JP3664284B2 - 立毛布帛 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は立毛布帛およびそれよりなる衣料に関する。より詳細には、本発明は、抗ピリング性に優れ、発色性、染色性が良好で、合成繊維に特有のぎらつきがなく、しかもソフトでいながら適度なハリと腰を有していて、天然の獣毛に極めて近似した良好な風合、触感、外観、色調などを有する高級感のある立毛布帛およびそれを用いてなる衣料に関するものであり、本発明による場合は、前記した優れた特性を有する立毛布帛を、薬品処理や機械的処理による立毛部の先鋭化加工や分割加工を行うことなく、簡単な工程で、経済的に提供することができる。
【0002】
【従来の技術】
天然の毛皮に類似した合成毛皮を得ることを目的として、立毛繊維の先端部を薬品で処理したり物理的に処理して、細く尖らせたり、分割させることが従来から行われている。
そのような従来技術としては、例えば、(1)毛管現象を生起し得る密度を有するポリエステル繊維よりなる束状集合体の一端を加水分解剤を含有する溶液に浸漬せしめ、次いでその浸漬した繊維部分の全部が実質的に分解除去されるまで浸漬を行って、先鋭毛状端を有するポリエステル繊維を製造する方法(特公昭50−40195号公報);(2)1ケ以上のくびれ部を有する横断面形状を有する合成繊維からなる立毛布帛の立毛表面に、該合成繊維に対する溶剤または分解剤を含む粘性処理剤を付与して、該くびれ部において立毛繊維先端部を複数本に分割して毛皮調立毛布帛を製造する方法(特開昭55−128044号公報)が知られている。
しかしながら、前記した(1)および(2)の従来法で得られる合成毛皮は、いずれも天然毛皮に十分に近似した風合を有するまでには至っていない。しかも、上記(1)および(2)いずれの従来法の場合も、薬品処理によって立毛繊維の先端部の加工を行っているために、加工工程が複雑で、立毛繊維の先端部の先鋭化や分割のコントロールが難しく、さらに得られる立毛布帛は抗ピリング性に劣っており、また染色性が不良で濃い色に染色できず、色調が不良であるなどの問題がある。
【0003】
また、他の従来技術としては、海島状または多層貼り合せ状の複合繊維を立毛繊維として用いて、該複合繊維の海成分を溶解するか又は貼り合せ部分で剥離を生じさせたスエード調の立毛織編物が知られている(特開昭52−21468号公報)。しかし、この場合には、複合繊維を用い、しかも複合繊維の一部を溶解する処理や剥離させる処理を行うために、工程が複雑であり、コストが高くなるという問題がある。
【0004】
さらに、他の従来技術としては、二酸化チタン含有量が0.1重量%以下であって、くびれ部を有するポリエステル偏平繊維からなる紡績糸をパイル糸とした内装用のパイル布帛が知られている(実公平7−40541号)。このパイル布帛では、染色鮮明性、染色深色性を向上させるために、パイル糸を構成するポリエステル繊維中の二酸化チタンの含有量を上記した0.1重量%以下にしているが、パイル糸が二酸化チタンを含まないか又は二酸化チタンを0.1重量%以下の極めて微量でしか含まないことにより、合成繊維に特有のぎらついた光沢を生じ、そのため内装用などとして用いることはできても、一層の高級感が求められる衣料用としては適していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記したような従来技術における問題点を解消し、薬品処理や機械的な処理による立毛繊維先端の先鋭化加工や分割加工などの複雑な加工工程を要することなく、抗ピリング性、発色性、染色性、着色性、触感、外観などに優れ、適度なハリや腰をもちながらソフトさに優れ、ぎらつきのない深みのある良好な色調を有する、天然の毛皮に近似した良好な風合を有する立毛布帛およびそれからなる衣料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが種々検討を重ねた結果、立毛布帛の立毛部を、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を特定の割合で含むポリエステルからなっていて且つその横断面外周に沿って4個以上の凹部を有する特定形状の偏平ポリエステル繊維から形成すると共に、その立毛繊維の先端部を非分割状態にしておくと、抗ピリング性、染色性、発色性などに優れ、しかもソフトな触感、ぎらつきのない深みのある色調を有し、天然の毛皮に極めて近似した良好な風合を有する立毛布帛が得られること、さらにその際に立毛部を構成するポリエステル繊維中に所定量以上の無機微粒子を含有させておくと、ぎらつきが一層低減されて立毛布帛の色調が一層良好になること、そしてそれらの立毛布帛は衣類用として極めて適していることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリエステル繊維よりなる立毛部を有する立毛布帛であって、立毛部のすべてが、下記の要件(i)〜( iii
(i) ポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有するポリエステルを少なくとも用いて形成されている;
(ii) 繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し且つ偏平度が2.5〜6である偏平繊維である;および、
(iii) 立毛の先端部において分割されていない;
備えるポリエステル繊維を50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっていることを特徴とする立毛布帛である。
【0008】
そして、本発明は、ポリエステル繊維よりなる立毛部を有する立毛布帛であって、立毛部のすべてが、下記の要件(i)〜( iv
(i) ポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有するポリエステルを少なくとも用いて形成されている;
(ii) 繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し且つ偏平度が2.5〜6である偏平繊維である;
(iii) 立毛の先端部において分割されていない;および
(iv) 無機微粒子を0.5重量%以上の割合で含有する;
備えるポリエステル繊維を50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっていることを特徴とする立毛布帛である。
【0009】
そして、本発明は、上記のいずれかの立毛布帛を用いて形成した衣料である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の立毛布帛は、立毛部のすべてが、上記の要件(i)〜(iii)を備えるポリエステル繊維および上記の要件(i)〜(iv)を備えるポリエステル繊維の少なくとも一方を50重量%以上の割合で含有するポリエステル繊維からなっていることが必要である。
[以下、上記の要件(i)〜( iii )を備えるポリエステル繊維を「変性ポリエステル繊維A」、上記の要件(i)〜( iv )を備えるポリエステル繊維を「変性ポリエステル繊維B」といい、該変性ポリエステル繊維Aと変性ポリエステル繊維Bを総称して「変性ポリエステル繊維」という。また、変性ポリエステル繊維Aおよび/または変性ポリエステル繊維Bよりなり立毛繊維を「立毛変性ポリエステル繊維」ということがある。]
【0011】
そこで、立毛変性ポリエステル繊維における要件(i)について説明する。
本発明の立毛布帛では、立毛変性ポリエステル繊維が、ポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有するポリエステル(以下5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を有するポリエステルを「変性ポリエステル」ということがある)であるという要件(i)を備えている。
変性ポリエステルにおける5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位の割合が、ポリエステルを構成する全酸成分に対して1.5モル%未満であると、染色性および染色後の発色性が不良になり、しかも抗ピリング性に劣り、ソフトな風合にならず、一方変性ポリエステルにおける5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位の割合が、ポリエステルを構成する全酸成分に対して7.0モル%を超えると、変性ポリエステルの溶融粘度が高くなり過ぎて繊維化工程性や延伸性、特に紡糸性が不良になり、しかも繊維強度が低下する、本発明の立毛布帛における立毛変性ポリエステル繊維を構成する変性ポリエステルは、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を、ポリエステルを構成する全酸成分に対して、前記のように1.5〜5.0モル%の割合で有しており、1.7〜3.5モル%の割合で有していることが好ましい。
【0012】
変性ポリエステルでは、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位におけるアルカリ金属は、ナトリウム、カリウムおよびリチウムのうちの少なくとも1種であるのが好ましく、ナトリウムであるのが特に好ましい。
【0013】
立毛変性ポリエステル繊維に用いる変性ポリエステルは、繊維形成性であって且つポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で含むものであればいずれでもよく、特に制限されない。そのうちでも、変性ポリエステルは、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有し、且つテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位とジオール単位から主としてなるポリエステルであるのが好ましく、その場合のジオール単位は、エチレングリコール単位、トリメチレングリコール単位およびテトラメチレングリコール単位から選ばれる少なくとも1種のジオール単位であることが好ましい。
【0014】
また、変性ポリエステルは、上記したテレフタル酸単位、並びにエチレングリコール、トリメチレングリコールおよびテトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のジオール単位と共に、場合により、その全構成単位に基づいて、20モル%未満、好ましくは8モル%未満の2官能性化合物から誘導される他の構造単位を含有していてもよく、そのような他の構造単位としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;デカリンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシアクリル酸、ヒドロキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸、ヒドロキシ安息香酸、マンデル酸、マトロラクチン酸などのヒドロキシカルボン酸;ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール;ヒドロキノン、カテコール、ナフタレンジオール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジオール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールなどの2官能性成分から誘導される構造単位を挙げることができる。
【0015】
また、変性ポリエステルは、フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中、30℃でウベローデ型粘度計を用いて測定したときの固有粘度[η]が0.35〜0.75dl/gであることが好ましく、0.45〜0.65dl/gであることがより好ましい。変性ポリエステルの固有粘度[η]が0.35dl/g未満であると紡糸を行いにくくなり、一方ポリエステルの固有粘度[η]が0.75dl/gを超えると溶融粘度が高くなり過ぎて、紡糸、延伸を行いにくくなる。
【0016】
変性ポリエステルの製法は特に制限されず、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を有する変性ポリエステルを製造するのに従来から知られているいずれの方法も採用できる。何ら限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体などからなるジカルボン酸成分とエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどから選ばれる少なくとも1種のジオール成分、更には必要に応じて上記したような他の2官能性化合物を含有する原料を用いてエステル化反応またはエステル交換反応を行ってプレポリマーを製造する第1段目の反応を行い、次いで第1段目の反応により得られたプレポリマーを減圧下に加熱して重縮合反応させる第2段目の反応を行い、第2段目の反応が終了するまでの任意の時点、好ましくは第1段目の反応が終了した後に、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位をポリエステル中に導入し得る化合物を添加して重縮合反応を行うことにより製造することができる。
【0017】
そして、本発明の立毛布帛では、立毛変性ポリエステル繊維が、繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し、且つ偏平度が2.5〜6の偏平繊維であるという上記の要件(ii)を更に備えていることが必要である。立毛変性ポリエステル繊維がこの要件(ii)を備えていることによって、不自然なぎらついた艶がなくなって、深みのある良好な色調と、天然の毛皮に近似した、ソフトで良好な風合、外観、触感を有する立毛布帛が得られる。
【0018】
立毛変性ポリエステル繊維の繊維横断面に沿った凹部の数が4個よりも少ないと、光の乱反射の抑制が困難になって繊維の発色性や色調が不良になる。一方、凹部の数が多すぎると繊維の製造が困難となりしかも凹部が目立たなくなって発色性および着色性が不良になり易いので、立毛変性ポリエステル繊維は、繊維断面外周に沿って4〜8個の凹部を有していることが好ましい。
立毛変性ポリエステル繊維の横断面外周に沿って存在する凹部の形状および深さは、最終的に得られる立毛布帛において、立毛変性ポリエステル繊維の少なくとも先端部がその凹部のある箇所で分割しないような形状および深さである限りは特に制限されない。また、立毛変性ポリエステル繊維は、その横断面でみたときに、隣り合う2つの凹部によって挟まれている繊維の外周部分が平坦な形状になっていてもよいが(すなわちポリエステル繊維の横断面が平坦な偏平状形状を有しそこに4個以上の凹部がクサビ状に存在していてもよいが)、隣り合う2つの凹部に挟まれた繊維の外周部分が外方に山形にまたは丸くなって隆起した形状になっている、すなわち外方向に突出していることが、天然の毛皮に一層近い風合、外観、触感などを有する立毛布帛が得られる点から好ましい。
【0019】
さらに、立毛変性ポリエステル繊維において、その偏平度が2.5未満であると、立毛布帛の抗ピリング性が低下し、しかもソフトさに欠ける硬い不良な風合となって、天然の毛皮に近似した触感、外観などを有する立毛布帛が得られなくなる。一方、立毛変性ポリエステル繊維の偏平度が6を超えると、立毛繊維のハリおよび腰がなくなって倒立が生じ易くなり、やはり天然の毛皮に近似した触感、外観、色調などを有する立毛布帛が得られなくなる。その上、立毛変性ポリエステル繊維の偏平度が6を超えると、変性ポリエステル繊維を紡糸する際の繊維化工程性が不良になる。本発明の立毛布帛では、立毛ポリエステル繊維の偏平度が2.8〜4であることが好ましい。
なお、本明細書でいう立毛変性ポリエステル繊維の偏平度とは、図1に示すように、繊維横断面においてその最大長さをL、最大厚さをDとしたときに、式L/Dにより得られる値をいう。
【0020】
限定されるものではないが、上記した要件(ii)を備える立毛変性ポリエステル繊維としては、例えば、図1の(イ)〜(ハ)に示す横断面を有する、繊維横断面の外周に沿って4個以上の凹部を有する偏平繊維を挙げることができる。図1の(イ)〜(ハ)に示す立毛ポリエステル繊維においては、隣り合う2つの凹部に挟まれた繊維の横断面外周部分が外方に山形にまたは丸くなって隆起した形状を有している。
そして、図1に示すように、本発明の立毛布帛における立毛変性ポリエステル繊維は、上記の要件(ii)を満足する限りは、真っすぐな又はほぼ真っすぐな偏平形状[例えば図1の(イ)と(ハ)]であっても、或いは多少湾曲した偏平形状[例えば図1の(ロ)]であってもよい。
【0021】
そして、本発明の立毛布帛における立毛変性ポリエステル繊維は、その先端部が分割されていないという上記の要件(iii)を更に備えていることが必要である。立毛変性ポリエステル繊維がこの要件(iii)を備えていることによって、毛さばき性、抗ピリング性に優れ、ソフトでありながら適度なハリおよび腰を有する、天然の毛皮に近似した色調、風合、触感、外観を有する立毛布帛が得られる。
立毛変性ポリエステル繊維の先端が分割されていると、繊維の細分化による発色性の低下、繊維横断面の偏平度の低下による毛さばき性、抗ピリング性、立毛のハリおよび腰の低下などが生じて、天然の毛皮に近似した色調、風合、触感、外観などを有する立毛布帛が得られなくなる。
立毛変性ポリエステル繊維の先端が分割されていないようにするためには、上記したように、立毛変性ポリエステル繊維の繊維断面に外周に沿って存在する凹部の形状や深さ、立毛変性ポリエステル繊維の偏平度、断面形状などを適当なものとしたり、立毛布帛を製造する際の起毛方法や起毛装置、起毛条件などを適当なものとしたり、さらに起毛した布帛のブラッシング加工、ポリッシャー加工、シャーリング加工、剪毛加工の方法や条件を適当なものとするとよい。
【0022】
さらに、本発明の立毛布帛における立毛変性ポリエステル繊維は、上記した要件(i)〜(iii)と共に、立毛変性ポリエステル繊維の重量に基づいて無機微粒子を0.5重量%以上の割合で含有するという上記した要件(iv)を備えていることが好ましい。立毛変性ポリエステル繊維が無機微粒子を0.5重量%以上の割合で含有していることによって、無機微粒子による艶消し効果(すなわちぎらついた色調の抑制)と、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で含有させたことによる濃染色性、濃着色性等の効果とが相俟って、一層鮮明でしかも一層深みのある、色調や風合に一層優れる、衣料用として極めて適する立毛布帛が得られる。
【0023】
立毛変性ポリエステル繊維に無機微粒子を含有させる場合は、その含有量は0.5〜10重量%であることが好ましく、0.8〜3重量%であることがより好ましい。
また、立毛変性ポリエステル繊維に含有させる無機微粒子としては、例えば、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウムなどを挙げることができ、これらの無機微粒子のうちの1種を含有させても、または2種以上を含有させてもよい。
【0024】
また、本発明の立毛布帛における立毛ポリエステル繊維は、必要に応じて、酸化防止剤、着色防止剤、耐熱性改善剤、蛍光漂白剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤などの他の添加剤の1種または2種を含有していてもよい。
【0025】
本発明の立毛布帛では、立毛部のすべてが、上記した要件(i)〜(iii)を備える変性ポリエステル繊維および/または上記した要件(i)〜(iv)を備える変性ポリエステル繊維Bを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっており、それによって、得られる立毛布帛が良好な染色性、発色性、抗ピリング性などを有し、且つソフトな風合となる立毛部のすべてが、変性ポリエステル繊維Aおよび/または変性ポリエステル繊維Bを60重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっていることが好ましい
【0026】
立毛ポリエステル繊維を、変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維と共に他の繊維を用いて形成する場合は、他の繊維として変性ポリエステル繊維および変性ポリエステル繊維以外のポリエステル繊維が好ましく用いられる。その場合に、変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維と他の繊維は、混繊、混紡、交編、交織などの形態で使用することができる。
【0027】
また、立毛ポリエステル繊維が、上記したように、変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維と他の繊維とを混繊または混紡した繊維からなる場合は、他の繊維の混繊または混紡割合が少量であるときは(一般に20重量%以下の場合は)、他の繊維として、上記した要件(ii)を備えていない繊維(例えば丸形の横断面を有する繊維や凹部を持たない偏平繊維など)を用いてもよいが、他の繊維の混繊または混紡割合の多少に拘わらず、他の繊維として、繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し且つ偏平度が2.5〜6であるという上記の要件(ii)を備えている繊維[例えば上記の要件(ii)を備えている5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を有していないポリエステル繊維など]を用いると、色調、風合、抗ピリング性などに一層優れる天然の毛皮に近似した立毛布帛を得ることができるので好ましい。特に、立毛ポリエステル繊維における他の繊維の混繊または混紡の割合が20重量%を超える場合は、他の繊維として上記の要件(ii)を備えている偏平ポリエステル繊維を用いることが好ましい。
【0028】
また、場合によっては、立毛ポリエステル繊維として用いる変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維は、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0重量%の割合で有するポリエステルとの混合繊維または複合繊維であってもよい。
【0029】
立毛変性ポリエステル繊維の製造法は特に限定されず、上記の要件(ii)を満たす断面形状を有する変性ポリエステル繊維が得られるような口金装置を用いて、低速または中速で溶融紡糸した後に延伸する方法、高速による直接紡糸延伸法、紡糸後に延伸と仮撚を同時にまたは続いて行う方法などの任意の製糸方法で製造することができる。
【0030】
本発明の立毛布帛は、ポリエステル繊維よりなる立毛部を有する立毛布帛であって、その立毛部のすべてが、上記した変性ポリエステル繊維Aを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維または変性ポリエステル繊維Bを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなるものであれば、その種類や製法は特に限定されない。例えば、本発明の立毛布帛は、パイル編、パイル織、モケット、ダブルラッセル、ベロア、ベルベット、タフティングなどにより得られた立毛布帛、織物、編物、不織布などに電気植毛やその他の任意の方法で植毛した立毛布帛などであることができる。
【0031】
また、本発明の立毛布帛は、立毛部のすべてが変性ポリエステル繊維Aを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維または変性ポリエステル繊維Bを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維から形成されている限りは、立毛部および基布部分の両方が上記した変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維Bから形成されていても、或いは立毛部のみが変性ポリエステル繊維および/または変性ポリエステル繊維から形成されていて基布部分がそれとは全く別の繊維から形成されていてもよい。
【0032】
また、本発明の立毛布帛は、必要に応じて、バッキングしてあっても、または立毛ポリエステル繊維の先端が分割しないようにしてブラッシング、シャーリング、ポリッシャー加工、剪毛加工などを施してあってもよい。
【0033】
上記したうちでも、本発明の立毛布帛は、偏平特殊断面により得られた立毛布帛であることが、天然の毛皮に一層近似した色調、風合、触感、外観に優れる立毛布帛が得られる点から好ましい。
【0034】
また、本発明の立毛布帛では、その立毛部がカット状(カットパイル状)であることが、天然の毛皮に一層近似した色調および風合(触感、外観など)を有する高品質の立毛布帛が得られる点から好ましい。
立毛部の立毛長は、立毛布帛の色調、艶、風合(触感、外観など)を良好なものとし、ソフトでありながら適度なハリと腰を付与し、しかも抗ピリング性に優れたものとする上で、1〜20mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。
また、本発明の立毛布帛における立毛密度は、3,000〜15,000本/cm2であることが、天然の毛皮に近似した高品質の立毛布帛が得られる点から好ましい。
【0035】
立毛ポリエステル繊維の単繊維繊度は、立毛部の毛倒れを防止し、且つソフトでありながら適度なハリや腰があり、良好な風合(触感や外観など)を与えるために、1〜5デニール程度であることが好ましく、2〜3デニール程度であることがより好ましい。
【0036】
本発明の立毛布帛は、その高い抗ピリング性、良好な発色性、染色性、色調、ソフトでありながら適度なハリと腰を有する天然の獣毛に極めて近似した良好な風合を活かして、衣料用に好ましく用いられ、特に、例えばコート類などに好ましく用いられる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、重合体の固有粘度[η](dl/g)、立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合の測定または評価は、次のようにして行った。
【0038】
重合体の固有粘度[η](dl/g)
フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒に重合体を溶かして30℃にて測定した。
【0039】
立毛布帛の深色度(k/s)
下記の例で得られた立毛布帛の一部を試料布として用いて、その分光反射率(R)をカラーアナライザー(日立製作所製;自動記録式分光光度計)で測定し、下記の式(クーペルカ−ムンクの式)から布帛の深色度(k/s)を求めた、この深色度の値が大きい程、深い色を有しており、色調が良好であることを示す。
【0040】
【数1】
深色度(k/s)=(1−R)2/2R
【0041】
立毛布帛のピリング性
JIS L 1076A法(ICI試験機を用いる方法)に準じて立毛布帛のピリング性の評価を行った。
【0042】
立毛布帛の風合
10名のパネラーによって、立毛布帛の風合を、極めてソフトで良好な触感を有しながら適度なハリおよび腰があって風合が極めて良好である場合を2点、ややソフトでハリおよび腰があり風合がほぼ良好である場合を1点、ソフトさに欠けているかおよび/またはねっとりとしていて風合が不良である場合を0点として、点数評価してもらい、10名のパネラーの合計点が15点以上である場合を○、10名のパネラーの合計点が8〜14点である場合を△、10名のパネラーの合計点が7点以下の場合を×として評価した。
【0043】
《実施例1》
(1) 常法により重合して得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して1.5モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.60dl/g)のチップを160℃で減圧乾燥した後、280℃で溶融紡糸して、図1の(イ)に示す断面形状を有する変性ポリエステル繊維を製造し1050m/分で巻き取った。この変性ポリエステル繊維を製造する際の紡糸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られた変性ポリエステル繊維を70万デニールのトウとし、このトウを浴温度70℃と85℃の2個の延伸浴を用いて延伸倍率240%(未延伸糸の切断倍率の70%)で温浴延伸した後、機械捲縮にかけ、80℃の熱風乾燥機中で10分間乾燥し、次いで繊維長51mmに切断してステープルファイバー(原綿)を製造した。その際にトウの延伸性は良好であった。また、ここで得られたステープルファイバーの横断面形状はやはり図1の(イ)に示す形状であり、ステープルファイバー(原綿)の物性は、単繊維繊度2.5デニール、強度3.84g/d、伸度43.4%、繊維長51mmであった。
【0044】
(3) 上記(2)で得られた変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を単独で用いて常法により紡績して、s30/1の紡績糸を製造した。
(4) 上記(3)で得られた紡績糸を用いて、20ゲージのシンカーパイル編地を作製し、針布起毛機を用いて生機起毛を行って、カットパイル状の立毛布帛とした後、下記の表1に示す染色条件で染色した。乾燥後、シャーリングして、立毛長が8mmであるフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
【0045】
【表1】
Figure 0003664284
【0046】
(5) 上記(4)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維において、その先端部および先端以外の部分の両方で分割が生じていなかった。また、上記(4)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すように、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが良好であり、天然の羊毛に近似した良好な品質を有していた。
【0047】
《実施例2》
(1) 常法により重合して得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して1.7モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.58dl/g)のチップを用いて、実施例1の(1)と同様にして溶融紡糸を行って図1の(イ)に示す断面形状を有する変性ポリエステル繊維を製造した後、その変性ポリエステル繊維を70万デニールのトウとし、このトウを実施例1の(2)と同様に、温浴延伸、機械捲縮、熱風乾燥、切断して、図1の(イ)の断面形状を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度3.74g/d、伸度44.2%、繊維長51mm)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を単独で用いて、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造し、次いで染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で分割が生じていなかった。また、上記(2)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。
【0048】
《実施例3》
(1) 常法により重合して得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して2.5モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.52dl/g)のチップを用いて、実施例1の(1)と同様にして溶融紡糸して図1の(イ)に示す断面形状を有する変性ポリエステル繊維を製造した後、その変性ポリエステル繊維を70万デニールのトウとし、このトウを実施例1の(2)と同様に、温浴延伸、機械捲縮、熱風乾燥、切断して、図1の(イ)の断面形状を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度3.50g/d、伸度28.0%、繊維長51mm)を得た。
(2) 上記(1)で得られた変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を単独で用いて、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造し、次いで染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で分割が生じていなかった。また、上記(2)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。
【0049】
《実施例4》
(1) 5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を有していない無変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.60dl/g)を用いて、実施例1の(1)および(2)と同様にして、紡糸および延伸を行って、図1の(イ)に示す横断面形状を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度4.12g/d、伸度57.4%、繊維長51mm)を製造した。
(2) 実施例3の(1)で得られた5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位の割合が全酸成分に対して2.5モル%である変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)と、上記(1)で得られた無変性ポリエステル繊維よりなる原綿を、70:30の重量比で混綿し、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で何ら分割が生じていなかった。また、上記(2)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。
【0050】
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行って得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位の割合が全酸成分に対して5.0モル%である変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度2.85g/d、伸度21.2%、繊維長51mm)と、実施例4の(1)で得られた無変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を、60:40の重量比で混綿し、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で分割が生じていなかった。また、上記(1)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。
0051
《実施例
(1) 常法により重合して得られた5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して2.5モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.52dl/g)に二酸化チタンを1.0重量%の割合で含有させてあるチップを用いて、実施例1の(1)と同様にして溶融紡糸して図1の(イ)に示す断面形状を有する二酸化チタンを含有する変性ポリエステル繊維を製造した後、その変性ポリエステル繊維を70万デニールのトウとし、このトウを実施例1の(2)と同様に、温浴延伸、機械捲縮、熱風乾燥、切断して、図1の(イ)の断面形状を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度3.23g/d、伸度29.5%、繊維長51mm)を得た。
(2) 上記(1)で得られた二酸化チタンを含有する変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を単独で用いて、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造し、次いで染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
0052
(3) 上記(2)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で分割が生じていなかった。また、上記(2)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。さらに、上記(2)で得られた立毛布帛は、立毛部のポリエステル繊維が二酸化チタンを含有していることによって、ぎらつきの発生がより効果的に防止されていて、色調および風合に一層優れるものであった。
【0053】
《実施例
(1) 実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行って得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位の割合が全酸成分に対して5.0モル%である変性ポリエステル繊維よりなり且つ二酸化チタンを0.5重量%の割合で含有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度2.80g/d、伸度22.5%、繊維長51mm)と、実施例4の(1)で得られた無変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を、60:40の重量比で混綿し、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ、立毛部を構成するすべてのポリエステル繊維においてその先端部および先端以外の部分で分割が生じていなかった。また、上記(1)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、色調、抗ピリング性および風合のいずれもが極めて良好であり、天然の羊毛に極めて近似した良好な品質を有していた。また、上記(1)で得られた立毛布帛は、立毛部のポリエステル繊維が二酸化チタンを含有していることにより、ぎらつきの発生がより効果的に防止されていて、色調および風合に一層優れるものであった。
【0054】
《比較例1》
実施例4の(1)で得られた無変性ポリエステル繊維よりなる原綿を単独で用いて実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造し、次いで染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
その結果得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ先端部などで分割が生じていなかったが、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すように、ソフトさに欠け、風合の点でも極めて劣っていた。また、この比較例1で得られた立毛布帛は、カチオン染色ができず、そのため鮮明な色調が得られず、しかも異色染めによる杢調を表現することができなかった。
【0055】
《比較例2》
実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行って得られた、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位の割合が全酸成分に対して1.2モル%である変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度2.5デニール、強度3.98g/d、伸度38.2%、繊維長51mm)を単独で用いて、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
その結果得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ先端部などで分割が生じていなかったが、その立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すように、深色度(k/s)が低く色調に劣っており、しかもソフトさに欠け、風合の点でも劣っていた。
【0056】
《比較例3》
実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行って、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位の割合が全酸成分に対して8.0モル%である変性ポリエステル繊維の製造を試みたが、紡糸時に断糸が頻発して繊維化工程性が悪く、またトウの温浴延伸時にも繊維の切断が生じ、延伸性が不良であり、立毛布帛の製造が不可能であった。
【0057】
《比較例4》
(1) 実施例3で用いたのと同じ、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して2.5モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレートのチップを使用して、断面形状が丸形である変性ポリエステル繊維を製造した後、その変性ポリエステル繊維を70万デニールのトウとし、このトウを実施例1の(2)と同様に、温浴延伸、機械捲縮、熱風乾燥、切断して、丸形断面を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度1.5デニール、強度3.58g/d、伸度43.1%、繊維長51mm)を製造した。
(2) 5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を有していない無変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.60dl/g)を用いて、上記の(1)と同様にして、丸形の横断面形状を有するステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度1.5デニール、強度6.77g/d、伸度22.2%、繊維長51mm)を製造した。
(3) 上記の(1)で得られた変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)と、上記(2)で得られた無変性ポリエステル繊維よりなるステープルファイバー(原綿)を、70:30の重量比で混綿し、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
(4) 上記で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すように、抗ピリング性および風合が劣っていた。
【0058】
《比較例5》
(1) 5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を全酸成分に対して3.5モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.45dl/g)のチップを使用して、比較例4の(1)と同様にして、断面形状が丸形である変性ポリエステル繊維からなるステープルファイバー(原綿)(単繊維繊度1.5デニール、強度3.47g/d、伸度33.1%、繊維長51mm)を製造した。
(2) 上記の(1)で得られたステープルファイバー(原綿)を単独で用いて、実施例1の(3)と同様にして紡績糸を製造した後、その紡績糸を用いて実施例1の(4)と同様にして立毛布帛を製造した後、染色、乾燥、シャーリングを行ってフリース布帛(羊毛調立毛布帛)を製造した。
その結果得られた立毛布帛の立毛部のポリエステル繊維を顕微鏡で観察したところ先端部などで分割が生じていなかったが、その立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すように、抗ピリング性および風合に劣るものであった。
【0059】
《比較例6》
(1) 実施例3で得られた立毛布帛を液流染色機を用いて高圧、低浴比の条件下にリラックスおよび染色処理して、立毛部を構成するポリエステル繊維の大半の先端を分割させた。
(2) 上記(1)で得られた立毛布帛の深色度(k/s)、ピリング性および風合を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであり、深色度(k/s)の値が低く色調に劣っており、しかもピリング性および風合の点でも不良であった。
【0060】
【表2】
Figure 0003664284
【0061】
上記の表2に示す実施例および比較例の結果から、立毛部を構成するポリエステル繊維が上記の要件(i)〜(iii)を備えている変性ポリエステル繊維から主としてなっている実施例1〜の立毛布帛、および上記の要件(i)〜(iv)を備えている変性ポリエステル繊維から主としてなる実施例およびの立毛布帛は、色調、ピリング性および風合のすべてにおいて優れていて高い品質を有しているのに対して、立毛部を構成するポリエステル繊維が上記の要件(i)〜(iii)のうちのいずれか1つまたは2つ以上を備えてないポリエステル繊維からなっている比較例1〜6の立毛布帛は、色調、ピリング性および風合のいずれかでまたはすべてにおいて劣っていることがわかる。
さらに、上記の表2の結果から、立毛ポリエステル繊維が二酸化チタンを含有する変性ポリエステル繊維Bから主としてなっている実施例およびの立毛布帛では、深色度の点でも優れており、しかもぎらつきが一層効果的に防止されて、色調および風合において一層優れていることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
立毛部を構成するポリエステル繊維が、上記の要件(i)〜(iii)を備える変性ポリエステル繊維および/または上記の要件(i)〜(iv)を備える変性ポリエステル繊維Bを50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっている本発明の立毛布帛は、抗ピリング性に優れ、発色性、染色性、着色性に優れ、深みのある良好な色調を呈し、しかもソフトでいながら適度なハリと腰のある良好な風合、触感、外観などを有していて、天然の獣毛に極めて近似した高い品質を有している。
そして、立毛部を構成するポリエステル繊維が無機微粒子を含有する変性ポリエステル繊維50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなる本発明の立毛布帛では、ポリエステル繊維のぎらつきが一層効果的に防止されて、色調および風合が一層優れている。
そのために、本発明の立毛布帛は、それらの優れた特性を活かして、特に衣料用に好ましく用いられる。
本発明の立毛布帛は、立毛部を構成する繊維の先端部を先鋭化したり分割するための溶剤やアルカリ溶液などによる薬剤処理や機械的処理などの繁雑な処理工程が不要であり、そのため目的とする高品質の立毛布帛を、簡単な工程で、経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の立毛布帛における立毛部を構成する変性ポリエステル繊維の横断面形状の例を示す図である。

Claims (4)

  1. ポリエステル繊維よりなる立毛部を有する立毛布帛であって、立毛部のすべてが、下記の要件(i)〜( iii
    (i) ポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有するポリエステルを少なくとも用いて形成されている;
    (ii) 繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し且つ偏平度が2.5〜6である偏平繊維である;および、
    (iii) 立毛の先端部において分割されていない;
    備えるポリエステル繊維を50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっていることを特徴とする立毛布帛。
  2. ポリエステル繊維よりなる立毛部を有する立毛布帛であって、立毛部のすべてが、下記の要件(i)〜( iv
    (i) ポリエステルを構成する全酸成分に対して5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位を1.5〜5.0モル%の割合で有するポリエステルを少なくとも用いて形成されている;
    (ii) 繊維横断面外周に沿って少なくとも4個の凹部を有し且つ偏平度が2.5〜6である偏平繊維である;
    (iii) 立毛の先端部において分割されていない;および
    (iv) 無機微粒子を0.5重量%以上の割合で含有する;
    備えるポリエステル繊維を50重量%以上の割合で有するポリエステル繊維からなっていることを特徴とする立毛布帛。
  3. 衣料用の布帛である請求項1または2の立毛布帛。
  4. 請求項1〜のいずれか1項の立毛布帛を用いて形成した衣料。
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