JP6025627B2 - タンデムガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
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Description
これによって、後行極による溶着量をより好適に確保し、高速度でもアンダカットのない良好なビード形状を得ることが可能となる。
また、本発明に係るタンデムガスシールドアーク溶接方法は、先行極と後行極とを用いた水平すみ肉溶接用のタンデムガスシールドアーク溶接方法であって、前記先行極と前記後行極とをともに逆極性とし、前記先行極としてソリッドワイヤを用いるとともに、当該先行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該先行極のトーチ角度θ L が、5°≦θ L <40°であり、前記後行極としてフラックス入りワイヤを用いるとともに、当該後行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該後行極のトーチ角度θ T が、40°≦θ T ≦60°であり、前記先行極の溶接電圧V L [V]が26〜38[V]であり、前記先行極の溶接電流I L [A]が350〜550[A]であり、前記溶接電圧V L [V]及び前記溶接電流I L [A]の関係が、前記した式(1)の条件を満足するとともに、前記後行極についての溶接電流I T [A]、溶接電圧V T [V]、ワイヤ送給速度W fT [m/min]及びワイヤ半径r T [mm]が、前記した式(4)及び式(5)の条件を満足するようにすることもできる。
また、本発明に係るタンデムガスシールドアーク溶接方法は、前記先行極のトーチ角度θ L が、5°≦θ L ≦25°であることが好ましい。
これによって、より好適に、先行極による深溶込みが可能となる。
TiO2及びSiO2は、ともにスラグ形成剤として作用する。TiO2の含有量及びSiO2の含有量の合計を5.0以上とすることにより、十分なスラグ量を確保して、良好なスラグ剥離性や包被性を得ることができ、ビード形状の悪化を抑制することができる。一方、TiO2の含有量及びSiO2の含有量の合計を9.5質量%以下とすることにより、スラグ生成量が過剰とならず、アンダカットやオーバラップの発生を抑制することができる。
また、SiO2の含有量を0.5〜0.8質量%以上とすることにより、良好なスラグ流動性が得られ、ビード形状の悪化を抑制することができるとともに、ビードが垂れやすくなり過ぎず、スパッタ発生量の増加を抑制して溶接作業性の低下を防止することができる。
また、本発明に係るタンデムガスシールドアーク溶接方法によれば、溶接条件を更に絞り込むことにより、より良好に深溶込みの水平すみ肉溶接を行うことができる。
タンデムガスシールドアーク溶接方法は、溶接部にシールドガスGを噴射しながら、先行極4と後行極5とからなる2つの電極によって溶接を行う方法である。前記したように、従来のタンデム溶接法では、先行極4と後行極5とは、40〜60°の範囲の同じトーチ角度に配置するものであった。ここで、トーチ角度とは、図1(c)に示すように、水平に配置された下板1の上面と先行極4及び後行極5とが成す角度θL,θTのことである。
先行極4の中心線(ワイヤ40の先端部である突き出し部の中心線)と、水平に配置されている下板1の上面とが成す角度であるトーチ角度θLは、40°より小さく、かつ5°以上の角度とすることで、立板2の厚さ方向の溶込みを深くなるようにする。また、先行極4の溶接方向に対する傾斜角(すなわち、先行極4の中心線と溶接方向を法線とする面とが成す角度)φLは、特に限定されるものではないが、スッパタの発生量やビード形状を考慮して、0°乃至15°の後退角となるように設定することが好ましい。
なお、溶接方向を法線とする面は、下板1の上面に直交する面であるため、図1(a)においては、溶接方向を法線とする面に代えて、下板1の上面への垂線を示している。次に説明する後行極5についても同様である。
後行極5の中心線(ワイヤ50の先端部である突き出し部の中心線)と、下板1の上面とが成す角度であるトーチ角度θTは、40°以上60°以下、好ましくは40°以上50°以下の角度とすることで、先行極4によって形成する凸ビード(図3(a)参照)を平坦化し、良好なビード形状(図3(b)参照)に整形する。また、後行極5の溶接方向に対する傾斜角(すなわち、後行極5の中心線と溶接方向を法線とする面とが成す角度)φTは、特に限定されるものではないが、スッパタの発生量やビード形状を考慮して、0°乃至25°の前進角となるように設定することが好ましい。
母材である下板1及び立板2は、アークAによって溶融され、ワイヤ40、50が溶融した溶着金属と融合することで溶接部が形成される。また、ワイヤ40,50は、アークAのアーク熱とともに、ワイヤ40,50を流れる溶接電流によって生じるジュール熱によって溶融される。
本発明におけるタンデム溶接では、図2(a)に示すように、トーチ角度を小さく設定した先行極4により、立板2の厚み方向(水平方向)についての深溶け込みに大きく寄与する。また、先行極4により形成されるビード3Lは、凸ビードとなる傾向を有する。図3(a)に凸ビードの断面マクロ写真画像の一例を示す。
また、図2(b)に示すように、先行極4によって形成される凸形状のビード3Lは、後行極5によって平坦化され、良好なビード形状に整形される。図3(b)に平坦化されたビードの断面マクロ写真画像の一例を示す。
すなわち、先行極4が深溶込みに大きく寄与し、後行極5が良好なビード形状に大きく寄与するように役割を分担する。
従来のタンデム溶接法である(a)Ar−CO2混合ガスとソリッドワイヤとを組み合わせたタンデムパルスMAG(Metal Active Gas)法、(b)100%CO2ガスとフラックス入りワイヤとを組み合わせたタンデムCO2溶接法で板厚12mmの水平すみ肉両面溶接を行うと、図4(a)、(b)に示すように、水平方向の合計溶込みが約4〜5mmとなり、板厚の半分以上である約7mmが溶け残しとなる。なお、図4(a)、(b)においては、水平に配置された一方の母材である下板1の上面に垂直に、他方の母材である立板2が配置されている。また、立板2の両面から同じ条件ですみ肉溶接され、ビード3が置かれている。図4(a)、(b)において、立板2の両面に置かれたビード3の間に、水平方向に黒い筋状に見える箇所が、溶け残しとなった領域である。
なお、水平すみ肉溶接において、溶込みが深い又は浅いとは、特に断らない限り、水平方向、すなわち立板2の厚さ方向の溶込みについていうものとする。例えば、図5(a)は、ビード3の水平方向の溶込みが浅い場合を示したものであり、図5(b)は、溶込みが深い場合を示したものである。
タンデム溶接法においては、先行極4によって溶込みの深さを確保し、後行極5によってビード形状を整えるというように、2つの電極で役割を分担している。従って、深溶込み化するためには、先行極4の溶接条件を検討することが必要となる。
(1)深溶込みとしつつ、安定した湯溜り30を形成すること、
(2)シールドガスGとして100%炭酸ガスを用いた溶接でも低スパッタにすること、
(3)トーチ角度θLを小さくし、かつ大電流で溶接してもアンダカットが発生しないこと、
が極めて重要である。
式(1)の各パラメータと溶接の特性とには、次のような関係がある。
(a1)溶接電圧VLが高過ぎる場合は、スプレー移行の維持ができなくなってグロビュール移行となり、多量のスパッタが発生する。また、アンダカットも発生しやすくなる。
(a2)溶接電流ILが低過ぎる場合は、先行極4のアーク力が弱くなり、溶込みも浅くなる。
そこで、「VL・103/IL」の値を「84」以下にすることで、スプレー移行を維持してスパッタを低減するとともにアンダカットの発生を抑制し、湯溜り30を安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
(b1)溶接電圧VLが低過ぎる場合は、湯溜り30が安定しなくなり、ビード形状も悪くなる。
(b2)溶接電流ILが高過ぎる場合は、先行極4のアーク力が強過ぎとなり、湯溜り30が安定しなくなる。
そこで、式(1)に示した「VL・103/IL」の値を「56」以上とすることで、湯溜り30を安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
ここで、突き出し長さELとは、先行極4の先端部において、ワイヤ40に電流を供給するためのコンタクトチップ(不図示)から母材までの長さである。
例えば、溶接電流ILが同じ場合、ワイヤ直径RLが太いほど、また突き出し長さELが短いほど、ワイヤ溶融速度WmLが小さくなり、深溶込みに有利である。
しかし、ワイヤ直径RLが太過ぎたり、突き出し長さELが短過ぎたりすると、溶接電流ILが過大となり、湯溜まり30が不安定となり、ビード形状も悪くなる。
そこで、突き出し長さELとワイヤ直径RLとの関係が式(2)に示した条件を満足することが、深溶込み化と安定した湯溜り30の形成とが両立する必要条件であることを見出した。
すなわち、式(2)及び式(3)の条件を満足することにより、より低スパッタで、アンダカットが発生せず、良好なビード形状で深溶け込みとなる溶接が可能であることを見出した。
式(2)の各パラメータと溶接の特性とには、次のような関係がある。
(c1)突き出し長さELが長過ぎる場合は、ワイヤ溶融速度WmLが過大となり、湯溜り30が安定しなくなり、溶込みも浅くなる。
(c2)ワイヤ溶融速度WmLが同じ場合において、ワイヤ直径RLが小さいほど、溶接電流ILが低くなる。従って、ワイヤ直径RLが小さ過ぎる場合は、溶接電流ILが低くなることでアーク力が弱くなり、深溶込みに不利となる。
そこで、「EL/RL」の値を「20」以下、更に好ましくは「15」以下とすることで、湯溜り30の安定性と深溶け込みとの両立が可能となる。
(d1)突き出し長さELが短過ぎると、先行極4のアーク力が強過ぎるため、湯溜り30が不安定となり、ビード形状も悪くなる。
(d2)ワイヤ直径RLが大き過ぎると、溶接電流ILが過大となり、湯溜り30が不安定となり、ビード形状も悪くなる。
そこで、「EL/RL」の値を「5」以上とすることで、湯溜り30の安定性を確保しながら、深溶込みを可能とすることができる。
なお、式(2)を満足していることが前提である。
式(3)の各パラメータと溶接の特性との間には、次のような関係がある。
(e1)溶接電圧VLが高過ぎる場合は、スプレー移行の維持ができなくなってグロビュール移行となり、多量のスパッタが発生する。また、アンダカットも発生しやすくなる。
(e2)ワイヤ溶融速度WmLが高過ぎる場合は、湯溜り30が安定しなくなり、溶込みも浅くなる。
(e3)溶接電流ILが低過ぎる場合は、先行極4のアーク力が弱くなり、溶込みも浅くなる。
(e4)突き出し長さELが短過ぎる場合は、トーチ角度θLが小さくなると、ワイヤ40の側面と下板1との間にアークが発生するため、溶接が不安定になる。
(e5)「WmL/(IL 2・EL)」が低過ぎると、溶接電流ILが過大になり、アンダカットが発生しやすくなる。
そこで、式(3)に示した「(VL 2・WmL・103)/(IL 2・EL)」の値を「48」以下とすることで、スプレー移行を維持してスパッタを低減するとともにアンダカットの発生を抑制し、湯溜り30を安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
(f1)溶接電圧VLが低過ぎる場合は、湯溜り30が安定しなくなり、ビード形状も悪くなる。
(f2)ワイヤ溶融速度WmLが低過ぎる場合は、湯溜り30のバランスが崩れ、ビード形状も悪くなる。
(f3)溶接電流ILが高過ぎる場合は、先行極4のアーク力が強過ぎとなり、湯溜り30が安定しなくなる。
(f4)突き出し長さELが長過ぎる場合は、ワイヤ溶融速度WmLが過大となり、湯溜り30が安定しなくなり、溶込みも浅くなる。
(f5)「WmL/(IL 2・EL)」が高過ぎると、溶接電流ILが低くなり、溶込みが浅くなる。
そこで、式(3)に示した「(VL 2・WmL・103)/(IL 2・EL)」の値を「38」以上とすることで、湯溜り30を安定させて良好なビード形状を維持しつつ、深溶込みを可能とする。
先行極4の溶接条件を規定した式(1)、好ましくは更に式(2)及び式(3)の条件を満足することで、深溶込み化を図りつつ先行極4から発生するスパッタを大幅に低減できる効果があるが、タンデムガスシールドアーク溶接法において、より良好なビード形状や低スパッタ化を図るために、後行極5の溶接条件も適切に設定することが好ましい。
式(4)に示した「(IT・VT・10−8)/(WfT・πrT 2)」の値が「7」を超えると、低スパッタかつ良好なビード形状を得ることができない。すなわち、溶接電流ITが大き過ぎると、後行極5によるアークAのアーク力が高過ぎとなり、2つの電極間に生じる湯溜り30が不安定となる。そのため、正常なビード形状が得られない。また、溶接電圧VTが大き過ぎると、アーク長が長過ぎとなり、多量のスパッタが発生する上、アンダカットも発生しやすくなる。
更に、溶接電圧VTが小さ過ぎると、アーク長が短過ぎて短絡を発生させてしまい、スパッタが多発する上、ビード形状を十分に整えることができない。
また、SiO2の含有量を0.5質量%以上とすることにより、良好なスラグ流動性が得られ、ビード形状の悪化を抑制することができる。一方、SiO2の含有量を0.8質量%以下とすることにより、ビードが垂れやすくなり過ぎず、スパッタ発生量の増加を抑制して溶接作業性の低下を防止することができる。
まず、第1実験として、先行極4についてのワイヤ送給速度WfL[m/min]、ワイヤ溶融速度WmL[g/min]、ワイヤ直径RL[mm]、突き出し長さEL[mm]、溶接電流IL[A]、及び溶接電圧VL[V]を変化させて、式(1)、式(2)及び式(3)の各計算値が本発明の要件を満足するサンプルと、満足しないサンプルとが含まれるように溶接条件を様々に設定して、板厚が12[mm]の母材(下板1及び立板2)の立板2の片側について、同脚長の水平すみ肉溶接を行い、溶込み[mm]と、スパッタ発生量[g/min]と、ビード形状と、アンダカットとについて評価を行った。
表2(サンプルNo.10〜38)は、ワイヤ直径RLを、1.4[mm]とし、溶接電流ILを500[A]近傍(No.10〜20)、450[A]近傍(No.21〜29)及び400[A]近傍(サンプルNo.30〜38)とした場合の実験結果である。
表3(サンプルNo.39〜67)は、ワイヤ直径RLを、1.6[mm]とし、溶接電流ILを500[A]近傍(No.39〜48)、450[A]近傍(No.49〜58)及び400[A]近傍(サンプルNo.59〜67)とした場合の実験結果である。
表4(サンプルNo.68〜95)は、後行極についてのワイヤ直径RTを1.6(No.68〜75)、1.4(No.76〜87)及び1.2(No.88〜95)[mm]と変化させ、溶接電流IT及び溶接電圧VTを変化させた場合の実験結果である。
(1)スパッタ発生量
◎:1.0g/min以下
○:1.0〜3.0g/min(数値範囲の両端を含まず)
×:3.0g/min以上
(2)溶込み(図5(c)にcで示した水平方向の溶込みの深さ)
◎:4.5mm以上
○:3.0〜4.5mm(数値範囲の両端を含まず)
×:3.0mm以下
(3)ビード形状(図5(c)に示したaとbとの比(a/b))
◎:0.15以下
○:0.15〜0.2(数値範囲の両端を含まず)
×:0.2以上
(4)アンダカット評価
◎:アンダカットなし
×:アンダカットあり
(5)総合評価
◎:評価項目(1),(2),(3),(4)の全部が◎の場合
○:評価項目(1),(2),(3),(4)の何れにも×がない場合(全部が◎は除く)
×:評価項目(1),(2),(3),(4)の何れかに×がある場合
表1〜表3に示した第1実験の結果において、式(1)、式(2)及び式(3)の各計算値が、前記した所定の範囲から外れるものについては、数値に下線を付して示した。また、評価結果(溶込み、スパッタ発生量及びビード形状)において、不良と判定される数値に下線を付して示した。
表4に示した第2実験の結果において、式(4)及び式(5)の各計算値が、前記した所定の範囲から外れるものについては、数値に下線を付して示した。また、評価結果(溶け込み、スパッタ発生量及びビード形状)において、不良と判定される数値に下線を付して示した。
次に、発明法と、従来のタンデムガスシールドアーク溶接法(従来法1及び従来法2)とにより溶接を行い、溶込み及びスパッタ発生量の比較を行った結果について説明する。
各溶接法ともに、溶接速度を100[cm/min]とし、水平方向及び垂直方向の脚長が同じで7〜7.5[mm]となるように、板厚が12[mm]の母材(下板1及び立板2)の水平すみ肉両面溶接を行った。立板2の両面側とも同じ溶接条件で溶接した。
両極とも、ワイヤとして直径1.2[mm]のソリッドワイヤを用い、シールドガスとしてアルゴンガスと炭酸ガス(20体積%)との混合ガスを用いた。溶接電流及び溶接電圧は、先行極が300A、29.8Vとし、後行極が330A、31.0Vとした。
なお、両極ともトーチ角度は、45°とした。
両極とも、ワイヤとして直径1.6mmのFCW(フラックス入りワイヤ)を用い、シールドガスとして100%炭酸ガスを用いた。溶接電流及び溶接電圧は、先行極が450A、33.0Vとし、後行極が350A、31.0Vとした。
なお、両極ともトーチ角度は、45°とした。
先行極は、ワイヤとして直径1.6mmのソリッドワイヤを用い、ワイヤの突き出し長さを13mmとし、トーチ角度を15°とした。また、溶接電流及び溶接電圧を510A、33.8Vとした。
後行極は、ワイヤとして直径1.4mmのFCWを用い、ワイヤの突き出し長さを25mmとし、トーチ角度を45°とした。また、溶接電流及び溶接電圧を300A、31.0Vとした。
また、両極とも、シールドガスとして、100%炭酸ガスを用いた。
図4(a)及び図4(b)に示すように、従来法1及び従来法2を用いた溶接では、立板2に、約7mmの未溶接部分があるのに対して、図4(c)に示すように発明法を用いた溶接では、未溶接部がない完全溶込みが可能であることが分かる。従来は、レーザを用いた溶接法でしか得られなかった深溶込み効果を、シールドガスアーク溶接法として初めて本発明で実現した。
ここで、スパッタ発生率は、次の式で算出した。
スパッタ発生率 =
(スパッタ発生量[g/min]/ワイヤ溶融速度[g/min])×100(%)
次に、第4実験として、後行極5のワイヤの化学成分を変化させて、TiO2及びSiO2の含有量の合計が5.0〜9.5質量%、TiO2の含有量が4.5〜9.0質量%、SiO2の含有量が0.5〜0.8質量%である条件を満足するサンプルと、この条件を満足しないサンプルとが含まれるように設定して、板厚が12[mm]の立板2の片側について、同脚長の水平すみ肉溶接を行い、アンダカットとビード形状とについて評価を行った。
なお、各極の溶接条件は、前記した第1実験におけるサンプルNo.43(表3参照)と同じに設定した。
なお、アンダカットとビード形状は、第1実験及び第2実験と同じ基準で評価した。
表5に示すように、前記したワイヤ成分の条件を満足するサンプルは、アンダカットが発生せず(「◎」で示す)、ビード形状も非常に良好(「◎」で示す)であった。また、ワイヤ成分の条件を満足しないサンプルは、アンダカット又はビード形状の少なくとも一方が不良(「×」で示す)であった。
すなわち、後行極のワイヤの成分において、TiO2及びSiO2の含有量の合計が、好ましくはTiO2の含有量及びSiO2の含有量が、前記した条件を満足することで、アンダカットが発生せず、良好なビード形状が得られることが確認できた。
2 立板(母材)
3 ビード(溶接金属)
3L 先行極による溶接金属
3T 後行極による溶接金属
30 湯溜り
4 先行極
40 ワイヤ
5 後行極
50 ワイヤ
A アーク
G シールドガス
Claims (8)
- 先行極と後行極とを用いた水平すみ肉溶接用のタンデムガスシールドアーク溶接方法であって、
前記先行極と前記後行極とをともに逆極性とし、
前記先行極としてソリッドワイヤを用いるとともに、当該先行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該先行極のトーチ角度θLが、5°≦θL<40°であり、
前記後行極としてフラックス入りワイヤを用いるとともに、当該後行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該後行極のトーチ角度θTが、40°≦θT≦60°であり、
前記先行極の溶接電圧VL[V]が26〜38[V]であり、前記先行極の溶接電流IL[A]が350〜550[A]であり、
前記溶接電圧VL[V]及び前記溶接電流IL[A]が、式(1)の条件を満足し、
前記先行極についての溶接電流I L [A]、溶接電圧V L [V]、ワイヤ溶融速度W mL [g/min]、ワイヤ直径R L [mm]及びワイヤ突出し長さE L [mm]が、式(2)及び式(3)の条件を満足することを特徴とするタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記ワイヤ直径RL[mm]及び前記ワイヤ突出し長さEL[mm]が、式(2−2)の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記後行極のワイヤ突出し長さETが、前記先行極のワイヤ突出し長さELよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記後行極についての溶接電流IT[A]、溶接電圧VT[V]、ワイヤ送給速度WfT[m/min]及びワイヤ半径rT[mm]が、式(4)及び式(5)の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 先行極と後行極とを用いた水平すみ肉溶接用のタンデムガスシールドアーク溶接方法であって、
前記先行極と前記後行極とをともに逆極性とし、
前記先行極としてソリッドワイヤを用いるとともに、当該先行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該先行極のトーチ角度θLが、5°≦θL<40°であり、
前記後行極としてフラックス入りワイヤを用いるとともに、当該後行極のシールドガスとして炭酸ガスを用い、当該後行極のトーチ角度θTが、40°≦θT≦60°であり、
前記先行極の溶接電圧VL[V]が26〜38[V]であり、前記先行極の溶接電流IL[A]が350〜550[A]であり、
前記溶接電圧VL[V]及び前記溶接電流IL[A]が、式(1)の条件を満足し、
前記後行極についての溶接電流I T [A]、溶接電圧V T [V]、ワイヤ送給速度W fT [m/min]及びワイヤ半径r T [mm]が、式(4)及び式(5)の条件を満足することを特徴とするタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記先行極のトーチ角度θLが、5°≦θL≦25°であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記後行極のフラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量あたり、TiO2の含有量及びSiO2の含有量の合計が5.0〜9.5質量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
- 前記後行極のフラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量あたり、TiO2が4.5〜9.0質量%、SiO2が0.5〜0.8質量%、Cが0.02〜0.09質量%、Siが0.3〜0.75質量%、Mnが2.0〜3.0質量%を、それぞれ含有することを特徴とする請求項7に記載のタンデムガスシールドアーク溶接方法。
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