JPH073435A - 高耐食性Ag−Mg合金、および、その薄膜 - Google Patents

高耐食性Ag−Mg合金、および、その薄膜

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JPH073435A
JPH073435A JP9804694A JP9804694A JPH073435A JP H073435 A JPH073435 A JP H073435A JP 9804694 A JP9804694 A JP 9804694A JP 9804694 A JP9804694 A JP 9804694A JP H073435 A JPH073435 A JP H073435A
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Rie Mori
理恵 森
Kenichi Hijikata
研一 土方
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 硫化物成分等によるAgの銀白色光沢の黒変
化を防止し、高反射率、低熱伝導率のAg−Mg合金を
得る。また、光磁気記録媒体、光記録媒体、リフレクタ
等に使用して好適なAg−Mg合金薄膜を得る。 【構成】 Agに対し1〜10at%のMgを含有させ
たAg−Mg合金の最表層のMgが酸化されて生ずる被
膜により、Agを大気中の硫化物成分やオゾンから遮断
して耐食性を高めると共に、高反射率を維持する。Mg
の添加により熱伝導率を低下させる。光磁気記録媒体、
光ディスク、照明器具、鏡、標識用の反射膜として有用
である。さらに、家庭用プラスチック製品のめっき膜と
しても使用することができる。スパッタリングにより基
板に合金膜を被着する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大気中の硫化物成分や
オゾンなどによるAgの黒変化を防止する高耐食性Ag
−Mg合金、および、この合金を用いた反射膜、詳しく
は光磁気記録媒体用反射膜、光記録媒体用反射膜、リフ
レクタ用反射膜、照明器具用反射膜、標識用反射膜、お
よび、プラスチック製品のめっき膜に関する。
【0002】
【従来の技術】Agはその銀白色の美しい光沢とともに
展性、延性に優れ、金属のうちで電気および熱の伝導率
が最も大きいので非常に有用な金属である。特に可視光
に対する反射率が広い波長範囲にわたって100%に近
いため、鏡面を必要とする装置、例えば光記録媒体の反
射膜などに広く利用されている。このようなAgの特徴
を生かして例えば、洋食器にAgメッキを行うと、その
装飾性に優れている点や水分中の微生物が殺菌されるな
どの利点があるため、被メッキ物に高級感を与えること
ができる。
【0003】以上のようにAgは非常に有用な金属であ
り酸素の中で高温に熱しても酸化されない等、化学的に
も安定な金属であるが、唯一その欠点として、大気中の
硫化物成分によって褐色または黒色のAg2Sに変化
し、また、硫化物ほどではないが、大気中のオゾンによ
り黒色のAgOに変化して、その光沢を失うことが挙げ
られる。特に、S(硫黄)とは直接結合して、例えば、
2Sと反応して常温で容易にAg2Sとなり黒変する。
この黒変化を逆に利用した古美術色装飾品もあるが一般
的でない。このような黒変化を一時的に防止するには、
クロム酸処理や透明樹脂を塗装する方法が用いられ、最
も効果的な方法としてはAgメッキ上にRhメッキを薄
く形成する方法が用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようなAgの退色
を防止する方法は完全なものではなく、上記Rhメッキ
による方法もRh(ロジウム)が非常に高価であるため
一般的でない。また、被覆物とAgとの間に界面が存在
する場合には、剥離等の不都合が起こりやすい。さら
に、上記光記録媒体、特に光磁気記録媒体用反射膜とし
て用いる場合には、熱伝導率の高さが問題となる。
【0005】そこで、本発明の目的は、大気中の硫化物
成分やオゾンによるAgの退色を防止し、併せてAgの
反射率の高さを保持しつつ、Agよりも熱伝導率の低
い、高耐食性Ag−Mg(銀−マグネシウム)合金を提
供することにある。また、本発明は、この高耐食性Ag
−Mg合金を用いた高耐食性反射膜を提供することを、
その目的としている。また、本発明の目的は、この高耐
食性Ag−Mg合金を用いた光磁気記録媒体用反射膜、
光記録媒体用反射膜、リフレクタ用反射膜、照明器具用
反射膜、標識用反射膜、プラスチック製品のめっき膜を
提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的は下記の
本発明により達成される。すなわち、請求項1に記載の
発明は、Agに1〜10at%のMgを含有させた高耐
食性Ag−Mg合金である。その表面に生成するMgの
自然酸化膜により合金内部のAgを大気から保護して
(酸化、硫化等を防止して)退色を防止するものであ
る。
【0007】請求項2に記載の発明は、Agに1〜10
at%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる高耐
食性反射膜である。この高耐食性反射膜は、例えば光磁
気記録媒体、光記録媒体、リフレクタ、各種標識、照明
器具等に用いられる。
【0008】請求項3に記載の発明は、Agに1〜8a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる光磁気
記録媒体用反射膜である。
【0009】請求項4に記載の発明は、Agに1〜8a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなり、その
膜厚が500〜1000オングストロームである光磁気
記録媒体用反射膜である。
【0010】請求項5に記載の発明は、Agに1〜5a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる光記録
媒体用反射膜である。
【0011】請求項6に記載の発明は、Agに1〜5a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなり、その
膜厚が500〜1000オングストロームである光記録
媒体用反射膜である。
【0012】請求項7に記載の発明は、Agに1〜5a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなるリフレ
クタ用反射膜である。このリフレクタとは、反射器、反
射鏡、反射板を示している。
【0013】請求項8に記載の発明は、Agに1〜5a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなり、その
膜厚が1000〜2000オングストロームであるリフ
レクタ用反射膜である。
【0014】請求項9に記載の発明は、Agに1〜5a
t%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる標識用
反射膜である。
【0015】請求項10に記載の発明は、Agに1〜5
at%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる照明
器具用反射膜である。
【0016】請求項11に記載の発明は、Agに1〜5
at%のMgを含有させたAg−Mg合金からなり、そ
の膜厚が1000〜10000オングストロームである
プラスチック製品のめっき膜である。プラスチック製品
としては例えば家庭で使用される各種製品があり、例え
ば化粧品容器等である。
【0017】
【作用】請求項1に記載した発明において、Agに含有
させるMgは、Agと近似した銀白色の光沢を有する金
属であり、銀と同様に展性、延性に富み容易に箔化す
る。よって、銀と合金をつくるのに適した金属である。
このMgは常温の空気中で容易にその表面に酸化被膜を
生成する。このため、大気中で安定な金属であり、その
酸化被膜はAgに対する保護膜として最適である。ま
た、この酸化被膜は略透明であり、Agの銀白色光沢を
損なうことはない。この合金のMg濃度を1〜10at
%と限定したのは、この範囲未満では、Mgの量が保護
膜を形成するには不十分であり、この範囲を越えると最
表層のMgが強固なAg−Mg金属間化合物を形成して
いると考えられるので、Mgの酸化被膜の生成が困難と
なるからである。
【0018】請求項2に記載の発明は、Agに1〜10
at%のMgを含有させたAg−Mg合金からなる高耐
食性反射膜である。この高耐食性反射膜は、例えば光磁
気記録媒体、光記録媒体、リフレクタ、各種標識、照明
器具等に用いられる。
【0019】請求項3,4に記載の発明に係る反射膜は
光磁気記録媒体、いわゆる大容量メモリとしての光磁気
ディスク等に用いられる。この場合、Agに対するMg
の含有量は1〜8at%とする。また、その膜厚は50
0〜1000オングストロームとする。この組成範囲に
限定した理由は、熱伝導率がAgのそれの2/3以下で
あり、かつ、反射率が80%以上であることが必要だか
らである。
【0020】請求項5,6に記載の発明は、例えば光デ
ィスク(CD)用反射膜、光カード用反射膜として使用
することができる光記録媒体用反射膜であり、Agに1
〜5at%のMgを含有させたAg−Mg合金からな
り、特にその膜厚を500〜1000オングストローム
とする。反射率が90%以上になる組成範囲とすること
が好ましいからである。なお、従来の光デイスクのAl
反射膜の反射率は90%である。
【0021】請求項7,8に記載の発明では、リフレク
タ用の反射膜として用いるAg−Mg合金を示す。反射
器、反射鏡、反射板等に使用される反射膜としては反射
率がAlの反射率以上、すなわち90%以上であること
が望ましいことから、組成範囲をMgの1〜5at%に
限定している。また、その反射膜の膜厚は1000〜2
000オングストロームが好ましい。
【0022】請求項9に記載の発明では、標識用の反射
膜として、請求項10に記載の発明では、照明器具用の
反射膜として、Agに1〜5at%のMgを含有させた
Ag−Mg合金からなる反射膜をそれぞれ用いる。この
組成範囲限定の理由は、反射率をAlの反射率以上、す
なわち90%以上にすることにある。
【0023】請求項11に記載の発明では、プラスチッ
ク製品のめっき膜としてAg−Mg合金を用いる。例え
ば化粧品容器、アクセサリ等の表面装飾用のめっき膜で
ある。反射率をAlの反射率以上、すなわち90%以上
にするため、その組成を限定している。
【0024】
【実施例】以下に本発明の具体的構成について詳述す
る。本発明に係るAg−Mg合金のMg濃度は1〜10
at%である。この合金を大気中あるいは酸化されやす
い雰囲気、例えば高温、高湿度の雰囲気中に置くと、A
gよりは酸化されやすいMgが優先的に酸化され、合金
表面に透明なMg酸化被膜が形成される。このMg酸化
被膜は透明であるのでAgの銀白色光沢を損なうことが
ないだけでなく、Agを前述の大気中の硫化物成分から
遮断する有効な保護膜として機能する。そして、このM
g酸化被膜が合金最表層に形成される際に、表層のMg
が酸化被膜中に取り込まれるため、この表層の合金組成
は純Agに近づく。そのため、Mg酸化被膜が形成され
ると、合金の反射率は90〜95%と増加し、純Agの
98%に近づく。
【0025】また、このように最表層の組成は純Agに
近くなるが、内部はAg−Mg組成であるので熱伝導率
を純Agの1/3程度に抑えることができる。この合金
のMg濃度を1〜10at%と限定したのは、この範囲
未満では、Mgの量が保護膜を形成するには不十分であ
り、この範囲を越えると最表層のMgが強固なAg−M
g金属間化合物を形成していると考えられるので、酸化
被膜の生成が困難となるからである。このような組成の
Ag−Mg合金の製造は、通常のスパッタリング法によ
るのが最適である。AgとMgの二元ターゲットから被
着体上に上記組成の合金を堆積する。組成の制御はスパ
ッタリングの際にターゲットに印加される高周波電力値
の増減、あるいは、被着体の位置の移動等により行えば
よい。次に、具体的数字および図を示して本発明を更に
詳細に実証する。
【0026】図1および図2は本発明のAg−Mg合金
において、Mgが6.18at%で含有される場合の最
表層から内部にいたる組成の変化をオージェ分析計によ
り測定したものである。横軸はアルゴンイオンにより等
速度に堀穿した時間を表し、時間0が最表層の組成、時
間10分が表面より1000オングストローム深さの組
成を示している。また、図1が合金作製直後の組成を示
し、図2は温度80℃、相対湿度85%の条件下に24
時間放置後の組成を示す。図2に示されるように、24
時間放置後には、表層部において、Ag(折線(1))
の濃度が70at%から50at%に低下し、Mg(折
線(2))の濃度が20at%から30at%に増加し
ている。このことは前述のように表層部にMgの酸化被
膜が形成されていることを実証している。また、深さ略
50オングストロームからはAgの濃度が15at%増
加し、Mgの濃度が略10at%低下している。このこ
とは、前述のように50オングストロームより内部では
合金の組成が純Agに近づくことを実証している。な
お、析線(3)は酸素濃度を示す。
【0027】図3はAgMg合金膜の組成依存性を示し
ている。反射率の測定は波長632.8nmのレーザ光
を照射してエリプソメータにより行った。なお、この反
射膜は後述するコスパッタ法により被着、形成したもの
である。
【0028】図4はAg,Ag−Mg合金についての耐
食試験結果を示すグラフである。縦軸は632.8nm
の波長のレーザ光を照射しエリプソメータで測定した反
射率を示す。横軸は温度80℃、相対湿度85%の雰囲
気での放置時間である。図4に示すように、AgMg6.
18合金では、Mgの酸化被膜形成後から表面層の組成が
純Agに近づいて、反射率が上昇し、略8時間後から反
射率が一定となる様子がわかる。なお、この反射膜はコ
スパッタ法により形成したものである。
【0029】図5は本発明に係るAg−Mg合金の組成
を変化させた場合の熱伝導率の変化を示すグラフであ
る。サンプルとしては膜厚1000オングストロームの
合金膜のその幅方向の熱伝導率の値を示している。熱伝
導率Kは、まず四点探針法で電気伝導度σを測定したの
ち、次の関係式(ブィーデマン・フランツの法則)から
計算した。 K=LσT(L:ローレンツ数、T:絶対温度) 同図のグラフからMg濃度が本発明の範囲である8at
%以上で熱伝導率が大きく低下していることが分かる。
【0030】図6、図7は本発明に係るAg−Mg合金
膜を光磁気ディスクに使用した実施例を示している。こ
れらの図に示すように、光磁気ディスク61は、ポリカ
ーボネイト(PC)基板62に保護層63を介して記録
層64を積層し、さらに保護層65を介して反射層66
を積み重ねている。この反射層66を本発明に係るAg
−Mg合金膜で形成している。反射層66はAgに1〜
8at%の範囲のMgを含むAg−Mg合金膜で形成さ
れ、その厚さは500〜1000オングストロームが好
適な値である。なお、保護層にはSiAlON,Si3
N4が、記録層としてはTbFeCo、または、TbF
eCoCrがそれぞれ使用される。この記録層の厚さは
200〜250オングストロームのものが用いられる。
図7の(A)は3.5インチの光磁気ディスク、(B)
は5.25インチの光磁気ディスクの構造を示してい
る。本発明に係る反射膜はこれらのいずれについても用
いることができる。
【0031】図8は光記録媒体の一例としての光ディス
ク(CD)について本発明に係る反射膜を適用した場合
を示す。透明プラスチックの基板82に反射膜81を積
層し、保護膜83で被覆している。反射膜は、Agに1
〜5at%のMgを含有させたAg−Mg合金からな
り、500〜1000オングストロームの厚さに被着す
る。また、光ディスクの他にも光カード等へこの反射膜
を適用することもできる。保護膜83はSiAlONま
たはSi3N4で形成する。
【0032】図9には本発明に係る反射膜を使用した照
明器具の断面構造を示す。91がSPG製の原板で、こ
れに粘着剤層92、密着コート層93を介して、Agに
1〜5at%のMgを含有させたAg−Mg合金からな
る反射膜94が積層されている。95はトップコート層
である。耐食性を高めるため、この組成範囲としてい
る。反射膜94の厚さは1000〜2000オングスト
ロームが好ましい。アクリル樹脂等にこの合金をスパッ
タリングして被着してもよい。
【0033】図10はリフレクタの一つである鏡(家庭
用、自動車用等)について本発明合金膜を適用した例で
ある。この鏡では、平坦なガラス板101に、Agに1
〜5at%のMgを含有させたAg−Mg合金の反射膜
102を1000オングストローム〜1μmの厚さに被
着している。103は樹脂コーティング層である。この
組成範囲であれば、従来のAlまたはCr製の反射膜を
有する鏡と同等の反射率を維持しつつ、耐食性を一段と
優れたものとすることができる。
【0034】図11は家庭用プラスチック製品、例えば
化粧品容器に施されるめっき膜として、本発明に係る高
耐食性合金を用いた場合を示している。容器本体11
5、その蓋114の各表面にめっき膜112を施してい
る。その構造は、円筒状のプラスチック基体111に、
めっき膜112をコーティングしたものである。めっき
膜112は透明な樹脂層113でサンドイッチ状にはさ
まれている。めっき膜112は、Agに1〜5at%の
Mgを含有させたAg−Mg合金であって、1000オ
ングストローム〜1μmの厚さに形成されている。反射
率として90%以上とした組成範囲である。
【0035】次に、本発明に係るAg−Mg合金反射膜
の作製方法について説明する。このAg−Mg合金膜
は、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法
を用いて作製することができる。特にマグネトロンスパ
ッタリング法が好適である。これは、合金組成を制御し
易いこと、基板に対する膜の付着力が大きいこと、大面
積の基板に組成、厚さの均一な膜を形成し易いことが、
他の方法よりも優れているからである。例えば上記光磁
気ディスク、CD、照明器具用反射板等はこのマグネト
ロンスパッタリングで反射膜を作製する。なお、家庭用
プラスチック製品のめっき膜、鏡の反射膜については、
真空蒸着法、イオンプレーティング法が用いられること
もある。
【0036】以下、図12を用いてコスパッタ法による
合金膜の作製法を説明する。コスパッタ法は、Agター
ゲット121とMgターゲット122を、基板ホルダ1
23に対して所定距離(14cm)、所定高さ(例えば
70mm)だけ離して配置する。ターゲット121,1
22同士はチャンバ中心に対して例えば120゜離間し
て半径14cmの円周上に配置している。この基板ホル
ダ123とターゲットとの間の角度θを適宜変更設定す
ることにより、所定組成の合金膜を形成するものであ
る。例えば図示の装置ではθ=0゜ではMgが1.28
at%の合金膜が、θ=20゜で6.18at%の合金
膜をそれぞれ作製することができる。図4はこの場合を
示している。スパッタリング条件は、Agターゲット投
入電力がRF100W、Mgのそれは150W、チャン
バ内のArガス圧は1×10-3Torr、到達真空度は
5×10-7Torrである。そして、このようにして形
成した合金膜の上記耐食試験(図4)は、恒温恒湿容器
(80℃、85%)を用いて行った。反射率の測定は、
エリプソメータを使用して行った。測定波長は632.
8nmである。
【0037】図13は合金ターゲットによるスパッタリ
ングを説明するための模式図である。この方法は、Mg
3.5at%のAg−Mg合金ターゲットを用い、図示
(A)〜(C)のようにターゲット132と基板ホルダ
131との相対位置を変化させて行った。基板ホルダ1
31と合金ターゲット132との高さは7cm離間して
配置している。スパッタリング条件は、投入電力がRF
200W、Arガス圧が1×10-3Torr、到達真空
度は5×10-7Torrである。そして、このようにし
てガラス基板上に1000オングストロームの厚さに形
成した各組成(Mg1.0〜1.5at%)の合金膜に
ついて、その耐食試験は、恒温恒湿容器(80℃、85
%)を用いて行った。反射率は、エリプソメータで測定
した。測定波長は632.8nmである。(A)〜
(C)に示すように、各組成の成膜直後の反射率Rは9
6%以上の高率を示している。
【0038】
【発明の効果】本発明のAg−Mg合金は、その最表層
にMg酸化被膜を形成することにより、耐食性が高ま
り、経時によるAg白色光沢の退色が防止され、洋食器
などの銀製品に応用すると効果的である。また、Agの
高反射率を保持しつつ、熱伝導率は1/3であるため、
光磁気記録媒体の反射膜として使用すると効果的であ
る。さらに、リフレクタ、照明器具、光記録媒体、交通
標識等として好適な反射膜を提供することができる。い
ずれの反射膜についても高反射率を長期にわたって維持
することができる。耐久性の高い反射膜、さらには、高
耐久性の光磁気記録媒体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のAg−Mg合金の深さ方向の組成の変
化を示すグラフである。
【図2】本発明のAg−Mg合金の深さ方向の組成の変
化を示すグラフである。
【図3】本発明に係るAg−Mg合金膜の反射率の組成
依存性を示すグラフである。
【図4】本発明に係るAg−Mg合金膜の耐食試験結果
を示すグラフである。
【図5】本発明に係るAg−Mg合金膜の熱伝導率の組
成依存性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例に係る光磁気ディスクの構造を
示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係る光磁気ディスクの構造を
示す断面図である。
【図8】本発明の実施例に係るコンパクトディスクの構
造を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例に係る照明器具の構造を示す断
面図である。
【図10】本発明の実施例に係る鏡の構造を示す斜視図
である。
【図11】本発明の実施例に係る化粧品容器の構造を示
す斜視図および断面図である。
【図12】本発明の実施例に係るスパッタ装置を示す模
式図である。
【図13】本発明の実施例に係るスパッタ条件を説明す
るための模式図である。
【符号の説明】
64 光磁気ディスクの反射層 81 光ディスクのAg−Mg反射膜

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高耐食性Ag−Mg合金であって、Mg
    の含有量が1〜10at%(原子%)である高耐食性A
    g−Mg合金。
  2. 【請求項2】 Agに1〜10at%のMgを含有させ
    たAg−Mg合金からなる高耐食性反射膜。
  3. 【請求項3】 Agに1〜8at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなる光磁気記録媒体用反射膜。
  4. 【請求項4】 Agに1〜8at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなり、その膜厚が500〜1000
    オングストロームである光磁気記録媒体用反射膜。
  5. 【請求項5】 Agに1〜5at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなる光記録媒体用反射膜。
  6. 【請求項6】 Agに1〜5at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなり、その膜厚が500〜1000
    オングストロームである光記録媒体用反射膜。
  7. 【請求項7】 Agに1〜5at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなるリフレクタ用反射膜。
  8. 【請求項8】 Agに1〜5at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなり、その膜厚が1000〜200
    0オングストロームであるリフレクタ用反射膜。
  9. 【請求項9】 Agに1〜5at%のMgを含有させた
    Ag−Mg合金からなる標識用反射膜。
  10. 【請求項10】 Agに1〜5at%のMgを含有させ
    たAg−Mg合金からなる照明器具用反射膜。
  11. 【請求項11】 Agに1〜5at%のMgを含有させ
    たAg−Mg合金からなり、その膜厚が1000〜10
    000オングストロームであるプラスチック製品のめっ
    き膜。
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