JP3194464B2 - ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法 - Google Patents

ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法

Info

Publication number
JP3194464B2
JP3194464B2 JP32104395A JP32104395A JP3194464B2 JP 3194464 B2 JP3194464 B2 JP 3194464B2 JP 32104395 A JP32104395 A JP 32104395A JP 32104395 A JP32104395 A JP 32104395A JP 3194464 B2 JP3194464 B2 JP 3194464B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
fabric
weight
polyester
alkali
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP32104395A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09188964A (ja
Inventor
秀康 寺尾
靖夫 高田
功夫 上西
光男 田中
泰史 山口
裕康 村井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp, Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP32104395A priority Critical patent/JP3194464B2/ja
Publication of JPH09188964A publication Critical patent/JPH09188964A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3194464B2 publication Critical patent/JP3194464B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)
  • Artificial Filaments (AREA)
  • Woven Fabrics (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィブリル化した
毛羽を有し、且つ高い吸水性をも兼備したポリエステル
系繊維布帛及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル系繊維布帛についての生産
加工技術として、改良され進歩した多種多様の技術があ
り、例えば、絹様布帛を得る技術により、膨らみ感、ド
レープ性、反発性等の点では、絹布帛に非常に近いもの
が得られるようになった。しかしながら、ドライ感、不
透明感等の点では、絹布帛に比べ未だ満足しうるもので
はなく、問題として残っている。
【0003】このような問題点を解決するため、繊維断
面形状を異形化した繊維、0.1デニール以下の細デニ
ール繊維等の使用も試みられているが、布帛が粗硬な表
面になったり、紡糸に高度技術を必要とする等の問題が
あり、また満足すべきドライ感、ぬめり感を得るに至っ
ていない。また、繊維に酸化チタン等を含有させ不透明
感を与える等の方法もあるが、フルダル繊維は、金属を
摩耗し、布帛を製造する機器を損傷させる等の欠点があ
る。
【0004】織編物の表面に毛羽を与える方法として、
特開昭55−16906号公報、特公昭61−9427
号公報等が提案されており、これらの提案によれば、繊
維を積極的にフィブリル化するために、ポリエステル以
外のポリマーを多量に用いて繊維を製造する。そのた
め、織編物の十分な風合いの向上、効果が期待できない
ばかりか、染色性等に欠点を有するものであった。ま
た、これら繊維からなる織編物の製造においては、例え
ばポリアミドポリマーの膨潤剤で処理する等の煩雑な工
程を要するばかりでなく、ポリエステル繊維中のフィブ
リル構造のようなミクロスケールの繊維構造を高度に抑
制することはできず、工業的に簡便かつ安定した方法に
よっては、フィブリル化現象による新たな感触、風合
い、機能等を織編物に付与することが困難であった。
【0005】更に、特公平2−58374号公報には、
有機化合物からなりポリエステルとは非相溶性の添加
剤、例えば一般式R−SO3 Mで表される有機スルホン
酸の金属塩が配合されたポリエステル繊維を用いた織編
物にアルカリ加水分解処理の前後のいずれかでバッフィ
ング処理を施してフィブリル化させる方法が開示されて
いる。この方法では、フィブリル化を織編物の表面に発
生させるために、添加剤が配合されたポリエステル繊維
を織編物の表面に配するようにして織製又は編製がなさ
れる。また、特開昭56−68161号公報にはポリエ
ステル繊維の織編物をその表面を加熱加圧してから加水
分解処理を行い、その後にバッフィング、針布起毛等の
物理的な起毛加工を施す方法が開示されている。この方
法においては、ポリエステル繊維に変性ポリエステル等
の添加剤を配合することが開示されてはいるが、この添
加剤がフィブリル化を促進するためのものとは考えられ
ない。
【0006】これらの方法によれば、どちらも物理的な
起毛処理又はバッフィング処理を施すことが前提とされ
ている。しかしながら、このような起毛処理又はバッフ
ィング処理を施すことは織編物に多大な負担をかけるこ
とになり、織編物を損傷させ、強度が低下するばかりで
なく、起毛処理では加水分解処理時に切断された繊維の
脱落等により粉落ちが発生しやすく、生産上のトラブル
の要因にもなる。
【0007】また、極細繊維を用いる方法は、紡糸口金
や紡糸工程の条件から無限に細く、また無段階に繊度を
変えて紡糸を行うことは不可能である。さらに、非相溶
性の添加剤を分散配合したポリエステル繊維の織編物に
アルカリ加水分解処理、バッフィング処理等を行ってミ
クロフィブリル化した毛羽を形成する方法は、毛羽の脱
落が多いという欠点を有している。
【0008】また従来のポリエステル繊維の織編物が直
面している、吸水性及び吸汗性の向上という課題に対し
ては、特開昭54−101866号公報でポリエステル
繊維に微細孔を設けることが提案されている。微細孔を
設けるために、ポリエステルに有機スルホン酸金属塩を
配合して成形した後、アルカリ性化合物の水溶液で処理
することにより有機スルホン酸金属塩を溶融除去するこ
とが開示されている。この提案によれば織編物の吸水性
は繊維表面の前記微細孔及びその特殊な断面形状に依存
するものであり、繊維表面にフィブリル化を発生させな
いことを前提としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリエステ
ル系繊維布帛が有するところのタッチが硬く布帛表面に
ヌメリ感があるといった風合い面での課題、並びに吸水
性、吸汗性に劣るという機能面での課題を解決しようと
するものであり、本発明の目的は、適度な膨らみ感、ド
レープ性、反発性を有し、ドライ感、ぬめり感を兼ね備
え、更には、高い吸水性をも発現し、しかも、構成繊維
表面に存在する毛羽の脱落が少ないポリエステル系繊維
布帛を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、布帛の少なく
とも一方の面において、布帛を構成するポリエステル系
繊維の繊維表面に直径が0.05〜5μm、長さが5μ
m以上のフィブリル化した毛羽と、幅が0.05μm以
上、長さが5μm以上、隣接する溝との間隔が5μm以
下の繊維軸方向に高配向した多数の筋状溝を有すると共
に、繊維内部に繊維横断面における直径が0.1μm以
上、繊維横断面積に占める割合が2.5%以上の複数の
不規則な空隙を有し、空隙の少なくとも一部が繊維表面
と連通し筋状溝の一部を形成していることを特徴とする
ポリエステル系繊維布帛、
【0011】及び、一般式R−SOM(式中、Rは炭
素数3〜30のアルキル基、または炭素数4〜70のア
リール基若しくはアルキルアリール基、Mはアルカリ金
属を示す)で表される有機スルホン酸金属塩を0.1〜
8重量%含有するかまたは前記式で表される有機スルホ
ン酸金属塩と平均分子量が10,000以下のポリエチ
レンとの混合物を0.1〜10重量%含有するポリエス
テル系繊維にて構成した布帛の少なくとも一方の全面
多価アルコールエチレンオキシド付加物からなるア
ルカリ減量促進剤を含浸または塗布し、100℃以上の
温度で熱処理した後、減量率10重量%以上のアルカリ
減量処理を施すことを特徴とするポリエステル系繊維布
帛の製造方法、にある。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステル系繊維布帛
は、織物、編物等の布帛の一部または全部がポリエステ
ル系繊維で構成され、布帛の少なくとも一方の面におい
て、布帛を構成するポリエステル系繊維が、図1に示す
ように、繊維表面に直径が0.05〜5μm、長さが5
μm以上のフィブリル化した毛羽を有し、このフィブリ
ル化した毛羽に加え、幅が0.05μm以上、長さが5
μm以上、隣接する溝との間隔が5μm以下の繊維軸方
向に高配向した多数の筋状溝を有すると共に、繊維内部
に繊維横断面における直径が0.1μm以上、繊維横断
面積に占める割合が2.5%以上の複数の不規則な空隙
を有し、空隙の少なくとも一部が繊維表面と連通し筋状
溝の一部を形成している。
【0013】本発明においては、布帛を構成するポリエ
ステル系繊維の繊維表面のフィブリル化した毛羽は、そ
の直径が0.05μm未満または長さが5μm未満で
は、布帛の風合いの改良が充分になされず、柔軟性、ド
ライ感、ぬめり感が不足する。また、筋状溝は、その幅
が0.05μm未満または長さが5μm未満であると、
ドライ感の解消が不足する。また、ポリエステル系繊維
の繊維内部の空隙は、布帛により優れた風合いを付与
し、また繊維の剛性を低下させ布帛に柔軟性を付与す
る。また、この繊維内部の空隙は、不規則な形状を呈
し、しかも少なくともその一部が繊維表面と連通し筋状
溝の一部を形成しており、繊維表面の水分を繊維内部に
取り込むことができ、布帛に吸水性を付与する。
【0014】図1に、本発明の布帛を構成する繊維の一
例を示す断面の電子顕微鏡写真を示すが、繊維軸方向に
高配向した多数の筋状溝を有すると共に、繊維内部に複
数の不規則な空隙を有し、繊維内部の空隙の少なくとも
一部が繊維表面と連通し筋状溝の一部を形成しているこ
とが分かる。図5に、その模式図を示す。図2及び図3
に本発明の布帛の表面の一例を示す電子顕微鏡写真を示
す。本発明の布帛には、フィブリル化した毛羽が多数存
在することが分かる。図4は、実施例10で得られた布
帛を構成する混繊糸の断面を示す写真であるが、本発明
では、フィブリル化される繊維と他のフィブリル化され
ない繊維を併用することによって、強度低下等の点をさ
らに、改良することが可能である。
【0015】本発明における布帛を構成するポリエステ
ル系繊維のポリエステルポリマーは、エチレンテレフタ
レートを主たる繰り返し単位とするものであり、テレフ
タル酸またはそのエステル形成性誘導体をジカルボン酸
成分とし、エチレングリコールあるいは1,4−ブタン
ジオールから選ばれた少なくとも1種類のグリコールま
たはそのエステル形成性誘導体をグリコール成分とする
ポリエステルが代表的なものであるが、このジカルボン
酸成分の一部を他のジカルボン酸成分で置き換えてもよ
く、グリコール成分の一部を他のグリコール成分で置き
換えてもよい。
【0016】他のジカルボン酸成分としては、イソフタ
ル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン
酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セ
バシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジ
カルボン酸類、またはこれらのエステル形成性誘導体、
5−スルホイソフタル酸あるいは2−スルホイソフタル
酸、1,8−ジカルボキシナフタレン−3−スルホン酸
等のアルカリ金属塩等の金属スルホネート基含有酸成
分、及び、p−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキ
シ安息香酸等のオキシカルボン酸類、またはこれらのエ
ステル形成性誘導体等があげられる。
【0017】他のグリコール成分としては、炭素数3〜
10の低級アルキレングリコール、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−
ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノール
−Aのビスグリコールエーテル、各種分子量のポリエチ
レングリコールまたはポリプロピレングリコール、エチ
レンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ある
いはポリアルキレングリコールの各種誘導体等があげら
れる。
【0018】更に、ポリエステルが実質的に線状である
範囲内で、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカ
ルボン酸、トリメチロールプロパンまたはそのエチレン
オキサイド付加誘導体、ペンタエリスリトール、グリセ
リンまたはそのエチレンオキサイド付加誘導体等のポリ
オール、各種分子量のモノハイドリックポリアルキレン
オキサイドまたはその誘導体、フェニル酢酸等の重合停
止剤を用いてもよい。
【0019】本発明のポリエステル系繊維布帛の製造方
法について、以下説明する。本発明において、布帛の構
成に用いるポリエステル系繊維としては、前記一般式で
表される有機スルホン酸金属塩を0.1〜8重量%含有
するか、または有機スルホン酸金属塩と平均分子量が1
0,000以下のポリエチレンとの混合物を0.1〜1
0重量%含有するポリエステル系繊維であることが必要
である。
【0020】ポリエステル系繊維に含有される有機スル
ホン酸金属塩は、布帛をアルカリ減量処理したときに、
アルカリ加水分解での活性点となり、ポリエステル系繊
維の繊維表面に多数のフィブリル化した毛羽、或いはさ
らに筋状溝を形成させると共に、繊維内部に不規則な空
隙を形成せ、さらに空隙の一部を繊維表面と連通し筋状
溝の一部を形成させるための必須成分であり、有機スル
ホン酸金属塩の含有量が0.1重量%未満では、フィブ
リル化した毛羽の形成、筋状溝、空隙の形成及び繊維表
面への連通が不充分となり、風合いの改良の目的が達成
されず、8重量%を超えると、工程通過安定性が悪化す
る。有機スルホン酸金属塩の好ましい含有量としては、
0.5〜5重量%である。
【0021】また、ポリエステル系繊維に含有される有
機スルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物は、布帛
をアルカリ減量処理したときに、特にポリエチレンの共
存により繊維表面の多数の筋状溝と繊維内部の不規則な
空隙の形成をより促進するものであり、含有量が0.1
重量%未満では、フィブリル化した毛羽の形成、筋状
溝、空隙の形成及び繊維表面への連通が不充分となり、
風合いの改良の目的が達成されず、10重量%を超える
と、工程通過安定性が悪化する。有機スルホン酸金属塩
とポリエチレンとの混合物の好ましい含有量としては、
0.5〜7重量%である。
【0022】本発明においてポリエステル系繊維に含有
される前記一般式で表される有機スルホン酸金属塩とし
ては、例えば、炭素数3〜30のアルキルスルホン酸ア
ルカリ金属塩として、ブチルスルホン酸、ヘキシルスル
ホン酸、オクチルスルホン酸、デシルスルホン酸、ラウ
リルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸、パルミチルス
ルホン酸、ステアリルスルホン酸等のナトリウム塩、カ
リウム塩、リチウム塩、またはトルエンスルホン酸、ド
デシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム
塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0023】中でも、本発明に用いる有機スルホン酸金
属塩の好ましい具体例としては、アルキルスルホン酸ナ
トリウム塩があげられ、さらに好ましい具体例として、
炭素数12〜17のアルキルスルホン酸ナトリウム塩の
混合物が挙げられる かかる有機スルホン酸金属塩は、単一の化合物である必
要はなく、前記一般式で示される各種有機スルホン酸金
属塩の混合物であってよい。
【0024】また、有機スルホン酸金属塩は、単独で用
いてもよいが、熱安定性を向上させる目的で、公知の安
定剤、抗酸化剤等を少量添加配合して用いることは好ま
しいことである。有機スルホン酸金属塩に添加配合する
安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物及びチ
オエーテル系化合物等があげられる。これら化合物は単
独添加してもよいが、より耐熱性を向上させるために、
共同添加することも好ましい。
【0025】通常市販されている有機スルホン酸金属塩
は、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウム等の無機系不純物
を含有している。従って、有機スルホン酸金属塩を配合
したポリエステルを溶融紡糸する場合、これら不純物が
口金パック内のフィルターに補足されやすく、経時的に
フィルター上に堆積していく。その結果、フィルター背
圧の上昇を引き起こし、更には、糸切れ等の原因ともな
る。これら現象は、ポリエステルへの有機スルホン酸金
属塩の配合量が多くなる程、顕著な現象として現われ
る。
【0026】従って、本発明に用いる有機スルホン酸金
属塩は、無機物含有量が1,500ppm以下であるこ
とが好ましい。特に、アルキルスルホン酸ナトリウム塩
を用いる場合には、酸化ナトリウム含有量が500pp
m以下であり、かつ、硫酸ナトリウム含有量が1,00
0ppm以下であることが好ましい。
【0027】また、ポリエステル系繊維に含有される有
機スルホン酸金属塩と混合されるポリエチレンとして
は、有機スルホン酸金属塩の高い溶融粘度を低下させる
上で、平均分子量が10,000以下、好ましくは5,
000以下の低粘度型ポリエチレンを用いる。有機スル
ホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物における混合比
(重量比)は、好ましくは有機スルホン酸金属塩:ポリ
エチレン=5:95〜95:5である。
【0028】有機スルホン酸金属塩または有機スルホン
酸金属塩とポリエチレンとの混合物のポリエステル系繊
維への含有は、繊維賦形前の前記ポリエステルポリマー
を製造する過程或いは紡糸段階で添加することにより行
われる。また、繊維の製造方法としては、特に限定され
るものではない。
【0029】かかる有機スルホン酸金属塩または有機ス
ルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合物を含有するポ
リエステル系繊維を用い、製織または製編してポリエス
テル系繊維を構成繊維とした布帛とする。
【0030】本発明のポリエステル系繊維布帛を得るに
当たっては、製織または製編した後の布帛の形態におい
て、布帛の少なくとも一方の面に、多価アルコールエチ
レンオキシド付加物からなるアルカリ減量促進剤を含浸
または塗布し、100℃以上の温度で熱処理することが
必須である。このとき、アルカリ減量促進剤の塗布にお
いては、布帛の片面に塗布することが好ましい。布帛の
片面だけに塗布することにより、布帛の片面だけにフィ
ブリル化した毛羽、片面の繊維表面に筋状溝、片面の繊
維内部に不規則な空隙を発生させることも可能である。
【0031】本発明におけるアルカリ減量促進剤は、前
述のように、含浸または塗布した場合、含浸または塗布
しない場合と比べて、その後のアルカリ減量処理におい
て布帛の減量速度が速くなる化合物であって、多価アル
コールにエチレンオキシドを付加して生成された多価ア
ルコールエチレンオキシド付加物からなる。
【0032】多価アルコールエチレンオキシド付加物と
しては、エチレングリコール、プロピレングリコール、
ヒドロベンゾイン、ベンゾピナコール、シクロペンタン
−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオー
ル等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコール
等の多価アルコールにエチレンオキシドを2モル以上付
加して生成されたものであり、付加反応の方法として
は、特に限定はなく公知の方法によってよい。好ましく
用いられる多価アルコールエチレンオキシド付加物とし
ては、エチレングリコールのエチレンオキシド5〜30
付加物、グリセリンのエチレンオキシド3〜28付加物
が挙げられる。
【0033】
【0034】
【0035】これら、アルカリ減量促進剤は、アルカリ
減量促進剤濃度が500g/l以下、好ましくは250
g/l以下の水溶液を含浸または塗布する。この含浸ま
たは塗布は、公知の方法によって行われ、浸漬、フラッ
トスクリーン又はロータリースクリーンによるプリン
ト、ナイフコーター式又はタッチロール式のコーティン
グ、スプレー等の任意の方法が用いられる。アルカリ減
量促進剤水溶液には必要に応じ糊剤等の添加剤が含まれ
ていてもよい。このとき糊剤とアルカリ減量促進剤の混
合物の付着量は布帛に対して、5〜30重量%となるこ
とが好ましい。
【0036】本発明におけるアルカリ減量促進剤の多価
アルコールエチレンオキシド付加物は、布帛の強力低下
が生じ難く、しかも工程での作業性、安全性に優れ、
記水溶液の他、アルコール等の有機溶剤溶液に含有させ
てもよく、有機溶剤溶液とするときには好ましくは溶剤
に対し5重量%以上の濃度とするのがよい。
【0037】布帛の片面に塗布する場合、アルカリ減量
促進剤に糊剤を含有させることが好ましく、糊剤との混
合により適度の粘度に調整することにより、均一な塗布
が可能となる。このとき使用する糊剤としては、小麦澱
粉、米糠、トラカントゴム、アルギン酸ゴム、ローカス
トビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、ナフカクリスタルゴム、ポリビニルアルコー
ル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ソーダ等の天然、
半合成、合成糊剤を用いることができる。
【0038】含浸または塗布し、乾燥した後は、100
℃以上の温度で熱処理するが、熱処理は、好ましくは、
相対湿度90%以上の常圧湿熱雰囲気下の場合は、温度
150〜220℃で30秒以上、より好ましくは170
〜200℃で60秒〜10分、高圧湿熱雰囲気下の場合
は、温度100〜150℃で1以上、より好ましくは1
10〜135℃で10〜60分、相対湿度90%未満の
乾燥雰囲気下の場合は、温度150℃以上で15秒以
上、より好ましくは170℃以上で30秒〜10分で行
う。
【0039】かかる熱処理により、布帛に含浸または塗
布された多価アルコールエチレンオキシド付加物は、ポ
リエステル系繊維の内部に浸透し、布帛をアルカリ減量
処理したときに、繊維に含有された有機スルホン酸金属
塩または有機スルホン酸金属塩とポリエチレンとの混合
物の存在部分より減量され、繊維表面のフィブリル化し
た毛羽の形成をより促進するものであり、減量促進剤と
して作用する。また、多価アルコールエチレンオキシド
付加物は、繊維内部に不規則な空隙の形成をより促進す
るものであり、減量促進剤として作用する。
【0040】次いで、熱処理した布帛にアルカリ性化合
物の水溶液でアルカリ減量処理を施すことが必要であ
る。減量率は、布帛構成のポリエステル系繊維の10重
量%以上、好ましくは15重量%以上とする。このアル
カリ減量処理によりアルカリ減量促進剤の多価アルコー
ルエチレンオキシド付加物が含浸または塗布された布帛
の構成ポリエステル系繊維において、含有する有機スル
ホン酸金属塩或いは有機スルホン酸金属塩とポリエチレ
ンとの混合物の溶出を伴う減量が容易に起こり、少なく
とも布帛表面におけるポリエステル系繊維の繊維表面に
フィブリル化した毛羽、筋状溝、繊維内部に不規則な空
が形成する。
【0041】15重量%以上のアルカリ減量処理で、布
帛面に直径が0.05〜5μm、長さが5μm以上の
ィブリル化した毛羽と、布帛面の繊維表面に幅が0.0
5μm以上、長さが5μm以上、隣接する溝との間隔が
5μm以下の繊維軸方向に高配向した多数の筋状溝が形
成すると共に、繊維内部に繊維横断面における直径が
0.1μm以上、繊維横断面積に占める割合が2.5%
以上の複数の不規則な空隙が形成し、かつ空隙の少なく
とも一部が繊維表面と連通して筋状溝の一部を形成す
る。アルカリ減量処理における減量率が10重量%未満
ではフィブリル化した毛羽が不充分となり、減量率が5
0重量%以上となると、布帛強力の低下が大きくなる。
【0042】アルカリ減量処理には、アルカリ性化合物
として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカ
リ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウ
ム等のアルカリ土類金属水酸化物等が用いられ、このと
き、アルカリ減量処理時間を短縮し、アルカリ減量処理
を安定化させる目的で、トリエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン、第4
級アンモニウム塩、リン酸エステル化合物、多価アルコ
ール系化合物等を添加、併用し、アルカリ性化合物水溶
液中で処理することもできる。
【0043】アルカリ減量処理方法としては、ポリエス
テル系布帛に減量加工として一般に適用される公知の任
意の方法が適用され、アルカリ濃度、温度、時間等は、
布帛の構成ポリエステル系繊維の繊度、含有物の量、構
成比等に応じて適宜変更しうる。処理方式としては、処
理中に布帛同士の或いは布帛と処理装置器壁との接触に
より揉み作用が加わる方法を適用することが好ましく、
液流型染色装置等による液流方式等が好適である。
【0044】処理条件は、布帛構成の繊維の繊度、減量
率等に応じて適宜変更しうるが、アルカリ濃度が1〜5
00g/lの範囲で適宜選択され、細繊度繊維の布帛で
あれば、好ましくは50g/l以下の濃度である。処理
温度は、60〜120℃、好ましくは90〜110℃で
ある。
【0045】本発明においては、布帛を前記ポリエステ
ル系繊維のみを用いて構成することもできるが、織編物
の強度保持の目的で、減量されない或いは減量されにく
い他の繊維が混用されていてもよく、他の繊維が混用さ
れる場合は、本発明による織編物の風合い及び吸水性を
損なわない範囲であることが必要であり、他の繊維の混
用率は、80重量%未満とする。
【0046】本発明のポリエステル系繊維布帛には、当
然ながらその製造におけるアルカリ減量処理後に染色ま
たは捺染加工を施すことにより、フィブリル化した毛羽
と、全体的な或いは部分的な着色との組み合わせによっ
て、多様で高度の意匠効果を付与することができる。
【0047】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、実施例中の各特性値は、下記の方法により測
定したものであり、また、評価における○、△、×は、
良好、やや良好、不良をそれぞれ表す。
【0048】〈固有粘度〉試料をフェノール/テトラク
ロルエタン(50/50)混合溶剤に溶解し、ウベロー
デ粘度計により25℃において測定した値である。
【0049】〈摩耗減量率〉JIS L1018 メリ
ヤス生地試験方法 摩耗強さ6.18.5E法(マーチ
ンデール法)に従い、摩耗回数1000回行い、下記式
より算出する。 摩耗減量率(%)=〔摩耗前の生地重量(g)−摩耗後
の生地重量(g)〕/〔摩耗前の生地重量(g)〕×1
00
【0050】(実施例1)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウム80重量部と平均分子量
2,000のポリエチレン20重量部との混合物を3重
量%含有するポリエチレンテレフタレート繊維(75デ
ニール/36フィラメント)を用い、24Gの平編地を
編成した。得られた編地をグリセリンエチレンオキシド
10モル付加物の5重量%水溶液に浸漬し、水溶液付着
率100%に搾液した後、110℃で乾燥し、その後1
80℃で2分間の熱処理をした。次いで、水酸化ナトリ
ウム30g/l水溶液を用い、浴比1:50のアルカリ
水溶液中で沸騰温度で15分減量処理を行った。得られ
た編地の重量法で求めた減量率は、10重量%であっ
た。また、得られた編地の繊維表面のフィブリル化した
毛羽の形成状況、編地の風合いの評価結果を表1に示し
た。
【0051】(実施例2〜3)実施例1において、アル
カリ減量処理時の減量率を代えた以外は、実施例1と同
様にして減量処理し、得られた編地の繊維表面のフィブ
リル化した毛羽の形成状況、編地の風合いの評価結果を
表1に示した。
【0052】(比較例1)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウム80重量部と平均分子量
2,000のポリエチレン20重量部との混合物を3重
量%含有するポリエチレンテレフタレート繊維(75デ
ニール/36フィラメント)を用い、24Gの平編地を
編成した。得られた編地を、グリセリンエチレンオキシ
ド10モル付加物による処理をすることなく、水酸化ナ
トリウム30g/l水溶液を用い、浴比1:50のアル
カリ水溶液中で沸騰温度で30分減量処理を行った。得
られた編地の重量法で求めた減量率は、19重量%であ
った。また、得られた編地の繊維表面のフィブリル化し
た毛羽の形成状況、編地の風合いの評価結果を表1に示
した。
【0053】(比較例2)比較例1において、アルカリ
減量処理時の減量率を代えた以外は、比較例1と同様に
して減量処理し、得られた編地の繊維表面のフィブリル
化した毛羽の形成状況、編地の風合いの評価結果を表1
に示した。
【0054】
【表1】
【0055】(実施例4)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウム80重量部と平均分子量
2,000のポリエチレン20重量部との混合物を3重
量%含有するポリエチレンテレフタレート繊維(75デ
ニール/36フィラメント)を用い、24Gの平編地を
編成した。得られた編地をグリセリンエチレンオキシド
10モル付加物の50g/l水溶液に浸漬し、水溶液付
着率100%に搾液した後、110℃で乾燥し、その後
180℃で2分間の熱処理をした。次いで、水酸化ナト
リウム30g/l水溶液を用い、浴比1:50のアルカ
リ水溶液中で沸騰温度で20分減量処理を行った。得ら
れた編地の重量法で求めた減量率は、13重量%であっ
た。また、得られた編地の繊維表面の筋状溝の形成状
況、不規則空隙の形成状況、編地の風合い及び吸水性の
評価結果を表2に示した。
【0056】(実施例5〜6)実施例4において、アル
カリ減量処理時の減量率を代えた以外は、実施例4と同
様にして減量処理し、得られた編地の繊維表面の筋状溝
の形成状況、不規則空隙の形成状況及び編地の風合いを
表2に示した。
【0057】(比較例3)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウム80重量部と平均分子量
2,000のポリエチレン20重量部との混合物を3重
量%含有するポリエチレンテレフタレート繊維(75デ
ニール/36フィラメント)を用い、24Gの平編地を
編成した。得られた編地を、グリセリンエチレンオキシ
ド10モル付加物による処理をすることなく、水酸化ナ
トリウム30g/l水溶液を用い、浴比1:50のアル
カリ水溶液中で沸騰温度で20分減量処理を行った。得
られた編地の重量法で求めた減量率は、9重量%であっ
た。また、得られた編地の繊維表面の筋状溝の形成状
況、不規則空隙の形成状況及び編地の風合いを表2に示
した。
【0058】(比較例4〜5)比較例3において、アル
カリ減量処理時の減量率を代えた以外は、比較例3と同
様にして減量処理し、得られた編地の繊維表面の筋状溝
の形成状況、不規則空隙の形成状況及び編地の風合いを
表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】(実施例7)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウムを3重量%含有する固有粘
度0.71、密度1.38g/cm3のポリエチレンテ
レフタレート繊維(75デニール/36フィラメント)
を用い、24Gの平編地を編成した。この編地に、下記
の水溶液をスプレーにて編地の片面に塗布し、110℃
で2分間乾燥後、温度190℃の乾熱雰囲気下にて60
秒間熱処理した。水溶液の塗布率は、編物に対し平均5
0重量%であった。
【0061】 水溶液: グリセリンエチレンオキシド10モル付加物 10重量部 水 90重量部
【0062】その後、熱処理された編地を水酸化ナトリ
ウム20g/l水溶液、浴比1:50のアルカリ水溶液
中で沸騰温度で30分アルカリ処理し、常法により中
和、乾燥した。得られた編地の減量率は30%、摩耗減
量率は2.1%であった。得られた編地は、水溶液の塗
布された片面のポリエチレンテレフタレート繊維がフィ
ブリル化した毛羽を有し、柔軟で、ドライ感、ぬめり感
がある布帛が得られた。
【0063】(実施例8)実施例7において、ポリエチ
レンテレフタレート繊維として、平均炭素数が12〜1
7のアルキルスルホン酸ナトリウム80重量部と平均分
子量2,000のポリエチレン20重量部との混合物を
3重量%含有する固有粘度0.71,密度1.38g/
cm3のポリエチレンテレフタレート繊維(75デニー
ル/36フィラメント)を用いた以外は、実施例7と同
様にして処理した。得られた編地の減量率は33%、摩
耗減量率は2.0%であった。得られた編地は、水溶液
の塗布された片面のポリエチレンテレフタレート繊維が
フィブリル化した毛羽を有し、柔軟で、ドライ感、ぬめ
り感がある布帛が得られた。
【0064】(実施例9)平均炭素数が12〜17のア
ルキルスルホン酸ナトリウムを80重量部及び平均分子
量が2,000のポリエチレンを20重量部を混合した
混合物を3%含有するポリエチレンテレフタレート繊維
(75デニール/36フィラメント、円形断面糸)と、
高収縮糸のポリエチレンテレフタレート繊維(30デニ
ール/8フィラメント、円形断面糸)とを混合して経糸
とし、通常のポリエチレンテレフタレート繊維(150
デニール/96フィラメント、円形断面糸)からなる1
500T/Mの撚糸を施したものを緯糸として用い、経
糸織密度120本/インチ、緯糸織密度60本/インチ
の条件で製織し、同織物を常法に従って精練した後、1
20℃加圧下で水中でリラックスを行い、乾燥し、18
0℃で中間セットした。 上記織物に、下記糊剤含有ア
ルカリ減量促進剤水溶液をローラースクリーンで塗布し
た。
【0065】 糊剤含有アルカリ減量促進剤水溶液: グリセリンエチレンオキシド10モル付加物 20重量部 水 20重量部 ファインガムG−17(10%水溶液) 60重量部
【0066】さらに、乾燥、テンターによる180℃で
90秒加熱処理を行った。糊剤とアルカリ減量促進剤の
混合物の付着量は20重量%(対織物)であった。つい
で、表面の余分な糊剤を40℃の湯で洗浄除去し、3%
の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、沸騰温度で、減量
率35重量%までアルカリ減量処理を行った。
【0067】(実施例10)アルカリ減量処理時間を変
更して、減量率を20重量%にする以外は、実施例9と
同様に処理した。この織物の評価結果を表3に示す。得
られた織物の評価結果を表3に示す。得られた布帛の表
面の電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0068】(比較例6)アルカリ減量処理を行わない
他は、実施例9と同様な処理を行った。得られた織物の
評価結果を表3に示す。
【0069】(比較例7)加熱処理を行わない他は、実
施例9と同様な処理を行った。得られた織物の評価結果
を表3に示す。
【0070】(比較例8)アルカリ減量促進剤の塗布処
理を行わない他は、実施例9と同様の処理を行った。得
られた織物の評価結果を表3に示す。
【0071】(比較例9)経糸として、レギュラーのポ
リエチレンテレフタレートからなる75デニール/35
フィラメントを用い、実施例9と同様の処理を行った。
得られた織物の評価結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】表3には、上述の実施例9、10及び比較
例6、7、8、9の織物の表面のフィブリル発生状況及
び繊維の筋状溝発生状況について走査型電子顕微鏡によ
り観察し、また織物の風合い及び産毛調の風合いについ
て触感及び目視により評価した結果、更に実施例9と比
較例4については吸水性についても評価した結果を示し
ている。
【0074】この吸水性の評価は、織物を直径15cm
の刺しゅう用丸枠に取り付け、水滴滴下法により織物上
にビュレットから蒸留水を1滴滴下してその水滴が織物
の繊維内に吸収されて織物表面から消失するまでの時間
を計測して行った。このときビュレットの先端と織物表
面との距離を1cmとし、室温で、相対湿度55〜60
%の条件下で測定を行い、サンプル毎に5〜7回測定を
繰り返し、その平均値を測定値とした。なお、このとき
水滴1滴の平均量は、0.039mlであった。
【0075】表3に、織物の表面のフィブリル発生状況
及び繊維の筋状溝発生状況の走査型電子顕微鏡による観
察結果、織物の風合い及び産毛調の風合いの触感及び目
視による評価結果を◎、○、△、×の符号で表し、吸水
性については上述の測定結果を示す。ここで◎は最も良
好な評価結果を表し、以下、順に評価が下がり、×が最
も低い評価を表しており、符号△及び×は実用に供し得
ないものである。
【0076】表3の評価結果から以下のことが分かる。
実施例9の織物の経糸の筋状溝発生状況と織物表面のフ
ィブリルの発生状況について検討すると、その走査型電
子顕微鏡による観察において、経糸の繊維表面には連続
筋状溝が良好に形成されており、経糸の表面に表れてい
る繊維は殆どフィブリル化しており、織物表面からはフ
ィブリル状繊維端が非常に良好に突出していることが確
認された。また電子顕微鏡写真からは経糸の繊維表面に
形成された筋状溝は幅0.3〜1μm、長さ20μm以
上、隣接する溝間隔0.5〜2μmであり、また織物表
面から突出しているフィブリル状繊維端は、直径0.3
〜1μm、突出長さ20〜100μmであることが概算
された。このような筋状溝及びフィブリル状繊維端が形
成された織物の触感及び目視による風合い及び産毛調の
風合いも非常に良好であり、実施例9の織物に施された
アルカリ減量促進剤処理、加熱処理及びアルカリ減量処
理の条件が適度なものであることが確認される。
【0077】更に織物の吸水性はその測定値が2分30
秒であり、この値は良好な吸水性を有する織物であるこ
とを示しているものである。尚、織物の強力も、経糸中
の高収縮ポリエステル繊維により実用上問題ない引き裂
き強力を有していた。
【0078】次に、この良好な結果を示した実施例9と
10及び比較例6との比較により、アルカリ減量処理
率、即ちアルカリ減量処理時間と筋状溝及びフィブリル
状繊維端の形成状況及び織物の風合いとの相関について
は、表3から明らかなように、アルカリ減量処理が施さ
れていれば、筋状溝は良好に形成され、フィブリル状繊
維端の形成状況についてはアルカリ減量処理率の増加に
伴い向上し、同様に織物の風合いについても向上するこ
とがわかる。このことからアルカリ減量処理は筋状溝の
形成に必要不可欠であり、その処理率は高い方が好まし
い。
【0079】続いて、実施例1と比較例7との比較によ
り、アルカリ減量促進剤を塗布した後、加熱処理するこ
とが筋状溝及びフィブリル状繊維端の形成状況及び織物
の風合いに重要な影響を示すことが分かる。
【0080】また、比較例9においては、その織物の経
糸に通常のポリエチレンテレフタレート(75デニール
/36フィラメント)が使用されており、この織物に実
施例9と全く同一のアルカリ減量処理及び加熱加圧処理
を施したにも関わらず、その評価結果は、経糸の繊維に
筋状溝は殆ど発生せず、またフィブリル化も殆ど成され
ていない。またこの比較例9の織物の吸水性を測定した
ところ、測定値は50分1秒であり、この値はポリエス
テル繊維の欠点である吸水性の悪さを示すものである。
このことから、先にも述べたとおり本発明の方法を適用
する際には、有機スルホン酸金属塩を含有した繊維を用
いて織編物を製織製編することが必要であることを立証
している。
【0081】
【発明の効果】本発明のポリエステル系繊維布帛は、適
度な膨らみ感、ドレープ性、反発性を有し、ドライ感、
ぬめり感を兼ね備えた、構成繊維表面に脱落の少ない微
細な毛羽を有する布帛であり、また、本発明によれば、
煩雑な工程を用いることなく、布帛の形態で、通常のポ
リエステル系繊維布帛に適用される精練、アルカリ減量
加工、仕上げ加工等の各種後加工での工程中で、処理し
て得ることが可能であり、工程通過性よく製造すること
が可能である。
【0082】更に本発明による方法で製造された織編物
は、物理的な起毛処理を必要としないため、強度も充分
に保たれ、優れた産毛調の風合いと柔軟性を有すると共
に、吸水性をも兼ね備えた織編物であり、しかも、サン
ドシルク調、高級スエード調、ベルベット調ともいえる
今までにない独特の風合いを備えているものである。
【0083】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル系繊維布帛の構成ポリエ
ステル系繊維の一例の繊維断面の電子顕微鏡写真(×3
500)である。
【図2】本発明のポリエステル系繊維布帛の一例の布帛
面の電子顕微鏡写真(×350)である。
【図3】本発明のポリエステル系繊維布帛の一例の布帛
面の電子顕微鏡写真(×1500)である。
【図4】実施例10で得た本発明のポリエステル系繊維
布帛の構成ポリエステル系繊維の一例の繊維断面の電子
顕微鏡写真(×350)である。
【図5】本発明のポリエステル系繊維布帛の構成ポリエ
ステル系繊維の繊維表面の筋状溝及び繊維内部の空隙の
一部が繊維表面と連通し筋状溝を形成している状態を模
式的に示す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 5/02 A (72)発明者 上西 功夫 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (72)発明者 田中 光男 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (72)発明者 山口 泰史 大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 三菱レイヨン株式会社大阪支店内 (72)発明者 村井 裕康 大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 三菱レイヨン株式会社大阪支店内 (56)参考文献 特開 平6−248512(JP,A) 特開 平1−156583(JP,A) 特公 昭63−6671(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/00 - 11/84

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 布帛の少なくとも一方の面において、布
    帛を構成するポリエステル系繊維の繊維表面に直径が
    0.05〜5μm、長さが5μm以上のフィブリル化し
    た毛羽と、幅が0.05μm以上、長さが5μm以上、
    隣接する溝との間隔が5μm以下の繊維軸方向に高配向
    した多数の筋状溝を有すると共に、繊維内部に繊維横断
    面における直径が0.1μm以上、繊維横断面積に占め
    る割合が2.5%以上の複数の不規則な空隙を有し、空
    隙の少なくとも一部が繊維表面と連通し筋状溝の一部を
    形成していることを特徴とするポリエステル系繊維布
    帛。
  2. 【請求項2】 一般式R−SOM(式中、Rは炭素数
    3〜30のアルキル基、または炭素数4〜70のアリー
    ル基若しくはアルキルアリール基、Mはアルカリ金属を
    示す)で表される有機スルホン酸金属塩を0.1〜8重
    量%含有するポリエステル系繊維にて構成した布帛の少
    なくとも一方の面に、多価アルコールエチレンオキシド
    付加物からなるアルカリ減量促進剤を含浸または塗布
    し、100℃以上の温度で熱処理した後、減量率10重
    量%以上のアルカリ減量処理を施すことを特徴とするポ
    リエステル系繊維布帛の製造方法。
  3. 【請求項3】 多価アルコールエチレンオキシド付加物
    として、多価アルコールにエチレンオキシドを2モル%
    以上付加して生成された多価アルコールエチレンオキシ
    ド付加物を用いる請求項2記載のポリエステル系繊維布
    帛の製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式R−SOM(式中、Rは炭素数
    3〜30のアルキル基、または炭素数4〜70のアリー
    ル基若しくはアルキルアリール基、Mはアルカリ金属を
    示す)で表される有機スルホン酸金属塩と平均分子量が
    10,000以下のポリエチレンとの混合物を0.1〜
    10重量%含有するポリエステル系繊維にて構成した布
    帛を用いる請求項2または3記載のポリエステル系繊維
    布帛の製造方法。
JP32104395A 1994-11-15 1995-11-14 ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法 Expired - Fee Related JP3194464B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32104395A JP3194464B2 (ja) 1994-11-15 1995-11-14 ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30419294 1994-11-15
JP31168495 1995-11-07
JP6-304192 1995-11-07
JP7-311684 1995-11-07
JP32104395A JP3194464B2 (ja) 1994-11-15 1995-11-14 ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09188964A JPH09188964A (ja) 1997-07-22
JP3194464B2 true JP3194464B2 (ja) 2001-07-30

Family

ID=27338663

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32104395A Expired - Fee Related JP3194464B2 (ja) 1994-11-15 1995-11-14 ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3194464B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2711623T3 (es) * 2013-11-25 2019-05-06 Asahi Chemical Ind Tela absorbente

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09188964A (ja) 1997-07-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
DE3686500T2 (de) Antistatisches gewebe aus polyester mit wasser- und oelabweisenden eigenschaften.
JP2013209756A (ja) 高密度織物、およびその製造方法
JP2870706B2 (ja) 立毛布帛及びその製造方法
JP2008297657A (ja) キルテイング生地および寝具およびダウンジャケット
JP2895413B2 (ja) ポリエステル織編物の製造方法
JP5819620B2 (ja) ポリエステル極細繊維
JP3194464B2 (ja) ポリエステル系繊維布帛及びその製造方法
JP2005336633A (ja) ぬれ感の少ない織編物および繊維製品
JP3104891B2 (ja) 中空複合繊維およびその製造方法
JP3467087B2 (ja) ポリエステル織編物及びその製造方法
JP3467088B2 (ja) ポリエステル織編物の製造方法
JP3293704B2 (ja) ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH07268777A (ja) 吸汗発散性織物およびその製造方法
JP3194244B2 (ja) ポリエステル系繊維布帛の製造方法
JP2000282323A (ja) 高吸水・速乾性ポリエステルx型断面繊維
JP3664284B2 (ja) 立毛布帛
JPS643984B2 (ja)
JPH08260343A (ja) 中空ポリエステル繊維及びその製造方法
JP3863051B2 (ja) ポリエステル斑糸
JPH08120559A (ja) 模様状にフィブリル域を有する繊維構造物の製造方法
JP2691855B2 (ja) ポリエステル繊維及びその製造方法
KR100253018B1 (ko) 중공 섬유직물 및 이의 제조방법
JP3564861B2 (ja) ポリエステル繊維および異収縮混繊糸
JPH11222726A (ja) ポリエステル制電性繊維およびその織編物
JP2688794B2 (ja) 吸水性ポリエステル繊維布帛及びその製法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080601

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees