する。また、黒色着色レー
ヨンとの接点で写真がぼける場合は最外層のフィラメン
ト1本を除外して判定する。
【0039】糸の断面積の段階数の判定:糸の断面明度
の段階数の判定時に得られた糸の横断面の顕微鏡写真に
よって断面積の段階数を肉眼で判定する。
【0040】最大のフィラメント断面積/最小のフィラ
メント断面積:糸の断面明度の段階数の判定時に得られ
た糸の横断面の顕微鏡写真を用いて、最大の断面積を有
するフィラメント断面の面積を測定し、それを同様にし
て測定した最小の断面積を有するフィラメント断面の面
積によっ割って求めた。
【0041】ボイドの観察:上記と同じ顕微鏡を使用し
て500〜1000倍の倍率で肉眼によりボイドの有無
を観察する。
【0042】色差△Eの測定:日本電子工業(株)製の
Z−1001DP測色計を使用し、1回の測定は直径が
10mmの円で実施し、この測定を10回(n=10)
行う。
【0043】《実施例 1》 (1) 平均粒径0.6μmの硫酸バリウムを8重量%
含有する[η]=0.63のポリエチレンテレフタレート
を、図1に示す分割型の口金(左側9ホール;右側36
ホール)を使用して、吐出量を9ホール側:36ホール
側=2:3の重量割合で紡出させ、紡糸速度1800m
/分、油剤付着量1.0重量%の条件下に紡糸して、破
断伸度246%のポリエステルデニールミックスマルチ
フィラメント未延伸糸(146d/45f)を得た。
【0044】(2) 次に、上記(1)で得られた未延
伸糸をホットローラ温度50℃で予熱した後、延伸倍率
1.98倍で延伸し、ホットローラ温度120℃で熱セ
ットして巻取り、伸度48%の75d/45fのポリエ
ステルデニールミックスマルチフィラメント延伸糸から
なる本発明のポリエステル斑延伸糸を得た。
【0045】このポリエステル斑延伸糸の横断面を上記
のようにして顕微鏡により写真撮影したところ、図2と
して添付した写真のとおりであり、糸を構成するフィラ
メントの断面明度は7段階になっており、断面積は6段
階になっていた。また、最大のフィラメント断面積/最
小のフィラメント断面積=7.2であった。また、この
ポリエステル斑延伸糸は太細斑を有する太デニールフィ
ラメント群と太細斑を有する細デニールフィラメント群
から構成されており、糸を構成する太デニールフィラメ
ント群の平均デニールは3.3d/f、細デニールフィ
ラメント群の平均デニールは1.2d/fであった。そ
して、細デニールフィラメント群の太部長さは50μm
〜3mmの範囲でランダムになっていて、太デニールフ
ィラメント群の太部長さは15μm〜600μmの範囲
でランダムになっていて、フィラメントの細部には必ず
ボイドが存在していた。
【0046】(3) 上記(2)で得られたポリエステ
ル斑延伸糸に300回/mの撚を施し、サテン組織(5
枚朱子)で製織した。得られた生機を充分精錬リラック
ス後、次の表1に記載した条件で染色した。
【0047】
【表1】
【0048】染色後充分に水洗して170℃で1分間仕
上げセットした。仕上げ品の密度は経220本/イン
チ、緯125本/インチであった。得られた生地は、張
り腰およびふくらみのある良好な風合および触感を有
し、且つフィラメントの一本一本が微妙に色差を有する
無地杢調を呈し、この時の任意の2点間の色差△Eは
0.05〜1.31でn=10とも値の異なるランダム
さであった。また日光に透かしてみるとランダムな太細
斑が見えた。
【0049】《実施例 2》 (1) 平均粒径0.4μmの硫酸バリウムを5重量%
含有する[η]=0.65のポリエチレンテレフタレー
トを用い、左側12ホール;右側40ホールの分割型の
口金を使用して左右同じ吐出量とした以外は実施例1と
同様にして紡糸して、破断伸度246%の未延伸糸(1
40d/52f)を得た(油剤付着量1.0%)。
【0050】(2) 上記(1)で得た未延伸糸をホッ
トローラ温度35℃で予熱後、延伸倍率2.00倍で延
伸し、ホットローラ温度120℃で熱セットして巻取
り、延伸糸(70d/52f)を得た。この延伸糸の断
面明度は6段階であり、断面積は5段階であった。ま
た、最大断面積/最小断面積は7.5であった。更に、
この延伸糸の太デニールフィラメント群の平均デニール
は3.0d/fであり、細デニールフィラメント群の平
均デニールは0.9d/fであった。また、該太デニー
ルフィラメント群における太部長さは30μm〜800
μmの範囲でランダムになっており、細デニールフィラ
メント群における太部長さは50μm〜3.1mmの範
囲でランダムになっており、細部には必ずボイドが存在
していた。
【0051】(3) 上記(2)で得た延伸糸を実施例
1と同様にして製織し染色仕上げした。得られた生地は
ヌメリ感の少ないスパンライクな触感を有し、明確な色
差は無いが微妙に色差が異なる無地杢調を呈し、△Eは
0.1〜1.7でn=10とも値の異なるランダムさで
あった。日光に透かしてみるとランダムな太細斑が見え
た。
【0052】《比較例 1》 (1) 実施例1と同様に、平均粒径0.6μmの硫酸
バリウムを8重量%含有する[η]=0.63のポリエチ
レンテレフタレートを用いて、均一な72個の紡糸孔を
有する紡糸口金を使用して、紡糸速度1800m/分、
油剤付着量1.0重量%の条件下に紡糸して、破断伸度
250%のポリエステルマルチフィラメント未延伸糸
(190d/72f)を得た。
【0053】(2) 次に、上記(1)で得た未延伸糸
を延伸倍率を1.87とする以外は実施例1と同条件下
で延伸して100d/72fのマルチフィラメント延伸
糸を得た。この延伸糸の横断面を上記のようにして顕微
鏡により写真撮影したところ、糸を構成するフィラメン
トの断面明度は4段階であり、断面積は3段階になって
いたが、最大のフィラメント断面積/最小のフィラメン
ト断面積=3.3であった。
【0054】(3) 上記で得た延伸糸を実施例1と同
様に製織し、染色した。得られた染色生地は張り腰およ
び膨らみがなく、外観はほとんど無地で杢調のない生地
であった。この時の任意の2点間の色差△Eは0.00
〜0.80でほぼ近似値を示し、日光に透かした場合も
太細斑が少なかった。
【0055】《比較例 2》実施例1において硫酸バリ
ウムの含有量を1重量%とする以外は実施例1と全く同
様にして、紡糸および延伸を行って得られた75d/4
5fの延伸糸は、糸の長さ方向に沿って太部と細部とは
同じ周期で存在するいわゆるシックアンドシンヤーンで
あり、太細斑が糸全体にランダムに且つ微細に分散した
ものではなかった。この糸の横断面の断面積は4段階に
なっていたが、断面明度は全て同じで段階に分かれてい
なかった。また、実施例1と同じ条件下に染色を行って
得られた生地は糸の太部が濃染され、細部が淡染されて
はっきりした2色に分かれた斑模様となった。
【0056】《比較例 3》酸化チタン(平均粒径0.
4μm)を5重量%含有する[η」=0.65のポリエ
チレンテレフタレートを使用した以外は実施例1と同様
にして紡糸および延伸をおこなって75d/45fの延
伸糸を得た。この延伸糸の断面明度は全て同じであり段
階に分かれておらず、一方断面積は5段階になってい
た。また、この延伸糸を使用して実施例1と同じ条件下
に染色を行って得られた生地は、濃淡が比較的はっきり
した霜降り調の色杢調であった。更に、この染色生地の
色差△Eは0.60〜4.26であり、n=10のうち
7までが5.20〜4.00であった。
【0057】
【発明の効果】本発明のポリエステル斑延伸糸は、不自
然な色斑感などのギャップがなく、天然繊維からなる紡
績糸におけるような自然で且つ良好な色調、外観、風合
を有し、本発明の斑延伸糸またはそれからなる布帛を染
色した場合に色斑のない無地杢調の染色物を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル斑延伸糸を製造するのに
使用する紡糸口金の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1により得られたポリエステル
斑延伸糸の横断面を顕微鏡で写真撮影したものである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−190036(JP,A) 特開 平1−148825(JP,A) 特開 平4−100933(JP,A) 特開 昭60−88109(JP,A) 特公 昭50−20175(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 6/62 301 - 303 D02J 1/22 D03D 15/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 斑延伸ポリエステルマルチフィラメント
    糸であって、 (i)糸を構成する全てのフィラメントが長さ方向に太
    細斑を有し、 (ii)糸の任意の一横断面を光学顕微鏡で観察した時
    に、(a)各フィラメントの断面明度が3段階以上にな
    っており、(b)各フィラメントの断面積が3段階以上
    になっており、そして、(c)最大のフィラメント断面
    積/最小のフィラメント断面積が6.0以上、であるこ
    とを特徴とするポリエステル斑延伸糸。
  2. 【請求項2】 請求項1のポリエステル斑延伸糸からな
    る布帛。
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