JPH0825041B2 - クラッド鋼管の製造方法 - Google Patents

クラッド鋼管の製造方法

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JPH0825041B2
JPH0825041B2 JP6501492A JP6501492A JPH0825041B2 JP H0825041 B2 JPH0825041 B2 JP H0825041B2 JP 6501492 A JP6501492 A JP 6501492A JP 6501492 A JP6501492 A JP 6501492A JP H0825041 B2 JPH0825041 B2 JP H0825041B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はステンレス鋼あるいはニ
ッケル合金などの耐食性の優れた高合金の合わせ材と低
合金鋼の母材からなる大径クラッド鋼管(UOE鋼管、
ベンヂングロール鋼管など)の高品質・高能率な製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】安全性、経済性の観点から腐食性物質
(H2 S,CO2 ,Cl- )を多く含有する原油・天然
ガス輸送用大径ラインパイプに、ステンレス鋼あるいは
ニッケル合金を合わせ材とする高合金クラッド鋼管の採
用が増加しつつある。従来、このような鋼管は圧延クラ
ッド鋼板を成形(UOE成形)、シーム溶接後、鋼管全
体を再加熱・冷却(溶体化処理)することにより製造さ
れていたが、この方法は極めて生産性が悪かった。そこ
で最近、溶体化処理を省略し圧延ままで目標とする特性
を達成できる技術(たとえば特開昭60−21698
4、62−16892、63−130283)が開発さ
れ、クラッド鋼板の製造技術は大きく進歩した。しか
し、これらの技術で達成できる合わせ材の耐食性、母材
の低温靭性は必ずしも満足できるものではない。
【0003】一方、そのシーム溶接においては、鋼管内
側の合わせ材の溶接法としてTIG溶接法(特開昭60
−154875)が多く適用されている。しかしTIG
溶接法は溶接速度が極めて遅く、クラッド鋼管を大量生
産する上で大きな障害となっていた。これに対して高速
の溶接、たとえばMIG溶接では、溶接時に多数のスパ
ッターが発生することに加えて、溶接エネルギーが大き
くなり、溶接終了後も溶接金属は長時間、高温にさらさ
れ、ビード表面にCr,Tiなどの強固な酸化皮膜が生
成する。その結果、ビード近傍の鋼板表面、ビード表面
の手入れに多大の労力を要し、高速化が困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は鋼管の溶体化
処理なしで優れた合わせ材の耐食性と母材の強度・低温
靭性を同時に達成できる高合金クラッド鋼管の製造技術
を提供するものである。さらに本発明は高速のMIG溶
接によるシーム溶接が適用され、高品質に加えて高生産
性であるという特徴を有する。ここでMIG溶接には、
シールドガスとして不活性ガス(Ar、He)だけでな
く、CO2 、H2 のような活性ガスを混合する場合も含
む。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、ステン
レス鋼またはニッケル合金の合わせ材と重量%で C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以
下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜
0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以
下、 N :0.002〜0.006、 に必要に応じて、さらに V :0.01〜0.1、 Ni:0.05〜
1.0、 Cu:0.05〜1.0、 Cr:0.05〜
0.5、 Mo:0.05〜0.3、 Ca:0.001〜
0.005、 の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
的不純物からなる鋼母材とを重ね合わせて四周を溶接し
てスラブを組立て、これを1100℃〜1250℃の温
度に加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850〜10
00℃で圧延し、60〜200秒間空冷した後、750
℃以上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で550℃
以下の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッド鋼
板を製造、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形し、
そのシーム溶接において、内側から先行電極に低合金ソ
リッドワイヤ、オシレーション機能をもたせた中間電極
にフラックス入り高合金ワイヤ、溶接線と直角方向に並
列に2つの電極を配置した後行電極にフラックス入り高
合金ワイヤを使用してMIG溶接を行なった後、外側か
ら低合金ワイヤを使用して多電極潜弧溶接することであ
る。
【0006】本発明のステンレス鋼とは、オーステナイ
ト系、フェライト系、マルテンサイト系および2相系を
指し、ニッケル合金とはインコロイ825、インコネル
625などのニッケル合金であり、耐食性の優れた材料
である。また母材は、その特性(圧延方向と直角方向で
の値)が強度X52以上(API規格)、低温靭性2v
-30 ≧10kgf-m ,vTrs≦−40℃となるような
高強度、高靭性の低合金鋼である。
【0007】本発明では、二つの方法でスラブを組立て
る。第1の方法は母材1の表面に合わせ材2を重ね合わ
せ四周を溶接してスラブを組立てる。この際、母材およ
び合わせ材の接着面はあらかじめ平削、研磨などによっ
て平滑にし、脱脂などによる清浄化や真空ポンプによる
脱気を行なうことが好ましい。第2の方法は第1の方法
で組立てた2つのスラブの合わせ材を分離材を介して密
着させ、四周を溶接してスラブ(サンドイッチスラブ)
を組立てる方法である。
【0008】以下、本発明のクラッド鋼板製造方法につ
いて説明する。本発明鋼の特徴は母材成分を低C−Nb
−微量Ti系とし、高温で圧延を終了しても、合わせ材
の優れた耐食性と母材の優れた強度・靭性を同時に達成
できるところにある。合わせ材において優れた耐食性を
得るには、再加熱時に合金元素を溶体化し、これを高温
で圧延、適当な時間空冷してオーステナイト(γ)組織
を再結晶させ、かつ圧延後、急冷してσ,α′相(Cr
炭化物)などの析出を抑制しなければならない。しかし
ながら合わせ材のγ組織が再結晶するような高温で圧延
を行なうと、母材の結晶粒の微細化が不十分となりライ
ンパイプとして十分な低温靭性を得ることができない。
このため高温で圧延を終了しても強度・靭性バランスの
良好な成分系について検討した。その結果、母材成分と
して低C−Nb−微量Ti系(0.08%以上のNb添
加が望ましい)が有効であることを見出し、これを圧延
クラッド鋼へ適用することにより、まったく新しいクラ
ッド鋼板の製造方法を発明した。
【0009】本発明の再加熱・圧延冷却条件について説
明する。本発明では、上記の組立スラブを1100〜1
250℃の範囲に再加熱する。これは合わせ材の耐食性
と母材の強度・靭性を同時に確保するため必要である。
下限温度1100℃は、合わせ材の優れた耐食性を得る
ために十分に溶体化し、圧延終了温度を850℃以上と
して圧延後、γ組織を再結晶させるのに必要な最低加熱
温度である。しかし再加熱温度が1250℃以上になる
と、γ粒が粗大化、圧延後の結晶粒も大きくなって低温
靭性が劣化する。したがって適切な再加熱温度は110
0〜1250℃である。
【0010】再加熱したスラブは圧下比5以上で圧延
し、圧延終了温度を850〜1000℃としなければな
らない。圧下比を5以上とした理由は、合わせ材と母
材を冶金学的に完全に密着させると同時に、母材の結
晶粒を微細化するためである。ラインパイプの使用性能
として、合わせ材と母材が冶金学的に完全に密着してい
ることが必要であり、このためには、圧下比は大きいほ
ど好ましい。最低圧下比は再加熱温度や圧延温度にも依
存するが、本発明のように圧延温度が高い場合、5以上
である。本発明では、圧延を850〜1000℃の範囲
で終了させる。圧延終了温度が850℃以下であると、
合わせ材のγ組織が再結晶せずに耐食性(たとえば耐孔
食性、試験条件:10%FeCl3 ・6H2 O溶液で4
8hrs 浸漬)が著しく劣化する。合わせ材の耐食性の観
点からは圧延終了温度は高いほど好ましい。しかし圧延
終了温度が高過ぎると母材の結晶粒が微細化せず、低温
靭性の劣化を招く。このため圧延終了温度を1000℃
以下に限定した。
【0011】さらに本発明では、圧延終了後60〜20
0秒間空冷し、750℃以上の温度から5〜40℃/秒
の冷却速度で550℃以下の任意の温度まで冷却、その
後空冷する。圧延後に空冷時間をもうける理由は、合わ
せ材のγ組織の再結晶を促進させ、耐食性を改善するた
めである。圧延直後に急冷すると良好な耐食性は得られ
ない。圧延終了温度が850℃以上の場合、最低60秒
の空冷時間が必要である(望ましくは100秒以上)。
しかし空冷時間の延長はクラッド鋼板の温度低下を招
き、σ,α′相(Cr炭化物)の析出を生じさせる。ま
た加速冷却による母材の強靭化にも支障をきたす。この
ため鋼板の厚みにも依存するが、空冷時間は200秒以
下とし、かつ750℃以上の温度から水冷しなければな
らない。このとき、Cr炭化物の析出を抑制し、加
速冷却による母材の強靭化をはかるためには、冷却条件
として冷却速度5〜40℃/秒で550℃以下まで冷却
する必要がある。なお圧延後のクラッド鋼板を低温靭性
改善、脱水素などの目的で、Ac1 以下の温度に再加熱
(焼戻処理)することは、何ら本発明の特徴を損なうも
のではない。
【0012】以下、本発明の母材成分の限定理由につい
て説明する。母材の強度・低温靭性の確保および合わせ
材の耐食性確保のため、C,Mn,Nb,Ti量をそれ
ぞれ、0.02〜0.07%、1.0〜1.8%、0.
02〜0.15%、0.005〜0.03%に限定す
る。C,Mn量の下限は目的とする母材、溶接部強度・
靭性やNb添加による析出硬化、結晶粒微細化効果を発
揮するための最小量である。また上限は母材の優れた低
温靭性・現地溶接性を得るための限界値である。母材の
C量が高過ぎると組立スラブの再加熱時に、母材のCが
合わせ材へ拡散し、耐食性が劣化する。したがって合わ
せ材の耐食性の観点からも母材のC量を0.07%以下
に制限する必要がある。本発明鋼では、必須の元素とし
てNb:0.02〜0.15%、Ti:0.005〜
0.03%を含有させる。Nbは制御圧延において結晶
粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靭化する効果を
有する。合わせ材の耐食性改善のため、850℃以上の
高温で圧延を終了しなければならない本発明鋼において
は、Nbは最低0.02%以上添加する必要がある。こ
れによって本発明のように高温圧延を基本とする特殊な
製造条件においても結晶粒の微細化や析出硬化が進行
し、従来のクラッド鋼板に比較して優れた強度・靭性が
得られる。しかしNbを0.15%以上添加すると、現
地溶接性や溶接部の靭性が劣化するので、その上限を
0.15%とした(最も望ましいNb添加量は0.07
〜0.11%である)。またTi添加は微細なTiNを
形成し、スラブ再加熱時、溶接時のγ粒の粗大化を抑制
して母材靭性、溶接熱影響部(HAZ)靭性の改善に効
果がある。この効果は高温で圧延を終了する本発明鋼に
おいてはとくに重要である。TiNの効果を十分に発揮
させるには、最低0.005%のTi添加が必要であ
る。しかしTi量が多過ぎると、TiNの粗大化やTi
Cによる析出硬化が起こり、低温靭性が劣化するので、
その上限は0.03%に制限する必要がある。
【0013】その他元素の限定理由について説明する。
Siは鋼を強靭化させる元素であるが、多く添加すると
溶接性、HAZ靭性を劣化させるため、上限を0.5%
とした。鋼の脱酸はAlあるいはTiのみでも十分であ
り、Siは必ずしも添加する必要はない。
【0014】本発明鋼において不純物であるP,Sをそ
れぞれ0.03%,0.005%以下とした理由は、母
材、溶接部の低温靭性をより一層向上させるためであ
る。Pの低減は粒界破壊を防止し、S量の低減はMnS
による靭性の劣化を防止する。好ましいP,S量はそれ
ぞれ0.01,0.003%以下である。
【0015】Alは通常脱酸剤として鋼に含まれる元素
であるが、脱酸はTiあるいはSiでも可能であり、必
ずしも添加する必要はない。Al量が0.05%以上に
なるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害す
るので、上限を0.05%とした。
【0016】NはTiNを形成しγ粒の粗大化抑制効果
を通じて母材靭性、HAZ靭性を向上させる。このため
の最小量は0.002%である。しかし多過ぎるとスラ
ブ表面疵や固溶NによるHAZ靭性の劣化原因となるの
で、その上限は0.006%以下に抑える必要がある。
【0017】V,Ni,Cu,Cr,Mo,Caを添加
する理由について説明する。基本となる成分にさらにこ
れらの元素を添加する主たる目的は本発明鋼の優れた特
徴を損なうことなく、母材の強度・靭性などの特性向上
をはかるためである。したがって、その添加量は自ら制
限される性質のものである。
【0018】VはほぼNbと同様の効果を有するが、そ
の効果はNbに比較して弱い。その上限は溶接性、HA
Z靭性の点から0.1%である。Niは溶接性、HAZ
靭性に悪影響をおよぼすことなく、強度・靭性をともに
向上させるほか、Cu添加時の熱間割れ防止にも効果が
ある。しかし1.0%を超えると経済性の点で好ましく
ないため、その上限を1.0%とした。
【0019】Cuは耐食性、耐水素誘起割れ性にも効果
があるが、1.0%を超えると熱間圧延時にCu−クラ
ックが生じ、製造が困難になる。このため上限を1.0
%とした。Cr,Moはともに強度の向上に効果を有す
る。しかし多く添加すると溶接性やHAZ靭性を害する
ので、その上限をそれぞれ、0.5,0.3%とした。
なおV量の下限0.01%およびNi,Cu,Cr,M
o量の下限0.05%は、元素の添加による材質上の効
果を得るための最小量である。
【0020】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靭性を向上(シャルピー吸収エネルギーの増加な
ど)させるほか耐水素誘起割れ性の改善にも著しい効果
を発揮する。しかしCa量が0.001%以下では実用
上効果がなく、また0.005%を超えて添加するとC
aO,CaSが大量に生成して大型介在物となり、鋼の
清浄度を害するだけでなく靭性・現地溶接性に悪影響を
およぼす。このためCa添加量を0.001〜0.00
5%に制限した。なお耐水素誘起割れ性を改善するには
S,O量をそれぞれ0.001,0.002%以下に低
減し、ESSP≧(Ca)〔1−124(O)〕/1.
25(S)とすることが特に有効である。本発明では、
上記のようにして製造したクラッド鋼板を用いて鋼管を
製造する。
【0021】図1は本発明にかかわる高合金クラッド鋼
管の内面シーム溶接を3パス、1ランで行なったときの
溶接部側面の模式図である。また図2は図1のA,A′
部分の横断面図である。ここで1,3,5はそれぞれ第
1,2,3電極である。第2電極は溶接線と直角方向に
オシレーションが可能であり、第3電極は溶接線と直角
方向に並列に二つの電極を一体配置してある。2,4,
6はそれぞれ第1,2,3電極ワイヤ(第3電極のみ2
本)、7は高合金層、8は低合金鋼母材、9,10,1
1はそれぞれ第1,2,3電極アーク、12,13,1
4はそれぞれ低合金第1パス(以下、初層という)、高
合金第2パス(以下、バッファー層という)、高合金第
3パス(以下、最終層という)、15はバッファー層ス
ラグ、16は最終スラグ、17は仮付ビードである。
【0022】図1において、まず第1電極に低合金ソリ
ッドワイヤ2を用いて、低合金鋼母材8の開先をMIG
溶接で初層ビードを形成する。ワイヤは低合金ワイヤで
なければならない。高合金ワイヤを使用すると、最後に
鋼管外面から潜弧溶接したとき、初層溶接の高合金成分
が希釈され、潜弧溶接金属が硬化(マンサイト化)して
溶接金属に割れが生じる。
【0023】ついで第2電極に高合金フラックス入りワ
イヤ4を用いてMIG溶接し、バッファー層13および
スラグ層15を形成する。ワイヤは高合金のフラックス
入りワイヤを使用する。低合金ワイヤでは、最終層溶接
時の希釈が大きくなって、優れた耐食性が得られない。
また高合金ソリッドワイヤを使用すると良好な溶接ビー
ドが得られない。これはソリッドワイヤでは、初層ビー
ドとの界面濡れ性が劣るためである。第2電極は溶接線
と直角方向にオシレート(オシレーション幅:2〜8m
m)させる必要がある。これは初層とバッファー層の間
に発生する溶接欠陥、特にビード両端の溶け込み不足を
防止するためである。さらに溶け込み不足は防止するた
め、直流(DC)の溶接電源との組合せが有効である。
【0024】最終層の第3電極では、高合金フラックス
入りワイヤを用い、MIG溶接を行なって最終層ビード
を形成する。このときバッファー層でできたスラグ15
は第3電極アーク11で再溶融し、最終層溶接でできた
スラグとともに最終層スラグ16となってビード表面を
覆うので、表面酸化皮膜のない耐食性の優れた高合金溶
接金属が得られる。第3電極を2電極化(電極間距離:
4〜10mm)する理由は、平滑で両止端の揃った広幅の
ビードを得るためである。電極の数を1つにして、オシ
レーションさせても同広幅のビードを得ることが可能で
あるが、スパッターの発生が著しく、手入れに多大の労
力を要するので好ましくない。
【0025】なお実際の鋼管のシーム溶接においては、
溶接開先サイズのバラツキ、鋼管の変形などによって各
電極の適正溶着量の変化や溶接(開先)線の曲がり(ネ
ジレ)などが生じる。このため、実操業においては少な
くとも第1電極の前に開先検出装置(たとえばレーザー
センサー)を配置して、開先倣いや適正溶着量の計算を
実施することが必須となる。
【0026】内面溶接を行なった後、最後に外面から低
合金ワイヤを用いて多電極潜弧溶接を行なう。内面初層
は低合金成分のため、希釈されても溶接割れはまったく
生じない。この際、低合金ワイヤはソリッド、フラック
ス入りワイヤいずれでも可能で限定はしない。
【0027】
【実施例】つぎに本発明の実施例について述べる。転炉
−連続鋳造で種々の鋼成分の母材スラブ(厚み240m
m)を製造した。このスラブを所定の厚みに圧延した
後、片表面を機械的に平削し、所定の厚みのSUS31
6Lまたはインコロイ825合わせ材(圧延後の鋼板の
合わせ材厚みが3mmになるように調整)と重ねて四周を
溶接した。さらに、このようにして製造したスラブ2枚
の合わせ材を分離材を介して重ね合わせ、四周を溶接し
てサンドイッチスラブを組立てた。なお接着面はすべて
平滑にするとともに汚れを除去、脱脂し、空気を真空ポ
ンプで除去した。種々の条件でサンドイッチスラブを再
加熱・圧延・冷却してクラッド鋼板を製造し、これより
外径762mmのUOE鋼管を製造して母材の強度、低温
靭性(シャルピー衝撃試験)、合わせ材の耐食性(孔食
の有無で評価、試験条件:10%FeCl3 ・6H2
溶液にSUS316Lは15℃で48時間、インコロイ
825は30℃で48時間浸漬)、母材と合わせ材の密
着性(超音波による探傷)を調査した。表1に実施例を
示す。本発明法にしたがって製造したクラッド鋼板(鋼
1〜10)は、母材、合わせ材ともにすべて良好な特性
を有する。これに対して本発明によらない比較鋼(鋼1
1〜26)は、母材あるいは合わせ材の特性が劣る。
【0028】鋼11,12はC量が高くMn量が低いた
め、鋼12はNb量が少ないため、低温靭性が劣る。ま
た鋼13はTiが添加されていないため、鋼14はN量
が低いため、低温靭性が劣る。鋼15はN量が多すぎる
ため、やはり低温靭性が劣る。鋼16はSi,Mn量が
高いため、強度は良好であるが、低温靭性が劣る。鋼1
7は再加熱温度が低過ぎるため、強度、耐食性および合
わせ材と母材の密着性が劣る。鋼18は再加熱温度が高
過ぎるため、低温靭性が劣る。鋼19は圧延終了温度が
低過ぎるため、耐食性が劣る。鋼20は圧延終了温度が
高過ぎるため、低温靭性が悪い。鋼21は空冷時間が短
かく、耐食性が劣る。鋼22は空冷時間が長く、水冷開
始温度が低いため、強度、耐食性が劣る。鋼23は冷却
速度が小さ過ぎるため、強度、耐食性が劣る。鋼24は
冷却速度が大き過ぎるため、低温靭性が劣る。鋼25は
圧下比が小さいため、合わせ材と母材が十分に密着しな
い。鋼26は水冷停止温度が高いため、強度、耐食性が
劣る。
【0029】表2にMIG溶接の実施例を示す。外径7
62mm、厚み20mm(合わせ材厚さ3mm)のUOE鋼管
(表1の本発明鋼5,6。鋼5はSUS316Lクラッ
ド鋼管、鋼6はインコロイ825クラッド鋼管)を用
い、図3に示す開先形状で溶接を行なった。高合金ワイ
ヤとしてはインコネル625系フラックス入りワイヤを
使用した。
【0030】本発明にしたがって溶接した鋼管A,Bは
溶接ビードの外観が良好で欠陥もなく、優れた耐食性を
示す。これに対して比較鋼管Cでは、第2電極のオシレ
ーションがないため、初層とバッファー層の間に溶込み
不良が発生し、鋼管Dでは、第3電極に高合金ソリッド
ワイヤを使用しているため、ビード外観が悪く最終層
に、アンダーカットが発生する。鋼管E〜Hでは、第3
電極が1電極でオシレーションしているため、多くのス
パッターが発生する。さらに溶接材料の組合せが悪いこ
と、第2電極のオシレーション機能がないことなどのた
め、ビード外観の不良、溶接欠陥の発生や耐食性の不良
をともなう。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】本発明により鋼管全体の溶体化処理する
ことなく、また高能率で母材の強度・低温靭性、合わせ
材の耐食性がともに優れた高品質のクラッド鋼板の製造
が可能になった。その結果、省エネルギー、省工程が可
能となった。また諸特性の向上により、パイプラインの
安全性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわる高合金クラッド鋼管の内面シ
ーム溶接を3パス、1ランで行なったときの溶接部側面
の模式図である。
【図2】図1A,A′部分の横断面図である。
【図3】外径762mm、厚み20mm(合わせ材厚み3m
m)のUOEクラッド鋼管の開先形状を示す。
【符号の説明】
1 第1電極 2 第1電極ワイヤ 3 第2電極 4 第2電極ワイヤ 5 第3電極 6 第3電極ワイヤ 7 高合金層 8 低合金鋼母材 9 第1電極アーク 10 第2電極アーク 11 第3電極アーク 12 低合金初層 13 高合金バッファー層 14 高合金最終層 15 バッファー層スラグ 16 最終層スラグ 17 外面の仮付ビード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 9/18 A 8315−4E 9/23 K 8315−4E // C22C 38/00 301 Z (72)発明者 都島 貞雄 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 昭63−130283(JP,A) 特開 平1−284405(JP,A) 特開 平2−254121(JP,A) 特開 平4−128314(JP,A) 特開 平4−197588(JP,A) 特開 平4−319081(JP,A) 特開 平4−314826(JP,A) 特公 平7−16792(JP,B2) 特公 昭59−47638(JP,B2) 特公 昭59−47637(JP,B2)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス鋼またはニッケル合金の合わ
    せ材と重量%で C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以
    下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜
    0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以
    下、 N :0.002〜0.006、 に必要に応じて、さらに V :0.01〜0.1、 Ni:0.05〜
    1.0、 Cu:0.05〜1.0、 Cr:0.05〜
    0.5、 Mo:0.05〜0.3、 Ca:0.001〜
    0.005、 の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    的不純物からなる鋼母材とを重ね合わせて四周を溶接し
    てスラブを組立て、これを1100℃〜1250℃の温
    度に加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850℃〜1
    000℃で圧延し、60〜200秒の間空冷した後、7
    50℃以上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で55
    0℃以下の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッ
    ド鋼板を製造、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形
    し、そのシーム溶接において、内側から先行電極に低合
    金ソリッドワイヤ、オシレーション機能をもたせた中間
    電極にフラックス入り高合金ワイヤ、溶接線と直角方向
    に並列に2つの電極を配置した後行電極にフラックス入
    り高合金ワイヤを使用してMIG溶接を行なった後、外
    側から低合金ワイヤを使用して多電極潜弧溶接すること
    を特徴とするクラッド鋼管の製造方法。
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