JPH08148144A - 水素吸蔵合金電極の製造方法 - Google Patents

水素吸蔵合金電極の製造方法

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JPH08148144A
JPH08148144A JP6291857A JP29185794A JPH08148144A JP H08148144 A JPH08148144 A JP H08148144A JP 6291857 A JP6291857 A JP 6291857A JP 29185794 A JP29185794 A JP 29185794A JP H08148144 A JPH08148144 A JP H08148144A
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alloy
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康治 山村
Yoichi Izumi
陽一 和泉
Tokukatsu Akutsu
徳勝 阿久津
Yoshio Moriwaki
良夫 森脇
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低温における高率放電特性および寿命などの
電極性能に優れた水素吸蔵合金電極を提供する。 【構成】 水素吸蔵合金粉末をアルカリ溶液に難溶な酸
化物もしくは水酸化物、例えばY23、の粉末とともに
コバルトイオンまたは銅イオンを含む65℃以上のアル
カリ溶液中に浸漬処理する工程を有する水素吸蔵合金電
極の製造方法。水素吸蔵合金粉末と酸化物もしくは水酸
化物の粉末は、粉末状態のみでなく、混合物を加圧し電
極としてからアルカリ溶液中に浸漬処理してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気化学的に水素の吸
蔵・放出を可逆的に行うことのできる水素吸蔵合金電極
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】水素を可逆的に吸収・放出しうる水素吸
蔵合金を使用する水素吸蔵合金電極は、理論容量密度が
カドミウム電極より大きく、亜鉛電極のような変形やデ
ンドライトの形成などもないことから、長寿命・無公害
であり、しかも高エネルギー密度を有するアルカリ蓄電
池用負極として期待されている。合金として、一般的に
はTi−Ni系およびLa(またはMm)−Ni系、さ
らに高容量化が可能なZr−Ti−Mn−V−Ni系合
金が知られている。この種水素吸蔵合金電極の性能を向
上する方法として、水素吸蔵合金を粉末の状態または電
極にした後に、コバルトイオンもしくは銅イオンを含む
高温のアルカリ溶液中に浸漬処理する方法が知られてい
る。このアルカリ溶液への浸漬処理を施すことにより、
水素吸蔵合金中の溶解し易い構成元素が除去され、合金
の高温アルカリ液中における耐久性が向上する。また、
前記の処理により、アルカリ溶液中のコバルトイオンも
しくは銅イオンが金属粒子として合金表面に析出すると
ともに、合金中の構成元素の溶解に伴いアルカリに溶解
しないニッケルが微粒子として合金表面に露出すること
により、電気化学的な活性が大きく向上するのである。
【0003】しかしながら、上記処理を施した水素吸蔵
合金電極の寿命性能を向上させるためには、合金構成元
素の電池電解液への溶解を抑制すること、すなわち、水
素吸蔵合金からの溶出金属イオンの拡散を抑制し、また
水素吸蔵合金と接触する電解液のアルカリ強度を緩和し
合金の安定性を向上させることが望まれる。その方法と
して、アルカリ溶液に溶解しにくい各種金属酸化物や水
酸化物の粉末を水素吸蔵合金粉末に添加することが提案
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記提案のように、水
素吸蔵合金粉末または上記コバルトもしくは銅を溶解し
た高温アルカリ溶液中に浸漬処理した水素吸蔵合金粉末
に、アルカリ溶液に比較的安定な各種金属酸化物あるい
は水酸化物の粉末を混合すると、電池寿命は向上する
が、合金粒子間に酸化物や水酸化物が多く存在すること
になるため、合金粒子間の接触抵抗が増大し、電池の放
電特性が低下するという問題を有している。本発明は、
従来のこのような課題を考慮し、ニッケル・水素蓄電池
などのアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極として十分な
性能を有する電極を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の水素吸蔵合金電
極の製造方法は、水素吸蔵合金粉末をアルカリ溶液に溶
解しにくい酸化物もしくは水酸化物の粉末とともに、コ
バルトイオンまたは銅イオンを含む65℃以上のアルカ
リ溶液中に浸漬処理する工程を有する。ここで、アルカ
リ溶液中に浸漬処理する工程に先立って、水素吸蔵合金
粉末と前記酸化物もしくは水酸化物の粉末とを混合する
工程、またはさらにその混合物を加圧して電極とする工
程を有する。前記酸化物もしくは水酸化物としては、M
g、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Y、Al、Ti、
SiおよびZrよりなる群から選択される少なくとも1
種の元素の酸化物もしくは水酸化物であることが好まし
い。これら酸化物もしくは水酸化物の量は、水素吸蔵合
金粉末100重量部に対して0.1重量部以上3重量部
未満であることが好ましい。また、アルカリ溶液は、不
活性ガス雰囲気中や大気を遮断した状態など、液への酸
素の溶解が抑制された、実質的に酸素ガスとの接触を断
たれた状態において、浸漬処理がなされるのが好まし
い。
【0006】本発明に用いる好ましい水素吸蔵合金は、
一般式LnNixy(ただし、Lnはランタノイド元素
の少なくとも2種、AはMn、Co、Al、Fe、S
i、CrおよびCuよりなる群から選択される少なくと
も1種の元素であり、4.5<x+y<5.5、3.0
<x、0<y<2.5)で表される合金である。他の好
ましい水素吸蔵合金は、一般式がZr1.2-aTiaMnw
xNiyz(ただし、MはB、Al、Si、Cr、F
e、Co、Cu、Zn、Nb、Mo、TaおよびWより
なる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0
≦a<1.2、0.1≦w≦1.2、0≦x≦0.4、
0.8≦y≦1.6、0<z≦1.2、1.7≦(v+
w+x+y+z)≦2.7)で表される合金であり、そ
の合金相の主成分がC14(MgZn2)またはC15
(MgCu2)型ラーバス相である。
【0007】
【作用】水素吸蔵合金をコバルトもしくは銅を溶解した
高温アルカリ溶液中に浸漬処理すると、溶解しやすい構
成元素の溶出によって生成される合金粒子表面の凹凸内
に、添加した酸化物や水酸化物の粒子が効果的に埋め込
まれるために、合金粒子間の接触抵抗の増大を抑えるこ
とができ、電池の放電特性の低下を抑制することができ
る。単に水素吸蔵合金と酸化物や水酸化物を混合した場
合には、このような酸化物や水酸化物の合金への埋め込
みは期待できない。また、上記処理により生成されるニ
ッケルやコバルト、銅等の金属微粒子粉が酸化物や水酸
化物に混ざり、これら酸化物や水酸化物に導電性が付与
され、合金粒子間の接触抵抗の増大を抑え、電池の放電
特性の低下を抑制することができる。本発明によれば、
上記のようにして放電特性および寿命に優れた水素吸蔵
合金電極を得ることができる。
【0008】
【実施例】以下に、本発明をその実施例によりさらに詳
細に説明する。 [実施例1]水素吸蔵合金試料として粒径75μm以下
(200メッシュのふるい通過粉末)のZrMn0.5
0.2Cr0.2Co0.1Ni1.1の組成の合金粉末を用いた。
上記合金粉末100g、酸化物として粒径38μm以下
(400メッシュのふるい通過粉末、粒子径約0.8μ
m)のY23粉末0.5g、アルカリ処理液として金属
Coで1gに相当する量の水酸化コバルトを含むKOH
の31重量%水溶液200mlをそれぞれ用意した。上
記アルカリ処理液を耐熱性の樹脂製容器に入れ、110
℃に加温した。なお、コバルトイオンとして投入する水
酸化コバルトの代わりに酸化コバルト等を用いてもよ
く、これらはアルカリ水溶液を加温した後、投入しても
よい。コバルトイオンを含む加温したアルカリ処理液中
に上記合金粉末と酸化物粉末を投入し、蓋をして充分攪
拌混合した。さらに、アルカリ処理液のコバルト青色が
消色するまで加温、攪拌した。
【0009】アルカリ処理液のコバルト青色が消色した
時点を処理の終点とし、冷却、静置して上澄み液を除去
後、水洗して液のpHを下げ、ろ過、乾燥して合金粉末
を得た。この試料を試料(1)とした。本実施例では、
アルカリ処理後、デカンテーションにより水洗をした。
水洗の方法としては、遠心分離機を用いた水洗方法があ
る。この方法によると、添加した酸化物(あるいは水酸
化物)、およびコバルトイオンを含むアルカリ溶液で処
理したことにより生成されたCo、Ni等の微細な粒子
の流失を防ぐことできるので、さらに電池の保存特性や
放電特性を向上させることができる。また、水洗時間を
短縮できる利点もある。本実施例の処理は110℃で行
ったが、処理温度を高くすることにより処理時間を短縮
することができる。
【0010】比較のために、次の2種の試料を作成し
た。すなわち、上記と同じ条件で100gの水素吸蔵合
金粉末単独をコバルトイオンを含むアルカリ溶液に浸漬
処理した後、0.3gのY23を加え、乳鉢で混合し
た。これを試料(2)とした。また、上記と同じ条件で
100gの水素吸蔵合金粉末単独をコバルトイオンを含
むアルカリ溶液に浸漬処理した。これを試料(3)とし
た。
【0011】(1)単電池試験 上記の各試料について電気化学的な充放電反応によるア
ルカリ蓄電池用負極としての電極特性、特に、充放電サ
イクル特性を評価するために単電池試験を行った。上記
各処理をした合金粉末1gと導電剤としてのカーボニル
ニッケル粉末3gおよび結着剤としてのポリエチレン微
粉末0.12gを充分に混合攪拌し、プレス加工により
直径24.5mm、厚さ2.5mmの円板状ペッレトに
成形した。これを減圧下、130℃で1時間加熱し、結
着剤を溶融させて水素吸蔵合金電極とした。これらの水
素吸蔵合金電極にニッケル線のリードを取り付けて負極
とし、正極として過剰の容量を有する焼結式ニッケル電
極を、セパレータとしてポリアミド不織布をそれぞれ用
い、比重1.30の水酸化カリウム水溶液を電解液とし
て、25℃において、一定電流で充電と放電を繰り返
し、各サイクルにおける放電容量を測定した。なお、充
電は水素吸蔵合金1gあたり100mAで5時間行い、
放電は合金1gあたり50mAで行い、0.8Vでカッ
トした。その結果を図1に示す。図1において、横軸は
充放電サイクル数、縦軸は合金1gあたりの放電容量で
ある。図中の番号は試料番号と一致している。
【0012】図1より試料(3)が380mAh/gと
最も優れた放電特性を示した。本実施例の試料(1)も
試料(3)と同程度の375mAh/gを示した。しか
し、単にY23粉末を混合しただけの試料(2)は1サ
イクル目の放電容量が100mAh/g程度であり、ま
た、5サイクル目以降の放電容量も350mAh/gで
あった。以上のように本実施例の試料(1)は、単にY
23粉末を混合しただけの試料(2)に比べ優れた放電
特性を示した。これは次のように考えられる。すなわ
ち、Coイオンを含む高温のアルカリ溶液で合金表面が
処理されているために、合金表面に活性なNiやCoの
粒子が形成され、これによって放電特性が向上した。ま
た、アルカリ浸漬処理の際、酸化物や水酸化物をアルカ
リ処理液に混合することにより、合金表面の凹凸内に酸
化物や水酸化物の粉末が効果的に埋め込まれたこと、さ
らには、生成したNi、Co等の微粒子が酸化物や水酸
化物の粉末に混ざることにより、これら酸化物や水酸化
物に導電性が付与されたこと等である。これらにより、
単に酸化物や水酸化物の粉末を混合したものに比べ、合
金粒子間の接触抵抗の増加が抑制され、電気化学的な反
応性が維持されることになったものと考えられる。
【0013】(2)密閉形電池試験 次に、電池特性を調べるために密閉形電池を試作した。
上記の各試料の粉末にカルボキシメチルセルロースの
0.5重量%水溶液を加え、混合攪拌してペースト状に
し、平均ポアサイズ150μm、多孔度95%、厚さ
1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填した。これを
120℃で乾燥してローラプレスで加圧し、さらにその
表面にフッ素樹脂粉末をコーティングして電極を作成し
た。これらの電極を幅3.3cm、長さ21cm、厚さ
0.4mmに調整し、リード板を所定の2カ所に取り付
けた。こうして合金15gを含む電極を作成した。そし
て、正極(容量3.0Ah)およびセパレータと組み合
わせて渦巻状に捲回してSCサイズの電槽に収納した。
これら電池の正極には公知の発泡式ニッケル電極を用
い、セパレータには親水性を付与したポリプロピレン不
織布を用いた。比重1.3の水酸化カリウム水溶液に水
酸化リチウムを30g/l溶解した電解液を注入後、電
槽を封口して密閉形電池を作成した。このようにして作
成した電池を0.2C(5時間率)で120%まで充電
し、0.2Cで終止電圧0.8Vまで放電する充放電を
10サイクル繰り返した後、20℃において0.1Cで
充電後、0℃において1C放電を行った。この1C放電
時の放電曲線を図2に示す。その後、20℃において
0.2Cで放電後、65℃の雰囲気に放置し、各電池の
開回路電圧の変化を調べた。その結果を図3に示す。
【0014】図2において横軸は放電時間、縦軸は電池
電圧である。図中の番号は試料番号と一致している。図
2より上記ニッケル粉末を用いたペッレト電極より予想
されるように、試料(3)が最も優れた放電容量、放電
電圧を示した。本実施例の試料(1)は、試料(3)に
比べ放電容量、放電電圧ともに若干低い値を示したが、
23を混合しただけの試料(2)に比べ放電容量、放
電電圧は大きく向上していることがわかる。図3におい
て横軸は65℃保存期間、縦軸は電池電圧である。図中
の番号は試料番号と一致している。図3より試料(3)
が最も早く電池電圧が低下し、試料(2)が長期にわた
り電池電圧を維持した。本実施例の試料(1)は、試料
(2)とほぼ同程度の期間電池電圧を維持した。以上の
ことから、本実施例の試料(1)は、低温高率放電特
性、高温保存特性ともに優れていることがわかる。
【0015】[実施例2]水素吸蔵合金試料は、粒径7
5μm以下のZrTi0.2Mn0.50.1Cr0.4Co0.1
Ni1.2の組成の合金粉末を用いた。この合金粉末10
0gにTiO2(粒子径約0.2μm)を0.3g混合
攪拌して合金電極粉末を作成した。この合金電極粉末に
ポリエチレン微粉末3gを添加し、さらにカルボキシメ
チルセルロースの0.5重量%水溶液を加えてペースト
状にし、平均ポアサイズ150μm、多孔度95%、厚
さ1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填した。この
シートを5トン/cm2でプレスした後、真空乾燥機に
より130℃で熱処理して合金2gを含む試験電極を作
成した。この試験電極を、金属Coで20mgに相当す
る量の水酸化コバルトを含むKOHの31重量%溶液4
ml中に浸漬し、窒素ガスを満たした110℃の恒温槽
に入れた。KOHアルカリ処理液のコバルト青色が消色
するまで保持し、青色が消えた時点を終点とし、アルカ
リ処理液より取り出し、水洗、乾燥して試験電極を得
た。これを試料(4)とした。
【0016】比較のために2種の試験電極を作成した。
すなわち、100gの合金粉末単独を金属Coで1gに
相当する量の水酸化コバルトを含むKOH溶液200m
lに浸漬処理した後、TiO2を0.3g添加して合金
電極粉末とし、これを用いて上記と同様の方法で試験電
極を作成した。これを試験電極(5)とした。また、合
金粉末単独を上記と同じ条件でアルカリ処理を施し、こ
れを用いて電極を作成した。これを試験電極(6)とし
た。
【0017】(1)単電池試験 上記の各試験電極について電気化学的な充放電反応によ
るアルカリ蓄電池用負極としての電極特性、特に、充放
電サイクル特性を評価するために実施例1と同様に単電
池試験を行った。その結果を図4に示す。図4において
横軸は充放電サイクル数、縦軸は合金1gあたりの放電
容量である。図中の番号は試料番号と一致している。図
4より試料(6)が330mAh/gと最も優れた放電
特性を示した。本実施例の試料(4)も試料(6)と同
程度の325mAh/gを示した。しかし、単にTiO
2粉末を混合しただけの試料(5)は270mAh/g
程度であった。以上のように本実施例の試料(4)は、
単にTiO2粉末を混合しただけの試料(5)に比べ優
れた放電特性を示した。上記単極試験による合金の放電
容量が実施例1の試験結果に比べて少ない値であるが、
これは実施例1が多量のニッケル粉末を用いたペッレト
状の電極で評価しているのに対し、本実施例では発泡状
ニッケルシートに充填した電極で評価したためである。
この要因としては、発泡状ニッケルシートに充填した電
極は、多量のニッケル粉末を用いたペッレト状の電極に
比べ、合金間の導電性が低くなり、放電容量が減少した
ことによるものと考えられる。
【0018】(2)密閉形電池試験 次に、電池特性を調べるために密閉形電池を試作した。
上記の合金粉末100gとTiO2粉末0.3gとを混
合した合金電極粉末にカルボキシメチルセルロースの
0.5重量%水溶液を加え、混合攪拌してペースト状に
し、平均ポアサイズ150μm、多孔度95%、厚さ
1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填した。これを
120℃で乾燥してローラプレスで加圧して実施例1と
同様合金15gを含む電極板を作成した。この電極板
を、金属Coで150mgに相当する量の水酸化コバル
トを含むKOHの31重量%溶液30ml中に浸漬し、
窒素ガスを満たした110℃の恒温槽に入れた。アルカ
リ処理液のコバルト青色が消色するまで保持し、青色が
消えた時点を終点とし、処理液より取り出し、水洗、乾
燥し、さらにその表面にフッ素樹脂粉末をコーティング
して電池電極を作成した。この電極板を用いて実施例1
と同様の方法で密閉形電池を作成した。一方、比較例と
して、上記試料(5)、(6)の合金電極粉末を用いて
前記と同様にして発泡状ニッケルシートに充填した後、
120℃で乾燥してローラプレスで加圧し、さらにその
表面にフッ素樹脂粉末をコーティングして電池電極を作
成した。この電極板を用いて実施例1と同様の方法で密
閉形電池を作成した。これらの電池を0.2C(5時間
率)で120%まで充電し、0.2Cで終止電圧0.8
Vまで放電する充放電を10サイクル繰り返し、20℃
において0.1Cで充電後、0℃において1C放電を行
った。その1C放電曲線を図5に示す。その後、20℃
において0.2Cで放電後、65℃の雰囲気に放置し、
各電池の開回路電圧の変化を調べた。その結果を図6に
示す。
【0019】図5から、試料(6)が最も優れた放電容
量、放電電圧を示した。本実施例の試料(4)は、試料
(6)に比べ放電容量、放電電圧ともに若干低い値を示
したが、試料(5)に比べ放電容量、放電電圧は大きく
向上していることがわる。また、図6から明らかなよう
に、試料(6)が最も早く電池電圧が低下し、試料
(5)が長期にわたり電池電圧を維持した。本実施例の
試料(4)は、試料(5)とほぼ同程度の期間電池電圧
を維持した。以上から本実施例の試料(4)は、低温高
率放電特性、高温保存特性ともに優れていることがわか
る。
【0020】[実施例3]水素吸蔵合金試料は、粒径7
5μm以下(200メッシュのふるい通過粉末)のZr
Ti0.2Mn0.5Al0.1Cr0.4Co0.1Ni1.2の組成の
合金粉末を用いた。この合金粉末100g、酸化物粉末
として粒径38μm以下(400メッシュのふるい通過
粉末)のCaOを0.5g、アルカリ処理液として金属
Cuで1gに相当する量の酸化第一銅Cu2Oを含むK
OHの31重量%水溶液200mlを用意した。酸化第
一銅の代わりに水酸化銅、酸化銅CuO等を用いてもよ
い。上記アルカリ処理液を耐熱性の樹脂製容器に入れ1
10℃に加温した。Cuイオンとして投入する水酸化
銅、酸化銅等はアルカリ液を加温した後投入してもよ
い。Cuイオンを含む加温したアルカリ処理液中に上記
の合金粉末と酸化物粉末の混合物を投入し、蓋をして攪
拌し、アルカリ処理液の青色が消色するまで加温、攪拌
した。アルカリ処理液の青色が消色した時点を終点と
し、冷却、静置して上澄み液を除去後、水洗し、液のp
Hを下げ、ろ過、乾燥して合金粉末を得た。この試料を
試料(7)とした。本実施例の処理は110℃で行った
が、処理温度を高くすることにより処理時間を短縮する
ことができる。比較のために、次の2種の試料を作成し
た。すなわち、100gの合金粉末を上記と同じ条件で
酸化第一銅を含むKOH溶液に浸漬処理した後、0.5
gのCaO粉末を加え、乳鉢で混合した。これを試料
(8)とした。また、合金粉末を同じ条件で酸化第一銅
を含むKOH溶液に浸漬処理したものを試料(9)とし
た。
【0021】(1)単電池試験 上記の各試料について電気化学的な充放電反応によるア
ルカリ蓄電池用負極としての電極特性、特に、充放電サ
イクル特性を評価するために、実施例1と同様にニッケ
ル粉末を加えたペッレト電極を作成して単電池試験を行
った。その結果を図7に示す。図7において横軸は充放
電サイクル数、縦軸は合金1gあたりの放電容量であ
る。図7より試料(9)が345mAh/gと最も優れ
た放電特性を示した。本実施例の試料(7)も試料
(9)と同程度の340mAh/gを示した。しかし、
単にCaO粉末を混合しただけの試料(8)は300m
Ah/g程度であった。以上のように本実施例の試料
(7)は、単にCaO粉末を混合しただけの試料(8)
に比べ優れた放電特性を示した。
【0022】(2)密閉形電池試験 次に、電池特性を調べるために、上記の試料を用いて実
施例1と同様に密閉形電池を試作した。これらの各電池
を0.2C(5時間率)で120%まで充電し、0.2
Cで終止電圧0.8Vまで放電する充放電を10サイク
ル繰り返した後、20℃において0.1Cで充電後、0
℃において1C放電を行った。その1C放電曲線を図8
に示す。その後、20℃において0.2Cで放電後、6
5℃の雰囲気に放置し、各電池の開回路電圧の変化を調
べた。その結果を図9に示す。図8から、上記ニッケル
粉末を用いたペッレト電極より予想されるように、試料
(9)が最も優れた放電容量、放電電圧を示した。本実
施例の試料(7)は、試料(9)に比べ放電容量、放電
電圧ともに若干低い値を示したが、CaOを混合しただ
けの試料(8)に比べ放電容量、放電電圧は大きく向上
することがわかった。また、図9から明らかなように、
試料(9)が最も早く電池電圧が低下し、試料(8)が
長期にわたり電池電圧を維持した。本実施例の試料
(7)は、試料(8)とほぼ同程度の期間電池電圧を維
持した。以上から本実施例の試料(7)は、低温高率放
電特性、高温保存特性ともに優れていることがわかる。
【0023】[実施例4]水素吸蔵合金試料は、粒径7
5μm以下のZrTi0.2Mn0.60.1Al0.1Cr0.3
Co0.1Ni1.1の組成の合金粉末を用いた。この合金粉
末100gに粒子径約0.4μmのLa23粉末を0.
5g混合攪拌して合金電極粉末を作成した。この合金電
極粉末にポリエチレン微粉末3gを添加し、さらにカル
ボキシメチルセルロースの0.5重量%水溶液を加えて
ペースト状にし、平均ポアサイズ150μm、多孔度9
5%、厚さ1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填し
た。このシートを5トン/cm2でプレスした後、真空
乾燥機により130℃で熱処理して合金2gを含む試験
電極を作成した。この試験電極を、金属Cuで20mg
に相当する量の酸化第一銅を含むKOHの31重量%水
溶液4ml中に浸漬し、窒素ガスを満たした110℃の
恒温槽に入れた。KOHアルカリ処理液の青色が消色す
るまで保持し、青色が消えた時点を終点とし、アルカリ
処理液より取り出し、水洗、乾燥して試験電極を得た。
これを試料(10)とした。比較のために2種の試験電
極を作成した。すなわち、合金粉末100g単独を、金
属Cuで1gに相当する量の酸化第一銅を含むKOH水
溶液200ml中に浸漬処理した後、La23を0.5
g添加し、この合金電極粉末を用いて上記と同様の方法
で電極を作成した。この電極を試料(11)とした。ま
た、La23無添加で、しかもアルカリ処理をしていな
い合金粉末100gを用いて上記と同様に電極を作成し
た後、上記と同じ条件で酸化第一銅を含むKOH水溶液
中に浸漬処理した。これを試料(12)とした。
【0024】(1)単電池試験 上記各試料の充放電サイクル特性を評価するために、実
施例1と同様の条件で単電池試験を行った。その結果を
図10に示す。図10から、試料(12)が360mA
h/gと最も優れた放電特性を示した。本実施例の試料
(10)も試料(12)と同程度の355mAh/gを
示した。しかし、アルカリ処理後にLa23粉末を混合
した試料(11)は270mAh/g程度であった。以
上のように本実施例の試料(10)は、アルカリ処理後
にLa23粉末を混合した試料(11)に比べ優れた放
電特性を示した。
【0025】(2)密閉形電池試験 次に、電池特性を調べるために密閉形電池を試作した。
上記の合金粉末100gとLa23粉末0.5gとを混
合した合金電極粉末にカルボキシメチルセルロースの
0.5重量%水溶液を加え、混合攪拌してペースト状に
し、平均ポアサイズ150μm、多孔度95%、厚さ
1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填した。これを
120℃で乾燥してローラプレスで加圧して実施例1と
同様合金15gを含む電極板を作成した。この電極板
を、金属Cuで150mgに相当する量の酸化第一銅を
含むKOHの31重量%溶液30ml中に浸漬し、窒素
ガスを満たした110℃の恒温槽に入れた。アルカリ処
理液のコバルト青色が消色するまで保持し、青色が消え
た時点を終点とし、処理液より取り出し、水洗、乾燥
し、さらにその表面にフッ素樹脂粉末をコーティングし
て電池電極を作成した。この電極板を用いて実施例1と
同様の方法で密閉形電池を作成した。一方、比較例とし
て、上記試料(11)および(12)の合金電極粉末を
それぞれ用いて前記と同様にして発泡状ニッケルシート
に充填した後、120℃で乾燥してローラプレスで加圧
し、さらにその表面にフッ素樹脂粉末をコーティングし
て電池電極を作成した。これらの電極板を用いて実施例
1と同様の方法で密閉形電池を作成した。
【0026】これらの電池を0.2C(5時間率)で1
20%まで充電し、0.2Cで終止電圧0.8Vまで放
電する充放電を10サイクル繰り返した後、20℃にお
いて0.1Cで充電後、0℃において1C放電を行っ
た。その1C放電曲線を図11に示す。その後、20℃
において0.2Cで放電後、65℃の雰囲気に放置し、
各電池の開回路電圧の変化を調べた。その結果を図12
に示す。図11から明らかなように、試料(12)が最
も優れた放電容量、放電電圧を示した。本実施例の試料
(10)は、試料(12)に比べ放電容量、放電電圧と
もに若干低い値を示したが、試料(11)に比べ放電容
量、放電電圧は大きく向上した。また、図12から、試
料(12)が最も早く電池電圧が低下し、試料(11)
が長期にわたり電池電圧を維持した。本実施例の試料
(10)は、試料(11)とほぼ同程度の期間電池電圧
を維持した。以上のことから本実施例の試料(10)
は、低温高率放電特性、高温保存特性ともに優れている
ことがわかる。
【0027】[実施例5]水素吸蔵合金試料は、粒径7
5μm以下のMmNi3.7Co0.6Mn0.4Al
0.3の組成の合金粉末を用いた。この合金粉末100g
に対して、粒径38μm以下(400メッシュのふるい
通過粉末)のZrO 2を各種の割合で加え、乳鉢で混合
した。これらの混合物を処理するアルカリ処理液とし
て、合金100gに対して金属Coで0.3gに相当す
る量の水酸化コバルトを含むKOHの31重量%水溶液
200mlを用意した。上記アルカリ処理液を耐熱性の
樹脂製容器に入れ100℃に加温した後、ZrO2を各
種の割合で添加した合金粉末を投入し、蓋をして攪拌
し、アルカリ処理液のコバルト青色が消色するまで加
温、攪拌した。アルカリ処理液のコバルト青色が消色し
た時点を終点とし、冷却、静置して上澄み液を除去後、
水洗し、液のpHを下げ、ろ過、乾燥した。こうして得
た電極用合金試料の番号とZrO2の混合量、および後
述する低温高率放電特性を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】(1)単電池試験 上記の各試料について充放電サイクル特性を評価するた
めに、実施例1と同様にニッケル粉末を加えたペッレト
電極を作成し、単電池試験を行った。その結果を図13
に示す。図13から、ZrO2の混合量が増加すると、
合金電極の放電特性が低下することがわかる。特に、Z
rO2を合金100gに対して3gおよび5g混合した
合金電極は、300mAh/g以下の放電容量であっ
た。
【0030】(2)密閉形電池試験 次に、電池特性を調べるために、上記の合金試料を用い
て実施例1と同様に密閉形電池を試作した。これらの電
池を0.2C(5時間率)で120%まで充電し、0.
2Cで終止電圧0.8Vまで放電する充放電を10サイ
クル繰り返した後、20℃において0.1Cで充電後、
0℃において1Cで0.8Vまで放電した。表1に、こ
の0℃における1C放電容量の20℃における0.2C
放電容量に対する比を示した。表1からZrO2混合量
の多い試料(17)および(18)の合金電極は、低温
高率放電特性が大きく低下することがわかる。以上から
酸化物ないし水酸化物の添加割合は、合金100重量部
に対して3重量部未満が望ましい。
【0031】
【発明の効果】以上のように本発明の水素吸蔵合金電極
は、放電容量および低温高率放電特性に優れており、放
電特性に優れたアルカリ蓄電池を供給することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種処理をした水素吸蔵合金粉末を用いた電極
の充放電サイクルに伴う放電容量の変化を示す図であ
る。
【図2】各種処理をした水素吸蔵合金粉末を用いた電極
を備える密閉形蓄電池の低温高率放電特性を示す図であ
る。
【図3】同密閉形蓄電池を放電後65℃に保存したとき
の電池電圧の経時変化を示す図である。
【図4】各種処理をした水素吸蔵合金電極の充放電サイ
クルに伴う放電容量の変化を示す図である。
【図5】同電極を備える密閉形蓄電池の低温高率放電特
性を示す図である。
【図6】同密閉形蓄電池を放電後65℃に保存したとき
の電池電圧の経時変化を示す図である。
【図7】各種処理をした水素吸蔵合金粉末を用いた電極
の充放電サイクルに伴う放電容量の変化を示す図であ
る。
【図8】同電極を備える密閉形蓄電池の低温高率放電特
性を示す図である。
【図9】同密閉形蓄電池を放電後65℃に保存したとき
の電池電圧の経時変化を示す図である。
【図10】各種処理をした水素吸蔵合金電極の充放電サ
イクルに伴う放電容量の変化を示す図である。
【図11】同電極を備える密閉形蓄電池の低温高率放電
特性を示す図である。
【図12】同密閉形蓄電池を放電後65℃に保存したと
きの電池電圧の経時変化を示す図である。
【図13】ZrO2の混合量が異なる水素吸蔵合金をア
ルカリ処理して構成した電極の充放電サイクルに伴う放
電容量の変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森脇 良夫 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素吸蔵合金粉末をアルカリ溶液に溶解
    しにくい酸化物もしくは水酸化物の粉末とともに、コバ
    ルトイオンを含む65℃以上のアルカリ溶液中に浸漬処
    理する工程を有することを特徴とする水素吸蔵合金電極
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 水素吸蔵合金粉末をアルカリ溶液に溶解
    しにくい酸化物もしくは水酸化物の粉末とともに、銅イ
    オンを含む65℃以上のアルカリ溶液中に浸漬処理する
    工程を有することを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記アルカリ溶液中に浸漬処理する工程
    に先立って、水素吸蔵合金粉末と前記酸化物もしくは水
    酸化物の粉末とを混合する工程、およびその混合物を加
    圧して電極とする工程を有する請求項1または2記載の
    水素吸蔵合金電極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記酸化物もしくは水酸化物が、Mg、
    Ca、Sr、Ba、La、Ce、Y、Al、Ti、Si
    およびZrよりなる群から選択される少なくとも1種の
    元素の酸化物もしくは水酸化物である請求項1または2
    記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記酸化物もしくは水酸化物の量が、水
    素吸蔵合金粉末100重量部に対して0.1重量部以上
    3重量部未満である請求項4記載の水素吸蔵合金電極の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 アルカリ溶液が酸素ガスとの接触を断た
    れた状態において前記浸漬処理がなされる請求項1〜5
    のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  7. 【請求項7】 水素吸蔵合金が、一般式LnNix
    y(ただし、Lnはランタノイド元素の少なくとも2
    種、AはMn、Co、Al、Fe、Si、CrおよびC
    uよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であ
    り、4.5<x+y<5.5、3.0<x、0<y<
    2.5)で表される合金である請求項1〜6のいずれか
    に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  8. 【請求項8】 水素吸蔵合金が、一般式がZr1.2-aT
    iaMnwVxNiyMz(ただし、MはB、Al、Si、
    Cr、Fe、Co、Cu、Zn、Nb、Mo、Taおよ
    びWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で
    あり、0≦a<1.2、0.1≦w≦1.2、0≦x≦
    0.4、0.8≦y≦1.6、0<z≦1.2、1.7
    ≦(v+w+x+y+z)≦2.7)で表される合金で
    あり、その合金相の主成分がC14(MgZn2)また
    はC15(MgCu2)型ラーバス相である請求項1〜
    6のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007294418A (ja) * 2006-03-31 2007-11-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd アルカリ蓄電池用負極材料およびアルカリ蓄電池
JP2016011450A (ja) * 2014-06-30 2016-01-21 国立研究開発法人産業技術総合研究所 ヒステリシスが小さく耐久性に優れた新規水素吸蔵合金

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