JPH08150396A - 水溶液中の金属イオンの処理方法 - Google Patents

水溶液中の金属イオンの処理方法

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JPH08150396A
JPH08150396A JP29522194A JP29522194A JPH08150396A JP H08150396 A JPH08150396 A JP H08150396A JP 29522194 A JP29522194 A JP 29522194A JP 29522194 A JP29522194 A JP 29522194A JP H08150396 A JPH08150396 A JP H08150396A
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Abstract

(57)【要約】 [目的] 水溶液中の金属イオン、特に貴金属イオンを
選択的に、効率よく捕捉回収するための金属イオン処理
剤を経済的に、有効に使用する方法を提供することにあ
る。 [構成] 水溶液中に含まれる金属イオン(金属錯イオ
ンを含む。)、特に貴金属イオンをレドックス反応によ
って0価の金属に変え、かつ可逆的に酸化還元能力を有
するレドックス反応試薬を固体の多孔質担体に担持して
なる水溶液中の金属イオン処理剤に、該金属イオンを含
む水溶液を接触させ、該金属イオンを0価の金属として
該金属イオン処理剤上に還元捕捉し、酸化されて実質的
に該金属イオンを捕捉できなくなった(破過した)該金
属イオン処理剤を還元処理した後、該金属イオン処理剤
を、繰り返し金属イオンを含む水溶液に接触させること
からなる水溶液中の金属イオンの処理方法である。 [効果] 本発明の金属イオン処理剤を繰り返し使用で
きるので、利用効率が高くなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属イオンを含有する
水溶液、例えば銅や水銀化合物を使用して、これらの金
属を含む化合物を製造する工程から排出する金属イオン
含有排水、電子部品を製造する際に排出する金属イオン
含有排水、工業用触媒を使用し又は廃触媒の処理等から
排出される金属イオン含有排水、各種メッキ工場から排
出する金属イオン含有排水及び写真工業から排出される
銀等の金属錯塩を含有する定着液排水等の水溶液中の金
属イオンの処理方法に関する。特には、水溶液に含まれ
る金、銀、白金、パラジウム、ロジウム又はルテニウム
等のいわゆる貴金属イオンを回収するのに有効な処理方
法に関する。
【0002】さらに本発明は、固体の多孔質担体に担持
させたアントラキノン又はその誘導体からなるレドック
ス反応試薬のヒドロキノン型の金属イオン処理剤を用い
て、選択的に還元反応を行わせ、排水中に含まれる金属
イオンを、流通する水溶液で選択的に0価の金属に変
え、金属として回収処理することにより、水中棲物に悪
影響を与えるおそれがある排水を無害化し、さらには、
酸化されて還元すべき能力を失った該金属イオン処理剤
を還元処理し、再利用する技術に関するものである。
【0003】
【従来の技術】日本は、近年殆どの金属を輸入に頼って
おり、特に電子部品、自動車や工業排ガスの酸化処理に
使用する工業用酸化触媒及び還元触媒等の工業用触媒及
び各種のメッキ用金属並びに写真工業で使用される感光
剤には、大量の貴金属が使用され、それに応じてこれら
を製造したり、回収する際にも重金属若しくは貴金属イ
オンを含む排水が排出され、又写真工業においてその定
着工程からも多量の貴重な金属資源を含む排水が排出さ
れ、資源の乏しいわが国ではこれらの金属資源を回収、
再利用することが重要視されている。
【0004】これらの金属の殆どが金属イオン又は金属
錯イオン(以下、この両者を合わせて単に金属イオンと
いう。)として水溶液等の水性媒体に含まれている。こ
の金属イオンを回収する方法としては、例えば、(1)
水溶液中から不溶性塩又は還元等によって沈殿物を生成
させて、夾雑物と貴金属等の金属とを分離し、精製し回
収する方法、(2)イオン交換樹脂又はキレート樹脂に
吸着させて回収する方法、(3)酸化還元樹脂によって
吸着回収する方法及び(4)金属イオンを電解還元して
金属として取得する方法等がある(例えば、Austi
n C. Cooley,J.Imaging Sci
ence Technology第37卷,4号,37
4〜379頁(1993年))。
【0005】(1)の方法は廃液中に、金属が同伴され
る可能性が高く、金属の回収率があまり良くない。
(2)の方法はいずれも数種類の金属イオンが共存する
場合には選択率があまり高くなく、キレート樹脂は金属
イオンが錯体となっている場合には除去しにくいという
欠点がある。(3)の方法は酸化還元樹脂を製造するた
めの原料となるモノマー、例えばモノビニルアントラキ
ノン等、を製造する場合においても、アントラキノン等
のキノン類を直接アルキル化やアルケニル化する実用的
な方法がなく、多くの工程を必要とし非常に高価にな
る。且つそのモノマーを使用して、例えばジビニルベン
ゼンと重合させた場合にはビーズ状になりにくい等の欠
点があり、実用的なものが製造されていない。(4)の
方法、即ち電解法は、高濃度の金属イオンの回収には有
力であるが、低濃度の金属イオンの場合には、電流効率
が悪くなる上、排水規制等における数ppm以下の金属
イオン濃度まで処理することは実質的にできない。
【0006】水溶液中において、多価の金属イオンをヒ
ドロキノン−キノン型のレドックス反応試薬を用いて還
元する方法については、アントラキノンを除くアントラ
キノン誘導体のヒドロキノン型の有機溶剤溶液を用い
て、水溶液中の多価の金属イオンを銅、銀及び水銀等の
金属に還元して分離し、回収する方法が知られている
(米国特許3,820,979号)。ここで使用するレ
ドックス反応試薬は一度完全に酸化された後、改めて水
素化還元することにより、レドックス反応試薬の有機溶
剤溶液として循環再使用されている。推定されるヒドロ
キノン−キノン型の代表的なレドックス反応試薬の挙動
は[化1]に示す通りである。
【0007】
【化01】
【0008】これらのレドックス反応試薬は、従来いず
れも溶液中に溶解した状態で使用に供されており、溶液
と共に失われる欠点があった。アントラキノン及びその
誘導体のレドックス反応試薬としては、例えば、アント
ラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアン
トラキノン、2−プロピルアントラキノン、2−イソプ
ロピルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノ
ン、2−アミルアントラキノン、テトラヒドロアントラ
キノン、2置換−テトラヒドロアントラキノン等が知ら
れており、何れもブタジエン又は置換基を有するジエン
化合物とナフトキノンとの縮合反応(Diels Al
der反応)、又は無水フタル酸と対応するアルキルベ
ンゼンとの縮合反応により合成することができる。
【0009】前出の米国特許第3,820,979号で
は、これらのアントラキノンを除くアントラキノン誘導
体と、これに組合わせて使用する有機溶剤溶液の例が挙
げられている。溶解させるために使用する溶剤として
は、高沸点の非極性又は極性の溶媒を混合したものを必
要とする欠点があった。例えば、非極性有機溶剤として
は、アルキルトルエン、アルキルナフタレン、又は、ジ
フェニルを、極性有機溶剤としてはオクタノール、エチ
ルヘキサノール、又は、ジイソブチルケトンを、その他
にジアルキルフタレート、ジアリルフタレート、アルキ
ルベンゾエート、ベンジルアセテート等のエステル類を
使用することが挙げられている。
【0010】前出の米国特許第3,820,979号の
例では、このレドックス反応試薬を有機溶剤溶液として
利用するには、可燃性、又は、蒸発損失等の使用上の危
険又は不利益を克服する必要があり、工程上、共存する
水溶液相、有機溶剤相及び金属に還元し回収する固相の
3相分離に困難性があり、また固相の残渣に伴って失わ
れるレドックス反応試薬の量がプロセスの経済性に重大
な影響を及ぼす等の問題点があった。
【0011】
【発明が解決しようする課題】しかして、本発明が解決
しようとする課題は、水溶液中の金属イオン類、特に
金、銀及び白金族元素からなる貴金属イオンを選択的
に、効率よく回収することができ、さらに、水溶液、例
えば排水中の金属イオンを無害な濃度以下にまで処理す
ることができ、かつ原料の入手が容易で、簡便に製造す
ることができ、その結果として経済的に比較的安価に製
造することが可能な水溶液中の金属イオンの処理剤を効
果的に使用するための方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、該レドックス反
応試薬、例えば、ヒドロキノン骨格を有する化合物を固
体の多孔質担体に吸着固定した担持物で金属イオン、特
に貴金属イオンを含有する水溶液を処理したところ、貴
金属イオンが選択的に還元され、この担持物に0価の金
属として捕捉されること、かつその選択率も従来の樹脂
よりも良好であることを見出し、平成5年11月17日
に出願した(特願平5−323045)。本発明者等は
この特許出願をさらに追求した結果、驚くべきことには
一旦、金属イオンを還元し0価の金属として捕捉した
後、破過した金属イオン処理剤を、還元処理した後、こ
の処理剤を再び金属イオン処理剤として使用したとこ
ろ、再び金属イオンを捕捉する能力があることを見出
し、本発明を完成した。
【0013】即ち、本発明は、水溶液中に含まれる金属
イオン(金属錯イオンを含む。以下同じ。)をレドック
ス反応によって0価の金属に変え、かつ可逆的に酸化還
元を行う能力を有する有機試薬(レドックス反応試薬)
を、固体の多孔質担体に担持してなる水溶液中の金属イ
オン処理剤に該金属イオンを含む水溶液を接触処理さ
せ、該金属イオンを0価の金属として該金属イオン処理
剤上に還元捕捉し、酸化されて実質的に該金属イオンを
捕捉できなくなった該金属イオン処理剤を還元処理した
後、該金属イオン処理剤に繰り返し金属イオンを含む水
溶液を接触処理させることを特徴とする水溶液中の金属
イオンを処理する方法に存する。
【0014】本発明におけるレドックス反応試薬として
は、金属イオンを0価の金属に還元する能力がある化合
物であり、多孔質担体に安定に吸着等によって固定され
る化合物であれば使用することができる。例えば、ヒド
ロキノン骨格を有する化合物であり、この化合物として
は広義には公知のキノン化合物の還元された化合物をも
含む。その他インジゴ等を還元した化合物も挙げられ
る。
【0015】ヒドロキノン骨格を有する化合物として
は、例えばヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼ
ン)、ナフトヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシナフ
タレン)及びアントラヒドロキノン(9,10−ジヒド
ロキシアントラセン)並びにその水素化化合物及びこれ
らの置換体から選ばれる炭素単環又は多環のヒドロキノ
ン化合物(以下、断らない限り、炭素単環又は多環のヒ
ドロキノン化合物を単にヒドロキノン化合物と総称す
る。)が挙げられる。
【0016】上記のヒドロキノン化合物の置換体におけ
る置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル
基、アルコキシル基、フェニル基、アルキルアミノ基、
ハロゲン基等の比較的疎水性の置換基が挙げられる。ア
ルキル基、アルケニル基及びアルコキシル基における炭
素数は1〜60、実用的には24以下であり、アルキル
基は直鎖又は分岐したもののいずれでもよい。
【0017】又、本発明の目的に障害にならない限り、
これらヒドロキノン化合物の置換基としてスルホン酸
基、スルホン酸アミド基、カルボキシル基を含有する置
換基を採用することができるが、本発明の金属イオン処
理剤は水溶液中で使用されるので、一般に水溶液に溶出
しないような疎水性の置換基を有する還元性化合物が好
ましい。
【0018】これらの置換基を有する化合物としては、
例えば2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノ
ン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2−メチル
ナフトヒドロキノン、2−エチルナフトヒドロキノン、
2−プロピルナフトヒドロキノン、2−メチルアントラ
ヒドロキノン、2−エチルアントラヒドロキノン、2−
アミルアントラヒドロキノン、2−t−ブチルアントラ
ヒドロキノン、2−(4−メチルぺンチル)アントラヒ
ドロキノン等のアルキル化ヒドロキノン化合物;2−
(4−メチル−ペンテニル)アントラヒドロキノン等の
アルケニル化ヒドロキノン化合物;1−メトキシアント
ラヒドロキノン、1,5−ジメトキシアントラヒドロキ
ノン等のアルコキシル化ヒドロキノン化合物;2−フェ
ニルヒドロキノン等のフェニル置換ヒドロキノン化合
物;2−N,N−ジメチルアミノアントラヒドロキノン
等のアルキルアミノ化ヒドロキノン化合物;2−クロロ
ヒドロキノン、2,3−ジクロロナフトヒドロキノン、
1−クロロアントラヒドロキノン、2−クロロアントラ
ヒドロキノン等のハロゲン化ヒドロキノン化合物が挙げ
られる。
【0019】ヒドロキノン化合物の水素化化合物として
は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアント
ラセン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラヒドロ
キノン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒド
ロアントラヒドロキノン等が挙げられる。
【0020】又、カテコール(1,2−ジヒドロキシベ
ンゼン、オルトベンゾキノンの還元体)、4,4’−ジ
ヒドロキシビフェニル(ジフェノキノンの還元体)及び
1,4−ジヒドロキシアントラセン、9,10−ジヒド
ロキシフェナンスレン、アントアントロンの還元体等の
多環式芳香族キノンに対応する還元性化合物も挙げるこ
とができる。これらの化合物は単独でも、又複数の化合
物を併用することもできる。
【0021】本発明において固体の多孔質担体として
は、二酸化珪素、活性炭、活性炭繊維等の炭素製品、ア
ルミナ、有機質系の合成ポリマー粒子、例えば、いわゆ
る有機合成吸着剤であるスチレン−ジビニルベンゼン共
重合体又はその成形品等の上記ヒドロキノン骨格を有す
る化合物を担持することができる多孔質担体が挙げら
れ、その他、疎水性に調製した二酸化珪素、活性炭等の
炭素粒子、例えば、ポリテトラフルオロエチレンの水性
エマルジョン加工品(特開昭53−92981)、有機
質系の合成ポリマー粒子、例えば、いわゆる有機合成吸
着剤であるスチレン−ジビニルベンゼン共重合体又はそ
の成形品等の上記のヒドロキノン骨格を有する化合物を
担持することができる多孔質担体が挙げられる。この多
孔質担体に好適に使用されるには、細孔径が5オングス
トローム以上、好ましくは10オングストローム以上、
1グラム当たりの比表面積は二酸化珪素及び合成ポリマ
ーの粒子等では50〜1000平方メートル、炭素製品
では1グラム当たりの比表面積1000平方メートルが
標準となる。活性炭は粉体又はペレット状、球状若しく
は破砕炭状等のいずれの形態をも採用することができ
る。
【0022】固体の多孔質担体のペレット状、球状又は
破砕炭等の粒径は、小さければ小さい程接触効率は良い
が、カラム等に充填して連続的に金属イオンを含む水溶
液を処理する場合には通液抵抗が大きくなるので、一般
に合成ポリマー吸着剤の場合は0.4〜0.8ミリメー
トル、活性炭の場合は0.3〜2.5ミリメートルが適
当である。
【0023】本発明において、レドックス反応試薬を固
体の多孔質担体に担持して、水溶液中の金属イオン処理
剤を調製する方法としては、通常は、ヒドロキノン化合
物等の還元性化合物が、担持される操作過程において比
較的安定な化合物(例えば、ヒドロキノン化合物等)の
場合には、そのレドックス反応試薬をそのまま使用する
ことができる。しかしながら、レドックス反応試薬を担
持する操作過程において、酸化されやすい等の不安定な
化合物、例えば、ナフトヒドロキノン化合物又はアント
ラヒドロキノン化合物の場合には、上記のレドックス反
応試薬に対応する酸化物(キノン化合物)、例えばナフ
トキノン化合物又はアントラキノン化合物を使用して担
持する方法を採用することができる。
【0024】この場合の酸化物としては、例えばヒドロ
キノン、ナフトヒドロキノン及びアントラヒドロキノン
に対応する化合物として、それぞれベンゾキノン、ナフ
トキノン(1,4−ナフトキノン)及びアントラキノン
(9,10−アントラキノン)並びにその水素化化合物
及び前記の置換基を有するキノン化合物が挙げられる。
【0025】本発明において、金属イオン処理剤の調製
方法としては、一般には次のように行う。例えば、回分
式方法としては、還元性化合物又はその酸化物を可溶な
有機溶媒に溶解した溶液中に、使用する化合物の種類及
び溶媒によっても異なるが、一般的には常温以上で、固
体の多孔質担体を加えて、撹拌しながら、この多孔質担
体にレドックス反応試薬の還元性化合物又はその酸化物
を含浸、吸着させて、有機溶媒を留去、乾燥することに
より、還元性化合物又はその酸化物の担持物を容易に製
造することができる。さらに、必要ならばこの乾燥した
担持物に、溶媒を加えて含浸させた後、脱塩した水を加
えて撹拌しながら、この担体に吸着されなかった浮上す
る還元性化合物又はその酸化物を除去、洗浄し、還元性
化合物の担持物をそのまま湿潤状態で保持することによ
り水溶液中の金属イオン処理剤を調製することができ
る。又、溶媒で湿潤した固体の多孔質担体を予めカラム
に充填し、還元性化合物又はその酸化物を溶解した溶液
を通液し、担持し、洗浄する方法でも実施できる。一
方、還元性化合物に対応する酸化物を使用した場合の担
持物は、還元処理することにより、同様の金属イオン処
理剤として調製することができる。
【0026】還元性化合物に対応する酸化物を原料とし
て使用した担持物の還元処理法としては、通常のキノン
化合物をヒドロキノン化合物に還元する方法を採用する
ことができる。例えば、亜二チオン酸ナトリウム(ハイ
ドロサルファイトナトリウム)、亜二チオン酸カリウム
(ハイドロサルファイトカリウム)、等のハイドロサル
ファイトの水溶液が好適に使用され、その他キノン化合
物の種類に応じて、亜硫酸塩又は亜鉛−酸(又はアルカ
リ)系の還元剤を使用することができる。ハイドロサル
ファイトナトリウムによってキノン化合物を還元する場
合には、例えば、化学量論量以上のハイドロサルファイ
トナトリウム水溶液を、pH10以下の条件下にキノン
化合物を担持した担持物を回分式に、又は担持物を充填
した塔(カラム)等に通液し、接触させることにより実
施することができる。
【0027】なお、キノン化合物からハイドロサルファ
イトナトリウムを使用して、ヒドロキノン化合物へ還元
する反応の反応式は、次の[化02]式に示した通りで
ある。
【0028】
【化02】
【0029】上記有機溶媒としては、還元性化合物又は
その酸化物の必要量を溶解することができるものであれ
ば採用することができるが、還元性化合物又はその酸化
物に対する溶解度及び使用する担体に担持しやすい溶媒
を選択するのが好ましい。この有機溶媒としては、一般
的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプ
ロパノール等のアルコールが挙げられる。還元性化合物
又はその酸化物の溶液の濃度は、一般にその溶解度以
下、飽和濃度近い濃度が好ましい。
【0030】還元性化合物又はその酸化物の担持量は、
特に限定されず、使用する固体の多孔質担体の種類によ
っても異なり、さらに使用目的等により適宜選択される
が、一般的に0.01〜2モル/リットル−担体、好ま
しくは0.3〜1.0モル/リットル−担体である。担
持量が少ないと、回収金属に対してコスト高になり、多
すぎても金属イオンに作用しない量が増加するので原料
が無駄になる。
【0031】本発明の金属イオン処理剤を製造する方法
としては、前述の有機溶媒を使用して担体に担持させる
方法とは別に、レドックス反応試薬の還元性化合物であ
るヒドロキノン骨格を有する化合物のアルカリ金属塩水
溶液に、固体の多孔質担体を加え、ヒドロキノン骨格を
有する化合物を該多孔質担体に吸着させた後、該多孔質
担体を分離し、次いで洗浄処理することからなる方法が
挙げられる。
【0032】本発明において、ヒドロキノン骨格を有す
る化合物としては、安定にアルカリ金属塩の水溶液を呈
する化合物なら、前記の化合物のいずれも使用すること
できる。しかしながら、アルカリ液中でも縮重合等の変
質をしにくいアントラセン構造を有する化合物が有利に
用いられる。例えば、アントラヒドロキノン若しくは前
記のアルキル置換アントラヒドロキノン又は1,4−ジ
ヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン(1,4
−ジヒドロアントラヒドロキノン)若しくはそのアルキ
ル置換化合物のジアルカリ金属塩が挙げられる。
【0033】本発明におけるヒドロキノン骨格を有する
化合物の水溶性塩としては、例えば、アルカリ金属塩又
はアンモニウム塩から選ばれる。アルカリ金属塩として
は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げら
れる。アンモニウム塩としては、通常のアンモニウム
(NH4 +)塩、又はテトラメチルアンモニウム塩、テト
ラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム
塩若しくはテトラブチルアンモニウム塩等の第四級アン
モニウム塩が挙げられる。しかしながら、通常は安価な
ナトリウム塩が用いられる。
【0034】特に、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒ
ドロキシアントラセン化合物のジナトリウム塩水溶液
は、ナフトキノンと対応する1,3−ブタジエン化合物
とのディールス・アルダー反応によって得られる1,
4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン化合物に
当量(キノン化合物に対して2倍モル)以上、好ましく
は2〜2.4倍モルの水酸化アルカリ金属の水溶液を作
用させることによって容易に、その水溶液が得られるの
で工業的に有利に得ることができる。本発明の方法に使
用するヒドロキノン骨格を有する化合物のアルカリ金属
塩水溶液の濃度(濃度はアントラキノン等のキノン化合
物換算の重量%で表す。)は、1〜23%(本明細書に
おいて、「%」は断らない限り「重量%」を示す。)、
好ましくは2〜22%であり、吸着処理の温度は、通常
は常温でよく、吸着時間は30分〜5時間、好ましくは
1〜4時間である。
【0035】これらのヒドロキノン骨格を有する化合物
の使用量は、固体の多孔質担体の種類によっても異なる
が、その化合物の溶解度以下であれば、特に制限を受け
ることはなく、吸着処理した後に得られる母液を再度濃
度調整することによって、吸着処理に使用することがで
きる。
【0036】吸着処理は、通常バッチ(回分式)では多
孔質担体とヒドロキノン骨格を有する化合物のアルカリ
金属塩水溶液を入れた容器を緩やかに回転又は静置して
吸着させる方法、又は充填塔等に多孔質担体を予め充填
し、ヒドロキノン骨格を有する化合物のジアルカリ金属
塩水溶液を循環して、浸漬させながら、吸着させるよう
な連続的な接触方法も採用することができる。
【0037】この方法に用いられる固体の多孔質担体と
しては、前記の担体が挙げられるが、特に、活性炭等の
炭素質担体が安価で取り扱いやすく、かつ担持率も高く
好ましい。
【0038】レドックス反応試薬としてのヒドロキノン
骨格を有する化合物は、一般に極めて弱い一種の酸であ
るので、該化合物のアルカリ金属塩を担持した担持物を
水等の水性媒体で洗浄処理する程度でもその塩は加水分
解してそのアルカリ金属イオンは水素イオンと置換する
ことができる。この水性媒体としては、脱塩水、脱イオ
ン水等の溶存酸素を除去した水性媒体が好ましく、その
使用量はアルカリ金属イオンが水素イオンに置換する量
でよい。この洗浄処理においては洗浄水量を少なくし、
又は水素イオンとの置換を確実にするには酸水溶液によ
る処理が有効である。この酸水溶液による洗浄処理に用
いられる酸としては、アルカリ金属塩を遊離させる能力
がある酸ならば、有機又は無機の酸でよい。例えば、無
機の酸としては硫酸、塩酸等が、有機の酸としては酢酸
等のカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸
が挙げられる。この酸の使用量は、得られる担持物中の
アルカリ金属イオンが十分に水素イオンと置換される量
であればよく、一般に、吸着した化合物の当量以上、2
0当量以下であり、その濃度は0.1〜20%の水溶液
が用いられる。
【0039】この洗浄処理においては、予め上記の洗浄
処理を行わず、本発明における担持物を使用する用途、
例えば、金属イオン処理においては、処理する対象の中
性から酸性の金属イオン水溶液によって、洗浄処理と金
属イオンの処理を兼ねることも可能であるが、ヒドロキ
ノン骨格を有する化合物、特にアントラヒドロキノンの
アルカリ金属塩は極めて酸化されやすく、空気等の酸化
剤と接触すると発熱や発火する恐れがあるので、予めこ
の洗浄処理を行うことが、保存及び輸送における安全上
好ましい。
【0040】この方法を実施するには、一般的に次のよ
うに行う。例えば、容器に、所定量の粒状の活性炭を入
れ、減圧下で脱気し、さらに窒素置換を十分行った後、
窒素雰囲気下で所定濃度のヒドロキノン骨格を有する化
合物のアルカリ金属塩、例えば所定濃度の1,4−ジヒ
ドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリ
ウム塩水溶液の所定量に多孔質担体を加え、減圧下で接
触させ、所定時間吸着させる。この混合物を窒素雰囲気
下で遠心分離機等の分離装置で、該担体を分離し、脱酸
素した脱イオン水等の水性媒体で洗浄処理し、又は希
酸、例えば5〜10%の硫酸で洗浄し、得られたヒドロ
キノン骨格を有する化合物を担持した担体(担持物)を
十分に脱酸素処理した脱塩水中で保存する。得られる担
持物の担持量は、ヒドロキノン骨格を有する化合物の種
類、その塩の水溶液の濃度及び固体の多孔質担体の種類
によっても異なるが、例えば1,4−ジヒドロ−9,1
0−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩と粒状
活性炭を使用した場合、約0.3〜1.0モル/リット
ル−担体である。
【0041】このようにして得られた1,4−ジヒドロ
−9,10−ジヒドロキシアントラセン/活性炭からな
る担持物は、例えば金属イオン処理剤として有用であ
り、例えばチオ硫酸銀錯イオンに使用すると第1回目に
おいて、他のヒドロキノン骨格を有する化合物に比べ
て、2〜5倍の同じモル数当たりの金属イオンの捕捉効
率を示す。
【0042】本発明の金属イオン処理剤は、水溶液中に
含まれる金属イオン、例えば貴金属イオンをレドックス
反応によって0価の金属に変え、該金属イオン処理剤に
捕捉し、回収することができる。該金属イオン処理の対
象とされる金属イオンとしては、本発明の金属イオン処
理剤に担持されているレドックス反応試薬としての還元
性化合物の平衡酸化還元電位よりも高い金属イオン−金
属の平衡酸化還元電位を有する金属イオンに限られる。
本発明においては、この金属イオンとしては錯体を形成
している金属イオンであってもよい。即ち、これは担持
されている還元性化合物により金属イオンが0価の金属
に還元されるような金属イオンに相当する。例えば、還
元性化合物としてヒドロキノン化合物を使用するなら
ば、この金属イオンに対応する金属としては、貴金属、
即ち、金、銀及び白金族元素であり、白金族元素として
は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、
イリジウム及び白金が挙げられ、特には、金、銀、白
金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムが挙げられる。
【0043】金属の錯イオンとしては、例えば、チオ硫
酸銀錯イオン(チオスルファト銀錯イオンともいう。次
の[化03]に示した化学式の化合物)、テトラクロロ
金酸イオン及びヘキサクロロ白金酸イオン等が挙げられ
る。
【0044】
【化03】
【0045】本発明における金属イオン含有水溶液の接
触処理法としては、前記のように調製した金属イオン処
理剤を金属イオンを含有する水溶液中の金属イオンに対
して、その還元する当量以上を添加して撹拌処理させた
後、傾瀉又は濾過等で金属イオン処理剤を濾別するよう
な回分式の処理法を採用することができるが、一般的に
は前記の金属イオン処理剤をカラム(塔)に充填して、
これに金属イオン含有水溶液を通液する方法が採用され
る。
【0046】カラムへの通液方法は、特に限定されるこ
とはなく通常の方法で行うことができ、上向きの通液方
式又は下向きの通液方式等の方法を適宜採用することが
できる。被処理液のpHは共存する陰イオンによっても
影響されるが、金属イオンが水溶液中に安定に存在する
ならば特に限定されない。しかしながら、例えば、アン
トラヒドロキノンの場合を例にとると通常0〜12、好
ましくは0〜9の広い範囲が採用される。pHが12以
上では、ヒドロキノン骨格を有する化合物が溶出する可
能性があるので、好ましくない。水溶液中の陰イオンは
目的の金属イオンが沈殿しない限り、無機酸や有機酸等
の陰イオンが存在していてもよい。水溶液中の金属イオ
ンの濃度は溶解している限り特に限定されないが、一般
的には0.01〜10000ppm、好ましくは0.1
〜1000ppmであり、処理温度は一般的に10〜7
0°C、通常は常温で行われる。
【0047】さらに本発明においては、2種類以上の平
衡酸化還元電位の異なる還元性化合物を固体の多孔質担
体に担持してなる金属イオン処理剤を使用して、回収す
べき少なくとも貴金属イオンを含有する水溶液を処理
し、他の金属イオンから選択的に分離する方法を採用す
ることができる。
【0048】本発明の金属イオン処理剤は、金属イオ
ン、例えば貴金属イオンを含有する水溶液を処理する場
合において、還元する能力が失われた、即ち破過した金
属イオン処理剤としての担持物を、前記したようなキノ
ン化合物をヒドロキノン化合物に還元する方法、例えば
ハイドロサルファイトナトリウム水溶液等による還元、
その他発生期の水素(例えば、亜鉛と塩酸又はアルカリ
水溶液)等の本発明におけるキノン骨格を有する化合物
をヒドロキノン骨格を有する化合物に還元できる種々の
還元方法によって再度還元処理させた後、再び貴金属イ
オンを含有する水溶液を処理したところ、担持したレド
ックス反応試薬の種類によって多少の差はあるものの、
かなりの回数にわたって繰り返し、貴金属イオンを還元
し吸着捕捉することができる。
【0049】破過した酸化型(キノン型)を呈したレド
ックス反応試薬を担持した金属イオン処理剤の還元方法
は、前記した金属イオン処理剤のキノン化合物からヒド
ロキノン化合物への還元方法と同様に実施することがで
きる。この場合、この破過した金属イオン処理剤を、通
常脱塩水等で洗浄した後、前記したような還元処理を行
うことによって、この金属イオン処理剤によって繰り返
し金属イオン含有水溶液を処理することができる。この
洗浄処理は、残留する金属イオンを含む水溶液を置換で
きる量でよく、一般に金属イオン処理剤の2容量倍以上
で十分である。
【0050】アントラヒドロキノン化合物を活性炭に担
持した金属イオン処理剤を使用して、チオ硫酸銀錯イオ
ンを含む水溶液から銀金属として該担持物に捕捉し回収
する場合には、該水溶液のpHを7以上、好ましくは8
〜12、さらに好ましくは8〜11に調整することによ
って、単位担持物当たりの銀の捕捉量が高くなる。この
pHの影響は、濃度が高い方が顕著であり、銀として1
0ppm以上、好ましくは20ppm以上である。一般
には、約pH8以上では銀の捕捉量が最大になる。アル
カリの添加量は経済的には、あまり多くない方が好まし
く、pH11以下が好ましい。pHが12より高くなる
と担持したヒドロキノン骨格を有する化合物が溶出する
ので好ましくない。
【0051】繰り返し使用されて最終的に再生する能力
を失い、金属を捕捉した担持物(金属イオン処理剤)は
有機合成ポリマー吸着剤又は活性炭等の燃焼できるよう
な担体を使用し、貴金属等の高価な金属の場合にはこれ
らの金属を捕捉した担持物を、例えば焼却することによ
って貴金属として容易に回収することができる。この焼
却法は、特に限定されるものではなく、ロータリーキル
ンのような回転焼却炉、るつぼ型の焼却炉等の焼却残渣
から貴金属が回収されやすいものであればどのような形
式のものでも採用することができる。
【0052】又、捕捉された金属が硝酸、王水等の酸化
剤によって金属イオンとして溶解され、回収されるなら
ば、この回収法も採用することができる。
【0053】本発明において、適用される金属イオンを
含有する水溶液としては各種の工業から排出される金属
イオン水溶液、特に貴金属を取り扱う工業からの貴金属
含有排水に好適に適用することができる。例えば、電子
部品処理工場から排出される金、銀のイオン又はこれら
の錯イオン等を含有する排水、触媒製造工場から排出さ
れるパラジウム、ルテニウム、ロジウム及び白金等のイ
オン又はこれらの錯イオンを含有する排水、メッキ工場
から排出される金、銀、パラジウム等の金属イオン又は
これらの錯イオンを含有する排水及び写真工業の定着液
から排出されるチオ硫酸銀錯イオンを含有する排水等が
挙げられる。
【0054】
【作用】本発明における固体の多孔質担体にレドックス
反応試薬を担持した金属イオン処理剤における固定化作
用は基本的に吸着されているものと考えられる。この処
理剤を使用して前記のように金属イオン、特に貴金属イ
オン含有水溶液を処理すると貴金属イオンは錯体を形成
している場合にも、該処理剤上で貴金属イオンは0価の
金属に還元されて、選択的に捕捉され、処理水中には殆
ど検出されなくなる。尚、該処理剤の担体が合成吸着剤
の場合は、貴金属、例えば銀を捕捉した処理剤では金属
特有のいわゆる金属光沢を呈した。この貴金属を捕捉し
た該処理剤を粉末X線回折法により分析すると金属とし
て捕捉されていることが確認された。
【0055】金属イオンが該金属イオン処理剤上に金属
として捕捉される機構については、まだ明確に解析され
ていないが、現象面から推定すると、金属イオンが該処
理剤に接触すると該処理剤に担持されたヒドロキノン骨
格を有する化合物で還元されて金属の核が形成され、こ
の核を介して電子の授受が行われ、金属が積層し成長し
て該処理剤上に金属被膜が形成されるものと推定してい
る。
【0056】還元再生時にも該処理剤上に積層した金属
被膜を介して電子の授受が行われ、担持されているキノ
ン化合物を還元してヒドロキノン型の化合物とすること
により、再び金属イオンを還元し該処理剤上に積層する
ものと推定する。
【0057】
【実施例】本発明を実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例
に限定されるものではない。なお、実施例中において、
「%」とは断らない限り「重量%」を示す。
【0058】「実施例1」 [2−エチルアントラヒドロキノンを活性炭に担持した
金属イオン処理剤の繰り返し使用] (1)金属イオン処理剤の調製 [2−エチルアントラキノンの担持]500mlナス型
フラスコに、メタノールで湿潤した後脱気処理した石炭
系粒状活性炭(三菱化成社製、商品名ダイヤホープC、
粒径1.0〜2.5mm)150ml(60g)、2−
エチルアントラキノン50g、イソプロパノール100
mlを加え、回転エバポレータに取り付け、80°C湯
浴中で加熱し、2−エチルアントラキノンを溶解した
後、減圧した(560mmHg以下)で緩やかに溶媒を
留去し、2−エチルアントラキノンを該活性炭に吸着さ
せた。該活性炭にメタノール100mlを加え、よく含
浸した後、脱塩処理した水1リットルを加え、撹拌しな
がら浮上する吸着されなかった2−エチルアントラキノ
ンを除去した。さらに、300mlの脱塩処理した水で
3回同様な洗浄処理を行い、得られた担持物を湿潤状態
で保持した。この担持物に吸着された2−エチルアント
ラキノンの吸着量は、活性炭1リットル当たり1.0モ
ルであった。
【0059】[2−エチルアントラキノン担持物の還元
による金属イオン処理剤の調製]前記の操作によって得
られた担持物10mlを、100mlの三角フラスコに
採り、脱塩水100mlとハイドロサルファイトナトリ
ウム4gを加え、撹拌した後、密閉状態で30分放置
し、還元した。次に、11mmφ×150mmのガラス
製カラムに充填し、窒素で脱酸素処理した脱塩水100
mlで洗浄し、金属イオン処理剤を調製した(2‐エチ
ルアントラヒドロキノンの担持物)。
【0060】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 [定着水洗モデル廃水の調製]脱塩水700mlにチオ
硫酸アンモニウム200g、無水亜硫酸ナトリウム15
g、酢酸15mlを加え、溶解した後、脱塩水で希釈
し、1リットルとした。これに塩化銀7.2gを暗室内
で溶解した溶液を原液とし、この原液を100倍に希釈
した溶液を定着水洗モデル廃水(チオ硫酸銀錯イオンと
して溶解、銀濃度50ppm、pH5.0)とした。
【0061】[金属イオン水溶液の処理]前記で調製し
た定着水洗モデル廃水に、20%水酸化ナトリウム溶液
を添加しpH8.2に調整した後、前記カラムにS.
V.(S.V.は空間速度を表し、単位は1/hrであ
る。以下同じ。)2で通液した。破過後、脱塩水100
mlで洗浄し、「表1」に示したように、4〜8%のハ
イドロサルファイトナトリウム水溶液100mlをS.
V.4〜10で通液し、還元処理を行った後、窒素で脱
酸素処理した脱塩水50mlで洗浄し再びpH8.2に
調整した定着水洗モデル廃水をS.V.2で、該カラム
に通液する操作を、「表1」に示した回数で繰り返し、
「表1」の結果を得た。処理液中の銀濃度は、ICP発
光分析法により測定した(以下、同じ。)。この結果、
該金属イオン処理剤を繰り返し使用しても能力が低下し
ないことが分かった。
【0062】
【表1】
【0063】「実施例2」 [金属イオン処理剤の繰り返し使用] (1)2−エチルアントラヒドロキノンを合成吸着剤に
担持した金属イオン処理剤の調製 [2−エチルアントラキノンの担持]10リットルフラ
スコに、メタノールで湿潤した後、脱気処理した合成ポ
リマー吸着剤(三菱化成社製、商品名セパビーズSP2
07)2.5リットル、2−エチルアントラキノン35
4g、イソプロパノール2.5リットルを加え、回転エ
バポレータに取りつけ、80°Cの湯浴中で加熱し、2
−エチルアントラキノンを溶解したのち、減圧下(56
0mmHg以下)で穏やかに溶媒を留去し、2−エチル
アントラキノンを該合成ポリマー吸着剤に吸着させた。
該合成ポリマー吸着剤にメタノール2リットルを加え、
よく含浸した後、脱塩処理した水10リットルに加え、
撹拌しながら浮上する吸着されなかった2−エチルアン
トラキノンを除去した。さらに吸着されなかった2−エ
チルアントラキノンが浮上しなくなるまで脱塩処理した
水で洗浄処理を行い、得られた担持物を湿潤状態で保持
した。この担持物中における吸着された2−エチルアン
トラキノンの吸着量は、合成ポリマー吸着剤1リットル
当たり0.47モルであった。
【0064】[2−エチルアントラキノン担持物の還元
による金属イオン処理剤の調製]前記の操作によって得
られた担持物10mlを、11mmφ×150mmの硝
子製カラムに充填し、4%ハイドロサルファイトナトリ
ウム水溶液50mlをS.V.4で通液した後、窒素で
脱酸素処理した脱塩水100mlで洗浄し、金属イオン
処理剤を調製した(2−エチルアントラヒドロキノンの
担持物)。
【0065】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 [金属イオン水溶液の処理]実施例1で調製した定着水
洗モデル廃水を、該カラムにS.V.2で通液した。破
過後、「表2」に示したように、脱塩水100mlで洗
浄し、4〜8%ハイドロサルファイトナトリウム溶液5
0〜100mlをS.V.4〜10で通液し、還元処理
を行った後、窒素で脱酸素処理した脱塩水50mlで洗
浄し、定着水洗モデル廃水をS.V.2で、該カラムに
通液する操作を「表2」に示した回数で繰り返し、「表
2」の結果を得た。なお、破過するまでの処理水の銀イ
オン濃度は第1回目は0.01ppm以下であり、第2
回目以降は0.05以下であった。 この結果、該金属
イオン処理剤を繰り返し使用しても能力が低下しないこ
とが分かった。
【0066】
【表2】
【0067】「実施例3」 [パラジウムイオン、ロジウムイオン及びルテニウムイ
オンの金属イオン処理剤による処理] (1)2−エチルアントラヒドロキノンを合成ポリマー
吸着剤に担持した金属イオン処理剤の調製 [2−エチルアントラキノンの担持]実施例2と同様に
行い、同様の結果を得た。この担持物中における吸着さ
れた2−エチルアントラキノンの吸着量は合成ポリマー
吸着剤1リットル当たり0.47モルであった。
【0068】[2−エチルアントラキノン担持物の還元
による金属イオン処理剤の調製]前記の操作によって得
られた担持物10mlを、11mmφ×150mmの硝
子製カラムに充填し、4%ハイドロサルファイトナトリ
ウム水溶液50mlを通液した後、窒素置換した脱塩水
100mlで洗浄し、金属イオン処理剤を調製した(2
−エチルアントラヒドロキノンの担持物)。
【0069】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 [金属イオン溶液の調製] (a)パラジウム溶液の調製 塩化パラジウムPdCl2の1.8gを脱塩水500m
lに溶解した原液を、100倍に希釈して調製した(P
2+20ppm)。 (b)ロジウム溶液の調製 塩化ロジウムRhCl3・3H2Oの54mgを脱塩水1
リットルに溶解して調製した(Rh3+20ppm)。 (c)ルテニウム溶液の調製 塩化ルテニウムRuCl3・nH2O(n=1〜3)の4
0mgを脱塩水250mlに溶解して調製した(Ru3+
20ppm)。
【0070】[金属イオン水溶液の処理]前記で調製し
たカラムに、前記3種類の金属イオン含有溶液を、S.
V.2で通液した。破過するまでの金属捕捉量の結果
は、「表3」に示した。なお、処理水中の各金属イオン
の濃度はいずれも0.01ppm以下であった。
【0071】
【表3】
【0072】[パラジウムイオン水溶液の繰り返し処
理]前記で調製したカラムに、前記で調製したパラジウ
ム溶液(20ppm)を、SV2で通液した。破過後脱
塩水100mlで洗浄し、「表4」に示したように4〜
8%のハイドロサルファイトナトリウム水溶液100m
lをSV5〜10で通液し、還元処理を行った後、窒素
で脱酸素処理した脱塩水50mlで洗浄し、パラジウム
溶液(20ppm)をSV2で通液する操作を、「表
4」に示した回数で繰り返し、「表4」の結果を得た。
処理液中のパラジウム濃度はICP発光分析法により測
定した。なお、処理水中のパラジウムイオンの濃度はい
ずれも0.01ppm以下であった。この結果、該金属
イオン処理剤を繰り返し使用できることがわかった。
【0073】
【表4】
【0074】
【発明の効果】本発明に係る金属イオン処理剤を使用す
れば、水溶液中の金属イオン、特に貴金属イオンを金属
として選択的に、しかも回収率もよく取得することがで
き、さらには写真工業の定着工程の廃水に含まれるよう
な銀の錯イオンの回収にも有効であり、適当な平衡酸化
還元電位を有する還元性化合物、例えばヒドロキノン化
合物を複数使用した金属処理剤を調製することにより、
さらに金属イオンの捕捉選択性が向上する。又、本発明
の処理剤は多孔質の担体に還元性化合物を主として吸着
によって担持する方法で調製することができ、原料が通
常市販されているものを使用することが可能で、色々の
酸化還元電位を有する金属イオン処理剤を製造すること
ができ、その調製法も容易であり、破過して、担持され
たレドックス反応試薬が酸化されて酸化体(キノン)に
なった金属イオン処理剤を還元処理し、還元性化合物
(ヒドロキノン化合物)に戻し、再使用することができ
るので単位処理剤当たりの金属イオンを含む水溶液の処
理量が多く、経済的に極めて有利である。これに対し
て、従来の酸化還元樹脂又はキレート樹脂では、原料も
特別であり、かつその製造工程も長く、キレート樹脂で
は貴金属イオンの捕捉に対する選択性が他の共存する金
属イオンがあると減少し、又金属錯イオンに対しては除
去しにくい欠点がある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09K 3/00 109

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶液中に含まれる金属イオン(金属錯
    イオンを含む。以下同じ。)をレドックス反応によって
    0価の金属に変え、かつ可逆的に酸化還元を行う能力を
    有する有機試薬(以下「レドックス反応試薬」とい
    う。)を固体の多孔質担体に担持してなる水溶液中の金
    属イオン処理剤に、該金属イオンを含む水溶液を接触さ
    せ、該金属イオンを0価の金属として該金属イオン処理
    剤上に還元捕捉し、酸化されて実質的に該金属イオンを
    捕捉できなくなった該金属イオン処理剤を還元処理した
    後、該金属イオン処理剤に繰り返し金属イオンを含む水
    溶液を接触させることを特徴とする水溶液中の金属イオ
    ンの処理方法。
  2. 【請求項2】 レドックス反応試薬が、ヒドロキノン−
    キノン型のレドックス反応を行うことができるヒドロキ
    ノン又はキノン骨格を有する化合物である請求項1記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 ヒドロキノン骨格を有する化合物がヒド
    ロキノン(ジヒドロキシベンゼン)化合物、ナフトヒド
    ロキノン化合物又はアントラヒドロキノン化合物であ
    り、キノン骨格を有する化合物がベンゾキノン化合物、
    ナフトキノン化合物又はアントラキノン化合物である請
    求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 固体の多孔質担体が、有機系の合成ポリ
    マー粒子、活性炭又は二酸化珪素又はこれらの成型物で
    あることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 レドックス反応によって0価の金属に変
    わる金属イオンに関する金属イオン−金属系の平衡酸化
    還元電位が、固体の多孔質担体に担持したレドックス反
    応試薬の平衡酸化還元電位より大きい金属イオンからな
    る請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 金属イオンが貴金属イオンである請求項
    1記載の方法。
  7. 【請求項7】 貴金属イオンが金、銀、白金、パラジウ
    ム、ロジウム又はルテニウムの各イオン又はこれらの貴
    金属の錯イオンである請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 貴金属の錯イオンがチオ硫酸銀錯イオン
    (チオスルファト銀錯イオン)、テトラクロロ金酸イオ
    ン又はヘキサクロロ白金酸イオンである請求項7記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 水溶液が写真現像工程の定着過程におい
    て排出される排水である請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】 アントラヒドロキノン化合物が、アン
    トラヒドロキノン、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒ
    ドロキシアントラセン又はアルキルアントラヒドロキノ
    ンから選ばれた一種又は一種以上の化合物である請求項
    3記載の方法。
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