JP6282199B2 - 多電極ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

多電極ガスシールドアーク溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、多電極を用いた多電極ガスシールドアーク溶接方法に関する。
従来から、造船又は橋梁の水平すみ肉溶接の高能率化を図るために、多電極ガスシールドアーク溶接方法が検討されてきた。
多電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接において、湯溜りの安定性を向上させて溶接の高速化を図るために、例えば、特許文献1には、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを先行電極及び後行電極として使用し、フィラーワイヤを先行電極と後行電極との間の溶融金属中に挿入し、フィラーワイヤに正極性の電流(フィラーワイヤが溶融金属に対して負極性)を流しながら溶接する溶接方法が開示されている。この溶接方法では、湯溜りを安定化させることができるため、低スパッタで良好なビード形状を確保しつつ高速溶接が可能となる。
特許第3759114号公報
しかしながら、特許文献1に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法においては、深溶込み効果について、さらなる改善の余地がある。
また、多電極ガスシールドアーク溶接においては、スパッタ発生量を低減でき、なじみ性がよいことが求められる。また、多電極ガスシールドアーク溶接においては、ビード形状およびビード揃いが良好で、ピットおよびアンダカットの発生が抑制されているといった、溶接金属の状態が良好であることが求められる。
そこで、本発明の課題は、スパッタ発生量が少なく、なじみ性がよく、溶接金属の状態が良好であり、深溶込み化が可能である多電極ガスシールドアーク溶接方法を提供することにある。
本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法は、ガスシールドアーク溶接用ワイヤを先行電極および後行電極に使用し、フィラーワイヤを前記先行電極と前記後行電極の間の溶融金属中に挿入して溶接する多電極ガスシールドアーク溶接方法であって、前記先行電極と前記後行電極との間の極間距離が15〜50mmであり、前記先行電極の溶接電圧V(V)が26〜38Vであり、前記先行電極の溶接電流I(A)が250〜550Aであり、前記溶接電圧V(V)および前記溶接電流I(A)が、式(1)の条件を満足し、前記先行電極について、ワイヤ直径R(mm)およびワイヤ突出し長さE(mm)が、式(2)の条件を満足し、前記先行電極のスラグ量比S 、前記後行電極のスラグ量比S 、および、前記フィラーワイヤのスラグ量比S が、式(5)の条件を満足し、前記フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することを特徴とする。
Figure 0006282199
かかる溶接方法によれば、極間距離を規定することで、先行電極および後行電極のアークが安定してビード形状が良好になり、またスパッタの発生が抑制されるとともに、耐ピット性が向上する。そして、先行電極の溶接電圧を規定することで、湯溜りが安定し、ビード形状が良好になるとともに溶接始端部のなじみ性が向上する。また、先行電極の溶接電圧を規定することで、スプレー移行が維持でき、スパッタの発生が抑制されるとともにアンダカットの発生も抑制される。そして、先行電極の溶接電流を規定することで、先行電極のアーク力が向上し、溶込みが深くなる。また、先行電極の溶接電流を規定することで、アークの吹付が良好となり、スパッタおよびアンダカットの発生が抑制されるとともに、湯溜りが安定してビード形状が良好となる。そして、式(1)、式(2)を満たすことで、湯溜りが安定し、スパッタおよびアンダカットの発生が抑制されるとともに良好なビード形状およびビード揃いと深溶込みとを両立することができる。そして、フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することで、湯溜りが安定する。
また、かかる溶接方法によれば、深溶込みとなるとともに湯溜りが安定し、ビード形状が良好になるとともに耐気孔性が向上する。
なお、本願においてビード形状が良好であるとは、ビード外観が良好であることも意味し、ビード形状が悪いとは、ビード外観が悪いことも意味する。
本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法は、ガスシールドアーク溶接用ワイヤを先行電極および後行電極に使用し、フィラーワイヤを前記先行電極と前記後行電極の間の溶融金属中に挿入して溶接する多電極ガスシールドアーク溶接方法であって、前記先行電極がソリッドワイヤであり、前記後行電極がフラックス入りワイヤであり、前記フィラーワイヤがソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであり、前記先行電極と前記後行電極との間の極間距離が15〜50mmであり、前記先行電極の溶接電圧V (V)が26〜38Vであり、前記先行電極の溶接電流I (A)が250〜550Aであり、前記溶接電圧V (V)および前記溶接電流I (A)が、式(1)の条件を満足し、前記先行電極について、ワイヤ直径R (mm)およびワイヤ突出し長さE (mm)が、式(2)の条件を満足し、前記フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することを特徴とする。
Figure 0006282199
かかる溶接方法によれば、極間距離を規定することで、先行電極および後行電極のアークが安定してビード形状が良好になり、またスパッタの発生が抑制されるとともに、耐ピット性が向上する。そして、先行電極の溶接電圧を規定することで、湯溜りが安定し、ビード形状が良好になるとともに溶接始端部のなじみ性が向上する。また、先行電極の溶接電圧を規定することで、スプレー移行が維持でき、スパッタの発生が抑制されるとともにアンダカットの発生も抑制される。そして、先行電極の溶接電流を規定することで、先行電極のアーク力が向上し、溶込みが深くなる。また、先行電極の溶接電流を規定することで、アークの吹付が良好となり、スパッタおよびアンダカットの発生が抑制されるとともに、湯溜りが安定してビード形状が良好となる。そして、式(1)、式(2)を満たすことで、湯溜りが安定し、スパッタおよびアンダカットの発生が抑制されるとともに良好なビード形状およびビード揃いと深溶込みとを両立することができる。そして、フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することで、湯溜りが安定する。
また、かかる溶接方法によれば、先行電極にソリッドワイヤを用いることで、より良好な深溶込みが得られる。また、後行電極にフラックス入りワイヤを用い、フィラーワイヤにソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤを用いることで、湯溜まりの安定性と深溶込みのバランスが維持され、ビード形状と耐ピット性が向上する。
本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法は、前記先行電極の溶着速度W(g/min)、前記後行電極の溶着速度W(g/min)、および、前記フィラーワイヤの溶着速度W(g/min)が、式(3)および式(4)の条件を満足することが好ましい。
Figure 0006282199
かかる溶接方法によれば、式(3)を満たすことで、深溶込みとビード形状がより良好となり、式(4)を満たすことで、湯溜りの安定性が向上する。
本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法は、前記先行電極のスラグ量比S、前記後行電極のスラグ量比S、および、前記フィラーワイヤのスラグ量比Sが、式(5)の条件を満足することが好ましい。
Figure 0006282199
かかる溶接方法によれば、深溶込みとなるとともに湯溜りが安定し、ビード形状が良好になるとともに耐気孔性が向上する。
本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法は、前記先行電極がソリッドワイヤであり、前記後行電極がフラックス入りワイヤであり、前記フィラーワイヤがソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、先行電極にソリッドワイヤを用いることで、より良好な深溶込みが得られる。また、後行電極にフラックス入りワイヤを用い、フィラーワイヤにソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤを用いることで、湯溜まりの安定性と深溶込みのバランスが維持され、ビード形状と耐ピット性が向上する。
本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法によれば、溶接金属の深溶込み化が可能である。さらに、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法によれば、スパッタ発生量、アンダカットを抑制することができ、なじみ性、耐ピット性を向上させることができ、ビード形状、ビード揃いを良好にすることができる。
多電極ガスシールドアーク溶接装置の概略を示す模式的な斜視図である。 本発明の溶接方法により溶接を行った場合の被溶接材料の状態の概略を示す模式的な正面図である。 本発明の溶接方法における溶込みの様子を示す模式的な側面図であり、溶込みが浅い場合を示す側面図である。 本発明の溶接方法における溶込みの様子を示す模式的な側面図であり、溶込みが深い場合を示す側面図である。 本発明の溶接方法における溶接チップの状態を示す模式的な正面図である。 トーチ角度を説明するための模式的な正面図である。
以下、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法を実施するための形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、多電極ガスシールドアーク溶接方法に用いる多電極ガスシールドアーク溶接装置の一例について説明した後、多電極ガスシールドアーク溶接方法について説明する。
《多電極ガスシールドアーク溶接装置》
図1、2に示すように、多電極ガスシールドアーク溶接装置S(以下、適宜、溶接装置Sという)は、先行電極11と、後行電極21と、を備え、さらに先行電極11と後行電極21との間にフィラーワイヤ(すなわち中間電極)31を備える。また、3つの溶接電源、すなわち、先行電極11に接続された溶接電源Lと、後行電極21に接続された溶接電源Rと、フィラーワイヤ31に接続された溶接電源(すなわちフィラー用電源)Mと、を備える。
溶接装置Sは、ガスで溶接箇所を空気から遮断しつつ複数の電極を用いて溶接を行う装置である。
なお、溶接装置Sは、図1に示すように、水平すみ肉溶接に好適に適用される。詳細には、溶接装置Sは、被溶接材料1である下板2と立板3の隅部(すなわち溶接箇所)に沿うようにして、先行電極11、後行電極21、およびフィラーワイヤ31の3つの電極が一組として配置され、図1の矢印方向に移動しながら溶接を行う。なお、先行電極11、後行電極21、およびフィラーワイヤ31は、配線により配電盤6に接続されている。
また、溶接装置Sは、下板2と立板3の両側の隅部を同時に溶接できるように、立板3を挟んで2組の先行電極11、11、後行電極21、21、フィラーワイヤ31、31、を対向するように配置し、2組の電極が同時に移動するような構成であってもよい。さらに、下板2と複数の立板3、3を同時に溶接できるように、それぞれの立板3に対して、2組の先行電極11、11、後行電極21、21、フィラーワイヤ31、31、を配置し、2組以上の電極が同時に移動するような構成であってもよい。
なお、溶接装置Sは、ガスについては特に限定されず、ガスシールドアーク溶接に用いられる公知のガス、例えば、二酸化炭素や、これと不活性ガスの混合ガス等を用いればよい。
先行電極11、および後行電極21は、各電極の先端にアークを発生させ、被溶接材料1である下板2と立板3との溶接箇所に溶融池(すなわち溶融金属)8を形成させるものである(図2参照)。一方、フィラーワイヤ31は、溶融池8の湯溜り5に挿入され、アークブロー等の磁場干渉の発生を防止し、当該湯溜り5を安定させるものである(図2参照)。
なお、先行電極11、および後行電極21により発生した溶融池8が、凝固することにより溶接金属7となり、当該溶接金属7が下板2と立板3を溶接することとなる。そして、溶接スラグ19は、溶接金属7の表面に形成される。
先行電極11、後行電極21、およびフィラーワイヤ31は、送給速度が一定速度に制御され溶接箇所に供給されることが好ましい。
溶接電源L、R、Mは、それぞれ、先行電極11、後行電極21、フィラーワイヤ31に電流を供給する電源である。
溶接電源Lは、ここでは、正極に先行電極11が接続され、負極に被溶接材料1(すなわち下板2または立板3)が接続されている。溶接電源Rは、ここでは、正極に後行電極21が接続され、負極に被溶接材料1(すなわち下板2または立板3)が接続されている。そして、溶接電源Mは、負極にフィラーワイヤ31が接続され、正極に被溶接材料1(すなわち下板2または立板3)が接続されている。
なお、水平すみ肉溶接において、溶込みが深い又は浅いとは、特に断らない限り、水平方向、すなわち、立板3の厚さ方向の溶込みについていうものとする。例えば、図3は溶込み深さaが小さい、すなわちビードの水平方向の溶込みが浅い場合を示したものであり、図4は溶込み深さaが大きい、すなわちビードの水平方向の溶込みが深い場合を示したものである。
《多電極ガスシールドアーク溶接方法》
次に、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法について説明する。
本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法は、前記した多電極ガスシールドアーク溶接装置S(図2参照)を用いて行うことができる。
すなわち、多電極ガスシールドアーク溶接方法は、ガスシールドアーク溶接用ワイヤを先行電極および後行電極に使用し、フィラーワイヤを前記先行電極と前記後行電極の間の溶融金属中に挿入して溶接する溶接方法である。
そして、多電極ガスシールドアーク溶接方法は、先行電極と後行電極との間の極間距離と、先行電極の溶接電圧V(V)および先行電極の溶接電流I(A)と、溶接電圧V(V)および溶接電流I(A)の関係と、先行電極のワイヤ直径R(mm)および先行電極のワイヤ突出し長さE(mm)の関係と、を規定し、フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接するものである。
以下、各条件について説明する。
[先行電極と後行電極との間の極間距離:15〜50mm]
本発明においては、先行電極と後行電極の極間距離が15〜50mmであることが必須である。ここで、極間距離とは、図5に示すように、先行電極11のワイヤ11bの先端と、後行電極21のワイヤ21bの先端との水平な距離Wである。DC電源を用いて溶接を行う場合、磁気吹きおよび1つの溶融池を形成する点から先行電極および後行電極の極間距離が問題となる。この極間距離が15mm未満では、先行電極、後行電極が共にアークが安定せず、ビード形状が悪くなり、またアーク干渉によりスパッタ発生量が多くなる。一方、極間距離が50mmを超えると、2電極で1つの溶融池を形成することが不可能となり、耐ピット性が悪くなる。したがって、先行電極と後行電極との極間距離は15〜50mmとする。極間距離は、ビード形状をより良好とし、スパッタ発生量をより低減させる観点から、好ましくは20mm以上である。また、耐ピット性をより向上させる観点から、好ましくは45mm以下である。
[先行電極の溶接電圧V:26〜38V]
先行電極の溶接電圧Vが26V未満では、湯溜りが安定しなくなり、ビード形状も悪くなる。また、溶接始端部のなじみ性も悪くなる。一方、先行電極の溶接電圧Vが38Vを超えると、スプレー移行の維持ができなくなってグロビュール移行となり、多量のスパッタが発生する。また、アンダカットも発生しやすくなる。したがって、先行電極の溶接電圧Vは26〜38Vとする。先行電極の溶接電圧Vは、ビード形状をより良好とし、溶接始端部のなじみ性をより良好にする観点から、好ましくは28V以上である。また、スパッタ発生量をより低減させ、アンダカットの発生をより抑制する観点から、好ましくは36V以下である。
[先行電極の溶接電流I:250〜550A]
先行電極の溶接電流Iが250A未満では、先行電極のアーク力が弱くなり、溶込みも浅くなる。一方、先行電極の溶接電流Iが550Aを超えると、アークの吹付が課題となり、スパッタ発生量が多くなるとともに、アンダカットが発生しやすくなる。また湯溜りも不安定となりビード形状も悪くなる。したがって、先行電極の溶接電流Iは250〜550Aとする。先行電極の溶接電流Iは、溶込みをより深くする観点から、好ましくは270A以上である。また、スパッタ発生量をより低減させ、アンダカットの発生をより抑制し、ビード形状をより良好にする観点から、好ましくは500A以下である。
本発明においては、溶接電圧V(V)および溶接電流I(A)が、式(1)の条件を満足し、先行電極について、ワイヤ直径R(mm)およびワイヤ突出し長さE(mm)が、式(2)の条件を満足するものとする。
なお、これらの式は、実験によって導き出されたものである。
Figure 0006282199
[56≦V・10/I≦100・・・(1)]
本発明では、溶接電圧V(V)と溶接電流I(A)との比が、式(1)に示す範囲内になると、深溶込みを確保しながら、低スパッタ溶接が可能となり、湯溜りも安定し、大電流で溶接してもアンダカットが発生しないことを見出した。すなわち、式(1)を満たすことにより、溶滴の下ではなく、溶滴の周りを包むようにアークを形成させることが可能となり、100%炭酸ガス溶接でもスプレー移行となり、極低スパッタ溶接が実現できる。
次に、式(1)に示した「V・10/I」値の上下限値の意義について説明する。
式(1)の各パラメータと溶接の特性とには、次のような関係がある。
(a1)溶接電圧Vが高過ぎる場合は、スプレー移行の維持ができなくなってグロビュール移行となり、多量のスパッタが発生する。また、アンダカットも発生しやすくなる。
(a2)溶接電流Iが低過ぎる場合は、先行電極のアーク力が弱くなり、溶込みも浅くなる。
そこで、「V・10/I」の値を「100」以下にすることで、スプレー移行を維持してスパッタを低減するとともにアンダカットの発生を抑制し、湯溜りを安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
また、式(1)の各パラメータと溶接の特性との間には、次のような関係がある。
(b1)溶接電圧Vが低過ぎる場合は、湯溜りが安定しなくなり、ビード形状も悪くなる。
(b2)溶接電流Iが高過ぎる場合は、先行電極のアーク力が強過ぎとなり、湯溜りが安定しなくなる。
そこで、式(1)に示した「V・10/I」の値を「56」以上とすることで、湯溜りを安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
すなわち、「V・10/I」の値が56未満では、湯溜りが安定しなくなり、ビード形状も悪くなる。また、先行電極のアーク力が強過ぎとなり、湯溜りが安定しなくなる。一方、「V・10/I」の値が100を超えると、スプレー移行の維持ができなくなってグロビュール移行となり、多量のスパッタが発生する。また、アンダカットも発生しやすくなる。また、先行電極のアーク力が弱くなり、溶込みも浅くなる。したがって、「V・10/I」の値は56〜100とする。「V・10/I」の値は、ビード形状をより良好とし、湯溜りをより安定させる観点から、好ましくは60以上である。また、スパッタ発生量をより低減させ、アンダカットの発生をより抑制し、溶込みをより深くする観点から、好ましくは84以下、より好ましくは80以下である。
[5≦E/R≦20・・・(2)]
本発明においては、ワイヤ直径R(mm)およびワイヤ突出し長さE(mm)は湯溜りを安定化させ、より深溶込みにするため、式(2)の条件を満足するようにした。
ワイヤ突出し長さEとは、図5に示すように、ワイヤ11bに電流を供給するための溶接チップ(すなわちコンタクトチップ)11aにおける、ワイヤ11bが最終的に突出する部分であるチップ先端部からワイヤ11bの先端までの長さである。
ワイヤ直径Rおよび突き出し長さEが、溶接電流Iおよびワイヤ溶融速度に及ぼす影響について説明する。
例えば、溶接電流Iが同じ場合、ワイヤ直径Rが太いほど、また突き出し長さEが短いほど、ワイヤ溶融速度が小さくなり、深溶込みに有利である。しかし、ワイヤ直径Rが太過ぎたり、突き出し長さEが短過ぎたりすると、溶接電流Iが過大となり、湯溜りが不安定となり、ビード形状も悪くなる。そこで、突き出し長さEとワイヤ直径Rとの関係が式(2)に示した条件を満足することが、深溶込み化と安定した湯溜りの形成とが両立する必要条件であることを見出した。
「E/R」の値が5未満では、ワイヤ直径Rが太過ぎたり、突き出し長さEが短過ぎたりするため、溶接電流Iが過大となり、湯溜りが不安定となり、ビード形状も悪くなる。一方、「E/R」の値が20を超えると、ワイヤ直径Rが短く、突き出し長さEも長くなるので溶込み深さが浅くなる。またビード揃い(すなわち下脚直進性)も劣化する。したがって、「E/R」の値は5〜20とする。「E/R」の値は、湯溜りをより安定とし、ビード形状をより良好とする観点から、好ましくは7以上である。また、溶込みをより深くし、ビード揃いをより良好とする観点から、好ましくは18以下である。
[フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接する]
湯溜りの安定化には、フィラーワイヤを湯溜りに挿入して、その極性が正極性(すなわちワイヤマイナス)の電流をフィラーワイヤに供給することが必須である。逆極性にすると各種の外乱要因(すなわち、(a)すみ肉溶接部の過大ギャップ、(b)ショッププライマの過大塗布膜厚、(c)工場内での電流電圧変動等)の影響を解消することはできない。そして極間距離が15mm未満の場合の問題点と同様に、先行電極、後行電極が共にアークが安定せず、形状が悪くなる、また、スパッタ発生量が多くなる等の問題が生じる。スパッタの多発はシールドノズルへのスパッタの付着によりシールド不良になり気孔発生の原因にもなる。一方、フィラーワイヤに正極性の電流を流すと、各種外乱にも影響されない安定した湯溜りが形成される。このメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、特開2008−55509号公報に記載のように考察することができる。
また、本発明においては、以下の条件とすることが好ましい。
先行電極の溶着速度W(g/min)、後行電極の溶着速度W(g/min)、および、フィラーワイヤの溶着速度W(g/min)が、式(3)および式(4)の条件を満足することが好ましい。
なお、これらの式は、実験によって導き出されたものである。
Figure 0006282199
[0.5≦W/W≦1.0・・・(3)]
先行電極と後行電極の溶着速度の比率を適切な範囲とすることで、深溶込みとビード形状をより良好とすることができる。本発明においては、式(3)の条件を満足することが好ましい。
「W/W」の値が0.5以上であれば、後行電極の溶着量が少なくなりすぎず、先行電極の溶着量が多くなりすぎず、バランスが良好となって湯溜りが安定化し、ビード形状がより良好となる。また、先行電極の溶着量が極端に多くなることがなく、良好な深溶込みが得られる。一方、「W/W」の値が1.0以下であれば、後行電極の溶着量が多くなりすぎず、先行電極の溶着量が少なくなりすぎず、バランスが良好となって湯溜りが安定化し、ビード形状がより良好となる。したがって、「W/W」の値は0.5〜1.0とすることが好ましい。
[0.02≦W/(W+W)≦0.3・・・(4)]
本発明においては、湯溜りの安定性を向上させるため、式(4)の条件を満足することが好ましい。
「W/(W+W)」の値が0.02以上であれば、湯溜りの安定効果が大きくなり、ビード形状がより良好となる。一方、「W/(W+W)」の値が0.3以下であれば、先行電極および後行電極の溶着金属量に相当する溶接ビード脚長に対するフィラーワイヤの溶着金属量が過多とならず、ビード形状が凸型になりにくい。したがって、「W/(W+W)」の値は0.02〜0.3とすることが好ましい。
次に、溶着速度の定義および測定方法について説明する。
溶着速度は、単位溶接時間当たりの溶接金属付着量(すなわち溶着量)のことである。溶着量は以下のようにして求めることができる。
(フラックス入りワイヤの場合)
溶接前の試験板質量を測定し、ワイヤ突出し長さ25mm、適正な溶接電流およびアーク電圧で1分間のビードオンプレート溶接を行い、スラグ、スパッタを除去した後の試験板質量を測定する。この溶接前後の測定した試験板質量の差が1分間あたりの溶着量、すなわち溶着速度である。
(ソリッドワイヤの場合)
溶着量はワイヤ溶融質量とほぼイコールであり、単位長さ当たりのワイヤ質量をN=5で測定した平均値と、単位時間当たりのワイヤ送給長さをN=5で測定した平均値とを掛け合わせたものである。
また、本発明においては、先行電極のスラグ量比S、後行電極のスラグ量比S、および、フィラーワイヤのスラグ量比Sが、式(5)の条件を満足することが好ましい。
なお、この式は、実験によって導き出されたものである。
Figure 0006282199
[0.05≦S+S+S≦0.3・・・(5)]
深溶込みを得つつ、湯溜りを安定化させビード形状と耐気孔性を確保するには、発生するスラグ量比を適切にコントロールすることが好ましい。本発明においては、式(5)の条件を満足することが好ましい。
「S+S+S」の値が0.05以上であれば、ビード表面を覆うスラグがまだらになりにくく、ビード形状がより良好となる。一方、「S+S+S」の値が0.3以下であれば、スラグ量が過剰とならず、耐気孔性がより向上するとともに溶接始端部のなじみ性もより向上する。また、ビード揃い(すなわち下脚直進性)もより向上する。したがって、「S+S+S」の値は0.05〜0.3とすることが好ましい。「S+S+S」の値は、ビード形状をさらに良好にする観点から、より好ましくは0.1以上である。また、耐気孔性、溶接始端部のなじみ性、ビード揃いをさらに良好にする観点から、より好ましくは0.25以下である。
次に、スラグ量比の定義および測定方法について説明する。
各スラグ量比は、「(単位時間当たりの各項目(ワイヤ溶融質量−溶着量−ヒューム発生量−スパッタ発生量)/単位時間当たりのワイヤ溶融質量)」である。
ただし、各スラグ量比を直接測定することは難しいことから、式(5)におけるスラグ量比は、溶接後の溶接物から、スラグを除去した溶接物の質量を差し引いたものを、比で表した値とした。具体的には、以下の式(A)により得られた測定値を正とした。なお、ヒューム量は無視することが可能であるため、下記式には含めていない。
なお、以下の式(A)において、「(試験板質量+溶着量+スパッタ発生量+スラグ量)=全質量」とする。
[(試験板質量+溶着量+スパッタ発生量+スラグ量)−(試験板質量+溶着量+試験板に残存するスパッタ量)]/(試験板質量+溶着量+スパッタ発生量+スラグ量)・・・・・(A)
溶着量測定方法:上述の通りである。
ヒューム発生量:JIS Z3940に準じて測定された単位時間当たりのヒューム発生量である。溶接条件は溶着量測定条件と同じである。
スパッタ発生量:全量捕集法により測定された単位時間当たりのスパッタ発生量である。溶接条件は溶着量測定条件と同じである。
全量捕集法は、アーク点から飛散したスパッタを捕集箱で集める方法である。すなわち、下向ビードオンプレート溶接を行い、その際に発生するスパッタを周囲に設置された銅製の捕集箱で集めて質量を計測し、単位時間当たり又は消費溶接材料量当たりのスパッタ発生量を求めるものである。
スラグ量は、ワイヤ中の酸化物量、脱酸元素等、ガスシールドなどの条件により調整することができる。
[その他]
多電極ガスシールドアーク溶接方法は、先行電極がソリッドワイヤであり、後行電極がフラックス入りワイヤであり、フィラーワイヤがソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであることが好ましい。先行電極にソリッドワイヤを用いることで、より良好な深溶込みを得ることができる。また、後行電極にフラックス入りワイヤを用い、フィラーワイヤにソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤを用いることで、湯溜まりの安定性と深溶込みのバランスを維持することができ、ビード形状と耐ピット性を向上させることができる。
フラックス入りワイヤとしては、ルチールを主体とするチタニヤ系フラックス入りワイヤ又は所謂メタル系と称する金属粉を主体とするフラックス入りワイヤのいずれでも適用可能である。
なお、フラックス入りワイヤについては特に通常の単電極用に設計されたものより多電極施工法に適した組成が好ましい。これは、先行電極および後行電極の両方のワイヤにより1つの溶融池が形成されるためである。
フラックス入りワイヤの組成は制限されるものではないが、特に好ましいワイヤ組成は、チタニヤ系フラックス入りワイヤの場合にはワイヤ全質量あたり酸化物(TiO、SiO、MgO、Al、FeO、Fe、ZrO等)が1.5〜5.5質量%である。酸化物が1.5質量%以上であれば、ビード表面を被うスラグがまだらにならず、ビード形状がより良好となる。一方、酸化物が5.5質量%以下であれば、スラグ量が過剰とならず、スラグの流動性が小さくなるために、ビード止端部の揃いがより良好となる。従って、酸化物は1.5〜5.5質量%とすることが好ましい。なお、酸化物の原料にはルチール、イルミナイト、ジルコンサンド、アルミナ、マグネシア、珪砂等が挙げられる。
フラックス入りワイヤは、アルカリ金属酸化物(KO、NaOおよびLiO換算)を、合計でワイヤ全質量あたり0.01〜0.15質量%含有することが好ましい。これらのアルカリ金属酸化物が0.01質量%以上であれば、アークの安定性がより向上する。一方、アルカリ金属酸化物が0.15質量%以下であれば、アークの吹きつけが強くなりすぎず、溶融池がより安定する。また、アルカリ金属酸化物の原料は吸湿しやすいが、ワイヤ全体の耐吸湿性が向上しやすい。従って、アルカリ金属酸化物はKO、NaOおよびLiOの1種又は2種以上を0.01〜0.15質量%の範囲とすることが好ましい。なお、KO、NaO、LiOの原料としては、長石、ソーダガラス、カリガラス等が挙げられる。アルカリ金属酸化物は種々のものが適用できる。
更に、フラックス入りワイヤは、Mg、Si、Mnが脱酸剤等の目的で添加されることが好ましい。Mgの原料としては、金属Mg、Al−Mg、Si−Mg、Ni−Mg等が挙げられる。Siの原料としては、Fe−Si、Fe−Si−Mn等が挙げられる。Mnの原料としては、金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等が挙げられる。
その他、フラックス入りワイヤに含有される組成は、鉄粉、フッ化物、酸化ビスマス等である。メタル系フラックス入りワイヤの場合の特に好ましいワイヤ組成は、ワイヤ全質量あたり酸化物(TiO、SiO、MgO、Al、FeO、Fe、ZrO等)が1.5質量%以下である。その代わり、金属原料はワイヤ全質量あたり98質量%以上を含有させることが好ましい。換言するとフラックス中には金属原料をフラックス全質量あたり94質量%以上含ませることが好ましい。金属原料は鉄粉又はFe−MnおよびFe−Si等の鉄合金がある。アーク安定剤としてアルカリ金属酸化物(KO、NaOおよびLiO換算)はチタニヤ系と同様の種々のものが適用でき、合計でワイヤ全質量あたり0.01〜0.15質量%含有することが好ましい。これらのアルカリ金属酸化物が0.01質量%以上であれば、アークの安定性がより向上する。一方、アルカリ金属酸化物が0.15質量%以下であれば、アークの吹きつけが強くなりすぎず、溶融池がより安定する。また、アルカリ金属酸化物の原料が吸湿しやすいが、ワイヤ全体の耐吸湿性が向上しやすい。従って、アルカリ金属酸化物はKO、NaOおよびLiOの1種又は2種以上を0.01〜0.15質量%の範囲とすることが好ましい。なお、KO、NaO、LiOの原料としては、長石、ソーダガラス、カリガラス等が挙げられる。その他、Mg、Si、Mnは同様に添加される。
ソリッドワイヤの組成についても制限されるものではないが、一例としては、C:0.03〜0.15質量%、Si:0.10〜1.00質量、Mn:0.50〜2.50質量%、P:0.030質量%以下、S:0.030質量%以下、Cu:0.35質量%以下、Ti:0.25質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。その他、Ni,Cr,Al,Zr,Mgなどを含んでも良い。なお、Cuはめっき分である。
ソリッドワイヤは、上記成分とすることで、深溶け込みにさらに適したものとなる。
先行電極および後行電極は、逆極性かつ、定電圧特性又は垂下特性の直流電流が供給されることが好ましい。これにより、湯溜りの安定性が向上して、ビード形状、耐ピット性が良好になるとともに、深溶込み化が向上する。
なお、定電圧特性とは、一定速度に制御されて送給されている消耗電極の送給速度が、何らかの外乱によって送給速度の変化が生じ、アーク電圧が変化した場合にあっても、常に一定の電圧に制御するように自動的に電流値を増減して安定なアーク溶接を持続できるように制御される特性のことである。また、垂下特性とは、溶接電源の出力が正弦波状に変化する特性である。垂下特性においては、アーク長の変化によって電圧はかなり変化するが、電流の変化はわずかである。垂下特性においては、アーク長の変動等により電圧が変化しても、ほとんど一定の電流を流すことができる。
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と対比して説明する。
下記表1に示す成分組成のワイヤを使用し、以下の条件、および、表2に示す条件で溶接試験を行った。なお、フラックス入りワイヤについては、下記表1に示す成分組成のフラックスを軟鋼製ケーシング内に表1に示すフラックス率となるように充填して製造した。なお、表1において、フラックスを含有しないものは「−」で示し、表2において、本発明の範囲を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
Figure 0006282199
[溶接試験条件]
(1)供試鋼板および継手形状:12mm×100mm×1000mm鋼板を用いてT型すみ肉継手を形成した。なお、プライマ膜厚は40μmである。
(2)溶接姿勢:2電極水平すみ肉溶接
(3)シールドガス:100%CO、流量25リットル/分
(4)電源特性:DCワイヤ(+)
(5)後行電極:300〜500A×30〜40V、フィラーワイヤ:50〜120A
(6)前進角β・後退角α:先行電極;後退角α 10°、後行電極;前進角β 10°、フィラーワイヤ;前進角β 0°、後退角α 0°
前進角β・後退角αとは、図5に示すように、下板2の表面に対して垂直な線と、ワイヤ11b、21b、31bが最終的に溶接チップ11a、21a、31aから突出する部分であるチップ先端部での軸線とがなす角度である。
(7)トーチ角度θ:先行電極;50°、後行電極;50°、フィラーワイヤ;50°
トーチ角度θとは、図6に示すように、先行電極11の場合、水平に配置された下板2の表面と先行電極11とがなす角度である。後行電極、フィラーワイヤについても同様である。
(8)狙い位置:先行電極;0mm、後行電極;2mm(下板側)、フィラーワイヤ;5mm(上板側)
(9)溶接速度:2.0m/分
(10)フィラーワイヤ径:1.2mm
(11)すみ肉ルート部のギャップ:2.0mm
なお、溶着速度およびスラグ量比の測定方法は前述のとおりである。スラグ量比は、前述した式(A)により求めた。
Figure 0006282199
[評価基準]
この溶接試験において、以下の評価を行った。
(深溶込み)
図3、4でaに示した水平方向の溶込み深さによって評価した。
評価基準は以下のとおりである。
4点:3.0mm以上
3点:2.5mm以上3.0mm未満
2点:2.0mm以上2.5mm未満
1点:2.0mm未満
(なじみ性)
上記溶接条件で行ったビードを観察し、官能によって評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
4点:非常に優れている
3点:優れている
2点:良好である
1点:不良である
(スパッタ発生量)
発生したスパッタ量を前述した全量捕集法により測定した。
評価基準は以下のとおりである。
4点:0.7(g/分)以下
3点:0.7(g/分)超1.3(g/分)以下
2点:1.3(g/分)超2.0(g/分)以下
1点:2.0(g/分)超
(ビード形状)
上記溶接条件で行ったビードを観察し、官能によって評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
4点:非常に優れている
3点:優れている
2点:良好である
1点:不良である
(耐ピット性)
ピット発生数(個/1000mm)をカウントした。
評価基準は以下のとおりである。
4点:0個
3点:1〜2個
2点:3〜5個
1点:6個以上
(アンダカット)
試験板の長手方向の200mm、600mm、800mm地点を横手方向に垂直にカットし、この断面を観察してアンダカットを確認した。
評価基準は以下のとおりである。なお、下記評価基準は、少なくとも1か所についてのものである。
4点:なし
3点:0.2mm以下
2点:0.2mm超0.5mm以下
1点:0.5mm超
(ビード揃い(下脚脚長性))
上記溶接条件で行ったビードを観察し、官能によって評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
4点:非常に優れている
3点:優れている
2点:良好である
1点:不良である
以上の評価項目において、2点以上を合格とした。これらの結果を下記表3に示す。
Figure 0006282199
表2、3に示すように、本発明の範囲を満足する、または参考例であるNo.1〜29は、すべての評価項目において良好であった。
一方、本発明の範囲を満足しないNo.30〜38は、以下の結果となった。
No.30は、極間距離が下限値未満のため、スパッタ発生量、ビード形状の評価が不良であった。
No.31は、極間距離が上限値を超えるため、耐ピット性の評価が不良であった。
No.32は、フィラーワイヤの極性が逆極性のため、スパッタ発生量、ビード形状の評価が不良であった。
No.33は、先行電極の電流が下限値未満であり、式(1)の値が上限値を超えるため、深溶込み、スパッタ発生量、アンダカットの評価が不良であった。

No.34は、先行電極の電流が上限値を超え、式(1)の値が下限値未満のため、スパッタ発生量、ビード形状、アンダカットの評価が不良であった。
No.35は、先行電極の電圧が下限値未満のため、なじみ性、ビード形状の評価が不良であった。
No.36は、先行電極の電圧が上限値を超えるため、スパッタ発生量、アンダカットの評価が不良であった。
No.37は、式(2)の値が上限値を超えるため、深溶込み、ビード揃いの評価が不良であった。
No.38は、式(2)の値が下限値未満のため、ビード形状の評価が不良であった。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
1 被溶接材料
2 下板(被溶接材料)
3 立板(被溶接材料)
5 湯溜り
6 配電盤
7 溶接金属
8 溶融池(溶融金属)
11 先行電極
11a、21a、31a 溶接チップ
11b、21b、31b ワイヤ
19 溶接スラグ
21 後行電極
31 フィラーワイヤ

Claims (6)

  1. ガスシールドアーク溶接用ワイヤを先行電極および後行電極に使用し、フィラーワイヤを前記先行電極と前記後行電極の間の溶融金属中に挿入して溶接する多電極ガスシールドアーク溶接方法であって、
    前記先行電極と前記後行電極との間の極間距離が15〜50mmであり、
    前記先行電極の溶接電圧V(V)が26〜38Vであり、前記先行電極の溶接電流I(A)が250〜550Aであり、
    前記溶接電圧V(V)および前記溶接電流I(A)が、式(1)の条件を満足し、
    前記先行電極について、ワイヤ直径R(mm)およびワイヤ突出し長さE(mm)が、式(2)の条件を満足し、
    前記先行電極のスラグ量比S 、前記後行電極のスラグ量比S 、および、前記フィラーワイヤのスラグ量比S が、式(5)の条件を満足し、
    前記フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することを特徴とする多電極ガスシールドアーク溶接方法。
    Figure 0006282199
  2. ガスシールドアーク溶接用ワイヤを先行電極および後行電極に使用し、フィラーワイヤを前記先行電極と前記後行電極の間の溶融金属中に挿入して溶接する多電極ガスシールドアーク溶接方法であって、
    前記先行電極がソリッドワイヤであり、前記後行電極がフラックス入りワイヤであり、前記フィラーワイヤがソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであり、
    前記先行電極と前記後行電極との間の極間距離が15〜50mmであり、
    前記先行電極の溶接電圧V (V)が26〜38Vであり、前記先行電極の溶接電流I (A)が250〜550Aであり、
    前記溶接電圧V (V)および前記溶接電流I (A)が、式(1)の条件を満足し、
    前記先行電極について、ワイヤ直径R (mm)およびワイヤ突出し長さE (mm)が、式(2)の条件を満足し、
    前記フィラーワイヤに、正極性の電流を流して溶接することを特徴とする多電極ガスシールドアーク溶接方法。
    Figure 0006282199
  3. 前記先行電極の溶着速度W(g/min)、前記後行電極の溶着速度W(g/min)、および、前記フィラーワイヤの溶着速度W(g/min)が、式(3)および式(4)の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
    Figure 0006282199
  4. 前記先行電極の溶着速度W (g/min)、前記後行電極の溶着速度W (g/min)、および、前記フィラーワイヤの溶着速度W (g/min)が、式(3)および式(4)の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
    Figure 0006282199
  5. 前記先行電極のスラグ量比S、前記後行電極のスラグ量比S、および、前記フィラーワイヤのスラグ量比Sが、式(5)の条件を満足することを特徴とする請求項4に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
    Figure 0006282199
  6. 前記先行電極がソリッドワイヤであり、前記後行電極がフラックス入りワイヤであり、前記フィラーワイヤがソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
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