JPH0753663A - 経皮吸収製剤用基剤ポリマー - Google Patents

経皮吸収製剤用基剤ポリマー

Info

Publication number
JPH0753663A
JPH0753663A JP5208830A JP20883093A JPH0753663A JP H0753663 A JPH0753663 A JP H0753663A JP 5208830 A JP5208830 A JP 5208830A JP 20883093 A JP20883093 A JP 20883093A JP H0753663 A JPH0753663 A JP H0753663A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drug
polymer
skin
temperature
release
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5208830A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuo Shikinami
保夫 敷波
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takiron Co Ltd
Original Assignee
Takiron Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takiron Co Ltd filed Critical Takiron Co Ltd
Priority to JP5208830A priority Critical patent/JPH0753663A/ja
Priority to CA002145647A priority patent/CA2145647C/en
Priority to DE69431982T priority patent/DE69431982T2/de
Priority to PCT/JP1994/001253 priority patent/WO1995004094A1/ja
Priority to EP94921837A priority patent/EP0664307B1/en
Publication of JPH0753663A publication Critical patent/JPH0753663A/ja
Priority to US08/885,845 priority patent/US5858395A/en
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G18/00Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates
    • C08G18/06Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen
    • C08G18/28Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen characterised by the compounds used containing active hydrogen
    • C08G18/40High-molecular-weight compounds
    • C08G18/48Polyethers
    • C08G18/4833Polyethers containing oxyethylene units
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/70Web, sheet or filament bases ; Films; Fibres of the matrix type containing drug
    • A61K9/7023Transdermal patches and similar drug-containing composite devices, e.g. cataplasms
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G18/00Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates
    • C08G18/06Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen
    • C08G18/28Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen characterised by the compounds used containing active hydrogen
    • C08G18/2805Compounds having only one group containing active hydrogen
    • C08G18/2815Monohydroxy compounds
    • C08G18/283Compounds containing ether groups, e.g. oxyalkylated monohydroxy compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G18/00Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates
    • C08G18/06Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen
    • C08G18/28Polymeric products of isocyanates or isothiocyanates with compounds having active hydrogen characterised by the compounds used containing active hydrogen
    • C08G18/40High-molecular-weight compounds
    • C08G18/48Polyethers
    • C08G18/4804Two or more polyethers of different physical or chemical nature
    • C08G18/4808Mixtures of two or more polyetherdiols

Abstract

(57)【要約】 【目的】 常温で固体であり、ヒトの皮膚温度以上で低
粘度の液体となり、且つ親水性のセグメントを有し、熱
感応性、水感応性の性質を備え、従来から経皮吸収製剤
をつくるのが容易でなかった薬物を、長期に安定に保存
して、高放出率に、しかも徐放的に、皮膚への刺激も少
なく、経皮吸収させることができる経皮吸収製剤用基剤
ポリマーを提供する。 【構成】 一般式 R−A−(U)−F−(U)−B−
R′ (但し、A,Bはエチレンオキシド、プロピレンオキシ
ド、テトラメチレンオキシド、1,2−ブチレンオキシ
ドのポリマー、或はこれらのランダム又はブロックコポ
リマーであり、R,R′はこれらの末端のH,CH3
25,C37,C49であり、A=B又はA≠B、R
=R′又はR≠R′であり、Fはジイソシアネート化合
物の構成骨格を、(U)はウレタン結合を表す)で示さ
れ、A,Bの少なくともどちらか一方が親水性であり、
同時に少なくともどちらか一方がヒトの皮膚温度以上で
溶融する性質を有する熱感応性のセグメント化ポリウレ
タンより成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、皮膚を通して体内に薬
物を徐々に放出させるシステム(TTS;Transdermal
Therapeutic System)である経皮吸収製剤におい
て、薬物の貯蔵と放出を目的に使用される基剤となるポ
リマーに関する。
【0002】
【従来の技術】現在までに実用あるいは開発中の経皮吸
収製剤を薬物の貯蔵・放出のタイプからみると、リザ
ーバ型、マトリックス型、感圧型接着(粘着)テー
プ剤、多層粘着テープ剤、その他、に大きく分類で
きる。各々の薬物貯蔵層は、その基剤としてではシリ
コーンオイル、ではポリビニルアルコール(PVA)
及びポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性高分
子、又はシリコーンエラストマー、ではアクリル酸エ
ステル系粘着剤(PSA)を実用している。には薬物
との親和性の異なる粘着層を多層に重ねて放出性を制御
したものがある。その他に天然ゴム・合成ゴム系、セル
ロース系、合成樹脂系などの種々のポリマーが検討され
ているが、ほとんど実用にまで至っていないのが実情で
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】普通の経皮吸収製剤
は、外部より電気や超音波などのエネルギーを投入する
方法に依らず、ただ単に皮膚の表面に製剤を貼付するだ
けで、薬物がその濃度勾配を拡散・放出のための駆動力
として、基剤中を自然に拡散し、皮膚側に分配・移行し
て体内に吸収されることを目的とするものであり、使用
が簡便なものである。この目的を達成するためには、基
剤が少なくとも以下のような化学的および形態学的な特
性を有することが肝要である。
【0004】(a) 基剤と薬物は適度の親和性(相溶性)
を有することが必要である。適度とは薬物が基剤を放れ
て皮膚に移行できる程度の強さの親和性をもっているこ
とである。これにより、薬物の放出率は大いに左右され
る。また0次オーダでの放出も可能となる。
【0005】(b) 薬物(特に固体状の薬物)が基剤中を
拡散できるように、基剤が常温で液体であるか、液体を
含有している形態である膨潤ゲルのように見掛け上は固
体と液体の中間の形態をしていることが必要である。実
用されているリザーバ型では液体であるシリコーンオイ
ルが用いられており、マトリックス型では水溶性高分子
によるヒドロゲルが用いられている。また、ゴム質のポ
リマーであるシリコーンエラストマーを用いる場合は、
薬物が溶剤と共にその中に分散されている。粘着テープ
剤の場合は、粘着剤中のタック付与剤が液体として分散
されており、粘着剤自体は固体と液体の中間領域にある
ゲル体である。これらの事実は基剤としての上記条件を
満たしている。しかしながら、一般に粘着剤の中に薬物
を担持させた形式のものでは、あまり高い薬物の放出率
は得られない。また、油性あるいは水性の膨潤ゲルの場
合は、これよりもやや放出率の高いものも得られるが、
製剤としての保存安定性に問題のある薬物もある。つま
り、膨潤媒である溶媒や水の経時的な放出による初期の
薬物投入量の変化や、これら分散媒との反応による変質
の危惧がある。さらに、乳剤性基剤のように液体中に液
体の薬物を粉体と混合したり、固体の薬物を液体のコソ
ルベントと共に分散させたようなリザーバ型の場合は、
保存中にこれらが表面移行するので、放出制御膜中に薬
物が高濃度に蓄えられることは不可避であり、貼付初期
時に薬物が爆発的に放出されることが問題となる場合が
ある。
【0006】(c) 皮膚への刺激が少ないか、ほとんどな
いことが必要である。貼付剤は繰り返し貼り替えるの
で、皮膚へのカブレが大きな問題となる。製剤の大きさ
を小さくできると有利である。
【0007】(d) 数μg程度の少量で薬効を発現し、し
かも空気、水分、熱などで容易に変質するような不安定
な薬剤であっても、これを安定に保存できて高放出率で
放出できることが必要である。経皮吸収製剤とすること
にとりわけ意義のある薬物とは、消化管、肝臓などでの
分解率が高く、半減期が短く、有効血漿中濃度が低いも
のである。このような薬物のほとんどは上記の性質を有
しているので、その対策が必要である。
【0008】(e) 皮膚からの透過、吸収の悪い水溶性薬
物であっても、高効率に体内に徐放化が可能であること
が必要である。これは特に吸収促進剤(enhancer)など
を用いなくても可能であることが望ましい。近年、吸収
促進剤の研究が盛んであるが、これ自体の毒性について
調べる必要があるという難題を抱えることとなる。
【0009】上記課題の解決法として、本発明者は特開
昭63−108019号、特開昭63−146812号
に記載の基剤ポリマーを開発した。即ち、熱感応性及び
水感応性の両親媒性ポリマーであって、ポリマー分子一
端に近いほど親水性度が大きくなり、ポリマー分子他端
に近いほど疎水性又は親油性が大きくなるようにブロッ
クの連結が調整されたセグメント化ポリウレタンであ
る。
【0010】この両親媒性高分子化合物は水、熱に感応
して溶解又は溶融するように、分子の親水性、疎水性の
バランスとセグメントの構成分子の分子量が調整されて
いる。そして、溶解・融解したときに親水性のセグメン
トは親水性の薬物を、疎水性(親油性)のセグメントは
疎水性(親油性)の薬物を可溶化する。一般に薬物もま
た極性基、非極性基を有した構造であり、親水性、親油
性あるいは両親媒性の性質を有するものであり、同種の
媒体に溶解する。例外的に不溶性のものであっても薬は
微小量の溶解でも薬効を発現するので、極めて低い溶解
度の水準で言々すればよいのであるから、上記の分類に
必ず帰属する。また、このポリマーによる可溶化は、分
子レベルでの溶解、すなわち分子分散を可能にするもの
であるから、数μg/doseの微小量で薬効を発現す
るような生理活性物質の徐放に極めて有効である。換言
するならば、微小量で薬効を発現する有効血漿中濃度の
低い薬物の貯蔵と、そこからの放出のためには、分子レ
ベルでの分散が不可欠である。かかる生理活性物質はま
た、酸素、水、熱などにより容易に分解するものが多
い。しかし、熱感応性という性質が意味するように生身
の皮膚の温度である約30〜37℃以下の常温で固体の
状態を保つので、薬物は固体中に安定に保持できる。し
かるに、体表に貼付すると、体表の温度に敏感に感応し
て固体から液体に容易に変態する。また、体表から出た
水分によって溶解する。そして、薬物はこの中を拡散・
移行する。薬物は常温で液体のものもあるが、大半は固
体である。固体の薬物を基剤中を拡散させて放出し、皮
膚へ吸収させるには、基剤は液体であるか、ゲル状の物
質でなければならないが、その条件を該ポリマーは満た
しており、多くの薬物に対して有効な経皮吸収製剤の基
剤ポリマーとなるものであった。
【0011】しかしながら、その後の本発明者の研究に
より、薬物のうちで、皮膚を通過し難いような水溶性の
薬物に対しては、より親水性の高い熱感応性のポリマー
が必要であることが分かってきた。また、かかる薬物を
例えば決められた24〜48時間以内の短時間に高効率
に放出するためには、溶・融解したポリマーがもっと低
い粘性を有しており、より拡散し易い環境をつくること
が必要であることも分かってきた。本発明はこのような
要求に鑑みてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者が鋭意研究を重
ねた結果、上記の要求は、 一般式 R−A−(U)−C−(U)−B−R′ [但し、A,Bはエチレンオキシド(EO)、プロピレン
オキシド(PO)、テトラメチレンオキシド(TMO)、
1,2−ブチレンオキシド(BO)のポリマー、或はこれ
らのランダム又はブロックコポリマーであり、R,R′
はこれらの末端のH,CH3 ,C25,C37,C4
9 であり、A=B又はA≠B、R=R′又はR≠R′で
あり、Cはジイソシアネート化合物の構成骨格を、(U)
はウレタン結合を表す)で示され、A,Bの少なくとも
どちらか一方が親水性であり、同時に少なくともどちら
か一方がヒトの皮膚温度以上で溶融する性質を有する両
親媒性セグメント化ポリウレタンより成る本発明の経皮
吸収製剤用基剤ポリマーによって満たされるという事実
を見出した。
【0013】この一般式 R−A−(U)−C−(U)−B
−R′の具体的な構造例を以下の表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】ここで、A,Bの少なくともどちらか一方
が親水性である必要性は、親水性の薬物を薬効を発現す
る程度の低濃度ではあるが、比較的多く溶解させるため
である。また、このセグメントは吸湿(水)性を付与
し、体表の水分によって容易にポリマーが溶解するとい
う水感応性の要因にもなる。親水性の根源となるのは分
子鎖中のエーテル酸素(−O−)と分子鎖末端の−OH
である。メチレン鎖(−CH2 −)についている−CH
3 ,−C25は、エーテル酸素に水が接近するのに妨げ
となるので、これらの側鎖をもたず、二つのメチレンに
対して一つのエーテル酸素の割合で結合しているエチレ
ンオキシド(EO)がこれらのうちで最も親水性であ
る。側鎖のあるものはより疎水性であり、また、アルキ
ル側鎖の大きいもの程より疎水性となる。また、末端は
−OHであれば親水性であるが、−OCH3 ,−OC2
5,−OC37,−OC49によりアルコキシ末端を
形成すれば、ここ示したアルキル基の大きさの順に疎水
性となる。従って、ウレタン結合の両側のセグメントが
EOであるときなどは、アルコキシ末端とすることで疎
水化することによって、親水性の度合を微妙に調整でき
る。
【0016】アルコキシ末端のアルキル鎖長が長すぎる
と、分子全体の親水性に影響を及ぼし、また溶融温度も
変わるので、セグメントの本来の性質を生かすためには
好ましくない。末端は従来から使用されている非イオン
界面活性剤のように長鎖アルキル又は芳香族のカルボン
酸とのエステル結合にすることも一つの方法であるが、
エステル結合の凝集力のためにセグメントの中のエーテ
ル結合と薬物との相互作用以外にエステル結合との相互
作用が入り込むから、徐放性のコントロールがより難解
となる。また、長鎖アルキルのアルコキシ末端にした場
合と同様に凝固点と両親媒性への影響が総じて大きいと
考えられるので、本発明の領域のような短鎖のアルキル
鎖によるアルコキシ末端がよいわけである。
【0017】また、EOを含む共重合体をセグメントに
することでEOの比率に応じて親水性(疎水性)の度合
を調節することもできる。かかる観点から、ジイソシア
ネート化合物の両側のセグメントの組み合わせが表1の
如く列挙できる。
【0018】ところで、生身のヒトの皮膚の表面温度で
常温下の固体から融解して粘稠な液体に変態するという
熱感応性は、EO又はテトラメチレンオキシド(TM
O)の分子量によって調整できる。ただし、溶融時の粘
度を考慮すると、特にEOにより調整するのが好まし
い。他のアルキレンオキシドは常温で液体であり、熱感
応性の要因にならない。むしろ、両親媒性の疎水性付与
のセグメントとしての作用を期待するものであり、疎水
性薬物との親和性の要因として働く。EOを含む共重合
体の場合は、EOの比率とその分子量、共重合体の形式
(ブロックであるかランダムであるか)とその中のEO
の分子量によって、熱により変態することへの要求を満
たすものも存在するが、凝固・融解温度がEO単一重合
体ほどに明瞭でないものが多い。また、結晶性の硬い固
体でないので、薬物を長期に保存する安定な固体相とし
て用いるにはやや危惧がある。さらに、このような共重
合体は分子量がかなり大きいので、溶融したときの粘度
がかなり大きく、薬物の拡散の点からして好ましくない
が、薬物(例えばより疎水性の薬物)によっては使用可
能である。
【0019】ここで、少なくとも一方のセグメントにE
O単一重合体をもつ例について記述する。EO単一重合
体であるポリエチレングリコールのうちで皮膚表面の温
度付近30〜37℃で固体・液体の変態をする平均分子
量はおよそ800〜1200であり、1000の凝固点
は37.1℃(日本薬局法、規格値35〜39℃)であ
るので、この分子量のものが好適に選ばれる。
【0020】表1中のの場合、どちらかにEOセグメ
ントの平均分子量1000を用いると、他方のそれは2
00〜1000のものを用いればよい。末端は少なくと
もどちらか一方をアルキルエーテルとし、少なくともど
ちらか一方は−OHのままでよい。両端が−OHの場合
も使用可能であるが、薬物が親水性である場合にあまり
親和性が高くて、放出率と放出パターンに問題が生ずる
こともあり得る。ここで注目すべきは、例えば両セグメ
ントに凝固点が37.1℃である1000のセグメント
を用いたときの凝固点である。単に平均分子量1000
のポリエチレングリコールをつなぎ合わせた場合の平均
分子量2000のものの凝固点は約45℃であるが、上
記の場合の凝固点は平均分子量1000のそれとほとん
ど変わらない。また、末端のアルキル基によって約1〜
2℃低下する程度である。これは両セグメントを連結し
て、その間に入っているウレタン結合がポリエチレング
リコールのEO連鎖、分子の長さ、および末端基により
生ずる分子間、分子内凝集力によって生ずる凝固点への
影響を打ち消し、セグメントの固有の分子間、分子内運
動を独立させているためであり、それゆえに平均分子量
1000の凝固点が殆どそのまま発現するのである。こ
の事実こそが、本発明の目的をもった分子を設計するこ
との裏付けとなっている。つまり、総分子量が大きくな
っても凝固点は構成セグメントのそれに近い温度である
ので、一方のセグメントに他の機能を持たせることが可
能である。
【0021】表1のの構成は一方のセグメントにプロ
ピレンオキシド(PO)鎖を導入した例であり、PO鎖
は側鎖にある−CH3 のためにかなり疎水性である。但
し、分子量が数100以下で末端が−OHのままであれ
ば、この水酸基の影響によって親水性の性質もかなり残
っている。従って、一方がEOセグメントであるの場
合は、POセグメントの分子量が約1000ぐらいまで
用いられる。これは溶融粘度を考慮した長さの限定でも
ある。
【0022】表1の,は更に順次疎水性セグメント
を一方に持つ場合であるが、この場合は疎水性の薬物に
対して有用であり、それらのセグメントの分子量もまた
と同様の要因を考慮して、平均分子量1500程度の
大きさまでが妥当である。
【0023】表1のは一方にEO/PO共重合体を用
いた場合である。EOの比率とその分子量、共重合体の
形式によって、親水、疎水の程度は異なるが、両セグメ
ントがEO重合体のときよりもより疎水性に調整でき、
の場合よりも親水性に調節できる。また、溶融粘度は
との間にある。共重合体は共通して単一重合体より
も結晶性が劣るので、一方にEO重合体の結晶性セグメ
ントを用いたときに、その熱感応性がより敏感に変わ
る。また、ランダム共重合体のときは、特にその分子運
動の小さなユニットで活発に働く性質が薬物の拡散・放
出に望ましい結果を与える。
【0024】これらの事実は表1の以下の組み合わせ
についても同様であり、薬物の特性と要求される放出の
パターンを考慮して、これらの組合わせを選択すればよ
い。また、末端基の種類も同様に選択すればよい。
【0025】これらの構造式で表されるポリマーの総分
子量は各々のセグメントの組合わせにより異なるが、お
よそ1000〜数1000である。好ましくは1200
〜2500程度である。
【0026】次に、前記一般式の中間に入るCの骨格を
有するジイソシアネートは、p−フェニレンジイソシア
ネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(TD
I)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
(MDI)、ナフタリン1,5−ジイソシアネート、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソ
シアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイ
ソシアネート、水添加TDI、水素化MDI、ジシクロ
ヘキシルジメチルメタンp,p′−ジイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート等の中から選択すればよ
い。但し、両セグメントが直線上で広がっている構造を
とる方が熱感応性を敏感に発現し、溶融粘度も低い傾向
があるので、直線的な構造のジイソシアネートの方が望
ましく、また芳香族や脂環族のものよりも脂肪族の方が
分子運動の容易さからすると望ましい。トリイソシアネ
ートなどのより多官能であるものでもよいが、溶融粘度
が一般に高くなるので好ましくない。
【0027】このようなジイソシアネートとアルキレン
グリコールとの反応で生ずるウレタン結合(−NHOC
O−)の凝集力は8.74(kcal/mol)であ
り、アルキレングリコールの構成単位分子の−CH
2 −;0.68、−CH(CH3 )−;1.36、−C
3 ;1.77、−O−;1.00などと比べると大き
いので、溶融粘度の増大の方向に作用するから、薬物貯
蔵層にとって良好な粘度を調整するのに都合が良い。ま
た、両側のセグメントの間のスペーサーとして適度の分
子長を有しており、各セグメントが独立した分子運動を
するのに都合のよい作用をしている。
【0028】
【作用】先述の分子設計の意図に基づいて設計した本発
明の経皮吸収製剤用の基剤ポリマーは、以下のような作
用・効果を生ずる。
【0029】(1) 生身の皮膚温度である30〜37℃以
下の常温では結晶性あるいはペースト状の固体であり、
空気、水分、熱などにより容易に変質するような生物学
的活性剤(堕胎剤、催眠薬、鎮静剤、精神安定剤、鎮痙
剤、筋肉弛緩剤、抗パーキンソン病剤、鎮痛剤、解熱
剤、抗炎症剤、局所麻酔薬、抗潰瘍剤、殺菌剤、ホルモ
ン剤、アンドロゲンステロイド、エストロゲン、交感神
経興奮剤、心臓血管剤、利尿剤、制(抗)癌剤、低血糖
剤および栄養剤)であっても安定に保存でき、特に常温
で固体の薬物は保存中の移行がない。
【0030】(2) 生身の皮膚温度以上の低温で容易に粘
性の低い液体であり、水溶性および親水性と疎水性のセ
グメントが同時に存在した両親媒性の液体であるため
に、常温で固体の薬物の多くを薬効の発現する程度の比
較的少量の薬量の範囲であれば溶解して、そのセグメン
トの親和性の高い部分に均一に分子分散できる。従って
ポリマー中に溶解させるために溶媒を使用しなくて済む
場合が多く、溶剤の完全揮散のための手段が必要でな
く、また残留溶剤の毒性の危惧も避けられる。
【0031】(3) 溶融した後の粘度はおよそ2000セ
ンチポイズ以下であり、これは先の特開昭63−108
019号、特開昭63−146812号のポリマーの粘
度がおよそ5000〜10000センチポイズであるの
に比較して低い値である。従って、溶解した薬物がこの
中を拡散して皮膚側に移行する割合が高い。殊に、この
基剤ポリマーと密着して、この基剤ポリマーと同じポリ
マーをミクロな相として埋込んだ状態にある相分離膜を
密着させた系では、基剤ポリマーが皮膚温度で液体とな
って流動化し、膜を抜け出して皮膚に移行するので、薬
物の皮膚への到達効率が良くなる。このことは、基剤中
に薬物が低濃度にしか含まれていないか、数μg〜数1
00μg/doseの微小量しか含まれていないような
生理活性物質の高放出率の経皮吸収製剤をつくるのに有
効である。T. Higuchi(J. Soc. Cosmetic Chemists,
11,85(1960))によれば、溶液状態からの放出におい
て、基剤からの放出過程のみが律速となる場合には、薬
物の放出量はその初期過程において
【数1】 の関係が成立する。つまり放出量は初期濃度、拡散係
数、時間に比例する。C0,tを一定とすると、拡散係
数に放出率が依存する。そこで、拡散係数を大きくする
ために粘度を下げる本発明に意義のあることが分かる。
なお、Wilke の式(Wilke :Chem. Eng. Progr.,45,21
8 (1949)によると、液相拡散係数は
【数2】 で示される。従って、この式によっても、拡散係数は溶
媒の分子量と粘度が小さくなると、大きくなることが分
かる。つまり、基剤の溶融後の粘度が小さくなるほど、
薬物の拡散係数が大きくなって、低濃度側の皮膚側への
移動が多くなることが裏付けられる。
【0032】(4) 親水性セグメントにEO重合体を選ん
でおり、その結晶性の故に熱感応により敏感に液化す
る。また、生体から発する水分により溶解しやすく、水
に対する感応も敏感である。さらに親水性薬物を溶解し
やすい。但し、他方に疎水性セグメントや末端基をアル
キル鎖のアルコキシ基とすることにより、両親媒性とす
ることができるので、親水性薬物との親和の程度をコン
トロールでき、特に皮膚への吸収の悪い親水性の薬物の
放出率を向上させることができる。
【0033】(5) 本基剤ポリマーが溶融して皮膚表面に
達して接触するような構造である経皮吸収製剤の場合
は、該基剤ポリマーが皮膚の脂質と良い親和性を示すの
で、難吸収性の薬物であっても、比較的効率良く皮膚か
ら吸収される。そのため新たに吸収促進剤を使用する必
要がない。
【0034】(6) 本基剤ポリマーは、従来より使用され
ている薬剤や化粧品の添加剤であるポリアルキレングリ
コールと分子構造がほとんど同じである。それ故、皮膚
刺激や毒性は認められず、安全である。また、アクリル
系ポリマーなどのような残留モノマーも存在しないので
安全である。
【0035】(7) 溶融時の粘度は拡散に有利な程度に低
いが、貼付時に流動して流れ落ちるほどではなく、皮膚
の表面に適当に拡がる程度であり、薬物の皮膚からの吸
収に都合が良い。このような溶融粘度の調整は、セグメ
ントの種類、分子量と総分子量を調整することによって
行われたものである。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0037】
【表2】
【0038】表2に示す6種類の基剤用ポリマーを全て
以下の合成方法で合成し、得られたポリマーの凝固点を
示差走査型熱量分析器(セイコー電子工業(株)製,D
SC−220C)を用いて測定した。
【0039】(合成方法)No.1のポリマーを例にとって
合成方法を記述すると、真空乾燥機を用いて、R(40
0)とPEG(1000)を60℃で減圧下によく脱水
・乾燥した。これらのアルキレングリコールのOH価
と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のO
H価とNCO価を常法によって測定した後、ジラウリン
酸ジ−n−ブチル錫の少量を触媒として用いて、モル比
がR(400):PEG(1000):HMDI=1:
1:1となるように混合して、N2 ガス雰囲気中70℃
で反応させた。但し、ポリオール中にHMDIを滴下す
る方法で反応を進めた。そしてIR吸収スペクトルによ
って、イソシアネート基の吸収である2250cm が
消失した時点を反応の終点とみなした。
【0040】(溶融粘度の比較)下記の[化1]の構造
式で示される特開昭63−146812号の実施例2に
記載のポリマー(以下、ポリマーAという)と、本発明
のNo.1のポリマーを溶融温度以上に昇温して、その粘度
をB型粘度計(ローターNo.4,60rpm)を用いて比
較測定した。その結果を図1に示す。
【化1】
【0041】図1より明らかなように、ポリマーAは融
点付近の粘度が7200センチポイズであり、温度の上
昇によりかなり粘度が下がるという温度依存性がある。
これに対し、本発明のNo.1のポリマーは、融点付近の粘
度が2000センチポイズであり、その温度依存性はあ
まりない。100℃以上で両者の粘度はほぼ同じにな
る。7200センチポイズは、薬物を溶解して拡散させ
るにはやや高い値と考えられるが、約70℃以上の20
00センチポイズ以下の粘度であれば、溶解・拡散が比
較的容易と考えられる。ポリマーAはやや親油性のある
薬物との親和性にかかわって、その両親媒性が有効に作
用すれば、好ましい放出制御を有する薬物貯蔵層となる
ものである。一方、本発明のNo.1のポリマーは、低温で
も2000センチポイズ以下であり、55℃以上では1
000センチポイズ以下の低い粘度を示す。そのため
に、低温で薬物を溶媒なしに溶解することができる利点
(溶媒を用いて溶解した場合は、後に溶媒を飛散除去せ
しめる必要があり、残留溶媒の毒性に配慮を要し、ま
た、沸点の高い溶媒の完全除去が困難である)をもって
おり、熱に弱い薬物に対して有効であることを示唆して
いる。また、薬物の拡散もポリマーAより大きく、濃度
勾配による駆動力のみで薬物が高放出率で徐放される可
能性を兼ね備えている。また、セグメントが親水性であ
るため、水感応性も高く、室内放置により数%の水分を
吸収し、真空・加熱乾燥下では0.3%以下の水分率に
まで乾燥できるという性質を有しており、皮膚表面の微
量水分により薬物の溶解・拡散を増し、親水性薬物に対
する有効な貯蔵層となることを示唆している。以上は、
本発明の目的の達成をよく裏付ける事実である。
【0042】(薬物の溶解性)一般に薬物は本来の融点
が常温より高いものが多い。つまり、常温で固体のもの
が多い。現在までに実用されている経皮吸収製剤の薬物
も同様である。狭心症のためのニトログリセリン、硝酸
イソソルビットは数少ない液体であり、皮膚又は粘膜へ
の浸透性が強いので、体内に容易に吸収される。そのた
め、吸収を放出制御膜でコントロールする必要がある
が、このような性質の薬物経皮吸収製剤とすることは容
易である。むしろ、常温で固体であり、溶剤にも比較的
溶け難く、皮膚への浸透の少ない薬物が大半である。但
し、薬効を少量で発現する薬物の場合は、少量を皮膚吸
収させればよいので、そのような水準の溶解度が基剤ポ
リマーにあればよい。本発明の基剤ポリマーもまた、そ
のレベルの溶解性を有しておればよい。以下に二,三の
溶解例を挙げる。
【0043】消炎鎮痛剤であるインドメタシン(mp:
155〜162℃)、ケトプロフェン(mp:94〜9
7℃)、フルルビプロフェン(mp:113〜116
℃)を実施例のNo.3の基剤ポリマーの融解液に溶解した
ところ、各々10数%以上の溶解が容易であった。各々
のSP値(Solubility Parameter:cal0.5
-1.5)は12.9、11.6、12.0で比較的近い
値である。EOは9.4、POは8.7であり、これら
の値と離れている。しかし、ウレタン結合(18.5)
と末端の−OH(26.7)が影響して、これらの溶解
が容易であると考えられ、セグメントとの非親和性はむ
しろ、これらの薬物の放出に有効に働くと考えられる。
また、血糖降下剤である難溶性のグリベンクラミド(m
p:168〜173℃)は本発明のNo.1の基剤ポリマー
におよそ1%溶解することができた。さらに、痛風の特
効薬であるコルヒチン(mp:176〜179℃)は数
%以上溶解できた。また、極めて少量で薬効のあるプロ
スタグランジンE1 (mp:119〜121℃)もま
た、No.1〜No.6の基剤ポリマーに対して2〜3%溶解し
た。
【0044】(安全性、安定性)これらの基剤ポリマー
のセグメントを形成する各々のアルキレンオキシドは、
市販されているポリマーの中で最も純度の高いものの一
つであり、既に医薬、医療用として使用実績がある。本
基剤ポリマーは皮膚刺激がほとんどなく、貼付剤として
適合するものである。
【0045】また、各々の凝固点は生身の皮膚の温度と
近似しており、それ以下の温度では安定なペーストない
し結晶性の固体であるので、薬物の長期安定保存が可能
であると同時に、液体の貯蔵層のような薬物のブリード
アウトもないので、長期の濃度変化もほとんど認められ
なかった。
【0046】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の経皮吸収製剤用基剤ポリマーは常温で固体であり、ヒ
トの皮膚の温度以上で液体となり、且つ親水性のセグメ
ントを有するような熱感応性、水感応性の性質を備えて
いる。また、溶融時の粘度は低く、薬物の溶解と拡散に
都合の良い性質を備えている。従って、本発明の基剤ポ
リマーは、従来から経皮投与の製剤をつくるのが容易で
なかった薬物、つまり、常温で固体であり、水溶性の難
皮膚吸収性であり、少量で薬効を発現し、半減期が短く
分解しやすい薬物などを、長期に安定に保存して、高放
出率に、しかも徐放的に、皮膚への刺激も少なく、経皮
投与できるといった顕著な効果を奏し、極めて実用的な
基剤ポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のNo.1の基剤ポリマーと、特開
昭63−146812号の実施例2に記載のポリマーに
ついて、それぞれの溶融粘度と温度との関係を示したグ
ラフである。
【手続補正書】
【提出日】平成6年10月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 経皮吸収製剤用基剤ポリマー
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、皮膚を通して体内に薬
物を徐々に放出させるシステム(TTS;Transdermal
Therapeutic System)である経皮吸収製剤におい
て、薬物の貯蔵と放出を目的に使用される基剤となるポ
リマーに関する。
【0002】
【従来の技術】現在までに実用あるいは開発中の経皮吸
収製剤を薬物の貯蔵・放出のタイプからみると、リザ
ーバ型、マトリックス型、感圧型接着(粘着)テー
プ剤、多層粘着テープ剤、その他、に大きく分類で
きる。各々の薬物貯蔵層は、その基剤としてではシリ
コーンオイル、ではポリビニルアルコール(PVA)
及びポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性高分
子、又はシリコーンエラストマー、ではアクリル酸エ
ステル系粘着剤(PSA)を実用している。には薬物
との親和性の異なる粘着層を多層に重ねて放出性を制御
したものがある。その他に天然ゴム・合成ゴム系、セル
ロース系、合成樹脂系などの種々のポリマーが検討され
ているが、ほとんど実用にまで至っていないのが実情で
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】普通の経皮吸収製剤
は、外部より電気や超音波などのエネルギーを投入する
方法に依らず、ただ単に皮膚の表面に製剤を貼付するだ
けで、薬物がその濃度勾配を拡散・放出のための駆動力
として、基剤中を自然に拡散し、皮膚側に分配・移行し
て体内に吸収されることを目的とするものであり、使用
が簡便なものである。この目的を達成するためには、基
剤が少なくとも以下のような化学的および形態学的な特
性を有することが肝要である。
【0004】(a) 基剤と薬物は適度の親和性(相溶性)
を有することが必要である。適度とは薬物が基剤を放れ
て皮膚に移行できる程度の強さの親和性をもっているこ
とである。これにより、薬物の放出率は大いに左右され
る。また0次オーダでの放出も可能となる。
【0005】(b) 薬物(特に固体状の薬物)が基剤中を
拡散できるように、基剤が常温で液体であるか、液体を
含有している形態である膨潤ゲルのように見掛け上は固
体と液体の中間の形態をしていることが必要である。実
用されているリザーバ型では液体であるシリコーンオイ
ルが用いられており、マトリックス型では水溶性高分子
によるヒドロゲルが用いられている。また、ゴム質のポ
リマーであるシリコーンエラストマーを用いる場合は、
薬物が溶剤と共にその中に分散されている。粘着テープ
剤の場合は、粘着剤中のタック付与剤が液体として分散
されており、粘着剤自体は固体と液体の中間領域にある
ゲル体である。これらの事実は基剤としての上記条件を
満たしている。しかしながら、一般に粘着剤の中に薬物
を担持させた形式のものでは、あまり高い薬物の放出率
は得られない。また、油性あるいは水性の膨潤ゲルの場
合は、これよりもやや放出率の高いものも得られるが、
これを用いて製剤とした場合に保存安定性に問題のある
薬物もある。つまり、膨潤媒である溶媒や水の経時的な
放出による初期の薬物投入量の変化や、これら分散媒と
の反応による変質の危惧がある。さらに、乳剤性基剤の
ように液体中に液体の薬物を粉体と混合したり、固体の
薬物を液体のコソルベントと共に分散させたようなリザ
ーバ型の場合は、保存中にこれらが表面移行するので、
放出制御膜中に薬物が高濃度に蓄えられることは不可避
であり、貼付初期時に薬物が爆発的に放出されることが
問題となる場合がある。
【0006】(c) 皮膚への刺激が少ないか、ほとんどな
いことが必要である。貼付剤は繰り返し貼り替えるの
で、皮膚へのカブレが大きな問題となる。製剤の大きさ
を小さくできると有利である。
【0007】(d) 数μg程度の少量で薬効を発現し、し
かも空気、水分、熱などで容易に変質するような不安定
な薬剤であっても、これを安定に保存できて高放出率で
放出できることが必要である。経皮吸収製剤とすること
にとりわけ意義のある薬物とは、消化管、肝臓などでの
分解率が高く、半減期が短く、有効血漿中濃度が低いも
のである。このような薬物のほとんどは上記の性質を有
しているので、その対策が必要である。
【0008】(e) 皮膚からの透過、吸収の悪い水溶性薬
物であっても、高効率に体内に徐放化が可能であること
が必要である。これは特に吸収促進剤(enhancer)など
を用いなくても可能であることが望ましい。近年、吸収
促進剤の研究が盛んであるが、これ自体の毒性について
調べる必要があるという難題を抱えることとなる。
【0009】上記課題の解決法として、本発明者は特開
昭63−108019号、特開昭63−146812号
に記載の基剤ポリマーを開発した。即ち、熱感応性及び
水感応性の両親媒性ポリマーであって、ポリマー分子一
端に近いほど親水性度が大きくなり、ポリマー分子他端
に近いほど疎水性又は親油性が大きくなるようにブロッ
クの連結が調整されたセグメント化ポリウレタンであ
る。
【0010】この両親媒性高分子化合物は水、熱に感応
して溶解又は溶融するように、分子の親水性、疎水性の
バランスとセグメントの構成分子の分子量が調整されて
いる。そして、溶解・融解したときに親水性のセグメン
トは親水性の薬物を、疎水性(親油性)のセグメントは
疎水性(親油性)の薬物を可溶化する。一般に薬物もま
た極性基、非極性基を有した構造であり、親水性、親油
性あるいは両親媒性の性質を有するものであり、同種の
媒体に溶解する。例外的に不溶性のものであっても薬は
微小量の溶解でも薬効を発現するので、極めて低い溶解
度の水準で言々すればよいのであるから、上記の分類に
必ず帰属する。また、このポリマーによる可溶化は、分
子レベルでの溶解、すなわち分子分散を可能にするもの
であるから、数μg/doseの微小量で薬効を発現す
るような生理活性物質の徐放に極めて有効である。換言
するならば、微小量で薬効を発現する有効血漿中濃度の
低い薬物の貯蔵と、そこからの放出のためには、分子レ
ベルでの分散が不可欠である。かかる生理活性物質はま
た、酸素、水、熱などにより容易に分解するものが多
い。しかし、熱感応性という性質が意味するように生身
の皮膚の温度以下である30℃未満の常温で固体の状態
を保つので、薬物は固体中に安定に保持できる。しかる
に、体表に貼付すると、体表の温度に敏感に感応して固
体から液体に容易に変態する。また、両親媒性という性
質が意味するように水によっても感応するので、体表か
ら出た少量の水によって溶解する。そして、薬物はこの
中を拡散・移行する。薬物は常温で液体のものもある
が、大半は固体である。固体の薬物を基剤中を拡散させ
て放出し、皮膚へ吸収させるには、基剤は液体である
か、ゲル状の物質でなければならないが、その条件を該
ポリマーは満たしており、多くの薬物に対して有効な経
皮吸収製剤の基剤ポリマーとなるものであった。
【0011】しかしながら、その後の本発明者等の研究
により、薬物のうちで、皮膚を通過し難いような水溶性
の薬物に対しては、より親水性の高い熱感応性のポリマ
ーが必要であることが分かってきた。また、かかる薬物
を例えば決められた24〜48時間以内の短時間に高効
率に放出するためには、溶・融解したポリマーがもっと
低い粘性を有しており、より拡散し易い環境をつくるこ
とが必要であることも分かってきた。本発明はこのよう
な要求に鑑みてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者が鋭意研究を重
ねた結果、上記の要求は、 一般式 R−A−(U)−F−(U)−B−R′ [但し、A,Bはエチレンオキシド(EO)、プロピレン
オキシド(PO)、テトラメチレンオキシド(TMO)、
1,2−ブチレンオキシド(BO)のポリマー、或はこれ
らのランダム又はブロックコポリマーであり、R,R′
はこれらの末端のH,CH3 ,C25,C37,C49
であり、A=B又はA≠B、R=R′又はR≠R′で
あり、Fはジイソシアネート化合物の構成骨格を、(U)
はウレタン結合を表す)で示され、A,Bの少なくとも
どちらか一方が親水性であり、同時に少なくともどちら
か一方がヒトの皮膚温度以上で溶融する性質を有する両
親媒性セグメント化ポリウレタンより成る本発明の経皮
吸収製剤用基剤ポリマーによって満たされるという事実
を見出した。
【0013】この一般式 R−A−(U)−F−(U)−B
−R′の具体的な構造例を以下の表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】ここで、A,Bの少なくともどちらか一方
が親水性である必要性は、親水性の薬物を薬効を発現す
る程度の低濃度水準(レベル)ではあるが、比較的多く
溶解させるためである。ここで親水性の薬物とは、親油
性薬物に対比するものであり、水に対して親和性を示
す。基本的には水といくらかの溶解性を持つもので、ニ
トログリセリン等が挙げられる。また、このセグメント
は吸湿(水)性を付与し、体表の微量の水によって容易
にポリマーが溶解するという水感応性の要因にもなる。
ここで水感応性とは、自らが吸湿性を持ち、少量の水
(湿気)を吸収して溶解し、更に自ら水を吸収すること
によって、固体から水を含んだ液体へと変態し、このと
き溶融温度もまた低下するという、水に対する感応性が
敏感である性質をいう。親水性の根源となるのは分子鎖
中のエーテル酸素(−O−)と分子鎖末端の−OHであ
る。メチレン鎖(−CH2 −)についている−CH3
−C25は、エーテル酸素に水が接近するのに妨げとな
るので、これらの側鎖をもたず、二つのメチレンに対し
て一つのエーテル酸素の割合で結合しているエチレンオ
キシド(EO)がこれらのうちで最も親水性である。側
鎖のあるものはより疎水性であり、また、アルキル側鎖
の大きいもの程より疎水性となる。また、末端は−OH
であれば親水性であるが、−OCH3 ,−OC25,−
OC37,−OC49によりアルコキシ末端を形成すれ
ば、ここ示したアルキル基の大きさの順に疎水性とな
る。従って、ウレタン結合の両側のセグメントがEOで
あるときなどは、アルコキシ末端とすることで疎水化す
ることによって、親水性の度合を微妙に調整できる。
【0016】アルコキシ末端のアルキル鎖長が長すぎる
と、分子全体の親水性に影響を及ぼし、また溶融温度も
セグメント自体のそれとは変わるので、セグメントの本
来の性質を生かすためには好ましくない。末端は従来か
ら使用されている非イオン界面活性剤のように長鎖アル
キル又は芳香族のカルボン酸とのエステル結合にするこ
とも一つの方法であるが、エステル結合の凝集力のため
にセグメントの中のエーテル結合と薬物との相互作用以
外にエステル結合との相互作用が入り込むから、徐放性
のコントロールがより難解となる。また、長鎖アルキル
のアルコキシ末端にした場合と同様に凝固点と両親媒性
への影響が大きいと考えられるので、本発明の領域のよ
うな短鎖のアルキル鎖によるアルコキシ末端がよいわけ
である。
【0017】また、EOを含む上記の共重合体をセグメ
ントにすることでEOの比率に応じて親水性(疎水性)
の度合を調節することもできる。かかる観点から、ジイ
ソシアネート化合物の両側のセグメントの組み合わせが
表1の如く列挙できる。
【0018】一方、生身のヒトの皮膚温度で常温下の固
体から融解して粘稠な液体に変態するという熱感応性
は、EO又はテトラメチレンオキシド(TMO)の分子
量によって調整できる。ただし、溶融時の粘度を考慮す
ると、特にEOにより調整するのが好ましい。ここで、
常温とは0℃以上、30℃未満の温度域を示す。また、
ヒトの皮膚温度とは30〜37℃の温度域を示し、従っ
て、ヒトの皮膚温度以上とは30〜37℃以上、好まし
くは40℃以下の温度域を示す。他のアルキレンオキシ
ドは常温で液体であり、熱感応性の要因にならない。む
しろ、両親媒性の疎水性付与のセグメントとしての作用
を期待するものであり、疎水性薬物との親和性の要因と
して働く。EOを含む共重合体の場合は、EOの比率と
その分子量、共重合体の形式(ブロックであるかランダ
ムであるか)とその中のEOの分子量によって、熱によ
り変態することへの要求を満たすものも存在するが、凝
固・融解温度がEO単一重合体ほどに明瞭でないものが
多い。また、結晶性の硬い固体でないので、薬物を長期
に保存する安定な固体相として用いるにはやや危惧があ
る。さらに、このような共重合体は分子量が化学構造上
の必然性から比較的大きくならざるを得ないので、溶融
したときの粘度がかなり大きく、薬物の拡散の点からし
て好ましくないが、薬物(例えばより疎水性の薬物)に
よっては使用可能である。
【0019】ここで、少なくとも一方のセグメントにE
O単一重合体をもつ例について記述する。EO単一重合
体であるポリエチレングリコールのうちで皮膚表面の温
度付近30〜40℃で固体・液体の変態をする平均分子
量はおよそ800〜1200であり、例えば平均分子量
が1000の凝固点は37.1℃(日本薬局方、規格値
35〜39℃)であるので、この分子量の範囲のものが
好適に選ばれる。
【0020】表1中のの場合、どちらかにEOセグメ
ントの平均分子量1000を用いると、他方のそれは2
00〜1000のものを用いればよい。末端は少なくと
もどちらか一方をアルキルエーテルとし、少なくともど
ちらか一方は−OHのままでよい。両端が−OHあるい
はアルキルエーテルであってもよい。これらは薬物の性
質に応じて選択すればよい。ここで注目すべきは、例え
ば両セグメントに凝固点が37.1℃である平均分子量
1000のセグメントを用いたときの凝固点である。単
に平均分子量1000のポリエチレングリコールをつな
ぎ合わせた場合の平均分子量2000のものの凝固点は
約45℃であるが、上記の場合の凝固点は平均分子量1
000のそれとほとんど変わらない。また、末端のアル
キル基によって約1〜2℃低下する程度である。これは
両セグメントを連結して、その間に入っているウレタン
結合がポリエチレングリコールのEO連鎖、分子の長
さ、および末端基により生ずる分子間、分子内凝集力に
よって生ずる凝固点への影響を打ち消し、セグメントの
固有の分子間、分子内運動を独立させているためであ
り、それゆえに平均分子量1000の凝固点が殆どその
まま発現するのである。この事実こそが、本発明の目的
をもった分子を設計することの裏付けとなっている。つ
まり、総分子量が大きくなっても凝固点は構成セグメン
トのそれに近い温度であるので、一方のセグメントに他
の機能を持たせることが可能である。
【0021】表1のの構成は一方のセグメントにプロ
ピレンオキシド(PO)鎖を導入した例であり、PO鎖
は側鎖にある−CH3 のためにかなり疎水性である。但
し、分子量が数100以下で末端が−OHのままであれ
ば、この水酸基の影響によって親水性の性質もかなり残
っている。従って、一方がEOセグメントであるの場
合は、POセグメントの分子量が約1000ぐらいまで
用いられる。これは溶融粘度を考慮した長さの限定でも
ある。
【0022】表1の,は更に順次、より疎水性のセ
グメントを一方に持つ場合であるが、この場合は疎水性
の薬物に対して有用であり、それらのセグメントの分子
量もまたと同様の要因を考慮して、平均分子量150
0程度の大きさまでで、好ましくは約300〜やく15
00が妥当である。
【0023】表1のは一方にEO/PO共重合体を用
いた場合である。EOの比率とその分子量、共重合体の
形式によって、親水、疎水の程度は異なるが、両セグメ
ントがEO重合体のときよりもより疎水性に調整でき、
の場合よりも親水性に調節できる。また、溶融粘度は
との間にある。共重合体は共通して単一重合体より
も結晶性が劣るので、一方にEO重合体の結晶性セグメ
ントを用いたときに、その熱感応性がより敏感に変わ
る。また、ランダム共重合体のときは、特にその分子運
動の小さなユニットで活発に動く性質が薬物の拡散・放
出に望ましい結果を与える。
【0024】また、以降のEOと他のアルキレンオキ
シドとの共重合体の比率は、モル比でEOが10〜90
%、好ましくは30〜70%で適宜選択される。
【0025】これらの事実は表1の以下の組み合わせ
についても同様であり、薬物の特性と要求される放出の
パターンを考慮して、これらの組合わせを選択すればよ
い。また、末端基の種類も同様に選択すればよい。
【0026】これらの構造式で表されるポリマーの総分
子量は各々のセグメントの組合わせにより異なるが、お
よそ1000〜6000であり、好ましくは1200〜
2500程度である。
【0027】次に、前記一般式の中間に入るFの骨格を
有するジイソシアネートは、p−フェニレンジイソシア
ネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(TD
I)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
(MDI)、ナフタリン1,5−ジイソシアネート、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソ
シアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイ
ソシアネート、水添加TDI、水素化MDI、ジシクロ
ヘキシルジメチルメタンp,p′−ジイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート等の中から選択すればよ
い。但し、両セグメントが直線上で広がっている構造を
とる方が熱感応性を敏感に発現し、溶融粘度も低い傾向
があるので、直線的な構造のジイソシアネートの方が望
ましく、また芳香族や脂環族のものよりも脂肪族の方が
分子運動の容易さからすると望ましい。トリイソシアネ
ートなどのより多官能であるものでもよいが、溶融粘度
が一般に高くなるので好ましくない。
【0028】このようなジイソシアネートとアルキレン
グリコールとの反応で生ずるウレタン結合(−NHOC
O−)の凝集力は8.74(kcal/mol)であ
り、アルキレングリコールの構成単位分子の−CH2
−;0.68、−CH(CH3 )−;1.36、−CH
3 ;1.77、−O−;1.00などと比べると大きい
ので、溶融粘度の増大の方向に作用するから、薬物貯蔵
層にとって良好な溶融粘度を得るのに都合がよい。事
実、これらウレタン結合を介在した本発明ポリマーは、
同分子量のアルキレングリコールよりも溶融粘度がやや
高く、薬物の放出を微妙にコントロールするのに有効で
ある。因みに、溶融粘度があまり低いと、ポリマーは皮
膚から流れ落ちるので好ましくない。また、両側のセグ
メントの間のスペーサーとして適度の分子長を有してお
り、各セグメントが独立した分子運動をするのに都合の
よい作用をしている。
【0029】
【作用】先述の分子設計の意図に基づいて設計した本発
明の経皮吸収製剤用の基剤ポリマーは、以下のような作
用・効果を生ずる。
【0030】(1) 30℃未満の常温では結晶性あるいは
ペースト状の固体であり、空気、水分、熱などにより容
易に変質するような生物学的活性剤(堕胎剤、催眠薬、
鎮静剤、精神安定剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、抗パーキン
ソン病剤、鎮痛剤、解熱剤、抗炎症剤、局所麻酔薬、抗
潰瘍剤、殺菌剤、ホルモン剤、アンドロゲンステロイ
ド、エストロゲン、交感神経興奮剤、心臓血管剤、利尿
剤、制(抗)癌剤、低血糖剤および栄養剤)であっても
安定に保存でき、特に常温で固体の薬物は保存中の移行
がない。
【0031】(2) 生身の皮膚温度付近で容易に粘性の低
い液体となる。そして、水溶性あるいは親水性と疎水性
のセグメントが同時に存在した両親媒性の液体であるた
めに、常温で固体の薬物の多くを薬効の発現する程度の
比較的少量の薬量の範囲であれば完全に溶解して、その
セグメントの親和性の高い部分に均一に分子分散でき
る。従ってポリマー中に溶解させるために溶媒を使用し
なくて済む場合が多く、溶剤の完全揮散のための煩雑な
手段が必要でなく、また残留溶剤の毒性の危惧も避けら
れる。
【0032】(3) 溶融した後の粘度はおよそ2000セ
ンチポイズ以下であり、これは先の特開昭63−108
019号、特開昭63−146812号のポリマーの粘
度がおよそ5000〜10000センチポイズであるの
に比較して低い値である。従って、溶解した薬物がこの
中を拡散して皮膚側に移行する割合が高い。殊に、この
基剤ポリマーの相と接して、この基剤ポリマーと同じポ
リマーをミクロな相として埋込んだ状態にある相分離膜
を密着させた系では、ポリマーが皮膚温度付近で液体と
なって流動化し、膜を抜け出して皮膚に移行するので、
薬物の皮膚への到達効率が良くなる。このことは、基剤
中に薬物が低濃度にしか含まれていないか、数μg〜数
100μg/doseの微小量しか含まれていないよう
な生理活性物質の高放出率の経皮吸収製剤をつくるのに
有効である。ここで、粘度はブルックフィールド型回転
粘度計により、4号ローターを用いて毎分60回転させ
て測定した値を示している。T. Higuchi(J. Soc. Cosm
etic Chemists,11,85(1960))によれば、溶液状態か
らの放出において、基剤からの放出過程のみが律速とな
る場合には、薬物の放出量はその初期過程において
【数1】 の関係が成立する。つまり放出量は初期濃度、拡散係
数、時間に比例する。Co,tを一定とすると、拡散係
数に放出率が依存する。そこで、拡散係数を大きくする
ために粘度を下げる本発明に意義のあることが分かる。
なお、Wilke の式(Wilke :Chem. Eng. Progr.,45,21
8 (1949)によると、液相拡散係数は
【数2】 で示される。従って、この式から、拡散係数は溶媒の粘
度が小さくなると、大きくなることが分かる。つまり、
基剤の溶融後の粘度が小さくなるほど、薬物の拡散係数
が大きくなって、低濃度側の皮膚側への移動が多くなる
ことが裏付けられる。
【0033】(4) 親水性セグメントにEO重合体を選ん
でおり、その結晶性は敏感に熱感応して液化する。ま
た、生体から発する水に溶解しやすく、水に対する感応
も敏感である。さらに親水性薬物を溶解しやすい。但
し、他方に疎水性セグメントや末端基をアルキル鎖のア
ルコキシ基とすることにより、両親媒性とすることがで
きるので、親水性薬物との親和の程度をコントロールで
き、特に皮膚への吸収の悪い親水性の薬物の放出率を向
上させることができる。
【0034】(5) 本基剤ポリマーが溶融して皮膚表面に
達して接触するような構造である経皮吸収製剤の場合
は、該基剤ポリマーが両親媒性であるが故に皮膚の脂質
と良い親和性を示すので、難吸収性の薬物であっても、
比較的効率良く皮膚から吸収される。そのため新たに吸
収促進剤を使用する必要がない。
【0035】(6) 本基剤ポリマーは、従来より使用され
ている薬剤や化粧品の添加剤であるポリアルキレングリ
コールと分子構造がよく似ている。それ故、皮膚刺激や
毒性は認められず、安全である。また、アクリル系ポリ
マーなどと異なり、残留モノマーが存在しないので安全
である。
【0036】(7) 溶融時の粘度が拡散が効率的に行われ
る程度に低いが、貼付時に流動して流れ落ちるほどでは
なく、皮膚の表面に適当に拡がる程度であり、薬物の皮
膚からの吸収に都合が良い。このような溶融粘度の調整
は、ウレタン結合と、セグメントの種類とその分子量及
び総分子量を調整することによって行われたものであ
る。
【0037】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0038】
【表2】
【0039】表2に示す6種類の基剤用ポリマーを全て
以下の合成方法で合成し、得られたポリマーの凝固点を
示差走査型熱量分析器(セイコー電子工業(株)製,D
SC−220C)を用いて測定した。
【0040】(合成方法)No.1のポリマーを例にとって
合成方法を記述すると、真空乾燥機を用いて、R(40
0)とPEG(1000)を60℃で減圧下に脱水・乾
燥する。そして、これらのアルキレングリコールのOH
価と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の
NCO価を常法によって測定した後、ジラウリン酸ジ−
n−ブチル錫の少量を触媒として用いて、モル比がR
(400):PEG(1000):HMDI=1:1:
1となるように混合して、N2 ガス雰囲気中70℃で反
応させる。この反応は、R(400)とPEG(100
0)のポリアルキレングリコール中にHMDIを滴下す
る方法で進め、IR吸収スペクトルによって、イソシア
ネート基の吸収波数(2250cm-1)が消失した時点
を反応の終点とみなした。
【0041】(溶融粘度の比較)下記の[化1]の構造
式で示される特開昭63−146812号の実施例2に
記載のポリマー(以下、ポリマーAという)と、本発明
のNo.1のポリマーを溶融温度以上に昇温して、その粘度
をB型粘度計(ローターNo.4,60rpm)を用いて比
較測定した。その結果を図1に示す。
【化1】
【0042】図1より明らかなように、ポリマーAは融
点付近の粘度が7200センチポイズと高く、温度の上
昇と共に徐々に粘度が低下するという温度依存性があ
る。これに対し、本発明のNo.1のポリマーは、融点付近
でも2000センチポイズの低粘度であり、その温度依
存性はあまりない。100℃以上で両者の粘度はほぼ同
じになる。7200センチポイズは、薬物を溶解して拡
散させるにはやや高い値と考えられるが、約70℃以上
の2000センチポイズ以下の粘度であれば、溶解・拡
散が比較的容易と考えられる。ポリマーAはやや親油性
のある薬物との親和性にかかわって、その両親媒性が有
効に作用すれば、好ましい放出制御を有する薬物貯蔵層
となるものである。一方、本発明のNo.1のポリマーは、
低温でも2000センチポイズ以下であり、55℃以上
では1000センチポイズ以下の低い粘度を示す。その
ために、低温で薬物を溶媒なしに溶解することができる
利点(溶媒を用いて溶解した場合は、後に溶媒を飛散除
去せしめる必要があり、残留溶媒の毒性に配慮を要し、
また、沸点の高い溶媒の完全除去が困難である)をもっ
ており、熱に弱い薬物に対して有効であることを示唆し
ている。また、薬物の拡散もポリマーAより大きく、濃
度勾配による駆動力のみで薬物が高放出率で徐放される
可能性を兼ね備えている。また、セグメントが親水性で
あるため、水感応性も高く、室内放置により数%の水分
を吸収し、真空・加熱乾燥下では0.3%以下の水分率
にまで乾燥できるという性質を有しており、皮膚表面の
微量水分により薬物の溶解・拡散を増す。そのため親水
性薬物に対する有効な貯蔵層や放出制御層となることを
示唆している。以上は、本発明の目的の達成をよく裏付
ける事実である。
【0043】更に、下記の[化2]の構造式で示される
特開昭63−146812号の明細書の実施例3に記載
のポリマー(以下、ポリマーBという)の溶融時の粘度
を測定した。このポリマーBの融点付近の粘度はほぼ7
000cps、50℃付近でほぼ4000cps、70
℃付近でほぼ2000cpsとなり、ポリマーAとほぼ
同じ粘度を示し、略同じカーブを描いた。
【化2】
【0044】(薬物の溶解性)一般に薬物は本来の融点
が常温より高いものが多い。つまり、常温で固体のもの
が多い。現在までに実用されている経皮吸収製剤の薬物
も同様である。狭心症のためのニトログリセリン、硝酸
イソソルビットは数少ない液体の例であり、皮膚又は粘
膜への浸透性が強いので、体内に容易に吸収される。そ
のため、吸収を放出制御膜でコントロールする必要があ
るが、このような性質の薬物を経皮吸収製剤とすること
は容易である。むしろ、常温で固体であり、溶剤にも比
較的溶け難く、皮膚への浸透の少ない薬物が大半であ
る。但し、薬効を少量で発現する薬物の場合は、少量を
皮膚から吸収させればよいので、そのような水準の溶解
度が基剤ポリマーにあればよい。本発明の基剤ポリマー
は溶融時にかかるレベルの溶解性を有している。以下に
二,三の溶解例を挙げる。
【0045】消炎鎮痛剤であるインドメタシン(mp:
155〜162℃)、ケトプロフェン(mp:94〜9
7℃)、フルルビプロフェン(mp:113〜116
℃)を実施例のNo.3の基剤ポリマーの融解液に溶解した
ところ、各々10数%以上の溶解が容易であった。各々
のSP値(Solubility Parameter:cal0.5
-1.5)は12.9、11.6、12.0で比較的近似
している。EOは9.4、POは8.7であり、これら
の値と離れている。しかし、ウレタン結合(18.5)
と末端の−OH(26.7)が影響して、これらの溶解
が容易であるものと考えられ、セグメントとの非親和性
はむしろ、これらの薬物の放出に有効に働くと考えられ
る。また、血糖降下剤である難溶性のグリベンクラミド
(mp:168〜173℃)は本発明のNo.1の基剤ポリ
マーにおよそ1%溶解することができた。さらに、痛風
の特効薬であるコルヒチン(mp:176〜179℃)
は数%以上溶解できた。また、極めて少量で薬効のある
プロスタグランジンE1 (mp:119〜121℃)も
また、No.1〜No.6の基剤ポリマーに対して2〜3%溶解
した。
【0046】(安全性、安定性)これらの基剤ポリマー
のセグメントを形成する各々のアルキレンオキシドは、
市販されているポリマーの中で最も純度の高いものの一
つであり、既に医薬、医療用として使用実績がある。本
基剤ポリマーは皮膚刺激がほとんどなく、貼付剤として
適合するものである。
【0047】また、各々の凝固点は生身の皮膚の温度と
近似しており、それ以下の温度では安定なペーストない
し結晶性の固体であるので、薬物の長期安定保存が可能
であると同時に、液体の貯蔵層のような薬物のブリード
アウトもないので、長期の濃度変化もほとんど認められ
なかった。
【0048】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の経皮吸収製剤用基剤ポリマーは常温で固体であり、ヒ
トの皮膚の温度以上で液体となり、且つ親水性のセグメ
ントを有し、熱感応性、水感応性の性質を備えている。
また、溶融時の粘度は低く、薬物の溶解と拡散に都合の
良い性質を備えている。従って、本発明の基剤ポリマー
は、従来から経皮投与の製剤をつくるのが容易でなかっ
た薬物、つまり、常温で固体であり、水溶性の難皮膚吸
収性であり、少量で薬効を発現し、半減期が短く分解し
やすい薬物などを、長期に安定に保存して、高放出率
に、しかも徐放的に、皮膚への刺激も少なく、経皮投与
できるといった顕著な効果を奏し、極めて実用的な基剤
ポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のNo.1の基剤ポリマーと、特開
昭63−146812号の実施例2に記載のポリマーに
ついて、それぞれの溶融粘度と温度との関係を示したグ
ラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 R−A−(U)−C−(U)−B−R′ (但し、A,Bはエチレンオキシド、プロピレンオキシ
    ド、テトラメチレンオキシド、1,2−ブチレンオキシ
    ドのポリマー、或はこれらのランダム又はブロックコポ
    リマーであり、R,R′はこれらの末端のH,CH3
    25,C37,C49であり、A=B又はA≠B、R
    =R′又はR≠R′であり、Cはジイソシアネート化合
    物の構成骨格を、(U)はウレタン結合を表す)で示さ
    れ、A,Bの少なくともどちらか一方が親水性であり、
    同時に少なくともどちらか一方がヒトの皮膚温度以上で
    溶融する性質を有する熱感応性のセグメント化ポリウレ
    タンより成る経皮吸収製剤用基剤ポリマー。
JP5208830A 1993-07-30 1993-07-30 経皮吸収製剤用基剤ポリマー Pending JPH0753663A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5208830A JPH0753663A (ja) 1993-07-30 1993-07-30 経皮吸収製剤用基剤ポリマー
CA002145647A CA2145647C (en) 1993-07-30 1994-07-29 Base polymer for transdermal absorption preparation
DE69431982T DE69431982T2 (de) 1993-07-30 1994-07-29 Basispolymer für transdermal absorbierbare zubereitungen
PCT/JP1994/001253 WO1995004094A1 (fr) 1993-07-30 1994-07-29 Polymere de base pour preparation absorbable par voie percutanee
EP94921837A EP0664307B1 (en) 1993-07-30 1994-07-29 Base polymer for percutaneously absorbable preparation
US08/885,845 US5858395A (en) 1993-07-30 1997-06-30 Base polymer for transdermal absorption preparation comprising a heat-sensitive segmented polyurethane

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5208830A JPH0753663A (ja) 1993-07-30 1993-07-30 経皮吸収製剤用基剤ポリマー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0753663A true JPH0753663A (ja) 1995-02-28

Family

ID=16562820

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5208830A Pending JPH0753663A (ja) 1993-07-30 1993-07-30 経皮吸収製剤用基剤ポリマー

Country Status (6)

Country Link
US (1) US5858395A (ja)
EP (1) EP0664307B1 (ja)
JP (1) JPH0753663A (ja)
CA (1) CA2145647C (ja)
DE (1) DE69431982T2 (ja)
WO (1) WO1995004094A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009541571A (ja) * 2006-07-05 2009-11-26 コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド 親水性ポリウレタン化合物
JP2009542831A (ja) * 2006-07-08 2009-12-03 コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド ポリウレタンエラストマー

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
IL177550A0 (en) * 2006-08-17 2006-12-31 Sialo Technology Israel Ltd All-in-one optical microscopic handle
US9370482B1 (en) 2011-09-09 2016-06-21 Harrison Yu Method of incorporating additives to shaped porous monocomponent biopolymer fibers during fiber orienting step
CN108289831B (zh) * 2015-11-02 2021-11-19 海伦特医药有限公司 含甲硅烷基聚合物的药物递送组合物

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3026575A1 (de) * 1980-07-12 1982-02-04 Bayer Ag, 5090 Leverkusen Antitumoral wirkende mittel
GB8606988D0 (en) * 1986-03-20 1986-04-23 Smith & Nephew Ass Foams
JPH0725666B2 (ja) * 1986-05-14 1995-03-22 タキロン株式会社 経皮投与用貼付剤
EP0299758B1 (en) * 1987-07-16 1994-12-14 The Regents Of The University Of California Compositions for enhancing the cutaneous penetration of pharmacologically active agents
JP2569659B2 (ja) * 1987-12-25 1997-01-08 大日本インキ化学工業株式会社 イソシアネート化合物の乳化方法
JP3032871B2 (ja) * 1990-05-02 2000-04-17 タキロン株式会社 経皮吸収製剤用粘着剤
JPH0413620A (ja) * 1990-05-07 1992-01-17 Takiron Co Ltd 経皮吸収製剤
WO1993008796A1 (fr) * 1991-11-02 1993-05-13 Takiron Co., Ltd. Autocollant pour preparation absorbable par voie percutanee
GB9124775D0 (en) * 1991-11-21 1992-01-15 Medical Res Council Cervical ripening

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009541571A (ja) * 2006-07-05 2009-11-26 コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド 親水性ポリウレタン化合物
JP2009542831A (ja) * 2006-07-08 2009-12-03 コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド ポリウレタンエラストマー

Also Published As

Publication number Publication date
CA2145647A1 (en) 1995-02-09
CA2145647C (en) 2005-07-26
WO1995004094A1 (fr) 1995-02-09
DE69431982D1 (de) 2003-02-13
EP0664307A1 (en) 1995-07-26
DE69431982T2 (de) 2003-10-02
EP0664307A4 (en) 1995-09-27
US5858395A (en) 1999-01-12
EP0664307B1 (en) 2003-01-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0245858B1 (en) Adhesive for percutaneous administration
US5723145A (en) Transdermal absorption preparation
US4127127A (en) Therapeutic systems made from certain segmented copolyesters
JP3576608B2 (ja) 貼付剤および貼付製剤
JP4145996B2 (ja) アクリル系粘着テープおよび経皮吸収製剤
KR100891260B1 (ko) 화장료로서 유용한 특성을 가진 트리블록 공중합체 및 이를함유하는 화장료 조성물
WO1995016433A1 (fr) Nouvelles compositions pour mousses, notamment mousses rectales, et mousses ainsi obtenues
WO2001072282A1 (en) Self-emulsifying matrix type transdermal preparation
EP1013734B1 (en) Gel-form pressure-sensitive adhesive, and adhesive material and adhesive medicinal preparation both containing the same
KR101819249B1 (ko) 케토프로펜 함유 수성 첩부제
JPH0753663A (ja) 経皮吸収製剤用基剤ポリマー
JPS63146812A (ja) 経皮投与用貼付剤
JP3014188B2 (ja) アクリル系ゲル材およびアクリル系ゲル製剤
ES2239372T3 (es) Lamina adhesiva medica y su produccion.
CA2150370C (en) Transdermal absorption preparation
JPH09188618A (ja) 経皮吸収製剤
JPH02149514A (ja) 医薬部材
JPH0565224A (ja) ゲル材およびこれを用いた治療用ゲル製剤
JPH0413620A (ja) 経皮吸収製剤
JPH07165563A (ja) テープ製剤
JPS61221120A (ja) 外用医薬部材
JPH03123727A (ja) 経皮吸収製剤
JPH05286851A (ja) 疾患治療用貼付剤
JPS6041968A (ja) 親水性医薬部材
Tojo et al. Release and permeation kinetics of matrix-type transdermal delivery systems for verapamil

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20020115