以下では、図面を参照しながら本開示に係る橋梁高欄構築方法の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
図1は、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法が適用される橋梁1及び張出架設装置10の例を示す図である。図2は、図1よりも張出施工が進行した橋梁1及び張出架設装置10の例を示す図である。図1及び図2に示されるように、張出架設装置10は、例えば、道路橋を構築する現場Aにおいて、道路橋を成す橋梁1を構築するときに用いられる。現場Aには、例えば、張出架設装置10の他、クレーンC等の建設機械が配置されている。橋梁1の施工は、橋梁1の構築に必要な資材がクレーンC等で吊り上げながら行われる。
例示的な張出架設装置10は、橋梁1における橋桁2の張出施工に用いられる。橋桁2は、橋脚3の上端の柱頭部4から橋軸方向D1に沿って順次主桁ブロックB1が張出施工されることによって構築される。張出架設装置10は、橋桁2において移動可能な移動作業車である一対のワーゲン11を備える。
ワーゲン11は、橋桁2の既設ブロック(既に構築された主桁ブロックB1)における橋軸方向D1の両端から橋桁2を主桁ブロックB1ごとに張出施工する。各ワーゲン11は、橋桁2の既設ブロックにおける橋軸方向D1の両端のそれぞれから外方に張り出している。各ワーゲン11は、トラス構面を有すると共に平行四辺形状に配置されたワーゲン本体12と、ワーゲン本体12に吊り支持される載荷物13と、橋桁2の既設ブロックの上面において橋軸方向D1に沿ってワーゲン本体12を移動可能とするレール14とを有する。
載荷物13は、ワーゲン本体12に吊り支持され、橋桁2の各主桁ブロックB1の張出施工のときの支保工を構成する。載荷物13は、例えば、足場15(図5参照)及び型枠を含んでいる。ワーゲン本体12は、例えば、平行四辺形状のメインフレーム16を備えており、メインフレーム16は、当該平行四辺形の鈍角同士の間で延びる鉛直材16bと、上弦材16cと、第1の斜材16dと、第2の斜材16fとを含んでいる。
図3は、橋軸方向D1から見た橋梁1を示す図である。図3に示されるように、橋梁1は、橋軸方向D1に直交する橋軸直角方向D2に延びる床版5と、床版5の橋軸直角方向D2の両端のそれぞれに設けられる高欄部6とを備える。高欄部6は壁高欄7と地覆8とを含んでいる。例えば、壁高欄7及び地覆8は継ぎ目なく一体化されている。
ところで、従来の橋梁高欄構築方法では、高欄部6の施工を橋桁2の主桁ブロックB1(床版5)の施工よりも後に行っていた。すなわち、張出施工によって橋桁2の主桁ブロックB1の施工が一通り完成してワーゲン11が撤去された後に高欄部6の施工を行っていた。これは、橋軸直角方向D2の一端の高欄部6から他端の高欄部6までの道路の幅員W、及び高欄部6の高さHが厳格に定められるためであり、特に、予め定められた幅員及び高さよりも幅員W及び高さHの値が小さくなることは許されない場合がある。このように、幅員W及び高さHを厳格に計画通りとするために、従来は高欄部6の施工を主桁ブロックB1の構築後に行っていた。
しかしながら、高欄部6の施工を主桁ブロックB1の構築後に行う場合、高欄部6の構築がワーゲン11を撤去した後に開始されるので、工期が長期化するという問題が生じうる。すなわち、主桁ブロックB1の構築を完了してワーゲン11を撤去した後に、高欄部6の鉄筋の配筋、型枠の設置、及びコンクリートの打設を行うため、高欄部6の施工が作業の長期化の原因となりうるという問題があった。
これに対し、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法では、橋桁2の各主桁ブロックB1の張出施工と共にワーゲン11の足場15を用いて高欄部6の構築を行う。以下では、図4~図7を参照しながら、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法の例について説明する。図4は、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法の各工程の例を示すフローチャートである。
まず、橋桁2の張出施工に伴ってワーゲン11を設置して橋桁2の主桁ブロックB1の構築を開始する(ステップS1)。そして、図5に示されるように、既設ブロックB2の隣接位置にワーゲン11の載荷物13を配置して載荷物13に足場15を構築する。そして、足場15において、型枠を組み、主桁ブロックB1の構築を開始する(ステップS2)。
また、図5及び図6に示されるように、主桁ブロックB1の構築開始と共に、構築した足場15(例えば足場15の上部位置P)において高欄部6の構築を開始する。高欄部6の構築では、図6(a)に示されるように、床版5の橋軸直角方向D2の端部5bにおける上面5c及び端面5dにチッピングを行い、端部5bの上面5cを端部5b以外の上面よりも高くする(ステップS3)。このように端部5bの上面5cを高くすることによって、端部5bから外部への水みちを絶つことが可能となる。
次に、図6(b)に示されるように、端面5dに設けられたアンカーヘッド5fから床版5に埋め込まれた緊張材5gをジャッキで引っ張って緊張させた状態でくさび状部材5hによって緊張材5gをアンカーヘッド5fに保持することにより、床版5に緊張力を付与する。その後、ワーゲン11の足場15において端部5bに高欄部6の鉄筋6bを構築する(高欄部の鉄筋を構築する工程、ステップS4)。
そして、図6(c)に示されるように、ワーゲン11の足場15において鉄筋6bの周囲に型枠を設置して型枠内にコンクリートを打設することにより、鉄筋6bが埋まる程度の立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築する(立ち上げ部鉄筋コンクリートを構築する工程、ステップS5)。立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aは、高欄部6の天端面6c、及び高欄部6の内側面6dの被り部6f(図7(b)参照)を除く部分のコンクリートである。
このように被り部6fを除く立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築することによって、高欄部6の構築の大部分をワーゲン11の足場15で完成できる。よって、事後作業は天端面6c及び内側面6dの打設のみとなるので、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの構築後には足場を不要とすることができる。従って、事後作業を安全に行うことができる。
また、被り部6fを除く立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築することによって、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築した後に幅員W及び高さHを厳格に計画通りとすることができる。すなわち、被り部6fの厚さの微調整が可能となるため、幅員W及び高さHを計画通りに厳格に合わせることができる。
一例として、被り部6fの厚さは、3cm以上且つ7cm以下であるが、求められる幅員W及び高さHの値に応じて適宜変更される。また、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aは、例えば、鉄筋6bが埋まる程度の大きさのコンクリート体であってもよく、表面から鉄筋6bの跡が見える程度の大きさのコンクリート体であってもよい。
以上のように立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築した後には、図7(a)に示されるように、被り部6fを形成するための埋設型枠6gを立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの内側面6hに対向するように設置する。そして、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの天端面6jの橋軸方向D1の両端のそれぞれに型枠6kを設置する(高欄部の内側面、及び高欄部の天端面のそれぞれに型枠を設置する工程、ステップS6)。
例えば、ステップS6において、埋設型枠6g及び型枠6kを設置した後のタイミングで、主桁ブロックB1の構築が進行して主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結し(主桁ブロックを既設ブロックに連結する工程、ステップS7)、その後ワーゲン11を撤去してもよい。また、主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結した後に、設置した埋設型枠6g及び型枠6kの位置を調整してもよい(設置した型枠の位置を調整する工程、ステップS8)。
その後、図7(a)及び図7(b)に示されるように、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aと埋設型枠6gとによって画成された空間E1、及び立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aと型枠6kとによって画成された空間E2に充填材6pを充填する(充填材を充填する工程、ステップS9)。充填材6pは、例えば、無収縮モルタル、又は膨張剤入りのコンクリートである。この場合、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aからの埋設型枠6gの離間を一層確実に防止することが可能となる。以上のように、充填材6pを充填させた後には、高欄部6の仕上げを行って一連の工程を完了する。
次に、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る橋梁高欄構築方法では、ワーゲン11に懸架された足場15で高欄部6の鉄筋6bを構築する。すなわち、ワーゲン11で主桁ブロックB1の構築を行っているときに高欄部6の鉄筋6bを構築する。
また、本実施形態に係る橋梁高欄構築方法では、ワーゲン11に懸架された足場15において、高欄部6の内側面6d、及び高欄部6の天端面6cの被り部6fを除く部分のコンクリートを打設して立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aを構築する。従って、ワーゲン11で主桁ブロックB1を構築しているときに、高欄部6の鉄筋6bの構築、及び高欄部6の立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの構築を行うので、高欄部6の構築による工期の長期化を抑えることができる。
すなわち、ワーゲン11で主桁ブロックB1の構築を行っているときに高欄部6の被り部6f以外の構築を完了させることが可能となるので、橋梁1の構築の工期を短縮させることができる。また、高欄部6の立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの構築後には、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの内側面6h及び天端面6jのそれぞれへの型枠(例えば埋設型枠6g及び型枠6k)の設置、並びに型枠と立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aとによって画成された空間E1,E2への充填材6pの充填、を行えばよい。従って、ワーゲン11を撤去した後の作業量を低減させることができるので、橋梁1の構築作業の工期を短縮することができる。
また、ワーゲン11で懸架された主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結する工程を備え、型枠(例えば埋設型枠6g及び型枠6k)を設置する工程は、主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結する工程の前に行われてもよい。この場合、ワーゲン11で主桁ブロックB1を構築しているときに立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの内側面6h、及び立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの天端面6jのそれぞれに型枠を設置することが可能となる。
従って、主桁ブロックB1の連結後には、型枠と立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aとによって画成された空間E1,E2への充填材6pの充填を行えばよいので、ワーゲン11を撤去した後の作業量を更に低減させることができる。従って、橋梁1の構築作業の工期をより短縮することができる。
また、主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結する工程の後に、設置した型枠(例えば埋設型枠6g及び型枠6k)の位置を調整する工程を更に備えてもよい。この場合、主桁ブロックB1を既設ブロックB2に連結した後に高欄部6を形成する型枠の位置を調整する。従って、高欄部6の内側面6d、及び高欄部6の天端面6cの位置精度を高めることができるので、より高品質の高欄部6を構築することができる。
また、型枠を設置する工程では、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aの内側面6hに埋設型枠6gを設置し、充填材を充填する工程では、立ち上げ部鉄筋コンクリート6Aと埋設型枠6gとによって画成された空間E1に充填材6pを充填してもよい。この場合、型枠として埋設型枠6gを用いるため、充填材6pを充填した後の型枠の脱型を不要とすることができる。従って、橋梁の構築の工期を一層短縮させることができる。
以上、本開示に係る橋梁高欄構築方法の実施形態について説明した。しかしながら、本発明に係る橋梁高欄構築方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、橋梁高欄構築方法の各工程の内容及び順序は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、埋設型枠6g及び型枠6kを用いる例について説明した。しかしながら、本発明に係る橋梁高欄構築方法において用いる型枠の種類は、例えばラス網等であってもよいし、埋設型枠以外のものであってもよく、適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、充填材6pが無収縮モルタル又は膨張剤入りのコンクリートである例について説明した。しかしながら、充填材の種類は、例えば、無機系セメント系材料等のセメント系材料であればよく、無収縮のものでなくてもよく適宜変更可能である。
また、前述の実施形態では、埋設型枠6g及び型枠6kの設置を、既設ブロックB2への主桁ブロックB1の連結前に行う例について説明した。しかしながら、埋設型枠6g及び型枠6kの設置のタイミングは、例えば既設ブロックB2への主桁ブロックB1の連結後であってもよく、適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、ワーゲン本体12、載荷物13及びレール14を備えるワーゲン11について説明した。しかしながら、ワーゲンの各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は前述した実施形態のものに限定されず適宜変更可能である。