JPH07310305A - 片持式シェッドとその施工方法 - Google Patents

片持式シェッドとその施工方法

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JPH07310305A
JPH07310305A JP10406794A JP10406794A JPH07310305A JP H07310305 A JPH07310305 A JP H07310305A JP 10406794 A JP10406794 A JP 10406794A JP 10406794 A JP10406794 A JP 10406794A JP H07310305 A JPH07310305 A JP H07310305A
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重治 酒井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 谷側の構造物を不要とし、道路上部全体を覆
うことができるようにする。 【構成】 PC鋼材11により道路幅方向にプレストレス
を付与したコンクリート製の下梁部材2を工場で製作す
る。この下梁部材2を道路Rの長さ方向に複数並設す
る。前記各下梁部材2の谷側と支持壁体4との間に、山
側に向かって斜め上向にPCケーブル17を張設する。下
梁部材2の上部に床版用コンクリート3を打設する。床
版用コンクリート3の硬化後、PCケーブル17の緊張力
を一旦緩めた後、本緊張して床版用コンクリート3にプ
レストレスを付与する。 【効果】 下梁部材2のプレストレスと床版用コンクリ
ート3のプレストレスとの合成力によって、シェッドに
所定の構造強度が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は落石や雪崩から道路や線
路等を防護する片持式シェッドとその施工方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】道路等の上部を覆うシェッドを施工する
場合、現場にて型枠を組んでコンクリートを打設する施
工に替わって、工場で製作したプレキャストコンクリー
ト部材を用いる方法が行われるようになっている。例え
ば特公平1−4895号公報や特公平1−2722号公
報で知られているように、複数の主桁を道路長手方向に
向かう横締用PC鋼材により一体に緊結して屋根を形成
し、道路の山側には支持壁体を設けると共に、道路の谷
側には複数の支柱を立設し、これら支持壁体と支柱に前
記屋根の道路幅方向両側をそれぞれ剛結し、その道路の
谷側には支柱の基礎となる下部基礎工を構築している。
【0003】また前記のような屋根の両端を支持するシ
ェッド以外にも、特開平1−244003号公報には、
屋根となる張り出し床版部を谷側に向かって上向きに斜
設し、その床版部を山側の支持壁体に固定し、さらにそ
の床版部を道路幅方向に挿通したアンカーにより山側に
固定するロックシェッドが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記屋根の両端を支持
するシェッドでは、道路の谷側に下部基礎工を施工する
ことが困難な場合があると共に、谷側の支柱により道路
幅が狭められるという問題があった。また、山岳部など
の曲線が連続する道路などでは、その支柱により視界が
遮られると共に、周囲の景観を損ねるという問題があっ
た。さらにそのシェッドを施工するには、道路の山側と
谷側に現場施工部分が多くなるため、工事期間の道路交
通を確保することが難しかった。
【0005】また上記ロックシェッドでは、張り出し床
版部を片持ち状に設けることにより、谷側の基礎工と柱
が不要になるものの、張り出し床版部を谷側に向かって
上向きをなす片持ち状に設けるため、幅が大きな道路で
は、その道路の上部全体を覆うことが困難となり、ま
た、前記床版部の道路幅方向の幅を大きくするには、張
り出し床版部の厚さ寸法が大となって、工場製作が実際
上困難であった。さらに床版部の厚さが大きくなると単
体重量が大となるため、架設時に特別に大型な重機が必
要になると共に、架設作業が煩雑になるという問題があ
った。
【0006】そこで本発明は、谷側に構造物を設ける必
要がなく、道路上部全体を覆うことができる片持式シェ
ッドを提供することを目的とし、また、施工時において
道路の交通を確保することができ、道路上部全体を覆う
ことができる片持式シェッドの施工方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の片持式シェッ
ドは、PC鋼材により道路幅方向にプレストレスを付与
したプレキャストコンクリート製の下梁部材と、この下
梁部材上にコンクリートを一体に打設して形成される床
版用コンクリートと、前記下梁部材の谷側と道路の山側
との間に、山側に向かって斜め上向きに設けられ、前記
床版用コンクリートにプレストレスを付与するPCケー
ブルとを備えたものである。
【0008】請求項2の施工方法は、PC鋼材により道
路幅方向にプレストレスを付与したコンクリート製の下
梁部材を工場で製作し、山の壁部に沿って支持壁体を構
築し、前記下梁部材の山側を前記支持壁体に固定して道
路長さ方向に複数並設し、前記各下梁部材の谷側と前記
支持壁体との間に、山側に向かって斜め上向きをなすP
Cケーブルを張設し、前記下梁部材の上部に床版用コン
クリートを打設し、この床版用コンクリートの硬化後、
前記PCケーブルの緊張力を緩めた後、本緊張して前記
床版用コンクリートにプレストレスを付与するものであ
る。
【0009】
【作用】請求項1の構成では、プレストレスを付与した
下梁部材を現場にて仮設し、この下梁部材を型枠の代わ
りに用いて床版用コンクリートを打設し、かつこの床版
用コンクリートにPCケーブルによりプレストレスを付
与して片持式シェッドを構築する。そして下梁部材に付
与したプレストレスと床版用コンクリートに付与したプ
レストレスとの合成力によって、片持式シェッドに所定
の構造強度を与えることができる。
【0010】請求項2の構成では、床版用コンクリート
の打設後、谷側のみを固定した片持ち状態では下梁部材
及び床版用コンクリートの自重によってPCケーブルに
張力が発生し、この張力により下梁部材及び床版用コン
クリートが支持される。しかし、この状態で硬化した前
記床版用コンクリートには、PCケーブルによる緊張力
が働かない。また、両端を支持した状態の下梁部材に床
版用コンクリートを打設しても硬化後の床版用コンクリ
ートにはPCケーブルによる緊張力が働かない。このた
め、PCケーブルを一旦緩めてから本緊張することによ
り、床版用コンクリートに所定のプレストレスを付与す
ることができる。そして下梁部材に付与したプレストレ
スと床版用コンクリートに付与したプレストレスとの合
成力によって、片持式シェッドに所定の構造強度を与え
ることができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照して
説明する。図1ないし図10は本発明の一実施例を示
し、同図において、道路Rの上部に片持ち状に設けられ
るシェッドの屋根1は、プレキャストコンクリート製の
複数の下梁部材2を道路Rの長手方向に複数並設して連
結し、その上部に床版用コンクリート3を現場で打設し
て構築され、その下梁部材2の一個の大きさは、例えば
道路幅方向が8.7メートル,長手方向が2メートル程
度の大型なものに形成され、道路Rの上部全体を覆って
いる。4はコンクリート製の支持壁体であり、山側の地
盤GにPC鋼材等の定着部材5により定着されており、
その上部には谷側に張り出した段差状の梁固定部6が形
成されている。前記下梁部材2は、平板状の頂版部7
と、この頂版部7の下面に突設され道路幅方向に連続す
るウエブ8と、頂版部7の山側と谷側の下面に突設され
道路長手方向に連続する横梁部9,9Aと、前記頂版部
7の谷側上面に突出され道路長手方向に連続する上横梁
部10とからなり、その頂版部7とウエブ8とには、複数
のPC鋼材11によってプレテンション方式あるいはポス
トテンション方式により道路幅方向にプレストレスが付
与されている。さらに、前記横梁部9,9Aには、複数
のダクト12が長手方向に形成され、連続する各ダクト12
に横締用PC鋼材13を挿入しポストテンション方式で複
数の下梁部材2が一体に緊結される。前記上横梁部10に
は、図3及び図4に示すように、前記ウェブ8を挟んで
道路長手方向両側に複数のダクト14が形成され、このダ
クト14は山側に向かって斜め上向きに形成され、このダ
クト14に対応して上横梁部10の谷側端上面に凹所15が形
成され、前記ダクト14の谷側端に定着用プレート16が固
設されている。前記ダクト14に挿通したシース17A付き
のPCケーブル17は、谷側端の雄螺子部に定着具である
ナット18を螺合して前記凹所15にて定着され、中央部分
を前記床版用コンクリート3に挿通し、さらに山側を前
記支持壁体4に形成したダクト19に挿通してその山側端
を支持壁体4の山側背面にて定着具20により定着してい
る。また前記床版用コンクリート3の上面は前記上横梁
部10の上面に連続して前記PCケーブル17と平行で山側
に向かって上向き傾斜に形成され、その上面は6.34
度程度に傾斜し、一方前記下梁部材2は山側に向かって
下向きに5度程度に傾斜して設けられる。また、前記上
横梁部10には、前記ダクト14とほぼ90度に直交する定
着面10Aが形成されている。さらに前記梁固定部6に
は、アンカーボルト21を挿入する縦方向の取付孔22が複
数形成され、この取付孔22に対応して前記下梁部材2に
は縦方向のダクト23が形成され、このダクト23を前記取
付孔22に合わせ、また、前記梁固定部6の上面と前記横
梁部9の下面との間に図示しないゴム支承材を介在し、
前記ダクト23から前記アンカーボルト21を前記取付孔22
に落とし込み、取付孔22とダクト23とに図示しない無収
縮モルタルを充填して下梁部材2を支持壁体4に連結し
ている。また、前記支持壁体4の背面側には、H形鋼な
どの補強用鋼材24が縦方向に複数埋設されている。
【0012】図中25は囲いブロック、26は前記床版用コ
ンクリート3上に敷設したサンドクッションである。ま
た、前記コンクリート梁部材2と床版用コンクリート3
とにより主桁27が構成される。さらに下梁部材2にはジ
ベル鉄筋28が長さ方向等間隔及び幅方向等間隔に複数固
定されている。
【0013】また、図中31は架設支保工であって、鋼材
などを組んで形成され、その上部には前記下梁部材2の
谷側高さを調整する高さ調整用ジャッキ32を設けてい
る。33は伸縮アーム33Aを備えた旋回式のクレーンであ
り、前記下梁部材2やPCケーブル17などの吊り上げに
使用される。34は前記PCケーブル17の張力を調整する
緊張用ジャッキであり、この緊張用ジャッキ34は、前記
クレーン33や主桁27上を走行するクローラ式のミニクレ
ーン35により吊り下げ保持される。36はコンクリートポ
ンプ車であって、圧送パイプ36Aの先端からコンクリー
トを打設するものである。37は下梁部材2の先端に設け
られた手摺付きの足場である。また、38は前記支持壁体
4の背面と山の壁部の間に打設した裏込めコンクリート
であり、前記下梁部材2の仮設前に施工される。
【0014】次ぎに前記シェッドの施工方法を説明する
と、まず現場において型枠を組み、コンクリートを打設
して支持壁体4を構築する。道路Rの谷側に仮設支保工
31を組み、図5に示すように、クレーン33を用いて下梁
部材2を吊り上げ、梁固定部6と仮設支持工31との間に
架設し、かつその山側は前記アンカーボルト21を介して
梁固定部6に固定し、谷側は前記支持枠16の高さ調整用
ジャッキ32上に載置する。この場合、図5に示すよう
に、下梁部材2の下方の道路Rは、クレーン33などの工
事作業車以外の場所は通行可能となる。そして下梁部材
2を道路長さ方向に1区間、例えば5枚並設し終えた
ら、横締用PC鋼材13をダクト12に挿通して所定の緊張
力で締め付け、複数の下梁部材2を横方向に緊結一体化
する。また、図6に示すように、前記PCケーブル17を
前記ダクト19,14に挿通し、ナット18及び定着具20を取
付け、各下梁部材2の谷側と支持壁体4との間に、山側
に向かって斜め上向きをなすPCケーブル17を張設す
る。この場合、PCケーブル17はシース17A付きのもの
が用いられ、クレーン33により吊り上げる際、そのシー
ス17Aに変形を起こさない吊り治具を用い、PCケーブ
ル17を、ロール状にした輸送荷姿から引き延ばす際は、
ターンテーブル等を用いて安全に作業ができるようにす
る。また、そのPCケーブル17は1本当たりの重量が大
きなため、前記支持壁体4上にヘビーウインチ(図示せ
ず)を固定し、前記クレーン33やレバーブロック(図示
せず)などを用いて作業を行う。また、前記PCケーブ
ル17の張設の際には、谷側に配置した緊張用ジャッキ34
を用いてPCケーブル17が計算された張力、すなわちP
Cケーブル17により下梁部材2の谷側を支持し、この
後、下梁部材2上に前記床版用コンクリート3が打設可
能になるようにその張力を調整し、高さを確認するレベ
ルで下梁部材2の谷側高さを確認し、複数の下梁部材2
の高さを合わせるように前記PCケーブル17の張力を調
整した後、ゆっくりと高さ調整用ジャッキ32を降下させ
る。この際5枚並んだ下梁部材2の中央位置のPCケー
ブル17から順次両側の下梁部材2のPCケーブル17へと
向かって調整を行い、各下梁部材2を支持する高さ調整
用ジャッキ32を全て降下した後、すなわち仮設支保工31
による支持を解除した後、再度緊張用ジャッキ32により
各PCケーブル17の張力の調整を行う。そしてこの調整
により、少なくとも該下梁部材2に、その自重と床版用
コンクリート3による荷重とこの床版用コンクリート3
に乗る作業員等の荷重に対して必要な強度を付与し、こ
の後、片持ち状態の下梁部材2に床版用コンクリート3
を打設可能な強度を与える。このようにしてPCケーブ
ル17の張力によって下梁部材2の谷側を支持することに
より、図7に示すように、1区間の谷側の仮設支保工31
を撤去することができる。同様な工程を繰り返して全区
間に渡って下梁部材2を片持ち状にして仮設を終了した
ら、1区間毎に床版用コンクリート3部分の配筋を組
み、1区間の両側に木口型枠を立て、下梁部材2の谷側
を必要に応じて図10に示すように仮設支保工31によっ
て支持し、図8に示すように、コンクリートポンプ車36
により床版用コンクリート3を打設する。そして打設が
終了に近づいたら緊張用ジャッキ34によりPCケーブル
17の張力調整を行い、仮設支保工31を撤去する。同様に
して各区間に床版用コンクリート3を打設する。尚、図
8に示す状態で、下梁部材2とPCケーブル17との組み
合わせによって、該下梁部材2には、その自重と床版用
コンクリート3による荷重とこの床版用コンクリート3
に乗る作業員等の荷重に対して必要な強度を付与してお
り、PCケーブル17を張設し、所定の張力に調整を行っ
た後は前記仮設支保工31による谷側の支持は不要となる
が、コンクリート打設時に仮設支保工31により下梁部材
2の谷側を支持するのは、コンクリート打設によりPC
ケーブル17が伸びるのを防止するためであり、前記高さ
調整用ジャッキ32を調整してコンクリート打設時に発生
するPCケーブル17の張力の一部を仮設支保工31により
支持する。また、コンクリート打設前には、下梁部材2
の上面に散水を施し、湿潤状態を保った状態で打設を行
い、下梁部材2と床版用コンクリート3との良好な一体
化を図り、さらに、床版用コンクリート3の打設順は、
図10に示すように、1区間が終了したら隣の区間を飛
ばして千鳥状に行い、各区間に床版用コンクリート3を
打設する。そして必要に応じて散水養生及び保温養生を
行い、床版用コンクリート3に所定の強度が得られたこ
とを確認してから、図9に示すように、PCケーブル17
の本緊張を行う。その床版用コンクリート3が硬化した
時点で、PCケーブル17には張力が作用しているが、床
版用コンクリート3は何等変位を受けていないのでプレ
ストレスが導入されていない。このため一旦PCケーブ
ル17を緩めて張力を下げ、あるいは開放して張力をゼロ
にした後、再度緊張することにより床版用コンクリート
3にプレストレスを導入する。具体的な手順としては、
緊張用ジャッキ34によりナット18を緩めることができる
程度まで一旦PCケーブル17の山側端を引っ張り出す。
そしてPCケーブル17の張力をゼロにしたときにPCケ
ーブル17が完全に収縮できる位置までナット18を緩めて
張力をゼロに戻し、あるいはナット18を調整して張力を
緩めるようにする。この後、緊張用ジャッキ34により所
定の最終緊張力になるまで再度緊張し、ナット18を締め
付けて定着することによって本緊張を行い、床版用コン
クリート3に所定のプレストレスを付与する。この場
合、PCケーブル17を緩める作業と本緊張の作業は、所
定本数毎に行い、例えば1本毎に行うものであり、1区
間にPCケーブル17は複数あり、その内の1本の張力を
短時間緩め、あるいは開放するものであるため、仮設支
保工31を用いて支持する必要はない。そしてこのように
下梁部材2を架設した後、床版用コンクリート3を打設
して複数の下枠部材2を一体化し、床版用コンクリート
3が硬化した後、前記PCケーブル17をポストテンショ
ン方式で本緊張し所定の緊張力を付与し、そのPCケー
ブル17のポストテンション方式によるプレストレスと前
記PC鋼材11のプレテンション方式あるいはポストテン
ション方式によるプレストレスとの合成さらには下梁部
材2と床版用コンクリート3との一体構造により、主桁
27に所定の構造強度を付与する。すなわち屋根1,サン
ドクッション18,囲いブロック17,前記作業者等及び所
定の落石荷重などに対し、片持式のシェッドに所定の構
造強度を付与する。前記PCケーブル17の本緊張後、主
桁27上部に囲いブロック25を取り付けるとともに、サン
ドクッション26を敷設する。また、床版用コンクリート
3の硬化後に仮設支保工31を撤去する場合、すなわち下
梁部材2の両端を支持した状態で床版用コンクリート3
が硬化した場合であっても、硬化後の床版用コンクリー
ト3にはPCケーブル17による緊張力がなんら働いてい
ないから、一旦PCケーブル17を緩めて張力を下げ、あ
るいは開放して張力をゼロにした後、再度緊張すること
により床版用コンクリート3にプレストレスを導入する
ことができる。
【0015】このように本実施例では、PC鋼材11によ
り道路幅方向にプレストレスを付与したプレキャストコ
ンクリート製の下梁部材2と、この下梁部材2上にコン
クリートを一体に打設して形成される床版用コンクリー
ト3と、下梁部材2の谷側と道路の山側との間に、山側
に向かって斜め上向きに設けられ、床版用コンクリート
3にプレストレスを付与するPCケーブル17とを備えた
ものであるから、プレストレスを付与した下梁部材2を
現場にて仮設し、この下梁部材2を型枠の代わりに用い
て床版用コンクリート3を打設し、かつこの床版用コン
クリート3にPCケーブル17によりプレストレスを付与
して片持式シェッドを構築することができ、しかも下梁
部材2に付与したプレストレスと床版用コンクリート3
に付与したプレストレスとの合成力によって、片持式シ
ェッドに所定の構造強度を与えることができる。
【0016】このように本実施例では、PC鋼材11によ
り道路幅方向にプレストレスを付与したコンクリート製
の下梁部材2を工場で製作し、山の壁部に沿って支持壁
体4を構築し、下梁部材2の山側を支持壁体4に固定し
て道路長さ方向に複数並設し、前記各下梁部材2の谷側
と前記支持壁体4との間に、山側に向かって斜め上向き
をなすPCケーブル17を張設し、下梁部材2の上部に床
版用コンクリート3を打設し、床版用コンクリート3の
硬化後、PCケーブル17の緊張力を緩めた後、本緊張し
て床版用コンクリート3にプレストレスを付与するもの
であるから、PCケーブル17を一旦緩めてから本緊張す
ることにより、床版用コンクリート3に所定のプレスト
レスを有効に付与することができ、しかも所定本数毎に
PCケーブル17を緩めてから本緊張を行うため、片持ち
状態で仮設支保工31を使用する必要がない。そして、下
梁部材2に付与したプレストレスと床版用コンクリート
3に付与したプレストレスとの合成力によって、シェッ
ドに所定の構造強度を与えることができ、また、主桁27
の断面を小型化し、かつその構造強度を効果的に高める
ことができ、谷側に構造物を設ける必要がなく、道路上
部全体を覆うことができる。また、工場で製作する下梁
部材2は比較的小型かつ軽量なものになるため、現場で
の据付作業が容易になり施工性が向上し、また、その下
梁部材2の上部に現場打ちコンクリートである床版用コ
ンクリート3を打設するため、この床版用コンクリート
3分の型枠が不要となり、施工コストの削減が図られ
る。しかもその床版用コンクリート3によりジベル鉄筋
28を介して複数の下梁部材2が一体化され、主桁27に高
い強度が得られる。
【0017】また実施例上の効果として、PCケーブル
17を張設した後、このPCケーブル17の張力によって下
梁部材2の谷側を支持して仮設支保工31を撤去するもの
であるから、PCケーブル17により下梁部材2の谷側を
支持することによって、下梁部材2の仮設後に谷側の仮
設支保工31が不要となり、工事に伴う交通止めを最小限
にすることができ、また、その他の作業を全て下梁部材
2及び床版用コンクリート3上で行うことができる。ま
た、本緊張により床版用コンクリート3にプレストレス
を付与するPCケーブル17を、仮設時の下梁部材2谷側
の支持材として兼用することができる。
【0018】さらに実施例上の効果として、PCケーブ
ル17を張設した後、このPCケーブル17の張力によって
下梁部材2の谷側を支持し、そのPCケーブル17の張力
に一端固定の片持ち状態の下梁部材2上の床版用コンク
リート3を打設可能な強度を付与するものであるから、
PCケーブル17の張設後は、下梁部材2の谷側と支持す
る必要がなくなる。また、片持ち状の主桁27に生じるモ
ーメントに対して、下梁部材2を山側に向かって下向き
にすると共に、床版用コンクリート3の上面を山側に向
かって上向きに形成し、主桁27の断面高さを山側に向か
って拡大して設けることにより、前記モーメントに対し
て強度的に優れた構造となる。さらに、片持式の主桁27
の断面上部には引張力が働くが、PCケーブル17を床版
用コンクリート3の上部に埋設したため、前記引張力に
PCケーブル17の緊張力が作用して効果的に構造強度を
高めることができる。また、横締用PC鋼材10により複
数の下梁部材2を道路の長さ方向に一体化することによ
り、屋根1の強度が増すと共に、施工時において所定数
のPCケーブル17を緩めても、主桁27が撓むことなく、
この後良好に本緊張することができる。さらに、PCケ
ーブル17を下梁部材2に対して斜めに配置し、その一端
を該下梁部材2の谷側において該梁部材2に挿通し、か
つPCケーブル17の他端を、梁固定部6と間隔を置いて
支持壁体4に定着したことにより、梁固定部6をモーメ
ントの基準点とした場合、屋根1の荷重と落石荷重等に
対するPCケーブル17の緊張力の釣り合いにおいて、そ
の間隔を比較的大きく取ることにより、PCケーブル17
の緊張力が有効に作用して主桁1の強度を向上すること
ができる。また、上横梁部10には、前記ダクト14とほぼ
90度で直交する定着面10Aが形成されているため、P
Cケーブル17の張力を効果的に床版用コンクリート3に
加えることができる。さらに、下梁部材2の先端側に、
谷側上部が開口した凹所15を形成し、この凹所15にPC
ケーブル17の谷側端を配置したことにより、緊張用ジャ
ッキ34によるPCケーブル17の緊張作業を下梁部材2の
上面側から簡便に行うことができ、しかも、そのPCケ
ーブル17の山側端を支持壁体4の背面に突出し、この突
出した山側端をナットなどの定着具20により定着するた
め、山側の地盤に定着する場合に比べて、PCケーブル
17の張設を容易に行うことができる。さらにまた、谷側
に柱がないため、開放感にあふれ、ドライバーの視野の
障害にならず、下梁部材2の下面が谷側に向かって上向
きになっているので、採光性に優れる。
【0019】尚、本発明は上記実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実
施が可能である。例えば下梁部材の大きさ,寸法,形状
等は適宜選定可能である。さらに、本発明の主桁は、そ
の使用条件により落石,通行荷重のみに限らず、崩土,
雪崩等の荷重を考慮してもよい。また、実施例において
は、1本づつPCケーブルを緩めて本緊張する例を示し
たが、1区間当たりのPCケーブルの本数に応じて2本
以上を一度に緩めて本緊張するようにしてもよい。さら
に山側に仮設支保工を設けずに、図5において、下梁部
材2をクレーン33により吊下げ支持した状態で、下梁部
材2の山側をアンカーボルト21を介して支持壁体4に固
定し、さらにPCケーブル17を張設した後、クレーン33
を撤去するようにしてもよく、その仮設支保工31の代わ
りに各種手段によって下梁部材2の谷側を支持すること
ができる。
【0020】
【発明の効果】本発明の請求項1の片持式シェッドは、
PC鋼材により道路幅方向にプレストレスを付与したプ
レキャストコンクリート製の下梁部材と、この下梁部材
上にコンクリートを一体に打設して形成される床版用コ
ンクリートと、前記下梁部材の谷側と道路の山側との間
に、山側に向かって斜め上向きに設けられ、前記床版用
コンクリートにプレストレスを付与するPCケーブルと
を備えたものであり、谷側に構造物を設ける必要がな
く、道路上部全体を覆うことができる片持式シェッドを
提供することができる。
【0021】また本発明の請求項2の施工方法は、PC
鋼材により道路幅方向にプレストレスを付与したコンク
リート製の下梁部材を工場で製作し、山の壁部に沿って
支持壁体を構築し、前記下梁部材の山側を前記支持壁体
に固定して道路長さ方向に複数並設し、前記各下梁部材
の谷側と前記支持壁体との間に、山側に向かって斜め上
向きをなすPCケーブルを張設し、前記下梁部材の上部
に床版用コンクリートを打設し、この床版用コンクリー
トの硬化後、前記PCケーブルの緊張力を緩めた後、本
緊張して前記床版用コンクリートにプレストレスを付与
するものであり、谷側に構造物を設ける必要がなく、施
工時において道路の交通を確保することができ、道路上
部全体を覆うことができる片持式シェッドの施工方法を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す主桁の道路長さ方向の
断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す下梁部材の谷側の拡大
側面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す下梁部材の谷側の拡大
平面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す施工手順を説明する断
面図である。
【図6】本発明の一実施例を示す施工手順を説明する断
面図である。
【図7】本発明の一実施例を示す施工手順を説明する断
面図である。
【図8】本発明の一実施例を示す施工手順を説明する断
面図である。
【図9】本発明の一実施例を示す施工手順を説明する断
面図である。
【図10】本発明の一実施例を示すシェッドの正面説明
図である。
【符号の説明】
2 下梁部材 3 床版用コンクリート 4 支持壁体 11 PC鋼材 17 PCケーブル 31 仮設支保工

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 PC鋼材により道路幅方向にプレストレ
    スを付与したプレキャストコンクリート製の下梁部材
    と、この下梁部材上にコンクリートを一体に打設して形
    成される床版用コンクリートと、前記下梁部材の谷側と
    道路の山側との間に、山側に向かって斜め上向きに設け
    られ、前記床版用コンクリートにプレストレスを付与す
    るPCケーブルとを備えたことを特徴とする片持式シェ
    ッド。
  2. 【請求項2】 PC鋼材により道路幅方向にプレストレ
    スを付与したコンクリート製の下梁部材を工場で製作
    し、山の壁部に沿って支持壁体を構築し、前記下梁部材
    の山側を前記支持壁体に固定して道路長さ方向に複数並
    設し、前記各下梁部材の谷側と前記支持壁体との間に、
    山側に向かって斜め上向きをなすPCケーブルを張設
    し、前記下梁部材の上部に床版用コンクリートを打設
    し、この床版用コンクリートの硬化後、前記PCケーブ
    ルの緊張力を緩めた後、本緊張して前記床版用コンクリ
    ートにプレストレスを付与することを特徴とする片持式
    シェッドの施工方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP2021095767A (ja) * 2019-12-18 2021-06-24 株式会社竹中工務店 構造物

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