JP2980190B2 - 水溶液中の金属イオン処理剤及び水溶液中の金属イオンの処理方法 - Google Patents

水溶液中の金属イオン処理剤及び水溶液中の金属イオンの処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属イオンを含有する
水溶液、例えば電子部品を製造する際に排出する金属イ
オン含有排水、工業用触媒を使用し又は廃触媒の処理等
から排出される金属イオン含有排水及び写真工業から排
出される銀等の金属錯塩を含有する定着液排水から資源
的にも、経済的にも貴重な金属を回収するための金属イ
オンの処理剤又は金属イオンの処理方法に関する。特に
は、水溶液に含まれる金、銀、白金、パラジウム又はル
テニウム等のいわゆる貴金属イオンの回収として有用な
処理剤及びその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】日本は、近年殆どの金属を輸入に頼って
おり、特に電子部品、自動車や工業排ガスの酸化処理に
使用する工業用酸化触媒及び還元触媒等の工業用触媒並
びに写真工業で使用される感光剤には、大量の貴金属が
使用され、それに応じてこれらを製造したり、回収する
際にも又写真工業においてその定着工程からも多量の貴
重な金属資源を含む排水が排出され、資源の乏しいわが
国ではこれらの金属資源を回収、再利用することが重要
視されている。これらの金属の殆どが金属イオン又は金
属錯イオン(以下、この両者を合わせて単に金属イオン
という。)として水溶液等の水性媒体に含まれている。
この金属イオンを回収する方法としては、例えば、
(1)水溶液中から不溶性塩又は還元等によって沈澱物
を生成させて、夾雑物と貴金属等の金属とを分離し、精
製し回収する方法、(2)イオン交換樹脂又はキレート
樹脂に吸着させて回収する方法及び(3)酸化還元樹脂
によって吸着回収する方法等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
(1)の方法は廃液中に同伴される可能性が高く、金属
の回収率があまり良くない。(2)の方法はいずれも数
種類の金属イオンが共存する場合には選択率があまり高
くなく、金属イオンが錯体となっている場合には除去し
にくいという欠点がある。(3)の方法は酸化還元樹脂
を製造するための原料となるモノマー、例えばモノビニ
ルアントラキノン等、を製造する場合においても、アン
トラキノン等のキノン類を直接アルキル化やアルケニル
化する実用的な方法がなく、多くの工程を必要とし非常
に高価になる。且つそのモノマーを使用して、例えばジ
ビニルベンゼンと重合させた場合にはビーズ状になりに
くい等の欠点があり実用的なものが製造されていない。
【0004】しかして、本発明が解決しようとする課題
は、水溶液中の金属イオン類、特に貴金属イオンを選択
的に、効率よく回収することができ、かつ原料の入手が
容易で、簡便に製造することができ、その結果として経
済的に比較的安価に製造することが可能な水溶液中の金
属イオンの処理剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、ヒドロキノン骨
格を有する化合物を固体の多孔質担体に吸着固定した担
持物で金属イオン、特に貴金属イオンを含有する水溶液
を処理したところ、貴金属イオンが選択的に還元され、
この担持物に0価の金属として吸着されること、かつそ
の選択率も従来の樹脂よりも良好であることを見出し、
本発明を完成した。
【0006】即ち、水溶液中に含まれる金属イオンを0
価の金属に還元する能力を有する化合物(以下、「還元
性化合物」という。)を固体の多孔質担体に担持してな
る水溶液中の金属イオン処理剤であり、その還元性化合
物がヒドロキノン骨格を有する化合物であり、特に、ヒ
ドロキノン骨格を有する化合物がヒドロキノン化合物、
ナフトヒドロキノン化合物又はアントラヒドロキノン化
合物であり、この金属が貴金属元素、例えば金、銀、白
金、パラジウム又はルテニウムであり、及び酸化還元電
位が異なるヒドロキノン骨格を有する化合物の2種以上
をそれぞれに固体の多孔質担体に担持してなる水溶液中
の金属イオン処理剤を充填した複数の充填層を直列に配
列し、その充填層に少なくとも貴金属イオンを含有する
水溶液を接触させて、その還元力の違いを利用して選択
的に貴金属イオンを0価の金属として捕捉することを特
徴とする水溶液中の金属イオンの処理方法に存する。
【0007】本発明における還元性化合物としては、金
属イオンを0価の金属に還元する能力がある化合物であ
り、多孔質担体に安定に吸着等によって固定される化合
物であれば使用することができる。例えば、ヒドロキノ
ン骨格を有する化合物であり、この化合物としては広義
には公知のキノン化合物の還元された化合物をも含む。
その他インジゴ等を還元した化合物も挙げられる。
【0008】ヒドロキノン骨格を有する化合物として
は、例えばヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼ
ン)、ナフトヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシナフ
タレン)及びアントラヒドロキノン(9,10−ジヒド
ロキシアントラセン)並びにその水素化化合物及びこれ
らの置換体から選ばれるヒドロキノン化合物が挙げられ
る。上記のヒドロキノン化合物の置換体における置換基
としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコ
キシル基、フェニル基、アルキルアミノ基、ハロゲン基
等の比較的疎水性の置換基が挙げられる。アルキル基及
びアルコキシル基におけるアルキル基並びにアルケニル
基の炭素数は、1〜60、実用的には24以下であり、
アルキル基は直鎖又は分岐したもののいずれでもよい。
又、本発明の目的に障害にならない限り、これらヒドロ
キノン化合物の置換基としてスルホン酸基、スルホン酸
アミド基、カルボキシル基を含有する置換基を採用する
ことができるが、本発明の金属イオン処理剤は水溶液中
で使用されるので、一般的には水溶液に溶出しないよう
な疎水性の置換基を有する還元性化合物が好ましい。
【0009】これらの置換基を有する化合物としては、
例えば2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノ
ン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2−メチル
ナフトヒドロキノン、2−エチルナフトヒドロキノン、
2−プロピルナフトヒドロキノン、2−メチルアントラ
ヒドロキノン、2−エチルアントラヒドロキノン、2−
アミルアントラヒドロキノン、2−t−ブチルアントラ
ヒドロキノン、2−(4−メチル−ペンチル)アントラ
ヒドロキノン等のアルキル化ヒドロキノン化合物;2−
(4−メチル−ペンテニル)アントラヒドロキノン等の
アルケニル化ヒドロキノン化合物;1−メトキシアント
ラヒドロキノン、1,5−ジメトキシアントラヒドロキ
ノン等のアルコキシル化ヒドロキノン化合物;2−フェ
ニルヒドロキノン等のフェニル置換ヒドロキノン化合
物;2−N,N−ジメチルアミノ−アントラヒドロキノ
ン等のアルキルアミノ化ヒドロキノン化合物;2−クロ
ロヒドロキノン、2,3−ジクロロナフトヒドロキノ
ン、1−クロロアントラヒドロキノン、2−クロロアン
トラヒドロキノン等のハロゲン化ヒドロキノン化合物が
挙げられる。
【0010】ヒドロキノン化合物の水素化化合物として
は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアント
ラセン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラヒドロ
キノン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒド
ロアントラヒドロキノン等が挙げられる。又、カテコー
ル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(ジフェノキノ
ンの還元体)及び1,4−ジヒドロキシアントラセン、
9,10−ジヒドロキシフェナンスレン、アントアント
ロン(アンタントロン)の還元体等の多環式芳香族キノ
ンに対応する還元性化合物も挙げることができる。
【0011】本発明において固体の多孔質担体として
は、二酸化珪素、活性炭、疎水性に調製した二酸化珪
素、活性炭等の炭素粒子、例えば、ポリテトラフルオロ
エチレンの水性エマルジョン加工品(特開昭53−92
981)、有機質系の合成ポリマー粒子、例えば、いわ
ゆる有機合成吸着剤であるスチレンジビニルベンゼン共
重合体又はその成型品が挙げられる。この多孔質担体に
好適に使用されるには、細孔径が10オングストローム
以上、1グラム当りの比表面積は二酸化珪素及び合成ポ
リマーの粒子等では50〜1000平方メートル、炭素
粒子では1グラム当りの比表面積1000平方メートル
が標準となる。
【0012】本発明において、還元性化合物を固体の多
孔質担体に担持して、水溶液中の金属イオン処理剤を調
製する方法としては、通常は、ヒドロキノン化合物等の
還元性化合物を担持する操作過程において比較的安定な
化合物(例えばヒドロキノン化合物等)の場合にはその
還元性化合物をそのまま使用することができる。しかし
ながら、還元性化合物が、担持する操作過程において、
酸化され易い等の不安定な化合物、例えばナフトヒドロ
キノン化合物又はアントラヒドロキノン化合物の場合に
は、上記の還元性化合物に対応する酸化物、例えばナフ
トキノン化合物又はアントラキノン化合物を使用して担
持する方法が好ましい。この場合の酸化物としては、例
えばヒドロキノン、ナフトヒドロキノン及びアントラヒ
ドロキノンに対応する化合物としてはそれぞれベンゾキ
ノン、ナフトキノン(1,4−ナフトキノン)及びアン
トラキノン(9,10−アントラキノン)並びにその水
素化化合物及び前記の置換基を有するキノン化合物であ
る。
【0013】本発明において、金属イオン処理剤の調製
方法としては、一般的には次のように行う。例えば、回
分式方法としては、還元性化合物又はその酸化物を可溶
な有機溶媒に溶解した溶液中に、使用する化合物の種類
及び溶媒によっても異なるが一般的には常温以上で、こ
の多孔質担体を加えて、攪拌しながらこの多孔質担体に
還元性化合物又はその酸化物を含浸、吸着させて、有機
溶媒を留去、乾燥することにより、還元性化合物又はそ
の酸化物の担持物を容易に製造することができる。さら
に、必要ならばこの乾燥した担持物に、溶媒を加えて含
浸させた後、脱塩した水を加えて攪拌しながら、この担
体に吸着されなかった浮上する還元性化合物又はその酸
化物を除去、洗浄し、還元性化合物の担持物はそのまま
湿潤状態で保持することにより水溶液中の金属イオンの
処理剤を調製することができる。又、溶媒で湿潤した固
体の多孔質担体を予めカラムに充填し、還元性化合物又
はその酸化物を溶解した溶液を通液し、担持し、洗浄す
る方法でも実施できる。一方、還元性化合物に対応する
酸化物を使用した場合の担持物は、還元処理することに
より、同様の金属イオン処理剤として調製することがで
きる。
【0014】還元性化合物に対応する酸化物を原料とし
て使用した担持物の還元処理法としては、通常のキノン
化合物をヒドロキノン化合物等に還元する方法を採用す
ることができる。例えば、亜二チオン酸ナトリウム(ハ
イドロサルファイトナトリウム)、亜二チオン酸カリウ
ム(ハイドロサルファイトカリウム)等のハイドロサル
ファイトの水溶液が好適に使用され、その他キノン化合
物の種類に応じて、亜硫酸塩又は亜鉛ー酸(又はアルカ
リ)系の還元剤を使用することができる。ハイドロサル
ファイトナトリウムによってキノン化合物を還元する場
合には、例えば、化学量論量以上のハイドロサルファイ
トナトリウム溶液を、pH10以下の条件下にキノン化
合物を担持した担持物を回分式に、又は担持物を充填し
た塔に通液し、接触させることにより実施することがで
きる。
【0015】上記有機溶媒としては、還元性化合物又は
その酸化物の必要量を溶解することができるものであれ
ば採用することができるが、還元性化合物又はその酸化
物に対する溶解度を有し、及び使用する担体に担持し易
い溶媒を選択するのが好ましい。この有機溶媒として
は、一般的にはメタノール、エタノール、プロパノー
ル、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。
【0016】還元性化合物又はその酸化物の溶液の濃度
は、一般にその溶解度以下、飽和濃度近い濃度が好まし
い。還元性物質又はその酸化物の担持量は、特に限定さ
れず、使用する固体の多孔質担体の種類によっても異な
り、さらに使用目的等により適宜選択されるが、一般的
に0.01〜2モル/リットル−担体、好ましくは0.
02〜0.8モル/リットル−担体である。担持量が少
ないと、回収金属に対してコスト高になり、多過ぎても
金属イオンに作用しない量が増加するので原料が無駄に
なる。
【0017】本発明における金属イオンの処理剤の対象
とされる金属イオンとしては、固体の多孔質担体に担持
されている還元性化合物の平衡酸化還元電位(ここで平
衡酸化還元電位とは、操作条件下において酸化体と対応
する還元体が平衡状態を維持ている時の酸化還元電位を
いう。)よりも高い金属イオンー金属の平衡酸化還元電
位を有する金属イオンに限られる。本発明においては、
この金属イオンとしては錯体を形成している金属イオン
であってもよい。即ち、これは担持されている還元性化
合物により金属イオンが0価の金属に還元されるような
金属イオンに相当する。例えば、還元性化合物としてヒ
ドロキノン化合物を使用するならば、この金属イオンに
相当する金属としては貴金属、即ち、金、銀及び白金族
元素であり、白金族元素としてはルテニウム、ロジウ
ム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金が挙
げられ、特には、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウ
ムが挙げられる。金属の錯体イオンとしては、例えば、
チオ硫酸銀錯イオン(チオスルファト銀錯イオン)、テ
トラクロロ金酸イオン及びヘキサクロロ白金酸イオン等
が挙げられる。
【0018】本発明における金属イオン含有水溶液の処
理法としては、前記のように調製した金属イオン処理剤
を金属イオンを含有する水溶液中の金属イオンに対し
て、その還元する当量以上を添加して攪拌処理させた
後、傾瀉又は濾過等で担持物を濾別するような回分式の
処理法を採用することができるが、一般的には前記の担
持物をカラム(塔)に充填して、これに金属イオン含有
水溶液を通液する方法が採用される。カラムへの通液方
法は、特に限定されることはなく通常の方法で行うこと
ができ、上向きの通液方式、又は下向きの通液方式等の
方法を適宜採用することができる。被処理液のpHは共
存する陰イオンによっても影響されるが、金属イオンが
水溶液中に安定に存在するならば特に限定されない。し
かしながら、通常0〜9、好ましくは0〜8の広い範囲
が採用される。水溶液中の陰イオンは目的の金属イオン
が沈澱しない限り、無機酸や有機酸等の陰イオンが存在
していてもよい。水溶液中の金属イオンの濃度は溶解し
ている限り特に限定されないが、一般的には1〜100
00ppm、好ましくは1〜1000ppmであり、処
理温度は一般的に10〜70℃、通常常温で行われる。
【0019】さらに本発明においては、2種類以上の平
衡酸化還元電位の異なる還元性化合物を固体の多孔質担
体に担持してなる金属イオン処理剤を使用して、回収す
べき少なくとも貴金属イオンを含有する水溶液を処理
し、他の金属イオンから選択的に分離する方法を採用す
ることができる。即ち、酸化還元電位が異なるヒドロキ
ノン骨格を有する化合物の2種以上をそれぞれに固体の
多孔質担体に担持してなる金属イオン処理剤を充填した
複数の充填層を直列に配列し、その充填層に少なくとも
貴金属イオンを含有する水溶液を接触させて、その還元
力の違いを利用して選択的に金属イオンを0価の金属と
して捕捉することからなる水溶液中の金属イオンの処理
方法である。金属イオン処理剤の充填層は、例えば上下
に二つの層を形成する単一の容器(カラム)になるよう
な装置でも、別々の容器を直列に形成するような装置で
も実施することができる。この場合、還元性化合物と金
属イオンとの組み合わせはそれぞれの平衡酸化還元電位
によって決定することができる。例えば、還元性化合物
がヒドロキノンである場合には、金属イオンとして貴金
属イオン、パラジウムイオンを捕捉するが銅イオンは捕
捉しない。還元性化合物が2−エチルアントラヒドロキ
ノンである場合には、金属イオンとして貴金属イオン及
び銅イオンも捕捉する。従って、前者の還元性化合物を
使用した金属イオン処理剤を、先に使用し、後者の還元
性化合物を使用した金属イオン処理剤を組み合わせるこ
とによって貴金属イオンと銅イオンを選択的に分離捕捉
することができる。この方法によって、単一の金属イオ
ン処理剤の充填層で起こる複数の金属イオンの吸着物
を、夾雑物なく回収することが可能になる。この方法を
実施する場合の条件は、複数のカラムを使用する以外は
前記の金属イオン処理剤を使用して処理する方法の条件
が全て適用される。
【0020】金属を捕捉した処理剤は、有機合成吸着剤
又は活性炭等の燃焼できるような担体を使用し、貴金属
等の高価な金属の場合には本発明の処理剤により得られ
たこれらの担持物を、例えば焼却することによって貴金
属として、容易に回収することができる。この焼却法
は、特に限定されるものではなく、ロータリーキルンの
ような回転焼却炉、るつぼ型の焼却炉等の焼却残渣から
貴金属が回収されやすいものであればどのような形式の
ものでも採用することができる。又、捕捉された金属が
硝酸等の酸によって溶解され、回収されるならば、この
回収法も採用することができる。
【0021】本発明において、適用される金属イオンを
含有する水溶液としては各種の工業から排出される金属
イオン水溶液、特に貴金属を取り扱う工業からの貴金属
含有排水に好適に適用することができる。例えば、電子
部品処理工場から排出される金、銀のイオン又は錯イオ
ン等を含有する排水、触媒製造工場から排出されるパラ
ジウム、ルテニウム及び白金等のイオン又は錯イオンを
含有する排水及び写真の現像や定着液から排出されるチ
オ硫酸銀錯イオンを含有する排水等が挙げられる。
【0022】
【作用】本発明における固体の多孔質担体に還元性化合
物を担持した金属イオン処理剤は、その固定化作用は基
本的には吸着されているものと考えられる。この処理剤
を使用して前記のように金属イオン、特に貴金属イオン
含有水溶液を処理すると貴金属イオンは錯体を形成して
いる場合にも、担持物上で貴金属イオンは0価の金属に
還元されて、選択的に捕捉され、処理水中には殆ど検出
されなくなる。この貴金属を捕捉した合成吸着剤担体を
使用した金属イオン処理剤の場合は金属特有のいわゆる
金属光沢を呈することからも裏付けられる。又、この貴
金属を捕捉した処理剤をX線回折法により分析すると金
属として捕捉されていることが確認された。
【0023】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する
が、本発明は本実施例によって限定されるものではな
い。
【0024】「実施例1」 (1)2−エチルアントラヒドロキノンを固体の多孔質
担体に担持した金属イオン処理剤の調製 〔2−エチルアントラキノンの担持〕10リットルのナ
ス型フラスコに固体の多孔質担体として、メタノールで
湿潤した2.5リットルの合成吸着剤〔スチレンージビ
ニルベンゼンの共重合体、比表面積600平方m、最多
細孔半径100オングストローム、細孔容積窒素1.0
8ml/g、粒径0.4〜0.6mm〕(商品名:セパ
ビーズ「SP207」三菱化成社製)を採り、この中に
還元性化合物の酸化物としての2−エチルアントラキノ
ン(分子量236)354g、溶媒としてイソプロパノ
ール2.5リットルを加えた後、ロータリーエバポレー
ターに装着し、2−エチルアントラキノンが溶解し、肉
眼で見えなくなるまで、湯浴上、80℃でエバポレータ
ーを回転しながら、溶解している2−エチルアントラキ
ノンを合成吸着剤に吸着させた。さらに、同温度で加熱
しながら、560mmHgの減圧下で溶媒を留去しつ
つ、一方では結晶が析出しないような飽和溶液状態を維
持して、合成吸着剤に2−エチルアントラキノンを吸着
させ、最終的に合成吸着剤の粒子の表面が乾燥状態を呈
するまで乾固した。この乾燥状態の合成吸着剤を冷メタ
ノール2リットル中に投入し、よく含浸した後、脱塩処
理した水10リットルを加え、攪拌しながら浮上する、
合成吸着剤に吸着されなかった2−エチルアントラキノ
ンを除去した。さらに、同じような操作を、未吸着の2
−エチルアントラキノンが浮上しなくなるまで、脱塩処
理した水による洗浄処理を行い、得られた担持物を湿潤
状態に保持した。この担持物中における吸着された2−
エチルアントラキノンの吸着量を測定した結果、その吸
着量は合成吸着剤1リットル当り0.47モルであっ
た。
【0025】〔2−エチルアントラキノン担持物の還元
による金属イオン処理剤の調製〕前記の操作によって得
られた2−エチルアントラキノン担持物の10mlを、
ガラス製カラム(直径12mm、高さ150mm)に充
填した後、窒素雰囲気下、4重量%のハイドロサルファ
イトナトリウム水溶液50mlを、常温において空間速
度(S.V.)4(1/hr)で通液し、還元処理した
後、脱塩処理した水50mlを通液し、洗浄して、カラ
ムに充填された金属イオンの処理剤(2−エチルアント
ラヒドロキノンの担持物)を調製した。
【0026】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 本実施例の前記(1)の操作で調製した処理剤が充填さ
れたカラムに、下記の通りに調製した金属イオンとして
ナトリウム、カリウム、鉄(3価)、ニッケル(2
価)、テトラクロロ金酸(金として3価)、パラジウム
(2価)及びヘキサクロロ白金酸(白金として4価)の
各イオン(各々1リットル当り、金属イオンとして換算
して10mg)を含有するモデル水溶液(pH1.3)
の100mlを、常温においてS.V.2(1/hr)
で通液した。カラムを通過した処理水中の各金属イオン
の濃度を測定した結果は「表1」の通りであった。この
結果によれば、貴金属イオンが選択的に捕捉され、その
回収率が高いことが判る。 (モデル水溶液の調製法)原子吸光分析用標準液(和光
純薬製)の0.02N塩酸中の塩化ナトリウム(ナトリ
ウムイオンとして、1000mg/l)、0.02N塩
酸中の塩化カリウム(カリウムイオンとして、1000
mg/l)、0.1N塩酸中の塩化ニッケル(ニッケル
2価イオンとして、1000mg/l)、0.1N塩酸
中の塩化第二鉄(鉄3価イオンとして、1000mg/
l)、1N塩酸中の塩化パラジウム(パラジウム2価イ
オンとして、1000mg/l)、1N塩酸中のテトラ
クロロ金酸(金3価イオンとして、1000mg/l)
及び1N塩酸中のヘキサクロロ白金酸(白金4価イオン
として、1000mg/l)の各金属イオン水溶液の各
5mlづつを、ホールピペットで採取し、500mlメ
スフラスコでメスアップし、調製した。この混合液のp
Hは1.3であった。
【0027】
【表1】
【0028】「実施例2」 (1)1,2,3,4−テトラヒドロアントラヒドロキ
ノンを固体の多孔質担体に担持した金属イオン処理剤の
調製 〔1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノンの担
持〕500mlのナス型フラスコに固体の多孔質担体と
して、メタノールで湿潤した100mlの合成吸着剤
〔スチレンージビニルベンゼンの共重合体、比表面積6
00平方m、最多細孔半径100オングストローム、細
孔容積窒素1.08ml/g、粒径0.4〜0.6m
m〕(商品名、セパビーズ「SP207」三菱化成社
製)を採り、この中に還元性化合物の酸化物としての
1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン(分子量
198)10g、溶媒としてイソプロパノール100m
lを加えた後、ロータリーエバポレーターに装着し、固
体状の1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノンが
溶解し、肉眼で見えなくなるまで、湯浴上、80℃でエ
バポレーターを回転しながら、溶解している1,2,
3,4−テトラヒドロアントラキノンを合成吸着剤に吸
着させた。さらに、同温度で加熱しながら、560mm
Hgの減圧下で溶媒を留去しつつ、一方では結晶が析出
しないような飽和溶液状態を維持して、合成吸着剤に
1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノンを吸着さ
せ、最終的に合成吸着剤の粒子の表面が乾燥状態を呈す
るまで乾固した。この乾燥状態の合成吸着剤を冷メタノ
ール100ml中に投入し、よく含浸した後、脱塩処理
した水1リットルを加え、攪拌しながら浮上する合成吸
着剤に吸着されなかった未吸着の1,2,3,4−テト
ラヒドロアントラキノンを除去した。さらに、同じよう
な操作を、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノ
ンが浮上しなくなるまで、脱塩処理した水による洗浄処
理を行い、得られた担持物を湿潤状態に保持した。この
担持物中における吸着された1,2,3,4−テトラヒ
ドロアントラキノンの吸着量を測定した結果、その吸着
量は合成吸着剤1リットル当り0.2モルであった。
【0029】〔1,2,3,4−テトラヒドロアントラ
キノン担持物の還元による金属イオン処理剤の調製〕前
記の操作によって得られた1,2,3,4−テトラヒド
ロアントラキノン担持物の10mlを、ガラス製カラム
(直径12mm、高さ150mm)に充填した後、窒素
雰囲気下、4重量%のハイドロサルファイトナトリウム
水溶液50mlを、常温において空間速度(S.V.)
4(1/hr)で通液し、還元処理した後、脱塩処理し
た水50mlを通液し、洗浄してカラムに充填された金
属イオンの処理剤(1,2,3,4−テトラヒドロアン
トラヒドロキノンの担持物)を調製した。
【0030】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 本実施例の前記(1)の操作で調製した処理剤のカラム
に、実施例1の(2)と同様に調製した、金属イオンと
してナトリウム、カリウム、鉄(3価)、ニッケル(2
価)、テトラクロロ金酸(金として3価)、パラジウム
(2価)及びヘキサクロロ白金酸(白金として4価)の
各イオン(各々1リットル当り、金属イオンとして換算
して10mg)を含有するモデル水溶液(pH1.3)
の100mlを、常温においてS.V.2(1/hr)
で通液した。カラムを通過した処理水中の各金属イオン
の濃度を測定した結果は「表2」の通りであった。この
結果によれば、貴金属イオンが選択的に捕捉され、回収
率が高いことが判る。
【0031】
【表2】
【0032】「実施例3」 (1)ヒドロキノンを固体の多孔質担体に担持した金属
イオン処理剤の調製 〔1,4−ベンゾキノンの担持〕ガラス製カラム(直径
22mm、高さ300mm)に固体の多孔質担体とし
て、メタノールで湿潤した50mlの合成吸着剤〔スチ
レンージビニルベンゼンの共重合体、比表面積600平
方m、最多細孔半径100オングストローム、細孔容積
窒素1.08ml/g、粒径0.4〜0.6mm〕(商
品名セパビーズ「SP207」三菱化成社製)を充填
し、還元性化合物の酸化物としての1,4−ベンゾキノ
ン2gを1リットルのメタノールに溶解した溶液を、
S.V.2(1/hr)の通液速度で、このカラムに通
液し、この合成吸着剤上に、1,4−ベンゾキノンを吸
着させ、次いでこのカラム内に、メタノール及び水各5
0容量%からなる溶液100mlでカラム内の滞留する
1,4−ベンゾキノン溶液を置換し、さらに脱塩処理し
た水でカラム内に滞留するメタノール水溶液を置換し
た。この担持物に吸着している1,4−ベンゾキノンを
測定したところ、合成吸着剤1リットル当り0.02モ
ルであった。
【0033】〔1,4−ベンゾキノン担持物の還元によ
る金属イオン処理剤の調製〕この1,4−ベンゾキノン
担持物の10mlをガラス製カラム(直径12mm、高
さ150mm)に充填した後、窒素雰囲気下、4重量%
のハイドロサルファイトナトリウム水溶液25mlを、
常温において空間速度(S.V.)4(1/hr)で通
液し、還元処理した後、脱塩処理した水50mlを通液
し、洗浄してカラムに充填された金属イオンの処理剤
(ヒドロキノンの担持物)を調製した。
【0034】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 本実施例の前記(1)の操作で調製した処理剤のカラム
に、実施例1の(2)と同様に調製した、金属イオンと
してナトリウム、カリウム、鉄(3価)、ニッケル(2
価)、テトラクロル金酸(金として3価)、パラジウム
(2価)及びヘキサクロル白金酸(白金として4価)の
各イオン(各々1リットル当り、金属イオンとして換算
して10mg)を含有するモデル水溶液(pH1.3)
の100mlを、常温においてS.V.2(1/hr)
で通液した。カラムを通過した処理水中の各金属イオン
の濃度を測定した結果は「表3」の通りであった。この
結果によれば、貴金属イオンが極めて選択的に捕捉さ
れ、回収率が高いことが判る。
【0035】
【表3】
【0036】「実施例4」 (1)金属イオン処理剤の調製(還元性化合物として2
−エチルアントラヒドロキノンを使用する。) 実施例1の(1)で調製した2−エチルアントラキノン
の担持物10mlをガラス製カラム(直径12mm、高
さ150mm)に充填した後、そのカラムに窒素雰囲気
下、4重量%ハイドロサルファイトナトリウム水溶液5
0mlを、常温においてS.V.4(1/hr)で通液
し、還元処理した後、さらに脱塩処理した水50mlを
通液し、洗浄し、金属イオン処理剤を調製した。
【0037】(2)金属イオン処理剤によるチオ硫酸銀
錯塩含有水溶液の処理 本実施例の前記(1)の操作で調製した処理剤のカラム
に、銀イオンを1リットル当り60mgを含むモデル廃
水6リットルを調製して、常温においてS.V.2(1
/hr)で通液し、処理した結果を「表4」に示した。
又、このモデル廃水の6リットルを通液した後に得られ
た金属イオン処理剤を取り出し水洗後、窒素気流中で乾
燥し、さらにるつぼ中で灼熱したところ、銀353mg
が得られた。なお、金属イオン処理剤の一部を粉砕した
ものをCu管球を用いた粉末エックス線回折法により分
析した結果、「表5」に示したような銀金属による回折
ピークを確認した。このモデル廃水は、写真現像工程の
定着過程において排出される廃水の組成に合わせて、次
のように調製した。即ち、水700mlに、チオ硫酸ア
ンモニウム200g、無水亜硫酸ナトリウム15g、氷
酢酸15mlを加え、溶解後、水で希釈し、全量を1リ
ットルとした定着液に、暗室内で塩化銀7.2gを溶解
した液を100倍に希釈し、モデル廃水として調製し
た。このモデル廃水のpHは4.7であった。この時の
銀イオンはチオ硫酸銀錯イオン「化1」となり、溶解し
ている。
【0038】
【化1】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】「実施例5」 (複数の金属イオン処理剤の充填層を使用した、貴金属
イオンの処理法) (1)金属イオン処理剤の調製方法 実施例1及び実施例3の(1)と同様に調製したキノン
化合物の担持物〔実施例1は2−エチルアントラキノン
担持物及び実施例3は1,4−ベンゾキノン担持物〕の
それぞれを、ガラス製カラム(直径12mm、高さ15
0mm)に充填した後、各々のカラムに窒素雰囲気下4
重量%ハイドロサルファイトナトリウム水溶液50ml
を、常温においてS.V.4(1/hr)で通液し、還
元処理した後、さらに各々脱塩処理した水50mlを通
液し、洗浄し、金属イオン処理剤を充填したカラムを調
製した。
【0042】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 前記の操作で得られた各々の金属イオン処理剤の充填層
カラムを、上部にヒドロキノンの担持物層(「HQ/S
P207」と表す。)、下部に2−エチルアントラヒド
ロキノンの担持物層(「EAHQ/SP207」と表
す。)になるように直列に配列し、このカラムの上部
に、下記のように調製した1リットル当り各々10mg
を含有するパラジウム(2価)、鉄(3価)及び銅(2
価)の各イオンを含むように調製したモデル廃水(pH
1.7)の100mlを常温にてS.V.2(1/h
r)で通液した。上部の出口から排出した処理液Aと下
部のカラムの出口から排出した処理液Bの各金属イオン
濃度を測定し、「表6」の結果を得た。 (モデル廃水の調製法)原子吸光分析用標準液(和光純
薬製)の0.1N塩酸中の塩化第二鉄(鉄3価イオンと
して、1000mg/l)、0.1N塩酸中の塩化第二
銅(銅2価イオンとして、1000mg/l)及び1N
塩酸中の塩化パラジウム(パラジウム2価イオンとし
て、1000mg/l)の各金属イオン水溶液の各5m
lづつを、ホールピペットで採取し、500mlメスフ
ラスコでメスアップし、調製した。この混合液のpHは
1.7であった。
【0043】
【表6】
【0044】「実施例6」 (1)2−(4−メチル−ペンテニル)アントラヒドロ
キノンを活性炭に担持した金属イオン処理剤の調製 〔2−(4−メチル−ペンテニル)アントラキノンの担
持〕フラスコに、2−(4−メチル−ペンテニル)アン
トラキノン0.6gを入れ、100mlのメタノールに
溶解した。この溶液に、固体の多孔質担体として、活性
炭(商品名、ダイヤホープ008、石炭系破砕炭、粒径
0.42〜1.70mm)10mlを添加し、1晩放置
したのち、溶媒を留去し、少量のメタノールで洗浄した
後、水で置換した。この担持物中における吸着された2
−(4−メチル−ペンテニル)アントラキノンの吸着量
を測定した結果、その吸着量は活性炭1リットル当り
0.2モルであった。
【0045】〔2−(4−メチル−ペンテニル)アント
ラキノン担持物の還元による金属イオン処理剤の調製〕
前記の操作によって得られた2−(4−メチル−ペンテ
ニル)アントラキノン担持物の10mlを、ガラス製カ
ラム(直径12mm、高さ150mm)に充填した後、
窒素雰囲気下、4重量%のハイドロサルファイトナトリ
ウム水溶液50mlを、常温において、S.V.4(1
/hr)で通液し、還元処理した後、脱塩処理した水5
0mlを通液し、洗浄してカラムに充填された金属イオ
ンの処理剤(2−(4−メチル−ペンテニル)アントラ
ヒドロキノンの担持物)を調製した。
【0046】(2)金属イオン処理剤による金属イオン
含有水溶液の処理 本実施例の前記(1)の操作で調製した処理剤のカラム
に、実施例1の(2)と同様に調製した、金属イオンと
してナトリウム、カリウム、鉄(3価)、ニッケル(2
価)、テトラクロロ金酸(金として3価)、パラジウム
(2価)及びヘキサクロロ白金酸(白金として4価)の
各イオン(各々1リットル当り、金属イオンとして換算
して10mg)を含有するモデル水溶液(pH1.3)
の2000mlを、常温においてS.V.2(1/h
r)で通液した。カラムを通過した処理水中の各金属イ
オンの濃度を測定した結果は「表7」の通りであった。
この結果によれば、貴金属イオンが選択的に捕捉され、
回収率が高いことが判る。
【0047】
【表7】
【0048】
【発明の効果】本発明にかかる金属イオン処理剤を使用
すれば、水溶液中の金属イオン、特に貴金属イオンを金
属として選択的に、しかも回収率よく取得することがで
き、さらには写真工業の定着工程の廃水に含まれるよう
な銀の錯イオンの回収にも有効であり、適当な平衡酸化
還元電位を有する還元性化合物,例えばヒドロキノン化
合物を複数使用した金属処理剤を調製することにより、
さらに金属イオン捕捉の選択性が向上する。又、本発明
の処理剤は多孔質の担体に還元性化合物を主として吸着
によって担持する方法で調製することができ、原料が通
常市販されているものを使用することが可能で、色々の
酸化還元電位を有する金属イオン処理剤を製造すること
ができ、その調製法も容易である。これに対して、従来
の酸化還元樹脂又はキレート樹脂では、原料も特別であ
り、かつその製造工程も長く、キレート樹脂では貴金属
イオンの捕捉に対する選択性が他の共存する金属イオン
があると減少し、又金属錯イオンに対しては除去しにく
い欠点がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C02F 1/70 C02F 1/62 B01J 20/22 B01J 39/16 C09K 3/00 G01N 30/48 B01D 15/00 C02F 1/28

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶液中に含まれる金属イオン(金属錯
    イオンを含む。以下同じ。)を0価の金属に還元する能
    力を有する化合物としてのヒドロキノン骨格を有する化
    合物又は対応する酸化型のキノン化合物を有機溶媒に溶
    かして固体の多孔質担体に吸着させて、酸化型のキノン
    化合物の場合には還元することにより、ヒドロキノン骨
    格を有する化合物を固体の多孔質担体に担持してなる水
    溶液中の金属イオン処理剤。
  2. 【請求項2】 ヒドロキノン骨格を有する化合物が、ヒ
    ドロキノン骨格を有する化合物であって疎水性の置換基
    を有する化合物である請求項1記載の水溶液中の金属イ
    オン処理剤。
  3. 【請求項3】 ヒドロキノン骨格を有する化合物が、ナ
    フトヒドロキノン化合物又はアントラヒドロキノン化合
    物である請求項1記載の水溶液中の金属イオン処理剤。
  4. 【請求項4】 ヒドロキノン骨格を有する化合物が、ア
    ントラヒドロキノン化合物である請求項1記載の水溶液
    中の金属イオン処理剤。
  5. 【請求項5】 固体の多孔質担体が、活性炭又は有機質
    系の合成ポリマー粒子である請求項1乃至4のいずれか
    に記載の水溶液中の金属イオン処理剤。
  6. 【請求項6】 水溶液中の金属イオンを0価の金属に還
    元する能力を有する化合物としてのアントラヒドロキノ
    ン化合物に対応するアントラキノン化合物を有機溶媒に
    溶かして活性炭又は有機質系の合成ポリマー粒子に吸着
    させて担持した後に、アントラキノン化合物をアントラ
    ヒドロキノン化合物に還元してなる水溶液中の金属イオ
    ン処理剤。
  7. 【請求項7】 金属イオンが金、銀、白金、パラジウム
    又はルテニウムのイオンである請求項l乃至6のいずれ
    かに記載の水溶液中の金属イオン処理剤。
  8. 【請求項8】 酸化型のキノン化合物を有機溶媒に溶解
    して固体の多孔質担体に吸着させて担持した後、該担体
    上のキノン化合物をヒドロキノン骨格を有する化合物に
    還元することを特徴とするヒドロキノン骨格を有する化
    合物を固体の多孔質担体に担持してなる水溶液中の金属
    イオン処理剤の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項l乃至6のいずれかに記載の金
    属イオン処理剤を用いて金属イオンを含有する水溶液を
    処理することにより、金属イオンを0価の金属として該
    金属イオン処理剤上に捕捉することを特徴とする水溶液
    中の金属イオンの処理方法。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至6のいずれかに記載の
    金属イオン処理剤の充填層に、金属イオンを含有する水
    溶液を通液処理することにより、金属イオンを0価の金
    属として金属イオン処理剤上に捕捉することを特徴とす
    る水溶液中の金属イオンの処理方法。
  11. 【請求項11】 請求項5乃至6記載のいずれかの金属
    イオン処理剤を用いて金属イオンを含有する水溶液を処
    理することにより、金属イオンを0価の金属として金属
    イオン処理剤上に捕捉し、金属を捕捉した金属イオン処
    理剤を焼却することにより金属を回収することを特徴と
    する水溶液中の金属イオンの処理方法。
  12. 【請求項12】 酸化還元電位が異なるヒドロキノン骨
    格を有する化合物の2種以上をそれぞれに固体の多孔質
    担体に吸着させて担持してなる請求項1に記載の水溶液
    中の金属イオン処理剤を充填した複数の充填層を直列に
    配列し、その充填層に少なくとも貴金属イオンを含有す
    る水溶液を接触させて、その還元力の違いを利用して選
    択的に貴金属イオンを0価の金属として捕捉することを
    特徴とする水溶液中の金属イオンの処理方法。
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