JP2502204B2 - 低温靭性の優れたクラッド鋼管の製造方法 - Google Patents

低温靭性の優れたクラッド鋼管の製造方法

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JP2502204B2
JP2502204B2 JP3085585A JP8558591A JP2502204B2 JP 2502204 B2 JP2502204 B2 JP 2502204B2 JP 3085585 A JP3085585 A JP 3085585A JP 8558591 A JP8558591 A JP 8558591A JP 2502204 B2 JP2502204 B2 JP 2502204B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はステンレス鋼あるいはニ
ッケル合金などの耐食性の優れた高合金の合わせ材と低
合金鋼の母材からなる大径クラッド鋼管(UOE鋼管、
ベンディングロール鋼管など)の高品質・高能率な製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】安全性、経済性の観点から腐食性物質
(H2 S,CO2 ,Cl- )を多く含有する原油・天然
ガス輸送用大径ラインパイプに、ステンレス鋼、ニッケ
ル合金を合わせ材とする高合金クラッド鋼管の採用が増
加しつつある。従来、このような鋼管は圧延クラッド鋼
板を成形(UOE成形)、シーム溶接後、鋼管全体を再
加熱・冷却(溶体化処理)することにより製造されてい
たが、この方法は極めて生産性が悪い。そこで最近、溶
体化処理を省略し圧延ままで目標とする特性を達成でき
る技術(たとえば特開昭60−216984,62−1
6892,63−130283)が開発され、クラッド
鋼板の製造技術は大きく進歩した。しかし、これらの技
術で達成できる合わせ材の耐食性、母材の低温靭性は必
ずしも満足できるものではない。
【0003】一方、そのシーム溶接においては、鋼管内
側の合わせ材の溶接法としてTIG溶接法(特開昭60
−154875)が多く適用されている。しかしTIG
溶接法は溶接速度が極めて遅く、クラッド鋼管の大量生
産上には大きな障害となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は鋼管の溶体化
処理なしで優れた合わせ材の耐食性と母材の強度・低温
靭性を同時に達成できるクラッド鋼管の製造技術を提供
するものである。さらに本発明は高能率な潜弧溶接によ
るシーム溶接が適用され、高品質に加えて高生産性であ
るという特徴を有する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、 (1)ステンレス鋼またはニッケル合金の合わせ材と重
量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼母
材とを重ね合わせて四周を溶接してスラブを組立、これ
を1100〜1250℃の温度範囲に加熱後、圧下比5
以上、圧延終了温度850〜1000℃で圧延し、60
〜200秒間空冷した後、750℃以上の温度から5〜
40℃/秒の冷却速度で550℃以下の任意の温度まで
冷却、その後空冷してクラッド鋼板を製造し、ついで合
わせ材を内側にして鋼管に成形し、そのシーム溶接にお
いて、内側および外側ともステンレス鋼以上の成分を有
する高合金溶接ワイヤーを使用し、それぞれ1層の潜弧
溶接することを特徴とする低温靭性の優れたクラッド鋼
管の製造方法、(2)ステンレス鋼またはニッケル合金の合わせ材と重
量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、さらに V :0.01〜0.1、 Cu:0.05〜1.0、 Ni:0.05〜1.0、 Mo:0.05〜0.3、 Cr:0.05〜0.5、 Ca:0.001〜0.005、 の一種または二種を含有し、残部が鉄および不可避的不
純物からなる鋼母材とを 重ね合わせて四周を溶接してス
ラブを組立、これを1100〜1250℃の温度範囲に
加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850〜1000
℃で圧延し、60〜200秒間空冷した後、750℃以
上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で550℃以下
の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッド鋼板を
製造し、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形し、そ
のシーム溶接において、内側および外側ともステンレス
鋼以上の成分を有する高合金溶接ワイヤーを使用し、そ
れぞれ1層の潜弧溶接することを特徴とする低温靭性の
優れたクラッド鋼管の製造方法、 (3)ステンレス鋼またはニッケル合金の合わせ材と重
量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、さらに V :0.01〜0.1、 Cu:0.05〜1.0、 Ni:0.05〜1.0、 Mo:0.05〜0.3、 Cr:0.05〜0.5、 Ca:0.001〜0.005、 の一種または二種を含有し、残部が鉄および不可避的不
純物からなる鋼母材とを重ね合わせて四周を溶接してス
ラブを組立、これを1100〜1250℃の温度範囲に
加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850〜1000
℃で圧延し、60〜200秒間空冷した後、750℃以
上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で550℃以下
の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッド鋼板を
製造し、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形し、そ
のシーム溶接に際してあらかじめX型突合わせ開先の内
側形状として、深さが合わせ材厚みtの0.8〜1.0
t、角度20〜120°なる開先を設け、該開先部を1
〜2電極の潜弧溶接法により、且つ各電極の溶接電流が
400〜800A、溶接電圧30〜42V、溶接速度4
0〜120cm/minの溶接条件でステンレス鋼以上の成分
を有する高合金ワイヤ ーで溶接、さらに外側の開先に対
してもステンレス鋼以上の成分を有する高合金溶接ワイ
ヤーを用いて内側および外側とも1層の潜弧溶接するこ
とを特徴とする低温靭性の優れたクラッド鋼管の製造方
、である。
【0006】本発明のステンレス鋼とは、オーステナイ
ト系、フェライト系、マルテンサイト系および2相系を
指し、ニッケル合金とはインコロイ825、インコネル
625などのニッケル合金であり、耐食性の優れた材料
である。また母材は、その特性(圧延方向と直角方向で
の値)が強度X52以上(API規格)、低温靭性2v
-30 ≧10kgf-m ,vTrs≦−40℃となるような
高強度、高靭性の低合金鋼である。
【0007】本発明では二つの方法でスラブを組立て
る。第1の方法は母材の表面に合わせ材を重ね合わせ四
周を溶接してスラブを組立てる。この際、母材および合
わせ材の接着面はあらかじめ平削、研磨などによって平
滑にし、脱脂などによる清浄化や真空ポンプによる脱気
を行なうことが好ましい。第2の方法は第1の方法で組
立てた2つのスラブの合わせ材を分離剤を介して密着さ
せ、四周を溶接してスラブ(サンドイッチスラブ)を組
立てる方法である。
【0008】以下、本発明のクラッド鋼板製造方法につ
いて説明する。本発明鋼の特徴は母材成分を低C−Nb
−微量Ti系とし、高温で圧延を終了しても、合わせ材
の優れた耐食性と母材の優れた強度・靭性を同時に達成
できるところにある。合わせ材において優れた耐食性を
得るためには、再加熱時に合金元素を溶体化、これを高
温で圧延、適当な時間空冷してγ組織を再結晶させ、か
つ圧延後、急冷してσ,α′相(Cr炭化物)などの析
出を抑制しなければならない。しかしながら合わせ材の
γ組織が再結晶するような高温で圧延を行なうと、母材
の結晶粒の微細化が不十分となりラインパイプとして十
分な低温靭性を得ることはできない。このため高温で圧
延を終了して強度・靭性バランスの良好な成分系につい
て検討した。その結果、母材成分として低C−Nb−微
量Ti系(Ni,Cu,Mo添加が好ましい)が有効で
あることを見出し、これを圧延クラッド鋼へ適用するこ
とにより、まったく新しいクラッド鋼板の製造方法を発
明した。
【0009】本発明の再加熱・圧延冷却条件について説
明する。本発明では、上記の組立てスラブを1100〜
1250℃の範囲に再加熱する。これは合わせ材の耐食
性と母材の強度・靭性を同時に確保するため必要であ
る。下限温度1100℃は、合わせ材の優れた耐食性を
得るために十分に溶体化し、圧延終了温度を850℃以
上として圧延後、γ組織を再結晶させるのに必要な最低
加熱温度である。しかし再加熱温度が1250℃以上に
なると、オーステナイト(γ)粒が粗大化、圧延後の結
晶粒も大きくなって低温靭性が劣化する。したがって適
切な再加熱温度は1100〜1250℃である。
【0010】再加熱したスラブは圧下比5以上で圧延
し、圧延終了温度を850〜1000℃としなければな
らない。圧下比を5以上とした理由は、合わせ材と母
材を冶金的に完全に密着させると同時に、母材の結晶
粒を微細化するためである。ラインパイプの使用性能と
して、合わせ材と母材が冶金的に完全に密着しているこ
とが必要であり、このためには、圧下比は大きいほど好
ましい。最低圧下比は再加熱温度や圧延温度にも依存す
るが、本発明のように圧延温度が高い場合、5以上であ
る。本発明では、圧延を850〜1000℃の範囲で終
了させる。圧延終了温度が850℃以下であると、合わ
せ材のγ組織が再結晶せずに耐食性(たとえば耐孔食
性、試験条件:10%FeCl3 ・6H2O溶液で48H
rs 浸漬)が著しく劣化する。合わせ材の耐食性の観点
からは圧延終了温度が高いほど好ましい。しかし圧延終
了温度が高すぎると母材の結晶粒が微細化せず、低温靭
性の劣化を招く。このため圧延終了温度を1000℃以
下に限定した。
【0011】さらに本発明では、圧延終了後60〜20
0秒間空冷し、750℃以上の温度から5〜40℃/秒
の冷却速度で550℃以下の任意の温度まで冷却、その
後空冷する。圧延後に空冷時間を設ける理由は、合わせ
材のγ組織の再結晶を促進させ、耐食性を改善するため
である。圧延直後に急冷すると良好な耐食性は得られな
い。圧延終了温度850℃以上の場合、最低60秒の空
冷時間が必要である(望ましくは100秒以上)。しか
し空冷時間の延長はクラッド鋼板の温度低下を招き、
σ,α′相(Cr炭化物)の析出を生じさせる。また加
速冷却による母材の強靭化にも支障をきたす。このため
鋼板の厚みにも依存するが、空冷時間は200秒以下と
し、かつ750℃以上の温度から水冷しなければならな
い。このとき、σ,α′相(Cr炭化物)の析出を抑
制し、加速冷却による母材の強靭化をはかるために
は、冷却条件として冷却速度5〜40℃/秒で550℃
以下まで冷却する必要がある。なお圧延後のクラッド鋼
板を低温靭性改善、脱水素などの目的で、Ac1 以下の
温度に再加熱(焼戻処理)することは、何ら本発明の特
徴を損なうものではない。
【0012】以下、本発明の母材成分の限定理由につい
て説明する。母材の強度・低温靭性の確保および合わせ
材の耐食性確保のため、C,Mn,Nb,Ti量をそれ
ぞれ、0.02〜0.07%、1.0〜1.8%、0.
02〜0.15%、0.005〜0.03%に限定す
る。C,Mn量の下限は目的とする母材、溶接部強度・
靭性やNb添加による析出硬化、結晶粒微細化効果を発
揮するための最小量である。また、上限は母材優れた低
温靭性・現地溶接性を得るための限界値である。母材の
C量が高すぎると組立スラブの再加熱時に、母材のCが
合わせ材へ拡散し、耐食性が劣化する。したがって合わ
せ材の耐食性の観点からも母材のC量を0.07%以下
に制限する必要がある。
【0013】本発明鋼では、必須の元素としてNb量が
0.02〜0.15%、Ti量が0.005〜0.03
%を含有させる。Nbは制御圧延において結晶粒の微細
化や析出硬化に寄与し、鋼を強靭化する効果を有する。
合わせ材の耐食性改善のため、850℃以上の高温で圧
延を終了しなければならない本発明鋼においては、Nb
は最低0.02%以上添加する必要がある。これによっ
て本発明のように高温圧延を基本とする特殊な製造条件
においても結晶粒の微細化や析出硬化が進行し、従来の
クラッド鋼板に比較して優れた強度・靭性が得られる。
しかしNbを0.15%以上添加すると、現地溶接性や
溶接部の靭性が劣化するので、その上限を0.15%と
した。またTi添加は微細なTiNを形成し、スラブ再
加熱時、溶接時のγ粒の粗大化を抑制して母材靭性、溶
接熱影響部(HAZ)靭性の改善に効果がある。この効
果は高温で圧延を終了する本発明鋼においてはとくに重
要である。TiNの効果を十分に発揮させるには、最低
0.005%のTi添加が必要である。しかしTi量が
多過ぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が
起こり、低温靭性が劣化するので、その上限は0.03
%に制限する必要がある。
【0014】その他元素の限定理由について説明する。
Siは鋼を強靭化させる元素であるが、多く添加すると
溶接性、HAZ靭性を劣化させるため、上限を0.5%
とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分であり、Siはか
ならずしも添加する必要はない。
【0015】本発明鋼において不純物であるP,Sをそ
れぞれ0.03%,0.005%以下とした。理由は、
母材、溶接部の低温靭性をより一層向上させるためであ
る。Pの低減は粒界破壊を防止し、S量の低減はMnS
による靭性の劣化を防止する。好ましいP,S量はそれ
ぞれ0.01,0.003%以下である。
【0016】Alは通常脱酸剤として鋼に含まれる元素
であるが、脱酸はTiあるいはSiでも可能であり、必
ずしも添加する必要はない。Al量が0.05%以上に
なるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害す
るので、上限を0.05%とした。
【0017】NはTiNを形成しγ粒の粗大化抑制効果
を通じて母材靭性、HAZ靭性を向上させる。このため
の最小量は0.002%である。しかし多過ぎるとスラ
ブ表面疵や固溶NによるHAZ靭性の劣化原因となるの
で、その上限は0.005%以下に抑える必要がある。
【0018】V,Ni,Cu,Cr,Mo,Caを添加
する理由について説明する。基本となる成分にさらにこ
れらの元素を添加する主たる目的は本発明鋼の優れた特
徴を損なうことなく、母材の強度・靭性などの特性向上
をはかるためである。したがって、その添加量は自ら制
限される性質のものである。
【0019】VはほぼNbと同様の効果を有するが、そ
の効果はNbのみに比較して弱い。その上限は溶接性、
HAZ靭性の点から0.1%である。Niは溶接性、H
AZ靭性に悪影響をおよぼすことなく、強度・靭性をと
もに向上させるほか、Cu添加時の熱間割れ防止にも効
果がある。しかし、1.0%を超えると経済性の点で好
ましくないため、その上限を1.0%とした。
【0020】Cuは耐食性、耐水素誘起割れ性にも効果
があるが、1.0%を超えると熱間圧延時にCu−クラ
ックが生じ、製造が困難になる。このため上限を1.0
%とした。Cr,Moはともに強度の向上に効果を有す
る。しかし多く添加すると溶接性やHAZ靭性を害する
ので、その上限をそれぞれ、0.5,0.3%とした。
なおV量の下限0.01%およびNi,Cu,Cr,M
o量の下限0.05%は、元素の添加による材質上の効
果を得るための最小量である。
【0021】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靭性を向上(シャルピー吸収エネルギーの増加な
ど)させるほか耐水素誘起割れ性の改善にも著しい効果
を発揮する。しかしCa量が0.01%以下では実用上
効果がなく、また0.005%を超えて添加するとCa
O,CaSが大量に生成して大型介在物となり、鋼の清
浄度を害するだけでなく靭性、現地溶接性に悪影響をお
よぼす。このためCa添加量を0.001〜0.005
%に制限した。なお耐水素誘起割れ性を改善するには
S,O量をそれぞれ0.001,0.002%以下に低
減し、ESSP≧(Ca)〔1−124(O)〕/1.
25(S)とすることがとくに有効である。本発明で
は、上記のようにして製造したクラッド鋼板を用いて鋼
管を製造する。
【0022】図1は本発明にかかわるクラッド鋼管のシ
ーム溶接における溶接部の断面を示す図である。ここで
1は外側低合金鋼母材、2は内側ステンレス鋼または高
合金鋼の合わせ材、3は外側低合金鋼母材側の開先、4
は内側ステンレス鋼または高合金鋼合わせ材側の開先形
状、5は外側低合金母材開先内の仮付溶接ビード、6は
内側ステンレス鋼または高合金鋼合わせ材側開先部の溶
接ビード、7は外側低合金鋼開先部の溶接ビードであ
る。
【0023】図1において、まず外側低合金鋼母材側の
開先内3に低合金鋼用の溶接ワイヤーを用いて仮付溶接
ビードを形成する。この仮付溶接は、通常UOEで用い
られる炭酸ガスアーク溶接法などの適用が可能で特に限
定しない。上記仮付溶接後、内側のステンレス鋼または
高合金鋼合わせ材側の開先4に対して1〜2電極法での
潜弧溶接6を行ない、内側の溶接ビードを形成する。こ
こで使用する溶接ワイヤーはステンレス鋼以上の成分を
有する高合金溶接ワイヤーを使用しなければならない。
また内側の開先形状は、開先深さをステンレス鋼または
高合金鋼合わせ材厚み(t)の0.8〜1.0t、開先
角度を20〜120度の範囲でなければならない。さら
に潜弧溶接条件は各電極の溶接電流が400〜800
A、アーク電圧が30〜42V、溶接速度が40〜12
0cm/min の範囲でなければならない。
【0024】以下その理由について説明する。溶接用ワ
イヤーは溶接金属の成分を合わせ材の成分よりも貴とす
るため、ステンレス鋼以上の成分を有する高合金溶接ワ
イヤーの使用が必要である。内側の開先形状は上記高合
金溶接ワイヤーを使用して、潜弧溶接でも健全な内側の
溶接部を得るため重要であり、開先深さが0.8t以下
では幅広で平滑なビードを得ることが難しく、一方1.
0t以上では合わせ材の下の低合金鋼部分にアークが直
接作用し、溶接金属部に占める低合金鋼の希釈率が大き
くなり健全な溶接部が得られなくなる。また開先角度
は、20度以下では開先断面積が小さくなりすぎ、幅広
で平滑な溶接ビードが得られず、逆に120度を超える
と合わせ材の下の低合金鋼部分に直接アークが作用して
希釈率が増加するため健全な溶接部が得られない。
【0025】潜弧溶接の条件は上記溶接ワイヤーおよび
開先形状との組合せにおいて、健全な溶接部を得るため
にさらに重要で、各電極の溶接電流が800A以上では
上記の開先形状でも低合金鋼部分の溶込深さが深くなり
希釈率が大きくなりすぎるため好ましくない。また40
0A以下では低希釈率は達成可能であるが、適正な溶接
金属量を得るために溶接速度を極端に遅くしなければな
らず生産性が著しく低下する。さらに溶接電圧および溶
接速度は、上記溶接電流範囲で健全な溶接ビードを得る
ための条件範囲である。なお本発明では該内側1層潜弧
溶接において、特にその溶接電極数は1電極に限定せ
ず、2電極であっても各電極の使用電流範囲を上記の範
囲内とすることによって、さらに高能率な潜弧溶接法と
なることは云うまでもない。
【0026】内側の潜弧溶接を行なった後、最後に外側
低合金鋼母材側の開先部3を1層潜弧溶接して溶接ビー
ド7を形成するが、本発明者らによれば、外側低合金鋼
開先部をステンレス鋼以上の成分を有する高合金溶接ワ
イヤーを適用した場合のみ本発明溶接法が可能であっ
た。その理由は、内側の溶接用に高合金溶接ワイヤーを
使用し、外側の低合金鋼開先部に低合金鋼用の溶接ワイ
ヤーを適用した場合、とくに外側の溶接ビードに溶接欠
陥が発生した。この溶接欠陥は外側の溶接金属中に、内
側溶接金属のNi,Cr成分が希釈によって混ざり合っ
た結果、マルテンサイト組織を生成したことが原因であ
り、外側に高合金溶接ワイヤーを適用することによっ
て、溶接欠陥の発生しない内側、外側各1層潜弧溶接が
可能となる。
【0027】
【実施例】つぎに本発明の実施例について述べる。転炉
−連続鋳造で種々の鋼成分の母材スラブ(厚み240m
m)を製造した。このスラブを所定の厚みに圧延した
後、片表面を機械的に平削し、所定の厚みのSUS31
6Lまたはインコロイ825合わせ材(圧延後の鋼板の
合わせ材厚みが3mmになるように調整)と重ねて四周を
溶接した。さらに、このようにして製造したスラブ2枚
の合わせ材を分離剤を介して重ね合わせ、四周を溶接し
てサンドイッチスラブを組立てた。なお接着面はすべて
平滑にするとともに汚れを除去、脱脂し、空気を真空ポ
ンプで除去した。
【0028】種々の条件でサンドイッチスラブを再加熱
・圧延・冷却してクラッド鋼板を製造し、これより外径
762mmのUOE鋼管を製造して母材の強度、低温靭性
(シャルピー衝撃試験)、合わせ材の耐食性(孔食の有
無で評価、試験条件:10%FeCl3 ・6H2 O溶液
にSUS316Lは15℃で48時間、インコロイ82
5は30℃で48時間浸漬)、母材と合わせ材の密着性
(超音波による探傷)を調査した。
【0029】表1に実施例を示す。本発明にしたがって
製造したクラッド鋼板(鋼1〜10)は、母材、合わせ
材ともにすべて良好な特性を有する。これに対して本発
明によらない比較鋼(鋼11〜26)は、母材あるいは
合わせ材の特性が劣る。
【0030】鋼11はC量が高くMn量が低いため、鋼
12はNb量が少ないため、低温靭性が劣る。また鋼1
3はTiが添加されていないため、鋼14はN量が低い
ため、低温靭性が劣る。鋼15はN量が多すぎるため、
やはり低温靭性が劣る。鋼16はSi,Mn量が高いた
め、強度は良好であるが、低温靭性が劣る。鋼17は再
加熱温度が低すぎるため、強度、耐食性および合わせ材
と母材の密着性が劣る。鋼18は再加熱温度が高すぎる
ため、低温靭性が劣る。鋼19は圧延終了温度が低すぎ
るため、耐食性が劣る。鋼20は圧延終了温度が高すぎ
るため、低温靭性が劣る。鋼21は空冷時間が短いた
め、耐食性が劣る。鋼22は空冷時間が長く、水冷開始
温度が低いため、強度、耐食性が劣る。鋼23は冷却速
度が小さすぎるため、強度、耐食性が劣る。鋼24は冷
却速度が大きすぎるため、低温靭性が劣る。鋼25は圧
下比が小さいため、合わせ材と母材が十分に密着しな
い。鋼26は水冷停止温度が高いため強度、耐食性が劣
る。
【0031】つぎに内側および外側1層潜弧溶接の実施
例を説明する。外径762mm、厚み20mm(合わせ材厚
さ3mm)のUOE鋼管(表1の本発明鋼5,6、5はS
US316Lクラッド鋼管、6はインコロイ825クラ
ッド鋼管)を用い、表2に示す本発明開先および比較法
として従来法の開先形状をあらかじめ作製して溶接を行
なった。溶接ワイヤーは本発明法では内側、外側ともイ
ンコネル625系、また比較法として一部外側に低合金
鋼用の溶接ワイヤーも使用した。潜弧溶接は内側1ない
し2電極、外側2ないし3電極で溶接を行なった。表3
に溶接条件および溶接部の調査結果を示す。本発明法に
したがって溶接した鋼1,2,3の内側の溶接金属は耐
食性にすぐれ、溶接金属の割れも発生しない。これに対
して比較法では、内側の溶接電流が低いにもかかわらず
耐食性が悪く、鋼6では外側の溶接に低合金鋼用の溶接
ワイヤーを使用したため、外側溶接金属に割れが発生し
た。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【発明の効果】本発明により鋼管全体の溶体化処理する
ことなく、また高能率で母材の強度・低温靭性、合わせ
材の耐食性がともに優れた高品質のクラッド鋼板の製造
が可能になった。その結果、省エネルギー、省工程が可
能となった。また諸特性の向上により、パイプラインの
安全性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわるクラッド鋼管のシーム溶接に
おける溶接部の断面を示す図である。
【符号の説明】
1 外側低合金鋼母材 2 内側ステンレス鋼または高合金鋼の合わせ材 3 外側低合金鋼母材の開先 4 内側ステンレス鋼または高合金鋼合わせ材側の開先 5 外側低合金鋼母材開先内の仮付溶接ビード 6 内側ステンレス鋼または高合金鋼合わせ材側開先部
の溶接ビード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 20/00 360 B23K 20/00 360G (56)参考文献 特開 昭63−130283(JP,A) 特開 平2−30712(JP,A) 特開 昭62−45480(JP,A) 特開 昭51−13361(JP,A) 特公 平1−38597(JP,B2) 特公 平6−35067(JP,B2)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス鋼またはニッケル合金の合わ
    せ材と重量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼母
    材とを重ね合わせて四周を溶接してスラブを組立、これ
    を1100〜1250℃の温度範囲に加熱後、圧下比5
    以上、圧延終了温度850〜1000℃で圧延し、60
    〜200秒間空冷した後、750℃以上の温度から5〜
    40℃/秒の冷却速度で550℃以下の任意の温度まで
    冷却、その後空冷してクラッド鋼板を製造し、ついで合
    わせ材を内側にして鋼管に成形し、そのシーム溶接にお
    いて、内側および外側ともステンレス鋼以上の成分を有
    する高合金溶接ワイヤーを使用し、それぞれ1層の潜弧
    溶接することを特徴とする低温靭性の優れたクラッド鋼
    管の製造方法。
  2. 【請求項2】 ステンレス鋼またはニッケル合金の合わ
    せ材と重量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、さらに V :0.01〜0.1、 Cu:0.05〜1.0、 Ni:0.05〜1.0、 Mo:0.05〜0.3、 Cr:0.05〜0.5、 Ca:0.001〜0.005、 の一種または二種を含有し、残部が鉄および不可避的不
    純物からなる鋼母材とを重ね合わせて四周を溶接してス
    ラブを組立、これを1100〜1250℃の温度範囲に
    加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850〜1000
    ℃で圧延し、60 〜200秒間空冷した後、750℃以
    上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で550℃以下
    の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッド鋼板を
    製造し、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形し、そ
    のシーム溶接において、内側および外側ともステンレス
    鋼以上の成分を有する高合金溶接ワイヤーを使用し、そ
    れぞれ1層の潜弧溶接することを特徴とする低温靭性の
    優れたクラッド鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】 ステンレス鋼またはニッケル合金の合わ
    せ材と重量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.5以下、 Mn:1.0〜1.8、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Nb:0.02〜0.15、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.05以下、 N :0.002〜0.006、 を含有し、さらに V :0.01〜0.1、 Cu:0.05〜1.0、 Ni:0.05〜1.0、 Mo:0.05〜0.3、 Cr:0.05〜0.5、 Ca:0.001〜0.005、 の一種または二種を含有し、残部が鉄および不可避的不
    純物からなる鋼母材とを重ね合わせて四周を溶接してス
    ラブを組立、これを1100〜1250℃の温度範囲に
    加熱後、圧下比5以上、圧延終了温度850〜1000
    ℃で圧延し、60〜200秒間空冷した後、750℃以
    上の温度から5〜40℃/秒の冷却速度で550℃以下
    の任意の温度まで冷却、その後空冷してクラッド鋼板を
    製造し、ついで合わせ材を内側にして鋼管に成形し、そ
    のシーム溶接に際してあらかじめX型突合わせ開先の内
    側形状として、深さが合わせ材厚みtの0.8〜1.0
    t、角度20〜120°なる開先を設け、該開先部を1
    〜2電極の潜弧溶接法により、且つ各電極の溶接電流が
    400〜800A、溶接電圧30〜42V、溶接速度4
    0〜120cm/minの溶接条件でステンレス鋼以上の成分
    を有する高合金ワイヤーで溶接、さらに外側の開先に対
    してもステンレス鋼以上の成分を有する高合金溶接ワイ
    ヤーを用いて内側および外側とも1層の潜弧溶接するこ
    とを特徴とする 低温靭性の優れたクラッド鋼管の製造方
    法。
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