JP3761908B2 - 捲縮加工糸およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリエステル捲縮加工糸に関する。詳細には、強度的に優れ且つふくらみ感を有し、しかも3段階以上の微細な濃淡差または3色以上の微細な多色相状態を有し、微妙で深みのある杢調を出現させることのできる、色調、風合、外観、触感などの諸性質に優れた捲縮加工糸、およびその製造方法、並びに該捲縮加工糸よりなる布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルマルチフィラメント糸は均一性の高いことを特徴とするが、裏を返すとそのままでは変化に乏しく、人工の冷たさを有しており、織編物にした場合に平坦で風合の劣ったものになりがちである。
そこで、ポリエステルマルチフィラメント糸における上記の欠点を改良するために、未延伸糸を自然延伸倍率以下で延伸した後に延伸−仮撚して、延伸されていない太部と延伸された細部とがフィラメントの長さ方向に存在する太細斑マルチフィラメント糸を製造し、延伸部と未延伸部との染着差を利用して糸や布帛に濃淡差による杢調の出現させることが従来行われている。
【0003】
しかし、このような従来の糸では各フィラメントにおける太細斑が単調に繰り返されているために杢調の状態が人工的で深みがなく、しかも各フィラメントにおける未延伸部が糸の横断方向に重なって揃って存在するために、その部分の強度が極端に小さくなり、糸の切断や布帛の穴あきを生じ易いという欠点がある。また、延伸を施す前の未延伸糸は、経時変化しやすく、太細斑の出現の仕方が不安定になり、安定した太細斑および杢調を出現させるのが困難である。
【0004】
上記の欠点を改良するために、切断伸度が50%以上異なる2本の糸条を合糸し、高伸度糸側の切断伸度に合わせた延伸倍率で仮撚の前または仮撚と同時に延伸する方法が提案されている(特開昭57−29623号公報)。この方法により得られる糸では、低配向の高伸度糸に未延伸太部と延伸細部が発生し、それらの染着差によって濃淡差を表現する一方で高配向の低伸度糸をほぼ完全延伸することによって糸条全体に強度が付与される。しかしながら、この方法によって得られた糸の場合も、低配向高伸度糸の経時変化による太細斑出現の不安定性が依然として残っており、十分に満足のゆくものではない。しかも、そこで現れる濃淡差は未延伸部が重なった濃染部と未延伸部のない淡染部のせいぜい2段階であるので、色調が単調であり深みがない。
【0005】
また、別の杢調表現として、カチオン染料可染性フィラメントと分散染料可染性フィラメントとからなる糸を用いるカチオンメランジュ糸が知られており、その中でもカチオン染料可染性の糸を芯糸または鞘糸の一部に使用したカチオンメランジュ構造糸はふくらみ感があり杢調表現が可能である。しかし、この糸の場合も、カチオン染料に基づく色相と分散染料に基づく色相のせいぜい2色表現であり3色以上の多色相状態にならず、その色調は単調で深みがない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、3段階以上の多段の濃度差または3色以上の多色相状態が微細に存在し、それによって深みのある杢調表現が可能であり、しかもふくらみ感を有し、ウールなどの天然繊維に匹敵またはそれを凌駕する極めて優れた風合、外観、色調および触感を有する、強度的にも優れたポリエステルマルチフィラメント糸およびその製造方法、並びにそのような糸よりなる布帛を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく検討を重ねてきた。その結果、太細斑を有する太デニールポリエステルフィラメント群、太細斑を有する細デニールポリエステルフィラメント群および実質的に太細斑をもたないポリエステルマルチフィラメント群とから構成される、特定の太細斑を有する(すなわち特定の太部長さおよびその個数を有する)延伸仮撚糸が上記の望ましい諸特性を備えていることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、長さ方向に太細斑を有するポリエステルフィラメント群(A)および長さ方向に太細斑が実質的にないポリエステルフィラメント群(B)よりなる捲縮加工糸であって、
(a)長さが1mm未満の太部が糸長10cm当たり10個以上存在する;
(b)長さが1mm以上3cm未満の太部が糸長10cm当たり5個以上存在する;
(c)長さが3cm以上の太部が糸長10cm当たり5個以上存在する;および
(d)長さ方向に太細斑が実質的にないポリエステルフィラメントの割合が30重量%以上である;
という要件(a)〜(d)を備えていることを特徴とする捲縮加工糸、並びに該捲縮加工糸よりなる布帛である。
【0009】
そして、本発明は、(A1)複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が1デニール以上3.5デニール未満の未延伸細デニールポリエステルフィラメント群;(A2)複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が3.5以上8デニール以下の未延伸太デニールポリエステルフィラメント群;および(B1)複屈折率(△n)が0.03〜0.06の高配向未延伸ポリエステルフィラメント群からなり、且つ上記未延伸細デニールポリエステルフィラメント群(A1)および未延伸太デニールポリエステルフィラメント群(A2)の少なくとも一方が平均粒径0.9μm以下の無機微粒子を1〜10重量%含有するポリエステルから製造されているポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を、下記の式(I);
【0010】
【数3】
1(%)={(Db/100)+1}×(0.5〜0.6) (I)
式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)
を満足する延伸倍率(D1)で延伸し;次いで下記の式(II);
【0011】
【数4】
2(%)=[{(Db/100)+1}×(0.6〜0.7)]/D1 (II)
式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)
を満足する延伸倍率(D2)で延伸同時仮撚することを特徴とする上記の捲縮加工糸の製造方法を包含する。
【0012】
本発明の捲縮加工糸は、長さ方向に太細斑を有するポリエステルフィラメント群(A)(以下「太細斑フィラメント群(A)」という)と長さ方向に太細斑が実質的にないポリエステルフィラメント群(B)(以下「フィラメント群(B)」という)よりなる捲縮加工糸であって、まず、(a)長さが1mm未満の太部が糸長10cm当たり10個以上存在する;(b)長さが1mm以上3cm未満の太部が糸長10cm当たり5個以上存在する;および(c)長さが3cm以上の太部が糸長10cm当たり5個以上存在するという要件(a)〜(c)を満足することが必要である。
【0013】
本発明の捲縮加工糸の一部を構成する太細斑フィラメント群(A)は、長さ方向に太細斑を有する個々のフィラメントの集合体であり、本発明の捲縮加工糸が糸長10cm当たり長さ1mm未満の太部を10個以上有するためには、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメント群(A)の少なくとも一部が長さが1mm未満の微細な太部を有する太細斑フィラメントであることが必要である。その場合に、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメントの本数により糸長10cm当たりに存在する長さ1mm未満の太部の個数が異なったものとなり得るが、捲縮加工糸全体としてその糸長10cm当たり長さが1mm未満の太部が10個以上存在すればよく、好ましくは30個以上存在するのがよい。
その場合に、長さが1mm未満の太部は糸長10cmの範囲で分散していてもまたはかたまって存在していてもよく、特にかたまって存在しているのが好ましく、したがって本発明の捲縮加工糸は、例えば長さが1mm未満の太部のみが10個以上集合した部分が捲縮加工糸の糸長10cm当たり1個所またはそれ以上存在する形態になっていてもよい。
【0014】
また、本発明の捲縮加工糸が長さが1mm以上3cm未満の太部が糸長10cm当たり5個以上存在するという要件(b)を満たすには、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメントの少なくとも一部が長さが1mm以上3cm未満の太部を有する太細斑フィラメントであることが必要である。その場合に、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメントの本数により糸長10cm当たりに存在する長さ1mm以上3cm未満の太部の個数が異なったものとなり得るが、捲縮加工糸全体としてその糸長10cm当たり長さが1mm以上3cm未満の太部が5個以上存在すればよく、好ましくは10個以上存在するのがよい。その場合に、長さが1mm以上3cm未満の太部は糸長10cmの範囲で分散していてもまたはかたまって存在していてもよく、特にかたまって存在しているのが好ましく、本発明の捲縮加工糸では例えば長さが1mm以上3cm未満の太部のみが5個以上集合した部分が捲縮加工糸の糸長10cm当たり1個所またはそれ以上存在する形態になっていてもよい。
【0015】
更に本発明の捲縮加工糸が、長さが3cm以上の太部が糸長10cm当たり5個以上存在するという要件(c)を満たすには、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメントの少なくとも一部が長さが3cm以上の太部を有する太細斑フィラメントであることが必要である。その場合に、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメントの本数により糸長10cm当たりに存在する長さ3mm以上の太部の個数が異なったものとなり得るが、捲縮加工糸全体としてその糸長10cm当たり長さが3mm以上の太部が5個以上存在すればよく、8個以上存在するのが好ましい。その場合に、長さが3cm以上の太部は糸長10cmの範囲で分散していてもまたは重なって存在していてもよい。
【0016】
本発明の捲縮加工糸を染色した場合には、長さが1mm未満の太部が極淡色に、長さが1mm以上3cm未満の太部が中程度の濃度の色に、そして長さが3cm以上の太部が濃色に染色され、それによって本発明の糸に少なくとも3段階以上の微細で深みのある濃淡差または3色相以上の杢調が出現する。そしてその場合に、上記の要件(a)〜要件(c)を満足することにより、長さのそれぞれ異なる太部が糸全体にランダムに且つ微細に分散し、その色調を一層微妙で深みのあるものとすることができる。
【0017】
ここで、本発明の捲縮加工糸における太部の長さの測定、長さが1mm未満の太部の数、長さが1mm以上3cm未満の太部の数、および長さが3cm以上の太部の数の測定は次のようにして行う。
【0018】
太部の長さの測定
捲縮加工糸を構成するそれぞれの太細斑フィラメントにおいて、太部と細部との境界が図1の(イ)に示すように明確な場合は図1の(イ)のL1で示す長さを太部長さとして測定する。また図1の(ロ)に示すように太部から細部へと径が徐々に変化してその境界が不明瞭な場合は、図1の(ロ)に示すように、最大径のある点Aと最小径のある点Bとの間の中間点Cをとり、該点Aを挟む2つの点C−C間の距離L1をもって太部の長さとする。
【0019】
捲縮加工糸におけるそれぞれの太部長さの個数の測定
捲縮加工糸を綛に巻いたまま又は筒編機で製編した後に染色し、筒編みした場合は糸を解き、糸の任意位置の10cmを採取して(捲縮状態を無理のないように伸ばしてほぼ直線状とした際の10cm)、顕微鏡を用いて、糸長10cm当たりに存在する長さが1mm未満の太部の個数、長さが1mm以上3cm未満の太部の個数、および長さが3cm以上の太部の個数をそれぞれ数える。
【0020】
本発明の捲縮加工糸に上記の要件(a)〜要件(c)を付与するためには、捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメント群(A)を、その平均単繊維繊度の小さい細デニール太細斑ポリエステルフィラメントと平均単繊維繊度がそれよりも大きい太デニール太細斑ポリエステルフィラメントとから構成するのがよい。そしてその場合に、細デニール太細斑フィラメント用のポリエステル原料および太デニール太細斑フィラメント用のポリエステル原料の少なくとも一方に平均粒径0.9μm以下の無機微粒子を1〜10重量%の割合で含有させておいて、中配向未延伸糸を紡糸により製造し、それをその自然延伸倍率以下の延伸倍率で延伸、延伸同時仮撚することによって、上記した長さが1mm未満の太部、長さが1mm以上3cm未満および長さが3cmの太部をランダムに有する太細斑フィラメント群(A)(糸)を円滑に得ることができる。これは、無機微粒子が延伸時に延伸を阻害または促進することによって延伸点が変動するためと推定されるが、その詳細は不明である。
【0021】
上記において、捲縮加工糸を構成している太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメントの平均単繊維繊度を1.5デニール以下、好ましくは0.5〜1.5デニールとし、太デニール太細斑フィラメントの平均単繊維繊度を4.0デニール以下、好ましくは2.5〜4.0デニールとしておくのが望ましい。特に、太デニール太細斑フィラメントの平均単繊維繊度と細デニール太細斑フィラメントの平均単繊維繊度との差を約2.0〜3.5デニールにしておくと、捲縮加工糸に嵩高性および多様性を付与することができ好ましい。また、一本の捲縮加工糸を構成する太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメント:太デニール太細斑フィラメントの割合は、重量で約50:50〜70:30程度にしておくのが、斑の多様性などの点から好ましい。さらに、一本の捲縮加工糸における太細斑フィラメント群(A)の合計デニール数は約50〜150デニール、合計フィラメント数は約48〜96f程度にしておくのが、延伸性、延伸同時仮撚性、得られる捲縮加工糸の風合、後工程通過性などの点から望ましい。
【0022】
太細斑フィラメント群(A)を構成する細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントに用いるポリエステルの種類は特に制限されず、繊維形成性のポリエステルであればいずれも使用できる。例えば、細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの両方を分散染料可染性のポリエステルから形成しても、細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの一方を分散染料可染性のポリエステルから形成し、もう一方をカチオン染料可染性のポリエステルから形成しても、または分散染料可染性またはカチオン染料可染性以外のポリエステルから形成してもよい。
【0023】
太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの両方を分散染料可染性のポリエステルから形成した場合には、本発明の捲縮加工糸を3段階以上の多様な濃淡のある微妙な色調のものに仕上げることができる。
また、太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの一方を分散染料可染性のポリエステルから形成し、もう一方をカチオン染料可染性のポリエステルから形成した場合には、本発明の捲縮加工糸およびそれよりなる布帛を分散染料およびカチオン染料で染色した際に3色以上の微細な多色相状態に染色することができる。
その場合に、細デニール太細斑フィラメントを分散染料可染性のポリエステルから形成し太デニール太細斑フィラメントをカチオン染料可染性のポリエステルから形成しても、または細デニール太細斑フィラメントをカチオン染料可染性のポリエステルから形成し太デニール太細斑フィラメントを分散染料可染性のポリエステルから形成してもよい。特に、細デニール太細斑フィラメントを分散染料可染性のポリエステルから形成し、太デニール太細斑フィラメントをカチオン染料可染性のポリエステルから形成すると、ウール様の自然なふくらみの付与に一層効果があり、好ましい。
【0024】
上記したように、太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントに用いるポリエステルの種類は特に限定されず繊維形成性のポリエステルであればいずれでも使用できるが、それらのフィラメントの一方または両方を分散染料可染性とする場合は、フィラメントをポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、或いはエチレンテレフタレート単位および/またはブチレンテレフタレート単位を主たる構成単位としこれに少量の他の共重合単位を含有させたコポリエステルから形成するのが好ましい。コポリエステルを用いる場合には、該他の共重合単位をイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸成分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールまたはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの共重合成分から誘導することができる。
【0025】
また、太細斑フィラメント群(A)における細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの一方または両方をカチオン染料可染性のポリエステルから形成する場合は、ベンゼン核にスルホン酸金属塩基が結合しているイソフタル酸単位、すなわちスルホネートイソフタル酸単位を共重合単位として有する共重合ポリエステルを用いるのが好ましく、その場合にポリエステル中のスルホネートイソフタル酸単位の共重合割合を1〜3モル%とすると紡糸時の工程性、染色性、一般物性などが良好になり望ましい。
そして、スルホネートイソフタル酸単位を含有するカチオン染料可染性のポリエステルを用いる場合は、ポリエステルを構成する主単位がエチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、またはそれらの組み合わせからなっているのが好ましく、必要に応じてそれらの単位と共に更に少量の他の共重合単位を含有させることができる。その際の他の共重合単位としてはイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸成分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールまたはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどから誘導された単位を挙げることができる。
【0026】
また、細デニール太細斑フィラメント用の原糸および太デニール太細斑フィラメント用の原糸の少なくとも一方に含有させる上記した平均粒径が0.9μm以下の無機微粒子としては、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタンなどを挙げることができる。その際に、無機微粒子の平均粒径は0.2〜0.7μmであるのがより好ましく、またその含有量は4〜8重量%であるのが、微細な太細斑の発現および紡糸時、延伸時、延伸同時仮撚時などにおける工程性の点から好ましい。
無機微粒子は、少なくとも細デニール太細斑フィラメント用の原糸中に含有させておくのが、微細でランダムの太細斑の発生の点からより好ましい。
【0027】
更に、本発明の捲縮加工糸は、長さ方向に太細斑の実質的にないポリエステルフィラメント群(B)の割合が30重量%であるという要件(d)を備えていることが必要である。太細斑のないポリエステルフィラメント群の割合が30重量%未満であると、捲縮加工糸の強度が不足し、布帛にした場合に引裂き強度などの力学的物性が低下し、実用に適さない場合がある。捲縮加工糸に良好な強度および風合、色調および触感などの特性を兼備させるためには、太細斑のないポリエステルフィラメント群の割合が40〜60重量%であるのが好ましい。
また、本発明の捲縮加工糸におけるフィラメント群(B)の合計デニール数は約50〜150デニール、合計フィラメント数は約12〜48fとしておくのが、杢調表現の全体のバランス、糸条強度および後工程通過性の点から好ましい。
【0028】
フィラメント群(B)に用いるポリエステルの種類は特に限定されず繊維形成性のポリエステルであればいずれでも使用でき、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、或いはエチレンテレフタレート単位および/またはブチレンテレフタレート単位を主たる構成単位としこれに少量の他の共重合単位を含有させたコポリエステルが好ましく使用される。コポリエステルを用いる場合には、該他の共重合単位をイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸成分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールまたはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの共重合成分から誘導することができる。
【0029】
本発明の捲縮加工糸では、(1)太細斑フィラメント群(A)が鞘糸として捲縮加工糸のほぼ外側に位置し且つフィラメント群(B)が芯糸として捲縮加工糸のほぼ中央部に位置する芯鞘型複合構造を有していても、または(2)太細斑フィラメント群(A)とフィラメント群(B)とが捲縮加工糸全体に亙ってランダムに混繊した状態になっていてもよい。上記(1)の捲縮加工糸は、フィラメント群(B)用の原糸として太細斑フィラメント群(A)用の原糸よりも破断伸度の小さいものを使用し、太細斑フィラメント群(A)用の原糸とフィラメント群(B)用の原糸とを混繊交絡後、仮撚することにより製造することができる。
【0030】
本発明の捲縮加工糸では、糸を構成する各フィラメントにおける捲縮数を約10〜30個/インチにしておくのが、適度なふくらみ感を糸および布帛に付与する上から好ましい。また、本発明の捲縮加工糸では、必要に応じて、太細斑フィラメント群(A)を構成するフィラメント同士の間、フィラメント群(B)を構成するフィラメント同士の間、および/または太細斑フィラメント群(A)のフィラメントとフィラメント群(B)のフィラメントとの間で交絡を生じさせておくのが、糸条の解舒性、製編織時などにおける工程性などの点から好ましい。
【0031】
本発明の捲縮加工糸は、太細斑フィラメント群(A)とフィラメント群(B)とからなる捲縮加工糸であって且つ上記した要件(a)〜要件(d)を有する捲縮加工糸であればいずれの方法によって製造されたものであってもよいが、好ましくは下記のようにして製造することができる。
【0032】
捲縮加工糸の製造法
まず、複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が1デニール以上3.5デニール未満の未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)と複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が3.5以上8デニール以下の未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)を製造する。
未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および(A2)の複屈折率(△n)が0.01未満であると糸条が経時的に物性変化を生じて、延伸および延伸同時仮撚処理を施した際にフィラメントに太細斑を安定して出現させることができず、しかも仮撚時に熱硬化して硬い風合になり易い。一方、未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および(A2)の複屈折率(△n)が0.03を超えると、延伸しても太細斑が生じにくくなり、杢調を呈する布帛が得られにくくなる。
【0033】
また、未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)の平均単繊維繊度が1デニール未満であると延伸および延伸同時仮撚後に得られる太細斑フィラメントにおいて未延伸の太部が熱劣化を受けてその部分の脱落による粉落ち現象を生じ易くなり、一方3.5デニールを超えると長さが1mm未満の太部をフィラメントに出現させにくくなる。また、未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)の平均単繊維繊度が3.5デニール未満であると長さが1mm以上3cm未満の太部をフィラメントに出現させにくくなり、一方8デニールを超えると未延伸の太部が熱劣化し易くなる。
【0034】
複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が1デニール以上3.5デニール未満の未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が3.5以上8デニール以下の未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)からなるデニールミックスポリエステルマルチフィラメント未延伸糸は次のようにして製造することができる。
【0035】
(1) 例えば図2に示すような、左右で孔数および孔径を変えてある分割型の口金を有する紡糸装置を使用して、平均粒径が0.9μm以下の無機微粒子を1〜10重量%含有するポリエステルを、図2の紡糸口金の左側と右側の紡糸孔の両方から同時に紡出させて、細デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)と太デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)とが混繊したデニールミックスマルチフィラメント未延伸糸を製造する。
【0036】
(2) また、細デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および太デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)の一方を分散染料可染性のポリエステルから製造し、もう一方をカチオン染料可染性のポリエステルから製造する場合は、図2の紡糸口金に分散染料可染性ポリエステルとカチオン染料可染性ポリエステルの2液を供給して、それぞれを口金の左側および右側の紡糸孔から紡出させて、分散染料可染性またはカチオン染料可染性の細デニール未延伸フィラメント群(A1)とカチオン染料可染性または分散染料可染性の太デニール未延伸部フィラメント群(A2)とが混繊したデニールミックスマルチフィラメント未延伸糸を製造する。この場合にいずれか一方に平均粒径が0.9μm以下の無機微粒子を1〜10重量%含有させておく。
【0037】
(3) また別の方法として、生産効率が多少劣るが、細デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)と太デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)とを別々の口金を使用してそれぞれ別に紡糸して製造し、それらのフィラメント群を一緒にしてデニールミックスマルチフィラメント未延伸糸にしてもよい。
【0038】
上記した(1)〜(3)のいずれの方法の場合も、紡糸速度を1500〜2500m/分とすると複屈折率(△n)が0.01〜0.03の中配向未延伸糸を円滑に製造することができ、1800〜2200m/分がより好ましい。紡糸速度が1500m/分未満であると、複屈折率(△n)が0.01未満になり易く、しかも糸または布帛における強度が不足する。一方2500m/分を超えると複屈折率(△n)が0.03を超えるようになって延伸後にフィラメントに上記した微細でランダムな太細斑を発生させるのが困難となり目的とする糸を得ることができにくくなる。
【0039】
また、上記(1)〜(3)の紡糸を行う際には、次の延伸処理中に各フィラメントの延伸点がバラけて分散延伸が円滑に行われるように、摩擦係数(特にFF動摩擦係数)の低い油剤を使用するのが望ましく、その際の油剤の付与量は0.8重量%以上とするのがよい。油剤の量が0.8重量%未満の場合は、各フィラメントにおける太細の周期が長くなり易く、太細斑が微細に分散した太細斑フィラメントが得られにくくなる。
【0040】
そして、上記した細デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および太デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)の他に、更に複屈折率(△n)が0.03〜0.06の太細斑のない高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)を用意する。この場合に、高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の複屈折率(△n)が0.03未満であるとこのフィラメント群(B1)の破断伸度が大きくなって延伸工程での延伸倍率が高くるために、フィラメント群(A1)、(A2)および(B1)を合糸して延伸した際に細デニールの未延伸フィラメント群(A1)および太デニールの未延伸フィラメント群(A2)に上記した微細でランダムな太細斑が発生しにくくなる。一方、高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の複屈折率(△n)が0.06よりも大きいとフィラメント群(B1)の破断伸度が小さくなり、延伸工程での延伸倍率が低くなって延伸時の張力変動が少なくなってフィラメント群(A1)、(A2)および(B1)を合糸して延伸した際に細デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A1)および太デニールの未延伸ポリエステルフィラメント群(A2)に太部長さの異なるランダムな太細斑を発生させにくくなる。
【0041】
高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)は、上記した繊維形成性のポリエステルを用いて通常の紡糸方法によって製造することができる。高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)としては、単繊維繊度が約2〜5デニールで、フィラメント群(B1)の総デニール数が約50〜150デニールのものを使用するのが、延伸および延伸同時仮撚処理を行う際の工程性および得られる捲縮加工糸の物性や風合などの点から好ましい。
【0042】
そして、上記した細デニールの未延伸フィラメント群(A1)、太デニールの未延伸フィラメント群(A2)および高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)を合わせてポリエステルマルチフィラメント未延伸糸とし、これを下記の式(I);
【0043】
【数5】
1(%)={(Db/100)+1}×(0.5〜0.6) (I)
式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)を満足する延伸倍率(D1)で延伸し、次に下記の式(II);
【0044】
【数6】
2(%)=[{(Db/100)+1}×(0.6〜0.7)]/D1 (II)
式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)
を満足する延伸倍率(D2)で延伸同時仮撚する。
【0045】
1段目の延伸倍率を上記の式(I)を満足する延伸倍率D1で行い、次の延伸同時仮撚を上記の式(II)を満足する延伸倍率D2で行うということは、1段目で大きく延伸した後、延伸同時仮撚時に少し延伸することを意味する。上記の式(I)および式(II)の範囲から外れて、1段目に少しだけ延伸し延伸同時仮撚時に大きく延伸すると、1段目の延伸で生じた太細斑が延伸同時仮撚により消失またはぼやけて、目的とする微細でランダムな太細斑を有する捲縮加工糸が得られない。
【0046】
延伸および延伸同時仮撚によるトータル延伸倍率はD1とD2の積;D1×D2であるから、上記の式(I)および式(II)の積である;{(Db/100)+1}×(0.6〜0.7)がトータル延伸倍率となる。通常、未延伸糸のフル延伸倍率は、未延伸糸の破断伸度をDeとした場合に{(De/100)+1}×(0.6〜0.7)程度となるから、本発明における上記トータル延伸倍率は高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)がフル延伸されていることを示している。トータル延伸倍率が{(De/100)+1}×0.6未満では高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)が充分に延伸されず太細斑を発生して糸に強度を付与できにくくなるので望ましくなく、一方でトータル延伸倍率が{(De/100)+1}×0.7を超えると高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の延伸が過度になって毛羽が多発し好ましくない。
【0047】
1段目の延伸処理は、一般に約60〜140℃の温度で行うようにするのがよい。また、延伸同時仮撚時の条件としては、仮撚加工速度100〜300m/分、仮撚数約1800〜3000T/m、仮撚ヒータ温度約100〜200℃とするのがよい。仮撚機としては、延伸および伸同時仮撚を続けて行うことのできるアウトドロー方式の仮撚機を使用するのが好ましいが、1段目の延伸と延伸同時仮撚とを続けて行わずに2工程で行ってもよい。仮撚具はスピンドルタイプのものでもまたは摩擦仮撚タイプのものでもよいが、スピンドルタイプのものが太細斑をより円滑に発現させることができ好ましい。
【0048】
また、延伸の前または延伸同時仮撚後に流体交絡処理を行って、フィラメント間に混繊交絡を生じさせておくのが、糸条の解舒性および製編織時の工程通過性が良好になり好ましい。その場合に、交絡が強すぎると微細な太細斑の生成や分散が良好に行われにくくなるので、30〜50個/m程度の交絡数とするのが好ましい。
【0049】
本発明の捲縮加工糸は、各種の織編物や不織布にすることができ、特に衣料用の織編物に適している。本発明の捲縮加工糸から製造された織編物は、強度的に優れていると共に、天然繊維、特にウール様の自然で且つ良好なふくらみ感のある風合、触感を有し、且つ適度な張り腰を有する。しかも、染色した際にその染色濃度や明度が多段階になり、特に細デニール太細斑フィラメント群(A)および太デニール太細斑フィラメント群(B)の一方を分散染料可染性としもう一方をカチオン染料可染性とした場合には、微細で且つランダムな3色以上の多色相状態に染色されてその色調が極めて自然な杢調をなし、高級な色調、外観および風合を有する。
【0050】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の例において、糸(フィラメント群)の複屈折率(△n)、破断伸度、細デニールフィラメント群および太デニールフィラメント群の平均単繊維繊度、捲縮加工糸における太部長さおよび数、捲縮数および交絡数の測定、並びに染色後の濃淡数または色数の確認は次のようにして行った。
【0051】
糸(フィラメント群)の複屈折率(△n)の測定
ベレックのコンペンセーターを用いて測定した。
【0052】
各フィラメント群の平均単繊維繊度の測定
各マルチフィラメント群を少なくとも100m以上採取し、その総デニールをフィラメント数で除して平均単繊維繊度を求めた。
【0053】
太部長さおよび数の測定
得られた捲縮加工糸を20cm採取し、糸を構成するフィラメントを太デニール太細斑フィラメント群と細デニール太細斑フィラメント群に分ける。太デニールフィラメントの顕微鏡写真(100〜500倍)を撮影し、その写真から太部の長さを測定し、糸長10cm当たりの、長さが1mm未満の太部の数、長さが1mm以上3cm未満の太部の数および長さが3cm以上の太部の数を数える。
【0054】
捲縮数の測定
東洋精機製作所製の捲縮試験機により以下の手順で測定した。
ビロード板上に長さ10cm程度の糸条を置き、ピンセットにて人工的に捲縮を損なわないように単糸1本を抜き取る。予め準備した滑沢紙上に両面粘着テープおよび片面粘着テープにて空間距離25mmの線に単糸を貼付し1本ずつ切り分け捲縮試験機にセットする。単糸1本ずつデニール当たり2mgの初荷重を掛けた場合の長さ(A)(mm)を測定し、その時の捲縮数(B)(個)を読み、下記の式により捲縮数(個/25mm)を求める。
【0055】
【数7】
捲縮数(個/25mm)=(25/A)×B
【0056】
交絡数の測定
0.02g/dの張力下で非交絡部にピンを刺し、0.1g/dの張力でピンを糸の長手方向の前後に移動せしめ、ピンの止まった箇所を交絡部として、1m当たりに交絡部が何カ所あるかを求める。
【0057】
濃淡数または色数の確認
捲縮加工糸より得られた織物を染色し、その濃淡数または色数を肉眼で観察して数える。
【0058】
《実施例 1》
(1) 平均粒径0.6μmの硫酸バリウムを8重量%含有する[η]=0.65のポリエチレンテレフタレートを使用して、図2に示すような分割型の口金(但しこの実施例1では左側12ホール;右側36ホールの口金を使用)の左側および右側の紡糸孔から、1:1の吐出量で口金温度295℃でそれぞれ同時に紡出させ、紡糸速度1800m/分、油剤(糸−糸動摩擦係数0.29)の付着量1.0重量%の条件下に紡糸して、複屈折率(△n)が0.017である60デニール/36fの細デニールポリエステルフィラメント群(A1)(単繊維繊度1.7デニール)と、60デニール/12fの太デニールポリエステルフィラメント群(A2)(単繊維繊度5デニール)とが合糸されたデニールミックス中配向未延伸糸を製造した。
【0059】
(2) [η]=0.65のポリエチレンテレフタレートを使用して、口金温度295℃、紡糸速度3200m/分で紡糸して、複屈折率(△n)0.037、破断伸度143%の太細斑の実質的にない高配向未延伸糸(B1)(85デニール/24f)を製造した。
【0060】
(3) 上記(1)で得たデニールミックス中配向未延伸糸および上記(2)で得た高配向未延伸糸(B1)を引揃えてホットピン温度65℃、延伸倍率(D1)1.35倍で延伸し、続いてヒーター温度180℃、延伸倍率(D2)1.17倍、撚数2630T/m、糸速度180m/分で延伸同時仮撚した。引き続いて、インターレースノズルへの送り込み率3%、空気圧3.0kg/cm2で空気交絡し(交絡数40個/m)、巻取って135デニール/72fの捲縮加工糸を得た。この捲縮加工糸では、太デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は1.0デニール、細デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は3.1デニールであり、実質的に太細斑のないフィラメントの割合は糸条の41重量%であった。またこの捲縮加工糸は、糸長10cm当たり、長さが1mm未満の太部を78個、長さが1mm以上3cm未満の太部を18個、そして長さが3cm以上の太部を10個有していた。
(4) 上記(3)で得た捲縮加工糸を用いて1/1平織物を作製し、下記の表1に示す組成の染色浴中に120℃に20分間浸漬して染色を行った。
【0061】
【表1】
Figure 0003761908
【0062】
上記で得られた染色生地は、ウール様のタッチと張り腰を有し、ふくらみのある風合を有していた。また少なくとも3段階以上の濃淡差が目視により確認できき、染色生地は微細な深みのある自然な杢調を呈していた。
【0063】
《比較例 1》
(1) 硫酸バリウムを使用しない以外は実施例1の(1)と同様に紡糸を行って、複屈折率(△n)が0.017である60デニール/36fの細デニールポリエステルフィラメント群(単繊維繊度1.7デニール)と、60デニール/12fの太デニールポリエステルフィラメント群(単繊維繊度5デニール)とが合糸されたデニールミックス中配向未延伸糸を製造した。
(2) 実施例1の(2)と同様に紡糸を行って、複屈折率(△n)0.037、破断伸度143%の太細斑の実質的にない高配向未延伸糸(85デニール/24f)を製造した。
【0064】
(3) 上記(1)のデニールミックス中配向未延伸糸および上記(2)の高配向未延伸糸を用いて実施例1の(3)と同様にして延伸および延伸同時仮撚を行って捲縮加工糸を製造した。ここでで得られた捲縮加工糸では、太デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は3.0デニール、細デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は1.0デニールであり、実質的に太細斑のないフィラメントの割合は糸条の41重量%であった。また、この捲縮加工糸は、糸長10cm当たり、長さが1mm未満の太部を3個、長さが1mm以上3cm未満の太部を2個、そして長さが3cm以上の太部を18個有していた。
(4) 上記(3)で得た捲縮加工糸から実施例1の(4)と同様の平織物を作製し、それを実施例1の(4)と同様にして染色した。染色生地は濃淡差が極端であり微細に分散しておらず、平坦な深みのない色調を呈していた。
【0065】
《実施例 2》
(1) 平均粒径0.6μmの硫酸バリウムを8重量%含有する[η]=0.65のポリエチレンテレフタレートを単一孔径の紡糸口金を用いて口金温度295℃、紡糸速度1850m/分、油剤(糸−糸動摩擦係数0.29)の付着量1.0重量%の条件下に紡糸して、複屈折率(△n)が0.017である60デニール/36fの細デニールポリエステルフィラメント群(A1)(単繊維繊度1.7デニール)を製造した。
【0066】
(2) 5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.7モル%共重合した[η]=0.65のカチオン染料可染性エチレンテレフタレート共重合体を単一孔径の紡糸口金を用いて口金温度295℃、紡糸速度1900m/分、油剤(糸−糸動摩擦係数0.29)の付着量1.0重量%の条件下に紡糸して、複屈折率(△n)が0.016である60デニール/12fの太デニールポリエステルフィラメント群(A2)(単繊維繊度5デニール)を製造した。
(3) 実施例1の(2)と同様に紡糸を行って、複屈折率(△n)0.037、破断伸度143%の太細斑の実質的にない高配向未延伸糸(B1)(85デニール/24f)を製造した。
【0067】
(4) 上記(1)で得た細デニールフィラメント群(A1)、上記(2)で得たフィラメントフィラメント群(A2)および上記(3)で得た高配向未延伸糸(B1)を用いて、実施例1の(3)と同様にして延伸および延伸同時仮撚を行って捲縮加工糸を製造した。ここでで得られた捲縮加工糸では、太デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は3.0デニール、細デニール太細斑フィラメント群の平均単繊維繊度は1.0デニールであり、実質的に太細斑のないフィラメントの割合は糸条の41重量%であった。また、この捲縮加工糸は、糸長10cm当たり長さが1mm未満の太部を69個、長さが1mm以上3cm未満の太部を12個、そして長さが3cm以上の太部を15個有していた。
【0068】
(5) 上記(4)で得た捲縮加工糸を用いて実施例1の(4)と同様の平織物を作製し、それを下記の表2に示す組成の染色浴を用いて以下のようにして染色した。
【0069】
【表2】
Figure 0003761908
【0070】
生機を上記の染色浴に投入した後、1.5℃/分の割合で浴温度を40℃から110℃まで上昇させ、110℃を保ったまま20分間染色し、次いで2℃/分の割合で浴温度を135℃まで上昇させ、135℃を保ったまま15分間染色した。その後染色浴の温度が30℃になるまで生機を入れたまま冷却し、次いで浴より取り出して水洗した。水洗後、常法により還元洗浄し乾燥した後、160℃でファイナルセットを行った。
得られた染色生地はウール様のタッチと張り腰、ふくらみのある風合を有していた。また生地全体に濃い赤、やや薄い赤、濃いブルーおよび薄いブルーの4色が微細に且つ微妙に混合した深みのある杢調を呈していた。
【0071】
【発明の効果】
本発明の捲縮加工糸およびそれよりなる布帛は、3段階以上の濃淡差または3色以上の多色相が微細に分散するファジーで深みのある杢調の色調を有し、その色杢表現が極端に強すぎたり弱過ぎたりせずに全体に微細に分布しているために、自然で深みがあり高級感のある色調および外観を有する。
そして、本発明の捲縮加工糸および布帛は、適度の張り腰を有すると共に嵩高性に優れ、ふくらみ感のある極めて良好な天然繊維、特にウール様の風合および触感を有しており、しかも太細斑のないフィラメント群が太細斑フィラメント群と混繊していることにより強度的にも優れており、断糸や穴あきを生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の捲縮加工糸における細デニール太細斑フィラメントおよび太デニール太細斑フィラメントの太部の長さの測定法を示す図である。
【図2】本発明で使用するデニールミックポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を製造するのに用いる紡糸口金の一例を示す図である。

Claims (3)

  1. 長さ方向に太細斑を有するポリエステルフィラメント群(A)および長さ方向に太細斑が実質的にないポリエステルフィラメント群(B)よりなる捲縮加工糸であって、
    (a)長さが1mm未満の太部が糸長10cm当たり10個以上存在する;
    (b)長さが1mm以上3cm未満の太部が糸長10cm当たり5個以上存在する;
    (c)長さが3cm以上の太部が糸長10cm当たり5個以上存在する;および
    (d)長さ方向に太細斑が実質的にないポリエステルフィラメントの割合が30重量%以上である;
    という要件(a)〜(d)を備えていることを特徴とする捲縮加工糸。
  2. (A1)複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が1デニール以上3.5デニール未満の未延伸細デニールポリエステルフィラメント群;(A2)複屈折率(△n)が0.01〜0.03で且つ平均単繊維繊度が3.5以上8デニール以下の未延伸太デニールポリエステルフィラメント群;および(B1)複屈折率(△n)が0.03〜0.06の高配向未延伸ポリエステルフィラメント群からなり、且つ上記未延伸細デニールポリエステルフィラメント群(A1)および未延伸太デニールポリエステルフィラメント群(A2)の少なくとも一方が平均粒径0.9μm以下の無機微粒子を1〜10重量%含有するポリエステルから製造されているポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を、下記の式(I);
    【数1】
    1(%)={(Db/100)+1}×(0.5〜0.6) (I)
    式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)
    を満足する延伸倍率(D1)で延伸し;次いで下記の式(II);
    【数2】
    2(%)=[{(Db/100)+1}×(0.6〜0.7)]/D1 (II)
    式中、Db=高配向未延伸ポリエステルフィラメント群(B1)の破断伸度(%)
    を満足する延伸倍率(D2)で延伸同時仮撚することを特徴とする請求項1の捲縮加工糸の製造方法。
  3. 請求項1の捲縮加工糸よりなる布帛。
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